説明

消泡対応呉汁の煮沸装置

【課題】
豆乳と卯の花の製造方法、前記したように豆乳濃度が不安定で不快臭を、なお完全に除去出来なかったことと、香ばしさとコクを満足できずにいた点に鑑み、消泡剤を添加せずに豆乳濃度を安定させ豆乳、卯の花から完全に不快臭を除去するとともに、香ばしさとコクのある安全な豆乳卯の花の製造の装置を提供する。
【解決手段】
香ばしさとコクのある安定した豆乳と卯の花の装置において、生呉汁を100℃から550℃の過熱蒸気に接して、減圧と加圧可能な密閉式蓋を付けて、攪拌機と吸引装置も存在している呉汁煮沸釜で、泡の発生を少なくして、成分濃度の無変化にすることである。生呉汁を密閉式で攪拌機と吸引装置付き加熱ジャケット二重煮沸釜の装置にて、過熱蒸気を噴射させて短時間に直接に接して、さらに最終段階で熟成工程を設けることができる製造装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に呉汁を煮沸する場合には、泡が発生して、溶液に含有するために豆腐の品質が劣化することがある。そのために呉汁を煮沸する場合に消泡剤を添加せずに、豆乳の濃度を安定化して、しかも殺菌作用を施して食品衛生上で解決している呉汁の煮沸における装置に関する。
【背景技術】
【0002】
豆乳は健康食品であることから、最近需要が伸びている。その為、消費者から安全性、衛生面等が厳しくなり出来るだけ添加物を使用しない方が良いとの声も強く、消費者、あるいは生活協同組合等でも無添加を望まれている。
従来の煮沸方法においては、開放型では泡が吹き出す為又、吹き出さない様にするには、複雑な構造で能力も少量で作業効率が悪いものであった(特許文献1参照)。
【0003】
呉汁を高温で処理する上で一番の問題は、呉をどのようにして焦げ付かせることなしに、また、呉汁内の有効成分に影響を与えることなしに完全に青臭い不快臭を除去するとともに、香ばしさと深いコクを付与することができるかということである。さらに呉汁の加熱における煮沸においては泡の発生があり、気泡などが製品に混入するために、消泡剤などを使用することが多い。しかし添加物の含有という点で好まれない。
【0004】
この問題を解決するため、煮沸釜に攪拌機を使用することで解決策が検討されて来たが、十分な解決方法をもたらしていない。また豆乳の製品において、香ばしさと深いコクを十分に与えることができる処理法はなお満足すべきものが得られていないのが現状である。
したがって、消泡剤の添加がなされているのが現状である。
また呉汁の煮沸装置として、ジャケット付き、あるいは蒸気噴射装置付きが提案されているが、泡の発生、あるいは大豆本来の味を引き出し、高温での温度の均一化については問題を残している(特許文献3,4,5参照)
【0005】
又、温度の均一化の為にジャケット付二重釜が使用されているがジャケット部の間接加熱のみでは時間が掛かり、作業性が悪く、製品によっては長時間煮沸の場合には使用できない。特に呉汁の場合、長時間になるとこげを生じる為、間接加熱のみでは不適当である。(特許文献6参照)
【0006】
【特許文献1】特開2000−228970号
【特許文献2】特開平11−89722号
【特許文献3】特開平5−268900号
【特許文献4】特開昭58−1936668号
【特許文献5】特開2001−054364号
【特許文献6】特開昭63−141557号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、豆乳などの製造において呉汁を煮沸する際に、泡発生に対して多くの消泡剤(品質改良剤)等を使用している。そのために大豆本来の味を引き出すことが困難である。
また豆乳と卯の花の製造装置において呉汁を煮沸する釜が提案されているが、前記したように、呉汁の泡の発生を防ぐこと、豆乳濃度が不安定で不快臭(青臭み)を、なお完全に除去出来なかったことと、香ばしさとコクを満足できずにいた点に鑑み、また一般におから卯の花は豆腐製造のお荷物となり、産業廃棄物として処分されていたが、近年用途の見直しなどによって卯の花の需要の伸びが期待されるようになってきた。しかし卯の花の本来の特性である腐敗に対する懸念があり、卯の花として製品の安定、日持ちのよい装置を開発することが要請されている。さらに煮沸時に泡が発生しないような装置も期待されている。
