説明

消臭性組成物、消臭性水溶液、消臭性水性スラリー液、消臭性粉末状組成物及び消臭性マスターバッチ

【課題】 本発明は、従来用いられてきた安定剤より二価鉄塩等の消臭性金属塩の防錆効果に優れ、硫酸第一鉄などの消臭性金属塩を錆びさせることがなく、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等を効果的に除去することができる消臭性組成物であって、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド類を添加しても、アンモニアを発生することがなく、アンモニアとホルムアルデヒド等のアルデヒド類を効果的に除去することができ、可燃性の繊維製品などを難燃化することもできる消臭性組成物を提供することを、その課題とする。
【解決手段】本発明の消臭性組成物は、消臭性金属塩と、リン酸アルカリ金属塩とを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性組成物に関し、詳しくは、硫酸第一鉄や硫酸亜鉛などの消臭性金属塩を含有するにもかかわらず防錆性に優れると共に、アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド化合物を添加してもアンモニアを発生することがなく、しかも紙や繊維を難燃化可能な消臭性組成物に関し、更に、該消臭性組成物を含有する消臭性水溶液、消臭性水性スラリー液、消臭性粉末状組成物及び消臭性マスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
消臭性金属塩、特に硫酸第一鉄や硫酸亜鉛は、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等の悪臭性物質に対する反応性に優れ、これらの悪臭を消臭して空気を清浄化することができるものであり、難燃性も有する化合物である。しかしながら、硫酸第一鉄などの消臭性金属塩は酸化されやすく、酸素が存在すると1日もたたないうちに酸化して錆びてしまい、消臭性を失ってしまうものである。
【0003】
消臭性金属塩のうち、硫酸第一鉄などの二価鉄塩を防錆化する手段として、L−アスコルビン酸を安定剤として添加することが提案され(特許文献1など)、更にL−アスコルビン酸より優れた安定剤としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加することが提案されている(特許文献2など)。なお、L−アスコルビン酸やエチレンジアミン四酢酸は、硫酸第一鉄以外にも硫酸亜鉛等の遷移金属に対する安定性も期待される。
【0004】
これらの安定剤を用いれば硫酸第一鉄などの消臭性金属塩を防錆化することは可能であるが、より優れた安定剤を用いることにより、防錆化の程度を高めることが期待されている。
【0005】
一方、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類が所謂シックハウス症候群を惹き起こす悪臭物質として、近年問題になっている。ところが、消臭性金属塩はアンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等との反応性には優れているが、アルデヒド類との反応性が低くアルデヒド類を除去することには不向きである。
【0006】
そこで、アンモニア等とアルデヒド類の双方を除去するために、消臭性金属塩とアジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物を併用することが行われてきた。ヒドラジド化合物は、アンモニアなどの消臭特性は有しないが、アルデヒド類の除去特性に優れている化合物である。ヒドラジド化合物の中でも、アジピン酸ジヒドラジドはアルデヒド類との反応性に特に優れる除去剤であるが、室温雰囲気下であっても3ppm程度のアンモニアを常時発生させてしまうという欠点を有している。この問題は、二価鉄塩などの消臭性金属塩と併用するだけでは、解決することができなかった。
【0007】
このような状況下、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等を効果的に除去できる消臭性組成物であって、しかもホルムアルデヒド等のアルデヒド類を除去するためにアジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物を添加しても、アンモニアを発生することがない消臭性組成物の開発が期待されている。
【0008】
【特許文献1】特開平2−211240号公報
【特許文献2】特許第3665970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来用いられてきた安定剤より二価鉄塩等の消臭性金属塩の防錆効果に優れ、硫酸第一鉄などの消臭性金属塩を錆びさせることがなく、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等を効果的に除去することができる消臭性組成物であって、アルデヒド類を除去するためにアジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド類を添加しても、アンモニアを発生することがない消臭性組成物を提供することを、その課題とする。更に、本発明は該消臭性組成物を含有する消臭性水溶液、消臭性水性スラリー液、消臭性粉末状組成物、マスターバッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、硫酸第一鉄等の消臭性金属塩の防錆性を向上させるために鋭意研究した結果、消臭性金属塩の安定剤としてリン酸アルカリ金属塩を用いると、二価鉄塩等の消臭性金属塩の防錆化が、従来の安定剤より向上することを発見した。更に、消臭性金属塩とリン酸アルカリ金属塩を含有する消臭性組成物は、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物が添加されても、アルデヒド類の消臭特性を失わないにもかかわらず、アンモニアが発生しないことを発見し、更にヒドラジド化合物が消臭性金属塩の防錆性を更に向上させることを発見し、本発明に到達した。
【0011】
本発明によれば、以下に示す消臭性組成物、消臭性水溶液、消臭性水性スラリー液、消臭性粉末状組成物、消臭性マスターバッチが提供される。
〔1〕消臭性金属塩と、リン酸アルカリ金属塩とを含有することを特徴とする消臭性組成物。
〔2〕前記消臭性金属塩が、硫酸第一鉄及び/又は硫酸亜鉛であることを特徴とする前記〔1〕に記載の消臭性組成物。
〔3〕前記リン酸アルカリ金属塩がリン酸カリウムであることを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕に記載の消臭性組成物。
〔4〕ヒドラジド化合物を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の消臭性組成物。
