説明

消臭剤及びこの消臭剤を含む繊維製品

【課題】加熱後でもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア等の悪臭の原因となる成分に対する消臭効果が優れる消臭剤を提供する。
【解決手段】消臭剤が、(a)硫酸ヒドロキシルアミン1〜5質量%、(b)スメクタイト0.1〜0.5質量%、(c)カルボジヒドラジド及び/又はアジピン酸ジヒドラジド4〜12質量%及び(d)水82.5〜94.9質量%を含有(ただし、成分(a)〜(d)の合計は100質量%である)し、(アジピン酸ジヒドラジドの配合量)/(カルボジヒドラジドの配合量)が0〜0.18又は1.25以上であり、コハク酸ジヒドラジドを含有しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱後でも広範囲な悪臭に対する消臭効果が優れる消臭剤及び当該消臭剤を含む繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装材等として使用される繊維製品は、製造時及び使用時にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア等の悪臭の原因となる成分を発生させる場合がある。そこで、これらの化合物に起因する悪臭に対して消臭効果を発揮する、硫酸ヒドロキシルアミン、[酸化亜鉛及びハイドロタルサイト]及び/又はスメクタイトと、水を含有してなる消臭剤が検討された(例えば、特許文献1参照)。
一方、(1)カルボジヒドラジド100質量部と(2)アジピン酸ジヒドラジド又はコハク酸ジヒドラジド20〜120質量部を含有する、ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドに対して消臭効果を発揮する消臭剤が検討された(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−106736号公報
【特許文献2】特許第4061331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車内部が高温になっても消臭剤の消臭効果が維持されるよう、加熱後でもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア等の悪臭の原因となる成分に対する消臭効果が優れる消臭剤が求められてきている。しかしながら、このような特性を有する消臭剤は得られていなかった。本発明が解決しようとする課題は、加熱後でもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア等の悪臭の原因となる成分に対する消臭効果が優れる消臭剤の提供である。本発明が解決しようとする別の課題は、当該消臭剤を含有する繊維製品の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、上記課題を解決するため、消臭剤を鋭意検討した結果、(a)硫酸ヒドロキシルアミン、(b)スメクタイト、(c)有機ヒドラジド化合物及び(d)水を特定の範囲で含有し、(c)有機ヒドラジド化合物は、特定の配合比のカルボジヒドラジド及び/又はアジピン酸ジヒドラジドである消臭剤が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、(a)硫酸ヒドロキシルアミン1〜5質量%、(b)スメクタイト0.1〜0.5質量%、(c)カルボジヒドラジド及び/又はアジピン酸ジヒドラジド4〜12質量%及び(d)水82.5〜94.9質量%を含有(ただし、成分(a)〜(d)の合計は100質量%である)し、(アジピン酸ジヒドラジドの配合量)/(カルボジヒドラジドの配合量)が0〜0.18又は1.25以上であり、コハク酸ジヒドラジドを含有しない、消臭剤である。
更に、本発明は、上記消臭剤を繊維に含有させ、乾燥してなる繊維製品である。好ましくは、更に、バインダー及び撥水剤が上記繊維製品に付着されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の消臭剤は、加熱後でもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア等に起因する広範囲の悪臭に対して一液で優れた消臭効果を発揮する。本発明の繊維製品は、加熱後でもホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アンモニア等に起因する広範囲の悪臭に対して優れた消臭効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の消臭剤が含有する(a)硫酸ヒドロキシルアミンは、ヒドロキシルアミンに硫酸を反応させて得られるヒドロキシルアミンの硫酸塩であり、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類に対し、優れた捕捉性を有している。
