説明

消火栓装置点検システム

【課題】放水点検に用いる圧力センサの校正や圧力計の点検を簡単且つ容易にできるようにする。
【解決手段】自動点検に使用する放水圧力センサ78の校正時に、マスタ圧力センサが検出している給水圧力を基準スパン圧力として測定すると共に、遠隔三方切替弁76の通常切替位置で放水圧力センサ78が検出する大気開放圧となる零点圧力、及び遠隔三方切替弁76の点検切替位置への切替えにより給水圧力を導入して放水圧力センサ78が検出するスパン圧力を測定し、放水圧力センサ78の零点及びスパンをマスタ圧力センサの零点及びスパンに校正するための零点補正定数及びスパン補正係数を導出する。校正終了後は、遠隔放水点検の際に放水圧力センサ78で検出された圧力を、零点補正定数およびスパン補正係数に基づいて補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル付きホースを引き出して消火を行う消火栓装置の点検システムに関し、特に放水点検の際に放水圧力を確認する圧力センサや圧力計を点検する消火栓装置点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車専用道路のトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器や非常電話が設けられ、火災消火のために消火栓装置やトンネル防護のための水噴霧ヘッドから水を散布させる水噴霧自動弁装置が設けられる。
【0003】
消火栓装置にはノズル付きホースが収納されており、火災時には消火栓扉を開いてノズル付きホースを引き出し、消火栓弁開閉レバーを操作することでノズルから放水するようにしている。また消火栓装置には、火災時に使用者に支障がないように、ノズルからの放水圧力を自動で調整する自動調圧機能(自動調圧弁)が備えられている。
【0004】
トンネル内の非常用設備は、半年又は1年に一度、定期点検が実施される。その中で消火栓装置については、放水圧力を自動調整する機能が問題なく働き、所定の消火性能を満足しているかどうか確認するため、トンネル内の通行を規制した状態でノズル付きホースを引き出して実際に放水する放水点検を行い、ホースに異常がないか確認すると共に、放水圧力が基準を満たしているかを確認する放水点検を行う。点検終了後には、ホース内の水抜きをしながらホースを巻き上げて装置内に収納している。
【0005】
このような消火栓装置の放水点検は、ホースの出し入れ、ホース内の水抜きや放水圧力測定など多くの手間と時間がかかることから、放水起動操作用の消火栓弁とホースの間にメンテナンス用装置(点検用継手)を取り付け、放水点検時には、メンテナンス用装置に点検ノズル付きのダミーホースを取り付けて放水点検を行い、ホースの引き出しと収納をしなくともノズル放水状態と水圧の確認ができるように簡略化した放水点検も行われている。
【0006】
この放水点検は、上述の定期点検以外に、消火栓装置を現場に設置する時にも自動調圧弁の調圧値を設定するため行うことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−279544号公報
【特許文献2】特開2005−318972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、メンテナンス用装置を使用した消火栓装置の点検方法にあっては、トンネル内の消火栓装置の設置場所に点検者が出向き、メンテナンス用装置を取り付けて一台ずつ実放水を行って点検をおこなっているため、点検時間が長くかかり、その間は車線規制を行う必要がある。
【0009】
このようなことを回避するためは、ダミーホースによる実放水をやめて、点検の際に、加圧消火用水の供給経路をノズル付きホース側からドレイン管側にバルブ等で切り替え、ノズル付きホースに相当する損失を与えるオリフィスを介して排水し、自動調圧弁の二次側に接続した圧力センサで放水圧力を測定することが考えられる。この構成であれば道路側に放水することなく点検が行えるため車線規制が必要ない。このような放水点検をセンタからのコマンド伝送による遠隔制御で行うことも考えられる。
【0010】
このような消火栓装置に圧力センサを設けて現地あるいは遠隔的に放水点検を行うようした場合、消火栓装置に設けられた測定機器としての圧力センサの検出精度が重要となり、消火栓装置毎に設けられた圧力センサを校正する作業が必要となる。圧力センサを点検する場合は、圧力センサを消火栓装置から取り外し、圧力センサ用の点検装置に接続して点検放水圧を与えたときに正しい水圧値を出力するか確認する作業が必要であり、圧力センサ自体の点検に手間と時間がかかるという問題がある。
【0011】
圧力を検出する部材として、水圧を機械的に計測して指示針でアナログ的にその場で表示する一般的には圧力計と言われるものや、測定した水圧をデジタル的に外部に信号線を介して出力可能な圧力センサもある。
【0012】
なお、この圧力センサは放水点検時に限らず、実際の消火作業時に規定の水圧が出されているか確認するために使用することも可能であり、この場合も圧力センサが正しい値を示すか定期的に点検または校正を行うことが必要となる。
【0013】
本発明は、消火栓装置に設けられた放水点検に用いる圧力センサや圧力計の放水圧力検出部の点検あるいは校正を簡単且つ容易にできるようにする消火栓装置の点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、加圧消火用水が供給される給水配管の接続部からノズル付きホースを接続したホース接続部までの間に、レバー操作により開閉される消火栓弁を接続した消火栓装置をセンタ装置により点検する消火栓点検システムに於いて、
消火栓装置に、
消火栓弁に並列接続され、外部からの制御信号により開閉される遠隔消火栓弁と、
消火栓弁の2次側に接続され、外部からの切替信号により、消火栓弁の2次側をノズル付きホース側に連通する通常位置と、消火栓弁の2次側をオリフィスを介して排水側に連通する点検位置とを切り替える遠隔点検弁と、
