説明

消泡剤を含むハイドロフォビン溶液

少なくとも300 mg/lのハイドロフォビン、および少なくとも0.3 mg/lの消泡剤を含み、消泡剤/ハイドロフォビンの重量比が0.2未満、好ましくは0.15未満、さらに好ましくは0.1未満である、水溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消泡剤を含むハイドロフォビン溶液に関する。特に発酵プロセスを通じて得られる消泡剤を含む、ハイドロフォビン溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
発泡は、好気性水中発酵における一般的な問題である。発泡は、培養されている好気性生物(例えば、細菌、酵母、真菌、藻、細胞培養物)の成長のために酸素を供給する目的で、発酵培地中に気体を散布することによって引き起こされる。発酵培地がタンパク質、多糖、または脂肪酸などの表面活性成分を含む場合、散布された気体の気泡が液体から離脱するので、培地の表面上に泡が形成されうる。発泡は、泡の中への生産物、栄養素、および細胞の望ましくない喪失を含むいくつかの問題を生じ、封じ込め過程を困難にしうる。発泡を制御する既知の方法は、消泡剤を使用することであり、次の数種類の消泡剤が一般に使用される:シリコーンベース(例えば、ポリジメチルシロキサン)、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリプロピレングリコール)、脂肪酸、ポリエステル、および天然油(例えば、亜麻仁油、大豆油)。消泡剤は、気泡の表面上で、泡を形成する成分と置き換わり、気泡の合体による泡の破壊をもたらす。消泡剤は発酵の開始時および/または発酵の間に添加される。
【0003】
発酵生産物は、食品、個人用品、または医薬品での使用を意図される場合、その生産生物によって発酵培地中に排出されること(すなわち、細胞内ではなく、細胞外生産)が、非常に望ましい。これによって、回収のため生産物を放出させる目的で、物理的または化学的手段によって細胞を破壊する必要性が回避される。細胞を無処置で維持することによって、細胞によって産される物質は容易に生産物から分離でき、その結果、望ましくない混入物質と通常考えられている細胞内物質および遺伝物質が存在しなくなる。これは、生産生物が遺伝子組換えされているとき、特に重要でありうる。しかし、ハイドロフォビンの細胞外生産は、発酵槽中で発泡する度合いを高めうる。2つの理由で、消泡剤の使用は、ハイドロフォビンの細胞外生産に、特定の問題を起こす。第1に、ハイドロフォビンそれ自体が、発酵槽中での発泡に寄与するので、消泡剤の必要量が増加する。第2に、ハイドロフォビンを伴う消泡剤の存在はハイドロフォビンの機能性を損なうことから、消泡剤は実質的に除去されねばならない。
【0004】
Baileyら、Appl. Microbiol. Biotechnol. 58 (2002)、721〜727頁は、トリコデルマリーセイ(Trichoderma reesei)の形質転換体の発酵による、ハイドロフォビンHFB IおよびHFB IIの生産を開示している。消泡剤(Struktol J633)を使用して発泡を防ぎ、水性二相抽出法を使用して、ハイドロフォビンを精製した。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Baileyら、Appl. Microbiol. Biotechnol. 58 (2002)、721〜727頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、ハイドロフォビンが少なくとも一部の機能を保持しながら、あるレベルの消泡剤がハイドロフォビン溶液中に存在しうることを、本発明により発見した。従って、消泡剤を含み、従って製造プロセスを簡便化し、保存性の増したハイドロフォビン溶液を得ることが可能となった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、少なくとも300 mg/lのハイドロフォビンおよび少なくとも0.3 mg/lの消泡剤を含み、消泡剤/ハイドロフォビンの重量比が0.2未満、好ましくは0.15未満、最も好ましくは0.1未満である、水溶液を、提供することである。
【0008】
好ましくは、水溶液は少なくとも0.5 mg/lの消泡剤を含む。
【0009】
また、好ましくは、ハイドロフォビンはクラスIIハイドロフォビンであり、最も好ましくはトリコデルマリーセイ由来のHFB IまたはHFB IIである。
