説明

浴槽用ノズル及び浴槽装置

【課題】 噴出する浴水にスイング動させつつ噴出する方向を左右に分けることができる浴槽用ノズルを提供する。
【解決手段】 スリット状をなす噴出流路2cには、長手方向に沿って分岐部材9を設けている。この分岐部材9は例えば流路2aと流路2bに向かって尖った楔状をなし、その配置方向は、浴水のスイング動する方向と平行になっている。
分岐部材9を浴水のスイング動する方向と平行に配置することによって、噴出流路2cから噴出する浴水は左右に分けられることになる。すなわち、スイング動をさせながらも、浴水を左右2方向に分けて噴出することができる。これにより、左右計2本の噴出浴水を上下方向に同期させながらスイング動させることができ、これを身体にあてることで、同時に2ヶ所のマッサージができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマッサージ効果に優れた浴槽用ノズルとこのノズルを取り付けた浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから噴出する浴水または気泡を含んだ浴水を身体に当てることでマッサージ効果を発揮する浴槽装置(ジェットバス)が従来から知られており、ノズルに関しても各種の工夫がなされている。
【0003】
特許文献1にはノズル内に循環ポンプと浴湯循環流路を設けることで、循環ポンプの取り付けが省略でき設置作業が簡単になる浴槽用ノズルが提案されている。
【0004】
特許文献2には、ノズル装置内の浴水または気泡を含んだ浴水の流路に羽車状の回転体を設け、この回転体の回転によってノズル本体をスイング動させる構造が提案されている。このノズルによれば所定の範囲において浴水の噴出方向が連続的に変化するスイング動が可能になる。
【0005】
特許文献3には、ノズル本体内に異なる方向の流路が2本形成され、これら2本の流路がノズル先端において合流した構成が開示されている。この特許文献3の場合、それぞれの流路から流入量を制御することでノズルからの噴出方向を連続的に変化(スイング動)させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開平3−32670号公報
【特許文献2】特開平1−139162号公報
【特許文献3】特開2005−342507号公報 第7図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、このようなマッサージ効果を発揮する浴槽装置によって刺激する対象部位(浴水または気泡を含んだ浴水を噴出させ当てる身体部位)として、腰や背中の背骨付近が挙げられる。なぜなら、背骨を中心として左右に3.5cm程離れた箇所にマッサージに効果的なマッサージポイントが存在しており、このマッサージポイントを刺激することで、腰、背中及び肩のこりが癒される。
【0008】
上記のマッサージポイントは長い範囲に亘って存在する。このつぼを特許文献1に開示されるノズルを用いてマッサージしようとすると、ノズルからの浴水の噴出方向が一定であるため、多数のノズルが必要になる。
【0009】
特許文献2に開示されるノズルの場合には、ノズル本体がスイング動するため、ノズルの設置個数は少なくて済む。しかしながら、ノズル内に複雑な歯車機構を組み込まなければならず、且つ部品点数が多くなるため故障しやすい。
【0010】
特許文献3に開示されるノズルの場合には、ノズル自体は固定であり、2つの流路に供給する浴水の圧(流量)をコントロールするだけで、浴水の噴出方向をスイング動させることができる。しかしながら、前記のマッサージポイントをマッサージするには、背骨の左右にそれぞれ配置しなければならず、結局設置個数が増えてしまう。そして、そのような狭い範囲にノズルを複数形成するとなると、浴槽に対して狭い範囲に複数の穴を開ける必要が生じ、強度、コスト、部品点数、施工性といった面で好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため本発明は、浴槽の長手方向に複数配設され浴水、気泡入り浴水及び気泡のいずれかを噴出させる浴槽用ノズルであって、前記浴槽用ノズルには浴水気泡入り浴水及び気泡のいずれかの噴出方向が連続的に変化するスイング動を可能とする機構が設けられ、噴出する浴水を分岐する分岐部材が前記スイング動する方向と平行に配置された構成とした。
【0012】
前記スイング動を可能とする機構としては、ノズル先端で合流する2本の流路をノズル本体に形成し、これら2本の流路に供給する浴水の圧(流量)をコントロールすることが考えられる。
【0013】