〔5〕前記ヒドラジド化合物がアジピン酸ジヒドラジドであることを特徴とする前記〔4〕に記載の消臭性組成物。
〔6〕キレート剤を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の消臭性組成物。
〔7〕前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であることを特徴とする前記〔6〕に記載の消臭性組成物。
〔8〕有機酸を含有することを特徴とする前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の消臭性組成物。
〔9〕前記有機酸が、クエン酸、りんご酸、酒石酸、シュウ酸のいずれかから選択される酸であることを特徴とする前記〔8〕のいずれかに記載の消臭性組成物。
〔10〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の消臭性組成物を含有することを特徴とする消臭性水溶液。
〔11〕前記消臭性組成物の含有量が0.3〜20重量%であることを特徴とする請求項10に記載の消臭性水溶液。
〔12〕pHが3〜9であることを特徴とする請求項10又は11に記載の消臭性水溶液。
〔13〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の消臭性組成物を含有することを特徴とする消臭性水性スラリー液。
〔14〕前記消臭性組成物の含有量が30〜70重量%であることを特徴とする前記〔13〕に記載の消臭性水性スラリー液。
〔15〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の消臭性組成物を含有することを特徴とする消臭性粉末状組成物。
〔16〕前記消臭性組成物の含有量が10〜100重量%であることを特徴とする前記〔15〕に記載の消臭性粉末状組成物。
〔17〕前記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の消臭性組成物を含有する熱可塑性樹脂からなることを特徴とする消臭性マスターバッチ。
〔18〕前記消臭性組成物の含有量が10〜60重量%であることを特徴とする前記〔17〕に記載の消臭性マスターバッチ。
〔19〕前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂のいずれかであることを特徴とする前記〔17〕又は〔18〕に記載の消臭性マスターバッチ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消臭性組成物は、リン酸アルカリ金属塩を消臭性金属塩の安定剤として含有するものであることから、硫酸第一鉄や硫酸亜鉛などの消臭性金属塩を極めて安定した状態で含有するので、防錆性に優れるものである。また、本発明の消臭性組成物は難燃性を有し、紙などの可燃物を難燃化(防炎化)することができる。
本発明の消臭性組成物は、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物を添加しても、ヒドラジド化合物がアルデヒド類の消臭特性を保持したまま安定して存在するので、アンモニアが発生することがないものである。しかも、ヒドラジド化合物を添加すると、消臭性金属塩の防錆特性がさらに向上する(消臭性金属塩とリン酸アルカリ金属塩とヒドラジド化合物とが結合体を形成していると考えられる。)。ヒドラジド化合物を含有する本発明の消臭性組成物は、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等の悪臭性物質を除去できると同時に、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類の悪臭性物質を除去することができる。
本発明の消臭性組成物は水溶性なので消臭性水溶液として用いることができ、また濃度が濃い消臭性水性スラリー液とすることができ、消臭性水性スラリー液を水分と分離、乾燥すれば消臭性粉末状組成物を得ることができ、消臭性粉末状組成物を熱可塑性樹脂に高濃度に添加すれば消臭性マスターバッチを得ることができる。これらを用いると消臭性の紙、繊維、塗料、プレスチック成形品などを容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の消臭性組成物について詳細に説明する。
本発明の消臭性組成物は、消臭性金属塩とリン酸アルカリ金属塩とを少なくとも含有する。該消臭性組成物が含有するリン酸アルカリ金属塩は、消臭性金属塩の安定剤であり、従来、硫酸第一鉄などの二価鉄塩に対して用いられてきた安定剤より、消臭性金属塩に対する防錆効果に優れるものである。従って、本発明の消臭性組成物は、消臭性金属塩を長期間安定して保持することができるものである。
【0014】
本発明の消臭性組成物が含有する消臭性金属塩を構成する金属としては、チタン、バナジウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀などの遷移金属が主として挙げられ、その他にも鉛、アルミニウム、マグネシウムなどが挙げられる。これらの金属からなる塩の中では、二価鉄及び/又は亜鉛の塩がアンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等の消臭特性に優れ、しかも安価であることから好ましく使用される。
【0015】
前記金属が二価鉄である塩には、無機酸塩及び有機酸塩が包含される。無機酸塩としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、臭化第1鉄、ヨウ化第1鉄等が挙げられる。有機酸塩としては、クエン酸第1鉄、りんご酸第1鉄、アスコルビン酸第1鉄、エチレンジアミンテトラカルボン酸(EDTA)第1鉄、乳酸第1鉄、没食子酸第1鉄、リンゴ酸第1鉄、フマル酸第1鉄等が挙げられる。二価鉄塩は、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等の悪臭物質、酢酸臭、ニコチン代謝物としてのピリジンを分解・消臭する効果が優れており、更に帯電防止剤、親水化剤、難燃化剤、脱酸素剤としての作用を示すこともできる。なお、前記の二価鉄塩の中では、安価に入手でき、安全性に優れる硫酸第一鉄が好ましい。
【0016】
前記金属が亜鉛である塩には、無機酸塩及び有機酸塩が包含される。無機酸塩としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、リン酸亜鉛、硝酸亜鉛、炭酸亜鉛等が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、フマル酸亜鉛、グリコール酸亜鉛、乳酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、サリチル酸亜鉛、グリセリン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、アルミノケイ酸亜鉛等が挙げられる。亜鉛の塩は、アンモニア、硫化水素、メチルメルカプタン、トリメチルアミン等の悪臭物質、酢酸臭、ニコチン代謝物としてのピリジンを分解・消臭する効果が優れており、更に帯電防止剤、親水化剤、難燃化剤、脱酸素剤としての作用を示すこともできる。なお、前記亜鉛の塩の中では、安価に入手でき、安全性に優れる硫酸亜鉛が好ましい。
