説明

浸漬塗装前の金属表面を処理するための多段階法

本発明は、金属表面の、腐食保護及び接着促進処理のための多段階法に関し、その方法は、Zr及び/又はTiの水溶性化合物、並びにフッ素イオンを含有する酸性の水性組成物(A)を用いた前処理としての不動態化処理のための第一の工程、少なくとも1つの芳香族ヘテロ環化合物を有する少なくとも1つの有機化合物を含有する水性組成物(B)を用いた後処理のための続いての工程、を含み、ここで、この芳香族ヘテロ環化合物は、少なくとも1つの窒素原子を有する。本発明は、さらに、本発明による方法に従って処理された金属表面、及びこれに続いて行われる有機結合剤系によるコーティングのための前記処理金属表面の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面の、腐食保護及び接着促進処理のための多段階法に関し、その方法は、Zr、及び/又はTiの水溶性化合物、並びに、フッ素イオンを含有する酸性の水性組成物(A)を用いた前処理としての不動態化処理のための第一の工程、少なくとも1つの芳香族ヘテロ環を有する少なくとも1つの有機化合物を含有する水性組成物(B)を用いた後処理のための続いての工程、を含み、この芳香族ヘテロ環は、少なくとも1つの窒素原子を有する。本発明は、さらに、本発明による方法に従って処理された金属表面、及び、これに続いて行われる有機結合剤系によるコーティングのための前記処理金属表面の使用に関する。
【0002】
特許文献1には、後続の電着浸漬コーティングプロセス(electrodip coating
process)の前に行われる、金属表面の腐食保護及び接着促進のための化成処理用水性前処理溶液が開示されており、これは、
a)アリルアミン又はビニルアミンモノマーを有する1mg/L以下の有機ポリマー;
b)硝酸イオン、銅イオン、銀イオン、バナジウムもしくはバナジン酸イオン、ビスマスイオン、マグネシウムイオン、亜鉛イオン、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、スズイオン、2.5から5.5のpH範囲とするための緩衝系、ドナー原子を含有する少なくとも2つの基を有する芳香族カルボン酸もしくはそのようなカルボン酸の誘導体、平均粒子サイズが1μm未満であるケイ酸粒子、から選択される少なくとも1つのさらなる成分、及び
c)B、Si、Ti、Zr、及びHfの群から選択される少なくとも1つの元素Mのフルオロ錯体、
を含有している。
【0003】
この種の水性組成物は、腐食保護前処理に適しており、及び、一方では処理工程の数が少なく、他方では、前処理ラインの連続運転という意味において、リン酸塩処理の場合にはその重金属含有量のために労力を要する処理を必要とする無機スラッジを形成する傾向がほとんどない方法に用いることができるという点で、例えば自動車製造業における従来のリン酸塩処理と比較して利点を有している。しかし、それでも、リン酸塩処理は、金属Si、Ti、Zr及びHfの混合酸化物及び水酸化物を主体とするアモルファス化成層と比較して、続いて適用される塗装層に対する接着性という点で、及び、特に亜鉛めっき表面上の結晶リン酸塩層の耐腐食性という点で、明確な利点を有している。
【0004】
特許文献2には、金属Ti、Zr及びHfのフルオロ錯体、並びにアリルアミン、アミノポリサッカリド、アミノ変性フェノール、及びこれらの誘導体から選択される有機化合物を含有し、さらに追加で、元素Mg、Al、Zn、Cu、及びCoのイオンを含有していてよい、金属表面の化成処理用水性処理液が開示されている。特許文献2には、さらに、リン酸、アミノフェノール、及び有機リン化合物から選択される化合物を含有する水性後リンス液(aqueous post-rinse)が教示されている。この発明では、この後処理の過程で、金属表面上における金属成分及び有機成分という点での特定の層重量が、十分な腐食保護のために提供される形で存在するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/065645号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/133047号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、有機結合剤系によるコーティングの前に金属表面を腐食保護及び接着促進処理するための方法を利用可能とすることであり、前記方法において、第一の処理工程にてZr、Ti、及び/又はSiの水溶性化合物、並びにフッ素イオン放出性水溶性無機フッ素化合物を含有する酸性の水性薬剤による化成処理が必ず行われるという方法により、続いて適用され硬化される有機結合剤系の金属表面に対する接着性及びその腐食保護が既存技術に対して大きく改善される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、少なくとも以下の工程:
i)所望により行われる、金属表面を洗浄及び脱脂する工程;
