説明

海洋護岸用の材料運搬方法

【課題】設備投資に大きな費用がかからず、しかも品質を確保したまま運搬する海洋護岸用の材料運搬方法を提供する。
【解決手段】アスファルトプラント1により作られたアスファルト混合物を加熱、撹拌混合する自走式のアスファルトクッカ3で受けとり船着場5まで陸走する工程と、前記船着場5からアスファルトクッカ3を運転し直接運搬船7に乗り入れる工程と、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソン9の近くまで前記運搬船7を航行させアスファルトクッカ3ごと運ぶ工程とを有し、品質低下を招くアスファルト混合物の船への積み換え作業をなくすと共に、市販のアスファルトクッカ3を利用する運搬とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋護岸によって埋立地を作る海洋護岸用の材料運搬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海に面して埋立地を作る際の海洋護岸は、基礎捨石層の上にケーソン等の構造物を順次設置していくことで構築される。
【0003】
構築された構造物と構造物の間はゴム製のシール部材によって、構造物と基礎捨石層との間はシール材となるアスファルトマスチック等の打設による止水層とによってそれぞれシールされ潮の干満により埋立地の内部へ海水が流れ込むのを阻止する一方、内部の汚水等が海へ流れ出るのを防ぐようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
止水層を作るアスファルトマスチックは、ケーソン等の構造物を設置した基礎捨石層に沿って打設するようになるが、ケーソン等の構造物までは、アスファルトプラントで作られた後、船で運ばれる。
【0005】
船は船着場に待機し、アスファルトプラントで作られたアスファルトマスチックは大型のアスファルト運搬車によって船着場まで陸送された後、船に積み換えられる。
【0006】
この場合、アスファルトマスチックは一定の品質を確保する必要があるところから陸送を含め、船にある運搬中も一定の最適温度に保持された状態で撹拌混合される。
【0007】
このために、船には加熱装置を備えた撹拌混合装置が何基も必要となる。これにより、一度に大量のアスファルトマスチックが運べるようになるが反面、アスファルトマスチックを運搬車から船に積み換える作業に多大の時間がかかり、作業性の面で望ましくないことと、積み換えによる作業時の品質低下が避けられなかった。また、船は撹拌混合装置が設置され、他に流用がきかない専用船となってしまうためその設備投資に莫大な費用がかかる問題をかかえる。
【0008】
そこで、本発明にあっては設備投資に費用がかからず、しかも、品質が確保された状態で運搬できる海洋護岸用の材料運搬方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明にあっては、第1にアスファルトプラントによりアスファルト混合物を作る工程と、前記アスファルトプラントにより作られたアスファルト混合物を加熱、撹拌混合する自走式のアスファルトクッカで受けとり運搬船が待機する船着場まで陸走する工程と、前記船着場からアスファルトクッカの運転で直接運搬船に乗り入れる工程と、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソンの近くまで前記運搬船を航行させアスファルトクッカごと運ぶ工程とを有し、前記運搬船に乗り入れたアスファルトクッカは、前記ケーソンの近くに配置されクレーンにより吊下げられた打設用の投入バケットに対して直接アスファルト混合物の投入が可能となっていることを特徴とする。
【0010】
第2に、アスファルトプラントによりアスファルト混合物を作る工程と、前記アスファルトプラントにより作られたアスファルト混合物を加熱、撹拌混合する自走式のアスファルトクッカで受けとりクレーンを備えた運搬船が待機する船着場まで陸走する工程と、船着場に到着した前記アスファルトクッカを前記運搬船のクレーンを用いて前記運搬船に1台ずつ積込む工程と、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソンの近くまで前記運搬船を航行させアスファルトクッカごと運ぶ工程とを有し、前記運搬船に乗り入れたアスファルトクッカは、前記運搬船のクレーンにより吊下げられた打設用の投入バケットに対して直接アスファルト混合物の投入が可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1,第2によれば、アスファルトクッカはアスファルトプラントからアスファルト混合物を受け取った後、そのまま運搬船に乗り入れることが可能となるためアスファルト混合部の積み換え作業が不用となり、アスファルトプラントから海上運搬までの時間を大幅に短縮することができる。しかも、長時間の積み換え作業がなくなるためアスファルト混合物の品質低下を防ぐことができる。
