説明

消泡剤組成物

【課題】水系において使用する、消泡能が非常に優れ、保存安定性もよく、且つ消泡対象物に対し、はじき、色むら、接着不良、塗装不良、透明性阻害等の悪影響を与えない消泡剤組成物の提供。
【解決手段】 消泡性成分(A)、微粉末無機化合物(B)、乳化剤(C)および水を含有する水中油型エマルジョン消泡剤組成物において、消泡性成分(A)は、一般式(1)


(式中、Rは脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基を、Yは2価の有機基を、aは1〜100を、mは0〜50を、nは1〜100を(n/m+nは0.5以上)、dは1〜50を表し、シロキサンブロックは共重合体の5〜95重量%を構成し、そして共重合体は少なくとも700の平均分子量を有する。)で表されるシリコーン系ブロック交互共重合体である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消泡剤組成物に関し、より詳しくは、消泡能が非常に優れ、保存安定性もよく、且つ消泡対象物に対し、はじき、色むら、接着不良等の悪影響を与えない水中油型エマルジョン消泡剤組成物に関する。本発明の水中油型エマルジョン消泡剤組成物は、染色、抄紙、水性インキ、乳化重合、ラテックス配合等の技術分野で利用される。
【0002】
【従来の技術】従来、水を製造工程において又は製品の一部として使用する(以降、水系と記載することもある)化学工業、石油精製工業、高分子重合工業、金属製造・加工工業、繊維工業、織物工業、染色工業、製紙工業、食品工業、インキ・印刷工業、塗料・接着剤工業、セメント工業、洗剤工業、排水処理場等において発泡を防止・抑制又は発生した泡を破泡・消去するため各種消泡剤が使用されている。これらの消泡剤としては、低級・高級脂肪族アルコール系、低級・高級脂肪酸系、低級・高級脂肪族アミド系、低級・高級脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレン系、シリコーン系等の消泡剤が使用されているが、シリコーン系消泡剤は、他の消泡剤と比べて少量の使用量で消泡効果が大きいので広く使用されている。
【0003】近年、水系に使用されるシリコーン系消泡剤の代表的な組成は、ジメチルポリシロキサン、微粉末シリカ等の微粉末無機化合物、乳化剤及び水からなっている。そのうち、ジメチルポリシロキサンは、表面張力が水や有機溶媒に比べて非常に小さく、水や有機溶媒に発泡誘発物質(例えば洗剤)が加わることにより発生した泡を破壊するのに役立つので、シリコーン系消泡剤の主要成分として用いられてきた。その際、ジメチルポリシロキサンは、その極性パラメーターが水や有機溶媒とは非常に異なるので、水や水と有機溶媒との混合液には容易に溶解又は分散せず、そのため、それを単独で使用することができず、上記に述べた如く、微粉末シリカ等の微粉末無機化合物と混練し、いわゆるオイルコンパウンドとし、さらに、それでも溶解性・分散性が不十分であるため、オイルコンパウンドに乳化剤と水を配合し、水中油型エマルジョン消泡剤組成物として用いられてきた。
【0004】しかしながら、ジメチルポリシロキサンには、依然として種々の問題点があり、それ自体は、消泡効果は非常に優れているものの分散性が悪いので、上記のように分散性をよくする工夫をしても消泡効果が十分に発揮されなく、また、場合によってはオイルスポット(ジメチルポリシロキサンが部分的に小滴となり小斑点となっている所)を生ずることがあり、これが製品に残ると製品の品質を著しく損なうことになる。例えば、織物の染色工程において、オイルスホットが生じると織物表面に染色むらを生じる。繊維処理剤をジメチルポリシロキサンを含有する消泡剤で消泡する場合、なかんずく過剰に使用すると、処理された繊維上にジメチルポリシロキサンに起因する洗浄不可能な斑点が生じることもある。金属加工用切削乳化油にジメチルポリシロキサンを含有する消泡剤で消泡すると、加工された金属製品にジメチルポリシロキサンの薄い膜またはオイルスポットが生じ、これがその後の金属加工、例えば塗装または接着を著しく妨げる。水又は水−アルコール系をベースとして構成された印刷インキにジメチルポリシロキサンを含有する消泡剤を加え消泡すると、引続く印刷工程において、印刷ロール上にてインキが流れる難点があったり、印刷インキの濡れ特性を悪くしたり、印刷むらを生じたりする事もある。紙製品製造工程において使用すると、紙の印刷適性が損なわれ、また望ましくないすかし模様状の斑点が生じることもある。接着剤の製造工程で使用すると、残存するジメチルポリシロキサンの剥離作用により接着剤の接着力を低下させることがある。塗料の製造工程で使用すると残存するジメチルポリシロキサンにより塗膜が十分接着しなかったり、塗膜にむらが生じたりする事もある。ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリブタジエンを含む共重合ラテックス等の懸濁重合・乳化重合工程にて使用すると、製造された樹脂の、透明性、光沢、印刷性、接着性を損なう事もある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、従来から水系における代表的な水中油型エマルジョン消泡剤として知られているジメチルポリシロキサン、微粉末シリカ等の微粉末無機化合物、乳化剤及び水からなる消泡剤組成物のもつ上記した欠点を解消するために、消泡能が非常に優れ、保存安定性もよく、且つ消泡対象物に対し、はじき、色むら、接着不良等の悪影響を与えない水中油型エマルジョン消泡剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、従来から水系において代表的に使用されている水中油型エマルジョン消泡剤において、消泡性成分であるジメチルポリシロキサンに代えて、特定の分子構造を有するシリコーン系ブロック交互共重合体を使用すると、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】すなわち、本発明によれば、消泡性成分(A)、微粉末無機化合物(B)、乳化剤(C)および水を含有する水中油型エマルジョン消泡剤組成物において、消泡性成分(A)は、一般式(1):
【0008】
【化3】


