説明

消耗セレンフィルタ体の再利用法

セレンを含有しフィルタ体に含まれる物質を用いて水銀を回収した後に、不活性物質を含む使用済みのセレンフィルタ体を再生する方法。使用済みの体は、体にある実質的にすべての未使用反応性物質のセレン含有量を浸出して亜セレン酸を生成するために、過酸化水素溶液で処理する。得られた亜セレン酸を、使用するために分離して単離する。溶液から取り除いた体は、体に存在するセレン化水銀を実質的にすべて溶解するために王水で処理する。体の水銀およびセレンの含有量を有する王水を体から分離して、単離する。適宜、溶液を洗浄して、乾燥させた後、不活性担体材料のみを含む体が王水溶液から取り除かれ、さきに単離した亜セレン酸とともに、新たなセレンフィルタ体の生産に送られる。溶液を部分中和した後に、水銀を沈殿可能な形で析出する。それに先立って、セレンは、王水溶液のpH値を調整して王水溶液から選択的に分離して得ることができ、新たなフィルタ体の生産に有用な元素セレンとして単離できる。フィルタに含まれる再生したセレン含有量および不活性担体材料は、新たなセレンフィルタの生産に有利に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【詳細な説明】
【0001】
本発明は、不活性材料を含む使用済みセレンフィルタ体を再生する方法に関するものであり、セレンを含有しフィルタ体に含まれる物質を用いて水銀を回収した後に行う。セレンは、使用済みセレンフィルタに存在する、すなわち、主に元素セレンとして未使用の反応性フィルタ体およびセレン化水銀として反応フィルタ体の両方に存在する。
【0002】
セレンフィルタは、通常、少量のガス状元素水銀をガスから回収するのに用いられ、元素セレンの反応性物質、硫化セレン、または元素水銀と反応し得る他の反応性セレン化合物で構成されるフィルタ体を含む。フィルタ体の主要部分は不活性材料の担体で構成され、担体は、シリカ、酸化アルミニウム、またはセラミック材で構成されていてもよい。このようなフィルタは米国特許第3 786 619号に開示されており、ここ30年ほどさまざまな目的で一般に使用されてきた。この特許では、フィルタを作成するための最適な方法も教示している。
【0003】
フィルタの使用過程で、反応性物質が徐々に消費されてセレン化水銀が形成され、一定期間にわたる運用の後、フィルタの性能は大幅に低下し、水銀回収能力および洗浄能力が不十分となる。そこでフィルタ体は新しいフィルタ体と交換し、使用済みのフィルタ体は適切な方法で沈殿しなければならない。このような沈殿はそれ自体に費用がかかり、かつ廃棄物処理費の支払いも必要となる。さらに、沈殿は、他のいくつかの理由、すなわち環境面で頻繁に問題を引き起こし、また、担体材料および反応性物質はかなりの価格である。最初に述べたとおり、使用したフィルタ体には、いくらかの未使用のセレン含有反応性物質が含まれ、反応性物質の残余セレン含有量が水銀に反応して、非常に安定した化合物であるセレン化水銀を形成する。
【0004】
一般的に、使用済みフィルタ体は1〜5重量%の水銀を含むことがあり、またさらには3〜5重量%の未使用元素セレンを含むことがある。
【0005】
そのため、反応性物質および/または担体材料を再生する再処理方法は非常に望ましい。また、フィルタ体に含まれる水銀を不活性担体から分離可能であることが望ましく、それによって沈殿しなければならない材料の量を可能な限り少なくし、例えば沈殿にかかる費用を削減する。
【0006】
これまで、水銀含有廃棄物をセレンの存在下で比較的高温で処理し、廃棄物中の水銀をガス状セレン化物形態で除去するための方法が提案されてきた。このような方法は、主に使用済みボタン型電池用に開発され、欧州特許第EP 0655794号に記載されている。ここでは、電池をセレンの存在下で回転炉にて約800℃で処理し、セレン化物状の水銀を蒸発させることで電池を無害なものにする。
【0007】
このような従来技術の水銀含有材料の廃棄方法は、使用済みセレンフィルタ体の処理、とくにフィルタ体の再生には有用でなく、実現不可能でさえある。それは、元素水銀Hg0およびセレン化物HgSeとして存在する水銀を捕集することに問題があるためである。再生のためにセレンを分離することもまた困難である。
【0008】
本発明は、セレンおよびフィルタ体の双方を再生するために、経済的にも環境的にも満足できるように、使用済みセレンフィルタ体を再処理できる方法を提供することを目的とする。このような方法によって、使用済みセレンフィルタ体を浄化および再利用でき、フィルタ体に含まれた捕集した水銀を分離して適切な安定形態で沈殿できる。
