説明

消火のための方法および装置

【課題】火災および引火性物質を制御するための方法および装置を提供する。
【解決手段】種々の局面に従う火炎制御システム100は、抑制剤および吸熱剤を有する消火剤112を含む。この抑制剤は、火炎を抑制するように構成される。この吸熱剤は、火炎から熱を吸収するように構成される。1実施形態において、この吸熱剤は、火炎から熱放射を吸収するように構成され、抑制剤および/または他の表面からの火炎に戻る反射を妨害する。さらなるかつ代替的な実施形態において、吸熱剤は、抑制剤の粒子または液滴の表面および/または内部に熱を移動して、抑制剤の活性化を促進するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、米国特許仮出願第60/382,398号(2002年5月21日出願);および米国特許仮出願第60/430,912号(2002年12月3日出願)の利益を享受し、かつ、米国特許出願09/920,179号(2001年8月1日出願)の一部継続出願であって、各々の出願の記載を参考として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、火炎および引火性物質を制御するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
引火性物質、および、さもなければ、危険物は、殆どの人々の日常生活において重要な役割を果たしている。殆どの人々は、引火性物質(ガソリン、エンジンオイル、および天然ガス)に、恐れなく遭遇する。代表的には、この引火性物質が封じ込められているので、その近隣に人々にとって問題を提示しない。
【0004】
しかし、この引火性物質が封じ込められていない場合(例えば、その容器が損傷して、その物質が漏れ出た場合)、この物質は、危害を加え、また死にも至らしめる。消火システムは、火炎の制御および消火において重要な役割を果たす。多くの物質が、鎮火に関して種々の特性を示し、そして、種々の型の消火システム(乾燥粉末、液体、泡沫を含む)における用途を見出す。これらの物質の殆どは、火炎の原因となるものを直接的に攻撃する。特に、これら物質は、火炎を直接的に冷却し、火炎から燃料または酸素を取り去るか、また、そうでなければ、その火炎を持続させている化学燃焼過程を妨げることが意図される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の種々の局面に関する火炎制御システムは、抑制剤および吸熱剤を有する消火剤を備える。この抑制剤は、火炎を抑制するように構成される。この吸熱剤は、その火炎から熱を吸収するように構成される。1実施形態において、この吸熱剤は、その火炎から熱放射を吸収し、かつ、その抑制剤および/または他の表面からその火炎に戻る熱放射の反射を阻害するように構成される。さらなる、そして、代替的な実施形態において、その吸熱剤は、熱を抑制剤粒子または抑制剤液滴の表面および/または内部に熱を移動させてその抑制剤の活性化を促進するように構成され得る。
【0006】
図面における構成要素および工程は、明快性および明瞭性のために例示され、そして、必ずしも、いずれの一連のものに従うものではない。例えば、同時または異なる順序で実施され得る工程は、図面において例示され、本発明の実施形態の理解を増進することを助ける。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本発明の種々の局面に従う消火システムの例示である。
【図2】図2は、吸収剤粒子または吸収剤液滴と混合された、抑制剤粒子または抑制剤液滴の例示である。
【図3A】図3Aは、着色表面を有する抑制剤粒子の断面図である。
【図3B】図3Bは、被覆表面を有する抑制剤粒子の断面図である。
【図4】図4は、吸熱剤粒子からの残基部分を用いて部分的に特徴付けられる抑制剤粒子の例示である。
【図5】図5は、その内部へと浸透する吸熱剤を有する抑制剤粒子の断面図である。
【図6】図6は、吸熱剤粒子は、抑制剤粒子の表面に結合したか、そして/またはその中に埋め込まれた吸熱剤粒子を有する抑制剤粒子の断面図である。
【0008】
[発明を実施するための最良の形態]
(例示的実施形態の詳細な説明)
本発明は、機能的構成要素および種々の処理工程に見地から、部分的に記載される。このような機能的構成要素は、具体的な機能を実施するために構成される多数の構成要素によって実現され得、そして、種々の結果を達成し得る。例えば、本発明は、種々の構成要素、物質、抑制剤、吸熱剤、熱伝導体、中和剤などを用い得、これらは、種々の機能を実施し得る。さらに、本発明は、任意の数の、用途、環境、危険物、および消火剤に関連して実施され得、そして、記載される系は、単に、本発明に対する、例示的な用途である。
