説明

消臭性組成物及び消臭性溶液

【課題】ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸等の各種悪臭成分を高効率で同時に除去できる消臭性組成物及び消臭性溶液を提供すること。
【解決手段】本発明の消臭性組成物は、水分散性ホルムアルデヒド吸収剤(a)と水分散性変成多糖類(b)とを消臭有効成分として含み、(a)成分と(b)成分との配合比が(a)/(b)=0.04〜15である。本発明の消臭性組成物によれば、(a)成分と(b)成分との配合比が特定の範囲にあるので、環境中のホルムアルデヒド、アンモニア、及び酢酸等の悪臭物質を効率よく吸収・除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドやアンモニア等の悪臭物質の吸収機能を持った消臭性組成物及び消臭性溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、快適な生活に対する要求が高まり、消臭の機能が非常に注目されている。一方、家屋の高気密高断熱化に伴い、屋内空気の換気は、従来の住宅より行われにくくなり、各種臭気の原因となる物質が屋内にこもりがちである。また、住宅用建材に用いられるホルムアルデヒドが、シックハウス症の原因物質として知られるようになり、屋内空気における臭気及び化学物質の低減が強く求められるようになってきた。
一般に人体が不快な臭気と感じる主な化合物として、ホルムアルデヒド以外にも、タバコ臭や汗臭の原因物質であるアンモニア等の窒素化合物、酢酸等の低級脂肪酸などが挙げられる。
【0003】
そこで、このような臭気を屋内空気中より低減する目的で、炭の吸着性に着目した吸着材が以前から用いられてきた。特に活性炭は、その表面に細孔が形成されており、この細孔に臭気の分子を吸着することで消臭効果を発揮する(例えば、特許文献1)。
また、空気中に含まれるホルムアルデヒドを補足する目的で、アンモニウム塩を用いた補足材が提案されている(例えば、特許文献2)。さらに、エステル化澱粉、アルファ化澱粉、酸化澱粉等の加工澱粉と、NH結合を有するホルムアルデヒド吸収剤とからなる消臭性組成物も提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−173513号公報
【特許文献2】特開平11−128329号公報
【特許文献3】特開平10−237403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の活性炭では、疎水性分子に対しては極めて高い吸着能を示す一方、親水性分子(極性分子)に対する吸着能は高いとは言い難い。また、特許文献2に記載のホルムアルデヒド補足材では、その消臭性は十分ではなく、アンモニア、酢酸等の各種悪臭成分を同時に除去することも困難である。特許文献3に記載の消臭性組成物では、ホルムアルデヒド除去効果はある程度認められるが、アンモニア臭の除去効果は不十分である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸等の各種悪臭成分を高効率で同時に除去できる消臭性組成物および消臭性溶液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の消臭性組成物は、水分散性ホルムアルデヒド吸収剤(a)と水分散性変成多糖類(b)とを消臭有効成分として含む消臭性組成物であって、前記(a)成分と前記(b)成分との配合比が(a)/(b)=0.04〜15であることを特徴とする。
ここで、(a)成分と(b)成分における「水分散性」とは、水に可溶であるか、あるいは、水とエマルジョンを形成できて水中に分散できることを意味する。水に可溶とは、好ましくは、溶解度が1g/100g水(10℃)以上、より好ましくは、5〜60g/100g水(10℃)である。水への溶解度が低いと、例えば、消臭性組成物を溶液状にして塗布する場合に塗布量を多くする必要があり、乾燥に長時間を要するようになる。逆に、水への溶解度が高すぎると、塗布後の製品の耐水性が悪化する。
【0007】
本発明の(a)成分は、消臭性組成物にホルムアルデヒド吸収機能を付与するものであって、例えば、アミド硫酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン系無機酸のアンモニウム塩、塩化アンモニウム等が挙げられる。
本発明の(b)成分において「変性」とは、多糖類の消臭機能さらには水分散性を向上させるための化学的処理を行ったことを意味し、例えば、カチオン性基あるいはアニオン性基等の官能基を多糖類に付与する処理をいう。
【0008】
