説明

海底探査装置

【課題】システム全体が大掛りとならず、超深海層の海底探査を手軽に行うことができる深海探査装置を提供する。
【解決手段】内部に密閉空間を有する球体1と、球体1を降下させる錘2と、錘2の切離し装置3を備えると共に、球体1に、探査任務用の電子機器7〜10と、電子機器の制御を行う制御装置4と、これらの電源であり且つ非接触充電が可能な二次電池5を収容し、制御装置4が、外部との間で信号の送受信を非接触で行う送受信手段4Aを有している海底探査装置Aとし、船上の設備を含む装置構成全体を小型軽量にすると共に、超深海層を含む深海層の海底探査を低コストで容易に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人の海底探査装置に関し、とくに、深海層の海底探査に好適なフリーフォール型の海底探査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、無人の海底探査装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがあった。特許文献1に記載の海底探査装置は、海底に沈設した複数の自己浮上式海底観測装置を備えたオフライン方式と、海面に浮設した複数のケーブル式海底観測装置を備えたオンライン方式と、ケーブル式海底観測装置に連結した陸上電源装置を組み合わせたものである。
【0003】
上記の海底探査装置は、自己浮上式海底観測装置の観測データをトランスジューサ等の音波通信手段により送信し、海面のケーブル式海底観測装置やアンカ・ブイ等を介して、その観測データを陸上や船上の設備で受信する。また、その他の海底探査装置としては、有人又は無人の潜水艇が周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−337173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したような従来の海底探査装置にあっては、地震観測等の長期的な観測には好ましいものの、地上や船上の設備を含むシステム全体が大掛りなものになる。このため、従来の海底探査装置は、深度6000mを超える超深海層の海底探査を行いたい場合、その海底探査を手軽に行うのは極めて困難であった。
【0006】
また、超深海層の海底探査を行う場合、従来の海底探査装置のように探査装置と船上との間の通信をオフライン(無索)で行うには、その深度でも通信可能な大出力・高感度の通信装置が必要であり、装置の大型化や高コスト化をまねく虞がある。さらに、探査装置と船上との間の通信をオンライン(有索)で行うには、その深度に充分対応し得る長さのケーブルが必要であるから、ケーブル自体の重量も相当なものになり、観測船のような特殊設備を有する大型船舶が必要である。
【0007】
本発明は、上記従来の状況に鑑みて成されたものであって、船上の設備を含む装置構成全体を小型軽量にすることが可能であると共に、深海層の海底探査を低コストで容易に行うことができる海底探査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の海底探査装置は、内部に密閉空間を有する球体と、海中で球体を降下させるための錘と、錘の切離し装置を備えると共に、球体に、探査任務用の電子機器と、電子機器の制御を行う制御装置と、これらの電源であり且つ非接触充電が可能な二次電池を収容している。そして、海底探査装置は、制御装置が、外部との間で信号の送受信を非接触で行う送受信手段を有していることを特徴としている。
【0009】
上記構成において、球体は、圧力容器と浮力体を兼用するものであって、外部への貫通孔等が全く無い密閉空間を形成する。したがって、球体に収容した制御装置の送受信手段及び二次電池は、球体の壁部を介して、非接触で信号の送受信及び充電を行うことになる。非接触での信号の送受信には、光通信、音波通信及び電波通信などを用いることができる。また、非接触での充電には、コイルからコイルへ給電をする電磁誘導型、電波受信型及び共鳴型などを用いることができる。
【0010】
なお、送受信手段は、その構成がとくに限定されるものではないが、通信可能距離が短くて、深海層の海底と海面との間で送受信できないものでも良い。つまり、送受信手段は、互いに連結した球体同士の間や、球体に近づけた外部の送受信装置との間で信号の送受信が可能なものであれば構わない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の海底探査装置によれば、船上の設備を含む装置構成全体を小型軽量にし且つ安価に得ることが可能であると共に、超深海層を含む深海層の海底探査を低コストで容易に行うことができる。また、海底探査装置は、回収した後、球体の外側から電子機器のデータの取出し及び入力や、二次電池の充電を非接触で行うことができるので、速やかに海中に再投入することが可能であり、しかも、装置構成が簡単であるから、保守管理も非常に容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の海底探査装置の一実施形態を説明する側面図である。
