説明

消色装置

【課題】リライタブルプリンタ等に搭載されて低消費エネルギーで且つ立ち上がり速く消色性トナー画像を消色する消色装置を提供する。
【解決手段】上下の熱輻射ヒータ37(37a、37b)を消色処理のために立ち上げるときは、上下の熱輻射ヒータ37間の空隙を5mm以下にする。熱輻射ヒータ37の面にワイヤ33に対応する溝40を形成すれば間隙0mmとして面同士を接触させてもよい。その状態で上下の熱輻射ヒータ37を600Wで同時電源投入、又は300Wで交互排他的に電源投入する。消色処理実行時の30度開いた状態のまま電源投入した場合に比べて、熱輻射ヒータ37の熱輻射面が消色開始可能温度の450℃程度に上昇するまでの立ち上げ時間は、同時電源投入で2/3以下ほぼ1/2程度まで、交互排他的電源投入では1/2以下に短縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消色装置に係わり、更に詳しくは、例えばリライタブルプリンタ等に搭載されて低消費エネルギーで且つ立ち上がり速く消色性トナー画像を消色する消色装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の一環として紙資源の節減が叫ばれている。画像形成装置等の紙資源の節減と再利用では、片面印刷した用紙の裏面の有効活用などは既に社会一般になされている。また、使用済み用紙を回収し用紙の原料とし、再生紙として再度用いることも一般に行われている。
【0003】
しかし片面印刷の用紙の再利用では、再使用の回数が通常1回に限られてしまう。また、原料として再利用する再には回収自体にエネルギーとコストがかかり、原料として加工する際にもエネルギーが掛かってしまう。
【0004】
そこで、オフィス内において用紙を複数回使用できるようにする取組みが種々為されている。トナー像により一度画像が形成された用紙を紙資源として再利用するには、トナーにより形成された用紙上の画像を物理的に除去または光で消色して再利用可能な用紙とすることが考えられている。
【0005】
画像を物理的に除去して用紙を再利用するためには、用紙の画像形成面にトナーを除去する処理液を塗布し、加熱してトナーを溶解させて画像を除去する方法や、用紙の画像形成面を研摩してトナー画像を削り落とす方法などがあるが、これらの方法は、手数がかかると共に、再利用する用紙に損傷が発生し易いため問題がある。
【0006】
また、感熱系の消色剤を用い、加熱オーブンタイプの消色装置により消色を行う方式もある。また、一部光エネルギーを用いて消色トナーを消去する方法も知られている。しかし、これらの消色装置をオフィスに設置するとなると、プリンタなどの印刷装置の他に消色装置が必要になるから電力も別に必要になり、消色装置の設置スペースも別に必要となって不経済である。
【0007】
また、多くの消色装置は、消色に多くの時間を要するなど、ユーザにとっては使い勝手が悪く、必ずしも便利なものとは言い難い。この観点から、消色装置はプリンタなどの他の装置内に組み込み、通常印刷の他に消色性トナーによる印字とその消色を行うことが出来るようにするのが望ましい。
【0008】
そのような例として、消色性トナーを用いて現像、転写、定着を行って記録紙への印字を行う機能と、記録紙に印字された消色性トナーの文字や画像に消色用の光を照射して消色を行う機能とを備えた画像形成装置が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0009】
また、消色トナーと消色装置に関しても多くの例が示されている。その中でも、赤外線によって消色を行うことが出来る増感染料とホウ素系化合物を使ったトナーの印刷画像を加熱した後、赤外線により消色を行うことにより消色速度を格段に向上させた装置が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0010】
この装置では、消色用光源として、ハロゲン、フラッシュ、LEDランプなど多くの光源を有効として、中でもハロゲンランプは多くの例が示されている。なお、ハロゲンランプは、遠赤外線を中心とする長波長領域のエネルギーも出すので熱源としても用いられる。熱源に限っては消色反応を助成する目的の熱源として有効性が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平08−152823号公報