【0010】
また、好ましくは、消泡剤は曇点を持つ。
【0011】
好ましくは、水溶液を、消泡剤/ハイドロフォビンの比が0.2未満であるが、ハイドロフォビンの含有量が1 g/lより多く、好ましくは、10 g/lより多く、さらに好ましくは100 g/lより多くなるように、濃縮する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
他で定義されない限り、本願明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、当業者によって共通に理解されているものと同じ意味を持つ(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術、および、生化学)。分子的および生化学的手法に用いた標準的技術はSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual 3rd ed.(2001) Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, N. Y. ならびに、Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology (1999) 4th Ed、 John Wiley & Sons, Inc.および、Current Protocols in Molecular Biologyと表題をつけられたフルバージョンに記載されている。
【0013】
ハイドロフォビン
ハイドロフォビンは 糸状不完全菌類(例えばトリコデルマ)のような糸状菌、担子菌および子嚢菌の培養によって得ることができる。特に好まれる宿主は、クリパリン(cryparin)と名づけられたハイドロフォビンを分泌する、 クリホネクトリア パラシチカ(Cryphonectria parasitica)のような、食品グレードの生物である(MacCabe and Van Alfen, 1999, App. Environ. Microbiol 65: 5431-5435)。 同様に、スファクチン(sufactin)をバシルス スブチリス(Bacilus subtilis )から、ならびに、糖脂質を例えば、プセウドマナス アエルギノサ(Pseudomanas aeruginosa)、ロドコックス エリスロポイルス(Rhdococcus erythropoils)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)種および、トルロプシス ボンビコラ(Torulopsis bombicola)から得ることができる。
【0014】
EP 1 623 631において、本発明者らは、ハイドロフォビンが、不均一化および合体に対して、優秀な安定性を有する水性の泡を生成させることを、以前に発見した。ハイドロフォビンは、非常に有効な発泡剤なので、発酵培地中のハイドロフォビンの存在は、泡の制御に関する特定の問題を提起する。
【0015】
ハイドロフォビンは明確に定義されたクラスのタンパク質であり(Wessels, 1997, Adv. Microb. Physio. 38: 1-45; Wosten, 2001, Annu Rev. Microbiol. 55: 625-646)、疎水性/親水性の界面において自己集合が可能で、保存配列:
Xn-C-X5〜9-C-C-X11〜39-C-X8〜23-C-X5〜9-C-C-X6〜18-C-Xm(配列番号1)
(式中、Xは、任意のアミノ酸を表し、nおよびmは、独立して整数を表す)を有する。典型的には、ハイドロフォビンは、長さ125までのアミノ酸を有する。保存配列中のシステイン残基(C)は、ジスルフィド架橋の一部である。本発明の文脈において、用語ハイドロフォビンは、より広い意味を有し、以下の配列:
Xn-C-X1〜50-C-X0〜5-C-X1〜100-C-X1〜100-C-X1〜50-C-X0〜5-C-X1〜50-C-Xm(配列番号2)
を含むタンパク質など、疎水性-親水性界面で自己集合してタンパク質膜になる特徴をなお示す、機能的に同等のタンパク質、または疎水性-親水性界面で自己集合して結果的にタンパク質膜になる、特徴をなお示す、前記タンパク質の一部分を含む。本発明の定義に従うと、自己集合は、Teflonへタンパク質を吸着し、円偏光二色性を使用して、二次構造(一般にα-らせん)の存在を確証することによって検出できる(De Vochtら、1998年、Biophys. J. 74巻、2059〜68頁)。