【0017】
又、前記金属が銅である塩も消臭性金属塩として用いることができる。該銅の塩としては、例えば、硫酸銅、硝酸銅、リン酸銅等の無機酸塩、クエン酸銅、リンゴ酸銅、フマル酸銅、グリコール酸銅、乳酸銅、グルコン酸銅、安息香酸銅、サリチル酸銅、グリセリン酸銅、酒石酸銅等の有機酸塩が挙げられる。これらの中では、硫酸銅は水溶液中で青色を発現することから、着色剤としても用いることができるので好ましい。
【0018】
又、前記金属がマグネシウムである塩も消臭性金属塩として用いられる。該マグネシウム塩は、前記二価鉄塩や亜鉛の塩に混合して用いることが好ましい。該マグネシウムの塩としては、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水酸化マグネシウム、硫酸ナトリウムマグネシウム、硫酸カリウムマグネシウム、炭酸水素カリウムマグネシウムが挙げられる。これらの中では、硫酸マグネシウムが好ましい。
【0019】
本発明の消臭性組成物は、リン酸アルカリ金属塩を含有する。該リン酸アルカリ金属塩は、不安定な消臭性金属塩を安定させる作用を有するものであり、難燃性も有している。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムが挙げられ、より安定化作用(消臭性金属塩の錆の発生が防止される。)に優れるカリウムが好ましい。
【0020】
更に、本発明におけるリン酸アルカリ金属塩には、リン酸の水素基が部分的にアルカリ金属に置き換わった部分中和塩が含まれる。例えば、リン酸カリウム(KPO)を例にとると、本発明におけるリン酸カリウムには、リン酸カリウム(KPO)、リン酸水素二カリウム(KHPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)が含まれ、具体的にはリン酸カリウム(KPO)とリン酸水素二カリウム(KHPO)からなる場合、リン酸水素二カリウム(KHPO)とリン酸二水素カリウム(KHPO)からなる場合が含まれ、その組成はpHによって定まる。なお、リン酸カリウム(KPO)の水溶液はpH11程度の強アルカリ性であり、pHが小さくなるほどリン酸水素二カリウム(KHPO)、更にリン酸二水素カリウム(KHPO)の含有量が大きくなる傾向がある。
【0021】
リン酸カリウムなどのリン酸アルカリ金属塩は、前記の通りpHによってその組成がかわるものである。このことは、リン酸アルカリ金属塩がアルカリ性や酸性の悪臭物質と反応できることを意味し、リン酸アルカリ金属塩自体が優れた消臭特性を有している。
【0022】
本発明の消臭性組成物は、消臭性金属塩1当量に対してリン酸アルカリ金属塩を5〜60当量含有することが好ましく、9〜40当量含有することがより好ましく、10〜30当量含有することが更に好ましく、13〜26当量含有することが特に好ましい。具体的には、硫酸第一鉄(7水塩)100重量部に対して、リン酸カリウムを300〜3000重量部含有することが好ましく、500〜2000重量部含有することがより好ましく、600〜1500重量部含有することが更に好ましく、700〜1300重量部含有することが特に好ましい。消臭性金属塩に対して、リン酸アルカリ金属塩の量が多すぎると、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等の消臭特性が低下する虞があり、リン酸アルカリ金属塩の量が少なすぎると、リン酸アルカリ金属塩の防錆特性が低下する虞がある。
【0023】
なお、本発明の消臭性組成物においては、消臭性金属塩とリン酸アルカリ金属塩とは錯体を形成していると考えられる。例えば、硫酸第二鉄とリン酸カリウムを含有する消臭性組成物の水溶液をpH4〜10に調節し、これに二価鉄イオンの検知剤であるフェリシアン化カリウムを加えても、実質的な青色の発色を生じない。
【0024】
本発明の消臭性組成物は、前記のように二価鉄塩等の消臭性金属塩が結合体を形成しているにもかかわらず、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等の悪臭性物質に対する反応性を示すことができる。従って、それらの悪臭性物質を含む空気を、本発明の消臭性組成物に接触させると、アンモニアなどの悪臭性物質は消臭性組成物と反応して空気中から除去されるので、アンモニアなどの悪臭性物質のない空気を得ることができる。
【0025】
本発明の消臭性組成物は、ヒドラジド化合物を含有することが好ましい。ヒドラジド化合物を含有する該消臭性組成物は、アルデヒド類を効果的に消臭できる上に、硫酸第一鉄や硫酸亜鉛等の消臭性金属塩の安定性が更に高められる。しかも、本発明の消臭性組成物は、アジピン酸ヒドラジドなどのヒドラジド化合物が添加されていても、アンモニアを発生することがない。このように、消臭性金属塩の防錆性の向上とヒドラジド化合物からのアンモニアの発生の防止が同時に達成されることから、リン酸アルカリ金属塩と消臭性金属塩とヒドラジド化合物は結合体を形成していると考えられる。即ち、消臭性金属のイオンにリン酸アルカリ金属塩とヒドラジド化合物とが配位した錯体(キレート)が形成されていると考えられる。
【0026】
なお、従来のヒドラジド化合物が添加された消臭剤は、アルデヒド類を除去することはできても、アンモニアの発生を防止することができないので、消臭剤としては不適格なものである。
【0027】
該ヒドラジド化合物としては、分子中に少なくとも1個のヒドラジド基を有する化合物の中から適宜選択することができる。例えば、分子中に1個のヒドラジド基を有するモノヒドラジド化合物、分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物、分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物、又はこれらの混合物等を挙げることができる。
【0028】
モノヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(1)で表されるモノヒドラジド化合物を挙げることができる。
R−CO−NHNH (1)
[(1)式中、Rは水素原子、アルキル基又は置換基を有することのあるアリール基を示す。]
【0029】
