説明

浸透式流下型貯留施設

【課題】貯留した雨水の下水道管網への排水能力を向上させることが可能となるとともに、貯留能力を早期回復させることが可能な浸透式流下型貯留施設を提供する。
【解決手段】地上から流下した雨水を貯留可能であるとともに、下水道管網に連通する下水管24と連通する初期処理槽6と、初期処理槽6から溢れ出た雨水が流入する貯留槽8と、貯留槽8から初期処理槽6への雨水の移動を許容し、且つ初期処理槽6から貯留槽8への雨水の移動を規制する貯留槽側移動許容手段32を備えた浸透式流下型貯留施設1であって、初期処理槽6及び貯留槽8の底部が、槽内の液体を表土層2中に浸透可能な初期処理槽側浸透部18及び貯留槽側浸透部30を有し、貯留槽側移動許容手段32は、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位よりも高いときに、貯留槽8から初期処理槽6への雨水の移動を許容する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、地上から流下した雨水等の液体を貯留し、この貯留した液体を地中に浸透及び下水管へ流出させる浸透式流下型貯留施設に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市部等では、降雨強度の大きな豪雨が生じた場合等に、大量の雨水によって生じる浸水被害を低減するための施設として、下水道管網に雨水を排水する排水システムが整備されている。
また、例えば、下水道管網の排水能力を超える豪雨に対しては、一般的に、豪雨時に降った大量の雨水のうち、排水能力を超えた雨水を地中に設けられた貯留施設に貯留する貯留浸透施設がある。
【0003】
このような構成の貯留浸透施設は、例えば、流域の各戸や道路の側溝等に、浸透枡や貯留浸透枡を配置して構成されており、この浸透枡や貯留浸透枡によって、雨水に対する流出抑制対策が講じられている。
しかしながら、例えば、図5に示すように、周囲を高台に囲まれた低地や窪地等、急峻な地形を有する地形では、計画通りに雨水を取水し、下水道管網に排水することが困難である。このため、他の部分よりも低い地域に雨水が溜まって浸水を惹起するおそれがあり、このような地形的に不利な地域が、浸水の常襲地帯となっている。なお、図5は、都市における浸水現象の一形態を示す図である。
【0004】
したがって、窪地等、他の部分よりも低い地域に対してスポット的な対策を講ずることが、大量の雨水に対する浸水対策として効果的であると考えられるが、一般的な流出抑制対策の手法である貯留対策は、都市域の敷地制約上、小規模な施設しか設置することができない場合が多い。このため、必要な規模を満足することが困難であるという問題が生じるおそれがある。
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載されているように、地上から流下した雨水を、地中に設けられた貯留施設に貯留するとともに、地中に浸透させる貯留浸透施設が提案されている。
【特許文献1】特開2006−322148号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている貯留浸透施設を含め、従来の貯留浸透施設では、地表面付近における浸透処理を考慮して構成されているため、降雨時に地表面付近の土壌が飽和した場合には、十分な浸透能力が得られないという問題が生じるおそれがある。また、地表面付近の土壌において、表土層の地下水位が上昇した場合には、雨水の浸透に必要な十分な水位差が得られず、十分な浸透能力が得られないという問題が生じるおそれがある。
【0006】
また、連続して発生する豪雨等、比較的短時間に、降雨強度のピークが複数回あるような降雨状態では、1降雨目で貯留した雨水の地表面付近への浸透、あるいは下水道管網への排水に時間を要するため、貯留能力が回復していない状態で、次のピークが発生した場合、貯留施設として十分な機能を発揮することが困難である。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、貯留した雨水の地中への浸透能力を向上させるとともに、貯留能力の早期回復が可能な浸透式流下型貯留施設を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、地中に配置され、地上から流下した液体を貯留し下水管へ流出させる浸透式流下型貯留施設であって、
地上から流下した液体を貯留可能であるとともに前記下水管と連通する初期処理槽と、前記初期処理槽から溢れ出た液体が流入する貯留槽と、前記貯留槽から前記初期処理槽への液体の移動を許容し且つ初期処理槽から貯留槽への液体の移動を規制する貯留槽側移動許容手段と、を備え、
前記初期処理槽及び前記貯留槽のうち少なくとも初期処理槽は、底部のうち少なくとも一部に、前記槽内の液体を前記浸透式流下型貯留施設が配置される透水層中に浸透可能な浸透部を有し、
前記貯留槽側移動許容手段は、前記貯留槽内の水位が前記初期処理槽内の水位よりも高いときに、前記貯留槽から前記初期処理槽への液体の移動を許容することを特徴とするものである。
【0008】
本発明によると、貯留槽内の水位が初期処理槽内の水位以下であるときに、初期処理槽から貯留槽への液体の移動が規制される。
このため、初期処理槽内の水位を高水位に維持することが容易となり、初期処理槽と下水管との水位差を得ることが容易となるため、初期処理槽内の液体を、効率的に下水管へ流出させることが可能となる。
【0009】
また、本発明によると、初期処理槽及び貯留槽のうち少なくとも初期処理槽が、底部のうち少なくとも一部に、槽内の液体を浸透式流下型貯留施設が配置される透水層中に浸透可能な浸透部を有している。
このため、少なくとも初期処理槽内の液体を、効率的に透水層中へ浸透させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設の浸透処理能力を向上させることが可能となるとともに、貯留能力の早期回復が可能となる。