オリフィスの1次側の圧力を検出する放水圧力センサと、
外部からの切替信号により、前記消火栓弁の2次側を前記放水圧力センサに連通する通常位置と、消火栓弁の1次側を前記放水圧力センサに連通する校正位置とを切り替える遠隔切替弁と、
を設け、
消火栓装置に加圧消火用水を供給する給水配管に給水圧力を検出するマスタ圧力センサを設け、
センタ装置に、
マスタ圧力センサが検出している給水圧力を基準スパン圧力として測定すると共に、遠隔切替弁を通常位置に切り替えた状態で放水圧力センサが検出する零点圧力、及び遠隔切替弁の校正位置に切り替えた状態で放水圧力センサが検出するスパン圧力を測定し、放水圧力センサの零点圧力及びスパン圧力をマスタ圧力センサの零点圧力及びスパン圧力に校正するための零点補正定数及びスパン補正係数を導出する校正処理部と、
放水圧力センサで検出された圧力値を、零点補正定数およびスパン補正係数に基づいて補正する圧力補正部と、
を設けたことを特徴とする。
【0015】
また校正処理部はマスタ圧力センサで検出している基準スパン圧力を、消火栓装置に対する給水配管に水の流れのない静圧状態で測定する。
【0016】
センタ装置は、更に、遠隔点検弁を点検切替位置に切り替えた後に遠隔消火栓弁を開制御してオリフィスを介して排水側に消火用水を流す点検放水を遠隔的に行わせ、放水点検状態で放水圧力センサで検出した放水圧力を測定する点検処理部を備える。
【0017】
また本発明は、加圧消火用水が供給される給水配管の接続部からノズル付きホースを接続したホース接続部までの間に、レバー操作により開閉される消火栓弁を接続した消火栓装置点検システムに於いて、
消火栓装置に更に、
消火栓弁の2次側に接続され、消火栓弁の2次側を前記ノズル付きホース側に連通する通常位置と、消火栓弁の2次側を排水側に連通する点検位置とを切り替える点検弁と、
点検弁と排水側との間に設けられ、所定の点検流量を排水側に流すオリフィスと、
オリフィスの1次側の圧力を放水圧力として検出する放水圧力検出部と、
消火栓弁の2次側を放水圧力検出部に連通する通常位置と、消火栓弁の1次側を放水圧力検出部に連通する校正位置とを切り替える切替弁と、
を設け、
消火栓装置に加圧消火用水を供給する給水配管に給水圧力を検出するマスタ圧力検出部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、点検時に配管接続を切替える切替部を点検(校正)位置に切り替えて給水源圧力を圧力検出部に導入させることで、基準となる校正が行われたマスタ圧力検出部の値との比較で消火栓装置側の放水圧力検出部が正常状態か否かの確認ができ、消火栓装置に設けた放水圧力検出部の点検作業を簡単且つ容易に行うことができる。
【0019】
またノズル付きホースから消火用水を散水することなく、また放水圧力検出部を取り外すことなく点検を行うことができる。
【0020】
また、放水圧力センサを大気開放とする接続位置とした状態で圧力を測定することで、末端圧力センサの零点側の値が正しい値を示すか簡単且つ容易に把握できて、放水圧力センサの状態を判断することができる。
【0021】
さらに放水圧力センサの零点を校正するための零点補正定数を求めることで簡単且つ容易に放水圧力センサの零点側の校正を行うことができる。
【0022】
さらに放水圧力センサに加圧消火用水が供給されるよう給水配管側に接続する位置とした状態で、マスタ圧力センサの検出圧力を基準スパン圧力として測定すると共に、放水圧力センサの検出圧力をスパン圧力として測定し、測定した基準スパン圧力とスパン圧力とを比較することで、放水圧力センサが正常かどうか、あるいは校正可能かどうかを判断することができる。
【0023】
さらに測定した基準スパン圧力とスパン圧力に基づいて、放水圧力センサの圧力検出値の校正を行うことで、放水圧力検出部の校正を容易に行え、その後に行う信頼性のある放水点検を行うことができる。
【0024】
各圧力検出部の圧力測定や補正係数の設定をセンタ装置にて遠隔的に行えるようにすれば、現場に出向いて行う必要がなく、放水圧力検出部の校正が簡単且つ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による消火栓装置点検システムの実施形態を示した説明図
【図2】図1に設けた消火栓装置の外観と消火栓扉を外して内部構造を示した説明図
【図3】図1に設けた消火栓装置の放水バルブ系統と点検バルブ系統の実施形態を示した説明図
【図4】図1のセンタ装置と消火栓装置に設けた端末ユニットの詳細を示したブロック図
【図5】図4の圧力校正部によりマスタ圧力センサの検出特性に放水圧力センサの検出特性を校正するためのグラフを示した説明図
【図6】図4の圧力校正部と圧力補正部による圧力校正処理を示したフローチャート
【図7】放水圧力計を手動点検するための消火栓装置の放水バルブ系統と点検バルブ系統の他の実施形態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明による消火栓装置点検システムの実施形態を示したブロック図である。図1において、消火栓装置10はトンネルの側壁に沿って例えば50メートル間隔で複数台設置され、内部に消火作業に使うノズル付きホースと消火器を収納している。消火栓装置10の各々には、外部装置との伝送信号のやりとりや各種センサの検出状態の監視を行う端末ユニット12が設けられる。
【0027】
消火栓装置10に設けた端末ユニット12は、伝送路16を介して監視室などに設置されたセンタ装置14に接続される。センタ装置14は消火栓装置10の点検時に放水点検コマンドを含む電文信号(以下単に「電文」という)を端末ユニット12等に送信し、放水点検動作を行わせる。また放水点検に先立ち、消火栓装置10に設けている放水圧力検出部を校正するため電文の送受信を行う。
【0028】
センタ装置14に対してはポンプ制御盤18と防災受信盤20が接続されている。ポンプ制御盤18は、センタ装置14からの水噴霧装置の起動または消火栓装置等の遠隔点検に伴うポンプ起動信号を受けてポンプ設備を運転し、給水配管22に加圧した消火用水を供給する。