本発明の消臭性組成物によれば、(a)成分と(b)成分とを含み、さらに、配合比が(a)/(b)=0.04〜15と、特定の範囲にあるので、消臭性組成物を分散させた水溶液(あるいは、水エマルジョン)を不織布や木材等に塗布することが容易であり、環境中のアンモニア、酢酸等の悪臭物質を強く吸収することができる。また、有機溶剤を使用する必要がないので、環境への負荷が低い。ここで、(a)成分と(b)成分との配合比(a)/(b)は、好ましくは0.1〜10である。なお、(a)成分や(b)成分が水溶液あるいは水エマルジョンの形で提供される場合、上述の配合比は、その固形分による比率である。
【0009】
本発明では、前記(a)成分がリン系無機酸のアミン塩又はアンモニウム塩であることが好ましい。
本発明によれば、(a)成分がリン系無機酸のアミン塩又はアンモニウム塩であるので、ホルムアルデヒドの吸収能力に特に優れる。
ここで、リン系無機酸としては、例えば、正リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、次亜リン酸又はメタリン酸等が挙げられる。これらリン系無機酸のアミン塩又はアンモニウム塩のうち、安全性の点からリン系無機酸のアンモニウム塩が好ましい。特に、リン酸アンモニウム(正リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等)、ポリリン酸アンモニウム又はシクロヘキサリン酸アンモニウム等のアンモニウム塩が熱的安定性にも優れ、消臭剤としての機能の他、難燃性も付与できるため好ましい。
【0010】
本発明では、前記(b)成分が酸反応性官能基及び/又は塩基反応性官能基を有することが好ましい。
酸反応性官能基とは、例えば、アミノ基のように酸と反応し得る官能基であり、塩基反応性官能基とは、例えば、カルボキシル基のように塩基と反応し得る官能基である。
このような酸反応性官能基や塩基反応性官能基は、上述の悪臭物質を強く吸収する。それ故、(b)成分としては、これらの酸反応性官能基と塩基反応性官能基の双方を有することが好ましい。
【0011】
本発明では、前記(b)成分がカチオン性官能基及び/又はアニオン性官能基を有することが好ましい。
カチオン性官能基とは、例えば、アンモニウイオンのよう正の電荷を持った官能基であり、アニオン性官能基とは、例えば、カルボン酸イオンのように負の電荷を持った官能基である。
このようなカチオン性官能基やアニオン性官能基は、上述の悪臭物質を強く吸収する。それ故、(b)成分としては、これらの酸反応性官能基と塩基反応性官能基の双方を有することが好ましい。
【0012】
本発明では、前記(b)成分が、ヒドロキシエチルアクリレート、尿素、エチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ジエチルアミノメチルメタクリレート、アクリルアミド、ポリカルボキシアミノ、ジエチルアミノエチルアクリレート、N,Nジメチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種の変性剤により多糖類を変性して得られたものであることが好ましい。
この本発明によれば、(b)成分が上述する特定の変性剤により変性されたものであるため、上述の悪臭物質を強く吸収する。また、これらの変性により、水分散性もより向上する。
【0013】
本発明の消臭性溶液は、上述の消臭性組成物とアクリル系水エマルジョン及び/又はウレタン系水エマルジョンとを含むことを特徴とする。
ここで、アクリル系水エマルジョン及びウレタン系水エマルジョンは、いずれも水性エマルジョンであり、その固形分(樹脂)は、10〜60質量%であることが好ましい。
本発明の消臭性溶液によれば、上述の消臭性組成物を含んでいるため、例えば、適当な媒体に塗布した場合、ホルムアルデヒド、アンモニア、酢酸等の悪臭物質を効果的に吸収することができる。また、アクリル系水エマルジョンやウレタン系水エマルジョンの固形分がバインダーとして機能するため、塗布しやすく、塗布後の消臭機能も長期間持続する。
【0014】
本発明では、上述の消臭性組成物を3〜40質量%、アクリル系水エマルジョン用樹脂及び/又はウレタン系水エマルジョン用樹脂を2〜30質量%、及び水を30〜95質量%含んでいることが好ましい。
消臭性溶液における、消臭性組成物の配合量が3質量%未満であると、建材、基布等の媒体への消臭性溶液の塗布量(処理量)を多くする必要があり、乾燥に時間がかかる。また、消臭性溶液をマスターバッチとして利用することが困難となる。一方、消臭性組成物の配合量が40質量%を超えると、塗布(処理)した媒体の耐水性が低下する。消臭性溶液への消臭性組成物の配合量は5〜30質量%、アクリル系水エマルジョン用樹脂及び/又はウレタン系水エマルジョン用樹脂の配合量は3〜20質量%であることがより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
