消火装置
【課題】収納ボックス内に設けられた機器等の破損を抑制することが可能な消火装置を得る。
【解決手段】消火装置100は、回転軸10と、回転軸10に設けられた消火用放水ノズル21と、火災を検出する火災検出部30と、平常状態では、消火用放水ノズル21を収納する収納ボックス1と、消火用放水ノズル21が収納ボックス1に収納された状態では、収納ボックス1に形成された開口部1aを閉塞する左扉2及び右扉3と、を備え、火災発生時、回転軸10の回転により消火用放水ノズル21が旋回し、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する消火装置100において、右扉3は収納ボックス1に回動自在に接続され、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する際、右扉3は収納ボックス1の外側に向かって開くものである。
【解決手段】消火装置100は、回転軸10と、回転軸10に設けられた消火用放水ノズル21と、火災を検出する火災検出部30と、平常状態では、消火用放水ノズル21を収納する収納ボックス1と、消火用放水ノズル21が収納ボックス1に収納された状態では、収納ボックス1に形成された開口部1aを閉塞する左扉2及び右扉3と、を備え、火災発生時、回転軸10の回転により消火用放水ノズル21が旋回し、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する消火装置100において、右扉3は収納ボックス1に回動自在に接続され、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する際、右扉3は収納ボックス1の外側に向かって開くものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用放水ノズルを収納ボックス内に収納した消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防護区画の壁面等に露出設置又は壁面埋込設置される従来の消火装置として、平常時は消火用放水ノズルが収納ボックスに収納される消火装置が知られている。このような消火装置は、平常時には収納ボックスの開口部が扉によって閉塞され、防護区画内の美観を損なわないようにしている。そして、火災が発生すると、消火用放水ノズルが旋回し、収納ボックスの開口部より露出した放水ノズルから放水して、火災を消火する。
【0003】
このような従来の消火装置として、例えば「消火ボックスが、回転扉を有し、前記回転扉は、前記放水ヘッドが固定されている回転支持軸に固定されており、前記炎感知器と前記赤外線リニアセンサが、前記可動式放水ヘッドに固定され、かつ、該放水ヘッドの側方に配設されるとともに、該回転扉の旋回軌跡円の内側の散水飛散域外に配設され、かつ、その指向方向が該放水ヘッドの軸心の方向と異なり、火源探査のとき、前記放水ヘッドを高速で旋回させながら前記赤外線センサで火源を探査し、火源方向が特定すると、前記炎感知器を火源方向に指向させ、前記赤外線センサの探査時の旋回速度より遅い速度で火源方向の近傍を旋回しながら火源をとらえて旋回を停止し、その後前記放水ヘッドを更に旋回させ、前記炎感知器の停止位置で火源に向って放水する」(特許文献1参照)というものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4006722号公報(段落0006、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の消火装置(例えば特許文献1)は、収納ボックスの開口部を閉塞する扉が回転軸(回転支持軸)に取り付けられている(以下、回転軸に取り付けられた扉を回転扉とも言う)。つまり、回転扉は、回転軸の回転によって、収納ボックス内部においても旋回移動することになる。このため、回転扉が外力等によって変形すると、回転扉が回転した際、収納ボックス内部に設けられた機器等を破損する可能性があるという問題点があった。
【0006】
また、従来の消火装置は、消火装置(収納ボックス)の幅に近い大きさの回転扉を高速で旋回させる場合、回転扉に作用する大きな空気抵抗を上回る駆動力を要する。このため、消費電力が増加してしまうという課題もあった。
【0007】
本発明は上述のような課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、収納ボックス内に設けられた機器等の破損を抑制することが可能な消火装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る消火装置は、回転軸と、回転軸に設けられた消火用放水ノズルと、平常状態では、消火用放水ノズルを収納する収納ボックスと、消火用放水ノズルが収納ボックスに収納された状態では、収納ボックスに形成された開口部を閉塞する少なくとも1つの扉とを備え、火災発生時、回転軸の回転により消火用放水ノズルが旋回し、消火用放水ノズルが開口部から露出する消火装置において、扉のうちの少なくとも1つは、収納ボックスに回動自在に接続され、消火用放水ノズルが開口部から露出する際、収納ボックスに接続された前記扉は、収納ボックスの外側に向かって開くものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、収納ボックスの開口部を閉塞する扉のうちの少なくとも1つは、収納ボックスに回動自在に接続されている。そして、回転軸が回転して消火用放水ノズルが開口部から露出する際、収納ボックスに接続された扉は収納ボックスの外側に向かって開く。このため、収納ボックス内における扉の旋回範囲が、従来の消火装置よりも減少する。したがって、扉が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス内に設けられた機器等の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るカム機構の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図7】図6に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図8】図7に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図9】図8に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図10】図9に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図11】図10に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図12】図11に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図13】図12に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図14】図13に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態1に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態1に係る消火装置の別の一例を示す平面断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係る消火装置の別の一例を示す平面断面図である。