【0029】
防災受信盤20は図示しないトンネル内に設置された火災検知器からの火災検知信号を受信して火災警報を行うもので、火災警報に連動してセンタ装置14に火災移報信号を出力し、火災発生区域に対応した水噴霧設備の遠隔起動を行わせる。
【0030】
更に本実施形態にあっては、ポンプ制御盤18(ポンプ設備)から消火栓装置10に消火用水を供給する給水配管22にマスタ圧力センサ24を設けている。マスタ圧力センサ24は、特許請求の範囲のマスタ圧力検出部に相当するもので、定期的に校正されて正確な圧力値を示す圧力センサであり、通常監視状態で給水配管22に充填している消火用水の圧力を検出してセンタ装置14に送り、センタ装置14における消火栓装置10に設けている圧力センサの校正処理の際に、マスタ圧力センサ24で検出した圧力を基準スパン圧力として使用するようにしている。
【0031】
本実施形態にあっては、給水配管22に設けたマスタ圧力センサ24の検出特性に一致するように、消火栓装置10のそれぞれに設けている圧力センサの検出特性を校正する処理を行う。消火栓装置に設けた圧力センサを校正するための基準となるマスタ圧力センサ24については、点検に先立って、予め作業員がマスタ圧力センサ24の校正作業を現場で行い、校正が済んだマスタ圧力センサ24を前提に、センタ装置14からの電文により消火栓装置10に対する圧力センサの検出値を受けて校正処理を順次実行することになる。
【0032】
マスタ圧力センサ24は例えば4〜20mA又は1〜5Vを出力し、零点が例えば4mA、スパンが20mAであり、校正時には大気圧開放で零点を示す4mA、最大検出圧力でスパン20mAが得られるように調整する。
【0033】
このようにマスタ圧力センサ24は、消火栓装置10の点検に先立ち、現場での校正作業を必要とすることから、点検で使用するセンタ装置14を設置している監視室などに近いポンプ制御盤18やポンプ設備の給水配管22に設置することが望ましい。
【0034】
図2は図1に示したトンネルに設置される消火栓装置の説明図であり、図2(A)に正面図を、図2(B)に消火栓扉を外した状態の内部構造を示している。図2(A)において、消火栓装置10は、筐体26の前面に配置した化粧板28の右側の扉開口に、消火栓扉30と保守扉32が設けており、その内部がホース収納空間及びバルブ類収納空間となっている。消火栓扉30は下側の回動軸を中心に前方に開閉することができる。
【0035】
消火栓扉30の上には、上側の回動軸を中心に上向に開閉する保守扉32が設けられており、点検時に消火栓扉30を開いたあとに開くことができる。
【0036】
筐体26の左側扉開口の右側には通報装置扉34が設けられ、ここに赤色表示灯36、発信機38、及び応答ランプ40を設けている。赤色表示灯36は常時点灯し、消火栓装置10の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機38を押して内蔵スイッチをオンすると、発信信号が監視室のセンタ装置14を経由して防災受信盤20に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号がセンタ装置14から送られて、応答ランプ40を点灯する。
【0037】
通報装置扉34の左側には消火器扉42が設けられ、消火器扉42に対応した筐体22の内部を消火器収納空間とし、図2(B)に示すように2本の消火器45を収納している。消火器扉42は左側を回動軸として前方に開くことができる。また、消火器扉44の下側には覗き窓44が設けられ、外部から消火器の収納状態の有無を確認できるようにしている。
【0038】
図2(B)において、筐体22の左側にはホース収納空間が形成され、右側にバルブ類収納空間を形成している。ホース収納空間には、その周囲を囲んでホース50を押えるホースバケット46が設けられ、ホースバケット46及び筐体内壁で囲まれたホース収納空間にホース50を内巻きして収納している。ホースバケット46は、格子状のフレーム配置により扉開口の左右方向における略中央となる位置にホース取出口48を仕切り形成している。
【0039】
ホースバケット46の右側には、ホース取出口48から引き出したホース50の先端に装着しているノズル52を横向きで着脱自在に保持している。
【0040】
ホース収納空間の右側に配置したバルブ類収納空間には、ポンプ設備からの給水配管22が接続される消火栓接続口からホース接続口に至る配管系統に、給水弁54、消火栓弁、自動調圧弁58、自動排水弁、及びメンテナンス装置65を含む放水バルブ系統と後の説明で明らかにする放水点検バルブ系統を設けている。
【0041】
消火栓弁は消火作業時に手動で開放されて、ノズル付きホース側に消火用水を供給する。消火栓弁には消火栓弁開閉レバー66が設けられ、消火時の操作案内を表示した操作銘板の裏側に配置された消火栓弁を手動開閉する。自動調圧弁58は、消火栓弁からホース側に流れる消火用水を規定の圧力に調整してノズル52から規定の圧力で消火用水を放水させる。自動排水弁は消火栓弁の2次側に設けられ、通常状態では開放して消火栓弁よりも二次側に存在する配管内の消火用水を排水している。火災時に消火栓弁開閉レバー66を下向きとなる開位置に操作すると、消火栓弁が開放位置に作動され、配管内の水圧を受けて自動排水弁は閉鎖状態に切り替わる。そして、消火用水が自動排水弁で排水されることなくホース50側に給水される。メンテナンス装置65は、点検用のノズル付きホースが接続可能な継手であり、点検時に点検要員が消火栓装置の設置現場に向かい、点検用ノズル付きホースから実際に放水して点検を行うことで、ホース50を消火栓装置から引き出さなくても規定の放水圧が得られるか点検を行うことができる。なお、消火栓装置の放水点検をセンタ装置14からの遠隔制御のみで行う場合はメンテナンス装置65は設けなくても良い。
【0042】