本発明の消臭性組成物は、水分散性ホルムアルデヒド吸収剤(a)と水分散性変性多糖類(b)とを消臭有効成分として含んでいる。
ここで、消臭性組成物を構成する(a)成分としては、ホルムアルデヒド吸収効果の点でリン系無機酸のアミン塩又はアンモニウム塩を使用することが好ましい。
リン系無機酸のアミン塩又はアンモニウム塩としては、リン系無機酸、例えば、リン酸、亜リン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、次亜リン酸又はメタリン酸の塩が挙げられる。
【0016】
上記リン系無機酸とアミン塩又はアンモニウム塩を構成するアミン系化合物としては、例えば、アンモニア、フェニルヒドラジン、ヒドラジルフェノール、尿素、チオ尿素、セミカルバジド、カルバゾン、1,5−ジフェニルカルバノヒドラジド、チオカルバゾン、エチレンジアミン、ヘキサメチレントリアミンメラミン、シクロヘキサンジアミン、ナフタレンジアミン、アニリン、テトラメチレンジアミン、1,2,5−ペンタントリアミン、2−アミノー1,3,5−トリアジン、トリエチルアミントリエタノールアミン、1−アミノピペラジン、アセタミジン、ベンザミドラゾン、3,5−ジフェニルホルマゾン、カルボジイミド、グアニジン、1,1,3−トリメチルグアニジン、3,4−ジメチルイソセミカルバジド、チオカルバゾン、チオカルボジアゾン、有機ケイ素アミン等が挙げられる。また、アミン系化合物として、リジン、アルギニン、オルニチン、プロリン等のアミノ基を有するアミノ酸が好ましく使用できる。
【0017】
これらリン系無機酸のアミン塩又はアンモニウム塩のうち、安全性の点からリン系無機酸のアンモニウム塩が好ましい。特に、リン酸アンモニウム(正リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素アンモニウム等)、ポリリン酸アンモニウム又はシクロヘキサリン酸アンモニウム等のアンモニウム塩が熱的安定性にも優れ、消臭剤としての機能の他、難燃性も付与できるため好ましい。
このうち、ポリリン酸アンモニウムは水に不溶であり、耐水性が要求される製品に好適に用いることができる。また、ポリリン酸アンモニウムを使用する場合は、平均粒径1〜30μmのものが配合しやすさの点で好ましく、特に、平均粒径2〜10μmのものが、水とのエマルジョンを調製する上でより好ましい。また、この平均粒径が2μm未満では、凝集しやすい傾向にあり、10μmを超えると、水溶液(水エマルジョン)の粘度が低い場合に沈殿しやすい傾向がある。
【0018】
本発明の消臭性組成物を構成する水分散性変性多糖類(b)としては、化学的に変性されて、アンモニアや酢酸等の吸収効果を持つようになったものが使用できる。そのような変性多糖類と成りうる多糖類としては、澱粉、セルロース、グリコーゲン、キチン等が挙げられる。このような水分散性変性多糖類は、例えば、これらの多糖類と、適当な変性剤とを水に懸濁させた状態で、グラフト重合を行うことにより容易に得ることができる。グラフト重合は、電子線、紫外線のような電離放射線を照射する一般的な方法を採用することができる。
変性剤としては、酸反応性官能基、塩基反応性官能基、カチオン性官能基、あるいは、アニオン性官能基を多糖類に付与することができる化合物が挙げられる。
【0019】
具体的な変性剤としては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、尿素、エチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ジエチルアミノメチルメタクリレート、アクリルアミド、ポリカルボキシアミノ、ジエチルアミノエチルアクリレート、及びN,Nジメチルアクリルアミドのような化合物が挙げられる。
例えば、澱粉を水に懸濁させた状態で、これらの変性剤によりグラフト重合を行い、水に可溶な澱粉変性体とすることができる。このような澱粉変性体は市販品を使用できる。
【0020】
また、本発明の消臭性組成物は、上述の(a)成分と(b)成分との配合比が(a)/(b)=0.04〜15である。配合比が0.04未満では、ホルムアルデヒドの吸収効果が低くなる。逆に、配合比が15を超えると、アンモニア、アミン類や酢酸等の有機酸の吸収効果が低くなる。(a)成分と(b)成分との配合比は、好ましくは、(a)/(b)=0.1〜10である。
【0021】
本発明の消臭性組成物によれば、(a)成分と(b)成分との配合比が(a)/(b)=0.04〜15と、特定の範囲にあるので、環境中のホルムアルデヒド、アンモニア、及び酢酸等の悪臭物質を効率よく吸収・除去できる。
【0022】