(式中、Rは脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基を表し、Yは炭素−ケイ素結合を介して隣接ケイ素原子に、そして酸素原子を介してポリオキシアルキレンブロックに結合している2価の有機基を表し、aは1〜100の整数を表し、mは0〜50の整数を表し、nは1〜100の整数を表し、n/m+nの値は0.5以上であり、dは1〜50の整数を表し、シロキサンブロックは共重合体の5〜95重量%を構成し、そして共重合体は少なくとも700の平均分子量を有する。)で表されるシリコーン系ブロック交互共重合体であることを特徴とする水中油型エマルジョン消泡剤組成物が提供される。
【0009】また、本発明によれば、微粉末無機化合物(B)は、微粉末シリカであることを特徴とする上記の水中油型エマルジョン消泡剤組成物、あるいは乳化剤(C)は、一般式(2):
【0010】
【化4】


(式中、Rは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基を表し、RおよびRは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基または次式:−YO(CO)p(CO)q R(式中、Rは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基又は−Hを表し、Yは不飽和基を含まない炭素原子数2ないし8のアルキレン基を表し、pは1〜50の整数を表し、qは0〜50の整数を表す)で表されるポリオキシアルキレン基を表すが、RおよびRの少なくとも1つは該ポリオキシアルキレン基を表し、xは0以上の整数を表し、yは1以上の整数を表し、x+yは1〜300の整数であり、シロキサンブロックは共重合体の15〜95重量%を構成し、そして、共重合体は少なくとも300の平均分子量を有する。)で表されるポリエーテル変性シリコーン共重合体であることを特徴とする上記の水中油型エマルジョン消泡剤組成物が提供される。
【0011】さらに、本発明によれば、消泡性成分(A)および微粉末無機化合物(B)は、予めオイルコンパウンドに調製した上で、組成物中に配合することを特徴とする上記のいずれかに記載の水中油型エマルジョン消泡剤組成物が提供される。
【0012】さらにまた、本発明によれば、各成分の配合割合は、消泡性成分(A)100重量部に対して0.1〜30重量部微粉末無機化合物(B)を配合したオイルコンパウンドを組成物全量基準で5〜70重量%、乳化剤(C)成分を組成物全量基準で1〜60重量%とし、さらに、残部が水となるようにすることを特徴とする上記のいずれかに記載の水中油型エマルジョン消泡剤組成物が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】1.消泡性成分(A)
本発明において使用される消泡性成分(A)は、次の一般式(1):
【0015】
【化5】