【特許文献2】特開平05−204278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1に示される従来技術では、消色装置と印字装置が一体となって消色と印字を同装置内で行うプリンタにおける有効性は示されている。しかし、その場合、プリンタ本体の消費電力の他に消色部の消費電力も加えた総合消費電力の低減が要望される。ところが、消費電力の問題については何ら記載がない。
【0013】
また、特許文献2に示される従来技術では、ハロゲンランプは、近赤外線だけではなく紫外線領域、可視光領域、近赤外線領域〜遠赤外線領域まで含んだ光である。したがって、増感色素の吸収波長だけではなくのその他の消色反応に寄与しない多くの余分な波長のエネルギーも放射しており不経済なエネルギー源である。
【0014】
また、特許文献2では、樹脂をTg以上の温度に加熱した状態で光を当てることの有効性が示されているが、ハロゲンランプを用いた加熱において、搬送路を通過する用紙に対してライン状にランプを設置することは、ハロゲンランプのフィラメントが長くなり消費電力が必然的に大きくなるので消費電力上必ずしも優位な手段であるとはいえない。
【0015】
更に、ハロゲンランプを用いた場合、消色時には常時点灯を続けることになり、ランプ自体は数千時間で切れる消耗品であるから、ランニングコストはより大きなものとなる。
【0016】
ハロゲンランプ以外の光源については、一例として光源種としてのLEDなどの記載はあるものの具体的な消色条件における光源の設定についての記載はされていない。また、こうした光源と消色トナーとの組み合わせの中、より有効な光エネルギーについての提案がされていないため、適切な光と色素の有効な消色効果の関係は不明のままである。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであって、例えばリライタブルプリンタ等に搭載されて消色性トナー画像を消色する低消費エネルギーで且つ立ち上がりの速い消色装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の消色装置は、用紙の両面に印字された消色性トナー像を消色すべく上記用紙の搬送経路の上下にそれぞれ配置された上記用紙の上記消色性トナー像の印字面を加熱する上部熱輻射ヒータ及び下部熱輻射ヒータと、加熱された上記用紙の上記消色性トナー像の上記印字面に消色光を照射する上部消色光源及び下部消色光源と、を備え、上記上部熱輻射ヒータ及び上記下部熱輻射ヒータは、それぞれの熱放散面が、近接又は接触する位置と、消色実行時の開成する位置とに移動可能であるように構成される。
【0019】
この消色装置において、例えば、上記上部熱輻射ヒータ又は上記下部熱輻射ヒータは、それぞれの熱放散面が近接又は接触する位置において発熱を開始し、発熱温度が上記消色性トナー像の消色に適する温度になったとき消色実行時の開成する位置に移動するように構成される。
【0020】
この場合、上記熱放散面が近接又は接触する位置における発熱は、例えば、上記上部熱輻射ヒータ及び上記下部熱輻射ヒータにおいて同時に開始されるようにしてもよく、また、例えば、上記上部熱輻射ヒータ又は上記下部熱輻射ヒータが交互に排他的に開始されるようにしてもよい。
【0021】
この消色装置において、上記熱輻射ヒータは、例えば、セラミックヒータであり、上記消色光源は、例えば、LEDである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、例えばリライタブルプリンタ等に搭載されて低消費エネルギーで且つ立ち上がりが速く消色性トナー画像を消色する消色装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例2に係る消色装置を備えたカラー画像形成装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【図2】実施例2に係る消色装置の搬送機構の一部を構成する用紙両側端搬送装置を示す斜視図である。
【図3】実施例2に係る消色装置の搬送機構の平面図である。
