説明

消臭機能を有する金属材料

【課題】金属特有の表面質感を維持しつつ、また金属の持つ特性(質感、電気伝導性等)を大きく阻害することなく、消臭性能を向上することができる金属材料を提供する。
【解決手段】金属材料の表面に、構成元素としてAg、Cu、Znの内1種または2種以上を含む、単一粒子での最大径が50μm以下の非金属無機質微細粒子を、表面の掃引面積率(非常に細かい凹凸を無視した表面積)で1%以上30%以下含むように分散させた分散めっきを施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材金属およびめっき金属にはない消臭機能を表面に付与した金属材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属はその表面が孔質ではなくマクロな表面積とミクロな表面積に大差がないことから、金属表面と化学反応をすることなく長期間にわたって異物質が付着したり吸着することはほとんどない。この特性の結果、錆を発生させない限り清潔にかつ美麗に表面を維持しうる材料である。特にステンレス鋼は、通常の生活環境では錆の発生がほとんど希であるため、清潔さを要求される例えば医療や食品分野、美麗さを要求される自動車や家電分野、建材や装飾品の分野に広く使用されている。
【0003】
しかし、金属は金属としての具備している機能以外の特殊な機能を付与することはかなり困難である。例えば、塗装のように表面に機能性被膜を被覆することで耐食性や色あるいは耐熱性などの特性を付与可能であるが、塗装の結果表面は金属的な質感が損なわれるのでそれを要望する用途には適用ができない。
【0004】
また、液状であったり、揮発性であるような物質の場合、構造を工夫する以外に付与被覆は全くできなかった。もちろん表面に塗りつけることで、付着させることは可能であるが、もとより表面に液体物質などの保持機能がないことから、単なる付着であり長期間にわたる安定な付着はできない。
【0005】
逆に金属表面は、温度の差による結露現象は他の物質同様に起こるが、雰囲気中の特別なガスを吸着して環境から除去したり分解したりするような機能はない。
【0006】
それにもかかわらず、金属には清潔さや美麗さに加えて各種の機能の付与が求められている。例えば、ステンレス鋼が広く使用されている食品分野では、たとえば蝿やゴキブリなどの有害害虫の侵入を許さないような機能や、黴の発生を抑制できるような機能が求められている。また、医療分野では、有害菌の繁殖を防止するいわゆる抗菌性が求められている。また、装飾品や建築内装品では、木質系建材の接着剤から発生するホルムアルデヒドなどの有害化学物質や臭気を吸着除去あるいは分解する機能が求められたり、さらには一歩進んで芳香の発生や健康に寄与する物質の放散などの機能も期待されている。
【0007】
従来これらの機能は、それ専用の装置で実施され、材料や部材そのものに期待されることは少なかった。例えば、蝿やゴキブリなどの有害害虫の駆除には、殺虫剤や補虫材が使用されてきたし、黴の抑制には防黴材の塗布や噴霧が行われてきた。いわゆるシックハウス症候群の原因とされるホルムアルデヒドなどの有害化学物質は、発生したものを除去するのではなく使用しない方向で努力されているが、完全不使用が困難な場合には種々の吸着剤などが試されている。また、アロマテラピーのような芳香の発生には、それ専用の容器や装置が使用されてきた。
【0008】
これらの対応は、もちろん相応に効果が認められるものではあるが、それ専用の容器や構造物が必要となるなど用途や場所によっては審美観を阻害するなどの問題点のある場合も少なくない。金属材料そのものがこれらの機能を有したり付与可能であれば、その金属の加工物が機能を発揮することとなり、使用者はなんら意識することなくこれらの機能を享受できることとなる。
【0009】
金属表面に異物質を保持せしめその機能を発揮させる技術は、塗装以外にこれまでにいくつか提案されている。特許文献1〜3には、撥水性や滑り性を有するPTFE(ポリテトラフルオロエチレン、デュポン社の登録商標「テフロン」)などの弗素系高分子物質の微細粒子を分散させためっき材料が公開されており、所期の効果を発揮している。
また、特許文献4〜7には、抗菌剤あるいは抗黴剤を分散めっきした材料が公開されている。