消火作業時に消火栓弁開閉レバー66を操作すると、レバーの背後に設けた弁開閉検出スイッチがオンし、これによって図1のセンタ装置14を経由してポンプ制御盤18にポンプ起動信号が送られ、ポンプ設備が起動される。放水を停止する際には、消火栓弁開閉レバー66を元の上向き位置に戻すと消火栓弁を閉じる。
【0043】
また給水弁54の手前にはポンプ起動スイッチ70が配置される。給水弁54及びポンプ起動スイッチ70は消防隊が消火時に操作する機器であり、給水弁54に消防隊用のホースを接続して、ポンプ起動スイッチ70を操作することで、消防隊が消火活動を行うことできる。
【0044】
図3は本発明による消火栓装置の放水バルブ系統と点検バルブ系統の実施形態を示した説明図である。図3において、バルブ類収納空間には、給水弁54、遠隔消火栓弁55、消火栓弁56、自動調圧弁58、遠隔点検弁60、オリフィス72、遠隔三方切替弁76、圧力センサ78、自動排水弁62、安全弁64およびメンテナンス装置65を設けている。
【0045】
消火栓弁56は給水配管22を接続した給水弁54の1次配管に分岐接続され、消火栓弁開閉レバー66の操作により開閉され、消火作業時に消火作業者により開放されてホース側に消火用水を供給する弁である。消火栓弁56と並列には電動弁を用いた遠隔消火栓弁55が接続され、点検時にセンタ装置14からの制御信号により遠隔的に開閉制御される。自動調圧弁58は消火栓弁56の2次側に直列接続され、ノズル52側の放水圧力を所定圧に調整する。
【0046】
遠隔点検弁60は、電動式の三方切替弁であり、自動調圧弁58の2次側に接続され、センタ装置14からの切替信号により、自動調圧弁58の2次側のポートaとノズル側のポートbを連通する通常位置、又は自動調圧弁58の2次側のポートaを排水側のポートcに連通する点検位置に切り替える。
【0047】
この遠隔点検弁60における2つの切替位置におけるポートa〜cの連通及び切り離し状態は、図3の下側に取り出して通常位置60a及び点検位置60bとして示している。
【0048】
オリフィス72は遠隔点検弁60とドレインに至る排水管74aの途中に設けられ、遠隔点検弁60を点検位置にしたときに、所定の点検流量の消火用水を排水側に流す。即ち、オリフィス72はノズル52に相当する流量を流すもので擬似的なノズルとして機能し、点検時に74aから消火用水を排水することでノズル52から放水するときと同等の点検放水を実現することができる。
【0049】
放水圧力センサ78は自動調圧弁58の2次側の圧力を放水圧力として検出し、検出した放水圧力値は端末ユニット12によりセンタ装置14に測定情報として送られる。本実施形態では放水圧力センサ78の校正処理の際に大気開放圧となる零点圧力Pa及び給水配管22のスパン圧力Pbを切替え測定するため、遠隔三方切替弁76を介して放水圧力センサ78を接続している。
【0050】
遠隔三方切替弁76は、ポートaを自動調圧弁58の2次側に接続し、またポートbを給水弁54の1次側の給水配管22に接続しており、ポートcに圧力センサ78を接続している。通常監視状態にあっては、遠隔三方切替弁76はポートaとポートcを連通する右側に取り出して示す通常位置76aにあり、このため自動調圧弁58の2次側を放水圧力センサ78に連通し、自動調圧弁58の2次側は遠隔点検弁60を介してホース50側に連通していることから、放水圧力センサ78の導入圧力は大気開放圧となっている。
【0051】
また本実施形態による放水圧力センサ78の校正処理の際には、遠隔三方切替弁76をポートbとポートcを連通する右側に取り出して示す校正位置76bに切り替え、これによって1次側の給水配管22の圧力を放水圧力センサ78に導入し、図1に示したマスタ圧力センサ24と同じ給水配管22の圧力を検出できるようにしている。
【0052】
遠隔点検弁60からホース接続口67への配管の途中にはメンテナンス装置65が設けられ、点検用ホースを接続してノズル52からでなく点検ホースから実放水点検を行うことができる。また遠隔三方切替弁60のノズル側のポートbからドレインに至る排水管74bには自動排水弁62と安全弁64が並列に設けられ、自動排水弁62は、配管の圧力が所定圧より低い放水停止時は開放して配管内の水の対流を防ぎ、消火栓弁56を開放した場合の水圧の上昇を検知して排水を停止して自動調圧弁58で調圧された消火用水をノズルに送る。安全弁64はノズル配管やホース内の水圧が所定圧力より高くなった場合に弁を開放して消火用水を排水し、配管内の圧力を減圧する。
【0053】
端末ユニット12には制御負荷として遠隔消火栓弁55、遠隔点検弁60及び遠隔三方切替弁76を接続し、また、検出部や操作部として、消火栓弁56の弁開閉検出スイッチ68、放水圧力センサ78及び消防隊が使用するポンプ起動スイッチ70を接続している。
【0054】
ここで図3の実施形態による火災時の放水動作を説明する。消火栓装置10の通常監視状態にあっては、遠隔点検弁60は通常位置60aにあり、ポートaとポートbを連通することで、自動調圧弁58の2次側を遠隔点検弁60を介してノズル付きホース50側に連通している。
【0055】
火災時には、図2に示した消火栓扉30を開き、消火栓弁開閉レバー66を下向きとなる開位置に操作する。消火栓弁開閉レバー66の開操作により消火栓弁56が開放位置に作動され、給水配管22から供給された加圧消火用水を自動調圧弁58で所定圧に調圧した後、遠隔点検弁60を介してホース50側に供給し、ノズル52から放水する。
【0056】
同時に消火栓弁開閉レバー66の位置変化で弁開閉検出スイッチ68がオンし、端末ユニット12から図1のセンタ装置14に消火栓弁56の開操作検出電文を送信し、ホンプ制御盤18にポンプ起動信号を送ってポンプ設備を起動する。
【0057】
ノズル52からの放水中の放水圧力は通常位置76aにある遠隔三方切替弁76を介して放水圧力センサ78に導入され、放水圧力センサ78で検出された放水圧力は端末ユニット12からセンタ装置14に送信され、消火栓装置の起動表示と放水圧力値が正常か否かの監視が行われ、必要があれば放水圧力がセンタ装置14に表示される。
【0058】