上記一般式(1)において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキル基を挙げることができる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。またアリール基の置換基としては、例えば、水酸基、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状のアルキル基等を挙げることができる。
【0030】
モノヒドラジド化合物の具体例として、ラウリン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等が挙げられる。
【0031】
ジヒドラジド化合物の具体例としては、例えば、下記一般式(2)で表わされるジヒドラジド化合物を挙げることができる。
NHN−X−NHNH (2)
[(2)式中、Xは基−CO−又は基−CO−A−CO−を示す。Aはアルキレン基又はアリーレン基を示す。]
【0032】
上記一般式(2)において、Aで示されるアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基等の炭素数1〜12の直鎖状アルキレン基を挙げることができる。アルキレン基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば水酸基等を挙げることができる。アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基、フェナントリレン基等を挙げることができる。
【0033】
ジヒドラジド化合物の具体例として、炭酸とヒドラジンとの反応により生成するカルボジヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。更に、特公平2−4607号公報に記載の各種2塩基酸ジヒドラジド化合物、2,4−ジヒドラジノ−6−メチルアミノ−sym−トリアジン等が挙げられる。
ポリヒドラジド化合物は、具体的には、ポリアクリル酸ヒドラジド等である。
【0034】
これらのヒドラジン化合物は1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
好ましいヒドラジド化合物としては、水加ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、フェニルヒドラジン、2−ヒドロキシエチルヒドラジン、カルボ(ジ)ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジドが挙げられる。これらの中では、アルデヒド類との反応性に優れると共に二価鉄塩の安定化に優れていることから、アジピン酸ジヒドラジドが特に好ましい。
【0036】
本発明の消臭性組成物は、前記消臭性金属塩1当量に対して、ヒドラジド化合物をNHNH基換算で0.5〜5当量含有することが好ましく、1〜3.5当量含有することがより好ましく、1.4〜2.5当量含有すること更に好ましい。具体的には、硫酸第一鉄100重量部に対して、アジピン酸ジヒドラジド50〜250重量部を含有することが好ましく、70〜200重量部含有することがより好ましく、90〜150重量部含有することが更に好ましい。
消臭性金属塩に対して、ヒドラジド化合物の量が多すぎると、アンモニア等が発生してしまう虞があり、ヒドラジド化合物の量が少なすぎると、消臭性金属塩に対するヒドラジド化合物による防錆特性や、ヒドラジド化合物によるアルデヒド類の消臭特性が発現しない虞がある。
【0037】
なお、ヒドラジド化合物を含有する、本発明の消臭性組成物の水溶液をpH4〜10に調節し、これに二価鉄イオンの検知剤であるフェリシアン化カリウムを加えても、実質的な青色の発色を生じない。
【0038】
ヒドラジド化合物を含有する、本発明の消臭性組成物は、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類の悪臭性物質との反応性を示すことができる。同時に消臭性金属塩を含有するので、前記の通りアンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等の悪臭性物質に対する反応性を示すことができる。従って、アンモニアやホルムアルデヒド等の悪臭性物質を共に含む空気を、本発明の消臭性組成物に接触させると、これらの悪臭性物質は消臭性組成物と反応して、空気中から除去されるので、これらの悪臭性物質のない空気を得ることができる。
【0039】
本発明の消臭性組成物は、消臭性金属塩の安定性が更に高まることから、キレート剤を含有することが好ましい。
キレート剤としては、二価鉄イオンや亜鉛のイオンなどの消臭性金属イオンに対してキレート化能を有するものであれば任意のものを用いることができる。このようなものとしては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン等のポリアミノカルボン酸又はその水溶性塩;エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)等のポリアミノリン酸又はその水溶性塩;クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸又はその水溶性塩、アルキルジホスホン酸又はその水溶性塩等が挙げられる。これらのキレート剤は、単独又は混合物の形で用いることができる。本発明においては、特に、EDTAやイミノ二酢酸等のポリアミノカルボン酸及びそれらの水溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)の使用が好適である。
【0040】
本発明の消臭性組成物におけるキレート剤の含有量としては、消臭性金属塩1当量に対して0.001〜0.04当量が好ましく、0.007〜0.025当量がより好ましい。具体的には、硫酸第一鉄(7水塩)100重量部に対して、エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム(EDTA−2Na)0.5〜5重量部が好ましく、1〜3重量部がより好ましい。
【0041】
本発明の消臭性組成物は、消臭性金属塩の安定性が更に高まり、pHの調整剤としても働くことから、有機酸を含有することが好ましい。本発明における有機酸とは、カルボン酸構造(R−COOH)を酸成分とする化合物をいい、脂肪酸(長鎖炭化水素の1価のカルボン酸)、脂式ジカルボン酸、オキソカルボン酸を含み、その他にも不飽和脂肪酸やヒドロキシ基を併せ持つヒドロキシ酸等を含む。
【0042】
前記脂肪酸の具体例として、ギ酸(メタン酸)、酢酸(エタン酸)、プロピオン酸(プロパン酸)、酪酸(ブタン酸)、吉草酸(ペンタン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、エナント酸(ヘプタン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデカン酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸、セタン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸が挙げられる。