【0010】
また、本発明によると、貯留槽内に液体が貯留されているとともに、初期処理槽内の水位が低下して、貯留槽内の水位が初期処理槽内の水位よりも高くなると、貯留槽内の液体が初期処理槽へ移動する。
このため、初期処理槽内の液体が下水管へ流出し、初期処理槽内の水位が低下しても、初期処理槽の水位が高水位に維持され、初期処理槽内の液体を、効率的に下水管へ流出させることが可能となる。
【0011】
次に、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記貯留槽は、前記初期処理槽から溢れ出た液体が流入する主貯留部と、当該主貯留部から溢れ出た液体が流入する副貯留部に区分され、
前記副貯留部から前記主貯留部への液体の移動を許容し、且つ前記主貯留部から前記副貯留部への液体の移動を規制する副貯留部側移動許容手段を備え、
前記副貯留部側移動許容手段は、前記副貯留部内の水位が前記主貯留部内の水位よりも高いときに、前記副貯留部から前記主貯留部への液体の移動を許容することを特徴とするものである。
【0012】
本発明によると、貯留槽が、主貯留部と副貯留部に区分されており、副貯留部内に液体が貯留されているとともに、主貯留部内の液体の水位が低下して、副貯留部内の水位が主貯留部内の水位よりも高くなると、副貯留部内の液体が主貯留部へ移動する。
このため、主貯留部内の液体が初期処理槽へ移動し、主貯留部内の水位が低下しても、主貯留部における液体の水位が高水位に維持され、主貯留部内の液体を、効率的に初期処理槽へ流出させることが可能となるため、浸透式流下型貯留施設の浸透処理能力を向上させることが可能となるとともに、貯留能力の早期回復が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、貯留した液体の地中への浸透能力を向上させることが可能となるとともに、貯留した液体を効率的に下水管へ流出させることが可能となるため、貯留した液体の下水道管網への排水能力を向上させることが可能となるとともに、浸透式流下型貯留施設の貯留能力を早期回復させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図1を参照して本実施形態の構成を説明する。
図1は本実施形態の浸透式流下型貯留施設1の構成の概念を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1は、地中(具体的には透水性の地層である表土層2中)に配置されており、泥溜め枡4と、初期処理槽6と、貯留槽8を備えている。
【0015】
泥溜め枡4は、例えば、地表面(路面等)に形成されたグレーチング10の下方に配置されて、地上から液体が流下する位置に配置されている。
また、泥溜め枡4は、泥溜め枡4と初期処理槽6とを区分する泥溜め枡側隔壁12を備えている。泥溜め枡側隔壁12の泥溜め枡4の底面からの高さは、地上から流下した液体、特に、降雨初期に路面等を流れてくる流出水中に含まれている、地表面に堆積している泥、有機物、重金属等の汚濁物質の、泥溜め枡4内への貯留量に応じた高さに設定されている。なお、図1中では、泥溜め枡4内へ貯留されている、大気中の浮遊物質等や汚濁物質等からなる貯留物を、符号14を付して表している。
【0016】
初期処理槽6は、泥溜め枡4から溢れ出た液体、具体的には、泥溜め枡4内から、泥溜め枡側隔壁12の上端部を越えて、初期処理槽6側へ移動した液体が、その内部へ流入する位置に配置されている。初期処理槽6の底面は、泥溜め枡4の底面よりも低くなっている。
初期処理槽6の底部は、全面に亘って、表土層2の上に多数の砕石16が充填されて形成されており、初期処理槽6内の液体を、地中、具体的には、表土層2中に浸透可能な初期処理槽側浸透部18を構成している。すなわち、初期処理槽6は、その底部に、初期処理槽6内の液体を、浸透式流下型貯留施設1が配置される表土層2中に浸透可能な浸透部を有している。
【0017】
また、初期処理槽6は、初期処理槽側隔壁20と、初期処理槽側移動許容手段22を備えている。
初期処理槽側隔壁20は、泥溜め枡側隔壁12の下方に配置されており、泥溜め枡側隔壁12と連続して形成されている。また、初期処理槽側隔壁20は、図外の下水道管網に連通する下水管24と初期処理槽6とを区分しており、その下端には、初期処理槽6と下水管24とを連通する初期処理槽側連通孔26が形成されている。下水管24は、表土層2中において、泥溜め枡4の底面よりも下方に配置されている。
【0018】
初期処理槽側移動許容手段22は、初期処理槽側隔壁20のうち、初期処理槽側連通孔26の上端付近に取り付けられて、初期処理槽側隔壁20の下端に配置されている。なお、本実施形態では、一例として、初期処理槽側移動許容手段22を、一方向にのみ開閉するフラップ弁によって形成した場合を説明する。
また、初期処理槽側移動許容手段22は、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態で、初期処理槽側連通孔26を開放した状態となり、初期処理槽6と下水管24とを連通させて、初期処理槽6から下水管24への液体の移動を許容する構成となっている。
【0019】
一方、初期処理槽側移動許容手段22は、下水道管網の排水能力が低下している状態等、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えていない状態で、初期処理槽側連通孔26を閉塞した状態となり、下水管24から初期処理槽6への液体の移動を規制して、初期処理槽6から下水管24への液体の流出を防止する構成となっている。
初期処理槽6から下水管24への液体の流出が防止されている状態では、泥溜め枡4から溢れ出た液体が、初期処理槽6へ貯留される。
【0020】
貯留槽8は、初期処理槽6から溢れ出た液体、具体的には、初期処理槽6内から、後述する貯留槽側隔壁28の上端部を越えて貯留槽8側へ移動した液体が、その内部へ流入する位置に配置されている。貯留槽8の底面は、初期処理槽6の底面よりも高くなっている。
