説明

海生貝類の処理方法及びシステム

【課題】海生貝類の有効利用を図ることができる海生貝類の処理方法およびシステムを提供する。
【解決手段】このシステム1では、外部から投入された海生貝類が破砕機100で破砕されて貝片とされ、この破砕された貝片が洗浄機200で洗浄されるので、貝類中の有機物がきれいに除去される。この洗浄された貝片が乾燥炉300で乾燥され、この乾燥された貝片が焼成炉400で焼成されることにより酸化カルシウムが得られるので、この得られた酸化カルシウムの品質は優れたものとなる。さらに、焼成炉400で焼成された酸化カルシウムが加湿混練機700で水和反応させられることにより水酸化カルシウムが得られるので、この得られた水酸化カルシウムについてもその品質は優れたものとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所等の海水取入口のスクリーンや取水路に付着する海生貝類を処理する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、発電所等の海水取入口のスクリーンや取水路に大量に付着する海生貝類を有効利用することが提案されている。たとえば特許文献1では、貝類を水洗することで付着塩類を除去して脱塩貝類を得る脱塩洗浄装置と、脱塩貝類を粗砕して粗砕片を得る粗砕装置と、粗砕片を加熱乾燥させて半焼成片を得る加熱乾燥装置と、所定の平面経路状に伸びる炉室内に備えた移動床式の基盤上で半焼成片を焼成し、酸化カルシウムを得るとともに、それ以外の構成材を焼却する抵抗型電気炉と、酸化カルシウムを収集して収容袋内に密封する袋詰め装置とを具備してなる海生貝類の処理システムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、発電所等から採取される海生貝類を焼成し、品質の優れた酸化カルシウムを得るには、海生貝類中の貝身に含まれる有機物・塩分、海生貝類とともに採取される海藻や汚泥などの不純物を前もって除去しておくことが必要となる。
【0004】
上記特許文献1では、貝類を水洗してから粗砕しているので、貝類中の貝身は残ったままとなっている。この残存する貝身に含まれる有機物や塩分により、最終製品としての酸化カルシウムの品質を劣化させるおそれがある。また、前記残存する貝身に含まれる有機物や塩分により、処理システムの構成要素を腐食等させるおそれがある。これらにより、海生貝類の有効利用を図ることが困難となる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、海生貝類の有効利用を図ることができる海生貝類の処理方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る海生貝類の処理方法は、外部から投入された海生貝類を破砕機が破砕して貝片とする破砕工程と、該破砕された貝片を洗浄機が洗浄する洗浄工程と、該洗浄された貝片を乾燥炉が乾燥する乾燥工程と、該乾燥された貝片を焼成炉が焼成することにより酸化カルシウムを得る焼成工程とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明方法によれば、外部から投入された海生貝類が破砕機で破砕されて貝片とされ、該破砕された貝片が洗浄機で洗浄されるので、貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去される。そして、該洗浄された貝片が乾燥炉で乾燥され、該乾燥された貝片が焼成炉で焼成されることにより酸化カルシウムが得られるので、この得られた酸化カルシウムの品質は優れたものとなる。また、上記のように貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去されるので、本発明方法を実施するシステムの構成要素を腐食等させるおそれが少なくなる。これらにより、海生貝類の真の有効利用を図ることができるようになる。
【0008】
請求項2記載の発明のように、前記焼成工程の後に、前記焼成炉で焼成された酸化カルシウムを加湿混練機が水和反応させることにより水酸化カルシウムを得る水和反応工程を備えることが好ましい。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前記焼成工程の後に、前記焼成炉で焼成された酸化カルシウムが加湿混練機で水和反応させられることにより水酸化カルシウムが得られるので、この得られた水酸化カルシウムについてもその品質は優れたものとなる。