【0012】
また、アスファルトクッカは、加熱、撹拌混合する市販のアスファルトクッカをそのまま利用することができると共に、運搬船に乗ったままクレーンにより吊下げられた打設用の投入バケットに対して最適温度に加熱されたアスファルト混合物の投入を直接行うことができるため、品質を一定に保持した状態で止水層の打設作業を行うことができる。
【0013】
また、運搬船は一般の船又はクレーン船を利用する手段となるため、設備投資に必要なコストを大幅に下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図1乃至図3の図面を参照しながら本発明の第1の実施形態について具体的に説明する。
【0015】
図1は本発明にかかる海洋護岸用の材料運搬方法全体の概要説明図を示したものである。
【0016】
海洋護岸用の材料運搬方法は、アスファルトプラント1によりアスファルト混合物を作る工程と、前記アスファルトプラント1により作られたアスファルト混合物を自走式のアスファルトクッカ3で受けとり加熱、撹拌混合しながら運搬船7が待機する船着場5まで陸走する工程と、前記船着場からアスファルトクッカ3を運転し直接運搬船7に乗り入れる工程と、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソン9の近くまで前記運搬船7を航行させアスファルトクッカ3ごと運ぶ工程を有している。
【0017】
アスファルトプラント1は、例えば、工場の敷地内に設置され本体1a内部にストレートアスファルト及び骨材が投入されることで、シール材となるアスファルト混合物が作られるようになっている。アスファルト混合物は、ケーソン9と基礎捨石層11との間に止水層を作るためのものであって、混合する材料は必ずしもストレートアスファルト及び骨材に限定されない。
【0018】
アスファルトクッカ3は、図3に示すように市販されている車であって通常の道路工事等に使用されているものをそのまま流用している。運転室13の運転席に座ることで目的の場所への自由な走行が可能となっている。運転室13の後方には、バーナ等の加熱手段及び回転ドラム等の撹拌手段からなる加熱、撹拌混合装置15を有し、運転室13側となる前方を矢印の如く、持ち上げることで取出口17から最適温度に加熱されたアスファルト混合物の取出しが可能となる。
【0019】
運搬船7は、甲板19の上に屋根等がない乗り入れ用の桟橋20を備えた一般的なフエリ台船と呼ばれるもので、複数のアスファルトクッカ3を一度に運べる大きさとなっている。航行はエンジン付きの自走式タイプ又はエンジンなしの牽引タイプがあり、いずれのタイプのものを使用してもよく、本実施例では自走式タイプを利用する手段となっている。この場合、運搬船7は必ずしもフエリ台船でなくてもよく、新たに桟橋をかけて乗り降りできる一般の船であってもよい。
【0020】
一方、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソン9の近くには、クレーン21が配置され打設用の投入バケット23が吊下げられている。クレーン21は曳航タイプのクレーン船となっていて、牽引することでいずれの場所でも移動可能となっている。
【0021】
次に、材料運搬方法について具体的に説明すると、アスファルトプラント1により作られたアスファルト混合物をアスファルトクッカ3で受けとり、設定温度まで加熱した後、撹拌混合しながら運搬船7が待機する船着場5まで陸走し、そのまま船着場5から直接運搬船7に乗り入れる。乗り入れ完了後、運搬船7によってケーソン9の近くまでアスファルトクッカ3ごと運搬する手段となっている。
【0022】
運搬船7によって運ばれたアスファルトクッカ3はクレーン21によって吊下げられた打設用の投入バケット23内へ最適温度に加熱されたアスファルト混合物を直接投入し、投入バケット23による打設が行なわれる。
【0023】
これら一連の運搬工程において、アスファルト混合物の船への積み換え作業がなくなるため、作業性に非常に優れると共に、アスファルト混合物の品質を低下させることなく海洋護岸まで運べるようになる。しかも、現場到着後、アスファルトクッカ3から直接アスファルト混合物の打設を行うことができる。
【0024】
また、市販のアスファルトクッカ及びフエリ台船を利用するため、専用船を作る費用が省略され設備投資の面でも大変好ましいものとなる。
【0025】
図4から図6は第2の実施形態を示したもので、運搬船7を用いてアスファルトクッカ3を直接運ぶことは前記第1の実施形態と同一であるが、運搬船7にクレーン25が設置されたクレーン台船27を利用することにある。
【0026】