貯留槽8の底部は、初期処理槽6の底部と同様、全面に亘って、表土層2の上に多数の砕石16が充填されて形成されており、貯留槽8内の液体を、地中、具体的には、表土層2中に浸透可能な貯留槽側浸透部30を構成している。すなわち、貯留槽8は、その底部に、貯留槽8内の液体を、浸透式流下型貯留施設1が配置される表土層2中に浸透可能な浸透部を有している。
【0021】
また、貯留槽8は、貯留槽側隔壁28と、貯留槽側移動許容手段32を備えている。
貯留槽側隔壁28は、初期処理槽6と貯留槽8とを区分しており、その下端には、貯留槽8と初期処理槽6とを連通する貯留槽側連通孔34が形成されている。すなわち、貯留槽側連通孔34は、初期処理槽側連通孔26よりも高い位置に配置されている。
貯留槽側隔壁28の初期処理槽6の底面からの高さは、泥溜め枡側隔壁12の初期処理槽6の底面からの高さよりも低くなっている。
【0022】
貯留槽側移動許容手段32は、貯留槽側隔壁28のうち、貯留槽側連通孔34の上端付近に取り付けられて、貯留槽側隔壁28の下端に配置されている。なお、本実施形態では、初期処理槽側移動許容手段22と同様に、一例として、貯留槽側移動許容手段32を、一方向にのみ開閉するフラップ弁によって形成した場合を説明する。
また、貯留槽側移動許容手段32は、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位よりも高いときに、貯留槽側連通孔34を開放した状態となり、貯留槽8と初期処理槽6とを連通させて、貯留槽8から初期処理槽6への液体の移動を許容する構成となっている。
【0023】
一方、貯留槽側移動許容手段32は、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位以下であるときに、貯留槽側連通孔34を閉塞した状態となり、初期処理槽6から貯留槽8への液体の移動を規制して、貯留槽8から初期処理槽6への液体の流出を防止する構成となっている。
貯留槽8から初期処理槽6への液体の流出が防止されている状態では、初期処理槽6から溢れ出た液体が、貯留槽8へ貯留される。
【0024】
次に、図1を参照しつつ、図2及び図3を用いて、上記の構成を備えた浸透式流下型貯留施設1の作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、浸透式流下型貯留施設1が、路面の地下(地中)に配置されているとともに、液体を雨水とした場合を例に挙げて説明する。
図2は、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1の設置例を示す図であり、図3は、図2のIII−III線断面図である。なお、図2及び図3中に示した破線の矢印は、雨水の移動経路を示している。
図2及び図3に示すように、この浸透式流下型貯留施設1は、初期処理槽側隔壁20が泥溜め枡側隔壁12と独立している点を除き、図1に示した浸透式流下型貯留施設1と、同様の概念によって構成されている。
【0025】
以下、降雨時において、浸透式流下型貯留施設1によって処理される雨水の状態について説明する。
豪雨時等、降雨時に大量の雨水が降ると、この大量の雨水が、グレーチング10を通過して泥溜め枡4へ流下する。この状態では、貯留槽側連通孔34は、貯留槽側移動許容手段32によって閉塞されている。
このとき、泥溜め枡側隔壁12の泥溜め枡4の底面からの高さは、降雨初期に路面等を流れてくる流出水中に含まれている汚濁物質の、泥溜め枡4内への貯留量に応じた高さに設定されているため、貯留物14は、泥溜め枡4内へ貯留される(図1参照)。
【0026】
泥溜め枡4内における雨水の水位が増加して、泥溜め枡4から雨水が溢れ出ると、この溢れ出た雨水は、泥溜め枡側隔壁12の上端部を越えて初期処理槽6側へ移動し、初期処理槽6内へ流入する。
このとき、初期処理槽側移動許容手段22は、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態で、初期処理槽側連通孔26を開放した状態となり、初期処理槽6と下水管24とを連通させて、初期処理槽6から下水管24への雨水の移動を許容する。
【0027】
このため、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態では、泥溜め枡4から初期処理槽6の内部へ流入した雨水は、初期処理槽6から下水管24へ流出して、図外の下水道管網へ排水される。
また、初期処理槽6の底面は、初期処理槽6内の液体を、表土層2中に浸透させる初期処理槽側浸透部18を構成しているため、表土層2の地下水の水位が初期処理槽6の底面を超えてない状態等、表土層2に大量の雨水が浸透していない状態では、初期処理槽6内の雨水を、効率的に表土層2中へ浸透させることが可能となる(図1参照)。
【0028】
初期処理槽6から下水管24への雨水の流出が継続された場合等、下水道管網の排水能力が低下し、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えていない状態となると、初期処理槽側移動許容手段22は、初期処理槽側連通孔26を閉塞した状態となり、初期処理槽6から下水管24への液体の流出が防止される。
初期処理槽6から下水管24への液体の流出が防止された状態では、泥溜め枡4から溢れ出た雨水が、初期処理槽6内に流入して貯留される。なお、この場合、表土層2中における地下水の水位が初期処理槽6の底面を超えている状態等、表土層2に大量の雨水が浸透している状態となると、初期処理槽6内の雨水の、表土層2中への浸透が中断される。
【0029】
泥溜め枡4から初期処理槽6の内部への雨水の流入が継続され、初期処理槽6内の水位が上昇して、貯留槽8の底面の高さを超えると、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位以下となる。
この状態で、さらに、初期処理槽6内の水位が上昇して、初期処理槽6から雨水が溢れ出ると、この溢れ出た雨水は、初期処理槽側隔壁20の上端部を越えて貯留槽8側へ移動し、貯留槽8内へ流入する。