【0016】
タンパク質溶液中でTeflonのシートをインキュベートし、次に水または緩衝液で少なくとも3回洗浄することによって、膜の形成を確立できる(Wostenら、1994年、Embo. J. 13巻、5848〜54頁)。タンパク質膜は、当技術分野で十分確証されているように、蛍光マーカーでの標識または蛍光抗体の使用など、いずれかの適切な方法で可視化できる。mおよびnは典型的に、0から2000までの範囲の値を有するが、より一般的に、mおよびnは全体で、100または200未満である。本発明の文脈におけるハイドロフォビンの定義は、ハイドロフォビンと別のポリペプチドとの融合タンパク質や、ハイドロフォビンと多糖などの他の分子との複合物を含む。
【0017】
現在までに確認されているハイドロフォビンは一般に、クラスIまたはクラスIIのどちらかに分類される。いずれの型も、疎水性界面で、自己集合して両親媒性膜になる分泌されたタンパク質として、真菌中に確認された。クラスIのハイドロフォビンの集合体は一般に、比較的難溶性であるが、その一方で、クラスIIのハイドロフォビンの集合体は、様々な溶媒に容易に溶解する。好ましくは、ハイドロフォビンは水溶性であり、これは、ハイドロフォビンが水に少なくとも0.1%、好ましくは少なくとも0.5%溶解することを意味する。少なくとも0.1%溶解するということは、水99.9mL中0.1gのハイドロフォビンを、20℃で、30分間、30,000g遠心分離するとき、ハイドロフォビンが全く沈殿しないことを意味する。
【0018】
ハイドロフォビン様タンパク質(例えば、「チャプリン」)もまた、アクチノミセテ(Actinomycete)種およびストレプトミセス(Streptomyces)種などの糸状細菌中で確認された(WO01/74864;Talbot、2003年、Curr. Biol、13巻、R696〜R698)。真菌ハイドロフォビンと対照的に、これらの細菌タンパク質は、2つのシステイン残基しか有していない可能性があるので、1つまでのジスルフィド架橋しか形成しえない。かかるタンパク質は、配列番号1および2で示された共通配列を有するハイドロフォビンと機能的同等物の例であり、本発明の範囲内にある。
【0019】
ハイドロフォビンをコードする34を超える遺伝子が、16を超える真菌種からクローニングされた(例えば、アガリクスビスポルス(Agaricus bisporus)中に確認されたハイドロフォビンの配列を示しているWO96/41882、およびWosten、2001年、Annu Rev. Microbiol. 55巻、625〜646頁を参照されたい)。本発明の目的のためには、天然のハイドロフォビンに対して、アミノ酸レベルで、少なくとも80%の同一性を有するハイドロフォビンもまた、用語「ハイドロフォビン」の中に含まれる。
【0020】
消泡剤
用語「消泡剤」は、発泡が起こる前に通常添加される消泡剤と、泡が形成された時点で通常添加される消泡剤(時として、デフォーマーとして知られる)との両方を含む。本発明において用いる消泡剤の定義は、「Form and its mitigation in fermentation systems」Beth Junker著、Biotechnology Progress、2007年、23巻、768〜784頁に記載されている。
【0021】
本発明における使用に適する消泡剤の具体的な群は、曇点を示すものである。Colloid Science中のSurfactant Aggregation and Adsorption at Interfaces、J. Eastoe、63頁、Principles, Methods and Applications、T. Cosgrove編、Blackwell Publishing、2005年に記載されている通り、曇点は、消泡剤の水溶液が相分離する(すなわち、消泡剤の分子が光を散乱させる凝集体を形成する)とき、濁って見えてくる温度である。
【0022】
曇点を示す消泡剤の例としては、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー、エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーをベースとするポリアルコール、およびエチレンおよびプロピレンオキシドのポリエーテルなどのポリ(アルキレングリコール)(PAG)ベースの化合物、ならびに脂肪酸エステルベースの化合物が挙げられる。