【0009】
さらに、本発明は、製造、組立、調剤などのための任意の数の従来技術を利用し得る。
【0010】
ここで、図1を参照すると、本発明の種々の局面に従って火炎を制御および消火するための火炎制御システム100は、消火剤112を含むディスペンサー110と組み合わせて実行され得る。このディスペンサー110は、火炎上または火炎の近辺にその消火剤112を散布する。この消火剤112は、その火炎の強度を低減するか、および/またはその火炎を絶つ傾向がある。
【0011】
このディスペンサー110は、消火剤112を散布するための任意の適切なシステムを含み得る。このディスペンサー110はまた、その消火剤112が火炎上または火炎の近辺に射出されるまでその消火剤112を貯蔵し得る。例えば、そのディスペンサー110は、従来型の消火システム(例えば、手動式消火器、ビル消火システム、車両消火システム、工業用消火システムなど)を備え得る。本実施形態において、このディスペンサー110は、消火剤112を貯蔵するためのタンク114およびその消火剤112を方向付けるためのノズル116を有する従来型の携帯型消火器を備える。代替的な実施形態におい
て、このディスペンサーは、消火剤が充填されかつ、衝撃のような引き金となる事象に応答して開放およびその消火剤を開放および分配するように構成された、車両用耐火パネルを備える。
【0012】
その消火剤112は、任意の適切な様式で(例えば、火炎から、熱、酸素または燃料を奪うことによって、また、そうでなければ、火炎を持続するのに必要とされる化学プロセスを消失させることによって)、火炎を制御または消火するように構成される物質である。本実施形態において、この消火剤112は、抑制剤および吸熱剤を含む。この抑制剤は、火炎を抑制するように構成される(例えば、火炎を覆って消火する(smother)か、燃料供給を断つか、または火炎を燃焼温度未満に冷却するように配置された、従来型の火炎抑制剤)。この吸熱剤は、火炎から吸熱する(例えば、消火剤112および/または他の表面によって熱放射に反射を低減するか、そして/または抑制剤の活性化を促進する)ように適切に構成される。
【0013】
この抑制剤は、例えば、従来技術を介して火炎を縮小するために構成される。例えば、この抑制剤は、炭酸水素ナトリウムまたは炭酸水素カリウム、リン酸アンモニウム、モノリン酸、塩化カリウム、カリウム塩、二酸化炭素、HFC−227ea、ハロンまたはハロトロン−I(halotron−I)、水または水霧状物(water mist)を含み得る。しかし、この抑制剤は、火炎を抑制するための適切な任意の物質を含み得る。
【0014】
第1の実施形態において、この吸熱剤は、消化剤112または他の表面によって火炎または他の熱源へと反射される熱、特に熱放射を低減するように構成され得る。火炎、特に、燃料の液体たまりの上に形成された2次元方向に広がる火炎は、火炎を持続させると同時にその熱エネルギーを分散させる、複数の機構(熱放射を含む)を有する。熱放射は、その火炎の持続および拡散に寄与する傾向がある。特に、火炎によって放出される熱放射は、その下の液体のたまりに熱を輸送し、燃料蒸気の蒸発を促進し、そして、燃料蒸気を反応範囲に導入することを促進して火炎を持続する。しかし、放射が全方向に放たれた場合、エネルギーも、その燃料および火炎から放たれる。その火炎を支持および維持するのに十分な熱を維持するために、その消失した火炎は、その火炎からの熱によって置き換えられなければならない。
【0015】
放射された熱はまた、そのもともとの位置から火炎を広げることに寄与し得る。火炎の放射効果および熱放射によって担われる役割は、複雑であって、これは、例えば、熱の消失の方向および範囲、周囲の構造における熱の放射およびその火炎に対して戻される再放射、周囲の熱気自体の中の放射の消失および発生、ならびに構成要素の各々からの放出、吸収、および反射のそれぞれの速度の複雑さに起因する。さらに、周囲の可燃性の構造(例えば、壁およびカーテン)における、放射に基づく熱の滞留(heat deposition)は、それらの着火および火炎の持続を生じ得る。この機構は、火炎のもともとの位置からそれらの周囲の構造体への火炎の拡大を生じ、そして、逃げ火(runaway fire)が拡大する条件にいたり得る。
【0016】