【0010】
請求項3記載の発明のように、前記破砕工程の前に、貝類を設定期間だけ貯蔵容器に貯蔵することにより、該貝類を腐敗除去して減容する貯蔵工程を備えることが好ましい。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、前記破砕工程の前に、貝類が所定期間だけ貯蔵容器に貯蔵されることにより、該貝類が腐敗除去されて減容されるので、その後の工程では、減容された貝類を処理することとなり、処理効率が向上する。
【0012】
本発明に係る海生貝類の処理システムは、外部から投入された海生貝類を破砕する破砕機と、該破砕された貝片を洗浄する洗浄機と、該洗浄された貝片を乾燥する乾燥炉と、該乾燥された貝片を焼成することにより酸化カルシウムを得る焼成炉と、前記焼成した酸化カルシウムを水和反応させることにより水酸化カルシウムを得る加湿混練機とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明システムによれば、外部から投入された海生貝類が破砕機で破砕されて貝片とされ、該破砕された貝片が洗浄機で洗浄されるので、貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去される。そして、該洗浄された貝片が乾燥炉で乾燥され、該乾燥された貝片が焼成炉で焼成されることにより酸化カルシウムが得られるので、この得られた酸化カルシウムの品質は優れたものとなる。また、前記焼成炉で焼成された酸化カルシウムが加湿混練機で水和反応させられることにより水酸化カルシウムが得られるので、この得られた水酸化カルシウムについてもその品質は優れたものとなる。さらに、上記のように貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去されるので、本発明システムの構成要素を腐食等させるおそれが少なくなる。これらにより、海生貝類の真の有効利用を図ることができるようになる。
【0014】
請求項5記載の発明のように、前記破砕機は、複数の鬼歯付きロールを備え、該ロールに散水しつつ回転駆動することにより前記ロールにて貝類を破砕するように構成されていることが好ましい。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、前記破砕機は、複数の鬼歯付きロールが備えられ、該ロールが散水されつつ回転駆動されることにより前記ロールにて貝類が破砕されるので、後の工程で貝類を洗浄し易くなり、また、その貝類の焼成に好適な粒径が得られるようになる。さらに、ロールが散水されつつ回転駆動されるので、貝類のカルシウム成分のロールへの固着を防止して破砕機の安定した運転が可能となる。
【0016】
請求項6記載の発明のように、前記洗浄機は、傾斜した胴体の略下半分が水槽部分をなす円筒型容器と、該円筒型容器の伸長方向に沿って軸設されたリボン式スクリュー羽根とを備え、前記円筒型容器の下部に投入された貝片を前記リボン式スクリュー羽根によって水槽部分内で撹拌洗浄するとともに、該洗浄された貝片を前記円筒型容器の中間部からさらに散水しつつ上部に向けて搬送することにより該上部から順次取り出すように構成されていることが好ましい。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、前記洗浄機は、傾斜した胴体の略下半分が水槽部分をなす円筒型容器と、該円筒型容器の伸長方向に沿って軸設されたリボン式スクリュー羽根とが備えられ、前記円筒型容器の下部に投入された貝片が前記リボン式スクリュー羽根によって水槽部分内で撹拌洗浄されるとともに、該洗浄された貝片が前記円筒型容器の中間部からさらに散水されつつ上部に向けて搬送されることにより該上部から順次取り出されるので、この洗浄により貝類に付着する塩分、汚泥、懸濁物質などが効果的に除去される。
【0018】
請求項7記載の発明のように、前記乾燥炉と前記焼成炉との少なくとも一方は、抵抗型電気炉であることが好ましい。
【0019】
請求項7記載の発明によれば、前記乾燥炉と前記焼成炉との少なくとも一方は、抵抗型電気炉であるので、炉内の温度管理が容易となる。これにより、得られる酸化カルシウムや水酸化カルシウムの品質をより優れたものとすることができる。しかも、CO2の発生がない。
【0020】