ii)金属表面を、
a)Zr及び/又はTiの水溶性有機化合物、
b)フッ素イオンを放出する水溶性無機フッ素化合物、
を含有する酸性の水性組成物(A)と接触させることによって、金属表面を前処理として不動態化処理する工程;
iii)この前処理した金属表面を水性組成物(B)と接触させることによって後処理する工程、
が順に実施される方法による金属表面の化成処理を介することで、付与される塗装接着及び腐食保護を大きく改善することが可能であり、
ここで、
工程iii)の水性組成物(B)は、少なくとも1つの芳香族ヘテロ環を有する少なくとも1つの有機化合物を含有し、この芳香族ヘテロ環は、少なくとも1つの窒素原子を含む。
【0008】
本発明の目的のための「金属表面」とは、鉄、鋼鉄、亜鉛、亜鉛めっき及び合金亜鉛めっき処理した鉄並びに鋼鉄の表面であるとみなされるものであり、これらは、例えばGalfan(登録商標)、Galvalume(登録商標)、Galvannealed(登録商標)といった商品名で入手可能である。本発明による方法により腐食保護及び接着促進を行う形で処理可能である金属表面としては、さらに、アルミニウム、マグネシウム、及び亜鉛、さらには合金中に少なくとも50原子%の比率でアルミニウム、マグネシウム、又は亜鉛を有するそれぞれの合金も挙げられる。
【0009】
本発明による方法に関して処理される金属表面は、好ましくは「未処理(bare)」金属表面である。「未処理」金属表面とは、腐食保護コーティングをまだ有していない金属表面として理解される。本発明による方法は、したがって、好ましくは、言い換えると引き続き行われる塗装作業の基礎として機能することができる腐食保護層を作製する第一の、又は唯一の処理工程である。したがって、それは、予め作製された、例えばリン酸塩層などの腐食保護層の後処理を意味するものではないことが好ましい。
【0010】
本発明による方法の使用は、特に、アルミニウムから成る金属構成成分が処理される場合に有利であり、それは、後処理工程に起因する糸状腐食が大きく低減されるからである。
【0011】
前処理としての不動態化処理(化成処理)及び後処理による腐食保護及び接着促進効果は、本発明による方法において、工程ii)の組成物(A)に、その電気化学的標準電位E00(Me/Men+)が鉄の電気化学的標準電位E00(Fe/Fe2+)よりも大きい金属イオンを放出する水溶性無機化合物を添加することにより、特には、工程ii)の組成物(A)に、銅、ニッケル、コバルト、スズ、及び/又はビスマスから選択される金属イオンを放出する水溶性無機金属化合物を添加することにより、高めることができる。
【0012】
組成物(A)中に放出された金属イオンMen+の電気化学的標準電位E00(Me/Men+)は、元素形態の金属Meと最低安定酸化状態であるその金属カチオンMen+との間で標準状態下(T=20℃;イオン活量=1)にて電気化学平衡が存在する電気化学的電位である。当業者であれば、対応する標準電位を、M. Pourbaix: "Atlas of Electrochemical Equilibria in Aqueous Solutions,"
Pergamon, New York, 1966、を例とする技術文献から集めることができる。
【0013】
本発明による方法の工程iii)における後処理の、これに続いて金属表面に適用される有機コーティングの塗装接着及び腐食保護へのプラスの効果は、工程ii)の前処理溶液(不動態化処理溶液)における組成物(A)が、銅(II)イオンを放出する水溶性無機化合物を含有する本発明による方法において、特に著しい。
【0014】
亜鉛から成る表面に加えて、鉄から成る表面も少なくとも含むか、又は特には、鉄及びアルミニウムから成る表面も少なくとも含む金属複合体構造が処理される場合、銅、ニッケル、コバルト、スズ、及び/又はビスマスの元素のイオンから選択される金属イオン、特に銅(II)イオンを放出する水溶性無機金属化合物を工程ii)の組成物(A)が含有する本発明による好ましい方法の使用が特に有利である。
【0015】
工程iii)の後工程の水性組成物(B)に含有される少なくとも1つの芳香族窒素ヘテロ環を有する有機化合物として、対応する芳香族ヘテロ環の窒素ヘテロ原子に対してα位及び/又はβ位にて置換されたヘテロ環を用いることが好ましく、α位及び/又はβ位におけるその置換基は、−OR、−NRH、−COOX、−CHOR、−CHNRH、−CHCOOX、−CORから選択され、残基Rは、各々の場合にて、水素、又は炭素原子数4個以下のアルキルもしくはアルキレン基から選択され、残基Xは、各々の場合にて、水素、アルカリ金属、又は炭素原子数4個以下のアルキルもしくはアルキレン基から選択される。この種の置換の結果として、芳香族ヘテロ環は、ピックリングプロセスの結果として金属基材から化成層又は不動態化層へ組み込まれるか、又は前処理段階にてそのものとして含有され、基材へ接着する湿潤膜と共に後処理層へと移動する多価金属カチオンに対してのキレート化効果を追加で有する。
【0016】