【図21】本発明の実施の形態3に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図であり、図2はこの消火装置を示す平面図(断面図)である。図1及び図2に示す消火装置100は、収納ボックス1の正面(前面)に形成された開口部1aが左扉2及び右扉3によって閉塞された状態を示している。また、図2は、カム11の上方で切断した断面図となっている。
図3も本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図であり、図4もこの消火装置を示す平面図(断面図)である。図3及び図4に示す消火装置100は、収納ボックス1の正面(前面)に形成された開口部1aが開いた状態を示している。また、図3は、内部構造の説明を容易とするため、火災検出部30が正面に配置された状態の消火装置100を示している。図4は、カム11の下方で切断した断面図となっている。
以下、これら図1〜図4を用い、本実施の形態1に係る消火装置100について説明する。
【0012】
消火装置100の収納ボックス1は、正面視において略四角形状をしており、平面視において正面側が突出した略五角形状をしている。この収納ボックス1の内部は、上部空間と下部空間に分割されている。そして、収納ボックス1の正面には、下部空間と連通する開口部1aと、上部空間と連通する開口部1bとが形成されている。火災信号を受信していない状態(平常状態)においては、開口部1aは、左扉2及び右扉3によって閉塞されている。このとき、左扉2及び右扉3は、これらの正面壁と収納ボックス1の正面壁とが略画一となるように配置されている。右扉3は、上部に設けられた蝶番3aによって、収納ボックス1に回転自在に接続されている。左扉2は、後述する回転軸10に取り付けられている。つまり、右扉3は、蝶番3aを回転中心として収納ボックス1の外側へ開く扉となっている。左扉2は、回転軸10とともに回転する回転扉となっている。
また、収納ボックス1の開口部1bは、固定扉4で閉塞されている。
【0013】
なお、本実施の形態1における「閉塞」とは、実質的に閉塞していることを意味する。つまり、左扉2及び右扉3と収納ボックス1との間には、若干の隙間が形成されていてもよい。また、収納ボックス1の形状はあくまでも一例であり、例えば略直方体形状であってもよい。
【0014】
収納ボックス1(より詳しくは収納ボックス1の下部空間)には、消火用放水ノズル21及び火災検出部30等が収納されている。
消火用放水ノズル21は、給水フランジ22に接続され、平面視において左扉2の内壁に沿うように配置されている。この消火用放水ノズル21は、収納ボックス1の下方から上部空間へ連通する回転軸10に設けられている。消火用放水ノズル21は、例えば放水距離の異なる複数のノズルによって構成されている。
【0015】
本実施の形態1に係る火災検出部30は、熱源探査装置31及び炎検知装置32を備えている。熱源探査装置31は、例えば赤外線リニアセンサー等を備えており、火源の方向を特定するために用いられる。炎検知装置32は、炎が発するCO2 共鳴放射と揺らぎを検出することにより炎判断を行う。これら熱源探査装置31及び炎検知装置32も、消火用放水ノズル21と同様に、回転軸10に設けられている。
【0016】
本実施の形態1においては、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32のそれぞれは、互いに異なる方向を向くように、回転軸10に設けられている。これにより、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32の収納スペースを小さくすることができ、消火装置100をコンパクトに製作することができる。
【0017】
回転軸10には、正面視において右扉3の蝶番3aと同じ高さとなる位置に、板カムであるカム11が設けられている。また、カム11は、回転軸10が回転した際、蝶番3aに当接するように設けられている。つまり、蝶番3aとカム11が、本発明のカム機構に相当する。カム11の側面形状は、例えば半径の異なる2つの円弧形状を有しており、これら半径の異なる円弧形状の間は、カム曲線で連結されている。右扉3が開口部1aを閉塞する状態においては、カム11の小さい側の半径となっている側面部と蝶番3aとが当接している。
なお、本実施の形態では蝶番3aをカム受部として用いているが、カム受部として、蝶番3a以外の部材を別途設けてももちろんよい。また、右扉3が開口部1aを閉塞する状態においては、カム11の側面部が蝶番3aと当接していなくともよい。
【0018】
回転軸10には、カム11の例えば上方となる位置に、歯車12が設けられている。この歯車12は、モーター14の駆動軸に設けられた歯車15と噛み合わされている。つまり、モーター14の駆動力が歯車15及び歯車12を介して回転軸10に伝達され、回転軸10が回転する。また、回転軸10には、回転軸10の回転角度を計測するエンコーダー13が設けられている。
歯車12、歯車15、モーター14及びエンコーダー13は、収納ボックス1の上部空間に配置されている。また、収納ボックス1の上部空間には、モーター14等を制御する制御ユニット50も収納されている。
【0019】
<動作説明>
続いて、このように構成された消火装置100の動作について説明する。まず、右扉3の開閉動作について説明する。次に、消火装置100の消火動作について説明する。
【0020】
(扉の開閉動作)
図5は、本発明の実施の形態1に係るカム機構の動作説明図である。この図は、右扉3を側面から見た図である。上述のように、カム11の側面形状は、例えば半径の異なる2つの円弧形状を有しており、これら半径の異なる円弧形状の間は、カム曲線で連結されている(図2)。このため、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する方向(図2における左回り方向)に回転軸10を回転させると、カム11のカム曲線となっている側面部と右扉3の蝶番3aとが当接する。これにより、回転軸10の回転に伴って、右扉3は、蝶番3aを回転中心として上方向に押し上げられる(収納ボックス1の外側に開いていく)。回転軸10がさらに回転すると、カム11の大きい側の半径となっている側面部と蝶番3aとが当接する。これにより、右扉3の上昇が停止する。
なお、右扉3は、例えばコイルばね等(図示せず)により、右扉3を閉じる方向に付勢されている。これにより、右扉3がより確実にカム11に追従して動作するようになり、右扉3が閉じなくなることを防止できる。
【0021】
つまり、右扉3の開閉状態と、左扉2、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32との位置関係は、図6〜図14に示すようになる。
【0022】
図6〜図14は、本発明の実施の形態1に係る消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。なお、図6〜図14は、消火装置100を平面視した図である。
