説明

消化管痛の予防又は軽減剤

【課題】 消化管痛、特に過敏性腸症候群等の機能性消化管障害における消化管痛等を効果的に予防又は軽減でき、かつ副作用が少なく長期にわたって服用できる安全な薬剤を提供する。
【解決手段】ストレプトコッカス(Streptococcus)属又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌を有効成分として含む消化管痛の予防又は軽減剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化管痛(消化管内臓痛)を効果的に予防又は軽減する作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不規則な生活習慣、精神的ストレスなどの原因によって、過敏性腸症候群(以下、IBSともいう)等の機能性消化管障害の患者が増加している。機能性消化管障害とは、消化管に炎症、潰瘍等の器質的疾患が認められないにもかかわらず、消化管痛(消化管内臓痛)、腹部不快感、下痢又は便秘等の症状を呈する疾患である。例えば、IBSの主な症状は、慢性的な腹痛又は腹部不快感や、下痢又は便秘を来たしたり、下痢と便秘を繰り返したりする便通異常であるが、結腸組織に潰瘍などの器質的疾患の存在は認められない。
【0003】
また、IBS等の機能性消化管障害の病因の1つとして、内臓知覚過敏が挙げられている。「内臓知覚過敏」とは、消化管伸展刺激による知覚の閾値が低下して、より痛みを強く感じる状態である。つまりIBS患者では、消化管内腔からのより弱い刺激にて知覚が生じている。従って、IBSの治療において、内臓知覚過敏による内臓痛を軽減することは非常に重要である。IBS等の機能性消化管障害の症状の改善には時間がかかることが多いため、機能性消化管障害における消化管痛を効果的に軽減でき、しかも副作用が少ない薬剤が切望されている。
【0004】
非特許文献1には、ドキサントラゾールが、ラットの腸管知覚過敏に有効であることが開示されている。非特許文献2には、モルヒネが用量依存的にラットの腸管知覚過敏を改善したことが開示されている。非特許文献3には、N−[(1S)−1−(アミノカルボニル)−2,2−ジメチルプロピル]−3−(3−ヒドロキシ−3−メチルブチル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−ベンズイミダゾール−1−カルボキサミド(PF−03550096)がラットの腸管知覚過敏に有効であることが開示されている。しかしながら、これらの化合物は合成化合物であり、副作用等の問題があった。また、より高い消化管痛軽減作用を示す有効成分が望まれていた。
【0005】
乳酸菌及びその発酵物に痛みを軽減する作用があることが報告されている。例えば、特許文献1には、ラクトバチルス・ヘルベティカスを含む菌体により乳を発酵して得た発酵乳を有効成分とする筋肉痛抑制剤が開示されている。特許文献2には、乳酸菌から分泌される、抗炎症活性を含んでなる化合物が開示されている。特許文献3には、プロバイオティック細菌と発酵穀物を含むIBSの治療に使用可能な組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、エンテロコッカス属に属する乳酸菌の水溶性抽出物が鎮痛作用を有することが開示されている。特許文献5には、ストレス軽減作用を有するラクトバチルス属微生物を含有する乳酸菌製剤が開示されている。特許文献6には、小麦発酵抽出物及び乳酸菌殺菌菌体が混合されている乳酸菌配合物が、免疫増強効果、鎮痛作用等を有することが開示されている。特許文献7には、ラクトバチルス・ロイテリの菌株を含む乳児疝痛を低減するための製品が開示されている。しかしながら、乳酸菌が機能性消化管障害における消化管痛に優れた効果を発揮するとの報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2007/023896号公報
【特許文献2】特表2006−519014号公報
【特許文献3】特表2009−509981号公報
【特許文献4】特開2002−249434号公報
【特許文献5】特開2008−212140号公報
【特許文献6】特開2010−6801号公報
【特許文献7】特開2010−202654号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Ohashi et al., J. Vet. Med. Sci. 69(12):1223-1228, 2007
【非特許文献2】Ohashi et al., J. Vet. Med. Sci. 70(1):43-49, 2008
【非特許文献3】Kikuchi et al., J Pharmacol Sci 106, 219-224 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、消化管痛、特に過敏性腸症候群等の機能性消化管障害における消化管痛等を効果的に予防又は軽減でき、かつ副作用が少なく長期にわたって服用できる安全な薬剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を重ね、ストレプトコッカス(エンテロコッカス)属の乳酸菌、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌が、それぞれTNBS誘発内臓痛モデルラットの腸管知覚過敏を改善する効果が高いことを見出した。中でも特に、ストレプトコッカス(エンテロコッカス)属の乳酸菌は、TNBS誘発内臓痛モデルラットの腸管知覚過敏を有意に改善することから、過敏性腸症候群における内臓痛等の消化管痛を効果的に予防又は軽減することができることを見出した。このストレプトコッカス(エンテロコッカス)属の乳酸菌による消化管痛の軽減作用は、例えば既存薬であるドキサントラゾール(上述した非特許文献1)等の腸管知覚過敏軽減作用よりも高いと考えられた。さらに、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌と共にビフィドバクテリウム(Bifidobacterium bifidum)属の乳酸菌、及びラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を投与することによっても、過敏性腸症候群における内臓痛等の消化管痛を顕著に軽減できることを見出した。前記乳酸菌は副作用が少ないため、長期的に摂取しても安全性が高いものである。このため前記乳酸菌を用いることにより、過敏性腸症候群等の患者の生活の質を副作用なく改善できることに想到した。
本発明者らは、上記知見に基づきさらに研究を重ね、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(12)に関する。
(1)ストレプトコッカス(Streptococcus)属又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌を有効成分として含むことを特徴とする消化管痛の予防又は軽減剤。
(2)消化管痛が、機能性消化管障害における消化管痛である前記(1)に記載の予防又は軽減剤。
(3)消化管痛が、過敏性腸症候群における内臓痛である前記(1)又は(2)に記載の予防又は軽減剤。
