説明

消色装置及びその消色方法

【課題】消色性トナーで形成した画像を効率よく消色する消色装置及びその消色方法を提供する。
【解決手段】消色ユニット22は被転写媒体12の消色性トナー像の印字面を加熱するヒータ23と加熱された消色性トナー像の印字面に消色光を照射する消色光源24を備えて消色搬送経路21に配置され、搬送経路に送入されてくる被転写媒体12の先端に対してヒータ23が加熱を開始する実線で示す基準位置から、用紙の後端に対して消色光源24が消色光を照射し終わる破線で示す所定の位置まで、被転写媒体12とともに被転写媒体12の搬送速度よりも遅い速度で移動した後、所定の位置から基準位置まで戻る。基準位置から所定の位置までの距離Lrは、被転写媒体12が消色搬送経路21に送入されてくる紙間距離Lkから消色ユニット22が所定の位置から基準位置まで戻る時間tb内に被転写媒体12が搬送される距離αを差し引いた距離である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消色装置及びその消色方法に係わり、更に詳しくは、電子写真方式により画像形成を行う画像形成装置の内部に備えられ、消色性トナーで形成した画像を効率よく消色する消色装置及びその消色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地球環境保護の一環として紙資源の節減が叫ばれている。画像形成装置等の紙資源の節減と再利用では、片面印刷した用紙の裏面の有効活用などは既に社会一般になされている。また、使用済み用紙を回収し用紙の原料とし、再生紙として再度用いることも一般に行われている。
【0003】
しかし片面印刷の用紙の再利用では、再使用の回数が通常1回に限られてしまう。また、原料として再利用する再には回収自体にエネルギーとコストがかかり、原料として加工する際にもエネルギーが掛かってしまう。
【0004】
そこで、オフィス内において用紙を複数回使用できるようにする取組みが種々なされている。トナー像により一度画像が形成された用紙を紙資源として再利用するには、トナーにより形成された用紙上の画像を物理的に除去または光で消色して再利用可能な用紙とすることが考えられている。
【0005】
画像を物理的に除去して用紙を再利用するためには、用紙の画像形成面にトナーを除去する処理液を塗布し、加熱してトナーを溶解させて画像を除去する方法や、用紙の画像形成面を研摩してトナー画像を削り落とす方法などがあるが、これらの方法は、手数がかかること共に、再利用する用紙に損傷が発生し易いため問題がある。
【0006】
また、光を用いる消色方法がある。これについては、最初に用紙に画像を形成するに際し、近赤外線吸収色素および消色剤を含む消色性トナーによりOA用紙に画像を記録し、この画像を近赤外線等の特殊な光源による光照射によって消色して用紙の再利用を図るという着想は既に論文で公開されている。(例えば、非特許文献1参照。)
【0007】
この非特許文献1の方法において、近赤外線吸収色素は、照射された近赤外線を吸収して励起し、消色剤と反応して無色化する。但し、色材がトナー化されていることもあって、トナー結着剤樹脂中の色素は近赤外線を吸収しても常温においてはほとんど消色反応が見られない。
【0008】
このため、熱を加えて反応を加速してから無色化するという消色作用に有効な一般的な方法が行われている。すなわち、実際に消色性トナー像を消色するには、事前にトナー像を加熱しておいてから消色光を照射する必要がある。
【0009】
したがって、このような消色装置には、用紙のトナー像を加熱する要素と近赤外線を照射する要素の2つの要素を具備していなければならない。そして、この二つの要素に注目すると、消色装置は消色光源と用紙のトナー像を加熱する熱源とが同一のタイプのものか、又は消色光源と熱源とが異なるタイプのものとするかの二つに大別することができる。
【0010】
消色光源と熱源とが同一のタイプのものでは、例えば、赤外線によって消色を行うことが出来る増感染料とホウ素系化合物を使ったトナーの印刷画像をハロゲンランプで加熱した後、同じハロゲンランプの赤外線により消色を行う装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0011】
ハロゲンランプは、遠赤外線を中心とする長波長領域のエネルギーを出すので熱源としても用いられる。熱源に限っては消色反応を助成する目的の熱源として有効性が示されている。
【0012】
