説明

消火栓のホース掛け装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建物の通路等に壁面に設置される消火装置において、消火栓格納箱内に配設されたホース掛け装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、消火栓用のホース掛け装置としては、図8、図9に示すように、格納箱31の背面板上部中央に横長長方形状のフレーム支持金具33を固着し、このフレーム支持金具33の前面一側部に軸受部材34をボルト35、35により固定して該軸受部材34に櫛体架設用フレーム36の基端部を前方に向かって水平方向に回動自在に軸支37させ、この櫛体架設用フレーム36の両端部に突設したブラケット38、38間に、前方に向かって多数本のホース掛け櫛歯39、39・・・39を突設してなる櫛体40の両端部を架設状態で支持させると共に、上記櫛体架設用フレーム36の先端にノズル吊支金具32を取付け、該ノズル吊支金具32の先端部上に櫛体40の他端側の櫛歯39を支持させてなる構造のものが広く知られている。
【0003】そして、格納箱31の一端上部に取付けている開閉弁41の給水口42に不使用時には扁平状になっているホース43の基端を接続すると共に該ホース43を櫛体40の一端側の櫛歯39から他端側の櫛歯39にジクザグ状に折り畳み状態で掛け渡すと共にホース43の先端に接続しているノズル44の首部をノズル吊支持金具32に係止させた状態にして格納箱31内に配設されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような消火栓用のホース掛け装置では、フレーム支持金具33の一端部に軸受部材34を設けてこの軸受部材34に櫛体架設用フレーム36の基端部を軸支37しているものであるから、ホース43の先端に接続しているノズル44は常に格納箱31内の他端側に位置することになり、従って格納箱31の開閉扉(図示せず)を、格納箱31の一端側縁(図においては右側)に回動自在に軸支した右勝手型(蝶番を右側に設けて該蝶番を中心に手前に開放する形式の扉)の消火栓装置用となって、左勝手型(蝶番を左側に設けて該蝶番を中心に手前に開放する形式の扉)に適するように構成するには、フレーム支持金具33の前面一端部に固定している軸受部材34の固定用ボルト35、35を取外したのち、該軸受部材34をフレーム支持金具33の他端部側に取付けなければならず、現場におけるその取付作業が極めて煩雑で手間を要することになる。
【0005】さらに、櫛体架設用フレーム36は軸受部材34によってその基端を片持ち状に支持されているにすぎないので、この櫛体架設用フレーム36にホース43をジクザグ状に掛け渡し支持した櫛体40やノズル44の荷重が軸受部材34の部分に集中的に作用することになり、その荷重に耐えるには必要以上の強度を有する構造としなければならないという問題点があった。
【0006】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは消火栓の設置現場において、左勝手型の扉と右勝手型の扉に応じてその開放される側にホースの先端ノズルが位置するように簡単に設置することができる消火栓のホース掛け装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のホース掛け装置は、格納箱の背面板に固着したフレーム支持金具と、このフレーム支持金具に基端部を前後方向に回動自在に支持される櫛体架設用フレームと、このフレームの先端部に枢支されるノズル吊支金具と、該フレームの両端部に前方に向かって突設したブラケット片間にその両端部を着脱自在に架設状態で支持され且つ長さ方向に一定間隔毎に多数のホース掛け櫛歯を前方に向かって突設している櫛体とからなる消火栓のホース掛け装置において、上記フレーム支持金具の前面両側部に上下一対のブラケットをそれぞれ突設しているとともに、これらブラケットに上下方向に貫通するピン挿通孔を穿設している一方、上記櫛体架設用フレームの基端部に縦筒体部を一体に設けてあり、この縦筒体部を上記いずれか一方側の上下ブラケット間に介在させてピンを該ブラケットのピン挿通孔を通じて縦筒体部に挿通させることにより、櫛体架設用フレームの基端部を上下ブラケット間に前後方向に回動自在に枢支し、更に、他方側の上下ブラケット間に櫛体架設用フレームの先端側を挿通状態で支持させるように構成している。
【0008】