【0043】
前記脂式ジカルボン酸の具体例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸が挙げられ、芳香族カルボン酸の具体例として、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸が挙げられ、オキソカルボン酸の具体例として、ピルビン酸が挙げられ、その他の不飽和脂肪酸やヒドロキシ酸などの具体例として、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、アミノ酸、ニトロカルボン酸が挙げられる。本発明においては、これらの中から選択された二以上の有機酸を混合したものを用いることができる。
【0044】
本発明においては、前記の有機酸の中でも、無臭で、水に対する溶解度が高く、安価且つ容易に入手できるものが好ましい。具体的には、クエン酸、りんご酸、酒石酸、シュウ酸のいずれかから選択される酸、又はそれらを混合した酸が好ましく用いられる。
【0045】
本発明の消臭性組成物における有機酸の含有量は、前記消臭性金属塩1当量に対して有機酸20×10−3〜0.15当量が好ましく、2×10−3〜0.07当量がより好ましく、1×10−3〜0.1当量が更に好ましい。具体的には、硫酸第一鉄(7水塩)100重量部に対して、クエン酸0.1〜5重量部が好ましく、0.5〜3重量部がより好ましく、1〜2重量部が更に好ましい。
【0046】
前記消臭性金属塩を初めとして種々の化合物を含有する、本発明の消臭性組成物は難燃性を有し、紙や繊維に塗布することにより難燃性を付与できるものである。
【0047】
次に、本発明の消臭性組成物の製造方法について、前記消臭性金属塩が硫酸第一鉄であり、前記リン酸アルカリ金属塩がリン酸カリウムである場合を例として説明する。更に、本発明の消臭性組成物に必要に応じてヒドラジド化合物、キレート剤、有機酸が添加される場合について、ヒドラジド化合物がアジピン酸ジヒドラジドであり、キレート剤がEDTA−2Naであり、有機酸がクエン酸である場合について説明する。但し、本発明はこの組合せに限定されるものではない。
【0048】
まず、室温において、リン酸水溶液に水酸化カリウムを添加してリン酸カリウムの水溶液を製造する。このときのリン酸水溶液に対する水酸化カリウムの添加量は、得られる消臭性組成物の水溶液のpHに対して支配的であることから、得られる消臭性組成物の水溶液のpHとして所望される値を基準として定めればよい。通常、pHは3〜9が好ましく、より好ましくは6〜8である。
なお、消臭性組成物の水溶液のpHは、硫酸第一鉄が弱酸性であることから、リン酸カリウム溶液のpHより若干小さくなる傾向がある。
【0049】
次に、50〜100℃の熱水に、高速ミキサーなどを用いて良く攪拌しながら、硫酸第一鉄を、室温で可能な溶解度を超える量を添加して熱水に溶解させる。このような熱水を用いると、室温の溶解度を超える硫酸第一鉄であっても溶解させることができる。次に、前記リン酸カリウムの水溶液を添加し、攪拌しながら冷却する。リン酸カリウムの水溶液を保存する温度には特に制限はなく、室温程度でかまわない。
なお、熱水の温度は、硫酸第一鉄を溶解させやすいことから、その下限は60℃が好ましく、70℃がより好ましく、80℃が更に好ましい。また、その上限は、取扱いやすいことから、97℃が好ましく、より好ましくは95℃である。
【0050】
なお、硫酸第一鉄などの消臭性金属塩の防錆性を高めると共に、アルデヒド類の消臭性を付与する場合には、硫酸第一鉄と前後してアジピン酸ジヒドラジドを添加することができ、消臭性金属塩の防錆性を更に高めるためにEDTA−2Naやクエン酸を添加することができ、その場合、硫酸第一鉄やアジピン酸ジヒドラジドと前後して、EDTA−2Naやクエン酸を添加することができる。
【0051】
熱水に加える各成分の配合量は、例えば、熱水100重量部に対して、硫酸第一鉄(7水塩)5〜20重量部、リン酸カリウム水溶液中のリン酸カリウム15〜600重量部、アジピン酸ジヒドラジド2.5〜50重量部、EDTA−2Na0.5〜5重量部、クエン酸0.5〜2重量部となるようにすればよい。
【0052】
前記溶液を室温まで冷却し、放置しておくと、その上部は透明な溶液状態となり、その下部は粘度の高いスラリー状態となる。上部の上澄み液を取出して必要に応じて水で3〜10倍に希釈すれば、本発明の消臭性水溶液が得られる。下部のスラリー状態の液を取出せば、本発明の消臭性水性スラリー液(以下、単に消臭性スラリー液ともいう。)が得られる。このスラリー液から水分を蒸発させて乾燥し、得られた固形物を粉砕すれば、本発明の消臭性粉末状組成物(以下、単に粉末状組成物ともいう。)が得られる。乾燥、粉砕の方法としては、乾燥機を用いて110〜120℃で加熱し、得られた固形物をボールミル、ハンマーミル、ジェットミル等で粉砕する方法や、スプレードライヤーを用いて乾燥、粉体化する方法がある。
【0053】
前記のようにして得られる、本発明の消臭性水溶液は、硫酸第一鉄などの二価鉄塩の防錆性に優れ、消臭剤として、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等の悪臭性物質を除去できると共に、紙や繊維に塗布することにより難燃化することができる。
【0054】
又、該消臭性水溶液は、アジピン酸ジヒドラジドを含有することにより、アンモニア、アミン、硫化水素、メルカプタン等を除去すると同時に、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類の悪臭性物質を除去することができる。
【0055】
該消臭性水溶液中の消臭性組成物の含有量は0.3〜20重量%が好ましく、0.5〜15重量%がより好ましく、0.7〜10重量%が更に好ましい。消臭性組成物の含有量が少なすぎると、効果的な消臭特性が発揮されなくなり、含有量が多すぎると、水に対する溶解度を超えて沈殿してしまう。
【0056】
該消臭性水溶液のpHは3〜9が好ましく、より好ましくは6〜8である。悪臭物質はpHが大きなアルカリ性であったり、pHが小さな酸性であることから、消臭性組成物が悪臭物質と効果的に反応して悪臭物質を除去するには、消臭性水溶液のpHは中性に近いほうが好ましく、またpHが中性に近い消臭性水溶液は取扱いやすい。
【0057】
該消臭性水溶液のpHの最終的な調整は、pHを大きくする場合には水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属が好ましく用いられ、前記リン酸カリウムに対応させて、水酸化カリウムを用いることがより好ましい。また、pHを小さくするにはリン酸や前記有機酸を用いることが好ましい。
【0058】
該消臭性水溶液には、必要に応じて前記有機酸や酸化チタン等の調色剤や抗菌剤を添加することもできる。
