説明

消臭チャンバー及び消臭システム

【課題】簡易な設備で消臭が可能な消臭チャンバー及び消臭システムを提供する。
【解決手段】植物精油ガスを放出する消臭器32は、筺体48の内部の中段部分に、エアポンプ50および消臭液容器52を有している。筺体48の底部分には、フィルタ62付きのエア入口60が設けられており、筺体48の天井部分には、フィルタ付きのミスト出口64が設けられており、植物精油ガスを排気管からの排気と接触させて有臭排気を消臭する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、消臭チャンバー及び消臭システムに関する。
【背景技術】
【0002】
焼却されている廃棄物には、動・植物性の廃棄物や産業廃棄物、医療廃棄物等、様々なものがあり、それぞれ分別や分解の後に焼却や埋め立て等の処理がされている。このような廃棄物処理の方法の一つとして、高圧蒸気で廃棄物を分解処理する方法が提案されている。この方法によれば、各種廃棄物を分別や破砕することなくそのまま処理槽に投入して処理することができる上に、分解処理によって生じた分解生成品は補助燃料として利用できるという利点がある。
【0003】
廃棄物の処理時には、臭気を伴う排気が生じる。有臭排気は、消臭処理して、臭気レベルを基準値以下に下げてから外部に排出する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水蒸気を伴う排気ガスの消臭方法としては、燃焼法、薬液洗浄法、消臭剤噴霧法などがあるが、いずれも省エネルギー面、消臭効果面から、予め排気の水蒸気をドレン化して除去した後に排水・消臭処理を行う必要があった。そのため、排水・消臭に要する設備が大掛かりで高価なものとなるという問題があった。
【0005】
また、上述の高圧蒸気による分解処理方法では、廃棄物を高圧蒸気によって分解するため、その排気にも蒸気が含まれる。そのため、消臭チャンバー内や排気を消臭チャンバーに送る管路内において、蒸気が凝結する虞があった。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、簡易な設備で消臭が可能な消臭チャンバー及び消臭システムを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、有臭排気を消臭する消臭チャンバーであって、前記消臭チャンバーが、植物精油ガスを放出する消臭器を有し、前記植物精油ガスを前記有臭排気と接触させて前記有臭排気を消臭することを特徴とする。
【0008】
また、前記消臭器が、植物精油を含む消臭液が入れられた消臭液容器と、前記消臭液容器のエア流入口に、エア流入口ホースを介して接続されたエアポンプを備え、前記エアポンプからエアを前記消臭液内部に送り込むことで、前記消臭液容器内の消臭液を気化させ、前記消臭液容器から植物精油ガスを放出させることとしてもよい。
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、消臭システムであって、高圧ボイラと、高圧蒸気によって処理原料の熱分解処理を行う高圧蒸気分解釜と、空気加熱器と、有臭排気を消臭して外部へ排出する消臭チャンバーと、前記高圧ボイラで生成された高圧蒸気を前記高圧蒸気分解釜へ送る供給管と、前記高圧蒸気分解釜からの排気を前記消臭チャンバーへ送る排気管と、前記供給管から分岐して前記高圧蒸気の一部を前記空気加熱器へ送る分岐管と、前記分岐管に設けられた減圧弁と、前記空気加熱器において前記分岐管からの前記高圧蒸気によって加熱された加熱空気を前記排気管に送る送気管とを備え、前記消臭チャンバーが上記の特徴を有する消臭チャンバーであることを特徴とする。
【0010】
また、前記空気加熱器からの加熱空気を前記高圧蒸気分解釜に送る調整用送気管を更に備えることとしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、排気ガスを植物精油ガスと接触させて中和消臭するため、コンパクトな消臭チャンバーを提供することができる。
【0012】
また、本発明によれば、高圧ボイラで生成された高圧蒸気を利用して加熱空気を生成し、その加熱空気を高圧蒸気分解釜からの排気と共に消臭チャンバーに吹き込むので、消臭チャンバー内および消臭チャンバーへの管路内での水蒸気凝結を防止することができる。さらに、消臭チャンバーにおいて排気ガスを植物精油ガスと接触させて中和消臭するため、排気ガス中に水蒸気を包含した状態での直接消臭が可能である。したがって、排気ガス中の水蒸気を除去する工程が不要であり、コンパクトな消臭システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の消臭チャンバーの概略構成を示す模式図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図2】消臭器の概略構成を示す模式図である。
【図3】図2の消臭器の断面図である。