【発明の実施の形態】支持金具は横長長方形状金属板からなり、この支持金具の前面両側部、即ち、左側と右側とにそれぞれ上下一対のブラケットを溶接等によって一体に固着したのち、該支持金具を消火栓格納箱の背面板の上部中央に固着しておく。この格納箱を建物内の通路等の壁面適所に設置したのち、櫛体架設用フレームを支持金具に取付ける。その際、該櫛体架設用フレームの先端部に取付けているホースノズルの吊支金具を格納箱の開閉扉の枢軸側と反対側に向け、該櫛体架設用フレームの基端部を開閉扉の枢軸側の上下ブラケット間に介在させてピンにより回動自在に支持させると共に先端側を他方の上下ブラケット間に挿通させ、該下側ブラケットに支持させた状態とする。
【0009】しかるのち、この櫛体架設用フレームの前面における両側ブラケット片間に架設した櫛体の櫛歯に、基端が開閉扉の枢軸側における格納箱の端部に設けている開閉弁の給水口に接続したホースをジグザグ状の折り畳み状態で掛け渡し、その先端ノズルを上記ノズル吊支金具に係止させた状態とする。
【0010】
【実施例】本発明の実施例を図面について説明すると、1は消火栓の格納箱で、図2に示すように、その前面開口部を扉2によって開閉自在に閉止している。3は格納室1の背面板1aの前面上部中央に固着した横長長方形状の金属板よりなるフレーム支持金具で、図3に示すように、その上下端部を後方に向かってL字状に彎曲して取付片3a、3bを形成し、この取付片3a、3bの平坦な後面を格納室1の背面板1aに溶接或いはボルト止め等により固着しているものである。このフレーム支持金具3の前面における左右両側部に、同一形状を有する上下一対のブラケット4a、4b;5a、5bを前方に向かって水平に突設してあり、これらの上下ブラケット4a、4bと5a、5bとの先端部に夫々同一垂直軸線上に連通するピン挿通孔6を貫設している。
【0011】7は上記上下ブラケット間に挿入可能な縦幅を有し、且つ水平方向の長さは上記フレーム支持金具3の横幅よりも長く形成されている正面細長長方形状の金属板よりなる櫛体架設用フレームで、その長さ方向の一端側を基端とし他端側を先端として該基端部に縦筒体部7aを形成している一方、先端上下部に上下に一定間隔を存して軸受筒片7b、7cを形成してあり、さらに、前面両側端部に前方に向かってブラケット片8、9を突設している。そして、先端側のブラケット片8の中央部に支持孔8aを設けている一方、基端側のブラケット片9の中央部に上記支持孔8aよりも大径の支持孔9aを設け、この支持孔9aからブラケット片9の前端面に連通する連通口9bを形成している。この連通口9bの縦方向の幅は上記先端側のブラケット片8に設けた支持孔8aの径に略等しく形成されている。なお、基端部側の縦筒体部7aも上下に一定間隔を存した筒片に二分割しておいてもよく、さらに先端側のブラケット8の支持孔8aにも前方に開口する連通口を設けておいてもよい。このように構成すれば、櫛体架設用フレーム7が左右対称の形状となって、後述するように右勝手型と左勝手型との使用態様に拘わらず、櫛体架設用フレーム7をフレーム支持金具3に上下反転することなく取付作業が行える。
【0012】この櫛体架設用フレーム7は、上記基端側の縦筒部7aをフレーム支持金具3の左側の上下ブラケット4a、4b又は右側の上下ブラケット5a、5bのいずれかの上下ブラケット間に介在させ、該ブラケットに設けている挿通孔6から縦筒部7aに一本のピン10を挿通させることによって一方の上下ブラケットにその基端部を前方に向かって水平方向に回動自在に支持させ、先端側を他方の上下ブラケット間に挿通させて下側のブラケットにより支持させるように構成している。
【0013】11はノズル吊支金具で、前部が開口12した円弧状のノズル係止アーム片13の後端に連結片14を介して短筒片15を一体に設けていると共にノズル係止アーム片13の一端部に外側方に向かって彎曲した櫛歯支持突片16を形成してなるものであり、上記短筒片15を上記櫛体架設用フレーム7の先端側の上下軸受筒片7b、7c間に介在させ、ピン17を上側軸受筒片7bから短筒片15を挿通して下側軸受筒片7cに挿入させることにより、櫛体架設用フレーム7の先端に水平方向に回動自在に枢支持されているものである。
【0014】18は櫛体で、図4に示すように、水平棒形状の金属製杆部19の前面に長さ方向(水平方向)に小間隔毎に一定長さを有する複数本の櫛歯20、20・・・20を前方に向かって突設してなるものであり、この櫛体18の杆部19の両端に上記櫛体架設用フレーム7のブラケット片8、9に設けた支持孔8a、9aにそれぞれ挿通、支持させた短軸部21、22を長さ方向に突設している。ブラケット片8、9の支持孔8a、9aに櫛体18を支持させるには、ブラケット片8の支持孔8aに櫛体18の一方の短軸部21を挿通、支持させたのち、他方の短軸部22を他方のブラケット片9の連通口9bを通じて支持孔9a内に挿嵌させればよい。
