消費電力削減支援システム、消費電力削減支援装置、消費電力削減支援方法およびプログラム
【課題】 電力消費を抑えることの可能な消費電力削減支援システムを提供すること。
【解決手段】 実施形態によれば、建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援システムは、計測部と、室内照度算出部と、電力削減可能量算出部とを具備する。計測部は、建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する。室内照度算出部は、計測された外光照度に基づいて光による室内照度を算出する。電力削減可能量算出部は、算出された室内照度に基づいて、室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する。
【解決手段】 実施形態によれば、建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援システムは、計測部と、室内照度算出部と、電力削減可能量算出部とを具備する。計測部は、建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する。室内照度算出部は、計測された外光照度に基づいて光による室内照度を算出する。電力削減可能量算出部は、算出された室内照度に基づいて、室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ビルや工場などの建物における省エネルギーを支援する消費電力削減支援システム、消費電力削減支援装置、消費電力削減支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出量削減に向けて、ビルや家庭などの需要側における電力消費量の削減(省エネ)を求められている。近年では省エネルギー法が改正されるなど、法規制も強化され省エネに向けた取り組みの重要性はますます大きくなってきている。
次世代の電力系統では、電力系統を安定して運用するために電力需要側の電力消費量をインテリジェントに制御することが想定されている。すなわち電力の供給側と需要側との間に通信環境を構築し、需要側での電力消費量を供給側で監視することなどを可能とする旧来にはない電力供給網が形成されようとしている。
【0003】
このような次世代の電力インフラが整備された環境下で、需要側の電力消費量を適時に適量だけ制御できるようにする技術が求められている。この種の技術により、需要側のメリットである省エネ効果に加えて、電力系統の安定化にも寄与することが可能になる。需要側における電力制御手法としては、例えば建物の30分間の積算受電量を監視して電力削減を図るデマンド制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3315741号公報
【特許文献2】特開2010−222885号公報
【特許文献3】特許第3302800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
旧来のデマンド制御は予め設定したシーケンスに従い空調などの消費電力量を削減するもので、契約電力を超過しないように需要側の電力消費を抑制するのが一般的である。次世代配電網ではこれを推し進めて、需要側が契約電力を超過しそうにない状況においても、供給側などから電力消費量の削減要請が与えられるようにすることで、電力系統のさらなる安定化を図れるようにすることが想定される。
【0006】
旧来のデマンド制御では電力負荷が機械的あるいは盲目的に抑制/遮断されるので、需要側建物室内における快適性や利便性が損なわれ、電力削減に不具合を生じるケースがある。よって快適性や利便性などを考慮したうえで、削減可能な電力量を事前に推定できるようにすることが求められる。
目的は、電力消費を抑えることの可能な消費電力削減支援システム、消費電力削減支援装置、消費電力削減支援方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援システムは、計測部と、室内照度算出部と、電力削減可能量算出部とを具備する。計測部は、建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する。室内照度算出部は、計測された外光照度に基づいて光による室内照度を算出する。電力削減可能量算出部は、算出された室内照度に基づいて、室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係わるシステムの一例を示す図。
【図2】第1の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図。
【図3】図2に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャート。
【図4】ユーザ端末40における画面表示内容の一例を示す図。
【図5】ブラインドを真横から見た状態を示す図。
【図6】ブラインドスラット面401を上から見下ろした状態を示す図。
【図7】第1の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図。
【図8】第2の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図。
【図9】ブラインド特性の一例を表すグラフを示す図。
【図10】基準座標系をブラインドに固定した場合の室内任意点の座標を説明するための図。
【図11】異なる減光パターンごとの照度と消費電力との関係を示す図。
【図12】減光パターンの一例を示す図。
【図13】第2の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図。
【図14】図13に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャート。
【図15】第3の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図。
【図16】図15に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャート。
【図17】減光パターンの他の例を示す図。
【図18】太陽電池を備える建物の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係わるシステムの一例を示す図である。図1には、いわゆるスマートグリッドとして知られる電力配電網の一例が示される。既存の電力送配電網は、原子力、火力、水力などの既存発電所と、一般家庭や、ビル、工場といった多種多様な需要家が電力網によって接続される。スマートグリッドではこれらに加えて、新たな電源として太陽光や風力といった自然エネルギーと蓄電池を組み合わせた分散型電源や、新たな需要として新交通システムや充電スタンドなどが電力送配電網に接続される。