【図4】本発明の消臭システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の消臭チャンバーは、植物精油ガスを放出する消臭器を有し、該植物精油ガスを有臭排気と接触させて該有臭排気を消臭することを特徴とする。本発明の消臭チャンバーは、この要件を具備するものであれば、他の要件についていかなる限定もされることはない。以下、本発明の消臭チャンバーについて、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である消臭チャンバー18の概略構成を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は(B)の左側側面の図である。図1(B)に示すように、消臭チャンバー18は、図中左側上部に排気管22が接続されており、排気管22から排気ガス(有臭排気)が送り込まれる。消臭チャンバー18内には、床付近が開放された隔壁40と、天井付近が開放された隔壁42が、チャンバー18内を略3分割する位置にそれぞれ配置されている。チャンバー18内に送り込まれた排気ガスは、この隔壁40,42によって形成されるS字状の経路を低速度で移動し、その間に消臭器32からの植物精油ガスと接触して中和消臭される。
【0016】
チャンバー18内で消臭処理された排気ガスは、図1(B)中右側上部に設けられた排出口43から外部へ排出される。チャンバー18の図1(B)中右側下部には、ドレン管44およびドレン弁46が取り付けられており、チャンバー18内で発生した液体はここから排出される。
【0017】
チャンバー18の前面、すなわち図1(A)および(B)において左側の面には、消臭器32が置かれた隔室34に通じる扉36が設けられている。隔室34の天井38は、パンチメタルを使用するか、スリットを形成すること等により、通気可能な構成となっている。したがって、消臭器32から放出された植物精油ガスが、天井38を通り抜けてチャンバー18内に放出される。
【0018】
消臭器20は、植物精油ガスを放出する直接気化消臭器である。図2および図3に、消臭器32の概略構成を示す。図2は、消臭器32の筺体48の前壁を取り除いて内部構成を示している。消臭器32は、筺体48の内部の中段部分に、エアポンプ50および消臭液容器52を有している。筺体48の底部分には、フィルタ62付きのエア入口60が設けられており、筺体48の天井部分には、フィルタ付きのミスト出口64が設けられている。
【0019】
図3は、消臭器32の水平断面図であり、筺体48の中段部分に置かれたエアポンプ50および消臭液容器52の配置を示している。本実施形態では、中央に8個の消臭液容器52が並べられ、その両側に2個ずつ、計4個のエアポンプ50が並べられている。消臭液容器52には、容器の蓋にミスト放出口54とエア流入口56が設けられている。1つのエアポンプ50は、それぞれ2つの消臭液容器52のエア流入口56に、エア流入口ホース58を介して接続されている。
【0020】
消臭液容器52には、植物精油を含む消臭液が入っている。エアポンプ50によって所定量のフレッシュエアを消臭液容器52の内部に送り込むと、気化した植物精油液(消臭ガス、消臭ミスト)がミスト放出口54から放出される。放出された植物精油ガスは、消臭器32のミスト出口64から放出され、図1(B)に示す隔室34の天井38を通って、消臭チャンバー18の排気管22の接続部近傍に供給される。
【0021】
消臭チャンバー18の排気管22の接続部近傍では、排気管22からの排気ガスと、消臭器32からの植物精油ガスが混合し、排気ガス中の臭気成分と植物精油ガスの粒子が効果的に接触して、中和消臭がなされる。さらに、排気ガスと植物精油ガスは、混在した状態で、消臭チャンバー18内において、隔壁40、42で仕切られたS字状の経路をゆっくりと移動し、その間にも消臭処理が進行する。
【0022】
以上説明した本発明の消臭チャンバーによれば、排気ガスを植物精油ガスと接触させて中和消臭するため、コンパクトな消臭チャンバーを提供することができる。
【0023】
次に、本発明の消臭システムについて説明する。本発明の消臭システムは、高圧ボイラと、高圧蒸気によって処理原料の熱分解処理を行う高圧蒸気分解釜と、空気加熱器と、有臭排気を消臭して外部へ排出する消臭チャンバーと、高圧ボイラで生成された高圧蒸気を高圧蒸気分解釜へ送る供給管と、高圧蒸気分解釜からの排気を消臭チャンバーへ送る排気管と、供給管から分岐して高圧蒸気の一部を空気加熱器へ送る分岐管と、分岐管に設けられた減圧弁と、空気加熱器において分岐管からの高圧蒸気によって加熱された加熱空気を、排気管に送る送気管とを備え、消臭チャンバーが、上記で説明した消臭チャンバーであることを特徴とする。本発明の消臭システムは、この要件を具備するものであれば他の要件についていかなる限定もされることはない。
【0024】
図4は、本発明の一実施形態である消臭システム10の概略構成を示すブロック図である。同図に示す消臭システム10は、廃棄物などの処理原料を高圧蒸気によって熱分解処理するとともに、その排気の消臭処理を行うものであり、高圧ボイラ12と、高圧蒸気分解釜14と、空気加熱器16と、消臭チャンバー18とを備えている。
【0025】
高圧ボイラ12は、高圧蒸気分解釜14における熱分解処理に必要な高圧蒸気を生成する。高圧ボイラ12で生成された高圧蒸気は、供給管20によって高圧蒸気分解釜14に供給される。
【0026】