【0010】
これらの材料は、相応の効果が認められる場合もあるが、安定して効果の認められることが少なかった。本発明者らは、この理由については鋭意検討した結果、表面に露出している抗菌剤の面積にばらつきがあり、その面積が極めて少ない場合には効果が認められないことが多いことを見出した。特に特許文献6および7に記載された発明では、抗菌剤の分散めっきの上から通常の金属めっきを施し、せっかくの抗菌剤を被覆してしまったためであることが判明した。
特許文献8には、無機材料、自然鉱物、人工合成鉱物の非金属微細粒子を分散させた金属材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭60−77990号公報
【特許文献2】特開平10−226898号公報
【特許文献3】特開2002−317299号公報
【特許文献4】特開平6−10191号公報
【特許文献5】特開平7−228999号公報
【特許文献6】特開平9−157860号公報
【特許文献7】特開平10−68100号公報
【特許文献8】特開2007−154245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献8に開示の発明では、多孔質の非金属微粒子中に抗菌性を有する微粒子を封入することで金属表面に抗菌性を付与することに成功した。さらにその過程で、揮発性の消臭剤を多孔質非金属粒子に担持させるとその消臭剤が気相に蒸発し消臭機能を発揮することを見出した。しかし、この方法では消臭機能に寿命があり、揮発性の消臭剤がなくなると効果が大きく減退する欠点があった。本発明は、特許文献8に開示の発明を更に改良したものであり、金属特有の表面質感を維持しつつまた金属の持つ特性(質感、電気伝導性等)を大きく阻害することなく、消臭性能を向上することができる金属材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、表面に、単一粒子での最大径が50μm以下の非金属無機質微細粒子を、表面の掃引面積率で1%以上30%以下含む分散めっきを施した金属材料において、めっき層中に分散させた非金属無機質微細粒子を構成する元素が少なくともAg、CuおよびZnの内1種または2種以上を含むことを特徴とする消臭機能を有する金属材料が提供される(請求項1)。
また、本発明によれば、表面に、単一粒子での最大径が50μm以下の非金属無機質微細粒子を、表面の掃引面積率で1%以上30%以下含む分散めっきを施した金属材料において、めっき層中に分散させた非金属無機質微細粒子が少なくともAg、CuおよびZnの内1種または2種以上の元素を構成元素とする化合物を担持していることを特徴とする消臭機能を有する金属材料が提供される(請求項2)。
好ましくは、前記非金属無機質微細粒子は、多孔質粒子である(請求項3)。
ここで「掃引面積率」とは、次のような面積率を言う。めっき金属の表面は、マクロ的に見れば平坦であるが、ミクロ的に見ると非常に細かい凹凸がある。めっき金属の表面積と言った場合、一つには、この非常に細かい凹凸をも考慮した表面積が考えられ、一方、この非常に細かい凹凸を無視した表面積も考えられる。本発明においては、吸着能を問題としており、また金属は多孔質構造ではないことより、上記非常に細かい凹凸を無視した表面積で単純に考えることとした。この非常に細かい凹凸を無視した表面積を「掃引面積率」と言う。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、非金属無機質微細粒子を構成する元素に、Ag、ZnおよびCuの内1種または2種以上を含む。Ag、Zn及び/又はCuは、臭いの元となる分子を分解する際の触媒作用を有し、抗菌、消臭機能を有する。このように抗菌、消臭機能を有する非金属無機質微細粒子がめっき金属に分散されているので、金属材料の表面に抗菌や消臭機能を付与することが可能となった。しかも、Ag、Zn及び/又はCuがイオンの形で含まれているので、電気伝導性と言う金属特性が大きく阻害されない、と言う効果を奏する。