【0023】
曇点は界面活性剤組成および化学構造に応じる。例えば、ポリオキシエチレン(PEO)非イオン界面活性剤の曇点は、所与の疎水性基のEO含有量が増加するにつれて上昇する。好ましくは、消泡剤の曇点は、0℃から90℃の間、より好ましくは5℃から60℃の間である。
【0024】
好ましくは、消泡剤は、ポリエーテル、ポリ(アルキレングリコール)、エチレン/プロピレンオキシドブロックコポリマー、エチレン/プロピレンオキシドブロックコポリマーをベースとするポリアルコール、プロピレングリコールベースのポリエーテル分散体、またはアルコキシ化脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤/ポリマーを少なくとも1種含む。PAGベースの消泡剤(Schill and Seilacherから入手可能なStruktol J647など)、EO/POブロックコポリマーをベースとするポリアルコール(Schill and Seilacherから入手可能なStruktol J647など)、およびその他の非イオン界面活性剤系消泡剤は、ハイドロフォビンなどの強力な発泡剤の存在下においてさえも、泡を破壊するのに特に有効である。
【0025】
消泡剤の混合物を使用でき、その場合、かかる混合物の曇点は、各成分の最高の曇点で定義される。
【0026】
曇点を示すいくつかの一般的な市販されている消泡剤を、表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
消泡剤測定法
濾液中の消泡剤の濃度を、非イオン性の界面活性剤のためのLange LCK 433 Water Testing Kitを用いて決定した。前記のキットは、(J647のような)非イオン性界面活性剤が指示薬TBPE(テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル)と複合体を形成し、ジクロロメタンに抽出でき、測光法で測定して濃度を決定できるという原理を用いている。最初に、検量線を作成した。0.3%(w/v)のStruktol J647溶液を、3.00 gのStruktol J647のアリコートを取り、1LのミリQ水で、15℃で希釈することにより調製した。前記の希釈液からアリコートを取り、ミリQ水で希釈して6、15、30、60、150および300 mg/Lの濃度を得た。ミリQ水をブランクサンプルとして使用した。各濃度の0.2 mlのサンプルを、TBPEおよびジクロロメタンを含むキットの試験管に添加した。前記の試験管を2分間穏やかに混合し、30分間静置した。前記のサンプルをその後、試験キットの説明書に従って、Lange DR2800分光光度計で605 nmを測定した。図2に検量グラフを示す。
【0029】
濾液をその後ミリQ水で、1/10に希釈した。0.2 mlのサンプルを前記のように分光光度計で測定し、各濾液における消泡濃度を検量線から読み取った。濾液内に含まれる消泡剤の量(%)は
(濾液内の測定された濃度)/(既知の初期濃度)×100(%)
のように計算された。
【0030】
0.2 mg/L(2×10−5%w/v)まで減少した消泡剤濃度は、Lange LCK 333 Water Testing Kitを用い、および適切な濃度範囲において検量線を構築する、同様の技術によって測定が可能である。この場合、測定するサンプルのアリコートを、0.2 mlよりはむしろ、2 ml試験キットに添加する。
【0031】
発酵方法および消泡剤の除去
発泡剤を生産する発酵は、バイオリアクター(例えば、産業用発酵槽)中で、液体発酵培地中で宿主細胞を培養することによって実行される。培地の組成(例えば、栄養素、炭素源など)、温度、およびpHは、培養物の成長および/または発泡剤の生産にとって適切な条件を提供するために選択される。培養物の呼吸のための酸素を供給するために、通常、空気または酸素富化空気が培地中に散布される。
【0032】
消泡剤は、最初の培地組成物中に含まれてよく、および/または、発酵の間を通して必要とされるときに添加されてよい。一般的な実行では、消泡剤の添加を自動的に始動させる導電率プローブなどの泡検出法を使用する。本発明において、消泡剤は、好ましくは0.1から20 g/L、より好ましくは1から10 g/Lの最終濃度で存在する。
【0033】