【0030】
貯留槽8の底部は、貯留槽8内の液体を、表土層2中に浸透させる貯留槽側浸透部30を構成しているため、表土層2中における地下水の水位が貯留槽8の底面を超えてない状態等、表土層2に大量の雨水が浸透していない状態では、貯留槽8内の雨水を、効率的に表土層2中へ浸透させることが可能となる(図1参照)。
このとき、貯留槽側連通孔34は、貯留槽側移動許容手段32によって閉塞されているため、初期処理槽6から貯留槽8への雨水の移動が規制されており、初期処理槽6から貯留槽8へ雨水が流入するにつれて、貯留槽8内の水位が上昇する。
【0031】
ここで、下水道管網の排水能力が回復した場合等、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態となると、初期処理槽側連通孔26が開放され、初期処理槽6から下水管24へ雨水が流出し、初期処理槽6内の水位が低下する。
初期処理槽6内の水位が低下して、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位よりも高くなると、貯留槽側連通孔34が開放され、貯留槽8から初期処理槽6へ雨水が移動する。そして、初期処理槽6内の雨水と、貯留槽8内の雨水が、同じ水位を保持した状態で共に低下するため、初期処理槽6内の液体が、高水位に維持される。
【0032】
したがって、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位以下であるときに、初期処理槽6から貯留槽8への雨水の移動が規制される。
このため、初期処理槽6内の水位を高水位に維持することが容易となり、初期処理槽6と下水管24との水位差を得ることが容易となるため、初期処理槽6内の雨水を、効率的に下水管24へ流出させることが可能となる。
【0033】
その結果、浸透式流下型貯留施設1の排水能力を向上させることが可能となるとともに、浸透式流下型貯留施設1の貯留能力を早期回復させることが可能となる。
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、貯留槽8内に雨水が貯留されているとともに、初期処理槽6内の水位が低下して、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位よりも高くなると、貯留槽8内の雨水が初期処理槽6へ移動する。
【0034】
そして、初期処理槽6内の雨水が下水管24へ流出するにつれて、初期処理槽6内の水位は、貯留槽8内の水位と同じ高さを保持した状態で低下するため、初期処理槽6における雨水の水位が高水位に維持されるとともに、初期処理槽6において雨水が高水位に維持される時間が長期化される。
このため、初期処理槽6内の雨水を、効率的に初期処理槽6から下水管24へ流出させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設1の排水能力を向上させることが可能となるとともに、貯留能力の早期回復が可能となる。
【0035】
その結果、比較的短時間にピークが複数回あるような降雨状態であっても、浸透式流下型貯留施設1が、貯留施設として十分な機能を発揮することが可能となる。
さらに、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、初期処理槽6が、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態で、初期処理槽6から下水管24への液体の移動を許容する初期処理槽側移動許容手段22を備えている。
【0036】
このため、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態では、初期処理槽6へ流入した雨水が、初期処理槽6から下水管24へ流出する。
その結果、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えていない状態から、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態となった場合、すなわち、下水道管網の排水能力が回復した場合等に、浸透式流下型貯留施設1の貯留能力を、短時間で回復させることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、初期処理槽6の底部を、全面に亘り、表土層2の上に多数の砕石16を充填して形成することによって、初期処理槽6内の雨水を、表土層2中に浸透させる初期処理槽側浸透部18としている。
このため、初期処理槽6内の雨水を、効率的に表土層2中に浸透させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設1の排水能力を向上させることが可能となるとともに、浸透式流下型貯留施設1の貯留能力を早期回復させることが可能となる。
【0038】
また、降雨規模が小さい場合は、貯留槽8内に雨水を流入させることなく、初期処理槽6のみによって雨水を処理することが可能となる。
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、貯留槽8の底部を、全面に亘り、表土層2の上に多数の砕石16を充填して形成することによって、貯留槽8内の雨水を、表土層2中に浸透させる貯留槽側浸透部30としている。
【0039】
このため、貯留槽8内の雨水を、効率的に表土層2中に浸透させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設1の排水能力を向上させることが可能となるとともに、浸透式流下型貯留施設1の貯留能力を早期回復させることが可能となる。
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、初期処理槽6の下端に、初期処理槽6と下水管24とを連通する初期処理槽側連通孔26が形成されており、初期処理槽側移動許容手段22が、初期処理槽側連通孔26の上端付近に取り付けられて、初期処理槽側隔壁20の下端に配置されている。
