説明

消臭剤及び消臭布帛

【課題】一液で、アセトアルデヒド及びアンモニアの両方に対して高い消臭効果のある消臭剤を提供する。
【解決手段】(a)硫酸ヒドロキシルアミンと、(b)スメクタイトと、(c)ヒドラジン誘導体と、(d)水と、を含んでなる。成分(a)の配合量は2〜20重量部、成分(b)の配合量は0.1〜2重量部、成分(c)の配合量は2〜20重量部、成分(d)の配合量は58〜95.9重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100重量部)であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤、及び、消臭剤を塗布、乾燥してなる消臭布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
繊維や布帛に用いる消臭剤が種々提案されている。このような消臭剤では、特に、アセトアルデヒドやアンモニアに対する消臭効果のある消臭剤が求められつつある。特許文献1や特許文献2に記載された消臭剤では、光触媒を用いてアセトアルデヒドやアンモニアに対する消臭効果を高めることを提案している。
【0003】
【特許文献1】特開2007−289633号公報
【特許文献2】特開2008−061846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の消臭剤では、アルデヒド消臭及びアンモニア消臭の一方に有効なものはあっても、一液のみで、かつ、高いレベルで、アセトアルデヒド消臭及びアンモニア消臭の両方に高い消臭性能を発揮することは難しかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、一液で、アセトアルデヒド及びアンモニアの両方に対して高い消臭効果のある消臭剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る消臭剤は、(a)硫酸ヒドロキシルアミンと、(b)スメクタイトと、(c)ヒドラジン誘導体と、(d)水と、を含んでなることを特徴としている。
【0007】
本発明に係る消臭剤において、成分(a)の配合量は2〜20重量部、成分(b)の配合量は0.1〜2重量部、成分(c)の配合量は2〜20重量部、成分(d)の配合量は58〜95.9重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100重量部)であることが好ましい。
【0008】
本発明に係る消臭剤において、成分(a)の配合量は3〜15重量部、成分(b)の配合量は0.2〜1.5重量部、成分(c)の配合量は3〜15重量部、成分(d)の配合量は68.5〜93.8重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100重量部)であることがより好ましい。
【0009】
本発明に係る消臭剤は、成分(a)と、成分(b)と、成分(c)と、成分(d)と、(e)亜硫酸塩と、を含んでなることが好ましい。
【0010】
本発明に係る消臭剤において、成分(a)の配合量は2〜20重量部、成分(b)の配合量は0.1〜2重量部、成分(c)の配合量は2〜20重量部、成分(d)の配合量は38〜95.4重量部、成分(e)の配合量は0.5〜20重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)+成分(e)=100重量部)であることがより好ましい。
【0011】
本発明に係る消臭剤において、成分(a)の配合量は3〜15重量部、成分(b)の配合量は0.2〜1.5重量部、成分(c)の配合量は3〜15重量部、成分(d)の配合量は58.5〜92.8重量部、成分(e)の配合量は1〜10重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)+成分(e)=100重量部)であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明に係る消臭剤において、成分(c)が、セミカルバジドの酸塩、ヒドラジド化合物、及びヒドラジンの酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る消臭剤において、セミカルバジドの酸塩はセミカルバジドの無機酸塩であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る消臭剤において、ヒドラジド化合物は有機酸ジヒドラジドであることが好ましい。
【0015】