段階i)の間、すなわち発酵の間、発酵槽の温度は、消泡剤の曇点より上または下であってよい。消泡剤は、曇点より上で気泡合体および泡崩壊を引き起こすのに最も有効であるから、好ましくは、発酵槽の温度は、消泡剤の曇点より高い。発酵槽の温度は一般に、宿主細胞の成長および/または生産のための最適条件を達成するために、選択される。
【0034】
発酵の終わりに、消泡剤を実質的に除去し、確実に発泡剤の機能性が損なわれないようにしなければならない。消泡剤層を分離できるように発酵培地の温度を消泡剤の曇点よりも上にすることによって、消泡剤の除去は達成される。前記の消泡剤の分離した層は、
―濾過、例えばデッドエンド濾過またはフィルタープレス
―膜(クロスフロー)濾過、例えば精密濾過または限外濾過
―遠心分離
―例えば活性炭素、シリカ、珪藻土を吸着剤として用いた吸着
のような任意の適切な方法によって発酵培地からの除去を可能にする。
【0035】
さらに消泡剤は、発酵培地の温度が、少なくとも10℃曇点より高い、好ましくは少なくとも20℃曇点より高い、最も好ましくは少なくとも30℃曇点より高い場合、除去される。発酵培地の温度は好ましくは90℃未満、さらに好ましくは75℃未満である。好ましい実施態様において、消泡剤は20〜30℃の範囲の曇点を持ち、および発酵培地の温度は40〜60℃の範囲内である。
【0036】
消泡剤を分離するための好ましい方法は、膜濾過である。その曇点より高い温度で、消泡剤を含む発酵培養液の膜濾過を実行すると、沈殿した消泡剤によって膜が詰まり、透過流量が低下し、結果としての処理が困難になると、一般に考えられてきた。例えば、Yamagiwaら、J. Chem. Eng. Japan、26(1993)、13〜18頁、およびWO01/014521)を参照されたい。したがって、膜濾過は曇点より低い温度で行われるべきであると、以前は考えられてきた。しかし、限外濾過および精密濾過操作を、消泡剤の曇点より高い約25℃で実行する場合、好ましい流量を得られる。
【0037】
確実に、発泡剤生産物に(望ましくない汚染物質と通常みなされる)細胞内遺伝子物質が存在しないようにするため、細胞を発酵培地から除去しなければならい。好ましい実施形態において、例えば曇点より高い温度で行われる精密濾過の段階において、沈殿した消泡剤を除去すると同時に、細胞を培地から分離する。
【0038】
代替の実施形態において、細胞は、曇点より低い温度で、例えば、濾過(例えば、デッドエンド濾過またはフィルタープレス)、膜/クロスフロー濾過(例えば、精密濾過または限外濾過)、または遠心分離によって、消泡剤の除去に先立つ別個の段階で、培地から除去してもよい。この実施形態において、(例えば、限外濾過による)精製および/または濃縮段階は、細胞除去後であるが消泡剤分離前に、(曇点より低い温度で再度)実行してよい。次に、消泡剤を既に記載されている通り除去しうるように、培地を曇点より高い温度まで加熱する。
【0039】
消泡剤および細胞が発酵培地から除去された時点で、発泡剤生産物は、例えば限外濾過によって、必要に応じて、さらに精製し、濃縮してもよい。発泡剤がハイドロフォビンである場合、例えば、ハイドロフォビンを表面に吸着し、次に表面をTween 20などの界面活性剤と接触させ、表面からハイドロフォビンを溶出することに関する、WO01/57076に記載の手順によって、発泡剤を発酵培地から精製しうる。また、Collenら、2002年、Biochim Biophys Acta. 1569巻、139〜50頁、Calonjeら、2002年、Can. J. Microbiol. 48巻、1030〜4頁、Askolinら、2001年、Appl Microbiol Biotechnol. 57巻、124〜30頁、およびDe Vriesら、1999年、Eur J Biochem. 262巻、377〜85頁も参照されたい。
【0040】
一例にすぎず、限定するものではない以下の実施例に参照して、本発明を、さらに記載する。
【実施例】
【0041】
(実施例1:発泡剤を含む発酵液からの消泡剤の除去)
サッカロミセスセレビシエの遺伝子組換えされた株の流加発酵を実施した。ハイドロフォビンの細胞外発現を発酵の間に達成するように、真菌トリコデルマリーセイ由来のハイドロフォビンHFBII(発泡剤)をコードしている遺伝子を組み込むことで、株を改変した。グルコースを炭素源として使用し、方法を300Lの発酵槽で総体積150Lの規模にして、基本的に、van de Laar Tらによって、Biotechnol Bioeng. 96巻(3)、483〜94頁、(1997年)中に記載されている通りに、発酵を実行した。(van de Laar Tらによって使用されたStruktol J673の代わりに)消泡剤Struktol J647を使用して、発酵の間、発泡を制御した。