【0040】
このため、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態で、初期処理槽6から下水管24へ流出する雨水を、効率的に下水管24へ流出させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設1の浸透処理能力を向上させることが可能となる。
また、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えていない状態では、下水管24からへ初期処理槽6の液体の移動が規制されるため、下水管24内を流れる雨水に泥等の異物が混在している場合であっても、この異物が初期処理槽6内へ侵入することを防止可能となる。
【0041】
また、初期処理槽6と下水管24との水圧の状態に応じて、初期処理槽6内の液体を自動的に下水管24へ移動させることが可能となるため、初期処理槽6内の雨水を、効率的に下水管24へ流出させることが可能となる。
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、貯留槽8が、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位よりも高いときに、貯留槽8から初期処理槽6への液体の移動を許容する貯留槽側移動許容手段32を備えている。また、貯留槽側隔壁28の下端に、貯留槽8と初期処理槽6とを連通する貯留槽側連通孔34が形成されており、貯留槽側移動許容手段32が、貯留槽側連通孔34の上端付近に取り付けられて、貯留槽側隔壁28の下端に配置されている。
【0042】
このため、貯留槽8内の水位が初期処理槽6内の水位よりも高いときに、貯留槽8から初期処理槽6へ移動する雨水を、効率的に初期処理槽6へ移動させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設1の浸透処理能力を向上させることが可能となる。
また、貯留槽8と初期処理槽6との水位の状態に応じて、貯留槽8内の液体を自動的に初期処理槽6へ移動させることが可能となるため、貯留槽8内の雨水を、効率的に初期処理槽6へ移動させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、初期処理槽側移動許容手段22、貯留槽側移動許容手段32を、それぞれ、一方向にのみ開閉するフラップ弁によって形成している。
このため、モータ等のアクチュエータや、作業員等による手動操作を必要とせずに、下水管24、初期処理槽6、貯留槽8の、それぞれの水圧または水位の状態に応じて、雨水の移動状態を制御することが可能となる。
その結果、浸透式流下型貯留施設1の構成を簡易化することが可能となるため、浸透式流下型貯留施設1のメンテナンス作業を簡易化することが可能となるとともに、浸透式流下型貯留施設1のメンテナンスコストを低減することが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態では、浸透式流下型貯留施設1の構成を、泥溜め枡4と、初期処理槽6と、貯留槽8を備えた構成としたが、これに限定されるものではなく、浸透式流下型貯留施設1の構成を、泥溜め枡4を備えておらず、地上から流下した雨水が、初期処理槽6へ流入する構成としてもよい。もっとも、本実施形態のように、浸透式流下型貯留施設1の構成を、泥溜め枡4を備えた構成とすることが、特に、降雨初期に路面等を流れてくる流出水中に含まれている汚濁物質が取り除かれた雨水を、下水道管網へ排水することが可能となるため、好適である。
【0045】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、初期処理槽6内の水圧が下水管24内の水圧を超えている状態で、初期処理槽6から下水管24への液体の移動を許容する初期処理槽側移動許容手段22を備えているが、これに限定されるものではなく、初期処理槽側移動許容手段22を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、初期処理槽側移動許容手段22を備えた構成とすることが、初期処理槽6と下水管24との水圧の状態に応じて、初期処理槽6内の液体を自動的に下水管24へ移動させることが可能となる。その結果、初期処理槽6内の雨水を、効率的に下水管24へ流出させることが可能となるため、好適である。
【0046】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、貯留槽8の底部を、初期処理槽6内の雨水を、表土層2中に浸透させる貯留槽側浸透部30としているが、これに限定されるものではなく、例えば、貯留槽8の底部をコンクリート等によって空隙や孔等の無い面とし、貯留槽8内の雨水が表土層2中へ浸透しない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、貯留槽8の底部を、貯留槽8内の雨水を、表土層2中に浸透させる貯留槽側浸透部30とすることが、貯留槽8内の雨水を効率的に表土層2中へ浸透させることが可能となるため、好適である。
【0047】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、初期処理槽6の底部を、全面に亘って、初期処理槽側浸透部18としているが、これに限定されるものではなく、例えば、初期処理槽6の底部の中心付近等、初期処理槽6の底部の一部を、初期処理槽側浸透部18としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、初期処理槽6の底部を、全面に亘って、初期処理槽側浸透部18とすることが、初期処理槽6内の雨水を効率的に表土層2中へ浸透させることが可能となるため、好適である。