制御ユニット50が火災信号を受信していない状態(平常状態)においては、消火装置100の各ユニットは図6に示す状態となっている。つまり、開口部1aは左扉2及び右扉3によって閉塞され、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32は収納ボックス1内に収納されている。
【0023】
火災信号を受信すると、制御ユニット50は、モーター14を駆動させ、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する方向(図6における左回り方向)に回転軸10を回転させる。そして、図6に示す状態から図7に示す状態となる過程で、カム11のカム曲線となっている側面部と右扉3の蝶番3aとが当接し、右扉3が開き始める。図7は、回転軸10とともに回転する左扉2の右端が、右扉3の下方にもぐり込む状態となっている。このとき、右扉3は、左扉2と干渉しないところまで開いている。
なお、図7に示す消火用放水ノズル21の位置は、消火用放水ノズル21の原点位置であり、ここを起点として旋回動作を行う。また、熱源探査装置31が原点位置に配置された状態は、後述する図11の状態である。
【0024】
さらに回転軸10が回転すると、回転軸10に伴って、右扉3がさらに開いていく。また、左扉2がさらに右扉3の下方にもぐり込んでいく(図8に示す状態)。
そして、さらに回転軸10が回転すると、カム11の大きい側の半径となっている側面部と蝶番3aとが当接する状態となり、右扉3は停止する(図9に示す状態)。
【0025】
消火装置100は、火災を検知するため、熱源探査装置31が開口部1aの右端近傍にくるまで回転軸10を回転させる必要がある。このため、熱源探査装置31が開口部1aの右端近傍にくるまで(図9に示す状態から図14に示す状態となるまで)、右扉3と、左扉2、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32とが干渉しないよう、右扉3は図9に示す開いた状態を継続する。つまり、消火用放水ノズル21が右扉3の下方にもぐり込む状態(図10乃至図12に示す状態)、炎検知装置32が右扉3の下方にもぐり込む状態(図12乃至図13に示す状態)、及び熱源探査装置31が右扉3の下方にもぐり込む状態(図12乃至図14に示す状態)において、右扉3は開いた状態を継続する。
【0026】
このように右扉3を開閉することにより、従来の消火装置と比べ、収納ボックス1内における扉の旋回範囲が減少する。より詳しくは、従来の消火装置は、右扉3に相当する扉部分も回転軸とともに回転していた。本実施の形態1に係る消火装置100は、右扉3が回転軸10とともに回転しないので、収納ボックス1内における右扉3分の旋回範囲が減少する。
また、このように右扉3を開閉することにより、回転軸10を回転させる際、従来の消火装置と比べて右扉3分の空気抵抗が低減する。
【0027】
(消火動作)
次に、消火装置100の消火動作について説明する。
火災信号を受信すると、制御ユニット50は、回転軸10を高速で回転させ、熱源探査装置31で熱源を探査する。そして、制御ユニット50は、熱源の方向を特定すると、回転軸10の回転を停止し、エンコーダー13の計測結果に基づいて熱源の方向を記憶する。
その後、制御ユニット50は、炎検知装置32が前記熱源方向を指向するように、回転軸10を回転させる。炎検知装置32が前記熱源方向を指向する位置に来ると、制御ユニット50は、回転軸10の回転を停止する。そして、制御ユニット50は、炎検知装置32により、熱源が炎であるか否かを判定する。
熱源が炎であると判定した場合、制御ユニット50は、消火用放水ノズル21が熱源方向を指向するように、回転軸10を回転させる。そして、制御ユニット50は、消火用放水ノズル21から放水し、消火する。
【0028】
このとき、右扉3と、左扉2、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32との位置関係は、図6に示す状態から図14に示す状態へ動作する過程のいずれかの位置関係となっている。
【0029】
以上、このように構成された消火装置100においては、右扉3を収納ボックス1に回動自在に接続している。そして、回転軸10が回転した際、右扉3は収納ボックス1の外側に向かって開く。このため、収納ボックス1内における扉の旋回範囲が、従来の消火装置よりも減少する。したがって、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損を抑制することができる。
また、このように構成された消火装置100においては、従来の消火装置100よりも、回転軸10を回転させる際の負荷(回転扉にかかる空気抵抗)が減少する。このため、モーター14の消費電力を削減することができる。
【0030】
また、右扉3はカム機構(カム11及び蝶番3a)によって開閉するので、回転軸10の回転と連動させて右扉3を開閉することができる。このため、従来の消火装置と同じ制御方法で消火装置100を動作させることができる。
【0031】
なお、本実施の形態1に係る消火装置100は左扉2を回転扉としたが、左扉2も右扉3と同様の外開き構造としてもよい。
図15は、本発明の実施の形態1に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。また、図16は、この消火装置を示す平面断面図である。
図15及び図16に示すように、左扉2は、右扉3と同様に、蝶番(図視せず)によって、収納ボックス1(より詳しくは開口部1aの上方となる位置)に回転自在に接続されている。この左扉2も、例えばカム11と左扉2の蝶番とが当接しており、回転軸10と連動して外側に開く構造となっている。
【0032】
左扉2及び右扉3の双方を外開き構造とした場合、収納ボックス1内には扉の旋回範囲が存在しなくなる。このため、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損をより抑制することができる。また、回転軸10を回転させた際の負荷がより減少するので、モーター14の消費電力をより削減することができる。
一方、右扉3のみを外開き構造とした場合、左扉2及び右扉3の双方を外開き構造とした場合と比べ、消火装置100の製造が容易となる。左扉2及び右扉3の双方をカム構造で動作させようとした場合、左扉2と右扉3を同期させることが難しいからである。
【0033】
また、本実施の形態1では収納ボックス1の開口部1aを2つの扉(左扉2及び右扉3)で閉塞しているが、開口部1aを閉塞する扉の数は任意である。また、例えば3つ以上の扉で収納ボックス1の開口部1aを閉塞する場合、これら扉のうちの少なくとも1つを外開き構造とすることにより、本発明の効果を得ることができる。
【0034】
また、本実施の形態1では火災検出部30として熱源探査装置31及び炎検知装置32を備えたが、これは火災検出部30の一例である。例えば、熱源探査装置31又は炎検知装置32の一方で火災検出部30を構成してももちろんよい。また、火災検出部30は、回転軸10以外の別の回転軸に設けてもよい。
【0035】