高圧蒸気分解釜14は、投入された処理原料を、高圧ボイラ12から供給管20を介して供給された高圧蒸気によって水・熱分解処理する。高圧蒸気分解釜14では、プラスチック、紙、木材等、様々な原材料のものを一度に高温高圧の蒸気で水・熱分解処理できるため、収集された廃棄物を分解、破砕することなく、そのままの形で投入して処理することができる。分解処理された処理原料は、分解生成物や未分解のガラス・陶器・金属類となって高圧蒸気分解釜14に残る。水・熱分解処理中、高圧蒸気分解釜14からは、水蒸気の流出を伴う排気が排気管22より排出される。この排気は、排気管22を通じて消臭チャンバー18へ送られる。
【0027】
供給管20は、途中で分岐管24に分岐している。分岐管24は、減圧弁26を経て空気加熱器16に接続されている。高圧ボイラ12で生成された高圧蒸気の一部(余剰の高圧蒸気)は、減圧弁26で減圧された後に空気加熱器16に送られる。
【0028】
空気加熱器16は、空気を取り込み、取り込んだ空気を分岐管24から送られてきた蒸気の熱を利用して加熱して、加熱空気を生成する。空気加熱器16は、送気管28によって排気管22に接続されており、空気加熱器16で生成された加熱空気が、送気管28を介して排気管22に送られる。このように、加熱空気が送気管28に送られるので、高圧蒸気分解釜14からの排気ガスが水蒸気を伴うものであっても、排気管22内および消臭チャンバー18内における水蒸気凝結を防止することができる。
【0029】
また、空気加熱器16は、調整用送気管30によって高圧蒸気分解釜14に接続されている。空気加熱器16において生成された加熱空気のうち、排気管22に送らない余剰分は、高圧蒸気分解釜14に送られて、分解処理の熱源として利用される。
【0030】
消臭チャンバー18は、上記で説明した消臭チャンバーを用いることができここでの説明は省略する。
【0031】
高圧蒸気分解釜14からの排気は、熱分解によって発生する臭気成分を伴うが、消臭チャンバー18における消臭処理によって臭気レベルが十分な範囲にまで消臭されて、消臭チャンバー18から外部へ排出される。
【0032】
以上説明した本発明の消臭システムによれば、高圧ボイラで生成された高圧蒸気を利用して加熱空気を生成し、その加熱空気を高圧蒸気分解釜からの排気と共に消臭チャンバーに吹き込むので、消臭チャンバー内および消臭チャンバーへの管路内での水蒸気凝結を防止することができる。さらに、消臭チャンバーにおいて排気ガスを植物精油ガスと接触させて中和消臭するため、排気ガス中に水蒸気を包含した状態での直接消臭が可能である。したがって、排気ガス中の水蒸気を除去する工程が不要であり、コンパクトな消臭システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 消臭システム
12 高圧ボイラ
14 高圧蒸気分解釜
16 空気加熱器
18 消臭チャンバー
20 供給管
22 排気管
24 分岐管
26 減圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有臭排気を消臭する消臭チャンバーであって、
前記消臭チャンバーが、植物精油ガスを放出する消臭器を有し、前記植物精油ガスを前記有臭排気と接触させて前記有臭排気を消臭することを特徴とする消臭チャンバー。
【請求項2】
前記消臭器が、植物精油を含む消臭液が入れられた消臭液容器と、前記消臭液容器のエア流入口に、エア流入口ホースを介して接続されたエアポンプを備え、
前記エアポンプからエアを前記消臭液内部に送り込むことで、前記消臭液容器内の消臭液を気化させ、前記消臭液容器から植物精油ガスを放出させることを特徴とする請求項1に記載の消臭チャンバー。
【請求項3】
消臭システムであって、
高圧ボイラと、
高圧蒸気によって処理原料の熱分解処理を行う高圧蒸気分解釜と、
空気加熱器と、
有臭排気を消臭して外部へ排出する消臭チャンバーと、
前記高圧ボイラで生成された高圧蒸気を前記高圧蒸気分解釜へ送る供給管と、
前記高圧蒸気分解釜からの排気を前記消臭チャンバーへ送る排気管と、
前記供給管から分岐して前記高圧蒸気の一部を前記空気加熱器へ送る分岐管と、
前記分岐管に設けられた減圧弁と、
前記空気加熱器において前記分岐管からの前記高圧蒸気によって加熱された加熱空気を、前記排気管に送る送気管とを備え、
前記消臭チャンバーが、請求項1又は2に記載の消臭チャンバーであることを特徴とする消臭システム。
【請求項4】
前記空気加熱器からの加熱空気を前記高圧蒸気分解釜に送る調整用送気管を更に備える請求項3に記載の消臭システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−45237(P2012−45237A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191431(P2010−191431)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(510232887)株式会社EMI (2)
【出願人】(509085881)有限会社リバストーン (2)
【出願人】(391001033)日本デオドール株式会社 (2)
【Fターム(参考)】