また、浴水の噴出口の具体的な形状としてはスリット状をなすものが、特にスイング動を行うノズルには適合する。そしてこの場合、前記分岐部材は楔状をなすとともにスリット状噴出口の長手方向に沿って配置することが好ましい。
また、楔状の分岐部材については、楔の角度を調整可能とすることで、ノズルからの噴出方向を任意に調整することができるので好ましい。
【0014】
更に本発明に係る浴槽装置は、前記の浴槽用ノズルを、浴槽壁面の入浴者の腰乃至背中の左右方向の中心になる位置に単数取り付けた構成とする。ここで、単数とは左右方向において単数であることを意味し、上下方向については複数配置することを妨げない。ここでは、入浴者とは平均的な体格を有する仮想上の使用者を指す。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る浴槽用ノズルによれば、極めて簡単な構造で、噴出する浴水にスイング動させつつ噴出する方向を分けることができ、この同期してスイング動する2本の噴出浴水を身体にあてることで、同時に2ヶ所をマッサージすることができる。
【0016】
また本発明に係る浴槽用ノズルを取り付けた浴槽装置は、背中から腰のマッサージポイントを的確に捉えつつスイング動するマッサージを実現しながら、浴槽の強度、コスト、部品点数、施工性を確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明の実施の一例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る浴槽用ノズルを取り付けた浴槽装置の側面図と平面図、図2は弁の側面図と断面図、図3は本発明に係る浴槽用ノズルの斜視図、図4は同浴槽用ノズルの正面図、図5は図4のA−A方向断面図、図6は図4のB−B方向断面図である。
【0018】
浴槽1の入浴者の腰(背中)が位置する箇所には本発明に係るノズル2が単数(本実施例では1個)配置されている。浴槽1は循環ポンプ3を備え、この循環ポンプ3は浴槽1に形成した吸引口1aから浴水を配管4を介して吸引し、吸引した浴水を配管5を介して吐出する。
【0019】
配管5の途中には弁6が配置されている。この実施例にあっては、弁6は図2に示すようにモータで弁体が回転するロータリ式の3方弁を採用している。この3方弁の1つの流路6aは前記配管5につながり、他の流路6b、6cは配管7,8を介してノズル2につながっている。
【0020】
ノズル2には前記配管7につながる流路2aと前記配管8につながる流路2bが形成され、これら流路2aと流路2bがノズル内で合流し、合流点よりも先端に向かって扇状に広がる噴出流路2cが形成され、この噴出流路2cの開口(噴出口)は上下方向を長手方向としたスリット状をなしている。
【0021】
而して、前記弁6からの浴水はスリット状の噴出流路2cから入浴者の腰に向かって噴出することになるが、配管7からの浴水が配管8からの浴水よりも多いと図において下側に浴水が噴出し、配管8からの浴水が配管7からの浴水よりも多いと図において上側に浴水が噴出する。また、配管7からの浴水と配管8からの浴水がほぼ等しいときは図において紙面左方向に浴水が噴出する。このように配管7,8からの浴水の流量を制御することでノズル2から噴出する浴水はスイング動を行う。すなわち、弁6の弁体の回動状態によって流路6aと流路6b及び流路6cとの連通状態が変化し、それぞれの流路への流量配分を変化させることができ、これによりスイング動を実現する。
【0022】
また、上記スリット状をなす噴出流路2cには、長手方向に沿って分岐部材9を設けている。この分岐部材9は例えば流路2aと流路2bに向かって尖った楔状をなし、その配置方向は、浴水のスイング動する方向と平行になっている。
【0023】
上記したように分岐部材9を浴水のスイング動する方向と平行に配置することによって、噴出流路2cから噴出する浴水は左右に分けられることになる。すなわち、スイング動をさせながらも、浴水を左右2方向に分けて噴出することができる。これにより、左右計2本の噴出浴水を上下方向に同期させながらスイング動させることができ、これを身体にあてることで、同時に2ヶ所のマッサージができる。
【0024】
例えば、分岐部材9の楔の先端角度を、入浴者の背骨の中心から左右に約3.5cmの箇所に浴水が当たるように設定すれば、腰から背中のマッサージポイントを下から上、上から下へと徐々に位置を変えスイング動しながらマッサージすることができ、使用者は非常に快適なマッサージ感を得ることができる。
【0025】