放射に基づいた熱はまた、乾燥化学消火剤粒子が火炎領域に導入されたときに、乾燥化学消火剤粒子の効率に影響を与え得る。種々の型の消火粒子は、火炎によって放出された熱に対する吸込み系(sink)として機能し得、そして、これは、その耐久温度(sustenance temperature)未満に冷却し得る。化学的に反応性の乾燥化学物質(Chemically reactive dry chemical)(例えば、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム)はまた、熱に対して曝されたときに分解して、二酸化炭素と金属イオンを放出し、火炎反応を化学的に中断して、そして、鎮火させる。小さい粒子ほど、効果的であるようだが、これは、おそらく、その粒子が、最適な効力のために速く蒸発しなければならないからである。
【0017】
しかし、殆どの従来型乾燥化学消火剤は、可視光で白色または近白色である。白い表面ほど、粒子の各々からの熱を火炎領域または燃料供給源に対して反射する傾向にあり、そして、その粒子自体による吸熱が低減される。その熱の反射は、その火炎の強さを増大させる傾向があり、そして、吸熱が少ないと、火炎からの抽熱速度を低減する傾向がある。吸収が低いことはまた、その粒子自体の分解および反応帯へと混合されるその対応する火炎阻害分解生成物の生成の速度を低減する傾向があり、そして、その結果、その火炎帯の上またはその近傍における粒子は、分解し得ない。このような粒子は、実質的に効果がなく、そして、大気または周囲領域に滞留する。
【0018】
本発明の種々の局面に従う消火剤112は、熱(例えば、熱放射によって伝達される熱)を吸収する吸熱剤を含む。吸熱剤はまた、あるいは、対流および/または伝導によって伝達される熱を吸収するように構成され得る。例えば、この吸熱剤は、その抑制剤の外面および/または内部を改変して、より大きい熱放射を吸収するように適切に構成される。結果として、より少ない熱が、反射され、その火炎を持続する傾向がある。さらに、より多くの熱がその抑制剤へと輸送され、その結果、熱応答性抑制剤が、より速く分解し得、その化学イオンおよび分解生成物を放出し、その火炎を化学的に妨害する。さらに、火炎
の直近にない吸熱剤は、その火炎からさらなる熱を抽出し得、そして、周囲領域への熱放射の伝達を低減することによって、周囲の可燃性物質の着火を潜在的に阻害し得る。
【0019】
1実施形態において、その吸熱剤は、抑制剤と共に色を提供して吸熱性表面を提供する(例えば、少なくとも部分的にその表面をつや消しブラックに変化させることおよび/またはその抑制剤粒子の内部に熱伝導体を提供することによって提供する)。吸収面は、熱を反射する代わりに熱を吸収する傾向がある。この吸熱剤は、環境からの抽熱および/またはその抑制剤の分解を促進する傾向がある。その吸熱剤の使用はまた、より大きな抑制剤粒子の使用を促進して、好ましい投入(throw)特性を維持する。その吸熱剤は、燃料供給源への熱の輸送および/または反射を阻害し、そして、反応帯の中心からさらに離れた領域で、その消火剤112が分解し、より濃縮された一群の金属イオンおよび不活性ガスを生成し、火炎に導入されること引き起こす。
【0020】
この吸熱剤は、火炎に戻るように熱を反射すること、熱を他の可燃物に伝導することを低減し、そして/またはその抑制剤の活性化を促進するような任意の適切な様式で構成され得る。本実施形態において、この吸熱剤は、熱(例えば、熱対流、熱伝導および/または熱放射を介して伝達された熱)を吸収するように構成される。この吸熱剤は、例えば、吸熱性の色または他の特徴を消火剤112に提供することによって、熱を吸収するのに適切な任意の様式で構成され得る。
【0021】
例えば、1実施形態において、この吸熱剤は、適切な色をその消火剤112に提供し得、その消火剤は、熱エネルギーを反射する代わりに熱エネルギーを吸収する傾向がある。この吸熱剤は、可能な限り多くの放射波長を吸収するように(例えば、つや消しブラックで)構成され得るか、または特定の波長または温度(例えば、炭素に基づく発光スペクトルに対応する波長または特定の環境において見出される特定の引火性物質に関連する波長を吸収するように構成され得る。あるいは、その吸熱剤は、任意の他の効率的であるかまたは所望される色(種々の階調のグレー)、吸熱在中で混ざる1以上の色、または他の構
成を提示し得る。その吸熱剤は、コスト、耐久性、選択された関連性のある波長を吸収する際の効率、消火剤112に着色することにおける効率、流れ効率、消火効率などの任意の適切な基準に従って選択され得る。その吸熱剤は、他の基準にも同様に従って選択され得、例えば、他の消火能力、改善された操作性、低毒性、より簡易である浄化性、または他の関連する基準に従って選択され得る。
【0022】