【0048】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、貯留槽8の底部を、全面に亘って、貯留槽側浸透部30としているが、これに限定されるものではなく、例えば、貯留槽8の底部の中心付近等、貯留槽8の底部の一部を、貯留槽側浸透部30としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、貯留槽8の底部を、全面に亘って、貯留槽側浸透部30とすることが、貯留槽8内の雨水を効率的に表土層2中へ浸透させることが可能となるため、好適である。
【0049】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、初期処理槽側移動許容手段22、貯留槽側移動許容手段32を、それぞれ、フラップ弁によって形成したが、これに限定されるものではない。すなわち、初期処理槽側移動許容手段22、貯留槽側移動許容手段32を、例えば、モータ等のアクチュエータによって作動する構成の弁によって形成してもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、初期処理槽側移動許容手段22、貯留槽側移動許容手段32を、アクチュエータを必要とせずに作動することが可能なフラップ弁によって形成することが、浸透式流下型貯留施設1の構成を簡易化することが可能となるため、好適である。また、初期処理槽側移動許容手段22、貯留槽側移動許容手段32を、それぞれ、逆止弁によって形成してもよい。
【0050】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、初期処理槽側隔壁20の下端に、初期処理槽側連通孔26が形成されており、初期処理槽側移動許容手段22が、初期処理槽側連通孔26の上端付近に取り付けられて、初期処理槽側隔壁20の下端に配置されている構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、初期処理槽側連通孔26を初期処理槽側隔壁20の中心付近に形成し、初期処理槽側移動許容手段22が、初期処理槽側連通孔26の上端付近に取り付けられて、初期処理槽側隔壁20の中心付近に配置されている構成としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、初期処理槽側連通孔26が初期処理槽側隔壁20の下端に形成され、初期処理槽側移動許容手段22が初期処理槽側隔壁20の下端に配置されている構成とすることが、初期処理槽6から下水管24へ流出する雨水を、効率的に下水管24へ流出させることが可能となるため、好適である。
【0051】
さらに、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、貯留槽側隔壁28の下端に、貯留槽側連通孔34が形成されており、貯留槽側移動許容手段32が、貯留槽側連通孔34の上端付近に取り付けられて、貯留槽側隔壁28の下端に配置されている構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、貯留槽側連通孔34を貯留槽側隔壁28の中心付近に形成し、貯留槽側移動許容手段32が、貯留槽側連通孔34の上端付近に取り付けられて、貯留槽側隔壁28の中心付近に配置されている構成としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、貯留槽側連通孔34が貯留槽側隔壁28の下端に形成され、貯留槽側移動許容手段32が貯留槽側隔壁28の下端に配置されている構成とすることが、貯留槽8から初期処理槽6へ移動する雨水を、効率的に初期処理槽6へ移動させることが可能となるため、好適である。
【0052】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1は、路面の地下に配置されるとともに、地上から流下する液体が、雨水である場合について適用したが、これに限定されるものではなく、例えば、工場等の地下に配置されるとともに、地上から流下する液体が、冷却水等の工業用水である場合について適用してもよい。
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、泥溜め枡4の上方にのみ、グレーチング10によって形成された開口部が配置されている構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、貯留槽8の上方に、マンホール等の開閉可能な部材を設置してもよい。
【0053】
この場合、災害時に、例えば、初期処理槽6や貯留槽8に貯留されている雨水を汲み上げることにより、浸透式流下型貯留施設1を、災害対処用の井戸として機能させることが可能となるため、浸透式流下型貯留施設1に貯留されている雨水を、生活雑用水や、マンホールトイレ用水等に用いることが可能となる。
このため、浸透式流下型貯留施設1を、非常時用水の供給拠点として利用することが可能となる。
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、貯留槽8の底面が、初期処理槽6の底面よりも高くなっているが、これに限定されるものではなく、貯留槽8の底面が、初期処理槽6の底面と同じ高さであってもよい。
【0054】
次に、本発明の第二実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図4を参照して本実施形態の構成を説明する。
図4は本実施形態の浸透式流下型貯留施設1の構成の概念を示す図である。
図4に示すように、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1は、貯留槽8の構成を除き、上述した第一実施形態のものと同様の構成を有している。
貯留槽8は、主貯留部36と、副貯留部38に区分されている。
【0055】
主貯留部36は、初期処理槽6から溢れ出た液体、具体的には、初期処理槽6内から、貯留槽側隔壁28の上端部を越えて主貯留部36側へ移動した液体が、その内部へ流入する位置に配置されている。主貯留部36の底面は、初期処理槽6の底面よりも高くなっている。