放水を停止する際には、消火栓弁開閉レバー66を元の上向き位置に戻すと消火栓弁56が閉じ、同時に弁開閉検出スイッチ68がオフとなり、端末ユニット12から図1のセンタ装置14に閉操作検出電文を送信し、ホンプ制御盤18にポンプ停止信号を送ってポンプ設備の運転停止が行われる。
【0059】
次に図3の実施形態による放水点検時の動作を説明する。放水点検を行う際には、図1に示したセンタ装置14で消火栓装置を指定した放水点検開始操作が行われ、これに伴い端末ユニット12で放水点検の制御電文が受信される。受信電文から放水点検を認識した端末ユニット12は、遠隔点検弁60に制御信号を出力して通常位置60aから点検位置60bに切替える。これによって自動調圧弁58の2次側はオリフィス72を通って排水管74a側に連通する。
【0060】
続いて端末ユニット12は遠隔消火栓弁55に制御信号を出力して開制御する。遠隔消火栓弁55が開放されると、給水配管22からの加圧消火用水は自動調圧弁58で調圧された後、点検位置60bに切り替わっている遠隔点検弁60を通ってオリフィス72から排水管74aに流れ、擬似的な実放水点検状態を作り出す。
【0061】
放水点検中に圧力センサ78で検出された放水圧力値は、端末ユニット12から図1のセンタ装置14に送られて表示され、適正な放水圧力が得られているかどうかが判断でき、消火栓装置10の設置現場に出向く必要はない。
【0062】
また点検中にあっては、遠隔点検弁60からオリフィス72を介して排水管74aに消火用水が流れるだけであり、メンテナンス装置65にノズル付きダミーホースを接続した実放水点検のように、トンネル内への放水が行われることはなく、放水点検の際にトンネル内での車線規制は不要であり、簡単且つ容易に放水点検ができる。
【0063】
放水点検により測定された放水圧力の適否が判断されると、センタ装置14から放水点検終了の制御電文が送られ、この制御電文を端末ユニット12で受信して遠隔消火栓弁55に制御信号を出力して閉制御し、同時にセンタ装置14からポンプ停止信号がポンプ制御盤18に送られてポンプ設備の運転が停止される。
【0064】
遠隔消火栓弁55の閉制御に伴いオリフィス72側の圧力は低下し、放水圧力センサ78で検出している放水圧力がドレイン側の大気開放圧に低下した時に、端末ユニット12は遠隔点検弁60に制御信号を出力して点検位置60bから通常位置60aに切替え、放水点検を終了する。この遠隔点検弁60の点検位置60bから通常位置60aへの切替えは、管内に残っている消火用水を完全に排水するため、所定の遅延時間後に切替えることが望ましい。
【0065】
各消火栓装置の点検は、順次制御して点検を行う。点検のタイミングは操作者のセンタ装置14における点検開始操作によっても良いし、センタ装置14が定期的に自動で点検を行うようにしても良い。
【0066】
また放水点検中に、火災が発生した消火栓弁開閉レバー66の開操作が行われた場合には、弁開閉検出スイッチ68のオン信号をセンタ装置14が受信して遠隔点検弁60を点検位置60bから通常位置60aに切替えることで、ノズル52からの放水に切替える。
【0067】
なお、自動調圧弁58は消火栓弁56の二次側でなく、自動調圧弁58と遠隔消火栓弁55の一次側に設けても良い。
【0068】
図4は図1のセンタ装置と消火栓装置に設けた端末ユニットの詳細を示したブロック図である。図4において、消火栓装置の端末ユニット12には端末伝送部80と端末処理部82が設けられ、端末処理部82に対しては制御負荷として遠隔消火栓弁55、遠隔点検弁60及び遠隔三方切替弁76が設けられ、またセンサとして消火栓弁開閉検出スイッチ68、ポンプ起動スイッチ70及び放水圧力センサ78が設けられている。なお、端末ユニット12に接続される各切替弁の切替位置を監視するセンサを各切替弁に設け、端末ユニット12を介してセンタ装置14にて監視できるようにしても良い。
【0069】
一方、センタ装置14にはセンタ伝送部84とセンタ処理部86が設けられ、センタ処理部86に対しては表示部94、操作部96、警報部98、更に記憶部100が接続されている。センタ処理部86にはコンピュータのCPUによるプログラムの実行で実現される機能として、消火栓装置監視部87、点検処理部88、校正処理部90及び圧力補正部92が設けられている。更にセンタ伝送部84には、消火栓装置に対する給水配管側に設けたマスタ圧力センサ24からの伝送線が接続されている。
【0070】
センタ処理部86に設けた消火栓監視部87は、火災発生により消火栓装置からノズル付きホースを引き出して放水するときの消火栓弁開閉レバー66の開位置への操作に伴う消火栓弁検出スイッチ68のオンに基づく電文を端末ユニット12から受信した際に、ポンプ制御盤18にポンプ起動信号を送ってポンプ設備を起動する。
【0071】
その後、端末ユニット12から受信した放水圧力センサ78で検出した放水圧力の測定電文に基づき、放水圧力が得られた時に消火栓装置の動作表示を表示部98に行う。受信した放水圧力と予め定められた正常水圧範囲とを比較し、放水状態が正常か異常かを表示する。また消火栓弁検出スイッチ68のオフに基づく電文を端末ユニット12から受信した際に、ポンプ制御盤18にポンプ停止信号を送ってポンプ設備を停止する。
【0072】
点検処理部88は消火栓装置10の定期点検の際に、担当者の点検指示操作あるいは自動点検時期到達に基づき放水点検の制御電文を端末ユニット12に送信して放水点検を行わせる。
【0073】
校正処理部90及び圧力補正部92は、点検処理部88による放水点検に先立ち、担当者の校正指示操作や自動校正時期の到来による校正指示に基づいて動作し、消火栓装置10に設けている放水圧力センサ78の圧力検出部を校正して正しい放水圧力を検出できる状態かを判断し、また圧力検出値の補正処理を行う。この放水圧力センサ78の点検処理は放水点検の直前に行っても良いし、定期的にセンタ装置が自動で放水圧力センサの点検や校正を行っても良い。
【0074】
校正処理部90は校正時に、まず給水配管22に設けているマスタ圧力センサ24で検出している給水圧力を基準スパン圧力Pmとして測定する。