本発明の消臭性組成物には、無極性の臭気成分を吸着させるために、多孔質シリカ、活性炭、ゼオライト、活性白土、シリカゲルを添加することも好ましい。また、光触媒として消臭機能を有する酸化チタンを添加することもできる。さらに、反応型の消臭機能を持った酸化亜鉛、酸化鉄等の無機物質を添加してもよい。また、有機ケイ素アミン、芳香族アミン、ヒドラジン誘導体等の有機アミン化合物を添加することもできる。
【0023】
本発明の消臭性組成物は、消臭性溶液として適当な媒体に塗布(コーティング)することで消臭性を付与できる。塗布する方法としては、ディッピング法、グラビアコート法、ナイフコート法、エアーフロスト法等各種の方法が採用できる。例えば、建材用としては、スプレーコート法が好ましい。
【0024】
〔適用例〕
本発明の消臭性組成物の適用例としては、特に制限はないが、以下にいくつかの例を挙げる。本発明の適用例としてはこれらの例に限定されない。
(消臭性繊維処理剤)
繊維処理剤を製造するときに使用できる基材成分としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、又はこれらの共重合体等の水エマルジョンが挙げられる。特に、メチロール基を有するアクリル樹脂及びその共重合体使用材料が好適に使用される。
これらの樹脂に本発明の消臭性組成物を配合してなる消臭性溶液を消臭性繊維処理剤として使用できる。また、繊維処理剤分野で一般に使用されている各種添加剤を適用できる。
この消臭性繊維処理剤としては、例えば、(a)成分としてリン系無機酸アンモニウム、及び(b)成分として澱粉変成体(可溶性澱粉)からなる消臭性組成物を3〜40質量%、アクリル系水エマルジョン用樹脂及び/又はウレタン系水エマルジョン用樹脂を2〜30質量%、水30〜95質量%を配合してなる消臭性溶液を使用することが好適である。
消臭性溶液における、消臭性組成物の配合量が3質量%未満であると、媒体への消臭性溶液の塗布量(処理量)を多くする必要があり、乾燥に時間がかかる。また、消臭性溶液をマスターバッチとして利用することが困難となる。一方、消臭性組成物の配合量が40質量%を超えると、塗布(処理)した媒体の耐水性が低下する。消臭性溶液への消臭性組成物の配合量は5〜30質量%、アクリル系水エマルジョン用樹脂及び/又はウレタン系水エマルジョン用樹脂の配合量は3〜20質量%であることがより好ましい。
アクリル系水エマルジョン及びウレタン系水エマルジョンとしては、樹脂(固形分)の含有量は10〜60質量%のものが好ましい。また、リン系無機酸アンモニウムとしては、ポリリン酸アンモニウムやリン酸アンモニウムが好ましい。
繊維製品への塗布量としては、要求特性にもよるが、消臭性組成物(固形分)として、好ましくは0.5〜50g/m、より好ましくは1〜15g/m程度である。
【0025】
(消臭性合板)
合板は、通常の方法で作製することができる。本発明の消臭性組成物を水や水性塗料に分散させて消臭性溶液を調整し、合板にスプレー法等で塗布することで容易に消臭性合板を得ることができる。この消臭性合板は、ホルムアルデヒドを強く吸収するので建材分野で好適に使用できる。
塗布量は、合板からのホルムアルデヒド発生量に応じて加減すればよいが、消臭性組成物(固形分)として1〜5g/m程度が好ましい。
【0026】
(消臭性インキ)
インキを製造するときに使用できる基材成分としては、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニルトルエン系樹脂、ロジンエステル系樹脂ゴム系及びエチレン−酢酸ビニル共重合体系エマルジョン、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系エマルジョン、アクリル酸エステル系重合体エマルジョン等の水性エマルジョン、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
特に、メチロール基を有するロジン変性フェノール樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、アルキッド樹脂、アクリル系樹脂材料が好適に使用される。
これらの樹脂に本発明の消臭性組成物を混合することで、消臭性インキが作製できる。
インキは常法によって調製できる。また、インキ分野で一般に使用されている各種添加剤を使用できる。例えば、特開2001−164169号公報の記載を参考することができる。なお、市販されているインキに、本発明の消臭性組成物を添加することによっても、消臭性インキを作製できる。
【0027】
(消臭性紙)
新聞紙又は電話用紙の抄紙工程においては、歩留まり向上、濾水性向上のため、ポリエチレンオキサイドの他にフェノール樹脂が使用される(例えば、特開平09−188993号公報参照)。そのため、紙製品からホルムアルデヒドが発生し問題となる。
本発明においては、絶乾紙パルプを基材成分として、これに本発明の消臭性組成物を添加することで消臭性紙を製造することができる。なお、製紙は常法により行うことができる。例えば、特開平09−188993号公報の記載を参考することができる。