(4)消化管痛が、過敏性腸症候群における内臓知覚過敏による内臓痛である前記(1)〜(3)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(5)乳酸菌が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌である前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(6)ストレプトコッカス属の乳酸菌が、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)である前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(7)ストレプトコッカス属の乳酸菌が、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis) 129 BIO 3Bである前記(1)〜(6)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(8)さらに、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を含む前記(5)〜(7)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(9)乳酸菌が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌である前記(1)〜(4)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(10)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)である前記(1)〜(4)及び(9)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(11)ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) MM−2である前記(1)〜(4)及び(9)〜(10)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
(12)経口投与の剤形である前記(1)〜(11)のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【0012】
本明細書中においては、1984年以前の分類学においてストレプトコッカス(Streptococcus)属と分類されていた乳酸菌を、ストレプトコッカス(Streptococcus)属という(例えば、Schleifer,K.H. and R.Kilpper-Balz. 1984.Int.J.Syst.Bacteriol.34:31-34.参照)。このストレプトコッカス(Streptococcus)属の一部が、現在乳酸菌の分類に使用されている1984年以降の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される乳酸菌となった(例えば、Schleifer,K.H. and R.Kilpper-Balz. 1984.Int.J.Syst.Bacteriol.34:31-34(上記文献と同じ)参照)。例えば、本明細書中に記載されるストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3B等のストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)は、現在の分類学上エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)に分類される乳酸菌である。例えばストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3Bは、現在の分類学上では、エンテロコッカス・フェシウム129 BIO 3Bとされている。本発明においては、上記ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する乳酸菌として、現在乳酸菌の分類に使用されている1984年以降の分類学上、エンテロコッカス (Enterococcus)属に分類される乳酸菌を用いることが好ましい。
【0013】
本明細書中においては、1980年以前の分類学においてラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)に分類されていた乳酸菌を、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)という(例えば、Lauer,E.and O.Kandler. 1980.Zbl.Bakt.,I.Abt.Orig.C1:75-78.参照)。このラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の一部が、現在乳酸菌の分類に使用されている1980年以降の分類学上、ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)に分類される乳酸菌となった(例えば、Lauer,E.and O.Kandler. 1980.Zbl.Bakt.,I.Abt.Orig.C1:75-78.(上記文献と同じ)参照)。本明細書中に記載されるラクトバシラス・アシドフィルス KS−13(Lactobacillus acidophilus KS-13)等のラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、現在の分類学上ラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)に分類される乳酸菌である。
【0014】
乳酸菌の分類体系は1980年頃までは細胞形態、細胞配列、乳酸発酵形式、糖の資化性、DNA−DNA相同性などによって分類されていたが、現在では化学分類学的性質や16SrRNA遺伝子の塩基配列を用いた遺伝学的手法により、新規属の提案や既知属の再分類が活発に行われるようになったため、現在の分類学では、例えばストレプトコッカス・フェーカリス 129 BIO 3Bはエンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)に、ラクトバシラス・アシドフィルス KS−13(Lactobacillus acidophilus KS-13)はラクトバチルス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)に、それぞれ属している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過敏性腸症候群における内臓痛等の機能性消化管障害における消化管痛を効果的に軽減することができ、過敏性腸症候群等の機能性消化管障害の患者等の生活の質を向上させることができる。また、本発明の予防又は軽減剤は、長期間服用しても副作用がなく安全なものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置の一例を示す図である。
【図2】図2は、TNBS誘発内臓痛に対する乳酸菌の作用を調べる試験のタイムテーブルを示す図である。
【図3】図3は、ラットの痛み行動(α-position)を示す図である。
【図4】図4は、TNBS誘発内臓痛モデルラットにおける大腸の痛覚閾値への乳酸菌の効果を示す図である。
【図5】図5は、TNBS誘発内臓痛モデルラットにおける大腸の痛覚閾値への乳酸菌の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の消化管痛(消化管内臓痛)の予防又は軽減剤は、ストレプトコッカス(Streptococcus)属又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌を有効成分として含む。前記乳酸菌を有効成分とすることにより、消化管痛、特に胃、小腸、大腸等の消化管における痛みを効果的に軽減することができる。ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌、及びビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌は、それぞれ1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0018】