(式中、Rは脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基を表し、Yは炭素−ケイ素結合を介して隣接ケイ素原子に、そして酸素原子を介してポリオキシアルキレンブロックに結合している2価の有機基を表し、aは1〜100の整数を表し、mは0〜50の整数を表し、nは1〜100の整数を表し、n/m+nの値は0.5以上であり、dは1〜50の整数を表し、シロキサンブロックは共重合体の5〜95重量%を構成し、そして共重合体は少なくとも700の平均分子量を有する。)で表されるシリコーン系ブロック交互共重合体である。
【0016】上記の式(1)中、Yで表される2価の炭化水素基の例は、次式:−R−、−R−CO−、−R−NHCO−、−R−NHCONHR−NHCO−又は−R−OOCNH−R−NHCO−(式中、Rは2価のアルキレン基、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を表し、Rは2価のアルキレン基、例えばRに対して例示した上記の基又は2価のアリーレン基、例えば−C−、−C−C−、−C−CH−C−、−C−CH(CH)−C−等を表す)で表される基である。基Yの好適な例としては、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCHCHCH−、−(CHCO−、−(CHNHCO−、−(CHNHCONHCNHCO−、又は−(CHOOCNHCNHCO−等が挙げられる。特に好ましいYは、2価のアルキレン基、−CHCH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−等であり、なかでも−CHCH(CH)CH−が最も好ましい。また、Rは、互いに独立して脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、フェニル基、フェネチル基等であり、なかでもメチル基、エチル基及びフェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0017】また、aは、1〜100の整数であるが、その好ましい範囲は10〜50、さらに好ましい範囲は15〜40の整数である。aが1未満であると、消泡性能を発現しなくなり、一方100を超えると、分散効果が低下し、ひいては消泡性能が低下し、消泡処理されて作られた製品の物性に悪影響を与えるので好ましくない。
【0018】さらに、mは0〜50の整数を表し、nは1〜100の整数を表し、n/m+nの値は0.5以上である。n/m+nの値が0.5重量%未満であると、充分な消泡性を示さないため、望ましくない。さらにまた、dは1〜50の整数を表す。dが0の場合、交互共重合体とならず、dが50以上の交互共重合体は、末端停止反応が起こるので、製造が困難である。本発明において、式中のシロキサンブロックは、シリコーン系ブロック交互共重合体の5〜95重量%、好ましくは10〜60重量%、最も好ましくは15〜40重量%を構成し、そしてシリコーン系ブロック交互共重合体は少なくとも700の平均分子量を有することが、本発明の効果を奏する上で必須であり、a、m及びnはこれらの条件を満たす数値である。
【0019】本発明のシリコーン系ブロック交互共重合体は、工業的に供給される化学材料であってもよいが、従来公知の製法によっても製造することができる。その代表的な製法の1つは、以下に示すように、ポリオキシアルキレンと両末端反応性ジオルガノポリシロキサンとを用いた縮重合反応である。上記反応に用いられるポリオキシアルキレン{ポリエーテル又は、ポリ(オキシエチレン)(オキシプロピレン)と同義語であるので、以降これらの同義語を記載することもある。}としては、例えば、一般式(3):
【0020】
【化6】


(式中、m及びnは一般式(1)に対して定義したものと同じ意味を表し、αはCH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−、OCNCNHCO−又は水素原子等の反応性基を表す。)で表される両末端反応性ポリオキシアルキレンが挙げられる。一方、上記の両末端反応性ジオルガノポリシロキサンとしては、例えば、一般式(4):
【0021】
【化7】


(式中、R及びaは一般式(1)に対して定義したものと同じ意味を表し、βは基αと反応性を有する基を表す。)で表される両末端反応性ジオルガノポリシロキサンが挙げられる。特に、αがCH=C(CH3)−CH−である化合物と、βが−Hである化合物とを塩化白金酸等の触媒存在下で反応させる方法が好ましい。
【0022】したがって、本発明で用いられるシリコーン系ブロック交互共重合体の末端封鎖基は、特に限定されないが、上記方法により製造した場合には、一般式(5):
【0023】
【化8】


