説明

消火栓装置

【課題】 扉体の薄型化を図ると同時に、消火栓装置全体の小型化を目的とするものである。
【解決手段】 消火栓弁の開閉を行うための弁体と連動する連動プーリと、扉体に配置された対向プーリとの間に略リング状のワイヤを張設して、ワイヤの動きに連動プーリを連動させるとともに、ワイヤに連動関係を持つ開閉レバーを備え、扉体の背面に対して略平行面に回動するように対向プーリを配置する。立設される開閉レバーの操作性を保ちながら、扉体を薄型化することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、消火栓装置に関し、さらに詳細には、消火栓装置の扉体を薄型化した消火栓装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の消火栓装置として、とくにトンネル向けの消火栓装置においては、筐体の前面に設けられる扉体に、いわゆる前傾扉が採用され、扉体を前傾開放させると、扉体の背面に、ホルダに保持されているホースに結合されたノズルと、消火栓弁の開閉レバーが立設されて配置されていて、使用者が消火活動を行うには、ノズルをホルダから外すとともに、その開閉レバーを手前に引くことによって、消火栓弁を開放して水源からの消火水をノズルに供給させなければならない。このように、前傾扉の背面に、ノズルや開閉レバーを配置することは、緊急時に初めて消火栓装置を使用する場合にも、それらの存在が理解されやすく、操作性の点から定評がある。
【0003】このような、従来の開閉レバーによる消火栓弁の開放機構について説明すると、図4に示すように、開閉レバー10pが対向プーリ12pと結合されていて、対向プーリ12pの回転の中心と同軸で、開閉レバー10pが前後に回動するようになっている。そして、開閉レバー10pを引くことによって、同時に対向プーリ12pが回転することになる。この対向プーリ12pには略リング状にされた2本組のワイヤ11pが掛けられているとともに、ワイヤ11pは対向プーリ12pに対して一点に係合固定されている。この固定によって、対向プーリ12pの回転した量と同じ量のワイヤ11pの回転移動が行われることになる。
【0004】他方、ワイヤ11pは両端を固定されたチューブ13p内を通して消火栓弁109pの弁体に連動する連動プーリ14pに掛けられ、このワイヤ11pは連動プーリ14pと対向プーリ12pとの間に張設されている。対向プーリ12pと同様に、連動プーリ14pもワイヤ11pと一点において係合固定され、ワイヤ11pの回転移動と同じ量に連動プーリ14pが回動させられる。この連動プーリ14pの回動とともに、詳細に示さないが、同軸で連動する弁体が消火栓弁109pの開放動作を行う。
【0005】このように、消火栓装置の扉体を開放させて、開閉レバー10pを手前に引くことで、筐体内の奥の部分に設けられた消火栓弁を開放することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のような、消火栓弁109pの開放機構を備えるときに、扉体に背面板を設けようとすると、ワイヤ11p、チューブ13pおよび対向プーリ12pを覆い隠すように設けることが好ましく、そのため、扉体の厚みが比較的厚くなってしまうことになる。ここで、対向プーリ12pを避けて背面板を設けても、対向プーリ12pとそこに掛かっているワイヤ11pは保護しておかないと消火栓弁109pの開放動作が損なわれることも考えられるので、別の枠体を用意してカバーすることになる。
【0007】近年、消火栓装置にも小型化が進められており、とくにトンネル向けの消火栓装置においては、壁面埋込によって設置する場合には、消火栓装置の高さや厚みによって、箱抜きする大きさが決定され、小型であることが施工上の手間からも要望されている。埋込設置でなくとも、壁面から露出するときに突出量が大きいとスペースをとるとともに、筐体の端部に物が当たる危険性は増大する。
【0008】したがって、本発明は、扉体の薄型化を図ると同時に、消火栓装置全体の小型化を目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記の点に鑑み、本発明は、前面に扉体を備える筐体内に、ノズルを具備するホースを収納するとともに、該ノズルへ消火水の供給を開始するための消火栓弁を備える消火栓装置において、前記消火栓弁の開閉を行うための弁体と連動する連動プーリと、前記扉体に配置された対向プーリとの間に略リング状のワイヤを張設して、該ワイヤの動きに前記連動プーリを連動させるとともに、該ワイヤに連動関係を持つ開閉レバーを備え、前記扉体の背面に対して略平行面に回動するように前記対向プーリを配置するとともに、前記扉体の背面側に立設されて背面に略平行方向に所定の間隔を摺動するように前記開閉レバーを配置してあることを特徴とする。
【0010】このときに、開閉レバーのワイヤとの連動関係は、開閉レバーがワイヤと結合されること、または、対向プーリがワイヤと結合され、前記対向プーリと開閉レバーとの間にクランク機構を設けて該開閉レバーを摺動させるときに、前記対向プーリが前記開閉レバーの摺動量とほぼ同じ量の回動を行うことである。また、開閉レバーの摺動方向が、扉体が開放状態において筐体側から離れる方向へ摺動される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態について図面により説明する。図1は消火栓弁の開放機構を、図2はそれを用いる消火栓装置全体を示すものである。図2において、消火栓装置100は、消火用ホースを内巻に収納してなる、いわゆる内巻式の消火栓装置である。この消火栓装置100は、例えばトンネル内の車道に隣接する監査路上に設置されたり、トンネルの内壁に埋設されて設置されたりするものである。