また、本実施の形態1ではカム構造により外開き構造の扉(例えば右扉3)を開いたが、外開き構造の扉を開く構成はカム構造以外でもよい。例えば、コイルばね等によって開く方向に外開き構造の扉を付勢し、ソレノイド等によって駆動されるストッパーで外開き構造の扉を閉じておいてもよい。ストッパーを駆動させることにより、コイルばねの付勢力によって外開き構造の扉を開くことができる。このとき、ストッパーを駆動させるタイミングは、回転軸10が回転する前でもよいし、回転軸10の回転開始と同時でもよいし、回転軸10が回転した後でもよい。外開き構造の扉と回転軸10に設けられたユニット(例えば、消火用放水ノズル21及び火災検出部30)とが干渉しなければ、ストッパーの駆動タイミングは任意である。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では、外開き構造の扉を上下方向に開閉した。これに限らず、外開き構造の扉を左右方向に開閉する構成としてもよい。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0037】
図17は本発明の実施の形態2に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図であり、図18はこの消火装置を示す平面図(断面図)である。図17及び図18に示す消火装置100は、収納ボックス1の正面(前面)に形成された開口部1aが開いた状態を示している。また、図17は、火災検出部30が正面に配置された状態の消火装置100を示している。
【0038】
本実施の形態2に係る消火装置100は、実施の形態1と同様に、開口部1aが左扉2及び右扉3によって閉塞される構成となっている。しかしながら、右扉3と収納ボックス1との接続位置が、実施の形態1とは異なっている。より詳しくは、右扉3は、その右端部が収納ボックス1に回転自在に接続されている。つまり、右扉3は、左右方向に開閉する外開き構造の扉となっている。なお、左扉2は、実施の形態1と同様に、回転軸10に取り付けられた回転扉となっている。
【0039】
このように構成された消火装置100においても、収納ボックス1内における扉の旋回範囲が、従来の消火装置よりも減少する。したがって、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損を抑制することができる。また、従来の消火装置100よりも回転軸10を回転させる際の負荷(回転扉にかかる空気抵抗)が減少するので、モーター14の消費電力を削減することができる。
【0040】
なお、本実施の形態2に係る消火装置100も、実施の形態1と同様に、左扉2及び右扉3の双方が外開き構造となるように構成してもよい。
図19は、本発明の実施の形態2に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。また、図20は、この消火装置を示す平面断面図である。
図19及び図20に示すように、左扉2は、右扉3と同様に、収納ボックス1(より詳しくは開口部1aの左端部となる位置)に回転自在に接続されている。
【0041】
このように左扉2及び右扉3の双方を外開き構造とすることにより、収納ボックス1内には扉の旋回範囲が存在しなくなる。このため、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損をより抑制することができる。また、回転軸10を回転させた際の負荷がより減少するので、モーター14の消費電力をより削減することができる。
【0042】
実施の形態3.
実施の形態1や実施の形態2で示したような構成の消火装置の中には、熱源探査装置31が正常に動作するか否かを確認するための模擬火源が、熱源探査装置31とは別体で設けられている場合がある。このような消火装置に本発明を実施することにより、さらなる効果を得ることも可能である。なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1又は実施の形態2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0043】
図21は、本発明の実施の形態3に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。この図21は、平常状態における消火装置100を示している。
図21に示すように、熱源探査装置31の前方には、熱源探査装置31の指向方向に模擬火源31aが設けられている。模擬火源31aは、熱源探査装置31が正常に動作するか否かを確認するためのものであり、例えば電熱線やハロゲンランプ等である。
【0044】
従来の消火装置は開口部1aを閉塞する扉が回転扉となっているため、熱源探査装置31の動作確認を行おうとして扉を開けると、熱源探査装置31も回転軸10とともに回転してしまう。このため、熱源探査装置31の指向方向と模擬火源31aの位置とがずれてしまい、熱源探査装置31の動作確認が容易ではなかった。
【0045】
一方、本実施の形態3に係る消火装置100は、右扉3が外開き構造となっているので、熱源探査装置31の動作確認を行うために右扉3を開けても、熱源探査装置31の位置が変化しない。このため、熱源探査装置31の動作確認が容易となる。
【符号の説明】
【0046】
1 収納ボックス、1a 開口部、1b 開口部、2 左扉、3 右扉、3a 蝶番、4 上部扉、10 回転軸、11 カム、12 歯車、13 エンコーダー、14 モーター、15 歯車、21 消火用放水ノズル、22 給水フランジ、30 火災検出部、31 熱源探査装置、31a 模擬火源、32 炎検知装置、50 制御ユニット、100 消火装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火用放水ノズルを収納ボックス内に収納した消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防護区画の壁面等に露出設置又は壁面埋込設置される従来の消火装置として、平常時は消火用放水ノズルが収納ボックスに収納される消火装置が知られている。このような消火装置は、平常時には収納ボックスの開口部が扉によって閉塞され、防護区画内の美観を損なわないようにしている。そして、火災が発生すると、消火用放水ノズルが旋回し、収納ボックスの開口部より露出した放水ノズルから放水して、火災を消火する。
【0003】
このような従来の消火装置として、例えば「消火ボックスが、回転扉を有し、前記回転扉は、前記放水ヘッドが固定されている回転支持軸に固定されており、前記炎感知器と前記赤外線リニアセンサが、前記可動式放水ヘッドに固定され、かつ、該放水ヘッドの側方に配設されるとともに、該回転扉の旋回軌跡円の内側の散水飛散域外に配設され、かつ、その指向方向が該放水ヘッドの軸心の方向と異なり、火源探査のとき、前記放水ヘッドを高速で旋回させながら前記赤外線センサで火源を探査し、火源方向が特定すると、前記炎感知器を火源方向に指向させ、前記赤外線センサの探査時の旋回速度より遅い速度で火源方向の近傍を旋回しながら火源をとらえて旋回を停止し、その後前記放水ヘッドを更に旋回させ、前記炎感知器の停止位置で火源に向って放水する」(特許文献1参照)というものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4006722号公報(段落0006、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の消火装置(例えば特許文献1)は、収納ボックスの開口部を閉塞する扉が回転軸(回転支持軸)に取り付けられている(以下、回転軸に取り付けられた扉を回転扉とも言う)。つまり、回転扉は、回転軸の回転によって、収納ボックス内部においても旋回移動することになる。このため、回転扉が外力等によって変形すると、回転扉が回転した際、収納ボックス内部に設けられた機器等を破損する可能性があるという問題点があった。