これにより、船着場5に到着したアスファルトクッカ3をクレーン台船27のクレーン25を用いて甲板19に積込む工程と、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソン9の近くまでクレーン台船27で航行した後、そのクレーン台船27のクレーン25を用いてアスファルトクッカ3のアスファルト混合物を打設する工程が特徴となっている。
【0027】
具体的に各工程を説明すると前記アスファルトプラント1により作られたアスファルト混合物を加熱、撹拌混合する自走式のアスファルトクッカ3で受けとりそのままクレーン台船27が待機する船着場5まで陸送する。船着場5に到着した前記アスファルトクッカ3を前記クレーン台船27のクレーン25を用いて前記クレーン台船27の甲板19に1台ずつ積込む。次に、積込み完了後クレーン台船27を航行させアスファルトクッカ3ごと埋立地となる海洋護岸を構築するケーソン9の近くまで運び、クレーン台船27に積込んだアスファルトクッカ3のアスファルト混合物を前記クレーン25により吊下げられた打設用の投入バケット23により受け取り、打設を行うものである。
【0028】
この場合、船着場5に到着したアスファルトクッカ3をクレーン台船27に積込むには、図6に示す如くクッカ車積込み台29を用いることが望ましい。
【0029】
クッカ車積込み台29は、アスファルトクッカ3が直接載る設置固定台となっていて、積込み台数分製作される。
【0030】
クッカ車積込み台29の各コーナ部4箇所は吊下げ具31の吊下げチェーン33に引掛けることで4点支持による吊下げが可能となり、甲板19への搭載完了後は4箇所の吊り下げチェーン33を取外すことでアスファルトクッカ3と一緒に積込みが完了するようになっている。
【0031】
したがって、この第2の実施形態によれば、アスファルト混合物の船への積み換え作業がなくなるため、作業性に非常に優れると共に、アスファルト混合物の品質を低下させることなく海洋護岸まで運べるようになる。しかも、現場到着後、アスファルトクッカ3から直接アスファルト混合物の打設を行うことができる。
【0032】
また、市販のアスファルトクッカ3及びクレーン台船27を利用するため、専用船を作る費用が省略され設備投資の面でも大変好ましいものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明にかかる第1の実施形態による海洋護岸用の材料運搬方法全体の概要説明図。
【図2】第1の実施形態において投入バケットによるアスファルト混合物の打設作業を示した概要説明図。
【図3】アスファルトクッカの概要側面図。
【図4】第2の実施形態による海洋護岸用の材料運搬方法全体の概要説明図。
【図5】第2の実施形態において投入バケットによるアスファルト混合物の打設作業を示した概要説明図。
【図6】クッカ車積込み台の概要説明図。
【符号の説明】
【0034】
1 アスファルトプラント
3 アスファルトクッカ
5 船着場
7 運搬船
9 ケーソン
11 基礎捨石層
21 クレーン
23 投入バケット
25 クレーン
27 クレーン台船
29 クッカ車積込み台
31 吊下げ具
33 吊下げチェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトプラントによりアスファルト混合物を作る工程と、前記アスファルトプラントにより作られたアスファルト混合物を加熱、撹拌混合する自走式のアスファルトクッカで受けとり運搬船が待機する船着場まで陸走する工程と、前記船着場からアスファルトクッカの運転で直接運搬船に乗り入れる工程と、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソンの近くまで前記運搬船を航行させアスファルトクッカごと運ぶ工程とを有し、前記運搬船に乗り入れたアスファルトクッカは、前記ケーソンの近くに配置されクレーンにより吊下げられた打設用の投入バケットに対して直接アスファルト混合物の投入が可能となっていることを特徴とする海洋護岸用の材料運搬方法。
【請求項2】
アスファルトプラントによりアスファルト混合物を作る工程と、前記アスファルトプラントにより作られたアスファルト混合物を加熱、撹拌混合する自走式のアスファルトクッカで受けとりクレーンを備えた運搬船が待機する船着場まで陸走する工程と、船着場に到着した前記アスファルトクッカを前記運搬船のクレーンを用いて前記運搬船に1台ずつ積込む工程と、埋立地となる海洋護岸を構築するケーソンの近くまで前記運搬船を航行させアスファルトクッカごと運ぶ工程とを有し、前記運搬船に乗り入れたアスファルトクッカは、前記運搬船のクレーンにより吊下げられた打設用の投入バケットに対して直接アスファルト混合物の投入が可能となっていることを特徴とする海洋護岸用の材料運搬方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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