成分(a)の配合量は、成分(a)〜(d)の合計量に対して1〜5質量%であり、好ましくは2〜4質量%である。成分(a)の配合量が過小であると、消臭剤の、特にアセトアルデヒドなどのアルデヒド類に起因する臭いの消臭効果が小さくなる。一方、成分(a)の配合量が過大であると、成分(a)が水に溶解しなくなり、消臭剤の取り扱い性に劣るおそれがある。
【0008】
本発明の消臭剤が含有する(b)スメクタイトは、チキソトロピー性を備える層状珪酸塩鉱物であり、消臭成分の沈降を防止する。
成分(b)の配合量は、成分(a)〜(d)の合計量に対して0.1〜0.5質量%であり、好ましくは0.2〜0.4質量%である。成分(b)の配合量が過小であると、消臭剤の、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類に起因する臭いの消臭効果が小さくなり、更に、成分(b)以外の消臭成分が沈降し、消臭剤の取り扱い性に劣るおそれがある。一方、成分(b)の配合量が過大であると、消臭剤の流動性が成分(b)のチキソトロピー性によりなくなり、消臭剤の使用が困難になるおそれがある。
【0009】
本発明の消臭剤は(c)カルボジヒドラジド及び/又はアジピン酸ジヒドラジドを含有する。
成分(c)の配合量は、成分(a)〜(d)の合計量に対して4〜12質量%であり、好ましくは5〜10質量%であり、より好ましくは6〜10質量%である。成分(c)の配合量が過小であると、消臭剤の、特にアセトアルデヒドなどのアルデヒド類に起因する臭いの消臭効果が小さくなる。一方、成分(c)の配合量が過大であると、成分(c)が水に溶解しなくなり、消臭剤の取り扱い性に劣るおそれがある。
【0010】
(アジピン酸ジヒドラジドの配合量)/(カルボジヒドラジドの配合量)は0〜0.18又は1.25質量部以上であり、好ましくは0.05〜0.18又は1.25〜10であり、より好ましくは0.1〜0.18又は1.25〜5であり、更に好ましくは0.15〜0.18又は1.25〜3.5である。(アジピン酸ジヒドラジドの配合量)/(カルボジヒドラジドの配合量)が0.18超〜1.25質量部未満であると、加熱された消臭剤のアンモニアの消臭率が低くなる。
【0011】
本発明の消臭剤が含有する(d)水は、消臭剤に流動性を持たせ、消臭成分の濃度を調整し、消臭成分を繊維などの基材に容易に含有させ、また消臭成分を繊維などの基材に含有させる量を調整する。
成分(d)の配合量は、成分(a)〜(d)の合計量に対して82.5〜94.9質量%であり、好ましくは85.6〜92.8質量%であり、より好ましくは85.6〜91.8質量%である。成分(d)の配合量が過小であると、消臭剤の流動性がなくなり、消臭剤の使用が困難になるおそれがある他、消臭成分を繊維などの基材に対し、適量を含有させるのが困難になるおそれがある。一方、成分(d)の配合量が過大であると、消臭成分を繊維などの基材に対し、適量を含有させるのが困難になるおそれがあり、更に、消臭剤に含有される消臭成分の量が少なくなるため、消臭剤そのものの消臭性能が劣るおそれがある。
【0012】
本発明の消臭剤は、コハク酸ジヒドラジドを含有しない。コハク酸ジヒドラジドは、不純物としてヒドラジンを、他の有機酸ジヒドラジド化合物より比較的多く含有する。ヒドラジンは変異原性を有し、人体に対して有害である。
【0013】
本発明の消臭剤は、防腐剤;防カビ剤;銀、銅等の金属粉末からなる抗菌剤;ポリビニルアルコール等の増粘剤;カーボンブラック等の顔料;染料;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;繊維用柔軟剤;樹脂エマルジョン、ゴムラテックス等の繊維用バインダー;ドデシルベンゼンスルホン酸等の界面活性剤;酸化亜鉛以外の光触媒;等の添加剤を含有し得る。これらの添加剤の配合量は、成分(a)〜(d)の合計量100質量部に対して好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは10質量部以下であり、さらに好ましくは5質量部以下である。
【0014】
本発明の消臭剤を繊維に含有させ、乾燥させて本発明の繊維製品を得る。本発明の繊維製品は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、アンモニア等に起因する広範囲の悪臭に対して優れた消臭効果を発揮する。好ましくは、バインダー及び撥水剤を、本発明の消臭剤を含浸させた繊維製品に付着させる。
繊維としては、カーペット、じゅうたん、ゴザ、トイレ用マット、風呂用マット、玄関用マット、布団、ベッド、ソファー、車用シート、靴下、ストッキング、タイツ、靴の中敷、靴、手袋、帽子、布オムツ、使い捨てオムツ、下着、スポーツ用衣料品などが挙げられる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明が実施例により詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の実施例における「部」は、特に断らない限り質量基準である。