ただし、ハロゲンランプは、近赤外線だけではなく紫外線領域、可視光領域、近赤外線領域〜遠赤外線領域まで含んだ光である。したがって、増感色素の吸収波長だけではなくのその他の消色反応に寄与しない多くの余分な波長のエネルギーも放射しており不経済なエネルギー源であるといえる。
【0013】
他方、消色光源と熱源とが異なるタイプのものでは、例えば、画像形成時に用いる定着装置の熱ローラ対を、消色時の加熱器として兼用し定着装置内において熱ローラ対の下流側に消色光照射用の光源を配置した構成が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平05−204278号公報
【特許文献2】特開平07−049634号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】細田喜一著、「機能性色素のトナーへの応用」電子写真学会誌、第31号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記特許文献2の消色光源と熱源とが異なるタイプのもので構成した技術では、熱源は定着部の熱源が兼用されている。また、消色用光源は、単に820nm付近の波長の光を照射する光源とあるのみで、具体的にどのような光源を用いるのか明らかでない。したがって、特許文献2に開示されているだけの内容では、画像形成装置で具体的に消色機能を実現するのは困難であるという課題がある。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、電子写真方式により画像形成を行う画像形成装置の内部に備えられ、消色性トナーで形成した画像を効率よく消色する消色装置及びその消色方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の消色装置は、被転写媒体の搬送経路に配置されたヒータと、上記被転写媒体の搬送経路に配置され、上記ヒータにより加熱された上記被転写媒体に消色光を照射する消色光源と、を有する消色ユニットと、上記消色ユニットが上記搬送経路を搬送中の上記被転写媒体の上記消色性トナー像を消色するに際し、上記消色ユニットを上記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理を行う制御部と、を備えて構成される。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の消色方法は、被転写媒体の搬送経路に配置されたヒータと、上記被転写媒体の搬送経路に配置され、上記ヒータにより加熱された上記被転写媒体に消色光を照射する消色光源と、を有する消色ユニットが、上記搬送経路を搬送中の上記被転写媒体の上記消色性トナー像を消色するに際し、制御部により上記消色ユニットを上記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、電子写真方式により画像形成を行う画像形成装置の内部に備えられ、消色性トナーで形成した画像を効率よく消色する消色装置及びその消色方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は実施例1に係る消色装置を備えた画像形成装置(プリンタ)の内部構成を模式的に示す断面図である。
【図2】実施例1に係る消色装置の消色搬送経路において用紙の両側端部を挟持して搬送する両側端搬送装置を示す斜視図である。
【図3】実施例1に係る消色装置の消色搬送経路の平面図である。
【図4】実施例1に係る消色装置を備えたプリンタの制御装置を含む回路ブロック図である。
【図5】消色装置において基準位置から所定の位置までの間を消色ユニットが往復移動するタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、本発明の説明では「印字」と「印刷」は同意語として区別なく用いられる。
【実施例1】
【0023】
<消色性トナーについて>
先ず、本実施例の消色装置において用いられる消色性トナーの製法について説明する。最初に、817nmに感度を持つ赤外線感光色素「IRT」(昭和電工製)を1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工製)を7.5質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王製)を87質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット製)を1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行社輸入品)を2.5質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山製)に投入し、混合する。