【図2】球体の構成を説明する接合前の側面図(A)及び接合後の側面図(B)である。
【図3】海底探査装置の投入から着底までの動作を示す説明図である。
【図4】海底探査装置の離底から浮上までの動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の海底探査装置の一実施形態を説明する。
図1に示す海底探査装置Aは、概略を説明すると、内部に密閉空間を有する球体1と、海中で球体1を降下させるための錘2と、錘2の切離し装置3を備えている。また、球体1には、探査任務用の電子機器(7〜10)と、電子機器の制御を行う制御装置4と、これらの電源であり且つ非接触充電が可能な二次電池5が収容してある。
【0014】
具体的には、海底探査装置Aは、複数(三個)の球体1を備えると共に、これらの球体1をジョイント6で互いに連結し、各々の球体1に、少なくとも電子機器(7〜10)及び制御装置4を選択的に収容している。図示例の三個の球体1は、いずれも透明なガラス製であって、上段一個で下段二個の配置である。
【0015】
各球体1のうち、上段の球体1には、探査任務用の電子機器として、浮上した後に信号を送信する浮上通信装置7が収容してあり、この他に、制御装置4と仮想線で示す二次電池5が収容してある。下段一方側(図中で左側)の球体1には、同じく電子機器として、海中における位置を検出する海中位置検出装置8と、ビデオカメラ9が収容してあり、この他に、制御装置4及び二次電池5が収容してある。下段の他方側の球体1には、同じく電子機器として、撮影用の照明装置10が収容してあり、この他に、制御装置4及び二次電池5が収容してある。図示例では、ビデオカメラ9及び照明装置10を下向きに配置している。
【0016】
また、海底探査装置Aは、その構成に、船上設備50を含むことができる。図示例の船上設備50は、コンピュータ51と、ビデオカメラ9の画像データを非接触で受信するデータ収録装置52と、非接触子機の充電器53を備えると共に、コンピュータ51が、信号の送受信を非接触で行う送受信手段51Aを有している。
【0017】
前記錘2は、海中において上記球体群を所定速度で降下させる重量であり、連結索11により下側のジョイント6に連結してある。この錘2の切離し装置3は、二次電池5を電源として、球体1の内部から外部へ非接触で電力供給を行う電力供給手段(3A.3B)と、球体1と錘2とを結合し且つ電極供給手段からの電流により電蝕作用で分離する結合分離手段3Cを備えている。電力供給手段は、球体1の内部に配置した給電器3Aと、球体1の外部に配置した受電器3Bで構成してある。
【0018】
制御装置4は、夫々の電子機器(7〜10)を制御する機能や、電子機器が取得した各種データを記憶する機能を有すると共に、外部との間で信号の送受信を非接触で行う送受信手段4Aを有している。送受信手段4Aは、光通信、音波通信及び電波通信等のいずれかによって信号の送受信を行うものであって、通信可能距離が比較的短い簡易なもので構わない。
【0019】
すなわち、送受信手段4Aは、互いに連結した球体1同士の間や、球体1に近づけた外部の送受信機との間で信号の送受信が可能であれば良い。そこで、この実施形態では、上記の送受信手段4Aを有する各制御装置4が、球体1間で互いに信号の送受信を行う配置にしてある。また、外部の送受信機は、この実施形態の場合、先述の船上設備50を構成するコンピュータ51の送受信手段51Aである。
【0020】
二次電池5は、先述の船上設備50を構成する充電器53により、非接触での充電が可能であって、この非接触充電にはコイルからコイルへ給電をする電磁誘導型の充電装置を用いることができる。
【0021】
浮上通信装置7は、既知のGPS受信機7Aと、GPS受信機7Aの測定データを送信する衛星通信装置7Bと、GPS受信機7A及び衛生通信装置7Bの電源である太陽電池パネル7Cを備えている。また、浮上通信装置7は、同じ球体1に収容した二次電池5若しくは一次電池(図示せず)を電源にしても良い。衛星通信装置7Bは、いわゆるイリジウム衛星通信装置である。太陽電池パネル7Cは、浮上した際に太陽光を効率良く受けることができるように、球体1の密閉空間において上側に配置してある。
【0022】
海中位置検出装置8は、少なくとも水平面で直交する二軸方向の加速度を検出する加速度計8Aと、球体1の内面に貼り付けた歪ゲージ8Bと、加速度計8A及び歪ゲージ8Bの検出データに基づいて3次元位置を算出する演算手段8Cを備えている。
【0023】
加速度計8Aは、より好ましい構成として、一定の方向を維持するように、ジンバル機構及びジャイロにより保持した安定プラットフォームに配置してあり、水平方向に生じた加速度を検出する。演算装置8Cは、加速度計により検出した加速度を積分して速度を算出し、これをさらに積分して距離を算出する。このような演算を二軸方向について行うことで、初期位置を基準にして、水平方向(X,Y方向)の自己位置(座標)を求めることができる。