【0015】このようにフレーム支持金具3と、櫛体架設用フレーム7と、ノズル吊支金具11および櫛体18とから消火栓のホース掛け装置が構成され、このホース掛け装置を配設した格納箱1内には、図1に示すように、外部からの送水管(図示せず)と連結、連通した開閉弁23が装着されていて該開閉弁23の給水口24に、送水時には円形状に膨張するが不使用時には扁平形状となっているホース25の基端を連結し、該ホース25を上記ホース掛け装置の櫛体18の櫛歯20にジグザグ状に折り畳み状態で掛け渡され、ホース25の先端ノズル26をノズル吊支金具11の開口部12から挿入してその小径首部をノズル係止アーム片13の上端面に吊り下げ状態で係止させた状態にして格納箱1内に収納しておくものである。
【0016】格納箱1は、通常、図2に示すように右側が蝶番或いはピンによって手前に開放自在に軸支2bされ且つ左側に把手2aを有する右勝手型の扉2により開閉自在に閉止された構造のものが採用されるが、設置場所においては、格納箱1の開口部の左側に軸支され且つ右側に把手を設けた左勝手型の扉を配設する場合がある。そして、右勝手型の扉2を有する格納箱1の場合には、該扉2の枢軸2b側、即ち、図1に示すように格納箱1内の右側上部に開閉弁23が配設され、ホース25は右側から左側に向かって櫛体18に掛け渡されてその先端ノズル26を扉2の開放側である左側に配置させている。一方、扉が左勝手型の場合には、その逆に格納箱1内に左側上部に開閉弁23が配設され、ホース25は左側から右側に向かって櫛体18に掛け渡した構造とするものである。
【0017】上記ホース掛け装置は、上記いずれの使用態様にも容易に対応できるものであって、まず、右勝手型、左勝手型のいずれの場合においても、予め、格納箱1の背面板1aの前面上部中央にフレーム支持金具3を固着しておく。そして、消火栓施工現場において、右勝手型の場合には図3〜図5に示すように、櫛体架設用フレーム7の基端部の縦筒体部7aを右側に向けてフレーム支持金具3の右側の上下ブラケット5a、5b間に介入させ、ピン10により前方に向かって回動自在に枢着すると共に櫛体架設用フレーム7の先端側をフレーム支持金具3の左側の上下ブラケット4a、4b間に挿通させて下側ブラケット4b上に支持させる。
【0018】このように、櫛体架設用フレーム7をフレーム支持金具3の左右のブラケットによって両持ち状に支持させた状態にし、左側の上下ブラケット4a、4bから左方に突出した櫛体架設用フレーム7の先端に装着しているノズル吊支金具11の突片16上に櫛体架設用フレーム7の両ブラケット片8、9間に支持された櫛体18の最も左側に突設している櫛歯20の先端部を受止させて、櫛体18の全ての櫛歯20を先端に向かって上向き状態となるように支持する。櫛体架設用フレーム7に対する櫛体18の取付けは櫛体架設用フレーム7をフレーム支持金具3に取付ける前に行ってもよく、取付け後に行ってもよい。
【0019】こうして、格納箱1内にホース掛け装置を装着したのち、上記のように右側に配設している開閉弁23の給水口24にホース25の基端を接続し、該ホース25を櫛体18の右側の櫛歯20から左側の櫛歯20に順次、掛け渡したのち、そのノズル26をノズル吊支金具11に係止させた状態とするものである。
【0020】次に、左勝手型の場合には、櫛体架設用フレーム7の基端部の縦筒体部7aが左側に向くように上下反転させて該縦筒体部7aをフレーム支持金具3の左側の上下ブラケット4a、4b間に介入させ、図6、図7R>7に示すように、ピン10により前方に向かって回動自在に枢着すると共に櫛体架設用フレーム7の先端側をフレーム支持金具3の右側の上下ブラケット5a、5b間に挿通させて下側ブラケット5b上に支持させたのち、右側の上下ブラケット5a、5bから右方に突出した櫛体架設用フレーム7の先端に装着しているノズル吊支金具11の突片16上に櫛体架設用フレーム7の両ブラケット片8、9間に支持された櫛体18の最も右側に突設している櫛歯20の先端部を受止させて、櫛体18の全ての櫛歯20を先端に向かって上向き状態となるように支持する。
【0021】こうして、格納箱1内にホース掛け装置を装着したのち、左側に配設している開閉弁23の給水口24にホース25の基端を接続し、該ホース25を櫛体18の左側の櫛歯20から右側の櫛歯20に順次、掛け渡したのち、そのノズル26をノズル吊支金具11に係止させた状態とするものである。