請求項8記載の発明のように、前記乾燥炉と前記焼成炉との少なくとも一方の排ガスの排熱を、別途用意された熱交換器にて回収することにより、吹込空気予熱として炉内へ戻すように構成されていることが好ましい。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、前記乾燥炉と前記焼成炉との少なくとも一方の排ガスの排熱が、別途用意された熱交換器にて回収されることにより、吹込空気予熱として炉内へ戻されるので、省電力を図ることができる。
【0022】
請求項9記載の発明のように、前記乾燥炉は、ロータリーキルン式乾燥炉であることが好ましい。
【0023】
請求項9記載の発明によれば、前記乾燥炉は、ロータリーキルン式乾燥炉であるので、乾燥炉の連続運転が可能となり、これにより、処理効率が向上する。
【0024】
請求項10記載の発明のように、上蓋と胴体と炉床とから構成され、かつ各構成部材のそれぞれに耐火断熱施工がなされた円形炉室を備えた炉床回転式焼成炉であることが好ましい。
【0025】
請求項10記載の発明によれば、上蓋と胴体と炉床とから構成され、かつ各構成部材のそれぞれに耐火断熱施工がなされた円形炉室を備えた炉床回転式焼成炉であるので、焼成炉の連続運転が可能となり、これにより、処理効率が向上する。
【0026】
前記焼成炉の内部を構成する耐熱鋼部材には、表面皮膜処理が施されていることが好ましい。
【0027】
前記焼成炉の内部を構成する耐熱鋼部材に、表面皮膜処理が施されていれば、鋼材からのクロム析出を防止して、焼成炉の安定運転をつづけることができる。
【0028】
請求項11記載の発明のように、前記加湿混練機は、前記焼成炉から排出された酸化カルシウムを冷却する冷却機と、該冷却された酸化カルシウムを定量的に排出するホッパとを備え、該定量的に排出された酸化カルシウムについて連続的に水和反応を行うことにより水酸化カルシウムを得るように構成されていることが好ましい。
【0029】
請求項11記載の発明によれば、前記焼成炉から排出された酸化カルシウムが冷却機で冷却され、この冷却された酸化カルシウムがホッパから定量的に排出された酸化カルシウムについて、前記加湿混練機で連続的に水和反応が行われることにより、高品質の水酸化カルシウムが得られるようになる。
【発明の効果】
【0030】
本発明方法によれば、外部から投入された海生貝類が破砕機で破砕されて貝片とされ、該破砕された貝片が洗浄機で洗浄されるので、貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去される。そして、該洗浄された貝片が乾燥炉で乾燥され、該乾燥された貝片が焼成炉で焼成されることにより酸化カルシウムが得られるので、この得られた酸化カルシウムの品質は優れたものとなる。また、上記のように貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去されるので、本発明方法を実施するシステムの構成要素を腐食等させるおそれが少なくなる。これらにより、海生貝類の真の有効利用を図ることができるようになる。
【0031】
本発明システムによれば、外部から投入された海生貝類が破砕機で破砕されて貝片とされ、該破砕された貝片が洗浄機で洗浄されるので、貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去される。そして、該洗浄された貝片が乾燥炉で乾燥され、該乾燥された貝片が焼成炉で焼成されることにより酸化カルシウムが得られるので、この得られた酸化カルシウムの品質は優れたものとなる。また、前記焼成炉で焼成された酸化カルシウムが加湿混練機で水和反応させられることにより水酸化カルシウムが得られるので、この得られた水酸化カルシウムについてもその品質は優れたものとなる。さらに、上記のように貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去されるので、本発明システムの構成要素を腐食等させるおそれが少なくなる。これらにより、海生貝類の真の有効利用を図ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る海生貝類の処理システムの全体構成図である。
【図2】前処理設備の詳細を示す部分構成図である。
【図3】焼成処理設備の詳細を示す部分構成図である。
【図4】水和反応処理設備の詳細を示す部分構成図である。