【0024】
歪ゲージ8Bは、海中での降下中において球体1に生じた歪量を検出する。つまり、球体1の降下に伴って、球体1に作用する水圧が増大し、これにより球体1の歪量も大きくなるので、歪量を深度に換算することができる。演算装置8Cは,予め設定した球体1の特性や歪ゲージ8Bで検出した歪量から、深度すなわち垂直方向(Z方向)の自己位置を求めることができる。
【0025】
このようにして、演算装置8Cは、直交する三軸方向(X,Y,Z方向)の自己の3次元位置を算出する。なお、海中位置検出手段8は、三軸方向の加速度を検出する加速度計を用いることも可能であり、この場合には、歪ゲージ8Bを用いなくても自己の3次元位置を求めることができる。
【0026】
ビデオカメラ9は、例えば、小型で軽量なCCDカメラを用いることができる。図示例のビデオカメラ9は、先述の船上設備50を構成するデータ収録装置52に対して、画像データを非接触で送信する送信機9Aを有している。なお、ビデオカメラ9の画像データは、制御装置4の送受信手段4Aから外部に送信することも可能である。
【0027】
照明装置10は、例えば、電力消費が少ないLED照明を用いることができる。また、図示は省略したが小型のライトを備えたものとし、深海生物の接近を感知して照明装置10を作動させるようにしても良い。
【0028】
ここで、前記球体1は、貫通孔等が一切無く、内部に密閉空間を有し、圧力容器と浮力体とを兼用するものであって、図2(A)に示すように、一対の半球体1A.1Aで構成することができる。球体1は、上述の各機器を収容し、また、図示しないフレーム類を収容して各機器を保持することも可能であり、その後、半球体1A同士を接合する。この際、球体1は、予め半球体1Aの接合面を平滑に仕上げておき、図2(B)に示すように、接合面の外側に、生ゴム等から成るバンド55を取付けて半球体1A同士のずれを阻止する。これにより、球体1は、接着剤等を用いなくても、半球体1A同士の接合状態を維持することができ、海中に投下した後には、水圧により半球体1A同士が密着することで防水性を維持する。
【0029】
なお、球体1は、ガラス製であると共に、一例として、直径300mmで、厚さ13mmであって、これにより深度9000mの高水圧に耐えることが可能である。また、球体1は、半球体1A,1A同士を接合する際に、内部に乾燥した気体を封入することが有効である。これにより、低温である深海層に投入した際に、内部での結露発生を抑制して、電子機器を保護することができる。
【0030】
さらに、海底探査装置Aは、海底の泥を採取するための採泥装置21と、深海生物を集めるための餌、若しくは深海生物の捕獲装置を備えている。図示例では、内部に餌22Aをセットした捕獲装置22を備えている。採泥装置21及び捕獲装置22は、下側のジョイント6に、夫々の連結索12,13を介して繋いである。なお、これらの装置21,22は、海中での降下中に錘2やその連結索11に絡むのを防止するため、降下中に錘2から装置を離すように作用する抵抗板などを設けることも有効である。
【0031】
次に、上記構成を備えた海底探査装置Aの動作を説明する。
海底探査装置Aは、各制御装置4に、各電子機器(7〜10)のプログラムが予め入力してあり、図3に示すように、船舶101により搬送されて目的の海域で投下される。
【0032】
この海底探査装置Aは、三個の球体1、錘2、採泥装置21及び捕獲装置22で主な外観を構成しているので、従来の海底探査装置や潜水艇に比べれば、明らかに小型で且つ軽量である。また、船上設備50は、コンピュータ51、データ収録装置52及び充電器53で構成しているので、小型で且つ軽量であって、人手により運搬可能である。このため、海底探査装置Aは、特殊設備を有する観測船等の大型船舶を使用しなくても良く、漁船程度の小型船舶を用いて、少人数で運用することが充分に可能である。
【0033】
このように、海底探査装置Aは、船上設備50を含む装置構成全体が小型軽量化されたものとなっている。そして、海底探査装置Aは、単体で海中を自由降下するフリーフォール型であり、浮上するまでの間は船舶101との通信を行わないので、深度に左右されることが無く、深度6000mを超える超深海層の海底探査も可能である。なお、一般的に言われる深海層(深度200m以下の層)の海底探査にも当然適用可能である。
【0034】
海底探査装置Aは、海中への投入後、図3中に矢印で示すように、錘2により海中を自由降下して着底に至る。この間には、海中位置検出装置8により自己の3次元位置を検出し、制御装置4において、時間経過に伴って連続的に変化する位置を記憶する。この海中位置検出装置8の検出データにより、投下位置から着底位置までの航跡や、海流速度などを求めることができる。
【0035】