金属材料自体の表面に抗菌や消臭機能を付与できることから、構造物の外部から付与する機能に比べて、当該金属材料により作られた構造物の隅々までその機能を発揮せしめることが可能となる。結果的に広い範囲で消臭機能を発揮するため、空気のよどみやすいところでも消臭機能が働き、消臭効果が高まる。また、消臭機器を設置した場合コーナー部やかしめ内部など気体の届かない部分の消臭は不完全となりやすいが、本発明品の金属材料を使用した場合そのような懸念がなくなる。
【0015】
請求項1の発明によれば、非金属無機質微細粒子自体に、抗菌、消臭機能を有するAg、ZnおよびCuの内1種または2種以上の元素が含まれており、より詳細には、Ag、Zn及び/又はCu化合物の表面が酸化分解促進能を発揮するので、抗菌、消臭機能を有する物質が蒸発、揮発等することが無く、金属材料が長期間抗菌、消臭機能を有すると言う効果を奏する。
そして、請求項1の発明によれば、例えば臭いの元となる分子がAg、Zn及び/又はCu化合物の表面で酸化反応してCOやHO等に分解されて放出されるので、単なる吸着とは異なり、再生処理を行なわなくても、消臭機能や抗菌機能が発揮される。そのため、従来の吸着のみを行うタイプに比較して、消臭機能、抗菌機能が発揮される期間が遥かに長くなり、長寿命化が達成できる。
そして、単に悪臭源や汚染源となる物質を吸着するのみならず、その様な物質を酸化分解出来ることと、消臭機能、抗菌機能が発揮される期間が長くなることを含めて、請求項1の発明によれば、消臭機能、抗菌機能が向上する。
【0016】
請求項2の発明によれば、Ag、ZnおよびCuの内1種または2種以上の元素を構成元素とする化合物が担持されているので、非金属無機質微細粒子自体にAg、ZnおよびCuの内1種または2種以上が含まれていないとしても、請求項1の発明と同じく、金属材料自体の表面に抗菌、消臭機能を付与することができる、と言う効果を奏する。
また、請求項2の発明によれば、抗菌、消臭機能を有するAg、ZnおよびCuの内1種または2種以上の元素が含まれた化合物が非金属無機質微細粒子に担持されており、即ち抗菌、消臭機能を有する物質が蒸発、揮発等することが無いので、金属材料が長期間抗菌、消臭機能を有すると言う効果を奏する。
【0017】
請求項2の発明においても、汚染源や臭いの元となる分子が、担持されているAg、Zn及び/又はCuの表面で酸化反応してCOやHO等に分解されて放出されるので、単なる吸着とは異なり、再生処理を行なわなくても、消臭機能や抗菌機能が発揮される。そのため、従来の吸着のみを行うタイプに比較して、消臭機能、抗菌機能が発揮される期間が遥かに長くなり、長寿命化が達成できる。そして、単に悪臭源や汚染源となる物質を酸化分解出来ることと、消臭機能、抗菌機能が発揮される期間が長くなることを含めて、請求項2の発明でも、消臭機能、抗菌機能が向上する。
【0018】
請求項3の発明によれば、前記非金属無機質微細粒子が多孔質粒子であるので、表面積が大きく、臭いの成分となる分子を多く吸着することができ、更に、非金属無機質微細粒子自体に或いは非金属無機質微細粒子に担持された化合物に臭いの元となる分子を分解する際の触媒作用を有するので、吸着された前記分子が速やかに分解され、吸着能は回復し、結果として半永久的に急速な消臭機能を付与したものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例におけるめっき面の電子顕微鏡写真と、EPMAの特性X線スペクトル画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、「基材金属」の表面に「めっき金属」がめっきされており、該めっき金属の表面に、後述の「非金属無機質微細粒子」が分散されている。
本発明において、基材金属は特に限定されるものではなく、ステンレス鋼等任意の金属に本発明を適用することができる。
【0021】
上記基材金属の表面にめっきされる金属は、本発明では何ら限定されるものではなく、一般的に広く利用されているNi、Cr、Cu、Zn、Sn、Pbの単一金属のめっき、ないしこれらの内1種または2種以上を主成分とする合金めっきが例示される。また、Cu−Sn合金の中でBiやAgを適量含むPbフリーはんだ合金めっきでも本発明の効果が認められる。あるいはNiとPの合金めっきでも本発明の効果が認められる。
【0022】