【0009】
そのために、本願特許請求の範囲に記載された手順でフィルタ体を処理する。再生工程において、フィルタ体の未使用の反応性物質を実質的にすべて浸出して亜セレン酸を生成するために、使用済みの使い尽されたセレンフィルタ体をまず、適切には濃度約50%の過酸化水素溶液で処理する。そこで得られた亜セレン酸を分離し、単離する。その後、この亜セレン酸を、好ましくは、セレンフィルタ体を新たに生産するための装置に移す。
【0010】
次に、体に含まれるセレン化水銀を実質的にすべて溶解するために、溶液から取り除いたフィルタ体を、王水を使用して、好ましくは高温で処理する。主に不活性担体で形成された残りのフィルタ体は、実質溶解しないまま残存する。水銀含有量が溶解した王水溶液と、溶解したセレン化水銀から出るセレンとを、フィルタ体から分離して単離する。
【0011】
適宜、王水溶液を加熱し、余分な王水を蒸発させるために空気にさらす。溶液からセレンを再生したい場合、pHを適度に調整して部分中和を行った後にSO2を溶液に導入すると、セレンが元素セレンSe(s)として析出される。これは、必要に応じて新しいフィルタ生産に使用する亜セレン酸を生成するのに使用できる。さらに溶液を部分中和すると、水銀が、セレン以外の、硫化物などの溶解しにくい化合物状で析出される。その結果、溶液は、そこに含まれるセレンを再生するために再処理可能となり、また、水銀含有量も、環境上安全な方法で沈殿するのに適した形態で得ることができる。しかし、このような再処理は必ずしも実現可能ではなく、または望ましいわけではなく、また、溶液に含まれる水銀およびセレンは中和後にHgSeとして析出されるため、水銀は、非常に安定した形で沈殿させるための処理が行われる。しかしながら、上述のとおり、セレンを再利用するために採取し、水銀を、硫化物などの異なる安定形状で沈殿させるのが望ましい。
【0012】
実質的に王水溶液から取り除いた、不活性物質のみを含有するフィルタ体は、洗浄して乾燥させた後、さきに分離させた亜セレン酸と同様に新たなセレンフィルタ体の生産に送る。
【0013】
以下、本発明を、本発明の工程の概略フローチャートである図に示される好ましい実施例として説明する。
【0014】
セレンのフィルタ体をまず「浸出1」用の槽に供給し、そこでセレン、すなわち活性フィルタ体の、水銀と結合していないセレンの未使用分を浸出するために、フィルタ体を約50%の過酸化水素H2O2で浸出する。この浸出はいくつかの段階で行われ、最終的に亜セレン酸H2SeO3が生成され、亜セレン酸は、前述の米国特許第3 786 619号に開示されているように、セレンフィルタ体生産時の出発原料として使用される。亜セレン酸を含む溶液はこのように得られ、浄化濾過装置に送られ、そこからさらに純亜セレン酸をセレンフィルタ体生産用の装置へ移す。
【0015】
「浸出1」から出た、セレン化水銀分を含む残存フィルタ体である浸出残渣に、「浸出2」における別の浸出処置を施す。この浸出は、王水、すなわち濃硝酸とその3倍量の濃塩酸との混合物を使用して行われ、固体状のセレン化水銀が溶解してイオン状のセレンおよび水銀を含む溶液が生成される。任意で、浸出槽を加熱して高温で浸出を行ってもよい。浸出は、すべての、または少なくともほぼすべてのセレン化水銀含有量が溶解するまで行う。
【0016】
溶解した水銀およびセレン含有量を含む溶液を、基本的に体の不活性担体で形成される浸出残渣から分離する。浸出残渣を回収して水で洗浄し、乾燥させて、フィルタ体生産に適した担体母材を得て、そのような生産用の装置に送る。
【0017】
「浸出2」で得られた王水の溶液は加熱し、余分な王水を除去するために空気を吹き付ける。その後、溶液を2段階において部分的に中和することで、まずセレンをSO2により析出するととも、Se(s)を生成し、その後、元素セレンの析出物を溶液から分離する。その後、硫化ナトリウムまたは他の硫化物を使用して、セレンを、沈殿からの分離回収が可能なHgSとして析出する。
【0018】
適切な浄化処理後、中和段階で得た元素セレンSe(s)の析出物はフィルタ生産用の装置に送ることができる。
【0019】
次に、本発明の進歩性を環境面および経済面からも説明する。
【0020】