【0024】
続いて上記の混合物を、二軸混練機で溶融混練する。これで得られた混練物をロートプレックス(ホソカワミクロン製)で粗砕して粗砕物を得る。得られた粗砕物を衝突式粉砕機にて、平均粒径が9μmになるように粉砕する。
【0025】
この粉砕により得られた粉砕物100質量部に、外添剤としてシリカ「R972」(日本アエロジル製)を1質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して消色性トナーを得ることができる。
【0026】
<消色装置を備えた画像形成装置の構成と動作>
【0027】
本例の消色装置としては、通常の電子写真式のプリンタの下部に組み込んで用いるようにする。詳しくは後述するが、消色性トナーで印字されていて消色装置に通紙された用紙は、セラミックヒータ等の熱源の下を通過しつつ暖められ、その状態にてLED等の光源により消色光を照射される。
【0028】
その後、消色された用紙に対する印字が、通常のプリンタと同一の構成である現像、転写、定着工程によって実行される。
【0029】
また、望ましくは消色装置とプリンタは一体である方がよいが、消色装置としてプリンタから独立して単独で設置されてもよい。以下の説明ではプリンタに対し一体に組み込み可能な消色装置として説明する。
【0030】
図1は実施例1に係る消色装置を備えた画像形成装置1の内部構成を模式的に示す断面図である。図1に示す画像形成装置(以下、単にプリンタという)1は、本体装置筐体2の内部中央において、水平方向に延在する無端状の転写ベルト3を備えている。
【0031】
転写ベルト3は、不図示の張設機構によって張設され、駆動ローラ4と従動ローラ5に掛け渡され、駆動ローラ4により駆動されて、図の矢印aで示す反時計回り方向に循環移動する。
【0032】
転写ベルト3の上循環移動面の上方に画像形成ユニット6が設けられている。画像形成ユニット6は、現像器7内に消色性トナーを収容した消色性トナー画像形成用の画像形成ユニットである。
【0033】
すなわち、このプリンタ1は、消色性トナーの画像を消色したのち、その画像を消色した用紙面に、消色性トナーによる新たな画像を印字するものであり、同一の用紙を何回でも使用できるようにするものである。
【0034】
上記の画像形成ユニット6には、転写ベルト3の上循環移動面に接する感光体ドラム8が配設されている。感光体ドラム8には、その周面を取り巻くように近接して、図示を省略したクリーナ、初期化帯電器、光書込ヘッドに続いて、現像器7の下部開口部に保持された現像ローラ9等が配置されている。
【0035】
上記の現像ローラ9は、現像器7に収容されている消色性トナーの薄層を表面に担持し、光書込ヘッドによって感光体ドラム8の周面上に形成されている静電潜像に消色性トナーの画像を現像する。
【0036】
感光体ドラム8の下部には、転写ベルト3を介して不図示の一次転写ローラが圧接して、そこに一次転写部を形成している。一次転写ローラには、不図示のバイアス電源からバイアス電圧を供給される。
【0037】
一次転写ローラは一次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加して、感光体ドラム8の周面上に現像されている消色性トナーの画像を転写ベルト3に転写する。
【0038】
転写ベルト3の図に示す右端部が掛け渡されている従動ローラ5には、転写ベルト3を介して二次転写ローラ11が圧接し、ここに二次転写部を形成している。二次転写ローラ11には、不図示のバイアス電源からバイアス電圧が供給される。
【0039】
二次転写ローラ11は二次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加し、転写ベルト3に一次転写されている消色性トナーの画像を、図の下方から上方に二次転写経路10を通って搬送されてくる被転写媒体12に転写する。被転写媒体12は、紙等の用紙、OHP用紙を含む。
【0040】
上記の転写ベルト3の下方には、消色装置13が配置され、更にその下方に給紙カセット14が配設されている。給紙カセット14には、消色性トナーが消色される前の、つまり、既に紙面に消色性トナー像を形成されている複数枚の被転写媒体12が載置されている。
【0041】
給紙カセット14の給紙口(図の左端上部)には給紙ローラ15が配置されている。給紙ローラ15は、給紙カセット14から被転写媒体12を一枚ごと取り出して給紙搬送経路16に送出する。給紙搬送経路16には給紙カセット14の給紙口近傍に画像読取装置17が配置されている。