【図5】本実施形態に係る海生貝類の処理システムの工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る海生貝類の処理システム(以下、本システムという。)1は、主として、破砕機100、洗浄機200および貯蔵ホッパ(貯留容器に相当する。)800を備えた前処理設備2と、乾燥炉300および焼成炉400を備えた焼成処理設備3と、冷却機500、ホッパ600および加湿混練機700を備えた水和反応処理設備4と、出荷装置900と、排ガス処理設備5とからなっている。なお、各設備間や各機器間には搬送媒体に応じた搬送手段(配管やコンベア等)が適宜設けられており、これらは必要に応じて図示しない制御系にて制御されているものとする。
【0034】
破砕機100は、図2の上段に示すように、複数の鬼歯付きロール101,101が本体102内の並行軸に一対配置されそして、上部の入口103から投入した貝類を、モータ104で回転駆動されるロール101,101間で破砕し、その破片(貝片)を下部の出口105から排出するようになっている。なお、ロール101,101に対向配置された散水ノズル106で散水することで、貝類に含まれるカルシウム成分のロール101,101への固着を防止している。ロール101は1以上であればよい。
【0035】
洗浄機200は、図2の下段に示すように、右上がりに傾斜した胴体の略下半分が水槽部分201aをなす円筒型容器201と、この円筒型容器201の伸長方向に沿って軸設されたリボン式スクリュー羽根202と、リボン式スクリュー羽根202を回転駆動するモータ203と、散水ノズル204と、入口205と、出口206とを備えている。なお、水槽部分201aの水位は、オーバーフローライン207の円筒型容器201との接続位置で設定されている。このオーバーフロー水は、図1に示すように、ピットに放水してもよいし、散水ノズル204からの散水に再利用してもよい。
【0036】
そして、入口205から円筒型容器201の下部の水槽部分201aに投入した貝片を、リボン式スクリュー羽根202によって撹拌洗浄した上で、円筒型容器201の上部に向かって順次搬送し、円筒型容器201の上部の出口206から取り出すようになっている。また、この搬送される貝片に向かって、円筒型容器201の中間部から上部までの間に配置された散水ノズル204で散水することで、水槽部分での攪拌洗浄で除去しきれなかった不純物(海水、汚泥、貝肉)をより確実に除去できるようになっている。
【0037】
乾燥炉300は、図3の上段に示すように、連続乾燥運転が可能なロータリーキルン式の抵抗型電気炉であって、図中では明らかではないが、その図中の右下がりに若干傾斜した円筒状の炉本体301が外部ヒータ302で加熱されるようになっている。そして、入口303から投入された貝片を、モータ304で回転駆動される炉本体301内で加熱乾燥させつつ、徐々に出口304a側に落下移動させていき、その出口304aから取り出すようになっている。
【0038】
また、炉本体301の左右両端側に設けられたヘッダ部分のうちの出口ヘッダ305から放出される排ガス中の臭気を、図示しない触媒燃焼式脱臭装置にて除去するようになっている。さらに、その排ガスの排熱は、別途用意された熱交換器307にて回収し、吹込空気予熱として、入口ヘッダ306に戻すようになっている。
【0039】
焼成炉400は、図3の下段に示すように、上蓋401と、胴体402と、炉床403とから構成され、かつ各構成部材のそれぞれに耐火断熱施工がなされた円形炉室404を備えた炉床回転式の抵抗型電気炉である。炉床403が下部のモータ駆動装置415で回転され、円形炉室404の入口405から投入された貝片が、円形炉室404内に設けられたスクレーパ406にて順次円形炉室404に移送される。そして、円形炉室404内で複数の電気ヒータ407,407,・・・によって加熱焼成されることで、貝片の主成分である炭酸カルシウムからの脱炭酸作用により酸化カルシウム(生石灰:CaO)を生成する。この酸化カルシウムが、円形炉室404の中心にある出口408から自然落下して排出されるようになっている。
【0040】
焼成炉400の内部を構成する耐熱鋼部材には、その腐食を防止するために表面皮膜処理が施されている。また、焼成炉400の排ガスの排熱は、上記乾燥炉300と同様に、焼成炉400の上部に設けられた熱交換器409にて回収し、吹込空気予熱として焼成炉400内に戻すようになっている。
【0041】
焼成炉400から排出される酸化カルシウムは、図4の上段から中段にかけて示すように、焼成炉400の下方に設けられ、水冷ジャケット503を備えた冷却機500にて冷却される。図中の501は入口、502は出口、504は冷却水入口、505は冷却水出口である。ここで冷却された酸化カルシウムが、定量排出装置601を備えた2つのホッパ600に交互に投入され、ホッパ600から定量的に排出されるようになっている。定量排出装置601は、たとえば酸化カルシウムの排出量を測定するセンサーと、このセンサーからの信号に応じて開閉量を調整可能なバルブとからなっている。