本発明の好ましい態様の1つは、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌を有効成分として含む消化管痛の予防又は軽減剤である。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌として、例えば、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・フェシウム(Streptococcus faecium)、ストレプトコッカス・ヒラエ(Streptococcus hirae)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)等の乳酸菌が挙げられる。中でも、本発明においては、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)が好適に用いられる。これにより、優れた内臓痛の予防又は軽減効果が得られる。より好ましくは、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis) 129 BIO 3Bを用いる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センター又は独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。また、例えばストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis) 129 BIO 3Bは、医薬部外品の新ビオフェルミンS錠(商品名、ビオフェルミン製薬社製)等の成分として含まれており、該錠剤等から通常行われる方法で精製することによっても入手可能である。
【0019】
本発明においては、本発明の効果を奏することになる限り、上記ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌以外にも、ビフィズス菌等の乳酸菌、糖化菌、酪酸菌等の菌を使用してもよい。例えば、Bifidobacterium longum、 B. breve、B. adolescentis、B. infantis、B.pseudolongum、B.thermophilum等のビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌;例えば、Lactobacillus casei、L. gasseri、L. plantarum、L. delbrueckii subsp bulgaricus、L. delbrueckii subsp lactis、L. fermentum、L. helveticus、L. johnsonii、L. paracasei subsp. paracasei、L. reuteri、L. rhamnosus、L. salivarius、L. brevis等のラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸桿菌;例えば、Leuconostoc mesenteroides等のリューコノストック(Leuconostoc)属、Lactococcus lactis、L. cremoris等のラクトコッカス(Lactococcus)属、Tetragenococcus halophilus等のテトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属、Pediococcus acidilactici、P. pentosaceus等のペディオコッカス(Pediococcus)属、Oenococcus oeni等のオエノコッカス(Oenococcus)属等の乳酸球菌;例えば、Bacillus subtilis、Bacillus mesentericus、Bacillus polyformenticus等のバシラス(Bacillus)属等の糖化菌;例えば、Bacillus coagulans等のバシラス(Bacillus)属等の有胞子性乳酸菌; 例えば、Bacillus toyoi、B.licheniformis、Clostridium butyricum等のバシラス(Bacillus)属、クロストリジウム(Clostridium)属等の酪酸菌;その他の有用菌が挙げられる。
これらの菌体は、例えばATCC又はIFOなどの機関や財団法人 日本ビフィズス菌センター又は独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターなどから容易に入手することができる。また、市販されているものを適宜使用することもできる。
【0020】
本発明の予防又は軽減剤がストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌以外の菌を含む場合には、さらに、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を含むことが好ましい。より好ましくは、さらに、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及びラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を含む。
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌としては、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)等が好ましい。より好ましくは、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)である。ラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌としては、ラクトバシラス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)等が好ましい。
【0021】
本発明の別の好ましい態様は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌を有効成分として含む消化管痛の予防又は軽減剤である。
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌として、上述したビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・サーモフィルム(Bifidobacterium thermophilum)等が挙げられる。中でも、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)が好ましく、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) MM−2がより好ましい。
本発明の予防又は軽減剤は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌以外にも、上述した乳酸菌、糖化菌、酪酸菌等の菌を含んでもよい。
【0022】
上記菌体は、公知の条件又はそれに準じる条件で培養することにより得ることができる。例えば、乳酸菌の場合は、通常、グルコ−ス、酵母エキス、及びペプトン等を含む液体培地で前記乳酸菌の1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気又は嫌気培養し、培養液から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。また、糖化菌の場合は、通常、肉エキス、カゼイン製ペプトン、塩化ナトリウム等を含む寒天培地で1種又は2種以上を通常約25〜45℃程度で約4〜72時間程度、好気培養し、培地から菌体を集菌し、洗浄し、湿菌体を得る。
【0023】
本発明において用いる乳酸菌としては、生菌が好ましいが、菌の処理物を用いてもよい。菌の処理物とは、乳酸菌に何らかの処理を加えたものをいい、その処理は特に限定されない。該処理物として具体的には、該菌体の超音波などによる破砕液、該菌体の培養液又は培養上清、それらを濾過又は遠心分離など固液分離手段によって分離した固体残渣などが挙げられる。また、細胞壁を酵素又は機械的手段により除去した処理液、トリクロロ酢酸処理又は塩析処理などして得られるタンパク質複合体(タンパク質、リポタンパク質、糖タンパク質など)又はペプチド複合体(ペプチド、糖ペプチド等)なども該処理物として挙げられる。さらに、これらの濃縮物、これらの希釈物又はこれらの乾燥物なども該処理物に含まれる。また、該菌体の超音波などによる破砕液、該菌体の培養液又は培養上清などに対し、例えば各種クロマトグラフィーによる分離などの処理をさらに加えたものも本発明における該処理物に含まれる。乳酸菌の死菌体も、本発明における該処理物に含まれる。前記死菌体は、例えば、酵素処理、約100℃程度の熱をかける加熱処理、抗生物質などの薬物による処理、ホルマリンなどの化学物質による処理、γ線などの放射線による処理などにより得ることができる。