【0008】
本発明は豆乳濃度を安定させ、生呉汁の煮沸の際に通常使用されている消泡剤を添加せずに、泡の発生を少なくする装置によって、豆乳と卯の花の両製品から完全に不快臭を除去するとともに、香ばしさとコクのある安全な豆乳、卯の花の製造装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
消泡剤等を使用せず、呉汁を煮沸する為には、温度を上げ呉汁中の泡と呉を分離し易くし、空気と不快臭を煮沸釜より排出しながら炊き上げ設定温度より圧力をかけて、発生した泡成分を完全煮沸して消去することである。それによって安全な大豆本来の美味しく、コクのある豆乳が得られる煮沸装置を提案するものである。
【0010】
本発明では、生呉汁は、間接的、及び直接的な加熱できる加熱煮沸釜にて、撹拌と吸引の操作を行いながら100℃から550℃の過熱蒸気で直接に接した後、加温の最終段階で熟成する時間を1分から20分間設ける。とくに生呉汁を密閉式の加熱ジャケット付二重煮沸釜にて、密閉状態で100℃から550℃の過熱蒸気に直接に接し、最終段階で熟成工程を設けている。特に撹拌と吸引の操作をすることが重要である。最終の熟成工程は75℃から130℃で、1分から10分間程度が望ましい。
【0011】
生呉汁入口より二重煮沸釜内に入れ終わると、蒸気管よりジャケット部へ入り間接加
熱し、さらに発射管を通じ直接加熱すると同時に、撹拌機を回転させ、上部に浮いている泡を巻き込み、呉と泡を一緒に加熱煮沸する。又、撹拌と同時に釜内部の不快臭等を吸引装置により排気する。そのことにより泡と呉とが分離し易くなり、泡が消滅していく。
設定温度(85℃から98℃)になる迄、充分空気及び不快臭を排出した後、吸引装置を止め、吸引口を閉じて圧力をかける。さらに密閉にして圧力をかけることにより、完全に炊けてない部分の泡に加熱熟成を充分にさせて、安定均一な煮呉にして、加熱用蒸気と撹拌機を停止する。その後呉出弁を開いて煮呉は、分離機にて豆乳と卯の花に分離される。
消泡剤無添加の加熱熟成された安全均一な煮呉になり大豆本来の美味しい豆乳、卯の花を得ることが出来る。
【0012】
本発明では、消泡対応の安定した豆乳卯の花の製造装置において、過熱蒸気噴射管を内部に設置した撹拌機と吸引装置付加熱二重煮沸釜(ジャケット付)と、100℃から550℃の過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置とからなる豆乳と卯の花の製造装置である。
過熱蒸気噴射管を内部に設置した撹拌機と吸引装置付加熱煮沸釜は、過熱蒸気噴射管を底部位置に設置しており、100℃から550℃の過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置は、低圧の水蒸気をパイプ式配管内に通して、外部から加熱装置によって100℃から550℃の過熱蒸気にすることができる装置である。
高温水蒸気発生装置は低圧の水蒸気を配管内に通して外部からの高温加熱であって、当該の配管内で低圧水蒸気を所定温度の蒸気になるようにしている外部加熱装置による高温蒸気を発生させる。
【0013】
本発明では、香ばしさとコクのある安定した豆乳と卯の花の製造装置において、過熱蒸気噴射管を内部に設置した撹拌機吸引装置付加熱二重煮沸釜(ジャケット付)と、100℃から550℃の過熱蒸気を発生させる過熱蒸気噴射装置とからなる豆乳と卯の花の製造装置である。
過熱蒸気噴射管を内部に設置した撹拌機と吸引装置付加熱二重煮沸釜(ジャケット付)は、外部から加熱可能な水蒸気加熱用の加熱煮沸釜であって、内部100℃から550℃の過熱蒸気を発生させることのできる過熱蒸気噴射管を底部位置に設置しており、又、撹拌機吸引装置付で100℃から550℃の過熱蒸気を発生させる過熱蒸気発生装置は、低圧の水蒸気をパイプ式配管内に通して、外部から加熱装置によって100℃から550℃の過熱蒸気にすることができるような装置である。
【0014】