【0075】
次に校正処理部90は、端末ユニット12に対し放水圧力センサ78の通常監視状態での検出圧力の測定を指示する測定要求電文を送信する。この測定要求電文を受信した端末処理部82は、そのとき放水圧力センサ78で検出しているホース側の大気開放圧を読み込み、放水圧力センサ78の零点圧力Paとしてセンタ装置14に伝送する。これによって校正処理部90は、放水圧力センサ78が通常監視状態で遠隔点検弁60の通常位置60aにより連通しているホース50側の大気開放圧、即ち零点圧力Paを取得することができる。このとき、零点圧力Paが校正することができる所定の校正可能範囲を示しているか判断し、校正可能範囲を外れている場合は、もはや放水圧力センサ78を点検に使用することができず、校正することも不可能なため、放水圧力センサ78の異常を警告する。
【0076】
放水圧力センサ78が異常でない場合は、続いて校正処理部90は、端末ユニット12に対し遠隔三方切替弁76の切替制御電文を送信する。この切替制御電文を受けて端末ユニット12の端末処理部82は、図3に示した遠隔三方切替弁76をポートaとポートcを連通する通常位置76aから、ポートbとポートcを連通する校正位置76bに切り替え、これによってマスタ圧力センサ78に導入していると同じ給水配管22の圧力を導入し、このとき得られる放水圧力センサ78の検出圧力値をスパン圧力Pbとして検出し、測定応答電文によりセンタ装置14に伝送し、校正処理部90に取り込む。
【0077】
これによって校正処理部90は、マスタ圧力センサ24で検出した給水圧力となる基準スパン圧力Pm、校正対象とする放水圧力センサ78の零点圧力Pa、及び放水圧力センサ78で検出したマスタ圧力センサ24と同じ給水圧力に基づくスパン圧力Pbを取得する。
【0078】
続いて校正処理部90は、マスタ圧力センサ24で検出した基準スパン圧力Pmと、放水圧力センサ78のスパン圧力Pbとを比較し、その値の差が所定の校正可能値より低い場合は校正処理を継続し、差が校正可能な値より大きい場合は、校正がもはや不可能と判断して校正処理を終了して、放水圧力センサ78の異常警報を出力する。
【0079】
放水圧力センサ78が正常である場合は、続いて校正処理部90は、放水圧力センサ78の零点圧力Paを大気開放圧とし、さらに放水圧力センサ78のスパン圧力Pbを、基準となるマスタ圧力センサ24の基準スパン圧力Pmに合致するように校正するための補正要素となる零点補正定数及びスパン補正係数を求める。
【0080】
図5は図4の校正処理部90によりマスタ圧力センサの検出圧力値に基づいて放水圧力センサの検出特性を校正するためのグラフを示した説明図である。図5において、横軸はマスタ圧力センサ値Px、縦軸は放水圧力センサ値Pyを示しており、マスタ圧力センサ24からは給水圧力に対応した基準スパン圧力Pmが測定されており、マスタ圧力センサ24に一致するように放水圧力センサ78を校正した結果は、Px=Py=0の零点と、Px=Py=PmとなるD点(Pm,Pm)を結んだ直線102で与えられる。
【0081】
しかしながら、放水圧力センサ78は、校正前にあってはマスタ圧力センサ24の零点及び基準スパン圧力Pmからずれている。例えば放水圧力センサ78の零点圧力はA点の零点圧力Paであり、またマスタ圧力センサ24と同じ給水圧力を導入して測定したときのスパン圧力は例えばB点のPbであったとする。このため放水圧力センサ78の検出特性はA点(0,Pa)とスパンを決めるB点(Pm,Pb)を結んだ直線104の検出特性となっている。
【0082】
そこで放水圧力センサ78の検出特性となる直線104の特性を、マスタ圧力センサ24の特性に一致する直線102の特性に一致させるため、零点補正定数とスパン補正係数を求める。まず零点補正定数は直線104の零点となるA点を直線102の原点となる零点に移動させればよいことから、零点補正定数はPaとし、この零点補正定数Paを、測定した放水圧力センサの圧力Pyから減算すればよい。この零点補正定数Paの減算により、放水圧力センサ78の特性となる直線104は、平行移動した直線106の特性に校正される。
【0083】
このようにして直線106に校正することで零点調整が済んだならば、次にスパンを決めるC点を、基準特性となる直線102のスパンを決めるD点に校正するためのスパン補正係数Kを求める。ここでC点の座標は(Pm,Pc)であることから、C点をY軸方向でD点に校正するためのスパン補正係数Kは
K=Pm/Pc=Pm/(Pb−Pa) (1)
として与えられる。したがって、測定された放水圧力センサ78の測定値Pyをマスタ圧力センサと同じ検出特性の圧力に補正するための補正式は
Py=K(Py−Pa) (2)
となる。
【0084】
なお図5にあっては、放水圧力センサの零点圧力Paがプラス側にずれている場合を例に取っているが、マイナス側にずれている場合についても、−Paを使用することで前記(1)(2)式をそのまま適用できる。
【0085】
このように本実施形態における放水圧力センサの校正は、放水圧力センサそのものを取り外しての校正ではなく、予め校正しているマスタ圧力センサの検出特性に一致するように、測定された放水圧力センサの測定値を校正することで、校正のために現場に行くことなく正しい圧力が得られるようにしている。
【0086】
再び図4を参照するに、センタ処理部60に設けた圧力補正部92は、校正処理部90による校正処理で零点補正定数Pa及びスパン補正係数Kが得られた後、放水圧力センサ78から測定された測定圧力Pyを前記(2)式に従って補正し、この補正結果を例えば表示部94に表示したり、補正済みの圧力から放水動作を判別して放水動作表示などを行うことになる。
【0087】
図6は図4の圧力校正部と圧力補正部による圧力校正処理を示したフローチャートであり、コンピュータのCPUによるプログラムの実行で実現される処理フローとなる。
【0088】