工程iii)の組成物(B)中の好ましい芳香族ヘテロ環は、本発明による方法において、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、キノリン、及び/又はインドールから選択され;キノリンが特に好ましい。前述の置換基による窒素ヘテロ原子に対するα及び/又はβ位におけるこの選択肢のヘテロ環の対応する置換は、同様に、続いて適用される有機コーティングの塗装接着及び腐食保護を改善するという後処理段階iii)の効果に対して有利である。
【0017】
工程iii)の水性組成物(B)中の、少なくとも1つの窒素原子を含有する少なくとも1つの芳香族ヘテロ環を有する有機化合物の濃度は、組成物(B)中の少なくとも1つの窒素原子を含有する芳香族ヘテロ環の質量比率として計算して、好ましくは、少なくとも10ppm、特に好ましくは少なくとも100ppmであるが、5000ppmを超えず、特に好ましくは、1000ppmを超えない。組成物(B)中の芳香族ヘテロ環の質量比率は、ここで、置換基のない芳香族ヘテロ環構造単位で定められる質量比率のみに対応する。例えば、少なくとも1つの窒素原子を有するヘテロ環を含むポリマーである水溶性又は水分散性有機化合物の場合、ポリマーバックボーン中の窒素原子を有するすべての芳香族ヘテロ環の質量に関する総計のみが適用される。
【0018】
本発明による方法において、キレート形成置換基がアミノ、カルボキシル、及び/又はヒドロキシル基から選択されるキレート錯化剤を、工程iii)における後処理の組成物(B)に追加で含有させてよい。本発明の目的のための適切なキレート化剤は、特に、α‐、β‐、及びγ‐アミノ酸である。
【0019】
組成物(B)に追加で導入されるキレート化剤は、化成層又は不動態化層に含有される易水溶性金属塩の多価金属カチオンの錯体化を補助するものである。この作用により、続いて適用される有機コーティングの腐食剥離がさらに最小限に抑制される。
【0020】
工程iii)の組成物(B)中のキレート錯化剤の割合は、この目的のために、少なくとも10ppmと等しいことが好ましく、特に好ましくは、少なくとも50ppmであるが、1000ppm以下であることが好ましい。
【0021】
本発明による方法の工程i)において、処理される金属表面は、残留する油及びグリースが洗浄工程で除去されたものが好ましい。このことにより、同時に、再現可能な金属表面が作られ、続いて行われる工程ii)の化成処理及び工程iii)の後処理を含む工程に対して均一な質の層が確保される。この洗浄作業は、当業者に公知の市販されている従来の製品を用いたアルカリ性のものであることが好ましい。
【0022】
工程ii)及びiii)における水性組成物(A、B)の適用は、例えば、処理溶液への浸漬(浸漬法)、又はそれぞれの組成物のスプレー(スプレー法)によって行なってよい。これに関しての組成物の温度は、好ましくは、15から60℃の範囲であり、特に好ましくは、25から50℃の範囲である。処理に必要な持続時間は、個々の工程及び適用法の種類に応じて異なる。例えば、工程ii)では、クロム非含有組成物(A)との接触時間は、少なくとも30秒間、特には1分間が好ましい。しかし、本発明による方法の工程ii)における接触時間は、好ましくは10分間を超えるべきではなく、特に好ましくは5分間を超えるべきではない。工程iii)における水性組成物(B)との接触時間は、従来のリンス工程に対応するものであり、好ましくは、数秒間から数分間の範囲である。
【0023】
本発明による方法において、水、特には脱イオン水によるものが特に好ましいリンス工程を、工程ii)及び/又はiii)の前に追加で実施してよい。
【0024】
本発明による方法が、続いて浸漬法を用いて適用され、硬化される結合剤系との塗装接着の改善に特に適していることは明らかである。したがって、本発明による方法は、工程iii)に続いて、リンス及び/又は乾燥工程の介在の有無に関係なく、特に好ましくはリンス工程を介在させて、さらに好ましくは乾燥工程なしでリンス工程を介在させて、電着浸漬コーティング作業又は無電解自己析出浸漬コーティング作業(electroless autophoretic dip coating operation)が行われるという事実が好ましくは注目すべき点である。
【0025】
本発明による「浸漬コート」とは、浸漬法を用いて無電解、すなわち自己析出の形(autodeposited fashion)で金属表面に適用される有機ポリマーの水性分散液、及び外部電圧源の印加によって水相からの塗料によるコーティングが行われるものの両方を意味する。
【0026】
本発明によると、組成物(A、B)との接触の後、及びカソード電着浸漬コートを例とする浸漬コートによるコーティングの前に金属表面を乾燥させる作用は必要なく、実際、行わないことが好ましい。しかし、設備の停止時間の間に、自動車の車体又はその部品を例とする処理された金属表面が、本発明による薬剤を入れた槽と浸漬コーティング槽との間で空気と接触する場合、意図しない乾燥が起こってもよい。しかし、この意図しない乾燥は無害である。