【0042】
加湿混練機700は、図4の下段に示すように、ホッパ600から定量排出装置601の働きにより定量的に排出される酸化カルシウムについて水和反応を起こさせることで、水酸化カルシウム(消石灰:Ca(OH)2)を得るようになっている。具体的には、水平配置され、水冷ジャケット703を備えた断面略W字状の長尺本体701内に、複数のペダル状攪拌羽根702が互いに干渉しないようにして並行軸に一対配置されている。そして、同図中における本体701の右側上部の入口704から投入した貝片を、モータ705で回転駆動される攪拌羽根702により混練しつつ、ノズル706から注水することで加湿する。これにより、連続的に水和反応を起こさせて、得られた水酸化カルシウムを本体701の左側下部の出口707から排出するようになっている。同図中における708は冷却水入口、709は冷却水出口である。
【0043】
貯蔵ホッパ800は、図1に示すように、採取された貝類を所定期間だけ貯蔵することにより、該貝類を腐敗除去して減容するものである。出荷装置900は、加湿混練機700での水和反応で得られた水酸化カルシウムを、適量ずつコンテナに詰め込んで、出荷するための製品となすものである。
【0044】
排ガス処理設備5は、乾燥炉300、焼成炉400およびホッパ600からの排ガスを吸引してスタックに導き、ここから外部に放出するための設備である。なお、乾燥炉300からの排ガスの廃熱は、熱交換器307で回収され、焼成炉400からの排ガスの廃熱は、熱交換器409で回収されるようになっていることは、上述したとおりである。
【0045】
以下、本システム1の動作を図5の工程ごとに説明する。
【0046】
まず貯蔵工程では、採取された貝類が所定期間だけ貯蔵ホッパ800に貯蔵されることにより、該貝類の貝身が腐敗除去されて減容される。貯蔵ホッパ800内では、貝類の腐敗に適した環境条件を満たすために、その上部に設けられた散水ノズル801から適宜散水され、この散水ノズル801には水タンク802からポンプ803で給水される。そして、減容された貝類は、貯蔵ホッパ800からコンベア804で、破砕機100に送られて、破砕工程に入る。破砕工程以降では、この減容された貝類を処理することとなり、処理効率が向上する。
【0047】
破砕工程では、破砕機100の上部の入口103から貝類が投入されると、その貝類は本体102内のロール101,101がモータ10で回転駆動されることにより、ロール101,101間にて破砕されて貝片となる。この貝片は破砕機100の下部の出口105から落下して洗浄工程の洗浄機200に排出される。これにより、洗浄工程で貝類を洗浄し易くなり、焼成工程で貝類の焼成に好適な粒径が得られるようになる。このときにも、水タンク802からポンプ803で給水される散水ノズル106から、ロール101,101に向けて散水される。この散水により、貝類のカルシウム成分のロール101,101への固着が防止され破砕機100の安定運転がなされる。
【0048】
洗浄工程では、洗浄機200の入口205から、円筒型容器201の下部の水槽部分201a内に貝片を投入する。投入された貝片は、リボン式スクリュー羽根202によって水槽部分201a内で撹拌洗浄されながら、円筒型201の上部に向かって順次搬送される。その搬送の間に、円筒型容器201の上部から中間部にかけて、散水ノズル204からの散水が貝片に浴びせかけられる。この散水ノズル204にも、水タンク802からポンプ803で給水される。そして、洗浄された貝片が、円筒型容器201の上部の出口206から取り出される。出口206から取り出された貝片は、コンベア208で乾燥工程の乾燥炉300に搬送される。このときには、貝片に付着する塩分、汚泥、懸濁物質などが効果的に除去されている。
【0049】
乾燥工程では、乾燥炉300の入口303から投入された貝片が、モータ304で回転駆動される炉本体301内で加熱乾燥されつつ、徐々に出口304a側に移動されていき、その出口304aから取り出される。出口304aから取り出された貝片は、コンベア304bで焼成工程の焼成炉400に搬送される。このとき、乾燥炉300は、連続乾燥運転が可能なロータリーキルン式の抵抗型電気炉であるので、CO2の発生がない。また、乾燥炉300の形状により、水分を含む貝殻の高温下での飛散影響を受けない。なお、乾燥炉300の排ガスは、ブロア308で吸引されてスタック309から大気に放出されるが、その途中で排ガス中の塵埃はバグフィルター310で除去され、臭気は触媒燃焼式脱臭装置311で除去される。また、乾燥炉300の排ガスの排熱は、熱交換器307にて回収されることにより、吹込空気予熱として乾燥炉300内へ戻される。これにより、乾燥炉300の加熱に使用される電力が少なくなり、省電力となる。