本発明に係る消臭剤において、ヒドラジンの酸塩はヒドラジンの無機酸塩であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る消臭布帛は、上述のいずれかの消臭剤を、布帛に塗布、乾燥してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る消臭剤は、一液で、アセトアルデヒド及びアンモニアの両方に対して高い消臭効果を発揮することができる、という効果を奏する。また、このような消臭剤を塗布、乾燥した、本発明に係る消臭布帛は、アセトアルデヒド及びアンモニアの両方に対して高い消臭効果を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る消臭剤は、(a)硫酸ヒドロキシルアミン(以下、HASと略すことがある)と、(b)スメクタイトと、(c)ヒドラジン誘導体と、(d)水と、を含んでなる消臭剤である。
【0019】
成分(b)であるスメクタイトは、層状珪酸塩鉱物であって、チキソトロピー性を備えており、消臭成分が沈降するのを防止する効果を備えるとともに吸着機能により消臭性能を向上させる。
【0020】
成分(c)であるヒドラジン誘導体は、特に限定されないが、例えば、(i)ヒドラジン;(ii)モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、t−ブチルヒドラジン塩酸塩などのアルキルヒドラジン及びその塩;(iii)硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、一塩酸ヒドラジン、二塩酸ヒドラジン、ブロム酸ヒドラジンなどのヒドラジンの酸塩;(iv)カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドなどのヒドラジド化合物;(v)塩酸セミカルバジド、硫酸セミカルバジド、チオセミカルバジドなどのカルバジド類;等が挙げられる。これらは、1種類を単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0021】
成分(c)の中でも、カルバジド類が好ましく、塩酸セミカルバジド、硫酸セミカルバジドなどのセミカルバジドの無機酸塩がより好ましい。
【0022】
また、成分(c)は、セミカルバジドの酸塩、ヒドラジド化合物、及びヒドラジンの酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物であることが好ましい。
【0023】
セミカルバジドの酸塩の中でも、塩酸セミカルバジド、硫酸セミカルバジドなどのセミカルバジドの無機酸塩がより好ましい。
【0024】
ヒドラジド化合物の中でも、アジピン酸ジヒドラジド、セバチン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドなどの有機酸ジヒドラジドが好ましく、コハク酸ジヒドラジドがより好ましい。
【0025】
ヒドラジンの酸塩の中でも、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、一塩酸ヒドラジン、二塩酸ヒドラジン、ブロム酸ヒドラジンなどのヒドラジンの無機酸塩が好ましく、硫酸ヒドラジンがより好ましい。
【0026】
本発明に係る消臭剤の各成分の配合量は、合計量100重量部に対して、成分(a)の配合量が2〜20重量部、成分(b)の配合量が0.1〜2重量部、成分(c)の配合量が2〜20重量部、成分(d)の配合量が58〜95.9重量部であることが好ましい。
【0027】
本発明に係る消臭剤の各成分の配合量は、合計量100重量部に対して、成分(a)の配合量を3〜15重量部、成分(b)の配合量を0.2〜1.5重量部、成分(c)の配合量を3〜15重量部、成分(d)の配合量を68.5〜93.8重量部とするとさらに好ましい。
【0028】
成分(a)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、従来困難であったアルデヒド類とアンモニア類をバランスよく効率よく消臭できる。
【0029】
成分(b)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、消臭成分の水溶液中での分散状態が安定し、更に自身の吸着性能で他の消臭性能を向上させる。
【0030】
成分(c)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、特にアルデヒド類の消臭性能を向上させる。
【0031】
成分(d)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、布帛への加工が容易となる。
【0032】
また、成分(a)、(b)、(c)、(d)に加えて、(e)亜硫酸塩を含むことが好ましい。
【0033】