消臭剤の消臭性能は以下のように測定された。
【0016】
(1)悪臭成分消臭率
0.08gの消臭剤を5cm×5cmの濾紙に滴下して作製した試料をバットに入れ、150℃で5分間乾燥した。その後、試料を容量5Lのテドラー(登録商標)バッグ(フッ化ビニル製サンプリングバッグ)に入れ、上記テドラー(登録商標)バッグをヒートシールにより密閉した。次に、テドラー(登録商標)バッグを真空ポンプで減圧し、初期濃度20ppmのアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アンモニアのそれぞれを含む3Lの乾燥空気を、それぞれ個別の、試料が入ったテドラー(登録商標)バッグに注入して室温で放置し、6時間後のアセトアルデヒド、2時間後のホルムアルデヒド、40分後のアンモニアのそれぞれの濃度を検知管(ガステック社製)で測定し、下記式(I)により、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アンモニアのそれぞれの消臭率(%)を算出した。70%以上の消臭率は良好である。
【0017】
100×(G0ーG)/G0 (I)
0;注入時の悪臭成分ガス濃度
G;所定時間経過後の悪臭成分ガス濃度
消臭率は、初期濃度に対する悪臭成分の減少率を示している。消臭率の数値が大きいほど消臭効果が大きいことを意味している。
【0018】
(2)加熱後の悪臭成分消臭率
上記されるようにして作製された乾燥試料を恒温槽に入れ、当該乾燥試料を80℃で230時間空気中で乾燥した。次いで、上記されるようにして、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アンモニアのそれぞれの消臭率(%)を算出した。70%以上の消臭率は良好である。
【0019】
実施例1〜4、比較例1〜2
表1に示される配合量の硫酸ヒドロキシルアミン(和光純薬工業(株)製)、スメクタイト(コープケミカル(株)製ルーセントSWF)、カルボジヒドラジド(日本ファインケム(株)製)、アジピン酸ジヒドラジド(日本ファインケム(株)製)、コハク酸ジヒドラジド(日本ファインケム(株)製)、水を混合して消臭剤を作製し、当該消臭剤の悪臭成分消臭率を評価した。結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
本発明の消臭剤である実施例1〜4の消臭剤のアセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、アンモニアのそれぞれの消臭率及び加熱後の消臭率は良好であった。
(アジピン酸ジヒドラジドの配合量)/(カルボジヒドラジドの配合量)が、本発明の消臭剤の範囲をはずれている比較例1の消臭剤の加熱後のアンモニアの消臭率は低かった。
コハク酸ジヒドラジドを含む比較例2の消臭剤のアンモニアの消臭率、加熱後のアセトアルデヒド及びアンモニアの消臭率は低かった。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の消臭剤は、カーペット、じゅうたん、ゴザ、トイレ用マット、風呂用マット、玄関用マット、布団、ベッド、ソファー、車用シート、靴下、ストッキング、タイツ、靴の中敷、靴、手袋、帽子、布オムツ、使い捨てオムツ、下着、スポーツ用衣料品、その他の繊維、壁紙、床材、壁材、屋根材等の基材に付着又は含浸させて使用され得る。基材のなかでも、繊維が好ましい。更に、本発明の消臭剤は、室内、トイレ、喫煙所、車内、冷蔵庫等の用途用消臭剤としても使用され得る。本発明の消臭剤は、特に車用シートなどの自動車内装材から発生する悪臭の消臭に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硫酸ヒドロキシルアミン1〜5質量%、(b)スメクタイト0.1〜0.5質量%、(c)カルボジヒドラジド及び/又はアジピン酸ジヒドラジド4〜12質量%及び(d)水82.5〜94.9質量%を含有(ただし、成分(a)〜(d)の合計は100質量%である)し、
(アジピン酸ジヒドラジドの配合量)/(カルボジヒドラジドの配合量)が0〜0.18又は1.25以上であり、
コハク酸ジヒドラジドを含有しない、消臭剤。
【請求項2】
請求項1に記載された消臭剤を繊維に含有させ、乾燥してなる繊維製品。
【請求項3】
更に、バインダー及び撥水剤が付着されている、請求項2に記載された繊維製品。

【公開番号】特開2011−130865(P2011−130865A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291694(P2009−291694)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】