【0012】このような、消火栓装置100は、その筐体101内に、先端に消火用のノズル30を有するホース104、そのホース104を内巻に収納するホース収納部105、消火用水供給用配管106、三方切替弁107、圧力調整弁108、消火栓弁109、消防隊用給水栓110等を備えている。
【0013】ホース収納部105の前面には、ホース収納部105内よりホース104を引き出すため、及びホース収納部105内にホース104を収納するための開口部105aが設けられており、筐体101の前面には、ホース収納部105の開口部105aを筐体101の外部に露出させる、前面開口部101aが設けられている。
【0014】ホース収納部105は、ホースバケット112から形成されている。このホースバケット112は、筐体101の内壁上面から内壁下面に至る2本の棒状体113とその2本の棒状体113から筐体101の内壁背面に至る略L字状に屈曲した2枚の帯体114とからなり、2本の棒状体113の間に開口部105aが形成されている。また、このホースバケット112の2枚の帯体114と筐体101の内壁上面と内壁下面との間にはその四隅に隅部開口部113aが設けられている。このように、ホースバケット112が筐体101の内壁を利用することにより、ボックス形状によりホース収納部105を筐体101の内側に形成する場合に比較してホース収納部105を小型化することができ、それによって結果として消火栓装置100を小型化することができるし、さらに、ホースバケット112の開口部105aからホース104をホースバケット112内に収納するときに、隅部開口部113aから、どのようにホース104が巻き付けられているかを黙視により確認することができ、隅部開口部113aからホースバケット112内に手を入れてホース104を押し込んだり整えたりすることができるので、ホース104を整然と巻き付けることを容易に行うことができる。
【0015】筐体101には、その前面開口部101aを開閉自在にする前面扉として、前面開口部101aの下縁を支点として上縁側が前方に開放動作する前傾扉6が設けられている。なお、この前傾扉6は、開状態においてほぼ水平位置に停止する如く例えばストッパが形成されて設けられているものであり、また、ダンパ等によって開放動作に緩衝機構が付与されている。
【0016】前傾扉6は、その内部に扉内蔵機構部6aが設けられており、その扉内蔵機構部6aを覆う裏板7が、前傾扉6の背面6b側に設けられている。扉内蔵機構部6aとしては、例えば、前傾扉6の開閉のために図示しないラッチ機構部や、図1に示すような、消火栓弁109の開放機構としての開閉レバー10の動力伝達のための機構がある。また、この前傾扉6の背面6b側には、前傾扉6を閉じたときにホース収納部105の開口部105aと対向する位置に収納凹部8が設けられており、この収納凹部8内にノズル30を保持するとともに、ホース104のたるみ部104bを収納しておくことができる。これにより、前傾扉6とホース収納部105との間にノズル30やホース104が挟まるおそれがないので隙間を大きく設ける必要がない。
【0017】開閉レバー10による消火栓弁109の開放機構については、開閉レバー10が前傾扉6に形成される2つの軸受け16に支持された軸17を有するとともにワイヤ11との結合部18を有して、開閉レバー10は、軸17の摺動によって2つの軸受け16間を直線的に移動できる。そして、開閉レバー10を引くことによって、結合部18を介して同時にワイヤ11が回転移動することになる。このワイヤ11は、略リング状に形成されて対向プーリ12に掛けられている。また、ワイヤ11は、両端を固定板19に固定された2つのチューブ13内を通して消火栓弁109の図示しない弁体に連動する連動プーリ14の一点に係合固定され、このワイヤ11は連動プーリ14と対向プーリ12との間に張設されて、連動プーリ14はワイヤ11と一点において固定されるので、ワイヤ11の回転移動と同じ量に連動プーリ14が回動させられる。この連動プーリ14の回動とともに、詳細に示さないが、消火栓弁109において同軸によって開閉動作を行う弁体が開放動作を行う。なお、2つのチューブ13の図示しない他端も、連動プーリ14の近傍に固定部材によって配置される。これらのチューブ13内をワイヤ11が摺動するので、扉6から筐体101にワイヤ11を渡しても中間部分で何らかに引っかかることなく、チューブ13の両端を自在に設置でき、ワイヤ11の安定した摺動が可能である。また、このワイヤ11は、略リング状とされるため、連動プーリ14の一点に対して両端を係合固定して構成されているが、図4の2本のワイヤ11pのように、対向プーリ12の一点と連動プーリ14の一点間に係合固定して略リング状としてもよい。
【0018】この対向プーリ12は、開閉レバー10が前傾扉6に対して立設されていても、それに係わらず前傾扉6に対して水平方向に配置することができ、その結果、前傾扉6に裏板7設けるときの高さH1は、図1に示すように、ほぼ対向プーリ12の幅より僅かに大きければよく、図4に示す従来の対向プーリ12pの直径を含める場合の高さH2よりも薄型化できることになる。このように、対向プーリ12を前傾扉6に対して水平方向に設けることは、消火栓弁109の開放機構を薄型にするとともに、前傾扉6を薄型として、全体的に消火栓装置100を小型化することが可能となる。