【0050】
焼成工程では、炉床403がモータ駆動装置415で回転され、円形炉室404の外から投入された貝片が、円形炉室404内に設けられたスクレーパ406にて順次円形炉室404内に移送される。そして、円形炉室404内に移送された貝片は、電気ヒータ407で加熱焼成され、貝片が効率的に焼成されて、高品質の酸化カルシウムを得ることができる。ここで得られた酸化カルシウムは、円形炉室404の中心の出口408からの自然落下により水和反応工程の冷却機500へと排出される。このとき、焼成炉400は、炉床回転式の抵抗型電気炉であるので、これについてもCO2の発生がない。なお、焼成炉400の排ガスは、ブロア410で吸引されて上記スタック309から大気に放出されるが、その途中で排ガス中の塵埃はバグフィルター411で除去される。また、焼成炉400の排ガスの排熱は、熱交換器409にて回収されることにより、吹込空気予熱として焼成炉400内に戻される。これにより、焼成炉400の加熱に使用される電力が少なくなり、ここでも省電力となる。さらに、焼成炉400の内部を構成する耐熱鋼部材には、表面皮膜処理が施されているので、鋼材からのクロム析出を防止して焼成炉400の安定運転をつづけることができる。
【0051】
水和反応工程では、焼成炉400から排出される酸化カルシウムが、その下部にある冷却機500にて冷却され、この冷却された酸化カルシウムが、定量排出装置601を備えた2つのホッパ600に交互に投入される。そして、ホッパ600から定量排出装置601の働きにより定量的に排出される酸化カルシウムが、加湿混練機700の本体701の右側上部の入口704から投入される。入口704から投入された酸化カルシウムは、モータ705で互いに内回りとなるように回転駆動される攪拌羽根702で混練されながら、ノズル706から注水されることで加湿される。これにより、連続的に水和反応を起こして、得られた水酸化カルシウムが、本体701の左側下部の出口707から排出される。これにより、高品質の水酸化カルシウムを得ることができるようになる。
【0052】
この水酸化カルシウムが、コンベアで出荷装置900に搬送され、ここで所定形状のコンテナ901に収納されて最終製品の形態となされる。なお、加湿混練機700のノズル706、冷却機500と加湿混練機700とのジャケット冷却水は、いずれも同じ水タンク710からポンプ711,712で供給されている。また、ホッパ600の排ガス中の粉塵は、上記焼成炉400の排ガスと同じバグフィルター411で除去される。
【0053】
以上説明したように、本システム1によれば、外部から投入された海生貝類が破砕機100で破砕されて貝片とされ、この破砕された貝片が洗浄機200で洗浄されるので、貝類中の貝身(有機物や塩分)がきれいに除去される。そして、この洗浄された貝片が乾燥炉300で乾燥され、この乾燥された貝片が焼成炉400で焼成されることにより酸化カルシウムが得られるので、この得られた酸化カルシウムの品質は優れたものとなる。
【0054】
また、焼成炉400で焼成された酸化カルシウムが、加湿混練機700で水和反応させられることにより、水酸化カルシウムが得られるので、この得られた水酸化カルシウムについてもその品質は優れたものとなる。
【0055】
さらに、上記のように貝類中の貝身に含まれる有機物や塩分がきれいに除去されるので、本システム1の構成要素を腐食等させるおそれが少なくなる。これらにより、海生貝類の真の有効利用を図ることができるようになる。
【0056】
なお、上記実施形態では、前記破砕工程の前に、貝類を所定期間だけ貯蔵ホッパ800に貯蔵されることにより、該貝類が腐敗除去されて減容される貯蔵工程を備えているが、これは必須ではない。
【0057】
また、上記実施形態では、焼成炉400で焼成された酸化カルシウムが加湿混練機700で水和反応されることにより水酸化カルシウムが最終的に得られるものとしているが、酸化カルシウムを最終製品としてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 貝類の処理システム
2 前処理設備
3 焼成処理設備
4 水和反応処理設備
5 排ガス処理設備