吸熱剤は、任意の適切な様式で抑制剤とともに機能し得る。例えば、この吸熱剤は、その抑制剤に近接して適切に構成される(例えば、吸熱剤は、抑制剤と混合されるか、抑制剤に結合されるか、または抑制剤に統合される)。図2を参照すると、1実施形態において、その消火剤112は、液体、気体、または液化圧縮ガスの抑制剤210を、液体または固体の吸熱剤212と混合して含み得る。この抑制剤210および吸熱剤212は、予め混合されるか、または散布の際に混合され得る。
【0023】
吸熱剤212は、任意の適切な様式で消火剤112の吸熱性を増加し得る(例えば、この吸熱剤は、気体の抑制剤210または液体の吸熱剤を暗色にすることによってかまたは熱放射を吸収するための暗色の表面を有する混合された粒子を提供することによって、吸熱性を増加し得る)。例えば、この吸熱剤212は、消火剤112の吸熱性を高めるために、色素、複数の小粒子または他の着色剤を含み得る。この暗色(例えば、つや消しブラック)の吸熱剤212と抑制剤210との組合せは、消火剤112の反射力を低減する傾向がある。液体吸熱剤212は、色素または他の着色法として機能して、消火剤112全体を、選択された吸熱性物質とし得る。気体、液体または固体の抑制剤210は、固体の吸熱剤212(例えば、複数の小さな黒色粒子またはビーズ)と共に混合されると、この消火剤112の全体の反射力は、低減される。
【0024】
別の実施形態において、この抑制剤212は、固体または半固体の物質であり、この吸熱剤212は、その抑制剤210に結合し得る。この抑制剤212は、火炎または他の危険に対する任意の適切な材料(例えば、従来型の乾燥化学火炎抑制剤)を含み得る。この吸熱剤212は、任意の適切な物質であり得、例えば、つや消しブラックであるか、または他の所望の色または特徴を有する物質であり得、抑制剤210または他の表面からの熱の反射を低減し、そして/または熱を吸収し、そして熱を抑制剤210に移し得る。
【0025】
例えば、図3Aを参照すると、吸熱剤212は、例えば、抑制剤210の外側表面上で、実質的に一様なコーティングの形態で抑制剤210粒子の幾つかまたは全部の表面上に位置づけられ得る。あるいは、図3Bを参照すると、この吸熱剤212は、その抑制剤210上に表面着色物を含み得る。抑制剤210粒子の表面のみを処理することは、必要とされる吸熱剤212の量を最小化する傾向があり、そして、コーティング表面または改変表面が、溶融して蒸発するまでの増大した吸熱性を維持する。
【0026】
この吸熱剤212は、任意の適切な様式で抑制剤210に塗布され得る。例えば、この吸熱剤212は、乾燥過程(例えば、色素または他の着色法をその抑制剤210粒子に塗布することによる)を使用して添加され得る。しかし、吸熱剤212を抑制剤210に塗布するための任意の適切な技術(例えば、蒸着、浸漬、噴霧乾燥、静電技術など)が、使用され得る。
【0027】
図4を参照すると、この抑制剤210はまた、吸熱剤212によって部分的に被覆され得る。この抑制剤210粒子の部分的な被覆は、任意の適切な様式で(例えば、熱抑制剤210粒子(例えば、活性炭粒子または適切な着色ゲル)の表面に残基部分(residue)を残す吸熱剤とその抑制剤210粒子を接触させることによって)実行され得る。本実施形態において、この抑制剤210粒子は、炭粒子410と混合され、そして、循環されて、炭または他の吸熱剤212によって送達される残基部分412を最適化し得る。
【0028】
別の実施形態において、この吸熱剤212は、抑制剤210に対して浸透されるかまたは包埋される。例えば、図5を参照すると、その吸熱剤212は、抑制剤210(例えば、液体色素または製造の間または後にその抑制剤に添加された物質)に浸透し得る物質を適切に包含する。あるいは、この吸熱剤212は、例えば、湿式処理を使用して吸熱物質から抑制剤210を形成すること(例えば、色素を添加して抑制剤210粒子を溶解し、そして後の粉砕および処理によって所望の消火剤粒子を形成すること)によって、その抑制剤210に組み込まれ得る。
【0029】
あるいは、図6を参照すると、この吸熱剤212は、抑制剤210中に形成されるかもしくは埋め込まれるか、またはその抑制剤210に結合される粒子を含み得るか、あるいはそれらの逆であり得る。この吸熱剤212は、任意の適切な吸熱剤(例えば、熱放射を吸収し、そして/または、抑制剤210の表面に熱を表面に移動するか、そして/もしくは抑制剤210の内部に移動するように構成された、物質)を含み得る。
【0030】
例えば、酸化鉄610または他の吸熱剤の粒子が、抑制剤210粒子の表面に結合され得る。この酸化鉄粒子610は、抑制剤粒子210よりも適切な程度に小さく、そして任意の様式でその抑制剤210粒子に付着するかまたはその抑制剤210粒子に埋め込まれ得る。酸化鉄は、代表的には、効率的な熱放射吸収剤であり、そして、抑制剤表面に熱を伝導し得る。酸化鉄は、一般的に、高温の環境において不活性であると考えられているが、抑制剤210粒子によって火炎内または他の高温領域に移動されると、この酸化鉄粒子610は、高効率の鉄イオンを分解および送達して、化学的に火炎を阻害し得る。