【図4】(a)は実施例3に係る消色ユニットの基本構成を示す図、(b)はその平面図、(c)はその熱輻射ヒータの構成例を示す図である。
【図5】(a),(b)は実施例3に係る消色ユニットの上下の熱輻射ヒータに対する電源投入の試験において閉じた状態を近接状態と接触状態の2例に分けて示す図、(c)は比較のため消色実行時の開いた状態を示す図である。
【図6】実施例3に係る消色ユニットの上下の熱輻射ヒータに対する電源投入の試験結果を示す図表である。
【図7】本発明の実施例4に係る消色ユニットの他の例を示す図である。
【図8】本発明の実施例5に係る熱輻射ヒータの他の開き例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。尚、本発明の説明では「印字」と「印刷」は同意語として区別なく用いられる。
【実施例1】
【0025】
<消色性トナーの製法>
先ず、本発明において用いられる消色性トナーの製法について実施例1として説明する。最初に、817nmに感度を持つ赤外線感光色素「IRT」(昭和電工製)を1.5質量部、有機ホウ素化合物消色剤「P3B」(昭和電工製)を4質量部、トナー用ポリエステル結着樹脂(花王製)を90.5質量部、負電荷調整剤「LR−147」(日本カーリット製)を1.5質量部、カルナバWAX1号粉末(加藤洋行社輸入品)を2.5質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山製)に投入し、混合する。
【0026】
続いて上記の混合物を、二軸混練機で溶融混練する。これで得られた混練物をロートプレックス(ホソカワミクロン製)で粗砕して粗砕物を得る。得られた粗砕物を衝突式粉砕機及び分級機IDS/DSX(NPK)にて、平均粒径が9μmになるように粉砕する。
【0027】
この粉砕により得られた粉砕物100質量部に、外添剤としてシリカ「R972」(日本アエロジル製)を1質量部添加し、ヘンシェルミキサーで混合して消色性トナーRを得ることができる。
【0028】
消色装置としては、通常の電子写真式のプリンタの下部に組み込んで配設する。詳しくは後述するが、消色性トナーで印字されていて消色装置に通紙された用紙は、セラミックヒータ等の熱源の下を通過しつつ暖められ、その状態にてLED等の光源により消色光を照射される。
【0029】
その後、消色された用紙に対する印字が、通常のプリンタと同一の現像、転写、定着工程によって実行される。上部のプリンタに関しては、消色トナーを現像部に設定できればよく特に制約はない。また、望ましくは消色装置とプリンタは一体である方がよいが、消色装置としてプリンタから独立して単独で設置されてもよい。以下の説明ではプリンタと一体型の消色装置とする。
【実施例2】
【0030】
<プリンタ本体の構造>
図1は、本発明の実施例2に係る消色装置を備えたカラー画像形成装置の内部構成を模式的に示す断面図である。
【0031】
図1に示す画像形成装置(以下、単にプリンタという)1は、本体装置筐体2の内部中央において、水平方向に延在する無端状の転写ベルト3を備えている。転写ベルト3は、不図示の張設機構によって張設され、駆動ローラ4と従動ローラ5に掛け渡され、駆動ローラ4により駆動されて、図の矢印aで示す反時計回り方向に循環移動する。
【0032】
転写ベルト3の上循環移動面の上方に4個の画像形成ユニット6(6r、6y、6c、6m)を備えている。画像形成ユニット6rは、現像器7内に消色性トナーを収容した消色性トナー画像形成用の画像形成ユニットであり、現像器7内に黒トナーを収容した不図示の黒色画像形成用の画像形成ユニット6kとユーザの任意によって交換可能である。
【0033】
画像形成ユニット6yは、現像器7内にイエロートナーを収容したイエロー色画像形成用の画像形成ユニットであり、画像形成ユニット6cは、現像器7内にシアントナーを収容したシアン色画像形成用の画像形成ユニットであり、画像形成ユニット6mは、現像器7内にマゼンタトナーを収容したマゼンタ色画像形成用の画像形成ユニットである。
【0034】
4個の画像形成ユニット6については、現像器7内に収容されているトナーの種類を除くと、いずれも同一の構造であるので、以下、画像形成ユニット6rを取り上げて、その構造を簡単に説明する。
【0035】