【0006】
また、従来の消火装置は、消火装置(収納ボックス)の幅に近い大きさの回転扉を高速で旋回させる場合、回転扉に作用する大きな空気抵抗を上回る駆動力を要する。このため、消費電力が増加してしまうという課題もあった。
【0007】
本発明は上述のような課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、収納ボックス内に設けられた機器等の破損を抑制することが可能な消火装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る消火装置は、回転軸と、回転軸に設けられた消火用放水ノズルと、平常状態では、消火用放水ノズルを収納する収納ボックスと、消火用放水ノズルが収納ボックスに収納された状態では、収納ボックスに形成された開口部を閉塞する少なくとも1つの扉とを備え、火災発生時、回転軸の回転により消火用放水ノズルが旋回し、消火用放水ノズルが開口部から露出する消火装置において、扉のうちの少なくとも1つは、収納ボックスに回動自在に接続され、消火用放水ノズルが開口部から露出する際、収納ボックスに接続された前記扉は、収納ボックスの外側に向かって開くものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、収納ボックスの開口部を閉塞する扉のうちの少なくとも1つは、収納ボックスに回動自在に接続されている。そして、回転軸が回転して消火用放水ノズルが開口部から露出する際、収納ボックスに接続された扉は収納ボックスの外側に向かって開く。このため、収納ボックス内における扉の旋回範囲が、従来の消火装置よりも減少する。したがって、扉が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス内に設けられた機器等の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るカム機構の動作説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図7】図6に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図8】図7に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図9】図8に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図10】図9に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図11】図10に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図12】図11に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図13】図12に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図14】図13に続く、消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。
【図15】本発明の実施の形態1に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。
【図16】本発明の実施の形態1に係る消火装置の別の一例を示す平面断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係る消火装置の別の一例を示す平面断面図である。
【図21】本発明の実施の形態3に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図であり、図2はこの消火装置を示す平面図(断面図)である。図1及び図2に示す消火装置100は、収納ボックス1の正面(前面)に形成された開口部1aが左扉2及び右扉3によって閉塞された状態を示している。また、図2は、カム11の上方で切断した断面図となっている。
図3も本発明の実施の形態1に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図であり、図4もこの消火装置を示す平面図(断面図)である。図3及び図4に示す消火装置100は、収納ボックス1の正面(前面)に形成された開口部1aが開いた状態を示している。また、図3は、内部構造の説明を容易とするため、火災検出部30が正面に配置された状態の消火装置100を示している。図4は、カム11の下方で切断した断面図となっている。
以下、これら図1〜図4を用い、本実施の形態1に係る消火装置100について説明する。
【0012】
消火装置100の収納ボックス1は、正面視において略四角形状をしており、平面視において正面側が突出した略五角形状をしている。この収納ボックス1の内部は、上部空間と下部空間に分割されている。そして、収納ボックス1の正面には、下部空間と連通する開口部1aと、上部空間と連通する開口部1bとが形成されている。火災信号を受信していない状態(平常状態)においては、開口部1aは、左扉2及び右扉3によって閉塞されている。このとき、左扉2及び右扉3は、これらの正面壁と収納ボックス1の正面壁とが略画一となるように配置されている。右扉3は、上部に設けられた蝶番3aによって、収納ボックス1に回転自在に接続されている。左扉2は、後述する回転軸10に取り付けられている。つまり、右扉3は、蝶番3aを回転中心として収納ボックス1の外側へ開く扉となっている。左扉2は、回転軸10とともに回転する回転扉となっている。
また、収納ボックス1の開口部1bは、固定扉4で閉塞されている。
【0013】
なお、本実施の形態1における「閉塞」とは、実質的に閉塞していることを意味する。つまり、左扉2及び右扉3と収納ボックス1との間には、若干の隙間が形成されていてもよい。また、収納ボックス1の形状はあくまでも一例であり、例えば略直方体形状であってもよい。
【0014】
収納ボックス1(より詳しくは収納ボックス1の下部空間)には、消火用放水ノズル21及び火災検出部30等が収納されている。
消火用放水ノズル21は、給水フランジ22に接続され、平面視において左扉2の内壁に沿うように配置されている。この消火用放水ノズル21は、収納ボックス1の下方から上部空間へ連通する回転軸10に設けられている。消火用放水ノズル21は、例えば放水距離の異なる複数のノズルによって構成されている。
【0015】