【0031】
この吸熱剤212はまた、消火剤112の吸熱性を増大させることならびに他の機能を
担い得る。例えば、この抑制剤210は、感熱活性化抑制剤(例えば、炭酸水素ナトリウム)を含み得、そして、その吸熱剤212は、抑制剤210の活性化を増進するように構成され得る。上述のように、この吸熱剤212は、抑制剤210に結合するか、または抑制剤210に組み込まれ得る。抑制剤210の活性化を促進するために、その吸熱剤212は、抑制剤210に対して熱を伝導するかまたはそれに対して発熱するかして、抑制剤210の活性化を加速するように適切に構成される。
【0032】
例えば、この吸熱剤212は、十分な高温に曝されたときに発熱反応をする物質(例えば、活性炭)を含み得る。火炎に暴露された場合に、吸熱剤は、局所的にさらに発熱して、抑制剤210の活性化を促進し、従って、火炎をより迅速に消す傾向があり得る。
【0033】
さらに、この吸熱剤212は、例えば、火炎から酸素または燃料を奪う傾向によって、補充的な抑制剤として機能し得る。例えば、吸熱剤212は、抑制剤物質を有する吸熱性物質を含み得る。あるいは、この吸熱剤212は、熱に曝されることによって活性化されて抑制剤210となる物質を含み得る。1実施形態において、この吸熱剤212は、抑制剤210中に埋め込まれて、抑制剤210の活性化を促進する物質を含み、そして、抑制剤210が活性化され、その吸熱剤212が昇温すると、その吸熱剤212は、抑制剤の特性を有する材料へと変化する。
【0034】
例えば、その消火剤112は、炭酸水素ナトリウム抑制剤210を含み得、この抑制剤210は、その抑制剤粒子中に埋め込まれた酸化鉄の吸熱剤212粒子を含み得る。熱に対して曝されるときに、抑制剤210粒子の内部に備えるこの吸熱剤212粒子は、熱を抑制剤210粒子に熱を移動し、抑制剤210の活性化を促進するための抑制剤210粒子の内部を備える。さらに、この吸熱剤212粒子は、鉄イオンを生じることで熱に反応し、これによって、その火炎を抑制するための加えられた抑制剤特性を提供する。
【0035】
消火剤112はまた、引火性成分を低減または中和するように構成され得る。例えば、この吸熱剤212は、引火性ガスを吸収する傾向がある多孔性物質(例えば、活性炭)を含み得る。あるいは、この吸熱剤212、抑制剤210、または消火剤112に対する添加物質は、多くの引火性成分のうちの1つの引火性を中和または低減する傾向の物質を含み得る。
【0036】
火炎の検出に応答(例えば、視覚的な応答または火炎検出システムを介する自動的な応答)において、本発明の種々の局面に従う火炎制御システム100および消火剤112を使用するために、消火剤112が、ディスペンサー110を介して、火炎または火炎の危険性があるところに、またはそれらの近辺に、散布される。消火剤112は、火炎に接近し、そして、火炎に接触するとき、その抑制剤210は、例えば、その火炎から燃料および/または酸素を奪うことによって火炎を低減する傾向にある。さらに、吸熱剤212は、火炎から熱を吸収する傾向がある。特に、この吸熱剤212は、火炎にもどして、そして/または他の表面に熱放射を反射することを低減する傾向がある。火炎と接触することができない消火剤112は、それでもなお、熱を吸収し、そして、消火剤112および他の表面から熱の反射または移動を低減し得、火炎の拡大または増大を阻害する傾向にある。
【0037】
さらに、この吸熱剤212は、抑制剤210の活性化を補助し得る。
【0038】
消火剤112が火炎に近づくにつれて、抑制剤210および吸熱剤212は、熱を吸収し、これらは、抑制剤210を活性化する傾向がある。この吸熱剤212は、抑制剤210よりも速く熱を吸収し、これは、抑制剤210に移動され、抑制剤210のより迅速な活性化を促進する。その抑制剤210の活性化は、抑制剤210の外表面に浸透する吸熱剤212を有する抑制剤210についてさらに増大され得、この結果、その吸熱剤212は、抑制剤210の内部に直接熱を輸送し得る。
【0039】
さらに、この吸熱剤212は、補助( supplementary )抑制剤へと変換され得る。吸熱剤212が火炎から熱を吸収するにつれて、この吸熱剤212は、抑制剤特性を有する材料へと変化し得る。この吸熱剤212はまた、引火性ガスを吸熱剤の孔に吸収することによって、その環境における引火性物質を吸収および/または中和し得る。
【0040】
