説明

消しゴム

【課題】分子の両端に酸素の2重結合があり、かつ酸素の2重結合間は11個の炭素鎖からなっていて、消し屑組成中の塩化ビニル樹脂の分子間がリシノール酸系可塑剤により吸着された状態になり塩化ビニル樹脂の分子は連鎖的に摩耗し、まとまり性が付与される。
【解決手段】塩化ビニル樹脂と下式で示される構造の化合物とを必ず含有する消しゴム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛筆やシャープペンシル等の筆跡を消去するための消しゴムに関する物であり、更に詳細には適度な硬度があり消し屑が散らばりにくく、まとめる事ができる消しゴムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消しゴムは、基材樹脂として塩化ビニル樹脂、塩化ビニルの共重合体、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーなどを使用したものが知られている。塩化ビニル樹脂を基材樹脂とする消しゴムは、塩化ビニル樹脂と、塩化ビニル樹脂間の結合を緩めるための可塑剤、必要に応じてその他の添加剤を加えて混合したペースト状の塩化ビニル樹脂のゾルを加熱して作られる。
【0003】
鉛筆やシャープペンシルの筆跡は、紙との擦過で摩耗した鉛筆やシャープペンシルの芯の粉が紙面に付着したものである。この芯の摩耗粉が消しゴム表面や消し屑表面に付着することにより紙面から取り除かれて、筆跡が消去される。この時消しゴムが摩耗して消し屑が発生しないと、消しゴム表面が芯の摩耗粉で覆われて、それ以上芯の摩耗粉を付着することが出来ず、それ以上筆跡を消去することが出来ないばかりか、一旦消しゴムに付着した芯の摩耗粉が再度紙面に付着するため紙面を汚すといったことが起こる。このため、消しゴムは紙との擦過で摩耗して消し屑を出すことが必要である。
【0004】
消しゴムを紙との擦過で摩耗して消し屑を出すようにするためには、塩化ビニル樹脂粒子が完全に溶融しない温度で成型する必要がある。これは塩化ビニル樹脂が完全に溶融すると塩化ビニル樹脂が複雑に絡み合い殆ど摩耗しなくなるからである。消しゴムに適した成型温度は使用する塩化ビニル樹脂や可塑剤によって変化する。
【0005】
また、消し屑が細かく散らばってしまうと回収し捨てるのに手間がかかるため、できるだけ消し屑がまとまっている方が好ましい。従来、消しゴムのまとまり性が付与された消しゴムとして、特開2003−105150号公報には、塩化ビニル樹脂と、アセチルクエン酸トリブチルからなる可塑剤(A)と、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤から選ばれる少なくとも1種の可塑剤(B)とを含有した消しゴムが開示されている。
【特許文献1】特開2003−105150号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1の消しゴムは可塑剤にアセチルクエン酸トリブチル、トリメリット酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤を使用しているが、可塑剤の構造上塩化ビニル樹脂と可塑剤が吸着する部分が近接している為、消し屑のまとまり性は十分では無かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、塩化ビニル樹脂と下記一般式(数1)にて示される構造の化合物とを少なくとも含有する消しゴムを要旨とする。
【0008】
【数1】