画像形成ユニット6には、転写ベルト3の上循環移動面に接する感光体ドラム8が配設されている。感光体ドラム8には、その周面を取り巻くように近接して、図示を省略したクリーナ、初期化帯電器、光書込ヘッドに続いて、現像器7の下部開口部に保持された現像ローラ9等が配置されている。
【0036】
上記の現像ローラ9は、現像器7に収容されている黒トナー又は消色性トナー(以下、消色性トナーのみについて説明する)の薄層を表面に担持し、光書込ヘッドによって感光体ドラム8の周面上に形成されている静電潜像に消色性トナーの画像を現像する。
【0037】
感光体ドラム8の下部には、転写ベルト3を介して不図示の一次転写ローラが圧接して、そこに一次転写部を形成している。一次転写ローラには、不図示のバイアス電源からバイアス電圧を供給される。
【0038】
一次転写ローラは一次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加して、感光体ドラム8の周面上に現像されている消色性トナーの画像を転写ベルト3に転写する。
【0039】
転写ベルト3の図に示す右端部が掛け渡されている従動ローラ5には、転写ベルト3を介して二次転写ローラ11が圧接し、ここに二次転写部を形成している。二次転写ローラ11には、不図示のバイアス電源からバイアス電圧が供給される。
【0040】
二次転写ローラ11は二次転写部において、バイアス電源から供給されるバイアス電圧を転写ベルト3に印加し、転写ベルト3に一次転写されている消色性トナーの画像を、図の下方から上方に矢印b又は矢印cで示すように搬送され、更に画像形成搬送路12に沿って搬送されてくる記録媒体(以下、用紙という)に転写する。
【0041】
上記の矢印cで示すように搬送される用紙14は、上部給紙カセット15に積載されて収容され、不図示の給紙ローラ等により最上部の一枚ごとに取り出され、矢印cに示すように給紙搬送路に送出され、更に画像形成搬送路12を搬送されて、上記の二次転写部を通過しながら消色性トナーの画像を転写される。
【0042】
消色性トナーの画像を転写されながら二次転写部を通過した用紙14は、定着搬送路16に沿って定着部17へと搬送される。定着部17の加熱ローラ18と押圧ローラ19は、用紙14を挟持し、熱と圧力を加えながら搬送する。
【0043】
これにより、用紙14は、二次転写されている消色性トナーの画像を紙面に定着され、加熱ローラ18と押圧ローラ19により更に搬送されて、本体装置筐体2の上面に形成されている排紙トレー21に排紙される。
【0044】
一方、上記の矢印bで示すように搬送される用紙22は、既に紙面に消色性トナー像を形成されている用紙であり、下部給紙カセット23から一枚ごとに取り出されて矢印dに示すように給紙搬送路に送出される。
【0045】
そして、この場合は、用紙22は、消色装置24に搬入される。消色装置24には、詳しくは後述する搬送機構と消色ユニットが配設されている。図1に示す消色装置24には、搬送機構の用紙搬送経路25と、用紙22を消色装置24に搬入し搬出する2組の用紙搬送ローラ対26(26a、26b)のみを示している。
【0046】
<消色装置の用紙搬送機構>
用紙22に消色性トナー画像が両面印字されている場合、用紙22を通常行われているようにベルト搬送機構によって消色装置24内を搬送すると、消色用の熱で溶融した裏側のトナーがベルトに付着する。従って、非接触の搬送を行うことが必要とされる。
【0047】
また、用紙への加熱が高温であるため、用紙に丸まりが発生し、ヒータへの接触も懸念される。また、用紙の丸まりにより用紙が下流の搬送ローラ対26bに侵入せずに外れてしまう懸念もある。従って、これらのことを考慮した搬送機構が必要とされる。
【0048】
図2は、本例の消色装置24の搬送機構の一部を構成する用紙両側端搬送装置を示す斜視図である。尚、同図には搬送方向上流側の搬送ローラ対26aと下流側の搬送ローラ対26bの図示を省略している。
【0049】
図2に示すように、用紙搬送経路25の両側には、駆動ローラ27と従動ローラ28に掛け渡され、内部中央に押さえローラ29を有する細ベルト31が上下二段に配置された用紙両側端搬送装置32が配置されている。この用紙両側端搬送装置32は、同図に示すように用紙22に対し、用紙22の両側端部を挟持して図の矢印d方向に搬送する。
【0050】