めっきされた金属の厚さは、非金属無機質微細粒子を担持できる厚さであればよい。保持可能な厚さという点ではおおむね分散させたい非金属無機質微細粒子サイズの1/3以上の厚さがあれば十分であり、例えば、非金属無機質微細粒子の粒径が10μmの場合には、めっき金属の厚さは3μm以上あれば良い。もちろん分散させたい非金属無機質微細粒子のサイズ以上の厚さでも本発明の効果は認められる。むしろ、めっき材料としてのめっき厚さから必要に応じて限定されるものである。
【0023】
このようなめっき金属中に、非金属無機質微細粒子が分散される。
非金属無機質微細粒子は、めっき金属表面に担持可能な微細粒子で、臭いの元となる物質の酸化反応を促進する機能を有する微細粒子が選択され、これを構成する元素にAg、ZnおよびCuの内1種または2種以上を含む化合物である。より詳細には、Agイオン、Znイオン及び/又はCuイオンを含む化合物である。Agイオンのみ、Znイオンのみ、Cuイオンのみならず、AgイオンとZnイオン、AgイオンとCuイオン、ZnイオンとCuイオン、AgイオンとZnイオンとCuイオンとを含むものであれば良い。
消臭機能の効果の大きさ、効果を発揮する寿命の観点から、また化合物の取扱い易さの観点から、構成する元素がAg、ZnおよびCuの内1種または2種以上を含む化合物に限定される。
【0024】
上記化合物の例としては、たとえば、Ag、Zn及び/又はCuの金属の酸化物や硫化物あるいは錯体化合物が挙げられ、化合物自体が消臭機能を有する。特にAg酸化物とZnの酸化物が共存すると有機系ガスの酸化分解に極めて大きな効果を示すことが認められている。
消臭機能を発揮させるためには、これら以外の物質や化合物でも可能である。例えば、nmサイズの微細なPt粉末は、臭気の元となる有機系ガスの酸化分解を促進することから、消臭効果は大きい。金属のままでは、素材の金属との間で異種金属接触腐食を起こす懸念があるため適用はできないが、担持させることで機能を享受することは可能である。
【0025】
また、非金属無機質微細粒子は、陽イオンを含む物質の陽イオンを、Agイオン、Znイオン及び/又はCuイオンで置換したものであっても良い。かかる物質の構成元素の一部をAg、ZnおよびCuの内1種また2種以上の元素に変換することで消臭効果を得ることが可能である。例えば、ゼオライトの場合構成元素の中にNaが存在する。このNaを例えばAgに置換することで消臭機能が得られる。ゼオライトのNaをAgに置換することは、後述の公知の技術によればよく、例えばゼオライトをAgNO溶液中に浸漬することで容易に可能である。なおNaをAgに置換しても、ゼオライトの結晶構造が変化することはない。
【0026】
上記のAg等の酸化物等や、陽イオンをAgイオン等で置換した非金属無機質微細粒子は、それ自体が消臭機能を有するものであるが、微細粒子そのものが消臭機能を有していなくとも、Ag、ZnおよびCuの内1種または2種以上を含むことにより消臭機能を有する化合物を担持していれば同じ効果が得られる。例えば、ゼオライトの孔にAgOを担持したものを、非金属無機質微細粒子としてめっき金属表面に分散しても、臭いの素となる物質の酸化反応を促進して、消臭効果や抗菌効果を向上する効果を発揮することが出来る。
【0027】
上述のように、非金属無機質微細粒子は、その粒子を構成する陽イオンをAgイオン、Znイオン及び/又はCuイオンで置換したものであってもよく、または消臭機能を担持させたものであっても良いが、これらの場合の非金属無機質微細粒子は、多孔質物質であることが好ましい。
雰囲気中の臭いの元となるガスを吸着し分解するためには、表面に露出している非金属無機質微粒子の掃引表面積が大きいことも必要ではあるが、対象が期待の分子であることから孔内の面積や凹凸を加味した実質的な表面積(以下、ミクロ面積と記載する)が重要で、そのミクロ面積を大きいほど効果も大きい。このために、分散させる非金属無機質微細粒子を多孔質粒子とすると極めて高い効果が得られる。
【0028】
上記非金属無機質微細粒子を構成する多孔質物質は、ガスや機能性物質を多量に吸着したり担持しやすいミクロ表面積の大きいものであれば、その種類や構造は問わないが、入手のしやすさや安全性、担持能力(重量当たりの細孔面積)の大きさから、ゼオライト、シリカゲル、カオリナイトが好ましい。またこれらの多孔質物質は、自然鉱物であってもよく、人工の合成鉱物であってもよい。