低圧の水蒸気を通すパイプ配管としては限定しないが、蛇管もしくは直管の形状のものが使用される。さらに加熱装置は通常使用されている燃焼バーナーによるか、あるいは電気加熱によって行うことができる。一般には燃焼バーナーを使用することができる。
豆乳、卯の花の製造方法における前記した課題を解決する為、本発明は生呉汁を100℃から550℃の超高温に所定時間保持して不快臭を除去するとともに大豆繊維成分を引出し香ばしさとコクのある豆乳、日持ちのよい卯の花の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による生呉汁の処理方法においては、呉汁を100℃から550℃の超高温に所定時間保持する処理を行うが、その高温の程度とその高温への保持時間を適正に選定することにより、大豆繊維等の焦げ付きを適度に抑えて所望の香ばしさやコクを付与することができる。
【0016】
本発明による呉の処理方法において、呉汁を100℃から550℃の過温に保持するための熱源として、過熱水蒸気を採用すると、過熱蒸気の熱量の顕熱は僅かであるため、大豆繊維等の焦げ付きは一部生ずるにすぎない。この一部の焦げ付きと高温加熱での接触処理が豆乳・卯の花へ好ましい香ばしさとしての味覚を付与し深いコクを感ずる豆乳と、日持ちのよい卯の花とになるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
煮沸方法は図4の装置図に示した様に、煮沸釜内部に設置した蒸気噴射管より最初低温蒸気で煮沸し、その後設定温度より過熱蒸気(高温熱媒体)に切り替え設定時間及び設定温度まで煮沸及び蒸し炊きをして分離機で分離することにより、香ばしさとコクのある豆乳、卯の花を得ることが出来る。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例について具体的に説明する
図2に示すように、直径600mm、高さ600mmの容積170リットルの二重煮沸釜(ジャケット付)に、上部からプロペラ式攪拌機と吸引装置を取り付け、上部の蓋の密閉型容器に、原料の生呉汁50kgを入れ、図4に示すような外部に1インチのステンレスのパイプ500mm径の蛇管にしたものをオイル燃焼による外部加熱バーナーで低圧水蒸気を高温加熱する加熱装置によって550℃まで過熱蒸気(550℃ 0.5Mpa)を1インチの配管を通して釜内部に設置した直径400mmに2mmの穴を下部に開けた1インチの円形パイプの図4に示すような過熱蒸気噴射管より過熱蒸気で加熱し、並行して二重煮沸釜ジャケット部に水蒸気(120℃ 0.1Mpa)を入れて所定の温度98℃に加温し2分間蒸し炊きを行った後、分離機にて豆乳と卯の花に分離した。
上記の方法で煮沸された豆乳と卯の花は均一で、安定した香ばしいコクのある高品質の豆乳と卯の花を得ることが出来る
【0019】
上記の装置によって、浸積大豆20kgと水30リットルを配合し、グラインダーにて粉砕した生呉汁を生呉入口3より二重煮沸釜2内にポンプ又は圧力により送り込む。設定した量を送り終ると煮沸を開始する。配管6より蒸気(熱媒体)が二重煮沸釜2の内部の蒸気噴射管より生呉汁に直接加熱し、同時に配管5より蒸気(熱媒体)が二重煮沸釜のジャケット部13に入り周囲より間接加熱する。
同時に撹拌機にて低速撹拌し吸引を始める。98℃の設定温度に到達すると、吸引を停止、釜を密閉に蒸気の供給量を少なくする。2分前後蒸し炊き状態にして、絞り機(分離機)で豆乳と卯の花に分離した。
【0020】
二重煮沸釜(ジャケット付)に50kgの生呉汁を入れ、過熱蒸気(550℃ 0.5Mpa)を釜内部に設置した過熱蒸気噴射管より加熱し、並行して二重煮沸釜ジャケット部に水蒸気(120℃ 0.1Mpa)を入れて98℃に加熱する。
特に詳細には、生呉汁を生呉汁入口3より二重煮沸釜2内に入れ終わると蒸気管5より
ジャケット部へ入り間接加熱し、又6よりも発射管を通じ直接加熱すると同時に撹拌機7を回転させ、上部に浮いている泡を巻き込み呉と泡を一緒に加熱煮沸する。又、同時に吸引装置により不快臭を10−1より排出する。
【0021】