図3は、上記の消色装置24の搬送機構の平面図である。図3に示すように、搬送ローラ対26a、26b及び用紙両側端搬送装置32によって搬送される図2に示した用紙22の上下には、それぞれ6本のヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)が張設されている(図では上方のワイヤを実線、下方のワイヤを破線で示している)。
【0051】
これらのヒータ接触防止ワイヤ33a及び33bは、それぞれワイヤ保持部34(34a、34b)に保持されて、ヒータ接触防止機構35を構成し消色装置24内に固定して配置されている。
【0052】
これらのヒータ接触防止ワイヤ33(33a、33b)は、用紙22が後述する熱輻射ヒータに接触するのを防止するとともに、用紙22の丸まりを上下から押さえて、用紙22が用紙両側端搬送装置32から脱落するのを防止している。
【0053】
これらのヒータ接触防止ワイヤ33は、用紙22の搬送方向に対して斜めに張設されていると共に広い間隔で配置されているので、後述する熱輻射ヒータからの消色用輻射加熱とこれも後述するLED光源からの消色用照射光を遮ることは全く無いといって良い。
【0054】
このように、本例の消色装置24の用紙搬送機構は、2組の用紙搬送ローラ対26(26a、26b)と、用紙両側端搬送装置32と、ヒータ接触防止機構35とによって構成されている。
【実施例3】
【0055】
<消色装置の消色ユニット>
図4(a)は、消色装置24の用紙搬送機構によって構成される用紙搬送経路25の上下に配置される実施例3に係る消色ユニットの基本構成を示す図であり、同図(b)はその平面図、同図(c)はその熱輻射ヒータの構成例を示す図である。
【0056】
なお、図4(a),(b)には、図3に示した構成と同一の構成部分には図3と同一の番号を付与して示している。また、図4(a),(b)には、ヒータ接触防止機構35のワイヤ保持部34と、用紙両側端搬送装置32の図示を省略している。
【0057】
図4(a),(b)に示すように、消色ユニット36(36a、36b)は、熱輻射ヒータ37(37a、37b)と、光源38(38a、38b)及びレンズ39(39a、39b)から成る消色光源41とで構成される。
【0058】
熱輻射ヒータ37はセラミックタイプのヒータである。詳しくは、NGKキルンテック製のセラミックヒータである。商品名インフラスタインB(100V/200W)を3連装にして用いた。合計使用電力は600Wである。
【0059】
この熱輻射ヒータ37は、図4(c)に示すように、発熱部41を備えた熱照射面とは反対側となる背面側内部に断熱層41を形成されて断熱構造となっている。これにより、熱照射面より効率よく熱輻射を放射することができる。
【0060】
なお、この熱輻射ヒータ37は、試験的に用いたものであり、3連装の中の1個のヒータの長さと幅の寸法は125mm×65mmとなっている。3連装により全長は125×3=375(mm)となってA4判の用紙幅297mmを大きく超えている。
【0061】
但し、熱輻射ヒータとして消色装置24に実装して用いる場合は、用紙幅に合わせ小型化することで、より消費電力を低減化することが出来る。
【0062】
また、この試験では、セラミックヒータを用いたが、これに限るものではない。例えばカーボンヒータ等を用いることもできる。いずれにしても、波長が2μm以上の輻射熱を照射するものであることが望ましい。
【0063】
この熱輻射ヒータ37の熱輻射により用紙22の消色性トナー画像の形成面を加熱しながら、その加熱中の紙面に消色光源41からの消色光を照射できるように、熱輻射ヒータ37を用紙搬送経路25に対しおよそ30度の角度で斜めに設置する。
【0064】
このとき用紙搬送経路25に近い方の端部の高さ20mm、遠い方の端部の高さ50mmになる用に設置する。この状態で電源を投入し、熱輻射ヒータ37の表面が450℃程度に発熱したときを消色に適する条件とする。
【0065】
また、消色光源41の光源38は、赤外線感熱色素の吸収波長域の光を発光する光源であれば種類は特に問わない。好ましくは第1吸収帯である820nm付近の光を中心に照射できると効率よい消色光となる。
【0066】
本例の光源38には、省電力型の光源としてLEDを用いる。LEDとしては、中心波長が850nm、半値幅50nm以上の波長分布の光を発光するアルワン電子製(OP6−8510HP2)LEDを用いる。