【0042】
この画像読取装置17は、被転写媒体12に印字されている画像が消色性トナーによる画像であるか否かを判別するための装置である。画像が消色性トナー像である場合は消色装置13で消色し、画像が消色性トナー像でない場合は何もせずにそのまま機外に排出する。
【0043】
被転写媒体12の画像が消色性トナー像であり、消色装置13で消色する場合は、被転写媒体12は給紙搬送経路16の終端にある給送ローラ対18により消色給送経路19を経由して消色装置13に給送される。
【0044】
消色装置13の消色搬送経路21には、詳しくは後述する搬送機構が配設されている。消色搬送経路21の上方には、図1の両方向矢印Lrで示す範囲を往復移動する消色ユニット22が配設されている。
【0045】
消色ユニット22は、消色性トナー像の印字面を加熱するヒータ23と、ヒータ23により加熱された消色性トナー像に消色光を照射する消色光源24を備えている。ヒータ23はセラミックヒータであり、消色光源24はLED(light emitting diode)アレイである。
【0046】
このヒータ23により加熱された被転写媒体12に効率的に消色光を照射するために、消色光を被転写媒体12の搬送経路に対して最も効率の良い垂直な位置から被転写媒体12に照射する。
【0047】
このように、消色光源24を配置することで、消色ユニット22はL字型となり、消色ユニット22の長さ(被転写媒体12の搬送方向に対しての長さ)を短くすることができるため、移動可能な距離を長くとることができる。
【0048】
或いは、消色ユニット22の長さ(被転写媒体12の搬送方向に対しての長さ)が長くなってしまい、移動可能な距離が短くなってしまうが、ヒータ23による加熱中の紙面に効率的に消色光を照射するために、被転写媒体12の搬送経路に対し約30度の角度の斜め位置から被転写媒体12に消色光を照射しても良い。
【0049】
消色ユニット22は、消色光源24側に設けられたコロ20a及びヒータ23を固定する治具の先端に設けられたコロ20bを介して、レール30上を移動する。
【0050】
消色装置13の消色搬送経路21の始端には被転写媒体12を消色装置13に搬入する用紙搬入ローラ対25が配設され、消色搬送経路21の終端には、消色性トナー像を消色された被転写媒体12を二次転写経路10に送出する用紙搬出ローラ対26が配設されている。
【0051】
消色性トナー像を消色されて二次転写経路10に送出された被転写媒体12は、二次転写経路10を搬送されながら、従動ローラ5、転写ベルト3、及び二次転写ローラ11で形成されている二次転写部を通過しながら消色性トナーの画像を転写される。
【0052】
消色性トナーの画像を転写されながら二次転写部を通過した被転写媒体12は、定着搬送経路27に沿って定着部28へと搬送される。定着部28の加熱ローラ29と押圧ローラ31は被転写媒体12を挟持し、熱と圧力を加えながら搬送する。
【0053】
これにより、被転写媒体12は、二次転写されている消色性トナーの画像を紙面に定着され、加熱ローラ29と押圧ローラ31により更に搬送されて、排紙経路32を経由して本体装置筐体2の上面に形成されている不図示の排紙トレーに排紙される。
【0054】
<消色装置の用紙搬送機構>
消色装置13内では、被転写媒体12への加熱が高温であるため、被転写媒体12に丸まりが発生しやすい。被転写媒体12に丸まりがあると、消色用の熱で溶融した消色性トナーがヒータ23の熱輻射面に付着する恐れがある。従って、非接触の搬送を行うことが必要とされる。
【0055】
また、用紙の丸まりにより用紙が下流の用紙搬出ローラ対26に侵入せずに外れてしまう懸念もある。従って、これらのことを考慮した搬送機構が必要とされる。
【0056】
図2は、上記の消色搬送経路21において用紙の両側端部を挟持して搬送する両側端搬送装置を示す斜視図である。尚、同図には用紙搬送方向上流側の用紙搬入ローラ対25と下流側の用紙搬出ローラ対26の図示を省略している。
【0057】
図2に示すように、消色搬送経路21の両側には、駆動ローラ33と従動ローラ34に掛け渡され、内部中央に押さえローラ35を有する無端状の細ベルト36が上下二段に配置された両側端搬送装置37が配置されている。
【0058】
この両側端搬送装置37は、被転写媒体12の両側端部を挟持して、図2の矢印b方向に搬送する。これにより被転写媒体12の両端部が熱により丸まったり、その先端部が下方に垂れ下がって消色搬送経路21から外れるような不具合を防止することができる。
【0059】