【0024】
本発明において使用される乳酸菌は、乾燥物(菌体乾燥物)であってもよく、菌体乾燥物としては、シングルミクロンの菌体乾燥物が好ましい。菌体乾燥物とは、通常は乾燥された個々の菌体又は乾燥された菌体の集合物をいう。また、シングルミクロンとは、小数第1位を四捨五入して1〜10μmをいう。本発明に使用される乳酸菌として、シングルミクロンの菌体乾燥物を使用すると、製剤中の生菌率が上がるため、消化管痛の予防効果及び軽減効果がより高くなる。
【0025】
菌体乾燥物の好ましい製造方法について説明する。上記菌体を溶媒に分散して菌体液とする。溶媒は、当業界で用いられる公知の溶媒を用いてよいが、水が好ましい。また、所望によりエタノールを加えてよい。エタノールを加えることによって、最初にエタノールが気化し、ついで水が気化するため、段階的な乾燥が可能となる。さらに、菌体液は、懸濁液であってもよい。溶媒は上記で示したものと同じでよい。また、懸濁させる際、懸濁剤、例えばアルギン酸ナトリウム等を使用してもよい。
また、上記菌体液には、さらに保護剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、又は静電気防止剤など当業界で一般に用いられている添加剤を通常の配合割合で添加してもよい。
【0026】
上記菌体液を、菌体乾燥物を製造するために噴霧乾燥装置による乾燥操作に付する。噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できる微粒化装置を備えた噴霧乾燥装置が好ましい。非常に粒径の小さな噴霧液滴にすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなり、乾燥温風との接触が効率よく行われるため、生産性が向上する。
ここでシングルミクロンの液滴とは、噴霧液滴の粒径が小数第1位を四捨五入して1〜10μmであるものをいう。
【0027】
噴霧乾燥装置には、微粒化装置が、例えばロータリーアトマイザー(回転円盤)、加圧ノズル、又は圧縮気体の力を利用した2流体ノズルや4流体ノズルである噴霧乾燥装置が挙げられる。
噴霧乾燥装置は、シングルミクロンの噴霧液滴を形成できるものであれば、上記形式のいずれの噴霧乾燥装置であってもよいが、4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置を使用するのが好ましい。
【0028】
4流体ノズルを有する噴霧乾燥装置では、4流体ノズルの構造としては、気体流路と液体流路とを1系統として、これを2系統ノズルエッジにおいて対称に設けたもので、ノズルエッジに流体流動面となる斜面を構成している。
また、ノズルエッジの先端の衝突焦点に向かって、両サイドから圧縮気体と液体を一点に集合させる外部混合方式の装置がよい。この方式であれば、ノズル詰まりがなく長時間噴霧することが可能となる。
【0029】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置の1例について図1を用いてさらに詳しく説明する。4流路ノズルのノズルエッジにおいて、液体流路3又は4から湧き出るように出た菌体液が、気体流路1又は2から出た高速気体流により流体流動面5で薄く引き伸ばされ、引き伸ばされた液体はノズルエッジ先端の衝突焦点6で発生する衝撃波で微粒化させることにより、シングルミクロンの噴霧液滴7を形成する。
【0030】
圧縮気体としては、例えば、空気、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガス等を用いることができる。とくに、酸化されやすいもの等を噴霧乾燥させる場合は、炭酸ガス、窒素ガス又はアルゴンガス等の不活性ガスを用いるのが好ましい。
圧縮気体の圧力としては、通常約1〜15kg重/cm、好ましくは約3〜8kg重/cmである。
ノズルにおける気体量は、ノズルエッジ1mmあたり、通常約1〜100L/分、好ましくは約10〜20L/分である。
【0031】
通常、その後、乾燥室において、その噴霧液滴に乾燥温風を接触させることで水分を蒸発させ菌体乾燥物を得る。
乾燥室の入り口温度は、通常約2〜400℃、好ましくは約5〜250℃、より好ましくは約5〜150℃である。入り口温度が約200〜400℃の高温であっても、水分の蒸発による気化熱により乾燥室内の温度はそれほど高くならず、また、乾燥室内の滞留時間を短くすることにより、生菌の死滅や損傷をある程度抑えることができる。
出口温度は、通常約0〜120℃、好ましくは約5〜90℃、より好ましくは約5〜70℃である。
【0032】
4流路ノズルを有する噴霧乾燥装置では、液体流路が2流路あるので、異なった2種の菌体液又は菌体液と他の溶液若しくは懸濁液をそれぞれの液体流路から、同時に噴霧することにより、これらが混合された菌体乾燥物を製造できる。
例えば、異なった2種類の菌体の菌体液を同時に噴霧することにより、該2種の菌体を含有する菌体乾燥物が得られる。
【0033】
上記のように菌体乾燥物の粒径を小さくすることにより、生菌率が上がり、生菌率の多い製剤を提供できるという利点がある。
すなわち、シングルミクロンの菌体乾燥物を得るためにはシングルミクロンの噴霧液滴を噴霧するのが好ましい。噴霧液滴の粒径を小さくすると、噴霧液滴の単位質量あたりの表面積が大きくなるので、乾燥温風との接触が効率よく行われ、乾燥温風の熱による菌体の死滅又は損傷を極力抑えることができる。その結果として、生菌率が上がり生菌数の多い菌体乾燥物が得られる。
【0034】
本発明の消化管痛の予防又は軽減剤は、有効成分である乳酸菌と、他の成分とを混合することにより容易に製造される。他の成分は、本発明の効果を奏する限り特に限定されない。本発明の消化管痛の予防又は軽減剤は、医薬品、医薬部外品、飲食品、飼料等の形態として用いることができる。このような、本発明の消化管痛の予防又は軽減剤を含む医薬品も、本発明の1つである。
【0035】
本発明の消化管痛の予防又は軽減剤の剤形は、それぞれの成分の物理化学的性質、生物学的性質等を考慮して投与に好適な剤形とすればよい。医薬品の場合には、経口投与の剤形に適しており、内服剤とすることが好ましい。内服剤の剤形としては、例えば、錠剤、ペレット、細粒剤、散剤、顆粒剤、丸剤、チュアブル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤等が挙げられる。中でも、錠剤又は散剤が好ましい。さらに、それぞれの製剤は、前記乳酸菌の他に、賦形剤(例えば、乳糖、デンプン、結晶セルロース又はリン酸ナトリウム等)、結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン等)、崩壊剤(例えばデンプン、カルメロースナトリウム等)、滑沢剤(例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、マクロゴール、ショ糖脂肪酸エステル等)、安定剤(亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン等)、着色剤、賦香剤、光沢剤等、当業界で使用される公知の添加剤等を適宜含有していてもよい。ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌を有効成分とする場合、製剤中に含まれるストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌の量は、通常、最終製剤中に約0.0000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌と共に、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を用いる場合、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及びラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌の合計量を、最終製剤中に約0.0000001〜99質量%とすることが好ましい。