示されそして記載された特定の実行は、本発明を例示するものであり、そして、その最良の様式を例示し、そして、他の場合において、如何にしても、本発明の範囲を限定することを意図しない。実際、簡潔さの目的で、本システムの、従来型の製造、結合、調製、および他の機能的な局面は、詳細に記載されないかもしれない。さらに、種々の図面において示された構成要素は、種々の構成要素の間の例示的な機能的関係および/または物理的な結合を表すことを意図する。多くの代替的なまたはさらなる、機能的関係または物理的な結合が、実際のシステムにおいては存在し得る。
【0041】
本発明は、好ましい実施形態を参照して上述された。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、好ましい実施形態に対して変化および改変がなされ得る。これらおよび他の変更または改変は、本発明の範囲に包含されることが意図される。
【0042】
本発明のより完全な理解は、以下の例示的な図と併せて考慮して詳細な説明を参照することによってもたらされ得る。以下の図において、同じ参照番号が、類似の構成要素および工程をいう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抑制剤および該抑制剤に隣接した吸熱剤を含む、消火剤。
【請求項2】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤は、前記抑制剤に対する表面改変を含む、消火剤。
【請求項3】
請求項2に記載の消火剤であって、ここで、前記表面改変は、前記抑制剤に対して加えられた表面着色を含む、消火剤。
【請求項4】
請求項3に記載の消火剤であって、ここで、前記表面着色が実質的につや消しブラックである、消火剤。
【請求項5】
請求項2に記載の消火剤であって、ここで、前記表面改変は、前記抑制剤の表面上で形成される残基部分を含む、消火剤。
【請求項6】
請求項5に記載の消火剤であって、ここで、前記残基部分は、炭素残基部分を含む、消火剤。
【請求項7】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、熱放射を吸収するように構成される、消火剤。
【請求項8】
請求項7に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、選択した波長を吸収するように構成される、消火剤。
【請求項9】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、熱に応答して前記抑制剤の活性化を促進するように構成される、消火剤。
【請求項10】
請求項9に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が前記抑制剤に熱を移動するように構成される、消火剤。
【請求項11】
請求項10に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、熱に発熱的に応答するように構成される、消火剤。
【請求項12】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤は、コーティング、色素、残基部分、埋め込まれた粒子、および独立した粒子のうち少なくとも1つを含む、消火剤。
【請求項13】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、前記抑制剤と混合される、複数の粒子を含む、消火剤。
【請求項14】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記抑制剤が、複数の粒子を含み;前記吸熱剤は、複数の粒子を含み;そして、前記吸熱剤粒子が、前記抑制剤粒子に結合する、消火剤。
【請求項15】
請求項14に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、酸化鉄を含む、消火剤。
【請求項16】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記抑制剤が、液体を含み;そして、前記吸熱剤は、液体および複数の粒子のうちの少なくとも1つを含む、消火剤。
【請求項17】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、前記抑制剤に浸透している、消火剤。
【請求項18】
請求項1に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、補助火炎抑制剤を含む、消火剤。
【請求項19】
消火剤であって、熱放射を吸収するように構成される着色の供給源を有する、抑制剤を含む、消火剤。