【0029】
非金属無機質微細粒子のサイズは、50μm以下とする。めっき金属の表面の露出面積において径が50μmを超える非金属無機質微細粒子が存在すると、金属を曲げたり塑性加工を実施した際、そこを基点として亀裂を発生したり剥離を起こす懸念が生ずる上に、わずかな加工によって脱落して効果がなくなってしまうからである。
サイズのきわめて小さい微粒子の場合、被覆金属に覆われやすい欠点はあるものの、機能性物質の担持には何ら悪影響がないことから、そのサイズの下限は特に限定しない。露出する非金属無機質微細粒子の面積率は、安定して機能を発揮するためには極めて重要な品質指標である。そのレベルは、機能性物質の種類や用途などで下限が異なるものであるが、1%を下限とした。少なくとも露出部分の掃引面積率で1%以上でないと担持した効果が現れないからである。
担持する機能性物質が機能を発揮するためには、露出する非金属無機質微細粒子の面積率が大きければ大きいほど、効果が大きくなると推測されるが、30%を超えると金属めっき被膜が金属としての特徴である加工性が劣化したり電気伝導性が低下したりするだけでなく、金属としての質感がなくなりことから、30%を上限とした。
【0030】
非金属無機質分散物質の粒子をめっき金属表面に分散させる方法は、特に限定するものではないが、その方法の一つとして金属めっきと同時にめっき液中に分散させた非金属無機質分散物質の粒子をめっき被膜中に付着させる分散めっきが挙げられる。通常のめっきでも、わずかにめっき液中に混入した不純物がめっき金属被膜中に埋め込んだ状態で付着することがあり、一般にはこのような現象はめっき欠陥として忌避されてきた。本発明は、従来忌避されてきたこの現象を積極的に活用することである。
[実施例]
【0031】
[比較例1]
ワット浴中に、公称17μmの合成ゼオライト粒子(例えば、株式会社シナネンゼオミック製の商品面「ゼオミック」)20kg/mを添加し、さらにゼオライトへの電荷付与と溶液中での沈降防止を目的としてカチオン化セルロース4kg/mを添加し、0.5mm厚さのSUS304ステンレス鋼板に、厚さ10μmのNiめっきを施して、金属材料を得た。尚、めっき前にスターラーで攪拌を行ったが、めっき中は攪拌等はせず静置状態で使用した。また、電流密度およびめっき時間を調整することにより、めっき厚さを調整した。
【0032】
[実施例1]
比較例1で得られた金属材料を十分に水洗乾燥させた後、常温のAgNO水溶液であって、濃度が1mol/L(リットル)の水溶液を、めっき面に滴下した状態で1分間保定し、その後、全体を再度水洗し乾燥させることにより、金属材料を得た。該金属材料のめっき金属には、Ag置換ゼオライトが分散されたものとなった。
【0033】
[実施例2]
めっき金属たるNi中に、公称10μmのAgO粒子を分散させつつ、0.5mm厚さのSUS304ステンレス鋼板に、厚さ10μmのNiめっきを施して、金属材料を得た。(実施例2では、AgO粒子として、和光純薬株式会社の試薬を使用した。)
【0034】
[実施例3]
めっき金属たるNi中に、公称8μmのZnO粒子を分散させつつ、0.5mm厚さのSUS304ステンレス鋼板に、厚さ10μmのNiめっきを施して、金属材料を得た。(実施例2では、ZnO粒子として、和光純薬株式会社の試薬を使用した。)
【0035】
[比較例2]
めっき金属に合成ゼオライト粒子を分散させなかった以外は、比較例1と同じ操作を行い、金属材料を得た。
【0036】
[比較例3]
比較のため、上記実施例1〜3、比較例1〜2において用いたのと同じSUS304のステンレス鋼を用い、後述の有臭ガスの吸着の試験を行った。
【0037】
掃引面積率は、光学顕微鏡でめっき表面を撮影し、非金属無機質微細粒子の面積とサイズを画像解析により解析し非金属無機質微細粒子の面積を測定した。ここで、非金属無機質微細粒子の面積とは、非金属無機質微細粒子が露出している部分の面積を意味しており、非金属無機質微細粒子のサイズとは、非金属無機質微細粒子が露出している部分の最大直径寸法を意味している。また、実施例1〜3のめっき面を走査型電子顕微鏡で観察し、EDSによりAgの分布を確認した。Agは、ゼオライトの部分からのみ検出されゼオライトのNaがAgに置換されたことが確認できた。実施例1における観察結果を図1に示す。