【0022】
【発明の効果】以上のように本発明の消火栓のホース掛け装置によれば、格納箱の背面板に固着したフレーム支持金具と、このフレーム支持金具に基端部を前後方向に回動自在に支持される櫛体架設用フレームと、このフレームの先端部に枢支されるノズル吊支金具と、該フレームの両端部に前方に向かって突設したブラケット片間にその両端部を着脱自在に架設状態で支持され且つ長さ方向に一定間隔毎に多数のホース掛け櫛歯を前方に向かって突設している櫛体とからなる消火栓のホース掛け装置において、上記フレーム支持金具の前面両側部に上下一対のブラケットをそれぞれ突設しているとともに、これらブラケットに上下方向に貫通するピン挿通孔を穿設している一方、上記櫛体架設用フレームの基端部に縦筒体部を一体に設けてあり、この縦筒体部を上記いずれか一方側の上下ブラケット間に介在させてピンを該ブラケットのピン挿通孔を通じて縦筒体部に挿通させることにより、櫛体架設用フレームの基端部を上下ブラケット間に前後方向に回動自在に枢支し、更に、他方側の上下ブラケット間に櫛体架設用フレームの先端側を挿通状態で支持させるように構成しているので、櫛体架設用フレームの基端部を左右両側のいずれの上下ブラケットに対しても容易に枢着することができ、従って、簡単な作業で格納箱の右勝手型の扉と左勝手型の扉とに応じてホースノズルを使い勝手の良い方向に配設した構造とすることができる。
【0023】さらに、櫛体架設用フレームの先端側は枢着側と共に他方の上下ブラケット片により支持されるので、枢着部に過剰な荷重が掛かることなく安定した状態でホースを支持して収納しておくことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】扉を取り外した状態の格納箱全体の正面図、
【図2】扉を閉止した状態の簡略正面図、
【図3】ホース掛け装置のフレーム支持金具とノズル吊支金具との分解斜視図、
【図4】左側にノズル吊支金具を配設した状態の平面図、
【図5】その正面図、
【図6】右側にノズル吊支金具を配設した状態の平面図、
【図7】その正面図、
【図8】従来例を示す正面図、
【図9】そのホース掛け装置の平面図。
【符号の説明】
1 格納箱
2 罪
3 フレーム支持金具
4a、4bおよび5a、5b 上下ブラケット
7 櫛体架設用フレーム
10、17 枢着ピン
11 ノズル吊支金具
18 櫛体
20 櫛歯
23 開閉弁
25 ホース
26 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 格納箱の背面板に固着したフレーム支持金具と、このフレーム支持金具に基端部を前後方向に回動自在に支持される櫛体架設用フレームと、このフレームの先端部に枢支されるノズル吊支金具と、該フレームの両端部に前方に向かって突設したブラケット片間にその両端部を着脱自在に架設状態で支持され且つ長さ方向に一定間隔毎に多数のホース掛け櫛歯を前方に向かって突設している櫛体とからなる消火栓のホース掛け装置において、上記フレーム支持金具の前面両側部に上下一対のブラケットをそれぞれ突設しているとともに、これらブラケットに上下方向に貫通するピン挿通孔を穿設している一方、上記櫛体架設用フレームの基端部に縦筒体部を一体に設けてあり、この縦筒体部を上記いずれか一方側の上下ブラケット間に介在させてピンを該ブラケットのピン挿通孔を通じて縦筒体部に挿通させることにより、櫛体架設用フレームの基端部を上下ブラケット間に前後方向に回動自在に枢支し、更に、他方側の上下ブラケット間に櫛体架設用フレームの先端側を挿通状態で支持させるように構成したことを特徴とする消火栓のホース掛け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図8】
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【特許番号】第2872619号
【登録日】平成11年(1999)1月8日
【発行日】平成11年(1999)3月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−194253
【出願日】平成7年(1995)7月5日
【公開番号】特開平9−19511
【公開日】平成9年(1997)1月21日
【審査請求日】平成9年(1997)10月16日
【出願人】(000155838)株式会社立売堀製作所 (4)
【参考文献】
【文献】実公 昭47−42955(JP,Y1)