【請求項20】
請求項19に記載の消火剤であって、ここで、前記着色の供給源が、前記抑制剤に対する表面改変を含む、消火剤。
【請求項21】
請求項20に記載の消火剤であって、ここで、前記表面改変が、前記抑制剤に加えられた表面着色を含む、消火剤。
【請求項22】
請求項21に記載の消火剤であって、ここで、前記表面着色が実質的なつや消しブラックを含む、消火剤。
【請求項23】
請求項20に記載の消火剤であって、ここで、前記表面改変が、前記抑制剤の表面上に形成された残基部分を含む、消火剤。
【請求項24】
請求項23に記載の消火剤であって、ここで、前記残基部分が、炭素残基部分を含む、消火剤。
【請求項25】
請求項19に記載の消火剤であって、前記着色の供給源が、選択した波長を吸収するように構成される、消火剤。
【請求項26】
請求項19に記載の消火剤であって、ここで、前記着色の供給源が、熱に応答して前記抑制剤の活性化を促進するように構成される、消火剤。
【請求項27】
請求項26に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が前記抑制剤に熱を移動するように構成される、消火剤。
【請求項28】
請求項19に記載の消火剤であって、ここで、前記抑制剤が、液体を含み;そして、前記着色の供給源が、液体および複数の粒子のうちの少なくとも1つを含む、消火剤。
【請求項29】
請求項19に記載の消火剤であって、前記着色の供給源が、前記抑制剤に浸透している、消火剤。
【請求項30】
火炎制御システムであって、該システムは、消火剤ならびにディスペンサーを備え、該消火剤は、抑制剤および該抑制剤に隣接した吸熱剤を含み;
該ディスペンサーは、該消火剤を含むように構成される、システム。
【請求項31】
請求項30に記載の火炎制御システムであって、ここで、前記吸熱剤は、前記抑制剤に対する表面改変を含む、システム。
【請求項32】
請求項31に記載の火炎制御システムであって、ここで、前記表面改変が、前記抑制剤に加えられた表面着色を含む、システム。
【請求項33】
請求項32に記載の消火剤であって、ここで、前記表面着色は、実質的につや消しブラックである、消火剤。
【請求項34】
請求項31に記載の消火剤であって、ここで、前記表面改変が、前記抑制剤の表面上に形成された残基部分を含む、消火剤。
【請求項35】
請求項34に記載の消火剤であって、ここで、前記残基が、炭素残基部分を含む、消火剤。
【請求項36】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、熱放射を吸収するように構成される、消火剤。
【請求項37】
請求項36に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、選択した波長を吸収するように構成される、消火剤。
【請求項38】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、熱に応答して、前記抑制剤の活性化を促進するように構成される、消火剤。
【請求項39】
請求項38に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が前記抑制剤に熱を移動するように構成される、消火剤。
【請求項40】
請求項39に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、熱に対して発熱的に反応するように構成される、消火剤。
【請求項41】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤は、コーティング、色素、残基部分、埋め込まれた粒子、および独立した粒子のうちの少なくとも1つを含む、消火剤。
【請求項42】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、前記抑制剤と混合される、複数の粒子を含む、消火剤。
【請求項43】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記抑制剤が、複数の粒子を含み;前記吸熱剤が複数の粒子を含み;そして、吸熱剤粒子は該抑制剤粒子に結合している、消火剤。
【請求項44】
請求項43に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤粒子が、酸化鉄を含む、消火剤。
【請求項45】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記抑制剤が、液体を含み;そして、前記吸熱剤が、液体および複数の粒子のうちの少なくとも1つを含む、消火剤。