【0067】
このLEDを用紙の通過方向と直交する方向に15個並べ、これらのLEDの前に焦点距離30mmのレンズ39を並べて消色光源41を構成する。レンズ39はセルフォックレンズ(日本板ガラス商標)である。
【0068】
この消色光源41は、上下の熱輻射ヒータ37の間を通過する用紙22を、およそ150mmの距離から40mm程度の幅で照射できるように設置される。
【0069】
また、熱輻射ヒータ37による加熱中の紙面に効率的に消色光を照射するために、消色光42は用紙搬送経路25に対し斜めの位置からおよそ30度の角度を持って用紙に照射される。このとき消色の条件としての用紙の搬送速度は15mm/secとした。
【0070】
消色に際しては、図1で説明したように消色性トナーの画像を印字されて排紙トレー21に排紙された用紙22を用いる。この場合、用紙22としては普通紙を用いてもよく特に指定するものではない。
【0071】
ただし、本例では、消色評価用紙として試験結果を知るために規格の明確なXerox社製P紙(64g/m^2)を使用した。この用紙にC濃度が0.8付近のベタ画像の1cm角のパッチを印刷した。C濃度の測定には測色計(X−rite938)を用いた。また、パッチの印刷と共に目視確認のため、フォント10程度のテキストチャートも印字した。なお、消色トナーによる印字画像は青みある画像となる。
【0072】
以上に述べた消色装置24の構成において、消色後のパッチをXrite938にて測定した数値を測定値とし、消色前のC濃度を0.8程度、消色後のC濃度を0.1程度となる条件を、熱輻射ヒータ37の温度条件ならびに消色光源41の設置条件ならびに全体の設定条件とした。
【0073】
以上の消色可能な装置条件において、図4に示した熱輻射ヒータ37は、消色のための消色光源41の消色光を加熱中の紙面に取り込むため、片側つまり消色光源41側が大きく開いた構造となる。
【0074】
この状態において、600Wの消費電力の熱輻射ヒータ37を上下同時に電源投入して昇温させた場合、表面が450℃程度に発熱する消色開始可能な温度まで立ち上げる昇温時間は6分20秒であった。
【0075】
また同様に上下の熱輻射ヒータ37が開いた状態で、電源投入時のピーク電力を抑えるために、上下熱輻射ヒータ37を排他的にいずれか一方のみに電源を投入して昇温させた場合は、20分以上経過しても立ち上げ目標の温度に到達しなかった。
【0076】
ここで、さまざまな検討の結果、熱輻射ヒータ37の昇温時に熱輻射ヒータ37の表面温度を450℃程度の消色開始可能温度にまで早期に立ち上げるためには、電源投入を上下の熱輻射ヒータ37a及び37bを閉じた状態で行うとよいのではないかということに考えが至った。
【0077】
図5(a),(b)は、上下の熱輻射ヒータ37a及び37bが閉じた状態で電源を投入した試験において、閉じた状態を、近接状態と接触状態の2例に分けて示す図であり、同図(c)は比較のため、消色実行時の開いた状態を示す図である。
【0078】
図6は、上述した試験結果を示す図表である。なお、図6の図表43の条件欄44は電源投入の制御条件を示している。すなわち、上記の上下の熱輻射ヒータ37a及び37bに同時に電源投入する、又は、排他的にいずれか一方のみに電源投入することを示している。
【0079】
また、消色状態での立ち上げ欄45は、以下に述べる試験開始前に、上下の熱輻射ヒータ37を上下に開いたまま電源投入を行った場合の評価結果を示している。
【0080】
上記の上下の熱輻射ヒータ37a及び37bを閉じる条件としては、消色時の条件である開いた設置位置よりも、用紙に極力近づけた位置に閉じるほうが省エネの効果が得られる。
【0081】
望ましくは、図5(a)に示すように、上下の熱輻射ヒータ37間の空隙を5mm以下にする。そうすることで、空気の対流が抑えられ、昇温時のロスが減る。この5mm間隔の近接状態で600W同時電源投入では、図6の図表43の近接設置欄46の上の行に示すように、4分にて立ち上げが可能となった。
【0082】
また、更に望ましくは、熱輻射ヒータ37の熱輻射面を、図5(b)に示すように、接触状態にすることである。この場合ヒータ接触防止ワイヤ33が両熱輻射ヒータ37が接触する際の妨げになるように思えるが、熱輻射ヒータ37の面にワイヤに対応する溝を形成すれば対処可能である。