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌を必須の有効成分として含有する場合、製剤中に含まれるビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌の量は、通常、最終製剤中に約0.0000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。
【0036】
なお、前記乳酸菌は、一般に嫌気性で乾燥状態では空気又は酸素に対して弱く、また、高温と湿気に弱いため、組成物の製剤化に際してはできるだけ、不活性ガスの存在下又は真空、低温下で、処理することが好ましい。
【0037】
前記乳酸菌を含有する組成物を固形製剤にする場合、乾燥法によって、単に粉末同士を混合してもよいし、またその粉末を圧縮して顆粒にしたり、錠剤にしたりしてもよい。湿式法により顆粒、錠剤を製造する場合は、結合剤の水溶液を用いて練合、乾燥し、目的の固形剤とすることができる。さらに、この様にして得られた粉末又は顆粒をカプセルに充填して、カプセル剤とすることもできる。
【0038】
例えば、錠剤を製造する場合は、公知の打錠機を用いるとよい。該打錠機としては、例えば単発式打錠機又はロータリー型打錠機等が挙げられる。また、丸剤、チュアブル剤又はトローチ剤の製造方法は、公知の方法に従って行われてよく、例えば錠剤を製造するのと同じ手段で作ることができる。
【0039】
微量の有効成分(前記乳酸菌)を大量の他の粉末と混合し均一な混合物を得るためには、いわゆる段階的混合法を採るのがよい。例えば、有効成分をその100〜200容量倍の粉末と混合して均一な粉末を得、これを残りの粉末と混合すると均一な粉末を得ることができる。
含水物からの乾燥には、L−乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥などの手段をとることができる。乳酸菌の乾燥菌体を得るには、適当な安定剤、例えばグルタミン酸モノナトリウム塩、アドニトールなどを加えた中性の緩衝液に菌を懸濁させておき、自体公知の方法で乾燥することもできる。
【0040】
本発明において、有効成分である乳酸菌の投与量は、例えばストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌であれば、生菌を用いる場合には、生菌の菌数にして通常約10〜1011個/大人/回、好ましくは約10〜1011個/大人/回、より好ましくは約10〜1011個/大人/回である。この量を、通常1日1〜3回経口投与することが好ましい。投与するタイミングは特に限定されない。ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌を有効成分とする予防又は治療剤を用いる場合にも、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌の投与量は、生菌を用いる場合には、生菌の菌数にして通常約10〜1011個/大人/回、好ましくは約10〜1011個/大人/回、より好ましくは約10〜1011個/大人/回である。この量を、通常1日1〜3回経口投与することが好ましい。投与するタイミングは特に限定されない。
【0041】
ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌と共に、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を用いる場合、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及びラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌の投与量は、生菌を用いる場合には、それぞれの乳酸菌につき、生菌の菌数にして通常約10〜1011個/大人/回、好ましくは10〜1011個/大人/回、より好ましくは10〜1011個/大人/回である。各菌ごとにこの量を、通常1日1〜3回、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌と共に経口投与するのが効果的である。
ここで、製剤中の生菌数の測定は菌体によって異なるが、例えば日本薬局方外医薬品規格に記載されたそれぞれの菌体の定量方法により容易に測定できる。
【0042】
本発明においては、上記量の有効成分を哺乳類に連続投与することが好ましい。連続投与により、より優れた消化管痛の予防作用又は軽減作用を発揮することができる。例えば、本発明の予防又は軽減剤を、約1週間以上連続投与することが好ましく、約2週間以上連続投与することがより好ましく、約3週間以上連続投与することがさらに好ましい。上記乳酸菌は副作用がほとんどないことから、連続投与する場合の期間の上限は特に限定されない。
【0043】
ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌と共に、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を用いる場合、各乳酸菌の比率は特に限定されない。例えば、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌の生菌数を1とした場合に、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌は、生菌数で0.00001〜100000程度とすることが好ましく、0.01〜100程度とすることがより好ましい。また、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌の生菌数を1とした場合に、ラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌は、生菌数で0.00001〜100000程度とすることが好ましく、0.01〜100程度とすることがより好ましい。ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌と共に、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及びラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を使用する場合、各乳酸菌を前記比率で投与することが好ましい。
【0044】
本発明の予防又は軽減剤は、消化管痛を効果的に軽減できる効果を奏することから、消化管痛を呈する胃腸障害又は消化管疾患を発症した個体(動物)、又は該胃腸障害又は消化管疾患を発症するおそれのある個体に好適に適用される。消化管痛には、消化管知覚過敏による消化管痛も含まれる。個体としてはヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル等の哺乳類が好ましく、特にヒトが好ましい。中でも、本発明の予防又は軽減剤は、消化管系の内臓に炎症、潰瘍等の器質的疾患が認められないにもかかわらず、消化管痛(消化管内臓痛)又は消化管知覚過敏を呈する胃腸障害又は消化管疾患、例えば機能性消化管障害における消化管痛の軽減又は予防に特に好適に用いられる。本発明の好ましい態様の1つは、機能性消化管障害における消化管痛の軽減又は予防剤である。
【0045】
上記機能性消化管障害として、例えば、食道由来機能性胸痛、機能性ディスペプシア、心窩部痛症候群、過敏性腸症候群、機能性腹痛症候群、機能性胆嚢障害、機能性胆道・オッディ括約筋障害、機能性膵・オッディ括約筋障害、機能性直腸肛門痛等が挙げられる。中でも、本発明の予防又は軽減剤は、過敏性腸症候群における内臓痛(消化管痛)の予防又は軽減剤として好適に用いられる。
【0046】
本発明の予防又は軽減剤は、例えば、過敏性腸症候群又はそのおそれのある個体(動物)に特に好適に適用することができる。中でも、過敏性腸症候群を発症した個体が特に好適である。また、過敏性腸症候群を発症していない個体であっても、本発明の予防又は軽減剤を例えば連続投与することにより、その発症を予防することができる。
【0047】
本発明の予防又は軽減剤は、過敏性腸症候群における腸管知覚過敏を効果的に改善することができる。このため過敏性腸症候群における内臓痛の予防、改善又は治療に有効なものであり、投与の方法も簡単で、しかも副作用がほとんどないものである。
【0048】