成分(e)の例としては、特に限定されず、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アルミニウム、亜硫酸アンモニウムなどが挙げられるが、亜硫酸ナトリウムが好ましい。
【0034】
成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)を含む場合の配合量は、合計量100重量部に対して、成分(a)の配合量が2〜20重量部、成分(b)の配合量が0.1〜2重量部、成分(c)の配合量が2〜20重量部、成分(d)の配合量が38〜95.4重量部、成分(e)の配合量が0.5〜20重量部とすることが好ましい。
【0035】
成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)を含む場合の配合量は、合計量100重量部に対して、成分(a)の配合量を3〜15重量部、成分(b)の配合量を0.2〜1.5重量部、成分(c)の配合量を3〜15重量部、成分(d)の配合量を58.5〜92.8重量部、成分(e)の配合量を1〜10重量部とするとさらに好ましい。
【0036】
成分(a)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、従来困難であったアルデヒド類とアンモニア類をバランスよく効率よく消臭できる。
【0037】
成分(b)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、消臭成分の水溶液中での分散状態が安定し、更に自身の吸着性能で他の消臭性能を向上させる。
【0038】
成分(c)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、特にアルデヒド類の消臭性能を向上させる。
【0039】
成分(d)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、布帛への加工が容易となる。
【0040】
成分(e)の配合量が上記の好ましい範囲内にあることにより、特にアルデヒド類の消臭性能を向上させる。
【0041】
また、繊維製品などの布帛に、上述した消臭剤を含有させ、乾燥してなる消臭繊維製品などの消臭布帛を得ることができる。例えば、本発明の消臭剤は、糸、毛糸、カーペット、じゅうたん、ゴザ、トイレ用マット、風呂用マット、玄関用マット、布団、ベッド、ソファー、車用シート、靴下、ストッキング、タイツ、靴の中敷、手袋、帽子などの繊維製品に代表される布帛に塗布、付着、又は含浸後、乾燥して使用することができる。また、本発明に係る消臭剤は、例えば、室内用消臭剤、トイレ用消臭剤、喫煙所用消臭剤、車内用消臭剤、冷蔵庫用消臭剤として使用することもできる。
【実施例】
【0042】
次に、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではない。
【0043】
実施例に係る消臭剤sa1〜sa9は、室温で攪拌機等を用いて混合した。
【0044】
消臭成分SAについては、和光純薬社製の硫酸ヒドロキシルアミンをそのまま用いた。
【0045】
消臭成分SBは、合成スメクタイト(コープケミカル社製のルーセントSWF(商標))をそのまま用いた。
【0046】
消臭成分SCについては、各実施例に応じて、以下の消臭成分SC1〜SC4のいずれかをそのまま用いた。
(1)消臭成分SC1:塩酸セミカルバジド(和光純薬社製)
(2)消臭成分SC2:硫酸セミカルバジド(和光純薬社製)
(3)消臭成分SC3:コハク酸ジヒドラジド(日本ファインケム社製)
(4)消臭成分SC4:硫酸ヒドラジン(和光純薬社製)
【0047】
消臭成分SEは、亜硫酸ナトリウム(和光純薬社製)15重量部とグリセリン0.9重量部を、水84.1重量部に溶かして、亜硫酸ナトリウム水溶液として用いた。
【0048】
上述の消臭成分SA、SB、SC、SE、及び水を表1に掲げる配合量(重量部)により混合し、実施例sa1〜sa9、及び、比較例に係る消臭剤sb1を調整した。
【0049】
(悪臭ガスの消臭率評価試料作成)
次に、悪臭ガスの消臭率を評価するために、以下の手順で試料を作成した。
【0050】
まず、10cm×10cmの不織布に、表1に掲げる配合の消臭剤sa1〜sa9(実施例1〜9)、及び、比較例に係る消臭剤sb1(比較例1)を、それぞれ0.7g滴下して塗布した。つづいて、消臭剤が塗布された試料をバットに入れ、150℃にて5分間乾燥して、試料を調整した。
【0051】
(悪臭ガスの消臭率評価方法)
悪臭ガスの消臭率の評価方法について説明する。
上述の方法で調整した試料を5Lのテドラー(登録商標)バッグ(フッ化ビニル製サンプリングバッグ)に封入する。次に、悪臭ガスとして、20ppmのアセトアルデヒド又はアンモニアをテドラーバッグに3L注入する。なお、悪臭化合物は個別に試験する。
【0052】