図6の圧力校正処理において、まずステップS1で操作員による操作部96などで放水圧力センサの圧力校正要求の有無を判別しており、圧力校正要求を判別すると、ステップS2に進み、1次側の給水配管22に流水のない静圧状態であることを確認する。この静圧状態の確認は、センタ装置14の表示部94を見て動作している消火栓装置がないことを確認すればよく、これは人為的に行ってもよいし、センタ処理部86の処理機能として行ってもよい。
【0089】
この給水配管22に流水のない静圧状態の確認は、もし流水があるとマスタ圧力センサ24を設置した給水配管22の位置での給水圧力と、実際に点検を行う放水圧力センサ78の給水配管22の位置とでは、給水圧力に相違が出ることから、これを回避するために静圧状態を確認して校正処理を行う。
【0090】
続いてステップS3で予め校正されたマスタ圧力センサ24の圧力値Pmを基準スパン圧力として測定する。次にステップS4で放水圧力センサ78の零点圧力Paを測定する。このとき図3に示すように、遠隔三方切替弁76は通常位置76aにあり、ポートaとポートcを連通してホース側の大気開放圧を放水圧力センサ78に導入した状態で測定している。
【0091】
続いてステップS5で図3の遠隔三方切替弁76をポートbとポートcを連通する校正位置76bに切り替え、1次側の給水配管22の給水圧力を放水圧力センサ78に導入する。この状態で、ステップS6において放水圧力センサ78により給水圧力Pbをスパン圧力として測定する。
【0092】
続いてステップS7で遠隔三方切替弁76を元の通常位置76aに戻した後、ステップS8で基準スパン圧力Pm、零点圧力Pa及びスパン圧力Pbに基づき、零点補正定数Paとスパン補正係数Kを計算する。
【0093】
次のステップS9〜S12は、図4の圧力補正部92の処理となる。ステップS9にあっては、遠隔放水点検かを判断しており、遠隔点検を判別するとステップS10に進み、放水圧力センサ78の圧力Pyを測定し、続いてステップS11で前記(2)式に基づき補正計算を実行し、ステップS12で校正後の補正圧力Pyを出力することになる。
【0094】
図7は消火栓装置に放水圧力を表示する圧力検出部として圧力計を常時設置した場合に、消火栓装置が設置された現場にて圧力計を手動点検するための消火栓装置の配管系と制御系を示した本発明の他の実施形態を示した説明図である。
【0095】
図7において、給水配管22を接続した給水弁54の1次側からホース50に至る配管系には、消火栓弁56、自動調圧弁58、点検弁160が設けられる。消火栓弁56と自動調圧弁58の配置は逆でも良い。点検弁160のポートcに接続した排水管74aにはオリフィス72が設けられ、所定のノズル52から放水するときの実放水量と同等の点検放水量を流すようにしている。また点検弁160のホース側の配管からは排水管74bが接続され、ここに自動排水弁62と安全弁64が並列に接続されている。
【0096】
点検弁160は、自動調圧弁58の2次側に接続され、自動調圧弁58と点検弁60の間には、ノズル付きホース50からの放水圧力を表示するため、三方切替弁176を介して圧力表示部を備えた放水圧力計178が接続され、さらに放水圧力計に並列に所定圧力を検出した場合に放水信号を外部に出力可能な圧力スイッチ180を接続している。
【0097】
三方切替弁176は、ポートa、b、cを持ち、手動で切り替え可能な弁であり、通常監視状態にあっては、ポートbとポートcを連通する左側に取り出して示す通常位置176aにあり、これによってホース50側の大気開放圧を放水圧力計178を導入し、また消火作業時や点検時に消火栓弁56を開いた時は放水圧力を表示し、また放水圧力が所定圧に上昇したときに圧力スイッチ180をオンして放水信号を出力できるようにしている。三方切替弁176のポートaは給水弁54の1次側の給水配管22が接続されている。
【0098】
また三方切替弁176は放水圧力計178の点検時には、ポートaとポートcを連通する左側に取り出して示す点検位置176bに切替可能であり、給水配管22の圧力を導入して表示できるようにしている。
【0099】
一方、給水配管22には、図1の実施形態と同様に、センタ装置やポンプ設備に近い位置に圧力表示の基準となるマスタ圧力計124を接続している。
【0100】
図7の実施形態における放水圧力計178の点検は現場に出向いて行われる。点検に際しては、まず圧力点検装置などを使用して給水配管22に接続しているマスタ圧力計124の零点及びスパンを正しい値に調整する校正を行い、マスタ圧力計124が正しく圧力を表示できる状態とし、校正の済んだマスタ圧力計124を給水配管に接続して表示している給水圧力Pmを読み取って記録しておく。
【0101】
その後、消火栓装置10に出向いて、放水圧力計178の点検を行う。放水圧力計178の点検は、通常監視状態における三方切替弁176の通常位置176aで放水圧力計178を見て大気開放圧による零点を確認した後、三方切替弁176をポートaとポートcを連通する校正位置176bに切り替え、1次側の給水配管22の給水圧力を放水圧力計178に導入する。
【0102】
このとき放水圧力計178が正常であれば、その圧力表示は既に基準として測定したマスタ圧力計124と同じ圧力Pmに近似した表示となり、放水圧力計178は正常と確認することができる。これに対し、放水圧力計178の給水圧力の表示がマスタ圧力計124の表示圧力Pmから無視できない程度の大きな誤差を持って表示されている場合には、放水圧力計178は正しい圧力を表示しておらず、信頼できないことから、この場合には放水圧力計178を調整済の新品の圧力計に交換する。
【0103】
三方切替弁176の切替えによる給水圧力の導入による放水圧力計178の点検時には、同時に圧力スイッチ180に対しても給水圧力が導入され、圧力スイッチ180が動作して放水確認信号をセンタ側に出力する。したがって、これによって圧力スイッチ180の動作確認も同時に行うことができる。
【0104】