本実施の形態1に係る火災検出部30は、熱源探査装置31及び炎検知装置32を備えている。熱源探査装置31は、例えば赤外線リニアセンサー等を備えており、火源の方向を特定するために用いられる。炎検知装置32は、炎が発するCO2 共鳴放射と揺らぎを検出することにより炎判断を行う。これら熱源探査装置31及び炎検知装置32も、消火用放水ノズル21と同様に、回転軸10に設けられている。
【0016】
本実施の形態1においては、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32のそれぞれは、互いに異なる方向を向くように、回転軸10に設けられている。これにより、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32の収納スペースを小さくすることができ、消火装置100をコンパクトに製作することができる。
【0017】
回転軸10には、正面視において右扉3の蝶番3aと同じ高さとなる位置に、板カムであるカム11が設けられている。また、カム11は、回転軸10が回転した際、蝶番3aに当接するように設けられている。つまり、蝶番3aとカム11が、本発明のカム機構に相当する。カム11の側面形状は、例えば半径の異なる2つの円弧形状を有しており、これら半径の異なる円弧形状の間は、カム曲線で連結されている。右扉3が開口部1aを閉塞する状態においては、カム11の小さい側の半径となっている側面部と蝶番3aとが当接している。
なお、本実施の形態では蝶番3aをカム受部として用いているが、カム受部として、蝶番3a以外の部材を別途設けてももちろんよい。また、右扉3が開口部1aを閉塞する状態においては、カム11の側面部が蝶番3aと当接していなくともよい。
【0018】
回転軸10には、カム11の例えば上方となる位置に、歯車12が設けられている。この歯車12は、モーター14の駆動軸に設けられた歯車15と噛み合わされている。つまり、モーター14の駆動力が歯車15及び歯車12を介して回転軸10に伝達され、回転軸10が回転する。また、回転軸10には、回転軸10の回転角度を計測するエンコーダー13が設けられている。
歯車12、歯車15、モーター14及びエンコーダー13は、収納ボックス1の上部空間に配置されている。また、収納ボックス1の上部空間には、モーター14等を制御する制御ユニット50も収納されている。
【0019】
<動作説明>
続いて、このように構成された消火装置100の動作について説明する。まず、右扉3の開閉動作について説明する。次に、消火装置100の消火動作について説明する。
【0020】
(扉の開閉動作)
図5は、本発明の実施の形態1に係るカム機構の動作説明図である。この図は、右扉3を側面から見た図である。上述のように、カム11の側面形状は、例えば半径の異なる2つの円弧形状を有しており、これら半径の異なる円弧形状の間は、カム曲線で連結されている(図2)。このため、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する方向(図2における左回り方向)に回転軸10を回転させると、カム11のカム曲線となっている側面部と右扉3の蝶番3aとが当接する。これにより、回転軸10の回転に伴って、右扉3は、蝶番3aを回転中心として上方向に押し上げられる(収納ボックス1の外側に開いていく)。回転軸10がさらに回転すると、カム11の大きい側の半径となっている側面部と蝶番3aとが当接する。これにより、右扉3の上昇が停止する。
なお、右扉3は、例えばコイルばね等(図示せず)により、右扉3を閉じる方向に付勢されている。これにより、右扉3がより確実にカム11に追従して動作するようになり、右扉3が閉じなくなることを防止できる。
【0021】
つまり、右扉3の開閉状態と、左扉2、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32との位置関係は、図6〜図14に示すようになる。
【0022】
図6〜図14は、本発明の実施の形態1に係る消火装置における各ユニットの動作推移を示す説明図である。なお、図6〜図14は、消火装置100を平面視した図である。
制御ユニット50が火災信号を受信していない状態(平常状態)においては、消火装置100の各ユニットは図6に示す状態となっている。つまり、開口部1aは左扉2及び右扉3によって閉塞され、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32は収納ボックス1内に収納されている。
【0023】
火災信号を受信すると、制御ユニット50は、モーター14を駆動させ、消火用放水ノズル21が開口部1aから露出する方向(図6における左回り方向)に回転軸10を回転させる。そして、図6に示す状態から図7に示す状態となる過程で、カム11のカム曲線となっている側面部と右扉3の蝶番3aとが当接し、右扉3が開き始める。図7は、回転軸10とともに回転する左扉2の右端が、右扉3の下方にもぐり込む状態となっている。このとき、右扉3は、左扉2と干渉しないところまで開いている。
なお、図7に示す消火用放水ノズル21の位置は、消火用放水ノズル21の原点位置であり、ここを起点として旋回動作を行う。また、熱源探査装置31が原点位置に配置された状態は、後述する図11の状態である。
【0024】
さらに回転軸10が回転すると、回転軸10に伴って、右扉3がさらに開いていく。また、左扉2がさらに右扉3の下方にもぐり込んでいく(図8に示す状態)。
そして、さらに回転軸10が回転すると、カム11の大きい側の半径となっている側面部と蝶番3aとが当接する状態となり、右扉3は停止する(図9に示す状態)。
【0025】
消火装置100は、火災を検知するため、熱源探査装置31が開口部1aの右端近傍にくるまで回転軸10を回転させる必要がある。このため、熱源探査装置31が開口部1aの右端近傍にくるまで(図9に示す状態から図14に示す状態となるまで)、右扉3と、左扉2、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32とが干渉しないよう、右扉3は図9に示す開いた状態を継続する。つまり、消火用放水ノズル21が右扉3の下方にもぐり込む状態(図10乃至図12に示す状態)、炎検知装置32が右扉3の下方にもぐり込む状態(図12乃至図13に示す状態)、及び熱源探査装置31が右扉3の下方にもぐり込む状態(図12乃至図14に示す状態)において、右扉3は開いた状態を継続する。
【0026】
このように右扉3を開閉することにより、従来の消火装置と比べ、収納ボックス1内における扉の旋回範囲が減少する。より詳しくは、従来の消火装置は、右扉3に相当する扉部分も回転軸とともに回転していた。本実施の形態1に係る消火装置100は、右扉3が回転軸10とともに回転しないので、収納ボックス1内における右扉3分の旋回範囲が減少する。
また、このように右扉3を開閉することにより、回転軸10を回転させる際、従来の消火装置と比べて右扉3分の空気抵抗が低減する。
【0027】
(消火動作)
次に、消火装置100の消火動作について説明する。
火災信号を受信すると、制御ユニット50は、回転軸10を高速で回転させ、熱源探査装置31で熱源を探査する。そして、制御ユニット50は、熱源の方向を特定すると、回転軸10の回転を停止し、エンコーダー13の計測結果に基づいて熱源の方向を記憶する。