また、主貯留部36は、貯留槽側隔壁28と、貯留槽側移動許容手段32を備えている。貯留槽側隔壁28及び貯留槽側移動許容手段32の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0056】
副貯留部38は、主貯留部36よりも容積が大きく、主貯留部36から溢れ出た液体、具体的には、主貯留部36内から、後述する副貯留部側隔壁40の上端部を越えて副貯留部38側へ移動した液体が、その内部へ流入する位置に配置されている。副貯留部38の底面は、主貯留部36の底面と同じ高さとなっている。
また、副貯留部38は、副貯留部側隔壁40と、副貯留部側移動許容手段42を備えている。
【0057】
副貯留部側隔壁40は、主貯留部36と副貯留部38とを区分しており、その下端には、主貯留部36と副貯留部38とを連通する副貯留部側連通孔44が形成されている。すなわち、副貯留部側連通孔44は、貯留槽側連通孔34と同じ高さに配置されている。
副貯留部側隔壁40の主貯留部36の底面からの高さは、貯留槽側隔壁28の主貯留部36の底面からの高さよりも低くなっている。
【0058】
副貯留部側移動許容手段42は、副貯留部側隔壁40のうち、副貯留部側連通孔44の上端付近に取り付けられて、副貯留部側隔壁40の下端に配置されている。なお、本実施形態では、初期処理槽側移動許容手段22と同様に、一例として、副貯留部側移動許容手段42を、一方向にのみ開閉するフラップ弁によって形成した場合を説明する。
また、副貯留部側移動許容手段42は、副貯留部38内の水位が主貯留部36内の水位よりも高いときに、副貯留部側連通孔44を開放した状態となり、主貯留部36と副貯留部38とを連通させて、副貯留部38から主貯留部36への液体の移動を許容する構成となっている。
【0059】
一方、副貯留部側移動許容手段42は、副貯留部38内の水位が主貯留部36内の水位以下のときに、副貯留部側連通孔44を閉塞した状態となり、主貯留部36から副貯留部38への液体の移動を規制して、副貯留部38から主貯留部36への液体の流出を防止する構成となっている。
副貯留部38から主貯留部36への液体の流出が防止されている状態では、主貯留部36から溢れ出た液体が、副貯留部38へ貯留される。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0060】
次に、図4を参照して、上記の構成を備えた浸透式流下型貯留施設1の作用・効果等を説明する。なお、以下の説明では、貯留槽8以外の作用・効果については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分を中心に説明する。
豪雨時等、降雨時に大量の雨水が降ると、この大量の雨水が、グレーチング10を通過して泥溜め枡4へ流下する。この状態では、副貯留部側連通孔44は、副貯留部側移動許容手段42によって閉塞されている。そして、泥溜め枡4内における雨水の水位が上昇して、泥溜め枡4から雨水が溢れ出ると、この溢れ出た雨水は、初期処理槽6内へ流入する。
【0061】
泥溜め枡4から初期処理槽6の内部への雨水の流入が継続され、初期処理槽6内の水位が上昇して、初期処理槽6から雨水が溢れ出ると、この溢れ出た雨水は、初期処理槽側隔壁16の上端部を越えて主貯留部36側へ移動し、主貯留部36内へ流入する。
初期処理槽6から主貯留部36への雨水の流入が継続され、主貯留部36内の水位が増加して、主貯留部36から雨水が溢れ出ると、この溢れ出た雨水は、貯留槽側隔壁28の上端部を越えて副貯留部38側へ移動し、副貯留部38内へ流入する。
【0062】
ここで、副貯留部側連通孔44は、副貯留部側移動許容手段42によって閉塞されているため、主貯留部36から副貯留部38への雨水の移動が規制されており、主貯留部36から副貯留部38へ雨水が流入するにつれて、副貯留部38内の水位が増加する。
ここで、下水道管網の排水能力が回復した場合等、初期処理槽6から下水管24へ雨水が流出し、主貯留部36から初期処理槽6へ雨水が移動して、主貯留部36内の水位が低下すると、主貯留部36内の雨水が初期処理槽6へ移動する。また、主貯留部36から初期処理槽6へ雨水が移動して、主貯留部36内の水位が低下すると、副貯留部38内の雨水が主貯留部36へ移動する。そして、初期処理槽6内の雨水、主貯留部36内の雨水及び副貯留部38内の雨水が、同じ水位を保持した状態で共に低下するため、初期処理槽6内の液体が、高水位に維持される。
【0063】
したがって、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、副貯留部38内の水位が主貯留部36内の水位よりも高いときに、副貯留部38から主貯留部36へ雨水が移動するため、主貯留部36内の雨水が初期処理槽6へ移動し、主貯留部36内の水位が低下して、副貯留部38内の水位が主貯留部36内の水位よりも高くなると、副貯留部38内の雨水が主貯留部36へ移動する。
【0064】
そして、主貯留部36内の雨水が初期処理槽6へ移動するにつれて、主貯留部36内の水位は、副貯留部38内の水位と同じ高さを保持した状態で低下するため、主貯留部36における雨水の水位が高水位に維持されるとともに、主貯留部36において雨水が高水位に維持される時間が長期化される。
その結果、主貯留部36内の雨水を、効率的に主貯留部36から初期処理槽6へ移動させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設1の排水能力を向上させることが可能となるとともに、貯留能力の早期回復が可能となる。
【0065】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1であれば、副貯留部側隔壁40の下端に、主貯留部36と副貯留部38とを連通する副貯留部側連通孔44が形成されており、副貯留部側移動許容手段42が、副貯留部側連通孔44の上端付近に取り付けられて、副貯留部側隔壁40の下端に配置されている。