設定温度(85℃から98℃)になる迄、充分空気及び不快臭を出した後、開放弁10と吸引口10−1を閉じて圧力をかける。密閉にして、圧力をかける事により完全に炊けてない部分の泡を加熱して、さらに熟成を充分させて安定均一な煮呉にする。その後撹拌機7を止め、呉出弁4を開き煮呉は、分離機にて豆乳とオカラに分離される。消泡剤無添加の加熱熟成された安全均一な煮呉により大豆本来の美味しい豆乳、卯の花を得る事が出来る。
「比較例1」
【0022】
図6に示すように、直径600mm、高さ600mmの容積170リットルの煮沸釜(ジャケットと撹拌機なし)に、上部の蓋の開放型容器に、原料の生呉汁50kgを入れ、図4に示すような外部に1インチのステンレスのパイプを500mm径の蛇管にしたものをオイル燃焼による外部加熱バーナーで低圧水蒸気を高温加熱する加熱装置によって500℃の過熱蒸気(550℃ 0.5Mpa)を1インチの配管を通して釜内部に設置した直径400mmに2mmの穴を下部に開けた1インチの円形パイプの図4に示すような過熱蒸気噴射管より過熱蒸気で温度98℃に加熱し呉汁の処理を行った。
【0023】
上記の装置によって、浸積大豆20kgと水30リットルを配合し、グラインダーにて粉砕した 生呉汁を生呉入口3より攪拌機の無い煮沸釜1内にポンプ又は圧力により送り込む。設定した量を送り終ると煮沸を開始する。配管6より蒸気(熱媒体)が煮沸釜1の内部の蒸気噴射管より生呉汁に直接加熱して98℃の設定温度に到達すると過熱蒸気の供給量を少なくし、2分前後熟成して、絞り機(分離機)で豆乳と卯の花に分離した。
【0024】
煮沸釜に50kgの生呉汁を入れ、過熱蒸気を釜内部に設置した過熱蒸気噴射管より 加熱し、並行して煮沸釜部に水蒸気(120℃ 0.1Mpa)を入れて98℃に加温する。その後、過熱蒸気の供給量を少なくし、2分前後熟成して、絞り機(分離機)で豆乳と卯の花に分離した。
本結果では、釜より泡が吹き出す。又、むら炊きになり不快臭が残る。消泡剤を使用しないと豆乳、卯の花は出来なかった。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】煮沸釜(密閉式・ジャケットなし)攪拌機吸引装置付側面図
【図2】二重煮沸釜(密閉式・ジャケット付)攪拌機吸引装置付側面図
【図3】二重煮沸釜(水蒸気と過熱蒸気の切替え)攪拌機吸引装置付側面図
【図4】過熱蒸気噴射部(A側面図・B平面図)
【図5】過熱蒸気発生機
【図6】煮沸釜(開放式・ジャケットなし)攪拌機なし側面図
【符号の説明】
【0026】
1 煮沸釜(密閉式)
2 二重煮沸釜(密閉式)
3 生呉入口
4 呉出口
5 水蒸気(熱媒体)
5-1 水蒸気入口
6 高温蒸気(熱媒体)
6-1 高温蒸気入口
7 撹拌機
8 温度センサー
9 スチームトラップ
10 開放弁
10−1吸引口
10−2吸引装置切換
11 過熱蒸気発生装置
12 バーナー取付口
13 二重煮沸釜ジャケット部
14 煮沸釜(開放式)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呉汁の煮沸において、生呉汁の加熱煮沸装置は、減圧と加圧可能な密封式開閉蓋と、液温を均一にして、液中の泡を減少させるための攪拌機と吸引装置を取り付けている加熱ジャケット付加熱煮沸密閉釜で、二重煮沸釜内部の蒸気噴射管よりの直接加熱と二重ジャケット部よりの間接加熱することができることを特徴とする消泡対応呉汁の煮沸装置。
【請求項2】
呉汁の煮沸において、生呉汁の加熱煮沸装置は、減圧と加圧可能な密封式開閉蓋と、液温を均一にして、液中の泡を減少させるための攪拌機と吸引装置を取り付けている加熱ジャケット付二重煮沸密閉釜と、100℃から550℃の水蒸気を噴射させることのできる高温水蒸気発生装置とからなることを特徴とする消泡対応呉汁の煮沸装置。
【請求項3】
請求項2において、高温水蒸気発生装置は低圧の水蒸気を配管内に通して外部からの高温加熱であって、当該の配管内で低圧水蒸気を所定温度の蒸気になるようにしている外部加熱装置による高温蒸気を発生させることを特徴とする消泡対応呉汁の煮沸装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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