図3は、上記消色装置13の消色搬送経路21の平面図である。用紙搬入ローラ対25と用紙搬出ローラ対26によって矢印b方向に搬送される被転写媒体12の上下には、それぞれ、6本のヒータ接触防止ワイヤ38(38a、38b)が張設されている(図では上方のワイヤを実線、下方のワイヤを破線で示している)。
【0060】
これらのヒータ接触防止ワイヤ38(38a、38b)は、それぞれワイヤ保持部39(39a、39b)に保持されている。これらヒータ接触防止ワイヤ38とワイヤ保持部39は、ヒータ接触防止装置40として消色装置13内に固定して配置されている。
【0061】
このヒータ接触防止ワイヤ38(38a、38b)は、被転写媒体12がヒータユニット7の底面に接触するのを防止するとともに、被転写媒体12の丸まりを上下から押さえて、被転写媒体12が両側端搬送装置37から脱落するのを防止している。
【0062】
このように、図1に示した消色装置13は、被転写媒体12の丸まりや垂れ下がりを防止しながら、用紙搬入ローラ対25から用紙搬出ローラ対26まで、斜めに張られたヒータ接触防止ワイヤ38によって被転写媒体12を案内する。
【0063】
ヒータ接触防止ワイヤ38は、被転写媒体12の搬送方向に対して斜めに張設されていると共に広い間隔で配置されているので、消色ユニット22のヒータ23からの消色用輻射加熱と、消色光源からの消色用の照射光を遮ることは全く無いといって良い。
【0064】
図4は、上記構成の消色装置を備えたプリンタ1の制御装置を含む回路ブロック図である。図4に示すように、回路ブロックは、中心回路にCPU(central processing unit)41を有している。
【0065】
CPU41には、データバスを介して画像形成部42、消色部43、被転写媒体搬送部44が接続されている。画像形成部42は、現像部45、転写部46、定着部47等から成る。
【0066】
現像部45は画像形成ユニット6の各部の駆動を制御し、転写部46は一次転写ローラ及び二次転写ローラ11の印加電圧等を制御し、定着部47は図1に示す定着部28の加熱ローラ29の発熱駆動等を制御する。
【0067】
消色部43は、LED光源加熱装置移動モータ駆動部48、LED光消色光源駆動部49、消色加熱部駆動部51、画像読み取り装置部52等から成る。LED光源加熱装置移動モータ駆動部48には、LED光消色光源移動モータ53、被転写媒体終端検知センサ54、被転写媒体先端検知センサ55等が接続されている。
【0068】
LED光消色光源移動モータ53は、駆動系を介して、消色光源24を図1の両方向矢印Lnで示す範囲を往復移動させる。消色光源24とヒータ23は一体となって消色ユニット22を構成しているので、上記の駆動により消色ユニット22は、図1の両方向矢印Lrで示す基準位置から所定の位置までの範囲を往復移動する。
【0069】
被転写媒体終端検知センサ54は、用紙搬出ローラ対26によって消色装置13から送出される被転写媒体12の後端を検出し、被転写媒体先端検知センサ55は用紙搬入ローラ対25によって消色装置13に搬入される被転写媒体12の先端を検出する。
【0070】
LED光消色光源駆動部49には、消色ユニット22における消色光源24の消色光源LED56が接続されている。LED光消色光源駆動部49は、消色光源LED56の点灯と消灯を制御する。
【0071】
消色加熱部駆動部51には、消色加熱部57と温度センサ58が接続されている。消色加熱部57は、消色ユニット22におけるヒータ23と、ヒータ23の熱輻射面を除く面を取り囲む断熱反射材等を備えている。
【0072】
消色加熱部駆動部51は、温度センサ58が検出するヒータ23の熱輻射面の温度に基づいて、熱輻射面の温度が適温に維持されるようにヒータ23への印加電力を制御する。
【0073】
画像読み取り装置部52は、画像読取装置17を備えている。画像読取装置17の機能については、すでに述べたとおりである。
【0074】
被転写媒体搬送部44は、複数のモータ及び複数のギア等で構成される駆動系からなる。被転写媒体搬送部44は、給紙ローラ15、給送ローラ対18、用紙搬入ローラ対25、用紙搬出ローラ対26等を回転駆動する。
【0075】
これにより、被転写媒体12が1枚ごと給紙カセット14から取り出され、給紙搬送経路16及び消色給送経路19を経由して消色装置13に搬入され、消色搬送経路21を搬送されながら消色部43の機能によって消色される。
【0076】
その後、被転写媒体搬送部44は、消色された被転写媒体12を二次転写経路10により搬送し、現像部45で画像形成され、転写部46による一次転写で転写ベルト3に転写されたトナー画像が転写ベルト3により、被転写媒体12が二次転写部に進入するタイミングで二次転写部に搬送されるように、駆動ローラ4を回転駆動する。