【0059】
本発明の消臭性水溶液は、そのまま又は必要に応じて水で希釈した後、悪臭源にスプレーしたり、悪臭性物質を含む空気中にスプレーする等して使用される。また、悪臭性物質を含むガスを、この消臭性水溶液中に吹込むことによって、悪臭性物質をそのガスから除去することができる。
【0060】
また、本発明の消臭性水溶液を壁紙、皮革及び皮革製品、紙、、フィルム、不織布、織布、繊維等の繊維製品、スチール、ガラス、タイル、木材、ボード、プラスチックフィルム、プラスチック板等の各種の製品に含浸又は塗布させて乾燥させると、これらのものは、アンミニアやアルデヒド類に対して消臭性を有し、しかも可燃性の紙や繊維製品であっても難燃性を示すようになる。この場合、消臭性組成物としての塗布量は、1〜10g/mが好ましい。
【0061】
本発明の消臭性水性スラリー液(消臭性スラリー液)は、前記のようにして得られるものである。
【0062】
本発明の消臭性水性スラリー液における消臭性組成物の含有量は、30〜70重量%が好ましく、より好ましくは35〜50重量%である。該含有量が30重量%以上であれば、粘度が低下しすぎることがないので消臭性組成物が沈殿するのを防いで、スラリー液を得ることができる。一方、該含有量が70重量%以下であれば、消臭性組成物が固まって取り扱いにくくなることがない。
【0063】
このような組成の消臭性水性スラリー液の20℃での粘度は、消臭性組成物の濃度によって定まり、5000〜20000poiseが好ましく、10000〜15000poiseがより好ましい。
【0064】
該消臭性水性スラリー液のpHは、前記消臭性水溶液と同様に3〜9が好ましく、より好ましくは6〜8である。消臭性水性スラリー液のpHの最終的な調整は、水酸化カリウム、リン酸、前記有機酸を用いることができる。
【0065】
本発明の消臭性水性スラリー液には、必要に応じて分散剤(界面活性剤)や増粘剤(水溶性高分子)や酸化チタン等の調色剤や抗菌剤を添加することができる。
【0066】
また、該消臭性スラリー液には、多孔性物質を含有させることができる。
該多孔性物質としては、シリカライト、ゼオライト、モンモリロナイト、セピオライト等の結晶性ケイ酸塩又はそれらの混合物;白土、活性白土、ケイソウ土、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土等の粘土;シリカ、アルミナ、シリカゲル、酸化マグネシウム、チタニア、アルミナ、ジルコニア、シリカ/アルミナ、シリカ/チタニア等の金属酸化物等が挙げられる。多孔性物質の平均粒径は、0.1〜50μm、好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmである。
【0067】
多孔性物質の含有量は、全組成物中0〜90重量%が好ましく、より好ましくは0〜70重量%の範囲にするのがよい。
多孔性物質の添加は、本発明の水性スラリー液に対して、均一に混合することにより行う。
【0068】
本発明の消臭性スラリー液は、そのまま又は必要に応じて水で希釈した後、悪臭源にスプレーしたり、悪臭性物質を含む空気中にスプレーする等して適用される。また、悪臭性物質を含むガスを、この消臭性スラリー液中に吹込むことによって、悪臭性物質をそのガスから除去することができる。
【0069】
本発明の消臭性スラリー液は、消臭性製品を得るための添加剤として用いることができる。例えば、その消臭性スラリー液を、活性炭やゼオライト、アルミナ、シリカ、マグネシア等の吸着剤に添加し、混練し、得られた混練物を成形し、乾燥することにより、消臭作用を有し、耐熱性、難燃性を有する成形品を得ることができる。成形品の形状は、ペレット状、板状、ブロック状、容器状等の各種の形状であることができる。このような製品は、乾燥状態においても良好な消臭性、耐熱性、難燃性を有するまた、。本発明の消臭性スラリー液を、紙や不織布、織布、繊維等の繊維製品に含浸させ、乾燥することによって、消臭作用を有する繊維製品を得ることができる。
【0070】
本発明の消臭性スラリー液は、消臭作用を有する樹脂組成物を得るための配合成分として用いることができる。このような組成物には、塗料組成物、インク組成物、成形用樹脂組成物等が包含される。本明細書で言う樹脂には、ポリマーの他、そのプレポリマーも包含される。このような樹脂には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、感光性樹脂、天然高分子、合成ゴム等が包含される。
【0071】
本発明の消臭性粉末状組成物(粉末状組成物)は、前記消臭性スラリー液から水分を分離、乾燥することにより得ることができる。このものは、消臭性、難燃性を有すると同時に耐熱性にも優れ400℃までの耐熱性を有する。
【0072】
該粉末状組成物における、本発明の消臭性組成物の含有量は、10〜100重量%であり、好ましくは30〜100重量%、より好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは70〜100重量%である。この場合、前記多孔性物質等を含有させることにより、本発明の消臭性組成物の含有量が小さくなる。
【0073】
該粉末状組成物は、バインダーを用いて不織布、織布、繊維等の繊維製品に被覆することができ、真空加圧により建材に被覆することができる。
【0074】
また、該消臭性の粉末状組成物は、400℃以下の製造条件下で含有させることさえできれば、各種樹脂に消臭剤、難燃剤として添加することができる。該樹脂としては、半合成高分子、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、合成ゴムなどが挙げられる。半合成高分子としては、セルロースアセテート、セルロースニトレートなどのセルロース系樹脂、カゼインプラスチック、大豆タンパクプラスチック等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂 、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂;ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、 ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;各種ナイロン、アラミド樹脂などのポリアミド系樹脂;ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。合成ゴムとしては、イソプレン系、ブタジエン系、アクリロニトリル系、クロロプレン系、スチレン系、スチレン−ブタジエン系のものなどが挙げられる。
【0075】
これらの樹脂を用いた最終製品としては、不織布、織布、繊維等の繊維製品、建材、電荷製品、包装資材、家具、家庭用品、自動車や航空機などの車両用内装材などが挙げられる。
【0076】