(式中、aは上記式(1)に対して定義したものと同じ意味し、βは上記式(4)に対して定義したものと同じ意味を表す)で表される基又は一般式(6):
【0024】
【化9】


(式中Y、m及びnは上記式(1)に対して定義したものと同じ意味を表し、αは上記式(3)に対して定義したものと同じ意味を表す)で表される基のいずれか、又はこれらの両方の構造が混在したシリコーン系ブロック交互共重合体を得ることができる。
【0025】上記の反応は、公知の技術を用いて行うことができる。例えば、この反応は、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、ジオキサン、THF等のエーテル系、ジメチルポリシロキサン等のシリコーン系、脂肪族炭化水素系、塩素化炭化水素系の有機溶剤中又は無溶媒で行われる。また、反応温度は、通常30〜150℃であり、塩化白金酸等の触媒を用い反応させることができるが、この製造法に限定されるものではない。
【0026】また、末端封鎖基を反応終了後に水素添加かアルコール付加等により不活性化させてもよい。シリコーン系ブロック交互共重合体は、2種以上併用してもよい。また本発明の消泡剤組成物の優れた性能・効果を阻害しない範囲で、公知の低級・高級脂肪族アルコール系、低級・高級脂肪酸系、低級・高級脂肪族アミド系、低級・高級脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル系、ポリオキシアルキレン系、アルキルシロキサン、アリールシロキサン、脂環式シロキサン、アルキル・アラルキル変性ポリシロキサン特にジメチルポリシロキサン等の消泡剤と併用してもよい。
【0027】2.微粉末無機化合物(B)
本発明においては、微粉末無機化合物(B)は、通常、消泡剤組成物に配合するに当たり、予め消泡性成分(A)と混練しオイルコンパウンドの形に調製してから用いられる。その際、微粉末無機化合物(B)としては、当技術分野で用いられるよく知られている充填剤物質のいずれか一つであってもよい。適当な充填剤は、BET測定法により測定される表面積が少なくとも50m/g好ましくは100mg以上のものであるTiO、Al 、ケイ酸アルミニウム、石英およびSiOが挙げられる。好ましい充填剤は、例えば、ハロゲン化ケイ素の熱分解、ケイ酸ナトリウムのようなケイ酸金属塩の分解および沈澱、およびゲル形成法等の一般的な製造技術のいずれかに従って作ることができるシリカ充填剤である。消泡剤において用いられる適当なシリカとしては、ヒュウムドシリカ、沈降シリカおよびゲル形成シリカが挙げられる。これらの充填剤の平均粒系は、直径が0.1〜20μの範囲であり、好ましくは0.5〜5μ、最も好ましくは1〜2.5 μであってもよい。充填剤の混合物が用いられていてもよく、これは、特に消泡剤の比重を本発明の消泡剤組成物が混合される水系対象物の比重とつり合うように調整できる場合において特に有用になり得る。
【0028】微粉末無機化合物の表面は、水系における消泡剤をより効果的なものにするために疎水化されている場合もある。微粉末無機化合物の疎水化は、該微粉末無機化合物をシリコーン系ブロック交互共重合体に分散させる前あるいは後で行ってもよい。これは、微粉末無機化合物を高級脂肪酸又はその金属塩、シランカップリング剤または反応性ポリシロキサン等の疎水化剤で前処理することにより行われる。適当な疎水化剤の例としては、ステアリン酸、ステアリン酸ナトリウム、ビニルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ヌェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、水酸基またはメチル基で末端がブロックされたポリジメチルシロキサン、シロキサン樹脂あるいはこれらの2つ以上の混合物が挙げられる。その他の疎水化剤を用いてもよいが、上記で例示した物質が最も効果的である。
【0029】すでにそれらの化合物で処理された微粉末無機化合物をいくつかの販売元から商業的に入手することができる。あるいは微粉末無機化合物の表面をシリコーン系ブロック交互共重合体に分散させた後で疎水化してもよい。これは該微粉末無機化合物を分散させる前、分散中あるいは分散させた後で、適当量の上記疎水化剤をシリコーン系ブロック交互共重合体に添加し、その混合物を例えば少なくとも40℃以上で十分に加熱して反応を起こすことにより行ってもよい。該微粉末無機化合物および疎水化剤を、シリコーン系ブロック交互共重合体を作るために用いられる成分に添加して、微粉末無機化合物表面の疎水化を行うと同時に、前記シリコーン系ブロック交互共重合体を作ることさえも可能である。疎水化剤で処理した微粉末無機化合物の具体的な例としては、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、ニプシル(日本シリカ(株)製)、キャボシル(米国キャボット社製)、サントセル(米国モンサント社製)、シペルナト(ドイツ国デグサAG社製)、ミズカシル(水澤化学(株)製)等があげられる。なお、微粉末無機化合物の添加量はシリコーン系ブロック交互共重合体100重量部に対して0.1〜20重量部好ましくは1〜15重量部の範囲であり、0.1重量部未満では消泡効果が不十分となり20重量部より多くなると消泡剤組成物の粘度が増加して水分散性および作業性が悪くなるからである。
【0030】本発明においては、前述したように、消泡性成分(A)と微粉末無機化合物(B)とは、通常、シリコーンオイルコンパウンドの形に調製されて用いられるが、その調製法は、公知の方法により行われ、例えば、消泡性成分(A)であるシリコーン系ブロック交互共重合体と、微粉末無機化合物(B)の所定量を混合し、室温であるいは200℃以下の温度で熱処理してから必要に応じて低沸点留分を除くことによって製造することができる。
【0031】本発明の消泡剤組成物においては、シリコーンオイルコンパウンドの含有量は、組成物全量基準で5〜70重量%好ましくは20〜45重量%の範囲である。その含有量が5重量部未満であると、消泡剤組成物の消泡効果が不十分となり、一方、70重量部より多くなると、消泡剤組成物の粘度が増加して水分散性および作業性が悪くなるからである。
【0032】3.乳化剤(C)
本発明の消泡剤組成物においては、乳化剤(C)は、水中油型エマルジョン消泡剤に通常用いられる乳化剤ならばいずれのものでも使用することができる。かかる乳化剤としては、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸エタノールアミン塩、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム塩、ジオクチルスルホンコハク酸ナトリウム塩、石油スルホネートカルシウム塩、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルサルフェート塩又はアルキルフォスフェート塩、アルキルベンジルアンモニウム塩、ラウリルイミダゾリン、オレイルアミン酢酸塩、リン酸エステルとその塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩およびカルボン酸塩、アルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルアミン有機酸塩、アルキルベタイン型やリン酸エステル型等のイオン性界面活性剤、HLB14以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油等の非イオン界面活性剤及びポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。その中でも次に示すポリエーテル変性シリコーンといわれているものが好ましい。かかるポリエーテル変性シリコーンは、一般的に、一般式(2):
【0033】
【化10】