【0077】
そして、被転写媒体搬送部44は、定着部47における定着でトナー画像を定着される用紙を、加熱ローラ29を回転駆動することにより搬送し、装置外に送出する。
【0078】
図5は、消色装置13において、図1の両方向矢印Lrで示す範囲の上流側端部(基準位置)から下流側端部(所定の位置)までの間を消色ユニット22を往復移動させるタイミングを示す図である。
【0079】
図5において、Lpは被転写媒体12の搬送方向の長さを示し、Lkは搬送される先行の用紙12fと後続の被転写媒体12bの紙間距離を示し、Vhは消色ユニット22の移動速度を示し、Vpは被転写媒体12(12f、12b)の搬送速度を示し、Vhbは消色ユニット22の引き返し速度を示している。
【0080】
尚、図5には、説明の便宜上、消色ユニット22を図1とは異なる形で示している。時間T1において、消色ユニット22は先行の被転写媒体12fの先端の消色開始位置(基準位置)にあり、被転写媒体12fの搬送速度Vpよりも遅い移動速度Vhで被転写媒体12fとともに搬送方向に移動を開始する。
【0081】
消色ユニット22は、時間T2、T3と逐次被転写媒体12fよりも遅れながら移動して、時間T4において、被転写媒体12fの後端の消色終了位置(所定の位置)に来ると、引き返し速度Vhbで基準位置に引き返す。このとき後続の被転写媒体12bの先端の消色開始位置が消色ユニット22の基準位置に来ている(時間T5)。
【0082】
以降、後続の被転写媒体12bが先行の被転写媒体12fとなり、消色ユニット22は、時間T5を時間T1として、上記の時間T1〜T5の動作を繰り返す。このように、制御部は、消色ユニット22を、基準位置から被転写媒体12の搬送方向に所定の位置まで移動させた後、基準位置に戻す処理を行う。この図5に示したのは消色ユニット22の基本動作である。詳しくは、再び図1に戻って説明する。
【0083】
図1において、実線で示す消色ユニット22の位置は基準位置であり、破線で示す消色ユニット22の位置は所定の位置である。また消色ユニット22の往復移動範囲Lrは被転写媒体12の先端の消色開始位置から後端の消色終了位置を示している。
【0084】
ここで、消色ユニット22の基準位置から所定の位置までの往復移動範囲Lrにおける往復移動距離は、ヒータ23においては上流側端部(図の左端部)の移動距離Lmであり、消色光源24においては下流側端部(図の右端部)の移動距離Ln(Lm=Ln)である。
【0085】
また、図1には示していないが、消色ユニット22の上流側端部(ヒータ23の差端部)には図4に示した被転写媒体先端検知センサ55が配置されている。また、消色ユニット22の下流側端部(消色光源の右端部)には図4に示した被転写媒体終端検知センサ54が配置されている。
【0086】
上記消色ユニット22の往復移動範囲(基準位置から所定の位置までの距離)Lrは、被転写媒体12が消色搬送経路21に送入されてくる紙間距離(搬送される先行の被転写媒体12fと後続の被転写媒体12bの被転写媒体間距離)を図5に示した紙間Lkとして、Lr=Lk−αである。距離αは、消色ユニット22が所定の位置から基準位置まで戻る時間tb=ヒータ23の上流側端部の移動距離Lm(又は消色光源24の下流側端部の移動距離Ln)/消色ユニット22の引き返し速度Vhbの間に被転写媒体12が搬送される距離Lb(=α)=被転写媒体12(12f、12b)の搬送速度Vp×消色ユニット22が所定の位置から基準位置まで戻る時間tbである。
【0087】
ここで、消色ユニット22が所定の位置から基準位置まで戻る速度(消色ユニット22の引き返し速度)Vhbがtb≒0と見做せるほどに極めて高速であると、消色ユニット22が所定の位置から基準位置まで戻る間に被転写媒体12が搬送される距離Lbは、Lb=Vp×tb≒0となる。すなわちα≒0であるから、Lr=Lkとなる。
【0088】
実際には、それほど高速に消色ユニット22を移動させることは出来ないので、αはある一定の値をとることになる。それでもなお、被転写媒体12が距離Lr=Lk−αで示す区間の搬送中は、被転写媒体12に消色ユニット22の熱と消色光が当たることになる。
【0089】
すなわち、被転写媒体12の搬送速度を遅くすることなく、消色ユニット22の熱と消色光が被転写媒体12に当たる時間を長くすることができる。これにより、消色性トナーで形成した画像を効率よく消色することができ、消色用の消費電力を低減させることができる。