【0028】
(消臭性石膏ボード)
石膏ボードには、通常の内装用建材に使用される石膏ボードの他、吸音用穴あき石膏ボード、木毛石膏ボード、ガラス繊維強化石膏ボード等が含まれる。
石膏としては、天然石膏、化学石膏を用いて焼成処理された半水石膏が主材として用いられる。これに水を加えて混合した後、成型、硬化することによって、石膏ボードが作製できる。なお、場合により焼成前の二水石膏が使用される。
石膏ボードの製造工程において、本発明の消臭性組成物を添加することにより、消臭性石膏ボードが製造できる。消臭性組成物は、水溶液またはエマルジョンの状態で添加してもよく、また、粉末の状態で、水と石膏を混合するときに添加してもよい。なお、消臭性石膏ボードには、石膏ボードに一般に使用されている各種添加剤を添加できる。例えば、特開2002−187757号公報の記載を参考することができる。
この石膏ボードは、断熱性とともに通気性がある他、合板、家具から発生するホルムアルデヒドを消臭する効果に優れる。
【0029】
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、原料、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
したがって、上記に開示した原料、数量などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの原料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0030】
例えば、本実施形態では、(a)成分と(b)成分とを含む消臭性組成物を水に分散又は溶解させて使用したが、必ずしもそのような使用方法に限定されない。以下のように、組成物を非水系媒体に分散させて実施する形態でもよい。
【0031】
(消臭性接着剤)
本発明の消臭性組成物は、有機溶媒に溶解・分散させて、あるいは本組成物のまま接着剤樹脂に配合することで、消臭性接着剤として用いることもできる。
接着剤樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ユリア系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、イソシアネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系エポキシ系樹脂、ゴム系及びエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリ酢酸ビニル系、アクリル酸エステル系重合体等の樹脂が挙げられる。
特に、ホルムアルデヒドを含有している、メチロール基を有するユリア系、フェノール系、メラミン系、アクリル系樹脂材料に好適に使用される。
接着剤は常法によって調製でき、一般に使用されている各種添加剤を配合することもできる。例えば、特開平10−237403号公報、特開2003−96430号公報の記載を参考することができる。
尚、市販されている接着剤に本発明の消臭性組成物を添加することによっても、消臭性接着剤を作製できる。
【0032】
(消臭性塗料)
本発明の消臭性組成物は、有機溶媒に溶解・分散させて、あるいは本組成物のまま塗料樹脂に配合することで、消臭性塗料として用いることもできる。
塗料樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルスチレン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ビニルアセタール系樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。特に、メチロール基を有するエポキシ樹脂、アクリル樹脂及びホルムアルデヒド縮合物が好ましい。
塗料は常法によって調製でき、溶剤や各種添加剤は、塗料分野で一般に使用されているものを適用できる。例えば、特開2002−322424号公報の記載を参考することができる。なお、市販されている塗料に本発明の消臭性組成物を添加することによっても、消臭性塗料を作製できる。
【0033】
(消臭性合成樹脂製品)
消臭性合成樹脂製品を製造するときに使用できる合成樹脂としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンの各種汎用樹脂アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の各種樹脂が挙げられる。
これらの合成樹脂に、本発明の消臭性組成物を要求特性に応じて配合し、押出成形、射出成形等、常法の加工法によって、射出成型品、フィルム、不織布、中空成型品、熱成型品等に成形することによって、消臭性合成樹脂製品が得られる。なお、消臭性合成樹脂製品には、一般に使用される各種添加剤を配合してもよい。