(式中、Rは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基を表し、RおよびRは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基または次式:−YO(CO)p(CO)q R(式中、Rは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基又は−Hを表し、Yは不飽和基を含まない炭素原子数2ないし8のアルキレン基を表し、pは1〜50の整数を表し、qは0〜50の整数を表す)で表されるポリオキシアルキレン基を表すが、RおよびRの少なくとも1つは該ポリオキシアルキレン基を表し、xは0以上の整数を表し、yは1以上の整数を表し、x+yは1〜300の整数であり、シロキサンブロックは共重合体の15〜95重量%を構成し、そして、共重合体は少なくとも300の平均分子量を有する。)で表されるものである。
【0034】上記式(2)中のポリエーテル基におけるYで示される脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基の好適な例として−CH−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−および−CHCHCHCH−等を挙げることができる。上記式(2)中のポリエーテル基におけるR基の具体例として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アセチル基およびプロピオニル基等が挙げられる。上記式(2)中、xは0以上の整数を表し、yは1以上の整数であるが、xは0〜100、yは1〜50の範囲が好ましく、xは10〜100、yは1〜50の範囲が特に好ましい。また上記式(2)中のポリエーテル基中のpおよびqも上記した通りであるが、乳化性能をよくするためポリオキシアルキレンブロックが多いほど望ましく、ポリオキシアルキレンブロックの中ではポリオキシエチレンブロックが多いほど望ましい。
【0035】本発明の乳化剤として特に好適なポリエーテル変性シリコーンは一般式(7):
【0036】
【化11】