本発明の予防又は軽減剤は、上述した医薬品として用いることができるほか、機能性食品、特定保健用食品又はドリンク剤などの飲食品に用いることができるものである。本発明の予防又は軽減剤を含む消化管痛の予防又は軽減用飲食品組成物も、本発明の1つである。本発明に係る飲食品組成物を、消化管痛又は消化管知覚過敏がある哺乳動物、好ましくは機能性消化管障害又はそのおそれのあるヒトを含む哺乳動物に摂取させることにより、消化管痛を予防又は改善することができる。飲食品組成物中に含まれる有効成分であるストレプトコッカス(Streptococcus)属又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌の量は、通常、最終組成物中に約0.0000001〜99質量%の範囲から適宜選択して決定することができる。ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌と共に、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を用いる場合、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及びラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌の合計量を、最終組成物中に約0.0000001〜99質量%とすることが好ましい。これらの乳酸菌の配合比率等は、上述した医薬の場合と同様とすることが好ましい。
【0049】
本発明の予防又は軽減剤を飲食品組成物として用いる場合、その形態は特に限定されない。また、飲食品組成物は、自然流動食、半消化態栄養食若しくは成分栄養食、又はドリンク剤等の加工形態とすることもできる。さらに、本発明にかかる飲食品組成物は、アルコール飲料又はミネラルウォーターに用時添加する易溶性製剤としてもよい。より具体的には、本発明に係る飲食品組成物は、例えばビスケット、クッキー、ケーキ、キャンディー、チョコレート、チューインガム、和菓子などの菓子類;パン、麺類、米飯又はその加工品;清酒、薬用酒などの発酵食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセージ、マヨネーズなどの畜農食品;果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料、アルコール飲料、茶などの飲料等の形態とすることができる。
【0050】
また、本発明に係る飲食品組成物は、例えば、医師の食事箋に基づく栄養士の管理の下に、病院給食の調理の際に任意の食品に本発明の予防又は軽減剤又は飲食品組成物を加え、その場で調製した食品の形態で患者に与えることもできる。本発明の飲食品組成物は、液状であっても、粉末や顆粒などの固形状であってもよい。
【0051】
本発明に係る飲食品組成物は、食品分野で慣用の補助成分を含んでいてもよい。前記補助成分としては、例えば乳糖、ショ糖、液糖、蜂蜜、ステアリン酸マグネシウム、オキシプロピルセルロース、各種ビタミン類、微量元素、クエン酸、リンゴ酸、香料、無機塩などが挙げられる。
【0052】
本発明に係る飲食品組成物の摂取量は、摂取する哺乳動物の生活習慣病の状態、年齢、性別などによって異なるので、一概には言えないが、前記乳酸菌を、それぞれ上述した医薬品の場合と同様の量摂取させることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下実施例を示してさらに詳しく説明を行うが、本発明はこれによりなんら制限されるものではない。本実施例中、「%」は、特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0054】
<実施例1>
1.菌体の培養及び保存
Bifidobacterium bifidum G9−1(乳酸菌A)、Lactobacillus acidophilus KS−13(乳酸菌B)、Streptococcus faecalis 129 BIO 3B(乳酸菌C)及びBifidobacterium longum MM−2(乳酸菌D)それぞれの菌液の調製は以下のように行った。すなわち、乳酸菌A、乳酸菌B、乳酸菌C、及び乳酸菌Dの凍結保存菌株(いずれもビオフェルミン製薬社保存菌株)をそれぞれ37℃で24時間培養後、1%グルコース含GAM培地10mLにこの培養液を培地100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で24時間培養した。培養後、1%グルコース含GAM培地1000mLにこの培養液を培地100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間培養した。得られた培養菌液1000mLを遠心分離(2600×g、15分)し、菌体を回収した。回収した菌体はCa2+及びMg2+を含まないリン酸緩衝液生理食塩水(Dulbecco’s phosphate buffered saline Ca2+, Mg2+ free)(以下、PBSともいう)で3回洗浄後、30〜40mLのPBSに再度懸濁し、750μLずつマイクロチューブに分注し、遠心(2600×g、15分)後、上清を取り除き培養菌体として−80℃にて使用直前まで保存した。
【0055】
上記それぞれの保存培養菌体にPBSを750μL加え十分撹拌後、液中の生存菌数(生菌数)を測定した。そのときの菌数は下記表1に示すとおりであった。生菌数の測定は、日本薬局方外医薬品規格 ビフィズス菌の項及びラクトミンの項に記載の方法に従って行った。
【0056】
【表1】

【0057】
なおBifidobacterium bifidum G9−1株(乳酸菌A)、及びLactobacillus acidophilus KS−13株(乳酸菌B)、Streptococcus faecalis 129 BIO 3B株(乳酸菌C)は、医薬部外品の新ビオフェルミンS錠(商品名、ビオフェルミン製薬社製)等の成分として含まれており、該錠剤等から通常行われる方法で精製することによって入手可能である。Bifidobacterium longum MM-2(乳酸菌D)は、日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8(郵便番号292-0818)の独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センターに寄託されている(受付日:2009年9月17日、受託番号:NITE BP−818)。
【0058】
2.被験薬の調製
乳酸菌A、B、C及びDそれぞれの菌液のチューブにPBSを750μL加え十分撹拌して懸濁液を得た。乳酸菌A懸濁液527μLにPBS 11473μLを、乳酸菌B懸濁液767μLにPBS 10273μLを、乳酸菌C懸濁液766μLにPBS 9794μLを、乳酸菌D懸濁液400μLにPBS 11600μLをそれぞれ加え、十分撹拌し、乳酸菌A、B、C及びDのいずれかを含む4種の乳酸菌懸濁液を調製した。各調製液をそれぞれ被験薬A(乳酸菌A)、被験薬B(乳酸菌B)、被験薬C(乳酸菌C)、及び被験薬D(乳酸菌D)とし、37℃の水浴で30分間加温した後、1回につき各懸濁液600μL(10cfu)を動物に投与した。
【0059】
3.使用動物
実験には、Crl:CD(SD)系雄性ラット(5週齢、日本チャールス・リバー株式会社:入荷時)を用いた。
実験に用いる動物は、飼育ケージ(460mm×250mm×H200mm)で2〜3匹飼いとし、温度:20〜25℃、湿度:40〜70%、換気回数:13回以上/時間、照明時間:12時間(7:00〜19:00)の環境に調節された動物飼育室で飼育し、餌は固型飼料CRF−1(オリエンタル酵母株式会社)を自由摂取させた。飲水はフィルター濾過水を自由に摂取させた。
【0060】
4.使用薬物及び試薬
2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(2,4,6-trinitrobenzene sulfonic acid (TNBS))はFlukaより、Dulbecco’s phosphate buffered saline(PBS) Ca2+, Mg2+ free(PBS)はSigmaより、大塚生理食塩水は大塚製薬株式会社より、ソムノペンチルは共立製薬株式会社より、イソフルランはマイラン製薬株式会社より、エタノールは和光純薬工業株式会社よりそれぞれ購入した。