その後、制御ユニット50は、炎検知装置32が前記熱源方向を指向するように、回転軸10を回転させる。炎検知装置32が前記熱源方向を指向する位置に来ると、制御ユニット50は、回転軸10の回転を停止する。そして、制御ユニット50は、炎検知装置32により、熱源が炎であるか否かを判定する。
熱源が炎であると判定した場合、制御ユニット50は、消火用放水ノズル21が熱源方向を指向するように、回転軸10を回転させる。そして、制御ユニット50は、消火用放水ノズル21から放水し、消火する。
【0028】
このとき、右扉3と、左扉2、消火用放水ノズル21、熱源探査装置31及び炎検知装置32との位置関係は、図6に示す状態から図14に示す状態へ動作する過程のいずれかの位置関係となっている。
【0029】
以上、このように構成された消火装置100においては、右扉3を収納ボックス1に回動自在に接続している。そして、回転軸10が回転した際、右扉3は収納ボックス1の外側に向かって開く。このため、収納ボックス1内における扉の旋回範囲が、従来の消火装置よりも減少する。したがって、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損を抑制することができる。
また、このように構成された消火装置100においては、従来の消火装置100よりも、回転軸10を回転させる際の負荷(回転扉にかかる空気抵抗)が減少する。このため、モーター14の消費電力を削減することができる。
【0030】
また、右扉3はカム機構(カム11及び蝶番3a)によって開閉するので、回転軸10の回転と連動させて右扉3を開閉することができる。このため、従来の消火装置と同じ制御方法で消火装置100を動作させることができる。
【0031】
なお、本実施の形態1に係る消火装置100は左扉2を回転扉としたが、左扉2も右扉3と同様の外開き構造としてもよい。
図15は、本発明の実施の形態1に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。また、図16は、この消火装置を示す平面断面図である。
図15及び図16に示すように、左扉2は、右扉3と同様に、蝶番(図視せず)によって、収納ボックス1(より詳しくは開口部1aの上方となる位置)に回転自在に接続されている。この左扉2も、例えばカム11と左扉2の蝶番とが当接しており、回転軸10と連動して外側に開く構造となっている。
【0032】
左扉2及び右扉3の双方を外開き構造とした場合、収納ボックス1内には扉の旋回範囲が存在しなくなる。このため、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損をより抑制することができる。また、回転軸10を回転させた際の負荷がより減少するので、モーター14の消費電力をより削減することができる。
一方、右扉3のみを外開き構造とした場合、左扉2及び右扉3の双方を外開き構造とした場合と比べ、消火装置100の製造が容易となる。左扉2及び右扉3の双方をカム構造で動作させようとした場合、左扉2と右扉3を同期させることが難しいからである。
【0033】
また、本実施の形態1では収納ボックス1の開口部1aを2つの扉(左扉2及び右扉3)で閉塞しているが、開口部1aを閉塞する扉の数は任意である。また、例えば3つ以上の扉で収納ボックス1の開口部1aを閉塞する場合、これら扉のうちの少なくとも1つを外開き構造とすることにより、本発明の効果を得ることができる。
【0034】
また、本実施の形態1では火災検出部30として熱源探査装置31及び炎検知装置32を備えたが、これは火災検出部30の一例である。例えば、熱源探査装置31又は炎検知装置32の一方で火災検出部30を構成してももちろんよい。また、火災検出部30は、回転軸10以外の別の回転軸に設けてもよい。
【0035】
また、本実施の形態1ではカム構造により外開き構造の扉(例えば右扉3)を開いたが、外開き構造の扉を開く構成はカム構造以外でもよい。例えば、コイルばね等によって開く方向に外開き構造の扉を付勢し、ソレノイド等によって駆動されるストッパーで外開き構造の扉を閉じておいてもよい。ストッパーを駆動させることにより、コイルばねの付勢力によって外開き構造の扉を開くことができる。このとき、ストッパーを駆動させるタイミングは、回転軸10が回転する前でもよいし、回転軸10の回転開始と同時でもよいし、回転軸10が回転した後でもよい。外開き構造の扉と回転軸10に設けられたユニット(例えば、消火用放水ノズル21及び火災検出部30)とが干渉しなければ、ストッパーの駆動タイミングは任意である。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では、外開き構造の扉を上下方向に開閉した。これに限らず、外開き構造の扉を左右方向に開閉する構成としてもよい。なお、本実施の形態2において、特に記述しない項目については実施の形態1と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0037】
図17は本発明の実施の形態2に係る消火装置の正面側を示す外観斜視図であり、図18はこの消火装置を示す平面図(断面図)である。図17及び図18に示す消火装置100は、収納ボックス1の正面(前面)に形成された開口部1aが開いた状態を示している。また、図17は、火災検出部30が正面に配置された状態の消火装置100を示している。
【0038】
本実施の形態2に係る消火装置100は、実施の形態1と同様に、開口部1aが左扉2及び右扉3によって閉塞される構成となっている。しかしながら、右扉3と収納ボックス1との接続位置が、実施の形態1とは異なっている。より詳しくは、右扉3は、その右端部が収納ボックス1に回転自在に接続されている。つまり、右扉3は、左右方向に開閉する外開き構造の扉となっている。なお、左扉2は、実施の形態1と同様に、回転軸10に取り付けられた回転扉となっている。
【0039】
このように構成された消火装置100においても、収納ボックス1内における扉の旋回範囲が、従来の消火装置よりも減少する。したがって、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損を抑制することができる。また、従来の消火装置100よりも回転軸10を回転させる際の負荷(回転扉にかかる空気抵抗)が減少するので、モーター14の消費電力を削減することができる。
【0040】
なお、本実施の形態2に係る消火装置100も、実施の形態1と同様に、左扉2及び右扉3の双方が外開き構造となるように構成してもよい。
図19は、本発明の実施の形態2に係る消火装置の別の一例を示す正面側外観斜視図である。また、図20は、この消火装置を示す平面断面図である。
図19及び図20に示すように、左扉2は、右扉3と同様に、収納ボックス1(より詳しくは開口部1aの左端部となる位置)に回転自在に接続されている。
【0041】
このように左扉2及び右扉3の双方を外開き構造とすることにより、収納ボックス1内には扉の旋回範囲が存在しなくなる。このため、左扉2及び右扉3が外力等によって変形した場合でも、収納ボックス1内に設けられた機器等の破損をより抑制することができる。また、回転軸10を回転させた際の負荷がより減少するので、モーター14の消費電力をより削減することができる。
【0042】
実施の形態3.