(式中、R、x、y、pおよびqは上記式(2)に対して定義したものと同じ意味を表す)で表されるものである。
【0037】上記のポリエーテル変性シリコーンは、いずれも、市販のものであってもよいが、それ自体公知である方法、または当該公知方法と同様の方法で、例えばメチル基の一部が水素原子で置換されたジメチルポリシロキサンと、一方の末端がアリル基等の脂肪族系不飽和基含有基で封鎖されたポリオキシアルキレンとを、白金触媒の存在下において付加反応させることによっても製造することができる。ポリエーテル変性シリコーンは、2種以上併用すること、またポリエーテル変性シリコーンを主体として上記した他の界面活性剤(乳化剤)を併用してもよい。本発明において、乳化剤(C)は、消泡性成分(A)と微粉末無機化合物(B)を予め混練調製してなるシリコーンオイルコンパウンドを水系に乳化分散させるためのものであるので、粘度は10〜80,000cS好ましくは50〜15,000cSの範囲のものである。10cS未満であると、乳化効果が不十分であり、80,000cSを越えると水にたいする溶解性や分散性が悪くなり望ましくない。
【0038】また、乳化剤(C)の配合割合は消泡対象物、界面活性剤(乳化剤)の種類により異なってくるが、組成物全量基準で、0.1〜60重量%好ましくは5〜45重量%の範囲である。その配合割合が0.1重量部未満であると、水分散性が悪くなり、一方、60重量部より多くなると、消泡性能が低下するので望ましくない。
【0039】4.水中油型エマルジョン消泡剤組成物本発明の水中油型エマルジョン消泡剤組成物は、通常知られている調整法ならばいずれの方法によってつくることができるが、一例を挙げると、下記のように方法が適用される。
イ)まず、消泡性成分(A)と微粉末無機化合物(B)を十分に混練しシリコーンオイルコンパウンドを調製する。
ロ)次いで、このオイルコンパウンドに乳化剤(C)と水、さらには所望に応じて各種添加剤を任意の順次で所定の量だけ添加する。
ハ)最後に、これら各成分が充分かつ均一に混ざるように攪拌する。
【0040】上記水中油型エマルジョン消泡剤組成物を調製する際に加えられる水は、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して、1〜100万重量部、好ましくは30〜50万重量部最も好ましくは500〜3万重量部の範囲である。水が1重量部未満であると、作られた消泡剤組成物を水系に投入したとき、速やかに分散しない場合があり、水が100万重量部を越えると作られた消泡剤組成物が消泡効果を発現しない場合があり望ましくない。又、予め高濃度のエマルジョンを調整しておいて、使用時に上記濃度に希釈して用いることもできる。なお、本発明の消泡剤組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の乳化剤、アルコール類、溶剤、安定剤、増粘剤、防腐剤、pH調整剤等を配合してもよい。本発明の消泡剤組成物の使用における対象物への添加量は、対象とする工程、消泡対象物の性質、最終製品の物性への影響等の諸条件によって決定されるが、一般的な目安としては、水の配合量の少ない高濃度消泡剤組成物の場合は、1〜500ppm、水の配合量の多い低濃度消泡剤組成物の場合は100〜10.000ppmが望ましい。
【0041】
【実施例】以下に、本発明について実施例及び比較例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。なお、(A)成分としてのシリコーン系ブロック交互共重合体として化学式(8):
【0042】
【化12】