100 破砕機
200 洗浄機
300 乾燥炉
400 焼成炉
500 冷却機
600 ホッパ
700 加湿混練機
800 貯留ホッパ(貯留容器に相当する。)
900 出荷装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】実用新案登録第3149761号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から投入された海生貝類を破砕機が破砕して貝片とする破砕工程と、
該破砕された貝片を洗浄機が洗浄する洗浄工程と、
該洗浄された貝片を乾燥炉が乾燥する乾燥工程と、
該乾燥された貝片を焼成炉が焼成することにより酸化カルシウムを得る焼成工程と
を備えたことを特徴とする海生貝類の処理方法。
【請求項2】
前記焼成工程の後に、前記焼成炉で焼成された酸化カルシウムを加湿混練機が水和反応させることにより水酸化カルシウムを得る水和反応工程を備えたことを特徴とする請求項1記載の海生貝類の処理方法。
【請求項3】
前記破砕工程の前に、貝類を設定期間だけ貯蔵容器に貯蔵することにより、該貝類を腐敗除去して減容する貯蔵工程を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の海生貝類の処理方法。
【請求項4】
外部から投入された海生貝類を破砕する破砕機と、
該破砕された貝片を洗浄する洗浄機と、
該洗浄された貝片を乾燥する乾燥炉と、
該乾燥された貝片を焼成することにより酸化カルシウムを得る焼成炉と、
前記焼成した酸化カルシウムを水和反応させることにより水酸化カルシウムを得る加湿混練機と
を備えたことを特徴とする海生貝類の処理システム。
【請求項5】
前記破砕機は、複数の鬼歯付きロールを備え、該ロールに散水しつつ回転駆動することにより前記ロールにて貝類を破砕するように構成されていることを特徴とする請求項4記載の海生貝類の処理システム。
【請求項6】
前記洗浄機は、傾斜した胴体の略下半分が水槽部分をなす円筒型容器と、該円筒型容器の伸長方向に沿って軸設されたリボン式スクリュー羽根とを備え、前記円筒容器の下部に投入された貝片を前記リボン式スクリュー羽根によって水槽部分内で撹拌洗浄するとともに、該洗浄された貝片を前記円筒容器の中間部からさらに散水しつつ上部に向けて搬送することにより該上部から順次取り出すように構成されていることを特徴とする請求項4又は5記載の海生貝類の処理システム。
【請求項7】
前記乾燥炉と前記焼成炉との少なくとも一方は、抵抗型電気炉であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の海生貝類の処理システム。
【請求項8】
前記乾燥炉と前記焼成炉との少なくとも一方の排ガスの排熱を、別途用意された熱交換器にて回収することにより、吹込空気予熱として炉内へ戻すように構成されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の海生貝類の処理システム。
【請求項9】
前記乾燥炉は、ロータリーキルン式乾燥炉であることを特徴とする請求項4〜8のいずれか1項に記載の海生貝類の処理システム。
【請求項10】
前記焼成炉は、上蓋と胴体と炉床とから構成され、かつ各構成部材のそれぞれに耐火断熱施工がなされた円形炉室を備えた炉床回転式焼成炉であることを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の海生貝類の処理システム。
【請求項11】
前記加湿混練機は、前記焼成炉から排出された酸化カルシウムを冷却する冷却機と、該冷却された酸化カルシウムを定量的に排出するホッパとを備え、該定量的に排出された酸化カルシウムについて連続的に水和反応を行うことにより水酸化カルシウムを得るように構成されていることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の海生貝類の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−147854(P2011−147854A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9545(P2010−9545)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(593166347)柳田産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】