【0061】
5.群構成
試験に供した動物の群構成は、表2に示す通りである。Sham群とは、後述するTNBS誘発内臓痛モデルの作製において外科的処置(手術)のみ行い、TNBSを投与しなかった動物に、PBSを経口投与した群である。溶媒対照群とは、TNBS誘発内臓痛モデルにPBSを経口投与した群である。
被験薬群とは、TNBS誘発内臓痛モデルに、上記1.および2.で調製した被験薬A〜Dのいずれかを経口投与した群である。
【0062】
【表2】

【0063】
6.馴化
動物は導入後約1週間馴化し、実験に供した。
【0064】
7.被験薬の22日間連続経口投与試験
馴化後、動物に被験薬又は溶媒(PBS)を22日間連続で1日1回経口投与(1回につき600μLを投与)した。被験薬群においては、被験薬投与開始15日目に、後述する方法によりTNBSを投与し、TNBS誘発内臓痛モデルを作製した。TNBS誘発内臓痛モデル作製日は、TNBS投与後、動物が覚醒してから被験薬を経口投与した。また、内臓痛閾値(痛覚閾値)測定日は、内臓痛閾値測定3時間前に被験薬を経口投与した。
溶媒対照群においては、被験薬の代わりに溶媒を投与した以外は、被験薬群と同様にしてTNBS誘発内臓痛モデルを作製した。具体的には、溶媒投与開始15日目にTNBS誘発内臓痛モデルを作製した。TNBS誘発内臓痛モデル作製日は、TNBS投与後、動物が覚醒してから溶媒を経口投与した。また、内臓痛閾値測定日は、内臓痛閾値測定3時間前に溶媒を経口投与した。
【0065】
作製したTNBS誘発内臓痛モデルは、内臓痛閾値が正常動物に比べて有意に低下しており、過敏性腸症候群における内臓知覚過敏のモデル動物として使用されている(例えば、Ohashi et al., J. Vet. Med. Sci. 69(12):1223-1228, 2007、Ohashi et al., J. Vet. Med. Sci. 70(1):43-49, 2008、Kikuchi et al., J Pharmacol Sci 106, 219-224 (2008)等)。
【0066】
Sham群については、動物に溶媒(PBS)を22日間連続で1日1回経口投与した。溶媒投与開始15日目にTNBS誘発内臓痛モデルの作製において外科的処置のみを行った。この外科的処置を行った日には、動物が覚醒してから溶媒を経口投与した。また、内臓痛閾値測定日は、内臓痛閾値測定3時間前に溶媒を経口投与した。
【0067】
TNBS誘発内臓痛に対する乳酸菌の作用を調べる試験のタイムテーブルを、図2に示す。図2においては、被験薬を投与する場合が例として示されているが、溶媒対照群においては、被験薬の代わりに溶媒を投与した。また、Sham群においては、被験薬の代わりに溶媒を投与し、かつTNBSの投与を行わなかった。
【0068】
8.TNBS溶液の調製
TNBS(1M、1mL)は室温にて溶解させ、50mg/kgの用量になるよう30%エタノール溶液で希釈し、1頭当たり0.5mL(0.5mL/head)の投与量とした。TNBS溶液は、用時調製した。
【0069】
9.TNBS誘発内臓痛モデルの作製
TNBS誘発内臓痛モデルの作製には、16−18時間絶食させた動物を用いた。ソムノペンチル(50mg/kg、腹腔内投与(i.p.))麻酔下で、術部を剪毛後、腹部正中を切開し、開復部から盲腸を体外に露出させた。回盲腸より約1cm肛門側の近位結腸にTNBSの30%エタノール溶液を50mg/kgの用量で注入した。TNBS溶液が盲腸に逆流しないように注意し、消化管を腹腔内に戻し縫合した。
Sham群については、TNBS溶液を投与しなかった以外は、上記と同様の処置を行った。
【0070】
10.内臓痛閾値(痛覚閾値)の測定
被験薬投与開始21日目に動物を一晩絶食させた。内臓痛閾値の測定には16−18時間絶食させた動物を用い、測定(バルーン伸展刺激)の3時間前に被験薬の22日目の投与を行った。測定は覚醒下で行い、5cmのラテックスバルーン(オカモト社製)をポリエチレンチューブの端に付けたカニューレを肛門より、先端から10cmまで挿入した。挿入から30分後、バロスタット(G&J社製、Canada)装置を用い、30秒に5mmHgの割合で最大70mmHgまで伸展刺激を加えた。動物が痛み行動(alpha-position)を示したバルーン内圧を内臓痛閾値(痛覚閾値)とした。痛み行動(alpha-position)については、Neurosci Lett. 1988, 246: 73-76の記載に従って評価した。すなわち、図3a〜cに示すごとく、ラットが痛みを感じるとき、痛みを感じる側の尾の方に顔を向け、半円を描くような形になり、顔を向けた側の後肢を内捻する行動を示す。このような行動を示したときに、痛み行動を示すと判定した。
【0071】
11.統計解析方法
データは平均値±標準誤差で示し、群間の有意差検定にはMann-WhitneyのU検定を用いた。統計処理は統計解析アドインソフト「エクセル統計2008」(株式会社社会情報サービス社製)を用い、危険率(P値)が0.05以下で有意差有りと判定した。
【0072】
結果を、表3及び図4に示す。図4に示すデータは、各群(それぞれn=8)の平均値±標準誤差(SEM)で表される。図4中、「*」は、有意差があることを示す。
【0073】
【表3】

【0074】
Sham群は、TNBSによる内臓知覚過敏が誘発されていない対照群である。Sham群では、内臓痛閾値は44.4mmHgであった。溶媒対照群(Vehicle)では、内臓痛閾値(痛覚閾値)は33.8mmHgであった。これに対して、乳酸菌A、乳酸菌B、乳酸菌C及び乳酸菌Dをそれぞれ投与した群においては、いずれも溶媒対照群と比較して内臓痛閾値が高くなり、内臓痛が軽減されていた。中でも、乳酸菌C投与群及び乳酸菌D投与群では、内臓痛が効果的に軽減された。特に乳酸菌C(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B)投与群では、内臓痛閾値(痛覚閾値)は42.5mmHgであり、溶媒対照群に対して内臓痛閾値が有意に高かった。
また、乳酸菌C投与群では、内臓知覚過敏が減少し、Sham群の内臓痛閾値の約96%まで内臓痛閾値が回復していた。この内臓痛閾値の改善は、例えば、Ohashi et al., J. Vet. Med. Sci. 69(12):1223-1228, 2007で報告されているドキサントラゾール、Ohashi et al., J. Vet. Med. Sci. 70(1):43-49, 2008で報告されているモルヒネ、及びKikuchi et al., J Pharmacol Sci 106, 219-224 (2008)で報告されているPF−03550096の内臓痛閾値改善効果よりも高いと考えられた。
このことから、Streptococcus faecalis 129 BIO 3Bには、過敏性腸症候群における内臓痛等の機能性消化管障害における消化管痛を軽減させる優れた作用があることが分かった。
【0075】
<実施例2>
1.菌体の培養及び保存
Bifidobacterium bifidum G9−1(乳酸菌A)、Lactobacillus acidophilus KS−13(乳酸菌B)及びStreptococcus faecalis 129 BIO 3B(乳酸菌C)菌液の調製は以下のように行った。すなわち、乳酸菌A、乳酸菌B及び乳酸菌Cの凍結保存菌株(いずれもビオフェルミン製薬社保存菌株)をそれぞれ37℃で24時間培養後、1%グルコース含GAM培地10mLにこの培養液を培地100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で24時間培養した。培養後、1%グルコース含GAM培地1000mLにこの培養液を培地100に対して1の割合(容量比)で接種し、37℃で18時間培養した。得られた培養菌液1000mLを遠心分離(2600×g、15分)し、菌体を回収した。回収した菌体は、Ca2+及びMg2+を含まないリン酸緩衝液生理食塩水(Dulbecco’s phosphate buffered saline Ca2+, Mg2+ free)(PBS)で3回洗浄後、30〜40mLのPBSに再度懸濁し、750μLずつマイクロチューブに分注し、遠心(2600×g、15分)後、上清を取り除き培養菌体として−80℃にて使用直前まで保存した。