この消臭性合成樹脂製品の用途としては、インストルメンタルパネル、ドアトリム等の自動車材料成型品、表皮シート材及び樹脂壁紙、建築下地防水フィルム等のフィルム材料が挙げられる。
【0034】
(消臭性発泡体)
発泡体を製造するときに使用できる発泡樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンの各種汎用樹脂が挙げられる。特に、ウレタン樹脂でメチロール基所有ホルムアルデヒド縮合物が添加されている材料が好適に使用される。
これら樹脂又は樹脂原料に本発明の消臭性組成物を混合して、発泡させることによって消臭性発泡体が作製できる。
発泡体は常法によって製造でき、また、発泡材分野で一般に使用されている各種添加剤を使用できる。例えば、ウレタンフォームの製造について特開平8−269157号公報の記載を参考することができる。
なお、上述の発泡体では消臭性組成物を樹脂に混練する方法で消臭性発泡体を作製したが、本発明の消臭性組成物を含む消臭性溶液を発泡体表面に塗布するだけでも消臭性発泡体を容易に得ることができる。
【実施例】
【0035】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例等の記載内容に何ら制限されるものではない。
[実施例1]
本発明の消臭性組成物を構成する(a)成分であるポリリン酸アンモニウムを5質量部、(b)成分である澱粉変性体(15質量%水溶液、物産グラフトン社製 グラフトンSAKE)を15質量部(固形分 2.25質量部)、バインダーとしてアクリロニトリル−アクリル酸アルキル共重合体水性エマルジョン(50質量%水エマルジョン、ガンツ化成社製)を5質量部、粘度向上剤としてセルロース変性ガム(6質量%水溶液)を30質量部、及び水を55質量部含む消臭性組成物溶液(以下、消臭性溶液ともいう)を調製した。(a)成分と(b)成分との配合比(a)/(b)は、2.22である。
【0036】
この消臭性溶液を通常のエアーフロスト加工法にて、ポリエステル製不織布(目付 200g/m)に塗布した。塗工後、120℃、4分間乾燥して、固形分の塗布量を5g/mとした。
このポリエステル製不織布を、10cm角の略正方形に切断して試験片を作成し、所定のガス濃度(ホルムアルデヒド 50質量ppm、アンモニア 55質量ppm、酢酸 30質量ppm)に調節された容積2.5リットルの三角フラスコに入れた。ガス濃度は、以下の悪臭成分を溶解した水溶液を所定量だけ三角フラスコ内にマイクロシリンジで注入して、1時間放置することにより調節した。
ホルムアルデヒド:5質量%のホルムアルデヒド水溶液 5μl
アンモニア :1質量%のアンモニア水溶液 20μl
酢酸 :5質量%の酢酸水溶液 5μl
【0037】
上述のガス濃度に設定された三角フラスコ内に試験片を入れて、2時間後に、北川式検知管にて、内部のホルムアルデヒド、アンモニア、及び酢酸のガス濃度を測定した。
実施例1、及び以下に示す実施例2〜8、比較例1〜3について、消臭性組成物の配合条件及び、ガス濃度測定結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
実施例1で調製した消臭性溶液をポリエステル製不織布に塗布する際に、乾燥後における固形分の塗布量が10g/mとなるように消臭液の塗布量を増やした以外は、実施例1と同様に行った。
【0039】
[実施例3]
実施例1で調製した消臭液を、バーコーターにてA4サイズのポリエステル基布(目付 50g/m)に、ウェット状態で50g/m塗布し、実施例1と同様にして乾燥した。このポリエステル基布を、10cm角の略正方形に切断して試験片とした後は、実施例1と同様に評価を行った。
【0040】
[実施例4]
実施例1で調製した消臭液を、バーコーターにてA4サイズの洋紙(目付 80g/m)に、ウェット状態で50g/m塗布し、実施例1と同様にして乾燥した。この洋紙を、10cm角の略正方形に切断して試験片とした後は、実施例1と同様に評価を行った。
【0041】
[実施例5]
実施例1で調製した消臭液を、バーコーターにてA4サイズのレーヨン製不織布(目付 30g/m)に、ウェット状態で50g/m塗布し、実施例1と同様にして乾燥した。このレーヨン製不織布を、10cm角の略正方形に切断して試験片とした後は、実施例1と同様に評価を行った。
【0042】
[実施例6]
(a)成分であるポリリン酸アンモニウムを15質量部、(b)成分である澱粉変性体(15質量%水溶液、物産グラフトン社製 グラフトンSAKE)を20質量部(固形分 3質量部)とした以外は、実施例3と同様に行った。(a)成分と(b)成分との配合比(a)/(b)は、5である。