【0042】
発酵の終わりに、発酵液を15℃(すなわち、消泡剤J647の曇点より低い)で精密濾過し、酵母細胞を除去した。2体積の脱イオン水での透析濾過を使用して、孔径0.1μmを有するKerasepセラミック膜により、パイロット規模のプラントで精密濾過を実施した。次に、再び15℃で液を限外濾過し、HFBIIを部分的に精製した。限外濾過は、膜貫通圧0.9バールおよび4体積の透過濾過で、1kD Synderらせん状巻きポリマー膜によった。
【0043】
限外濾過段階後の発酵液中の消泡剤の濃度を測定したところ、0.196 g/Lであった。以下の通りに、HFBIIの濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定したところ、0.320 g/Lであった。分析前に、試料を60%の水性エタノールで希釈し、濃度約200 μg/mlにした。30℃で、Vydac Protein C4カラム(250×4.6mm)で、HPLC分離を実施した。214 nmでの紫外線検出によってハイドロフォビンを測定し、VTT Biotechnology(Espoo、フィンランド)から入手した既知のHFBII濃度の試料との比較によって、濃度を算定した。
【0044】
次に細胞を含まない溶液を50℃に熱し、その温度で30分間保持し、濾過(0.2 μm孔径)して消泡剤を除去した。濾液内の消泡剤およびHFB IIの残量を前記のように測定し、表2(第1段階)に示した。この第一段階からの濾液を50℃に再加熱し、この温度でさらに30分間保持し、前記の通り濾過した。結果として生じた濾液中のHFB IIと消泡剤の濃度を測定し、同様に表2(第2段階)に示す。
【0045】
【表2】

【0046】
得られたハイドロフォビン溶液が満足な発泡特性を持つことを発見した。
【0047】
前記の各項で言及された本発明の様々な特徴および実施形態は、変更すべきは変更して、その他の項に適切に適用する。したがって、1つの項に明記された特徴は、その他の項で明記された特徴に、適切に組み合わされてよい。
【0048】
前記の明細書に言及された全ての出版物は、本明細書に参照により組み込まれる。本発明の記載された方法の様々な変更例および改変例は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明白であろう。本発明は、具体的な好ましい実施形態と関連して記載されたが、特許請求の範囲に記載された本発明は、かかる具体的な実施形態に不当に限定されるべきではないことが、理解されるべきである。実際、当業者にとって明白である、本発明を実行するための記載された形態の様々な変更例は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも300 mg/lのハイドロフォビンおよび少なくとも0.3 mg/lの消泡剤を含み、消泡剤/ハイドロフォビンの重量比が0.2未満、好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満である、水溶液。
【請求項2】
ハイドロフォビンがクラスIIハイドロフォビンである、 請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
ハイドロフォビンがトリコデルマリーセイ由来のHFB IまたはHFB IIである、請求項1または2に記載の溶液。
【請求項4】
消泡剤が曇点を持つ、請求項1〜3のいずれか一項に記載の溶液。
【請求項5】
少なくとも1 g/l、好ましくは少なくとも10 g/l、さらに好ましくは少なくとも100 g/lのハイドロフォビンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の溶液。

【公表番号】特表2012−505645(P2012−505645A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531443(P2011−531443)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063006
【国際公開番号】WO2010/043520
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】