説明

浴槽の製造方法

【課題】二層成形で浴槽を製造する際に、表面層を先の成形し、裏面層をその後に成形することにより、浴槽の製造効率を向上させることである。
【解決手段】二層成形によって表面層8と裏面層16とを成形する際、表面層8を先に成形する。その際、表面層8は裏面層16よりも傷が付きにくい等の高品質の樹脂で成形し、人目につき易い部位の見栄えを良好にする。また、裏面層9は表面層8よりも安価な樹脂で成形することにより、浴槽20の製造コストを低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二層成形によって製造される浴槽の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二層成形によって浴槽を製造する技術が、本件出願人の発明として特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されている浴槽の成形方法では、最初にバック層を成形し、それから表面層を成形して浴槽を成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−11319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の発明のように、先にバック層(裏面層)を成形し、その後に表面層を成形すると、次のような不具合を生じる。すなわち、表面層は人目につくので、大理石のような高級感や清潔感を醸し出し、入浴者が気分良く入浴できるように仕上げる必要がある。しかし、このような高級感を醸し出す樹脂は、成形時の充填が不十分であるとかすれや欠けといった不良部位が目立ち易い。しかも、先にバック層を成形し、その後に表面層を成形すると、浴槽の製造工程がほとんど完了した時点で成形の不良が見つかることとなり、不具合のないバック層を含めた浴槽の成形作業に掛かった手間や時間の全てが無駄になってしまう。
【0005】
そこで本発明は、表面層を先の成形し、裏面層をその後に成形することにより、浴槽の製造の効率を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、二層成形によって表面層と裏面層とを成形する浴槽であって、表面層を裏面層よりも傷が付きにくい等の高品質の樹脂で構成し、表面層を成形後に裏面層を成形し、裏面層成形時に、裏面層と同じ樹脂で浴槽の台座及び補強部を一体に構成することを特徴とする浴槽の製造方法である。
【0007】
請求項1の発明では、表面層を成形後に裏面層を成形する。よって、表面層の成形の良否を点検してから裏面層を成形することができる。表面層は人目につく部位を構成するので、裏面層をよりも不良部位が目立ち易い。すなわち、表面層は見栄えが大事であるが、裏面層は少々見栄えが悪くても強度等の構造上の問題がなければ不具合扱いする必要がない。
【0008】
ここで、表面層を先に成形することにより、万が一、表面層に成形不良が生じると、引き続き裏面層を成形することなく、当該浴槽の製造を直ちに中断することができる。これにより、不具合のある表面層に対して裏面層を成形する手間と時間とを省くことができる。
【0009】
また、裏面層と共に、浴槽の台座と補強部とを同時に構成するので、浴槽の製造工程を簡略化することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、裏面層よりも先に表面層を成形することによって、成形された表面層に不具合がある場合に、直ちに当該浴槽の製造を中断し、欠陥のある浴槽に対して掛かる手間と時間とを削減することができる。そのため、不具合のない多数の浴槽を効率良く短時間で製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】浴槽の表面層を成形する手順を示しており、(a)は下型に対して上型を配置する直前の状態を示す断面図であり、(b)は下型に上型を配置した状態を示す断面図であり、(c)は(b)の状態から樹脂を注入した状態を示す断面図であり、(d)は表面層が完成し上型を外した状態を示す断面図である。
【図2】(a)は表面層が成形された下型に裏面層成形用上型を配置する直前の状態を示す断面図であり、(b)は(a)の下型に裏面層成形用上型を配置した状態を示す断面図であり、(c)は(b)の状態から樹脂を注入した状態を示す断面図である。
【図3】(a)は図2(c)の状態から裏面層成形用上型が外された状態を示す断面図であり、(b)は完成した浴槽の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明による浴槽の製造方法を説明する。
【0013】
図1(a)に示す下型1は、中央部分が凸形状を呈し、周囲に環状くぼみ部1aと環状受け部3を備えた金型である。環状くぼみ部1aは、中央の凸状部分と連続している。環状受け部3は、環状くぼみ部1aを介して中央の凸状部分と接続されている。すなわち環状受け部3は、下型1の周囲に沿って環状に隆起している。
【0014】
また、上型2は、中央部分が凹形状を呈し、周囲に環状突出部2aと環状当接部4を備えた金型である。環状突出部2aは、上型2の最も下方に突出する部位である。また、環状当接部4は、環状突出部2aの外側に配置されており、下型1の環状受け部3に当接して上型2を下型1上に配置する機能を有する。さらに上型2の中央には、樹脂注入口5が設けられている。
【0015】