【0043】
[実施例7]
(a)成分であるポリリン酸アンモニウムを5質量部、(b)成分である澱粉変性体(15質量%水溶液、物産グラフトン社製 グラフトンSAKE)を3質量部(固形分0.45質量部)とした以外は、実施例3と同様に行った。(a)成分と(b)成分との配合比(a)/(b)は、11.1である。
【0044】
[実施例8]
(a)成分としてリン酸アンモニウムを5質量部、(b)成分である澱粉変性体(15質量%水溶液、物産グラフトン社製 グラフトンSAKE)を10質量部(固形分1.5質量部)とした以外は、実施例3と同様に行った。(a)成分と(b)成分との配合比(a)/(b)は、3.3である。
【0045】
[比較例1]
消臭液に(b)成分を配合しないこと以外は、実施例4と同様に行った。
【0046】
[比較例2]
消臭液に(a)成分を配合しないこと以外は、実施例4と同様に行った。
【0047】
[比較例3]
(a)成分であるポリリン酸アンモニウムを5質量部、(b)成分である澱粉変性体(15質量%水溶液、物産グラフトン社製 グラフトンSAKE)を0.5質量部(固形分0.075質量部)とした以外は、実施例3と同様に行った。(a)成分と(b)成分との配合比(a)/(b)は、67である。
【0048】
【表1】

【0049】
[評価結果]
表1から明らかなように、本発明の消臭性組成物が塗布された不織布や基布あるいは洋紙は、ホルムアルデヒド、アンモニア、及び酢酸といった代表的な悪臭ガスを強く吸収して、環境中のガス濃度を顕著に下げていることがわかる。
一方、比較例1では、本発明で必須の(b)成分である水分散性変成多糖類を含んでいないためアンモニアや酢酸の吸収効果がほとんどない。
また、比較例2では、本発明で必須の(a)成分である水分散性ホルムアルデヒド吸収剤を含んでいないために、ホルムアルデヒドの吸収効果が十分ではない。
比較例3では、(a)成分と(b)成分の比が67と大きすぎるため、アンモニアや酢酸の吸収効果に乏しい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の消臭性組成物及び消臭性溶液は、建材用、衣料用等に幅広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散性ホルムアルデヒド吸収剤(a)と水分散性変成多糖類(b)とを消臭有効成分として含む消臭性組成物であって、
前記(a)成分と前記(b)成分との配合比が(a)/(b)=0.04〜15であることを特徴とする消臭性組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の消臭性組成物において、
前記(a)成分がリン系無機酸のアミン塩又はアンモニウム塩であることを特徴とする消臭性組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の消臭性組成物において、
前記(b)成分が酸反応性官能基及び/又は塩基反応性官能基を有することを特徴とする消臭性組成物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の消臭性組成物において、
前記(b)成分がカチオン性官能基及び/又はアニオン性官能基を有することを特徴とする消臭性組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の消臭性組成物において、
前記(b)成分が、ヒドロキシエチルアクリレート、尿素、エチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ジエチルアミノメチルメタクリレート、アクリルアミド、ポリカルボキシアミノ、ジエチルアミノエチルアクリレート、N,Nジメチルアクリルアミドから選ばれる少なくとも1種の変性剤により多糖類を変性して得られたものであることを特徴とする消臭性組成物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の消臭性組成物とアクリル系水エマルジョン及び/又はウレタン系水エマルジョンとを含むことを特徴とする消臭性溶液。
【請求項7】
請求項6に記載の消臭性溶液において、
前記消臭性組成物を3〜40質量%、前記アクリル系水エマルジョン用樹脂及び/又は前記ウレタン系水エマルジョン用樹脂を2〜30質量%、及び水を30〜95質量%含むことを特徴とする消臭性溶液。

【公開番号】特開2006−346104(P2006−346104A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−175178(P2005−175178)
【出願日】平成17年6月15日(2005.6.15)
【出願人】(500242384)出光テクノファイン株式会社 (55)
【Fターム(参考)】