また、海底探査装置Aは、連結索11を介して錘2を設けているので、錘2が着底した時点で降下が終了し、海底から連結索11の長さ分の位置に各球体1を浮揚保持する。この状態において、海底探査装置Aは、採泥装置21による海底泥の採取や、捕獲装置22による深海生物の捕獲を行うほか、ビデオカメラ9及び照明装置10により海底や深海生物の撮影を行う。
【0036】
このとき、海底探査装置Aは、各制御装置4の送受信手段4Aにより、球体1同士の間で信号の送受信を行うことで、ビデオカメラ9及び照明装置10の起動や停止を同期させることができる。また、海底探査装置Aは、超深海層には太陽光線が届かないので、太陽電池パネル7Cを電源とする浮上通信装置7の動作を休止させることができる。
【0037】
次に、海底探査装置Aは、所定時間が経過した後、タイマや外部信号(例えば隣接する球体1に収容した制御装置4からの信号)により、切離し装置3により錘2を切離すと、図4に示すように、自己の浮力により離底して上昇する。そして、海底探査装置Aは、図4中に示す如く海面に浮上するのに伴って、上段の球体1に収容した浮上通信装置7が自動的に起動する。
【0038】
すなわち、浮上通信装置7は、太陽電池パネル7Cによる発電を開始して、GPS受信機7A及び衛生通信装置7Bに給電し、GPS受信機7Aにより自己の位置を測定すると共に、その測定データを衛星通信装置7Bにより送信する。測定データは、人工衛生102を介して船舶101側で受信される。これにより、当該海底探査装置Aの浮上位置を確認して、同装置を回収する。
【0039】
また、海底探査装置Aは、船舶101に回収した後には、船上設備50のコンピュータ51と各制御装置4との間で、非接触で信号の送受信を行って、海中位置検出装置8の取得データをコンピュータ51に入力したり、コンピュータ51から新たなプログラムを制御装置に出力したりする。さらに、ビデオカメラ9の画像データを非接触通信によりデータ収録装置52で収録すると共に、充電器53により、各二時電池5に対して非接触充電を行う。これらの作業は、いずれも球体1を開かずに行うことができる。そして、海底探査装置Aは、切離し装置3の機能部3A,連結索11及び錘2を新たに取付ければ、次の海底探査に用いることができる。
【0040】
以上のように、上記実施形態の海底探査装置Aは、船上の設備を含む装置構成全体を小型軽量にし且つ安価に得ることが可能であって、超深海層を含む深海層に対しても、その海底探査を低コストで容易に行うことができる。また、海底探査装置Aは、回収した後、球体1の外側から電子機器のデータの取出し及び入力や、二次電池5の充電を非接触で行うことができるので、球体1を分解する必要も無く、新たな錘2を装着すれば、速やかに海中に再投入することが可能であると共に、装置構成が簡単であるから、保守管理も容易である。
【0041】
上記の海底探査装置Aは、何度も再投入することができるので、例えば、深海層の海底微生物の採取にも有効である。つまり、海底微生物は、広い範囲に分布せずに、それぞれが特定の狭い範囲に存在していることが知られている。したがって、当該海底探査装置Aは、低コストで新しい海底微生物を獲得するのに非常に有効な機能を有している。
【0042】
さらに、海底探査装置Aは、複数の球体を互いに連結すると共に、各制御装置が球体間で互いに信号の送受信を行う構成とすることで、より多くの機器類を搭載して、これらの機器類の自動制御が可能になる。例えば、電子機器としてビデオカメラ9及び照明装置10を採用した場合には、これらの配置や角度を最適に設定することができ、良好な画像データを取得することが可能である。
【0043】
さらに、海底探査装置Aは、透明なガラス製の球体1を採用すると共に、その球体1を一対の半球体1Aで構成しているので、極めて簡単な構造でありながら、超深海層の高水圧を受けても応力集中が生じることがなく、その高水圧に充分に耐えることができ、各種機器の収容や取り外しにも容易に対処し得る。
【0044】
さらに、海底探査装置Aは、浮上通信装置7を備えているので、浮上後の回収を容易に行うことができる。とくに、GPS受信機7Aと衛星通信装置7Bと太陽電池パネル7Cで構成される浮上通信装置を採用したことにより、海中では電力が不要であって、装置構成のさらなる小型軽量化に貢献し得ると共に、海流等の都合で浮上位置が広範囲に予測される場合でも、当該装置を速やかに発見して回収することができる。
【0045】
さらに、海底探査装置Aは、海中位置検出装置8を備えているので、回収後において、降下中の航跡、正確な海底探査位置及び海流速度などを判定することができる。とくに、加速度計8Aと歪ゲージ8Bと演算手段8Cで構成される海中位置検出装置8を採用したことにより、3次元における正確な航跡や海底探査位置を判定することができる。
【0046】
さらに、海底探査装置Aは、採泥装置21や深海生物の捕獲装置22を備えたことにより、海底泥や深海生物を収集して、海底泥に含まれる鉱物及び微生物や、深海生物の研究に貢献することができる。
【0047】