及び、化学式(9):
【0043】
【化13】


を、それぞれ実施例1及び実施例2で用いた。また、(B)成分としてのポリエーテル変性シリコーン共重合体として化学式(10):
【0044】
【化14】


及び、化学式(11):
【0045】
【化15】


を、それぞれ実施例1及び実施例2で用いた。
【0046】実施例1上記化学式(8)で表されるシリコーン系ブロック交互共重合体100重量部と、微粉末無機化合物として表面疎水化処理シリカ(アエロジル200{日本アエロジル(株)製、比表面積200m/g}を(CHSiNHSi(CHで処理したもの)15重量部及び炭酸アンモニウム0.7重量部を窒素ガス気流下に155℃で3時間混合して、オイルコンパウンド(1)を準備した。このオイルコンパウンド(1)65重量%と上記化学式(10)で表されるポリエーテル変性シリコーン共重合体35重量%を混合したもの100重量部を、増粘水溶液(水にキサンタンガム、ソルビン酸を溶解したもの)900重量部に攪拌しながら投入し消泡剤組成物(1)を得た。代表的物性を下記に記載する。
外観 均一乳状液体粘度 275cpspH 7.0有効成分 10%
【0047】インキ用消泡剤としての評価方法及び評価結果実施例1で準備した消泡剤組成物(1)を5,000ppm濃度になるようにして、市販の藍色インキ液に投入し消泡持続性を評価した。
【0048】評価方法日本ユニカー(株)の消泡試験法−VIで評価した。消泡試験法−VIは、恒温水槽中(25℃)の1リットルの円筒状トールビーカーに、発泡液{市販の藍色インキ液を2倍に希釈したもの}400gに実施例1で準備した消泡剤組成物(1)が5,000ppm濃度になるように投入し、円筒状トールビーカー中の発泡液底部に設置されたガラス管ノズル吹出口から、空気を流量が2,100ml/minとなるように吹き出し、時間(hr)の経過に対する泡の高さを測定した。測定した評価結果を表1に示す。なお、泡の高さは、1リットルの円筒状トールビーカーの壁面に表示されている目盛(ml)で読みとった。
【0049】
【表1】


【0050】なお、上記において比較値は、実施例1で使用したシリコーン系ブロック交互共重合体に代えて、平均分子量5,214のジメチルポリシロキサンを使用して実施例1と同様にしてつくった消泡剤組成物(比較品)で評価した場合の泡の高さである。上記評価結果より、本発明の消泡剤組成物(1)は、比較品よりインキの泡立ち抑制能力が優れている。
【0051】インキのハジキの評価方法及び評価結果実施例1で準備した消泡剤組成物(1)を、市販の藍色インキ液を2倍に希釈したものに対して、消泡剤組成物(1)の有効成分が5,000ppmとなるように添加し、撥水ライナー紙に展色し、乾燥後のハジキ具合を観察し、以下のように評価した。
非常に優れる:ブランク(消泡剤無添加)に同じ。すなわち、ハジキ無し。
優れる:少しハジキがあるが、ブランクとほぼ同じ。
劣る :ハジキが10cmあたり、1〜5個存在する。
非常に劣る :ハジキが10cmあたり、6個以上存在する。
消泡剤組成物(1)は、ハジキが発生しなかったので非常に優れている。なお、比較として実施例1で使用したシリコーン系ブロック交互共重合体に代えて、ジメチルポリシロキサンを使用して実施例1と同様にしてつくった消泡剤組成物(比較品)で評価したが、ハジキが10cmあたり、平均1.2個存在し、劣っている。
【0052】実施例2上記化学式(9)で表されるシリコーン系ブロック交互共重合体100重量部と、微粉末無機化合物として表面疎水化処理シリカ(アエロジル200{日本アエロジル(株)製、比表面積200m/g}を(CHSiNHSi(CHで処理したもの)15重量部及び炭酸アンモニウム0.7重量部を窒素ガス気流下に155℃で3時間混合して、オイルコンパウンド(1)を準備した。このオイルコンパウンド(1)73重量%と上記化学式(11)で表されるポリエーテル変性シリコーン共重合体27重量%を混合したもの100重量部を、水500重量部に攪拌しながら投入し消泡剤組成物(2)を得た。代表的物性を下記に記載する。
外観 均一乳状液体粘度 576cpspH 7.0有効成分 10.0%
【0053】ポリスチレン懸濁重合用消泡剤としての評価方法及び評価結果実施例2で準備した消泡剤組成物(2)(10倍希釈物)3.0gとポリスチレン懸濁重合液(15倍に希釈したもの)300gをオートクレーブにしこみ、攪拌及び加熱を開始する。液温が100℃に達するまではブロー弁を開けておき、100℃に到達後閉じる。所定の温度に到達してから20分後、ブロー弁を開く。この時発泡するので、最高発泡量を読みとる。なお、オートクレーブ中の温度と圧力の関係は、温度が110℃のとき圧力は0.3kg/cm、温度が150℃のとき圧力は3.7kg/cmであった。
評価結果 発泡液の温度(℃) 110 150発泡量(ml) 98 105比較値 (ml) 400 408なお、上記において比較値は、実施例2で使用したポリエーテル変性シリコーン共重合体に代えて、平均分子量6,200のジメチルポリシロキサンを使用して実施例2と同様にしてつくった消泡剤組成物(比較品)で評価した場合の泡の高さである。上記評価結果より、本発明の消泡剤組成物(2)は、比較品よりポリスチレン懸濁重合溶液の泡立ち抑制能力が非常に優れている。
【0054】
【発明の効果】本発明は、シリコーン系消泡剤組成物に於いて、消泡性成分として、従来から用いられてきたジメチルポリシロキサンに代えてシリコーン系ブロック交互共重合体を初めて採用したので、消泡能が非常に優れ、保存安定性もよく、且つ消泡対象物に対し、はじき、色むら、接着不良、塗装不良、透明性阻害等の悪影響を与えない消泡剤組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 消泡性成分(A)、微粉末無機化合物(B)、乳化剤(C)および水を含有する水中油型エマルジョン消泡剤組成物において、消泡性成分(A)は、一般式(1):
【化1】