このため、副貯留部38内の水位が主貯留部36内の水位よりも高いときに、副貯留部38から主貯留部36へ移動する雨水を、効率的に主貯留部36へ移動させることが可能となり、浸透式流下型貯留施設1の浸透処理能力を向上させることが可能となる。
また、副貯留部38と主貯留部36との水位の状態に応じて、副貯留部38内の液体を自動的に主貯留部36へ移動させることが可能となるため、副貯留部38内の雨水を、効率的に主貯留部36へ移動させることが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、副貯留部38内の水位が主貯留部36内の水位よりも高いときに、副貯留部38から主貯留部36への雨水の移動を許容する副貯留部側移動許容手段42を備えているが、これに限定されるものではなく、副貯留部側移動許容手段42を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、副貯留部側移動許容手段42を備えた構成とすることが、主貯留部36と初期処理槽6との水位の状態に応じて、主貯留部36内の液体を自動的に初期処理槽6へ移動させることが可能となる。その結果、主貯留部36内の雨水を、効率的に初期処理槽6へ移動させることが可能となるため、好適である。
【0067】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、副貯留部側隔壁40の下端に、副貯留部側連通孔44が形成されており、副貯留部側移動許容手段42が、副貯留部側連通孔44の上端付近に取り付けられて、副貯留部側隔壁40の下端に配置されている構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、副貯留部側連通孔44を副貯留部側隔壁40の中心付近に形成し、副貯留部側移動許容手段42が、副貯留部側連通孔44の上端付近に取り付けられて、副貯留部側隔壁40の中心付近に配置されている構成としてもよい。もっとも、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1のように、副貯留部側連通孔44が副貯留部側隔壁40の下端に形成され、副貯留部側移動許容手段42が副貯留部側隔壁40の下端に配置されている構成とすることが、副貯留部38から主貯留部36へ移動する雨水を、効率的に主貯留部36へ移動させることが可能となるため、好適である。
【0068】
また、本実施形態の浸透式流下型貯留施設1では、副貯留部38が、主貯留部36よりも容積が大きくなるように形成されているが、これに限定されるものではなく、副貯留部38が、主貯留部36と同じ容積となるように形成されていてもよく、副貯留部38が、主貯留部36よりも容積が小さくなるように形成されていてもよい。
その他の作用・効果については、上述した第一実施形態と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第一実施形態の浸透式流下型貯留施設の概念を示す図である。
【図2】浸透式流下型貯留施設の設置例を示す図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の第二実施形態の浸透式流下型貯留施設の概念を示す図である。
【図5】都市における浸水現象の一形態を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 浸透式流下型貯留施設
2 表土層
4 泥溜め枡
6 初期処理槽
8 貯留槽
10 グレーチング
12 泥溜め枡側隔壁
14 貯留物
16 砕石
18 初期処理槽側浸透部
20 初期処理槽側隔壁
22 初期処理槽側移動許容手段
24 下水管
26 初期処理槽側連通孔
28 貯留槽側隔壁
30 貯留槽側浸透部
32 貯留槽側移動許容手段
34 貯留槽側連通孔
36 主貯留部
38 副貯留部
40 副貯留部側隔壁
42 副貯留部側移動許容手段
44 副貯留部側連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に配置され、地上から流下した液体を貯留し下水管へ流出させる浸透式流下型貯留施設であって、
地上から流下した液体を貯留可能であるとともに前記下水管と連通する初期処理槽と、前記初期処理槽から溢れ出た液体が流入する貯留槽と、前記貯留槽から前記初期処理槽への液体の移動を許容し且つ初期処理槽から貯留槽への液体の移動を規制する貯留槽側移動許容手段と、を備え、
前記初期処理槽及び前記貯留槽のうち少なくとも初期処理槽は、底部のうち少なくとも一部に、前記槽内の液体を前記浸透式流下型貯留施設が配置される透水層中に浸透可能な浸透部を有し、
前記貯留槽側移動許容手段は、前記貯留槽内の水位が前記初期処理槽内の水位よりも高いときに、前記貯留槽から前記初期処理槽への液体の移動を許容することを特徴とする浸透式流下型貯留施設。
【請求項2】
前記貯留槽は、前記初期処理槽から溢れ出た液体が流入する主貯留部と、当該主貯留部から溢れ出た液体が流入する副貯留部に区分され、
前記副貯留部から前記主貯留部への液体の移動を許容し、且つ前記主貯留部から前記副貯留部への液体の移動を規制する副貯留部側移動許容手段を備え、
前記副貯留部側移動許容手段は、前記副貯留部内の水位が前記主貯留部内の水位よりも高いときに、前記副貯留部から前記主貯留部への液体の移動を許容することを特徴とする請求項1に記載した浸透式流下型貯留施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−285937(P2008−285937A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133319(P2007−133319)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(591091087)株式会社建設技術研究所 (18)
【Fターム(参考)】