【0076】
上記それぞれの保存培養菌体にPBSを750μL加え十分撹拌後、液中の生存菌数(生菌数)を測定したときの菌数は下記表4に示すとおりであった。生菌数の測定は、日本薬局方外医薬品規格 ビフィズス菌の項及びラクトミンの項に記載の方法に従って行った。
【0077】
【表4】

【0078】
2.被験薬の調製
乳酸菌A、B及びCそれぞれの菌液のチューブにPBSを750μL加え十分撹拌して懸濁液を得た。PBS 10252μL、乳酸菌A懸濁液466μL、乳酸菌B懸濁液741μL及び乳酸菌C懸濁液541μLを混ぜ、3種の乳酸菌を含む懸濁液を調製し、十分撹拌した。本調製液を被験薬とし、37℃の水浴で30分間加温した後、1回につき600μL(各菌10cfu、合計3×10cfu)を動物に投与した。
【0079】
3.使用動物
実験には、Crl:CD(SD)系雄性ラット(5週齢、日本チャールス・リバー株式会社:入荷時)を用いた。
実験に用いた動物は、飼育ケージ(460mm×250mm×H200mm)で2〜3匹飼いとし、温度:20〜25℃、湿度:40〜70%、換気回数:13回以上/時間、照明時間:12時間(7:00〜19:00)の環境に調節された動物飼育室で飼育し、餌は固型飼料CRF−1(オリエンタル酵母株式会社)を自由摂取させた。飲水はフィルター濾過水を自由に摂取させた。
【0080】
4.使用薬物及び試薬
実施例1と同じものを使用した。
【0081】
5.群構成
試験に供した動物の群構成は、表5に示す通りである。溶媒対照群とは、TNBS誘発内臓痛モデルにPBSを経口投与した群である。被験薬投与群とは、TNBS誘発内臓痛モデルに、上記1.および2.で調製した被験薬を経口投与した群である。
【0082】
【表5】

【0083】
6.馴化
動物は導入後約1週間馴化し、実験に供した。
【0084】
7.被験薬の22日間連続経口投与試験
馴化後、動物に被験薬又は溶媒(PBS)を22日間連続で経口投与した。被験薬群においては、被験薬投与開始15日目に、実施例1と同様にしてTNBSを投与し、TNBS誘発内臓痛モデルを作製した。TNBS誘発内臓痛モデル作製日は、TNBS投与後、動物が覚醒してから被験薬を経口投与した。また、内臓痛閾値(痛覚閾値)測定日は、内臓痛閾値測定3時間前に被験薬を経口投与した。
溶媒対照群においては、被験薬の代わりに溶媒を投与した以外は、被験薬群と同様にしてTNBS誘発内臓痛モデルを作製した。具体的には、溶媒投与開始15日目にTNBS誘発内臓痛モデルを作製した。TNBS誘発内臓痛モデル作製日は、TNBS投与後、動物が覚醒してから溶媒を経口投与した。また、内臓痛閾値測定日は、内臓痛閾値測定3時間前に溶媒を経口投与した。
試験のタイムテーブルを、図2に示す。図2においては、被験薬を投与する場合が例として示されているが、溶媒対照群においては、被験薬の代わりに溶媒を投与した。
【0085】
8.TNBS溶液の調製
実施例1と同様にして、TNBS溶液を用時調製した。
【0086】
9.TNBS誘発内臓痛モデルの作製
TNBS誘発内臓痛モデルの作製は、実施例1と同様に行った。
【0087】
10.内臓痛閾値(痛覚閾値)の測定
実施例1と同様の方法で、内臓痛閾値(痛覚閾値)を測定した。
【0088】
11.統計解析方法
実施例1と同様の方法で、統計処理を行った。
【0089】
結果を、表6及び図5に示す。図5に示すデータは、各群(それぞれn=8)の平均値±標準誤差(SEM)で表される。図5中、「*」は、有意差があることを示す。図5中、「Vehicle」は、溶媒対照群であり、「被験薬」は被験薬投与群である。
【0090】
【表6】

【0091】
溶媒対照群では、内臓痛閾値(痛覚閾値)は30.0mmHgであった。それに対して、被験薬投与群では、内臓痛閾値(痛覚閾値)の平均値が50.6mmHgであり、溶媒対照群と比較して有意に内臓痛閾値が高かった。この結果から、乳酸菌Cと共に乳酸菌A及び乳酸菌Bを含む被験薬は、内臓知覚過敏を軽減し、過敏性腸症候群における内臓痛を効果的に軽減できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、消化管痛、特に過敏性腸症候群等の機能性消化管障害における内臓痛の予防又は軽減に有用である。
【符号の説明】
【0093】
1、2 圧縮気体が供給される気体流路
3、4 被乾燥体を含む液体が供給される液体流路
5 流体流動面
6 衝突焦点
7 噴霧液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレプトコッカス(Streptococcus)属又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌を有効成分として含むことを特徴とする消化管痛の予防又は軽減剤。
【請求項2】
消化管痛が、機能性消化管障害における消化管痛である請求項1に記載の予防又は軽減剤。
【請求項3】
消化管痛が、過敏性腸症候群における内臓痛である請求項1又は2に記載の予防又は軽減剤。
【請求項4】
消化管痛が、過敏性腸症候群における内臓知覚過敏による内臓痛である請求項1〜3のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項5】
乳酸菌が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属の乳酸菌である請求項1〜4のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項6】
ストレプトコッカス属の乳酸菌が、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis)である請求項1〜5のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項7】
ストレプトコッカス属の乳酸菌が、ストレプトコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecalis) 129 BIO 3Bである請求項1〜6のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項8】
さらに、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌、及び/又はラクトバシラス(Lactobacillus)属の乳酸菌を含む請求項5〜7のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項9】
乳酸菌が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌である請求項1〜4のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項10】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)である請求項1〜4及び9のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項11】
ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の乳酸菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum) MM−2である請求項1〜4及び9〜10のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。
【請求項12】
経口投与の剤形である請求項1〜11のいずれか一項に記載の予防又は軽減剤。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−188409(P2012−188409A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55458(P2011−55458)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(391015351)ビオフェルミン製薬株式会社 (6)
【Fターム(参考)】