【0090】
尚、実験によれば、同一の消色結果を得るために、従来では200W×3個のヒータを用いたのに対し、本実施例では100w×3個のヒータを用いて十分な成果を得ることができた。
【0091】
本発明において説明した実施形態では、ヒータ23と消色光源24とを含む消色ユニット22が、消色搬送経路21を搬送中の被転写媒体12の消色性トナー像を消色するに際して、制御部は、消色ユニット22を、基準位置から被転写媒体12の搬送方向に所定の位置まで移動させた後、基準位置に戻す処理を行うとしたが、消色ユニット22の移動に限らない。
【0092】
例えば、図1に示す定着部28では、加熱ローラ29を用いて定着を行ったが、加熱ローラ29の代わりに非接触ヒータを用いても良い。非接触ヒータを用いた場合には、制御部は、消色ユニット22のような動きをするように、トナー画像を被転写媒体12に定着する際に用いる非接触ヒータを、基準位置から被転写媒体12の搬送方向に所定の位置まで移動させた後、基準位置に戻すような処理を行っても良い。
【0093】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
【0094】
被転写媒体の搬送経路に配置されたヒータと、前記被転写媒体の搬送経路に配置され、前記ヒータにより加熱された前記被転写媒体に消色光を照射する消色光源と、を有する消色ユニットと、
前記消色ユニットが前記搬送経路を搬送中の前記被転写媒体の前記消色性トナー像を消色するに際し、前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理を行う制御部と、
を備える ことを特徴とする消色装置。
[付記2]
【0095】
前記ヒータは、前記被転写媒体の前記消色性トナー像の印字面を加熱し、
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記被転写媒体の搬送速度よりも遅い速度で移動させることを特徴とする付記1記載の消色装置。
[付記3]
【0096】
前記制御部は、前記消色ユニットを第1の被転写媒体の搬送方向に移動させた後、前記搬送方向と反対方向の第2の被転写媒体と対向する位置まで移動させる処理を行うことを特徴とする付記1又は2記載の消色装置。
[付記4]
【0097】
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記搬送経路に送入されてくる前記被転写媒体の先端と対向する位置から、前記搬送経路から送出される前記被転写媒体の後端と対向する位置までであることを特徴とする付記1乃至3の何れか一項記載の消色装置。
[付記5]
【0098】
被転写媒体の搬送経路に配置されたヒータと、前記被転写媒体の搬送経路に配置され、前記ヒータにより加熱された前記被転写媒体に消色光を照射する消色光源と、を有する消色ユニットが、前記搬送経路を搬送中の前記被転写媒体の前記消色性トナー像を消色するに際し、制御部により前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理を行うことを特徴とする消色方法。
[付記6]
【0099】
前記ヒータは、前記被転写媒体の前記消色性トナー像の印字面を加熱し、
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記被転写媒体の搬送速度よりも遅い速度で移動させることを特徴とする付記5記載の消色方法。
[付記7]
【0100】
前記制御部は、前記消色ユニットを第1の被転写媒体の搬送方向に移動させた後、前記搬送方向と反対方向の第2の被転写媒体と対向する位置まで移動させる処理を行うことを特徴とする付記5又は6記載の消色方法。
[付記8]
【0101】
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記搬送経路に送入されてくる前記被転写媒体の先端と対向する位置から、前記搬送経路から送出される前記被転写媒体の後端と対向する位置までであることを特徴とする付記5乃至7の何れか一項記載の消色方法。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、消色性トナーで形成した画像を効率よく消色する消色装置及びその消色方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 画像形成装置(プリンタ)
2 本体装置筐体
3 転写ベルト
4 駆動ローラ
5 従動ローラ
6 画像形成ユニット
7 現像器
8 感光体ドラム
9 現像ローラ