図7の点検弁160を使った放水点検には、点検弁160を通常位置の160aから点検位置の160bに手動で切替え、点検弁160をポートaとポートcを連通した状態で消火栓弁56を手動で開放操作し、消火用水をオリフィス72を介して排水することで、そのときの消火用水を通常位置176aにある三方切替弁176のポートbからポートcを介して圧力計178で圧力値を表示して放水圧を点検することができる。
【0105】
なお、図3の遠隔点検を可能とする消火栓装置の実施形態にあっては、遠隔点検のために放水圧力センサ178のみを設けているが、必要に応じて現場での圧力確認も必要であることから、放水圧力センサ178と並列に圧力計を接続するようにしてもよい。
【0106】
また上記の実施形態は、消火栓装置の放水点検に先立って放水圧力センサの校正を行う場合を例に取っているが、放水圧力センサの校正は必要に応じて適宜のタイミングで行うようにしてもよい。
【0107】
また、図3および図7の放水圧力検出部78、178のポートaは、自動調圧弁58の2次側に接続して消火時および点検時の両方の放水圧力を検出するようにしているが、消火時の圧力検出が不要なときは、放水圧力検出部78、178のポートaは、遠隔点検弁60または点検弁160のポートcとオリフィス72の間に接続してもよい。自動調圧弁は定流量弁であってもよい。
【0108】
また上記の実施形態におけるフローチャートの処理は概略例を説明したもので、処理の順番などは、これに限定されない。また各処理や、処理と処理の間に必要に応じて遅延時間を設けたり、他の判定を導入するなど、適宜の形態をとることができる。
【0109】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0110】
10:消火栓装置
12:端末ユニット
14:センタ装置
24:マスタ圧力センサ
55:遠隔消火栓弁
56:消火栓弁
58:自動調圧弁
60:遠隔点検弁
72:オリフィス
76:遠隔三方切替弁
78:放水圧力センサ
80:端末伝送部
82:端末処理部
84:センタ伝送部
86:センタ処理部
88:放水点検部
90:校正処理部
92:圧力補正部
124:マスタ圧力計
160:点検弁
176:三方切替弁
178:放水圧力計
180:圧力スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧消火用水が供給される給水配管の接続部からノズル付きホースを接続したホース接続部までの間に、レバー操作により開閉される消火栓弁を接続した消火栓装置をセンタ装置により点検する消火栓点検システムに於いて、
前記消火栓装置に、
前記消火栓弁に並列接続され、外部からの制御信号により開閉される遠隔消火栓弁と、
前記消火栓弁の2次側に接続され、外部からの切替信号により、前記消火栓弁の2次側を前記ノズル付きホース側に連通する通常位置と、前記消火栓弁の2次側をオリフィスを介して排水側に連通する点検位置とを切り替える遠隔点検弁と、
前記オリフィスの1次側の圧力を検出する放水圧力センサと、
外部からの切替信号により、前記消火栓弁の2次側を前記放水圧力センサに連通する通常位置と、前記消火栓弁の1次側を前記放水圧力センサに連通する校正位置とを切り替える遠隔切替弁と、
を設け、
前記消火栓装置に加圧消火用水を供給する給水配管に給水圧力を検出するマスタ圧力センサを設け、
前記センタ装置に、
前記マスタ圧力センサが検出している給水圧力を基準スパン圧力として測定すると共に、前記遠隔切替弁を通常位置に切り替えた状態で前記放水圧力センサが検出する零点圧力、及び前記遠隔切替弁の校正位置に切り替えた状態で前記放水圧力センサが検出するスパン圧力を測定し、前記放水圧力センサの零点圧力及びスパン圧力を前記マスタ圧力センサの零点圧力及びスパン圧力に校正するための零点補正定数及びスパン補正係数を導出する校正処理部と、
前記放水圧力センサで検出された圧力値を、前記零点補正定数およびスパン補正係数に基づいて補正する圧力補正部と、
を設けたことを特徴とする消火栓装置点検システム。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置点検システムに於いて、前記校正処理部は前記マスタ圧力センサで検出している基準スパン圧力を、前記消火栓装置に対する給水配管に水の流れのない静圧状態で測定することを特徴とする消火栓装置点検システム。
【請求項3】
請求項1記載の消火栓装置点検システムに於いて、前記センタ装置は、更に、前記遠隔点検弁を点検切替位置に切り替えた後に前記遠隔消火栓弁を開制御して前記オリフィスを介して排水側に消火用水を流す点検放水を遠隔的に行わせ、該放水点検状態で前記放水圧力センサで検出した放水圧力を測定する点検処理部を備えたことを特徴とする消火栓装置点検システム。
【請求項4】
加圧消火用水が供給される給水配管の接続部からノズル付きホースを接続したホース接続部までの間に、レバー操作により開閉される消火栓弁を接続した消火栓装置点検システムに於いて、
前記消火栓装置に更に、
前記消火栓弁の2次側に接続され、前記消火栓弁の2次側を前記ノズル付きホース側に連通する通常位置と、前記消火栓弁の2次側を排水側に連通する点検位置とを切り替える点検弁と、
前記点検弁と排水側との間に設けられ、所定の点検流量を排水側に流すオリフィスと、
前記オリフィスの1次側の圧力を放水圧力として検出する放水圧力検出部と、
前記消火栓弁の2次側を前記放水圧力検出部に連通する通常位置と、前記消火栓弁の1次側を前記放水圧力検出部に連通する校正位置とを切り替える切替弁と、
を設け、
前記消火栓装置に加圧消火用水を供給する給水配管に給水圧力を検出するマスタ圧力検出部を設けたことを特徴とする消火栓装置点検システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−249792(P2012−249792A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124097(P2011−124097)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】