【発明の効果】
【0009】
上記一般式(数1)にて示される構造の化合物は、分子の両端に酸素の2重結合があり、かつ酸素の2重結合間は11個の炭素鎖からなっているので、消し屑組成中の塩化ビニル樹脂の分子間がリシノール酸系可塑剤により吸着された状態になり、塩化ビニル樹脂の分子は連鎖的に摩耗するので、まとまり性が付与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
塩化ビニル系樹脂は、消しゴムの基材である。具体的には、ポリ塩化ビニルとしてゼオン121、同131(以上、日本ゼオン(株)製)、ビニカP410、同P440、同P510(以上、三菱化成ビニル(株)製)、リューロンTH−700、同TH−1000、同TH−1300(以上、東ソー(株)製)などが挙げられ、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としてビニカP500(三菱化成ビニル(株)製)、リューロンTC−806(東ソー(株)製)等が挙げられる。上記塩化ビニル系樹脂は単独でも2種以上併用してもよい。
【0011】
上記一般式(数1)にて示される構造の化合物は、基材である塩化ビニル樹脂間の結合を適度に緩めるために用い、本発明における消し屑のまとまり性付与剤であり、具体的には、メチルアセチルリシノレートとしてMAR−N(大八化学(株)製)、リックサイザーC101(伊藤製油(株)製)、ブチルアセチルリシノレートとしてリックサイザーC401(伊藤製油(株)製)が挙げられる。
【0012】
必要に応じて他の添加剤を併用することができる。
充填剤は、成型性の向上や増量の経済的利点により用いる。炭酸カルシウム、タルク、クレーなどが使用できる。具体的には炭酸カルシウムとしてソフトン3200、同2600、同2200、同1800、同1500、同1200、同1000(以上、備北粉化工業(株)製)、MSK−C、MSK−G、MSK−K、MSK−PO、カルファイン100、カルファイン200、カルファイン500、カーレックス、MT−100、MS−R、MS−100M、MS−600、MS−700、シーレッツ、MC−5、MC−K、MC−SII、MC−S5、MC−T、ウィスカル、軽質炭酸カルシウム(以上、丸尾カルシウム(株)製)、白艶華CC、同DD、同U、同O、同A、同AA、カルモス、白艶華CCR、同R06、同TDD、ホワイトンSSB(赤)、同SSB(青)、同SB(赤)、SB(青)、ホモカルD、ホモカルDM、ゲルトン50、白艶華PZ、ツネックスE、シルバーW、PC、(以上、白石工業(株)製)、ネオライトS、同SP、同SPR、サンライトSL−100、同SL−300、同SL−700、同SL−800、同SL−1000、同SL―1500、同SL−2000、同SL―2200、(以上、竹原化学工業(株)製)。R重炭、重炭N−35、重質炭酸カルシウム、スーパーS、スペシャルライスS、スーパーSS、スーパーSSS、スーパー4S、スーパー#1500、スーパー#1700、スーパー#2000、スーパー#2300、ナノックス#25、ナノックス#30(以上、丸尾カルシクム(株)製)が挙げられる。タルクとしてMタルク、Pタルク、PHタルク、PSタルク、TKタルク、TTタルク、Tタルク、STタルク(以上、竹原化学工業(株)製)、MS、M、SWS、ND、SW、SWA、SWB、SSS、SS、S(以上、日本タルク(株)製)、クレーとして、ASP200、ASP600、ASP400、(以上、林化成(株)製)が挙げられる。
【0013】
その他、消しゴムを着色する場合は酸化チタン、カーボンブラック等の顔料を用いる。また消しゴムに香りをつける場合は香料を用いる。具体的にはD−リモネン、α−ピネン、β-ピネン、ミルセン、ターピローネン、ターピネオール(ヤスハラケミカル(株)製)などが挙げられる。
【実施例】
【0014】
(実施例1)
ゼオン121(塩化ビニル樹脂、日本ゼオン(株)製) 25.0重量部
リックサイザーC101(メチルアセチルリシノレート、上記一般式(数1)にて示される構造の化合物、伊藤製油(株)製) 40.0重量部
ホワイトンSSB(赤)(炭酸カルシウム、白石工業(株)製) 35.0重量部
上記成分をミキサーにて混合し、減圧脱泡してペーストを作成。ペーストは長さ44ミリ、幅18ミリ、高さ12ミリの形状に成型できる金型にペーストを流し込み145℃で30分加熱して消しゴムを得た。
【0015】
(実施例2)
ゼオン121(塩化ビニル樹脂、日本ゼオン(株)製) 25.0重量部
リックサイザーC401(ブチルアセチルリシノレート、上記一般式(数1)にて示される構造の化合物、伊藤製油(株)製) 40.0重量部
ホワイトンSSB(赤)(炭酸カルシウム、白石工業(株)製) 35.0重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た
【0016】
(実施例3)
ゼオン121(塩化ビニル樹脂、日本ゼオン(株)製) 25.0重量部
MAR−N(メチルアセチルリシノレート、上記一般式(数1)にて示される構造の化合物、伊藤製油(株)製) 40.0重量部
ホワイトンSSB(赤)(炭酸カルシウム、白石工業(株)製) 35.0重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た
【0017】
(実施例4)
ゼオン121(塩化ビニル樹脂、日本ゼオン(株)製) 25.0重量部
リックサイザーC101(メチルアセチルリシノレート、上記一般式(数1)にて示される構造の化合物、伊藤製油(株)製) 40.0重量部
ホワイトンSSB(赤)(炭酸カルシウム、白石工業(株)製) 35.0重量部
D−リモネン(香料、ヤスハラケミカル(株)製) 0.1重量部
上記成分を実施例1と同様の方法を用い消しゴムを得た
【0018】
(比較例1)
実施例1において、リックサイザーC101を、TOTM(トリメリット酸系可塑剤、大八化学(株)製)とした他は実施例1と同様になして消しゴムを得た。
【0019】
(比較例2)
実施例1において、リックサイザーC101を、ATBC(クエン酸系可塑剤、旭化成ファインケム(株)製 8.0重量部、O−130P(エポキシ系可塑剤、旭電化(株)製)32.0重量部とした他は実施例1と同様になして消しゴムを得た。
【0020】
(比較例3)
実施例1において、リックサイザーC101を除き、ATBC(クエン酸系可塑剤、旭化成ファインケム(株)20.0重量部、O−130P(エポキシ系可塑剤、旭電化(株)製 20.0重量部とした他は実施例1と同様になして消しゴムを得た。
【0021】
以上の実施例1〜4及び比較例1〜3により得られた消しゴムについて、消し屑のまとまり性について確認試験を行った。
【0022】
消し屑のまとまり性
JISS6050(プラスチック字消し)の消字率試験に準じ、試験片を20往復させた。つまり試料を厚さ5mmの板状に切り、試験紙との接触部分を半径6mmの円弧に仕上げたものを試験片とした。そして試験片を紙に対して垂直に接触させ、試験片におもりとホルダの質量の和が0.5kgとなるようにおもりを載せ、150±10cm/minの速さで着色部を20往復摩消させた。この際、消し屑のうち最も大きな消し屑の重量を試験片が減量した重量で割った値に100を乗じたものを測定し、4回繰りかえした平均値を消し屑のまとまり率とした。
【0023】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂と下記一般式(数1)にて示される構造の化合物とを少なくとも含有する消しゴム。
【数1】


【公開番号】特開2010−12610(P2010−12610A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171890(P2008−171890)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】