【0019】このように、消火栓装置109の前傾扉6を開放させて、その背面6bに立設された開閉レバー10を手前に引くことで、ワイヤ11を介して筐体101内に設けられた消火栓弁109を開放することができる。この手前に引く動作は、緊急時にも操作しやすい方向である。
【0020】また、ノズル30は、その先端に放水口を有した直筒状の筒体31と、基部32bにホース104の先端接続部104aが接続されるく字状の筒体32と、筒体31、32の間に周方向に回動自在に接続する回動接続部33と、操作性のために筒体31からほぼ垂直に突出した把持部38とからなる。ノズル30は、前傾扉6に対して上辺に沿うように横向きにされてノズル支持部103に支持されて収納凹部8内に収納されている。このときに、回動接続部33により筒体32の基部32bをホース収納部105の開口部105aに向けることができるので、ホース104のたるみ部104bを大きく湾曲させる必要はなく、結果、ノズル支持部103の設置位置に制限を与えず、全体的な配置によって消火栓装置100を小さくすることができる。
【0021】さらに、消火栓弁109の開放機構について、図3に別の実施の形態を示す。この形態は、図1の形態と同様の効果をなし、同一部材には同一の符号を付し、その機能も同一である。
【0022】この形態の開閉レバー10は、その開口10aに連結棒12aが貫通され、開閉レバー10の動きに連動して、対向プーリ12が回転運動させられる。この対向プーリ12は、2本のワイヤ11が一点で係合固定され、上記実施形態と同様に連動プーリ14が回転されて消火栓弁109が開閉される。
【0023】以上のように、本発明は、前面に扉体を備える筐体内に、ノズルを具備するホースを収納するとともに、該ノズルへ消火水の供給を開始するための消火栓弁を備える消火栓装置において、前記消火栓弁の開閉を行うための弁体と連動する連動プーリと、前記扉体に配置された対向プーリとの間に略リング状のワイヤを張設して、該ワイヤの動きに前記連動プーリを連動させるとともに、該ワイヤに連動関係を持つ開閉レバーを備え、前記扉体の背面に対して略平行面に回動するように前記対向プーリを配置するとともに、前記扉体の背面側に立設されて背面に略平行方向に所定の間隔を摺動するように前記開閉レバーを配置しているので、立設される開閉レバーの操作性を保ちながら、扉体を薄型化することが可能であり、消火栓装置全体の小型化が可能となる。
【0024】このときに、開閉レバーのワイヤとの連動関係は、開閉レバーがワイヤと結合されること、または、対向プーリがワイヤと結合され、前記対向プーリと開閉レバーとの間にクランク機構を設けて該開閉レバーを摺動させるときに、前記対向プーリが前記開閉レバーの摺動量とほぼ同じ量の回動を行うことができる。また、開閉レバーの摺動方向が、扉体が開放状態において筐体側から離れる方向とすることで、使用者にとって操作を簡便とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を利用する開放機構を示す概略図。
【図2】図1を利用する消火栓装置の概略図。
【図3】図1と同様の他の開放機構を示す概略図。
【図4】従来の開放機構を示す概略図。
【符号の説明】
100 消火栓装置
101 筐体
104 ホース
109 消火栓弁
10 開閉レバー
11 ワイヤ
12 対向プーリ
14 連動プーリ
30 ノズル
6 前傾扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前面に扉体を備える筐体内に、ノズルを具備するホースを収納するとともに、該ノズルへ消火水の供給を開始するための消火栓弁を備える消火栓装置において、前記消火栓弁の開閉を行うための弁体と連動する連動プーリと、前記扉体に配置された対向プーリとの間に略リング状のワイヤを張設して、該ワイヤの動きに前記連動プーリを連動させるとともに、該ワイヤに連動関係を持つ開閉レバーを備え、前記扉体の背面に対して略平行面に回動するように前記対向プーリを配置するとともに、前記扉体の背面側に立設されて背面に略平行方向に所定の間隔を摺動するように前記開閉レバーを配置してあることを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】 開閉レバーが、ワイヤと結合され、前記開閉レバーを摺動させるときに、前記ワイヤが前記開閉レバーの摺動量と同じ量の回転移動する連動関係を有する請求項1の消火栓装置。
【請求項3】 対向プーリが、ワイヤと結合され、前記対向プーリと開閉レバーとの間にクランク機構を設けて該開閉レバーを摺動させるときに、前記対向プーリが前記開閉レバーの摺動量とほぼ同じ量の回動を行うとともに、同時に前記ワイヤが前記対向プーリと同じ量の回転移動する連動関係を有する請求項1の消火栓装置。
【請求項4】 消火栓弁の開閉のための開閉レバーの摺動方向が、扉体が開放状態において筐体側から離れる方向へ摺動される請求項1から3いずれかの消火栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2001−204845(P2001−204845A)
【公開日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−24837(P2000−24837)
【出願日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】