実施の形態1や実施の形態2で示したような構成の消火装置の中には、熱源探査装置31が正常に動作するか否かを確認するための模擬火源が、熱源探査装置31とは別体で設けられている場合がある。このような消火装置に本発明を実施することにより、さらなる効果を得ることも可能である。なお、本実施の形態3において、特に記述しない項目については実施の形態1又は実施の形態2と同様とし、同一の機能や構成については同一の符号を用いて述べることとする。
【0043】
図21は、本発明の実施の形態3に係る消火装置を示す平面図(断面図)である。この図21は、平常状態における消火装置100を示している。
図21に示すように、熱源探査装置31の前方には、熱源探査装置31の指向方向に模擬火源31aが設けられている。模擬火源31aは、熱源探査装置31が正常に動作するか否かを確認するためのものであり、例えば電熱線やハロゲンランプ等である。
【0044】
従来の消火装置は開口部1aを閉塞する扉が回転扉となっているため、熱源探査装置31の動作確認を行おうとして扉を開けると、熱源探査装置31も回転軸10とともに回転してしまう。このため、熱源探査装置31の指向方向と模擬火源31aの位置とがずれてしまい、熱源探査装置31の動作確認が容易ではなかった。
【0045】
一方、本実施の形態3に係る消火装置100は、右扉3が外開き構造となっているので、熱源探査装置31の動作確認を行うために右扉3を開けても、熱源探査装置31の位置が変化しない。このため、熱源探査装置31の動作確認が容易となる。
【符号の説明】
【0046】
1 収納ボックス、1a 開口部、1b 開口部、2 左扉、3 右扉、3a 蝶番、4 上部扉、10 回転軸、11 カム、12 歯車、13 エンコーダー、14 モーター、15 歯車、21 消火用放水ノズル、22 給水フランジ、30 火災検出部、31 熱源探査装置、31a 模擬火源、32 炎検知装置、50 制御ユニット、100 消火装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
該回転軸に設けられた消火用放水ノズルと、
平常状態では、前記消火用放水ノズルを収納する収納ボックスと、
前記消火用放水ノズルが前記収納ボックスに収納された状態では、前記収納ボックスに形成された開口部を閉塞する少なくとも1つの扉と、
を備え、
火災発生時、前記回転軸の回転により前記消火用放水ノズルが旋回し、前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する消火装置において、
前記扉のうちの少なくとも1つは、前記収納ボックスに回動自在に接続され、
前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する際、
前記収納ボックスに接続された前記扉は、前記収納ボックスの外側に向かって開くことを特徴とする消火装置。
【請求項2】
前記開口部は複数の前記扉により閉塞され、
これら前記扉のうちの少なくとも1つは前記収納ボックスに回動自在に接続され、
これら前記扉のうちの少なくとも他の1つは前記回転軸に取り付けられ、
前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する際、
前記収納ボックスに接続された前記扉は、前記収納ボックスの外側に向かって開き、
前記回転軸に取り付けられた前記扉は、前記消火用放水ノズルとともに旋回することを特徴とする請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記回転軸にはカム機構が設けられ、
前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する際、
前記収納ボックスに接続された前記扉は、前記回転軸とともに回転する前記カム機構と連動して開くことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消火装置。
【請求項4】
前記火災検出部は、
熱源の方向を検出する熱源探査装置と、
炎特有の物理現象を捉えて火災判断を行う炎検知装置と、
を備え、
前記熱源探査装置及び前記炎検知装置は、
前記回転軸に設けられ、
平常状態においては、前記消火用放水ノズルとともに前記収納ボックスに収納され、
火災信号を受信した際、
前記熱源探査装置は、前記回転軸の回転により旋回して、熱源の方向を検出し、
前記炎検知装置は、前記回転軸の回転により旋回して熱源の方向に指向し、火災判断を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の消火装置。
【請求項1】
回転軸と、
該回転軸に設けられた消火用放水ノズルと、
平常状態では、前記消火用放水ノズルを収納する収納ボックスと、
前記消火用放水ノズルが前記収納ボックスに収納された状態では、前記収納ボックスに形成された開口部を閉塞する少なくとも1つの扉と、
を備え、
火災発生時、前記回転軸の回転により前記消火用放水ノズルが旋回し、前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する消火装置において、
前記扉のうちの少なくとも1つは、前記収納ボックスに回動自在に接続され、
前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する際、
前記収納ボックスに接続された前記扉は、前記収納ボックスの外側に向かって開くことを特徴とする消火装置。
【請求項2】
前記開口部は複数の前記扉により閉塞され、
これら前記扉のうちの少なくとも1つは前記収納ボックスに回動自在に接続され、
これら前記扉のうちの少なくとも他の1つは前記回転軸に取り付けられ、
前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する際、
前記収納ボックスに接続された前記扉は、前記収納ボックスの外側に向かって開き、
前記回転軸に取り付けられた前記扉は、前記消火用放水ノズルとともに旋回することを特徴とする請求項1に記載の消火装置。
【請求項3】
前記回転軸にはカム機構が設けられ、
前記消火用放水ノズルが前記開口部から露出する際、
前記収納ボックスに接続された前記扉は、前記回転軸とともに回転する前記カム機構と連動して開くことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消火装置。
【請求項4】
前記火災検出部は、
熱源の方向を検出する熱源探査装置と、
炎特有の物理現象を捉えて火災判断を行う炎検知装置と、
を備え、
前記熱源探査装置及び前記炎検知装置は、
前記回転軸に設けられ、
平常状態においては、前記消火用放水ノズルとともに前記収納ボックスに収納され、
火災信号を受信した際、
前記熱源探査装置は、前記回転軸の回転により旋回して、熱源の方向を検出し、
前記炎検知装置は、前記回転軸の回転により旋回して熱源の方向に指向し、火災判断を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の消火装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−50414(P2011−50414A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199565(P2009−199565)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】
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