【0083】
そして、この接触状態では、図6の図表43の接触設置欄47の上の行に示すように、3分40秒にて立ち上げることができた。このように、いずれの場合も、短時間での昇温が可能となり消費電力の低減を図ることができた。
【0084】
また、電源投入時のピークの消費電力を抑えるために、上下の熱輻射ヒータ37を排他的にいずれか一方のみに電源を投入する場合において、上記と同様に上下の熱輻射ヒータ37の熱輻射面を近接させた場合と接触させた場合で立ち上がり状態を調べた。
【0085】
そうすると、5mm間隔の近接状態では、図6の図表43の近接設置欄46の下の行に示すように、9分10秒で立上げることが出来た。また、0mm間隔の接触状態では、図6の図表43の接触設置欄47の下の行に示すように、8分40秒で立ち上げることができた。
【0086】
なお、上記の排他的にいずれか一方のみに電源を投入する場合の電源投入の制御としては、例えば、先ず下の熱輻射ヒータ37bをオン、上の熱輻射ヒータ37aをオフにして、下の熱輻射ヒータ37bを設定条件温度にし、その後、下の熱輻射ヒータ37bをオフ、上の熱輻射ヒータ37aをオンにて設定条件温度にする。
【0087】
上記の立ち上がり時間9分10秒と8分40秒は、それぞれ上下の熱輻射ヒータ37の投入電源の排他的オン・オフの繰り返しによって得られたものである。なお、このような投入電源の排他的オン・オフの繰り返しでは、上の熱輻射ヒータ37aと下の熱輻射ヒータ37bの通電タイミングについては任意の設定が可能である。
【0088】
このように、上下の熱輻射ヒータ37を近接設置又は接触設置の状態で電源を投入すると、上下の熱輻射ヒータ37を消色時の状態に開いたまま電源を投入する場合に比べて、同時電源投入では2/3以下、又はほぼ1/2程度立ち上がりが早くなる。また、排他的電源投入の場合でも1/2以下の時間で立ち上がる。
【0089】
上記のように立ち上がった後は、上下の熱輻射ヒータ37を消色時の状態に上下に斜めに開いて、それらの輻射面の温度を450℃程度に維持するための電力を供給しながら、消色を実行する。
【0090】
このように本例の消色装置24によれば、消色ユニットの消色機能を変えることなく立ち上がり時間を短縮して消費電力を低減することができる。
【実施例4】
【0091】
<消色ユニットの他の例>
図7は、本発明の実施例4に係る消色ユニットの他の例を示す図である。なお、図7には、図3に示した構成と同一の構成部分には図3と同一の番号を付与して示している。また、図7には、ヒータ接触防止機構35のワイヤ保持部34と、用紙両側端搬送装置32の図示を省略している。
【0092】
図7に示す消色ユニットは、用紙搬送経路25に対する配置において、図4(a),(b)に示した実施例3に係る消色ユニット36の熱輻射ヒータ37と消色光源41の配置を搬送方向上流側と下流側に入替えた構成となっている。
【0093】
このように熱輻射ヒータ37と消色光源41を配置しても、消色ユニット消色機能において変わりはなく、この場合も、電源投入時には上下の熱輻射ヒータ37(37a、37b)を近接状態又は接触状態にしてから電源を投入して立ち上がり時間を短縮して消費電力を低減することができる。
【実施例5】
【0094】
<熱輻射ヒータの他の開き例>
図8は実施例5に係る熱輻射ヒータの他の開き例を示す図である。上述した上の熱輻射ヒータ37aと下の熱輻射ヒータ37bとを近接状態又は接触状態から消色時の状態に開くときは、図8に示すように、平行したまま上下に開くようにしてもよい。
【0095】
このように平行に開くと、用紙に対する熱輻射に、位置によるムラが無くなるという効果がある。但し、全体的に用紙との距離が遠くなるので熱効率の面からみると必ずしも好ましいとはいえない。
【0096】
いずれにしても、消色装置24が片面のみの消色構造であると、下部給紙カセット23に用紙22を収容する際、消色する画像面を上面向き又は下面向きのいずれか決められた向きに設定して収容しなければならないので使い勝手が悪くなる。本例では、両面を同時に消色することができるので使い勝手が良い。
【0097】