本発明に係る海底探査装置は、その構成が上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の細部を適宜変更することが可能である。海底探査装置は、例えば、球体を3個以外の個数にしたり、探査任務用の電子機器として、地震計や放射線計などの各種観測機器を収容したりすることができる。球体は、ガラス製のほか、セラミックス製などを採用することもできる。また、錘の切離し装置には、機械的に結合分離を行う機構を採用することもできる。
【0048】
また、海底探査装置は、探査姿勢やバランスなどを考慮して、球体の個数や配置、球体内部及び外部の各種機器の配置、並びに錘の重量、個数及び配置を様々に設定することが可能であり、このほか、浮上時の目印になる旗等の表示具、複数の球体を保持するためのフレーム、海中での昇降時の抵抗を軽減するためのカバー、あるいは安定翼などを設けることも有効である。
【0049】
さらに、球体は、収容する機器によっては、透明でなくても構わない。この球体は、部分的に透明材料を用いた構成も有り得るが、超深海層の高水圧を考慮すると、なるべく単一の材料で形成するのが望ましく、ガラスあるいはセラミックス等の単一の材料である方が構造的にもコスト的にも有利である。
【符号の説明】
【0050】
A 海底探査装置
1 球体
2 錘
3 切離し装置
4 制御装置
4A 送受信手段
5 二次電池
7 浮上通信装置
7A GPS受信機
7B 衛生通信装置
7C 太陽電池パネル
8 水中位置検出装置
8A 加速度計
8B 歪ゲージ
8B 演算装置
9 ビデオカメラ
10 照明装置
21 採泥装置
22 捕獲装置
22A 餌
50 船上設備
101 船舶
102 人工衛星

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に密閉空間を有する球体と、海中で球体を降下させるための錘と、錘の切離し装置を備えると共に、
球体に、探査任務用の電子機器と、電子機器の制御を行う制御装置と、これらの電源であり且つ非接触充電が可能な二次電池を収容し、
制御装置が、外部との間で信号の送受信を非接触で行う送受信手段を有している ことを特徴とする海底探査装置。
【請求項2】
前記球体を複数備えると共に、各球体を互いに連結し、
各球体に、少なくとも電子機器及び制御装置を収容すると共に、各制御装置が、球体間で互いに信号の送受信を行う配置にしてあることを特徴とする請求項1に記載の海底探査装置。
【請求項3】
前記球体のうちの少なくとも1つが、透明なガラス製であり、
その透明な球体に、電子機器として、ビデオカメラ及び照明装置を収容したことを特徴とする請求項2に記載の海底探査装置。
【請求項4】
前記透明な球体が、一対の半球体で構成してあることを特徴とする請求項3に記載の海底探査装置。
【請求項5】
前記切離し装置が、球体の内部から外部へ非接触で電力供給を行う電力供給手段と、球体と錘とを結合し且つ電極供給手段からの電流により電蝕作用で分離する結合分離手段を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の海底探査装置。
【請求項6】
前記球体に、電子機器として、浮上した後に信号を送信する浮上通信装置を収容したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の海底探査装置。
【請求項7】
前記球体が透明なガラス製であり、
前記浮上通信装置が、GPS受信機と、GPS受信機の測定データを送信する衛星通信装置と、これらの電源である太陽電池パネルを備えていることを特徴とする請求項6に記載の海底探査装置。
【請求項8】
前記球体に、電子機器として、海中における位置を検出する海中位置検出装置を収容したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の海底探査装置。
【請求項9】
前記海中位置検出装置が、少なくとも水平面で直交する二軸方向の加速度を検出する加速度計と、球体の内面に貼り付けた歪ゲージと、加速度計及び歪ゲージの検出データに基づいて3次元位置を算出する演算手段を備えていることを特徴とする請求項8に記載の海底探査装置。
【請求項10】
海底の泥を採取するための採泥装置を備えたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の海底探査装置。
【請求項11】
深海生物を集めるための餌若しくは深海生物の捕獲装置を備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の海底探査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−245944(P2012−245944A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121208(P2011−121208)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(592007645)株式会社杉野ゴム化学工業所 (3)