これらの最終製品に本発明の粉末状組成物を含有させる方法に制限はないが、熱可塑性樹脂の場合には、粉末状組成物を高濃度に含有するマスターバッチを製造し、該マスターバッチを用いて射出成形や押出成形などを行って成形体を製造したり、繊維を紡糸したりすることが好ましい。なお、マスターバッチの製造方法としては、押出法などの従来公知の方法を採用することができる。
【0077】
マスターバッチを商品として製造する場合には、汎用性という点で、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂のマスターバッチを製造することが好ましい。マスターバッチに添加する粉末状組成物の含有量としては、10〜60重量%が好ましく、20〜55重量%がより好ましく、30〜50重量%が更に好ましい。該含有量が10重量%以上であれば、濃度が低すぎてマスターバッチを製造する利点がなくなるということがなく、60重量%以下であれば、マスターバッチ製造の難度が高くなりすぎるということがない。
【実施例】
【0078】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、以下において示す部及び%はいずれも重量基準である。
【0079】
実施例1
(株)AIHO製の高速ミキサー「MX−45」を用いて攪拌しながら、リン酸75重量%水溶液1000gに水酸化カリウム900gを添加して、濃度71重量%、pH8のリン酸カリウム水溶液を作製した(リン酸/水酸化カリウム=7.65モル/16.0モル=1モル/2.1モル)。
【0080】
(株)AIHO製の高速ミキサー「MX−45」を用いて、沸騰させた熱水500gを高速で攪拌しながら、硫酸第一鉄(FeSO・7HO)50gを加えて溶解させた。次に、前記 室温程度の前記リン酸カリウム水溶液600gを加えて、消臭性組成物を含有する溶液を製造した(合計1150g中消臭性組成物476g)。

【0081】
前記消臭性組成物を含有する溶液を1週間放置した後、上部は透明な溶液状態で、その下部は粘度の高いスラリー状態となった溶液を得た。上部約2/3の上澄み液を取出し、水で5倍に希釈して、消臭性組成物濃度が約8重量%の消臭性水溶液(pH7.5)を得た。
下部約1/3のスラリー状態の液を取出して、濃度約50重量%の消臭性水性スラリー液を得た。消臭性水性スラリー液を乾燥機を用いて120℃で水分を除去、乾燥させてから、ボールミルで粉砕して消臭性粉末状組成物を得た。
【0082】
前記消臭性水溶液を、製造後6ヶ月放置しておいたところ、鉄錆びが沈殿することがなく、上澄みに鉄錆が浮かぶことも、変色することも無かった。
【0083】
なお、実施例1で得られた水溶液100ccに対し、フェリシアン化カリウムの10%水溶液を10cc加えて攪拌したところ、青色の発色は生じなかった。
【0084】
比較例1
(株)AIHO製の高速ミキサー「MX−45」を用いて、沸騰させた熱水500gに硫酸第一鉄(FeSO・7HO)50gを加え、更にEDTA−2Na40gを加えて溶解させて、消臭剤水溶液を得た。
このものを6ヶ月室温に放置しておいたところ、茶褐色に変色してしまった。実施例1と比較例1の比較から、本発明で用いられるリン酸カリウムは、安定剤としてEDTAより優れていることが判る。
【0085】
実施例2
(株)AIHO製の高速ミキサー「MX−45」を用いて攪拌しながら、沸騰させた熱水500gに硫酸第一鉄(FESO・7HO)50gとアジピン酸ジヒドラジド50gとを加えて溶解させた。次に、室温程度の実施例1ど同様のリン酸カリウム水溶液600gを加えた(合計1200g中消臭性組成物526g)。
【0086】
前記消臭性組成物を含有する溶液を1週間放置した後、上部は透明な溶液状態で、その下部は粘度の高いスラリー状態となった溶液を得た。上部約2/3の上澄み液を取出し、水で5倍に希釈して、消臭性組成物濃度が約8重量%の消臭性水溶液(pH7.5)を得た。下部約1/3のスラリー状態の液を取出して、濃度約50重量%の消臭性水性スラリー液を得た。
消臭性水性スラリー液を乾燥機を用いて120℃で水分を除去、乾燥させてから、ボールミルで粉砕して消臭性粉末状組成物を得た。
【0087】
なお、得られた消臭性水溶液100ccに対し、フェリシアン化カリウムの10%水溶液を10cc加えて攪拌しても、青色の発色を生じなかった。また、該消臭性水溶液を6ヶ月放置しておいたところ、鉄錆びが沈殿することがなく、上澄みに鉄錆が浮かぶことも、変色することも無かった。
【0088】
実施例3
(株)AIHO製の高速ミキサー「MX−45」を用いて攪拌しながら、沸騰させた熱水500gに硫酸第一鉄(FeSO・7HO)45gと硫酸亜鉛(ZnSO・7HO)5gとアジピン酸ジヒドラジド50gとを加えて溶解させた。次に、実施例1と同様に室温程度のリン酸カリウム水溶液600gを加えた(合計1200g中消臭性組成物526g)。
【0089】
前記消臭性組成物を含有する溶液を1週間放置した後、上部は透明な溶液状態で、その下部は粘度の高いスラリー状態となった溶液を得た。上部約2/3の上澄み液を取出し、水で5倍に希釈して、消臭性組成物濃度が約8重量%の消臭性水溶液(pH7.5)を得た。下部約1/3のスラリー状態の液を取出して、濃度約50重量%の消臭性水性スラリー液を得た。消臭性水性スラリー液を乾燥機を用いて120℃で水分を除去、乾燥させてから、ボールミルで粉砕して消臭性粉末状組成物を得た。
【0090】
なお、得られた消臭性水溶液100ccに対し、フェリシアン化カリウムの10%水溶液を10cc加えて攪拌しても、青色の発色を生じなかった。また、該消臭性水溶液を3ヶ月放置しておいたところ、鉄錆は全く発生しなかった。
【0091】
比較例2
(株)AIHO製の高速ミキサー「MX−45」を用いて、沸騰させた熱水500gに硫酸第一鉄(FeSO・7HO)50gとアジピン酸ジヒドラジド50gを順に加えて、消臭剤水溶液を得た。
このものを、製造後1昼夜放置したことろ、硫酸第一鉄が水溶液中の酸素と反応して鉄錆びとなって黄変して沈殿してしまい、消臭剤として用いることができないものであった。
【0092】
参考比較例1
(株)AIHO製の高速ミキサー「MX−45」を用いて、沸騰させた熱水500gLを高速で攪拌しながらアジピン酸ジヒドラジド50gを加え、更に塩化カルシウム50を加え消臭性水溶液を得た。
【0093】
消臭試験
実施例1〜3、比較例1、参考比較例1で得られた消臭性水溶液6mLを10cm×20cmの不織布に塗布し乾燥させてから、それぞれを5Lのテドラーバックに入れた。次に、アンモニア25ppm、酢酸50ppm、硫化水素2.4ppm、アセトアルデヒド30ppm、ホルムアルデヒド20ppmを含有するガス3Lを各々のテドラーバック内に順に注入し、それぞれのガスについて1時間経過後の各ガスの濃度を検知管により測定した。測定結果を表1に示す。なお、この実験は、温度20℃、湿度65%の雰囲気で行った。
【0094】
【表1】

【0095】