図1(b)に示すように下型1の環状受け部3に上型2の環状当接部4を載せると、下型1の凸状部分と上型2の凹状部分とが所定の間隔を置いて対向する。すなわち、下型1と上型2の間には所定間隔の樹脂充填空隙6が成形される。樹脂充填空隙6の間隔は、後述する表面層8の厚さに相当している。
【0016】
そして、図1(b)に示す状態において、上型2の樹脂注入口5から樹脂充填空隙6内に表面層8用の樹脂7を注入する。樹脂7は、成形後、あたかも大理石のような透明感を醸し出す高価な樹脂である。樹脂充填空隙6内に充填された樹脂7はやがて硬化し、表面層8が成形される。表面層8が成形されると図1(d)に示すように上型2を外す。図1(d)では、成形された表面層8が露出している。
【0017】
次に、図2(a)に示す裏面層成形用上型9を用意する。裏面層成形用上型9は、上型2よりも中央部分が凹んだ凹形状を呈している。裏面層成形用上型9の中央部分には、樹脂注入口10a〜10cが設けられている。樹脂注入口10a〜10cは、台座成形部11a〜11cと連続している。すなわち、裏面層成形用上型9における、後述する浴槽20の台座17を成形する部位に樹脂注入口10a〜10cが設けられている。図2(a)では、3つの台座成形部11a〜11cを示しているが、浴槽20を安定して支持するために、例えば5つの台座成形部を裏面層成形用上型9の四隅と中央部分に一つずつ配置する。この場合にも、各台座成形部に樹脂注入口が設けられる。
【0018】
さらに裏面層成形用上型9の周囲には、補強リブ成形突起13aが設けられている。補強リブ成形突起13aには、所定の間隔を置いてスリット13bが設けられている。スリット13bは、裏面層成形用上型9の周囲に沿って所定間隔を置いて補強リブ成形突起13aに設けられている。
【0019】
また裏面層成形用上型9には、補強リブ成形突起13aよりも外側に環状当接部12が設けられている。環状当接部12は、上型2の環状当接部4と同様の構成である。すなわち環状当接部12は、下型1の環状受け部3に当接して裏面層成形用上型9を下型1上に配置する機能を有する。
【0020】
そして図2(b)に示すように、表面層8が成形された下型1に、裏面層成形用上型9を配置する。すなわち、下型1の環状受け部3に裏面層成形用上型9の環状当接部12を載せる。その結果、表面層8と裏面層成形用上型9とが対向し、両者間に樹脂充填空隙14が成形される。樹脂充填空隙14の間隔は、裏面層16の厚さに相当している。
【0021】
次に、図2(c)に示すように、樹脂注入口10a〜10cから樹脂充填空隙14内に裏面層16用の樹脂15を注入する。裏面層16用の樹脂15は、表面層8用の樹脂よりも安価な樹脂であり、浴槽20の強度を十分に確保することができるものを選定する。
【0022】
樹脂充填空隙14に注入された樹脂15は、やがて硬化し裏面層16が成形される。その際、樹脂15は台座成形部10a〜10cとスリット13bに入り込む。その結果、台座17と補強リブ18(補強部)が裏面層16と一体成形される。すなわち、台座17と補強リブ18(補強部)とを別に設ける手間が掛からない。
【0023】
裏面層16、及び台座17,補強リブ18が成形されると、図3(a)に示すように裏面層成形用上型9を外す。さらに図3(b)に示すように、完成した浴槽20を下型1から取り外す。浴槽20の下部には複数の台座17が設けられており、浴槽20の縁の部分には所定間隔を置いて複数の補強リブ18が形成されている。
【0024】
以上の製造工程において、仮に表面層8の成形が不十分であった場合には、裏面層16の成形は行わず、当該表面層8は破棄する。その結果、裏面層16,台座17,補強リブ18を成形する無駄な手間と時間とを削減することができる。そして、新たな表面層8の成形工程を実施することにより、速やかに多数の浴槽20を連続的に製造することができる。
【0025】
また、裏面層16用の樹脂15として安価な樹脂を採用することにより、浴槽20の製造コストを低減することができる。すなわち、裏面層16は目立ちにくく、表面層8のような見栄えを気にする必要性は低い。そのため、表面層8のみを高価な樹脂で成形し、裏面層16は安価な樹脂で成形する。
【0026】
下型1の環状受け部3と同じ環状受け部を備えた別の下型を使用し、裏面層成形用上型9との間で樹脂成形してもよい。このようにすると、浴槽の表面層が異なる形状に成形できる。
【符号の説明】
【0027】
1 下型
2 上型
6 樹脂充填空隙
7 表面層用の樹脂
8 表面層
9 裏面層成形用上型
11a〜11 台座成形部
13a 補強リブ成形突起
13b スリット
14 樹脂充填空隙
15 裏面層用の樹脂
16 裏面層
17 台座
18 補強リブ(補強部)
20 浴槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二層成形によって表面層と裏面層とを成形する浴槽であって、表面層を裏面層よりも傷が付きにくい等の高品質の樹脂で構成し、表面層を成形後に裏面層を成形し、裏面層成形時に、裏面層と同じ樹脂で浴槽の台座及び補強部を一体に構成することを特徴とする浴槽の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−131121(P2012−131121A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285340(P2010−285340)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】