このとき、本発明のノズルによれば、一つのノズルで左右2方向への浴水の噴出を実現しており、左右2列の狭い範囲に存在する腰から背中のマッサージポイントに向けて噴出するノズルとして非常に有効である。すなわち、背中から腰のマッサージポイントを的確に捉えつつスイング動するマッサージを実現しながら、浴槽の強度、コスト、部品点数、施工性を確保した浴槽装置を提供できる。
【0026】
続いて、噴出角度を調整可能な実施例について説明する。図7(a)及び(b)は分岐部材の一例を説明した図であり、この実施例にあっては、分岐部材9は、ノズル2に固定された軸10に2枚の板材11,12の先端を回動自在に取り付け、これら2枚の板材11,12間に引き方向に作用するスプリング13を設け、また一方の板材12の内側面にナット14を固着し、このナット14にネジ15を螺着した構造を有している。ここで、ネジ15を回転して後退させることで、(a)に示すように2枚の板材11,12が閉じて、楔の開き角が小さくなり、ネジ15を回転して前進させることで、(b)に示すように2枚の板材11,12が開いて、楔の開き角が大きくなる、といった調整動作を可能としている。
【0027】
このように楔の開く角が調整可能となっていることによって、使用者は好みに応じてノズルからの左右方向の噴出角度を調整することができる。すなわち、ネジ15を回転させることにより、楔の開き角を調整し、自分のマッサージポイントに合った噴出角度に調整することができる。これにより、使用者の体格差や、入浴姿勢差を解消し、どの使用者も快適にマッサージ効果を得ることが可能となる。
【0028】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の浴槽用ノズル及び浴槽装置を構成するいずれかの要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
例えば、分岐部材9の構造、配置、大きさ、角度調整機構、などについて当業者が適宜変更を加えたものであっても、本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)は本発明に係る浴槽用ノズルを取り付けた浴槽装置の側面図である。 (b)は同浴槽用ノズルを取り付けた浴槽装置の平面図である。
【図2】(a)は弁の側面図である。 (b)は弁の断面図である。
【図3】本発明に係る浴槽用ノズルの斜視図である。
【図4】同浴槽用ノズルの正面図である。
【図5】図4のA−A方向断面図である。
【図6】図4のB−B方向断面図である。
【図7】(a)及び(b)は分岐部材の開き角度調整を説明した図である。
【符号の説明】
【0030】
1…浴槽、1a…吸引口、2…ノズル、2a,2b,2c…ノズル内の流路、3…循環ポンプ、4,5,7,8…配管、6…弁、6a,6b,6c…弁内の流路、9…分岐部材、10…軸、11,12…板材、13…スプリング、14…ナット、15…ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の長手方向に複数配設され浴水、気泡入り浴水及び気泡のいずれかを噴出させる浴槽用ノズルであって、前記浴槽用ノズルには浴水気泡入り浴水及び気泡のいずれかの噴出方向が連続的に変化するスイング動を可能とする機構が設けられ、噴出する浴水を分岐する分岐部材が前記スイング動する方向と平行に配置されていることを特徴とする浴槽用ノズル。
【請求項2】
前記スイング動を可能とする機構は、前記浴槽ノズル内で合流する2本の流路であることを特徴とする請求項1に記載の浴槽用ノズル。
【請求項3】
前記浴水の噴出口はスリット状をなし、前記分岐部材は楔状をなすとともにスリット状噴出口の長手方向に沿って配置され、且つ分岐部材は楔の角度を調整可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽用ノズル。
【請求項4】
浴槽と、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の浴槽用ノズルと、を有する浴槽装置であって、前記浴槽用ノズルは入浴者の腰乃至背中の左右方向の中心になる浴槽壁面の位置に単数取り付けられていることを特徴とする浴槽装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209493(P2007−209493A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−31767(P2006−31767)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】