また、両面を消色する方法としては、両面印刷機構を備えた一般的なプリンタと同様に片面を消色し、用紙を反転させて、裏面を消色する方法が考えられるが、片面の消色性トナー画像に消色に必要な熱を一度加え後に、反対面の消色性トナー画像の消色を行うと、消色性能が低下することがある。
【0098】
すなわち、最初の片面を消色する時に裏面側の画像も加熱され、両面印刷機構で用紙22を反転させて搬送中に裏面側の画像が冷やされ、続けて裏面側を消色する時に消色性能が低下することが経験的に判明している。
【0099】
また、更には、表裏の消色処理を2度にわたって行うことになるので、消色時間が長くなるという不便がある。本例では、両面を同時に消色できるので、消色性能の低下も起こらず良い消色性能が維持され、また、表裏の消色処理を2度にわたって行う場合よりも消色時間が1/2以下に短縮される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、リライタブルプリンタ等に搭載されて低消費エネルギーで且つ立ち上がりが速く消色性トナー画像を消色する消色装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 消色機能付画像形成装置(プリンタ)
2 本体装置筐体
3 転写ベルト
4 駆動ローラ
5 従動ローラ
6(6r(6k)、6y、6c、6m) 画像形成ユニット
7 現像器
8 感光体ドラム
9 現像ローラ
11 二次転写ローラ
12 画像形成搬送路
14 用紙
15 上部給紙カセット
16 定着搬送路
17 定着部
18 加熱ローラ
19 押圧ローラ
21 排紙トレー
22 用紙
23 下部給紙カセット
24 消色装置
25 用紙搬送経路
26(26a、26b) 用紙搬送ローラ対
27 駆動ローラ
28 従動ローラ
29 押さえローラ
31 細ベルト
32 用紙両側端搬送装置
33(33a、33b) ヒータ接触防止ワイヤ
34(34a、34b) ワイヤ保持部
35 ヒータ接触防止機構
36(36a、36b) 消色ユニット
37(37a、37b) 熱輻射ヒータ
38(38a、38b) 光源
39(39a、39b) レンズ
40 溝
41 消色光源
42 消色光
43 図表
44 条件欄
45 消色状態での立ち上げ欄
46 近接設置欄
47 接触設置欄

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の両面に印字された消色性トナー像を消色すべく前記用紙の搬送経路の上下にそれぞれ配置された前記用紙の前記消色性トナー像の印字面を加熱する上部熱輻射ヒータ及び下部熱輻射ヒータと、加熱された前記用紙の前記消色性トナー像の前記印字面に消色光を照射する上部消色光源及び下部消色光源と、を備え、
前記上部熱輻射ヒータ及び前記下部熱輻射ヒータは、それぞれの熱放散面が、近接又は接触する位置と、消色実行時の開成する位置とに移動可能である、
ことを特徴とする消色装置。
【請求項2】
前記上部熱輻射ヒータ又は前記下部熱輻射ヒータは、それぞれの熱放散面が近接又は接触する位置において発熱を開始し、発熱温度が前記消色性トナー像の消色に適する温度になったとき消色実行時の開成する位置に移動する、ことを特徴とする請求項1記載の消色装置。
【請求項3】
前記熱放散面が近接又は接触する位置における発熱は、前記上部熱輻射ヒータ及び前記下部熱輻射ヒータにおいて同時に開始される、ことを特徴とする請求項2記載の消色装置。
【請求項4】
前記熱放散面が近接又は接触する位置における発熱は、前記上部熱輻射ヒータ又は前記下部熱輻射ヒータが交互に排他的に開始される、ことを特徴とする請求項2記載の消色装置。
【請求項5】
前記熱輻射ヒータはセラミックヒータである、ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の消色装置。
【請求項6】
前記消色光源はLEDである、ことを特徴とする請求項1記載の消色装置。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−113153(P2012−113153A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262621(P2010−262621)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】