10 二次転写経路
11 二次転写ローラ
12 被転写媒体
12f 先行の被転写媒体
12b 後続の被転写媒体
13 消色装置
14 給紙カセット
15 給紙ローラ
16 給紙搬送経路
17 画像読取装置
18 給送ローラ対
19 消色給送経路
20a、20b コロ
21 消色搬送経路
22 消色ユニット
23 ヒータ
24 消色光源
25 用紙搬入ローラ対
26 用紙搬出ローラ対
27 定着搬送経路
28 定着部
29 加熱ローラ
30 レール
31 押圧ローラ
32 排紙経路
33 駆動ローラ
34 従動ローラ
35 押さえローラ
36 細ベルト
37 両側端搬送装置
38(38a、38b) ヒータ接触防止ワイヤ
39(39a、39b) ワイヤ保持部
40 ヒータ接触防止装置
41 CPU(central processing unit)
42 画像形成部
43 消色部
44 被転写媒体搬送部
45 現像部
46 転写部
47 定着部
48 LED光源加熱装置移動モータ駆動部
49 LED光消色光源駆動部
51 消色加熱部駆動部
52 画像読み取り装置部
53 LED光消色光源移動モータ
54 被転写媒体終端検知センサ
55 被転写媒体先端検知センサ
56 消色光源LED
57 消色加熱部
58 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写媒体の搬送経路に配置されたヒータと、前記被転写媒体の搬送経路に配置され、前記ヒータにより加熱された前記被転写媒体に消色光を照射する消色光源と、を有する消色ユニットと、
前記消色ユニットが前記搬送経路を搬送中の前記被転写媒体の前記消色性トナー像を消色するに際し、前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理を行う制御部と、
を備えることを特徴とする消色装置。
【請求項2】
前記ヒータは、前記被転写媒体の前記消色性トナー像の印字面を加熱し、
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記被転写媒体の搬送速度よりも遅い速度で移動させることを特徴とする請求項1記載の消色装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記消色ユニットを第1の被転写媒体の搬送方向に移動させた後、前記搬送方向と反対方向の第2の被転写媒体と対向する位置まで移動させる処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の消色装置。
【請求項4】
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記搬送経路に送入されてくる前記被転写媒体の先端と対向する位置から、前記搬送経路から送出される前記被転写媒体の後端と対向する位置までであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項記載の消色装置。
【請求項5】
被転写媒体の搬送経路に配置されたヒータと、前記被転写媒体の搬送経路に配置され、前記ヒータにより加熱された前記被転写媒体に消色光を照射する消色光源と、を有する消色ユニットが、前記搬送経路を搬送中の前記被転写媒体の前記消色性トナー像を消色するに際し、制御部により前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理を行うことを特徴とする消色方法。
【請求項6】
前記ヒータは、前記被転写媒体の前記消色性トナー像の印字面を加熱し、
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記被転写媒体の搬送速度よりも遅い速度で移動させることを特徴とする請求項5記載の消色方法。
【請求項7】
前記制御部は、前記消色ユニットを第1の被転写媒体の搬送方向に移動させた後、前記搬送方向と反対方向の第2の被転写媒体と対向する位置まで移動させる処理を行うことを特徴とする請求項5又は6記載の消色方法。
【請求項8】
前記消色ユニットを前記被転写媒体の搬送方向に移動させる処理は、前記搬送経路に送入されてくる前記被転写媒体の先端と対向する位置から、前記搬送経路から送出される前記被転写媒体の後端と対向する位置までであることを特徴とする請求項5乃至7の何れか一項記載の消色方法。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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