【0038】
図1において、(a)は走査型電子顕微鏡写真に相当し、実施例1の実表面のイメージ像を示している。(b)〜(f)は、EPMAの特性X線スペクトル画像である。ここで、EPMA(Electron Proove Micro Analyzer)は、電子を照射し、その結果放出された元素固有の特性X線を感光体で受光することで、元素の分析を行う機器である。図1の(b)〜(f)は、図1(a)の画像と、平面位置に関しては合致している。そして図1の(b)〜(f)における白い部分は、各元素、すなわち(b)では酸素、(c)ではNi、(d)ではSi、(e)ではAl、(f)ではAgが存在する部分である。
図1の(a)における白色の部分は、(b)の酸素、(d)のSi、(e)のAlが多く、(c)のNiが少ないことから、(図1の(a)における白色の部分は)Niめっき中に捕捉されたゼオライト粒子に相当する。そして、ゼオライト粒子に相当する部分、すなわち図1の(a)における白色の部分が、図1の(f)におけるAgが存在する部分と一致していることから、ゼオライト粒子中にAgが捕捉されていることが確認できる。
換言すれば、図1から、実施例1において、ゼオライト粒子中にAgが捕捉されているという構造が確認できた。
【0039】
これらの実施例1〜3及び比較例1〜3の金属材料を50mm角に切断し、密閉したアクリル製の槽(内容積8リットル)の中に静置した。この箱の中にメチルメルカプタンのガスを1mll添加し、槽内の濃度の経時変化を測定し、点火直後に対して何%メチルメルカプタンの濃度が減少したかを測定した。なお、公知市販の検査器を用いて、濃度の測定を行った。
この結果を表1に示した。実施例1〜3の材料は2時間でいずれも70%超のガス濃度低下率を示したが、比較のSUS304鋼やNiめっきのみの材料では2〜3%のガス濃度低下率しかなく、消臭効果はなかった。表1から明らかに、実施例1〜3では消臭効果が向上している。
もっともゼオライトのみの分散めっき材では21%のガス濃度低下率を示し、ゼオライトの有する微細孔内に有臭ガスを吸着したことが伺われた。
【0040】
実施例1の2つの金属材料に、それぞれアンモニア、酢酸のガスを1ml添加し、上述と同じ方法により、アンモニア、酢酸のガスの現象を測定した。その結果についても、表1に示す。
表1から、本発明の金属材料は、メチルメルカプタンのみならず、アンモニア、酢酸等の物質にも有効なことが明らかである。
【0041】
表1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、単一粒子での最大径が50μm以下の非金属無機質微細粒子を、表面の掃引面積率で1%以上30%以下含む分散めっきを施した金属材料において、めっき層中に分散させた非金属無機質微細粒子を構成する元素が少なくともAg、CuおよびZnの内1種または2種以上を含むことを特徴とする消臭機能を有する金属材料。
【請求項2】
表面に、単一粒子での最大径が50μm以下の非金属無機質微細粒子を、表面の掃引面積率で1%以上30%以下含む分散めっきを施した金属材料において、めっき層中に分散させた非金属無機質微細粒子が少なくともAg、CuおよびZnの内1種または2種以上の元素を構成元素とする化合物を担持していることを特徴とする消臭機能を有する金属材料。
【請求項3】
前記非金属無機質微細粒子が多孔質粒子である請求項1あるいは請求項2記載の消臭機能を有する金属材料。

【図1】
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【公開番号】特開2010−180437(P2010−180437A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23335(P2009−23335)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「社団法人 表面技術協会」発行の「第118回講演大会講演要旨集」、平成20年8月20日発行
【出願人】(591186718)高砂鐵工株式会社 (12)
【出願人】(391031764)株式会社シナネンゼオミック (20)
【Fターム(参考)】