【0027】
本発明は、さらに、上述の方法によって処理された金属基材も包含し、この金属基材の表面は、好ましくは20mg/m以上、及び好ましくは150mg/m以下のチタン又はジルコニウムの被覆を有する。工程ii)の組成物(A)が銅の金属カチオンを含有する場合、銅に基づいて100mg/m以下、好ましくは80mg/m以下であるが、少なくとも10mg/mである、銅の析出による被覆層が存在する金属基材が好ましい。
【0028】
続いて行われる多層系の適用による表面仕上げのための工業的プロセスにおける、このような金属基材の本発明による使用も、本発明に包含される。
【0029】
この基礎となる発明に従って処理された金属材料、構成成分、及び複合体構造は、さらに、プレフォームの製造、自動車生産における車体構築、造船業、建築業、及び建設セクター、並びに家庭電化製品及び電子機器筐体の製造にも用いられる。
【実施例】
【0030】
ジルコニウムのフルオロ錯体を含有する酸性不動態化溶液によって前処理された金属表面腐食保護特性の改善に対する本発明による方法の寄与を、標準化した腐食試験によって以下に示す。
【0031】
このために、冷間圧延鋼(CRS)、溶融亜鉛めっき鋼(HDG)、及びアルミニウム(6014GB)の金属板を、以下の工程に従って処理した:
i)以下の組成のアルカリ性洗浄剤を用いての、55℃、5分間の洗浄及び脱脂工程:
水道水中、3.0重量% Ridoline(登録商標)1574A;0.4重量% Ridosol(登録商標)1270(ヘンケル社(Henkel Co.))
ii)水道水によるリンス工程
iii)脱イオン水(κ<1μScm−1)によるリンス工程
iv)pHが4.0から5.0に調節され、750ppmのジルコニウム、100ppmの遊離フッ素含有量(Grano Toner(登録商標)38を使用;ヘンケル社)、及び所望に応じて20ppmのCuを含むジルコニウムベースの前処理溶液による、30℃、90秒間の処理による不動態化工程
v)所望に応じて行ってよい、250ppmの窒素含有芳香族ヘテロ環を含む水性組成物による、30℃、90秒間のリンス工程(後処理)
vi)脱イオン水(κ<1μScm−1)によるリンス工程。
【0032】
本発明に従って処理された金属板、及び比較板を、最後のリンス工程の後に圧縮空気で乾燥し、以下のカソード浸漬コートにより電着浸漬コーティングした:Cathoguard500(BASF社;カソード浸漬コート層厚さ:20μm、市販の膜厚測定機器を用いて非破壊測定)。次に、この塗装をオーブン中にて175℃で25分間焼付けた。
【0033】
板の処理は、個々の工程i)からvi)を順に実施する場合に、本発明に従うものである。工程v)を行わない板の前処理としての不動態化処理は、既存技術で公知の従来の前処理に相当しており、したがって、本発明の寄与を実証するための比較処理として用いられる。
【0034】
表1に、関連する前処理及び後処理の組成物と共に個々の実験を示す。
【0035】
【表1】

【0036】
鋼鉄基材では、前処理において銅(II)イオンを存在させなかった本発明による方法により、腐食保護特性が向上された(表2:E1、E3、E5をCE1と比較されたい)。前処理の組成物(A)に銅(II)イオンが存在する場合、それによって既に腐食が強く抑制されているため、塩水噴霧及び交互耐候試験(alternating climate test)に試験板を曝露した場合の追加の効果は、示した期間では見ることができない。
【0037】
【表2】

【0038】
銅(II)含有組成物(A)で処理した溶融亜鉛めっき鋼板上の浸漬コーティングの腐食浸透(corrosive infiltration)は、窒素原子を有する芳香族ヘテロ環含有組成物(B)での後処理により、大きく低減される(表3:E2、E4、及びE6をCE2と比較されたい)。
【0039】
【表3】

【0040】
腐食保護の改善はまた、本発明に従って処理したアルミニウム板でも見られる。しかし、銅(II)含有組成物(A)を用いる場合、後処理によってもたらされる明らかな改善は、糸状腐食試験でのみ見られる(表4:E2、E4、E6をCE2と比較されたい)。
【0041】
したがって、一般的に、本発明による腐食保護処理は、アルミニウムから成る部品に対して特に有利であることが明らかである(表4)。
【0042】
【表4】

【0043】
同様に、亜鉛表面だけでなく、鉄、又は鉄及びアルミニウムの表面も含む複合金属構造を、銅(II)含有組成物(A)を用いて本発明に従って処理することが好ましいことは、これに関して、鋼鉄の腐食が前処理によって既に強く抑制されていることから、及び続いての組成物(B)による後処理が鉄表面の不動態化の腐食特性をまったく低下させることなく亜鉛表面の腐食抑制を与えることから、明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面の腐食保護処理のための方法であって、その方法において、少なくとも以下の工程:
i)所望により行われる、前記金属表面を洗浄及び脱脂する工程;
ii)前記金属表面を、
a)Zr及び/又はTiの水溶性有機化合物、
b)フッ素イオンを放出する水溶性無機フッ素化合物、
を含有する酸性の水性組成物(A)と接触させることによって、前記金属表面を前処理として不動態化処理する工程;
iii)前記前処理した金属表面を水性組成物(B)と接触させることによって後処理する工程、
が順に実施され、
ここで、
工程iii)の前記水性組成物(B)は、少なくとも1つの芳香族ヘテロ環を有する少なくとも1つの有機化合物を含有し、前記芳香族ヘテロ環は、少なくとも1つの窒素原子を含むものである、
方法。
【請求項2】
工程ii)の組成物(A)が、その電気化学的標準電位E00(Me/Men+)が鉄の電気化学的標準電位E00(Fe/Fe2+)よりも大きい金属カチオン、好ましくは、銅、ニッケル、コバルト、スズ、及び/又はビスマスから選択される金属カチオン、特には銅(II)イオン、を放出する水溶性無機金属化合物をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程iii)の組成物(B)中の前記有機化合物のそれぞれの前記芳香族窒素ヘテロ環が、それぞれの前記芳香族ヘテロ環の窒素ヘテロ原子に対してα位及び/又はβ位にて置換されており、
前記α位及び/又はβ位における置換基は、−OR、−NRH、−COOX、−CHOR、−CHNRH、−CHCOOX、−CORから選択され、
前記の残基Rは、各々の場合にて、水素、又は炭素原子数4個以下のアルキルもしくはアルキレン基から選択され、前記の残基Xは、各々の場合にて、水素、アルカリ金属、又は炭素原子数4個以下のアルキルもしくはアルキレン基から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程iii)の組成物(B)中の前記有機化合物のそれぞれの前記芳香族ヘテロ環が、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、イミダゾール、キノリン、及び/又はインドールから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程iii)の前記水性組成物(B)中の、少なくとも1つの芳香族窒素ヘテロ環を有する有機化合物の濃度が、組成物(B)中の前記芳香族窒素ヘテロ環の質量比率として計算して、少なくとも10ppm、好ましくは100ppmであるが、5000ppm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程iii)の組成物(B)が、キレート錯化剤をさらに含有し、亜鉛イオンと対応する錯体の錯化定数logKが、10よりも大きく、好ましくは14よりも大きい、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程iii)の組成物(B)の前記キレート錯化剤が、アミン基とカルボキシル基の両方を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程iii)の組成物(B)中のキレート錯化剤の割合が、少なくとも10ppm、好ましくは少なくとも50ppmであるが、1000ppm以下である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
工程ii)及び/又はiii)の前にリンス工程を行う、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程iii)に続いて、リンス及び/又は乾燥工程の介在の有無にかかわらず、好ましくはリンス工程を介在させて、特に好ましくは乾燥工程なしでリンス工程を介在させて、自己析出浸漬コーティング作業(self-depositing dip coating operation)又は電着コーティング作業が行われる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記金属表面が、亜鉛から成る表面に加えて、鉄から成る表面も少なくとも含み、又は好ましくは鉄及びアルミニウムから成る表面も少なくとも含む複合体構造を表すものである、請求項2から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法で前処理された金属基材。

【公表番号】特表2013−500393(P2013−500393A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522084(P2012−522084)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060053
【国際公開番号】WO2011/012443
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000229597)日本パーカライジング株式会社 (198)
【Fターム(参考)】