表1より、実施例1の消臭性水溶液は、アンモニア、酢酸、硫化水素に対して優れた消臭特性を有していることが判る。なお、比較例1の消臭性水溶液は、硫酸第一鉄の安定性には劣るものの、実施例1と同様の消臭特性を有している。
また、実施例2、3の消臭性水溶液は、アンモニア、酢酸、硫化水素、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドの全てに対して優れた消臭特性を示していることが判る。これに対し、アジピン酸ジヒドラジドを主成分とする参考比較例1の消臭性水溶液は、酢酸、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドは除去できるが、アンモニア、硫化水素に対する消臭特性は殆どないことが判る。
【0096】
アンモニアガス注入繰り返し消臭試験
実施例2、3、参考比較例1で得られた消臭性水溶液3mLを10cm×10cmの不織布に塗布し乾燥させたものを、それぞれ5Lのテドラーバックに入れた。次に、テドラーバック内の所期濃度を100ppmに調整し、20分ごとに100ppmのアンモニアガスを注入し、そのたびにアンモニア濃度を検知管により測定した。測定結果を表2に示す。
【0097】
【表2】

【0098】
表2の実施例2、3と参考比較例1の比較から、本発明の消臭性組成物を含有する水溶液は、アジピン酸ジヒドラジドを含添加しても、アンモニアを発生することがないことが判る。これに対し、アジピン酸ジヒドラジドを主成分とする参考比較例1の消臭性水溶液は、アンモニアに対する消臭特性がなく、しかも0回目の測定値から、アジピン酸ジヒドラジドそのものがアンモニアを発生していることが判る。
【0099】
消臭性粉末状組成物の消臭特性
実施例2で得られた粉末状組成物3gを5Lのテドラーバックに入れた。次に、アンモニア100ppm、硫化水素30ppm、アセトアルデヒド30ppmを含有するガス3Lを各々のテドラーバック内に注入し、20分経過後の各ガスの濃度を検知管により測定した。測定結果を表3に示す。なお、この実験は、温度20℃、湿度65%の雰囲気で行った。
【0100】
【表3】

【0101】
表3より、アジピン酸ジヒドラジドを含有させた、本発明の消臭性組成物は、アンモニア、硫化水素と共に、アセトアルデヒドを消臭できることが判る。
【0102】
80℃耐熱試験
実施例2、比較例2で得られた消臭性水溶液3mLを10cm×10cmの不織布に塗布し乾燥させたものを、それぞれ5Lのテドラーバックに入れた。次に、80℃の雰囲気に20分放置してから、テドラーバック内のアンモニア濃度を検知管により測定した。
その結果、実施例2の消臭性水溶液を塗布した不織布については0ppm、参考比較例1の組消臭性水溶液を塗布した不織布については5ppmであった。この結果から、本発明の消臭性組成物はアジピン酸ジヒドラジドを含有させているにもかかわらず、高温下であってもアンモニアを発生することがないのに対し、アジピン酸ジヒドラジドを主成分とする消臭剤は高温下ではアンモニアを発生させてしまうことが判る。
【0103】
難燃性試験
実施例1〜3、参考比較例1で得られた消臭性水溶液を6mLを20cm×10cmmの紙に塗布し、乾燥させてからライターの炎に5秒接触させたところ、実施例1の水溶液を塗布した紙は燃焼することなく難燃性を示したが、参考比較例1の消臭剤を塗布した紙は燃え出して炎が消えることがなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消臭性金属塩と、リン酸アルカリ金属塩とを含有することを特徴とする消臭性組成物。
【請求項2】
前記消臭性金属塩が、硫酸第一鉄及び/又は硫酸亜鉛であることを特徴とする請求項1に記載の消臭性組成物。
【請求項3】
前記リン酸アルカリ金属塩がリン酸カリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の消臭性組成物。
【請求項4】
ヒドラジド化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の消臭性組成物。
【請求項5】
前記ヒドラジド化合物がアジピン酸ジヒドラジドであることを特徴とする請求項4に記載の消臭性組成物。
【請求項6】
キレート剤を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消臭性組成物。
【請求項7】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であることを特徴とする請求項6に記載の消臭性組成物。
【請求項8】
有機酸を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の消臭性組成物。
【請求項9】
前記有機酸が、クエン酸、りんご酸、酒石酸、シュウ酸のいずれかから選択される酸であることを特徴とする請求項8のいずれかに記載の消臭性組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の消臭性組成物を含有することを特徴とする消臭性水溶液。
【請求項11】
前記消臭性組成物の含有量が0.3〜20重量%であることを特徴とする請求項10に記載の消臭性水溶液。
【請求項12】
pHが3〜9であることを特徴とする請求項10又は11に記載の消臭性水溶液。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれかに記載の消臭性組成物を含有することを特徴とする消臭性水性スラリー液。
【請求項14】
前記消臭性組成物の含有量が30〜70重量%であることを特徴とする請求13に記載の消臭性水性スラリー液。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の消臭性組成物を含有することを特徴とする消臭性粉末状組成物。
【請求項16】
前記消臭性組成物の含有量が10〜100重量%であることを特徴とする請求項15に記載の消臭性粉末状組成物。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれかに記載の消臭性組成物を含有する熱可塑性樹脂からなることを特徴とする消臭性マスターバッチ。
【請求項18】
前記消臭性組成物の含有量が10〜60重量%であることを特徴とする請求17に記載の消臭性マスターバッチ。
【請求項19】
前記熱可塑性樹脂が、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項17又は18に記載の消臭性マスターバッチ。

【公開番号】特開2008−259804(P2008−259804A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156647(P2007−156647)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(595149221)南姜エフニカ株式会社 (9)
【Fターム(参考)】