使用済みのフィルタ体には、1立方メートル当たり最大125kgの水銀が含まれていると見積られる。1立方メートル当たり8100kgの密度のHgSに変換すると、約18リットル量の微粒泥が得られる。たとえ析出物に少量の他の物質が混ざっていたとしても、その量は50リットルにも満たない。すなわち、沈殿する水銀含有廃棄物の量は、元の体積のわずか5%ほどである。したがって、本発明に基づいて使用済みのセレンフィルタを再処理した場合、沈殿の必要性は20分の1に削減される。生成されるセレン化水銀のセレンを再生すれば、基本的にはセレンの廃棄物およびそれに伴う損失はない。
【0021】
本発明の方法で達成される費用の削減はかなりのものである。体積に基づく直接変換によって、沈殿費用は95%ほど削減されるだろう。浄化した担体の体の再利用は、大幅な費用の削減にもつながる。
【実施例】
【0022】
予備テストでは、フィルタ体の浸出は、Hgの初期含有量を2.72%、Seの初期含有量を5.5%にして行った。過酸化水素を使用する浸出1では、フィルタ体に含まれるセレンの72%を総計で浸出できた。次の、王水を使用する浸出2では、99%の水銀含有量、また元の含有量の25%のセレンを浸出できた。溶液は中和して、セレンおよび水銀を硫化物として析出した。析出後、溶液には元の含有量の0.001%未満の水銀および元の含有量の2.5%のセレンが含まれていた。浸出した体の洗浄後、体には元の含有量の0.2%しかHgが含まれておらず、これは、完全に浸出した体約0.005%の水銀含有量に相当する。このように、これらのテストは、選択的にセレンを浸出してセレンフィルタ体の生産に戻すことが可能であることを示している。また、水銀の浸出が効果的であることが判明し、本発明に基づく方法で、硫化水銀として沈殿する量が元の量の約80分の1に減少した。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の工程の概略フローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレンを含有しフィルタ体にある物質を用いて水銀を回収した後に、不活性物質を含む該使用済みのセレンフィルタ体の再生方法において、該体にある実質的にすべての未使用反応性物質のセレン分を浸出して亜セレン酸を生成するために前記体を過酸化水素溶液で処理し、該得られた亜セレン酸を、使用のために分離して単離し、前記溶液から取り除いた前記体を、該体にあるセレン化水銀を実質的にすべて溶解するために王水で処理し、該体の水銀およびセレンの含有量を含む該王水溶液を該体から分離して単離し、該溶液に含まれる水銀を沈殿可能な形態で析出し単離することを特徴とする再生方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記王水溶液のpH値を調整してセレンを該王水溶液から選択的に分離して得て、新たなフィルタ体の生産に適した元素セレンとして析出した後に単離することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記王水による処理は高温で行うことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の方法において、前記王水溶液から取り除いた、不活性担体材料のみを含む体を、洗浄および乾燥の後、新たなセレンフィルタ体の生産に送ることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の方法において、前記過酸化水素浸出中に生成された亜セレン酸を、新たなセレンフィルタ体の生産に送ることを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−518549(P2007−518549A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544476(P2006−544476)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/FI2004/000768
【国際公開番号】WO2005/058462
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(505232933)オウトクンプ テクノロジー オサケ ユキチュア (19)
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU TECHNOLOGY OY
【Fターム(参考)】