つづいて、初期濃度と4時間後の濃度(室温)を、検知管(アセトアルデヒド:ガステック社製;No.92M、アンモニア:ガステック社製、No.3La)及び光音響マルチガスモニタ(インノヴァ エアテック インストゥルメント社製 型番1412−5)で測定し、消臭率を算出する。
【0053】
消臭率(%)は次式(1)によって算出する。
{(G0−G4)/G0}×100 ・・・(1)
ただし、G0:注入時の悪臭ガス濃度(「初期濃度」ともいう。)、G4:4時間後の悪臭ガス濃度消臭率は、初期濃度に対する悪臭ガス濃度の減少率(「消臭率」ともいう。)を示している。消臭率(単位:%)の数値が大きいほど消臭効果が大きいことを意味している。
【0054】
表1は、実施例に係る消臭剤sa1〜sa9、及び、比較例1に係る消臭剤sb1における消臭成分SA、SB、SC、SE、及び水の配合割合(単位:重量部)、並びに、アセトアルデヒド及びアンモニアの消臭率(単位:%)を示す表である。ただし、消臭成分SA、SB、SC1、SC2、SC3、SC4、SE、及び水の合計量は100重量部である。
【0055】
【表1】

【0056】
表1から明らかなように、実施例に係る消臭剤sa1〜sa9は、いずれも、アセトアルデヒド及びアンモニアに対して、バランス良く、かつ、高いレベルの消臭性能を発揮することがわかる。これに対して、比較例に係る消臭剤sb1では、アセトアルデヒドに対して特に消臭性能が低い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係る消臭剤は、一液でアセトアルデヒド及びアンモニアの両方に対して消臭性能を発揮することが求められている場合に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)硫酸ヒドロキシルアミンと、(b)スメクタイトと、(c)ヒドラジン誘導体と、(d)水と、を含んでなることを特徴とする消臭剤。
【請求項2】
成分(a)の配合量は2〜20重量部、成分(b)の配合量は0.1〜2重量部、成分(c)の配合量は2〜20重量部、成分(d)の配合量は58〜95.9重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100重量部)である請求項1に記載の消臭剤。
【請求項3】
成分(a)の配合量は3〜15重量部、成分(b)の配合量は0.2〜1.5重量部、成分(c)の配合量は3〜15重量部、成分(d)の配合量は68.5〜93.8重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100重量部)である請求項1又は請求項2に記載の消臭剤。
【請求項4】
成分(a)と、成分(b)と、成分(c)と、成分(d)と、(e)亜硫酸塩と、を含んでなる請求項1に記載の消臭剤。
【請求項5】
成分(a)の配合量は2〜20重量部、成分(b)の配合量は0.1〜2重量部、成分(c)の配合量は2〜20重量部、成分(d)の配合量は38〜95.4重量部、成分(e)の配合量は0.5〜20重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)+成分(e)=100重量部)である請求項4に記載の消臭剤。
【請求項6】
成分(a)の配合量は3〜15重量部、成分(b)の配合量は0.2〜1.5重量部、成分(c)の配合量は3〜15重量部、成分(d)の配合量は58.5〜92.8重量部、成分(e)の配合量は1〜10重量部(ただし、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)+成分(e)=100重量部)である請求項4又は請求項5に記載の消臭剤。
【請求項7】
成分(c)が、セミカルバジドの酸塩、ヒドラジド化合物、及びヒドラジンの酸塩からなる群から選ばれる1種以上の化合物である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の消臭剤。
【請求項8】
前記セミカルバジドの酸塩がセミカルバジドの無機酸塩である請求項7に記載の消臭剤。
【請求項9】
前記ヒドラジド化合物が有機酸ジヒドラジドである請求項7に記載の消臭剤。
【請求項10】
前記ヒドラジンの酸塩がヒドラジンの無機酸塩である請求項7に記載の消臭剤。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の消臭剤を、布帛に塗布、乾燥してなることを特徴とする消臭布帛。

【公開番号】特開2010−5093(P2010−5093A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167238(P2008−167238)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】