(式中、Rは脂肪族不飽和を含まない1価の炭化水素基を表し、Yは炭素−ケイ素結合を介して隣接ケイ素原子に、そして酸素原子を介してポリオキシアルキレンブロックに結合している2価の有機基を表し、aは1〜100の整数を表し、mは0〜50の整数を表し、nは1〜100の整数を表し、n/m+nの値は0.5以上であり、dは1〜50の整数を表し、シロキサンブロックは共重合体の5〜95重量%を構成し、そして共重合体は少なくとも700の平均分子量を有する。)で表されるシリコーン系ブロック交互共重合体であることを特徴とする水中油型エマルジョン消泡剤組成物。
【請求項2】 微粉末無機化合物(B)は、微粉末シリカであることを特徴とする請求項1に記載の水中油型エマルジョン消泡剤組成物。
【請求項3】 乳化剤(C)は、一般式(2):
【化2】


(式中、Rは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基を表し、RおよびRは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基または次式:−YO(CO)p(CO)q R(式中、Rは脂肪族不飽和基を含まない1価の炭化水素基又は−Hを表し、Yは不飽和基を含まない炭素原子数2ないし8のアルキレン基を表し、pは1〜50の整数を表し、qは0〜50の整数を表す)で表されるポリオキシアルキレン基を表すが、RおよびRの少なくとも1つは該ポリオキシアルキレン基を表し、xは0以上の整数を表し、yは1以上の整数を表し、x+yは1〜300の整数であり、シロキサンブロックは共重合体の15〜95重量%を構成し、そして、共重合体は少なくとも300の平均分子量を有する。)で表されるポリエーテル変性シリコーン共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の水中油型エマルジョン消泡剤組成物。
【請求項4】 消泡性成分(A)および微粉末無機化合物(B)は、予めオイルコンパウンドに調製した上で、組成物中に配合することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の水中油型エマルジョン消泡剤組成物。
【請求項5】 各成分の配合割合は、消泡性成分(A)100重量部に対して0.1〜30重量部微粉末無機化合物(B)を配合したオイルコンパウンドを組成物全量基準で5〜70重量%、乳化剤(C)成分を組成物全量基準で1〜60重量%とし、さらに、残部が水となるようにすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の水中油型エマルジョン消泡剤組成物。

【公開番号】特開2001−212403(P2001−212403A)
【公開日】平成13年8月7日(2001.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−26570(P2000−26570)
【出願日】平成12年2月3日(2000.2.3)
【出願人】(000230331)日本ユニカー株式会社 (20)
【Fターム(参考)】