【請求項46】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤が、前記抑制剤に浸透している、消火剤。
【請求項47】
請求項30に記載の消火剤であって、ここで、前記吸熱剤は、補助火炎抑制剤を含む、消火剤。
【請求項48】
消火方法であって、火炎を検出する工程;および火炎を近接するように消火剤を与える工程を包含し、ここで、該消火剤が、抑制剤;および該抑制剤に隣接する吸熱剤を含む、
消火方法。
【請求項49】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤は、該火炎と近接する可燃物質との間に構成される、消火方法。
【請求項50】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が、該抑制剤に対する表面改変を含む、消火方法。
【請求項51】
請求項50に記載の消火方法であって、ここで、前記表面改変が、前記抑制剤に対して加えられる表面着色を含む、消火方法。
【請求項52】
請求項51に記載の消火方法であって、ここで、前記表面着色が、実質的なつや消しブラックを含む、消火方法。
【請求項53】
請求項50に記載の消火方法であって、ここで、前記表面改変が、前記抑制剤上に形成された残基部分を含む、方法。
【請求項54】
請求項53に記載の消火方法であって、ここで、前記残基部分が、炭素残基部分を含む、方法。
【請求項55】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が、熱放射を吸収するように構成される、消火方法。
【請求項56】
請求項55に記載の消火方法であって、前記吸収剤が、選択した波長を吸収するように構成される、消火方法。
【請求項57】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が、熱に応答して、前記抑制剤の活性化を促進するように構成される、消火方法。
【請求項58】
請求項57に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が前記抑制剤に熱を移動するように構成される、消火方法。
【請求項59】
請求項58に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が、熱に対して発熱的に反応するように構成される、消火方法。
【請求項60】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤は、コーティング、色素、残基部分、埋め込まれた粒子、および独立した粒子のうちの少なくとも1つを含む、消火方法。
【請求項61】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が、前記抑制剤と混合される、複数の粒子を含む、消火方法。
【請求項62】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記抑制剤が、複数の粒子を含み;前記吸熱剤が、複数の粒子を含み;そして、該吸熱剤粒子が、該抑制剤粒子に結合する、消火方法。
【請求項63】
請求項62に記載の消火方法であって、前記吸熱剤が、酸化鉄を含む、消火方法。
【請求項64】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記抑制剤が液体を含み;そして、前記吸熱剤が液体および複数の粒子のうちの少なくとも1つを含む、消火方法。
【請求項65】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が、前記抑制剤に浸透している、消火方法。
【請求項66】
請求項48に記載の消火方法であって、ここで、前記吸熱剤が、補助的火炎抑制剤を含む、消火方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224380(P2011−224380A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−118971(P2011−118971)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2004−506907(P2004−506907)の分割
【原出願日】平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願人】(504428913)ファイア−トレース ユーエスエー, エルエルシー (5)
【Fターム(参考)】