【0010】
これらの新旧の電源と需要を効率的に連携するスマートグリッド監視制御システムはμEMS(Micro Energy Management System)(登録商標)と称される。さらに、需要家側にも小規模な分散型電源が配備されるが、これらの制御のために、一般家庭向けにHEMS(Home Energy Management System)、ビル向けにBEMS(Building Energy Management System)が導入される。また、さらに大口の工場向けにはFEMS(Factory Energy Management System)が導入され(図示せず)、よりきめ細かな電力制御を実現する。現状では、これらのシステムは需要家内での自律的なエネルギー管理の実現にとどまっているが、将来的にはμEMSなどと連携して系統全体のエネルギー管理の一役を担うことになると期待される。
【0011】
上記システムによれば、既存の発電所と分散型電源、さらに需要家との間で高度な協調運用が可能になる。これにより電力系統への影響を極小化しつつ、太陽光や風力などの自然エネルギーを豊富に取り込んだ地域エネルギー供給システム、あるいは需要家と電源とのスマートな双方向連系による需要家参加型のデマンドレスポンスといった新しい形態の電力供給サービスが生み出される。
【0012】
次世代の電力系統では電力系統を安定して運用するために電力需要側の電力消費量を制御する「デマンドレスポンス」が想定されている。デマンドレスポンスとは、電力の供給側と需要側との間に構築される通信環境を用いて、供給側から需要側に対してなされた要求に需要側が応じることである。
【0013】
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図である。実施形態では、建物の窓際に設けられるブラインドのスラット角度の最適な値を算出してユーザに伝えることで、見える化を促すことの可能な構成を示す。見える化を促すことにより、実施形態のシステムは建物の電力消費量の削減を支援する。ブラインドはスラット角度を制御量として与えられる、光の遮光量を可変可能な遮光手段の一例として捉えることができる。
【0014】
図2に示すシステムはサーバ装置1を中核として形成される。サーバ装置1は、建物における消費電力の削減を支援するコンピュータとして位置づけられる。サーバ装置1は例えばビル内のオペレーションルームのラック架台などに設置される情報処理機器(コンピュータ)である。このほか、サーバ装置1をデータセンタなどに据え付けて使用することもできる。サーバ装置1は、電力需要側の建物内などに設置されるユーザ端末40と、電力供給側に設けられる消費電力削減指令部30とに接続される。この接続にあたっては専用線やVPN(Virtual Private network)、LAN(Local Area Network)などを用いることができる。
【0015】
サーバ装置1は、建物情報入力部11、外光照度計測部12、消費電力受信部13、最適スラット角度導出部16、室内照度推定部17、電力削減可能量推定部18、最適設定通知部15、および、データ送受信部14を備える。このうち外光照度計測部12を、通信回線を介して外付けにすると配置の自由度が増す。
【0016】
建物情報入力部11、外光照度計測部12、消費電力受信部13は、外部から与えられる情報(データや制御信号など)の入力インタフェースとして機能する。建物情報入力部11は、建物情報をサーバ装置1に与える。建物情報は、壁面方位角(建物各面の方角)、ブラインドのスラット幅やスラット間隔、ブラインドの設置面(あるいはブラインド面)の方向、ブラインドの特性情報(ブラインドのスラット角度ごとの外光(天空日射)による照度の関係など:ブラインド特性と総称する)、照明特性(建物内照明機器の光束、配光特性、消費電力、配置間隔、照度設定値など)などの情報である。
建物情報入力部11は、サーバ装置1に備わるキーボードやマウスなどのユーザインタフェースの形態をとっても良いし、または、必要なデータを書き込まれたディスク媒体やUSB(Universal Serial Bus)などの記憶媒体であっても良い。あるいは、ユーザ端末40を用いてサーバ装置1に建物情報を与えるようにしても良い。
【0017】
外光照度計測部12は例えば建物の外壁、窓際、あるいは室内の間仕切り壁などに取り付けられた照度センサ(ルクスメータ)であり、建物の室内に外部から、あるいは隣室から照射される光の照度である外光照度をセンサ値として計測する。
【0018】
最適スラット角度導出部16、室内照度推定部17、電力削減可能量推定部18は、例えばメインメモリにロードされたプログラムに記載されたコマンド列に沿って、サーバ装置1(コンピュータ)のCPU(Central Processing Unit)に演算処理を行わせることで実現される、ソフトウェアによる処理機能である。なお他の処理ブロック、すなわち建物情報入力部11、外光照度計測部12、消費電力受信部13、最適設定通知部15、および、データ送受信部14も、この種の処理モジュールとして実現可能である。
【0019】
最適スラット角度導出部16は、ブラインドの設置される室内への直達日射を抑制した状態、好ましくは遮断した状態で、外光(建物に室外から入射する光、例えば太陽光など)による室内照度を最大限に確保可能な、ブラインドのスラット角度の最適値を算出する。この最適値の算出にあたってはシミュレーション技術を応用できる。
【0020】
最適スラット角度導出部16は、外光の入射方向とブラインド面とのなす角、建物の方位データと、ブラインド特性などを参照し、これらの情報に基づいて最適値を算出する。
【0021】
なお最適スラット角度導出部16は最適値のみを算出するとは限らない。すなわち最適スラット角度導出部16は、外光の入射方向とブラインドの設置面とのなす角と、ブラインドの特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のためのブラインドのスラット角度の推奨値を算出する。推奨値は最適値と一致するケースもあるし、最適値を含む一定の範囲の数値であるケースもある。
【0022】
室内照度推定部17は、外光による室内照度を、外光照度(日射量)と、ブラインドの外光の導入特性(ブラインド特性の一つ)とに基づいて算出する。電力削減可能量推定部18は、室内における照明機器の電力の削減可能量(電力削減可能量)を、室内照度推定部17により算出された外光による室内照度と、室内の照度設定値とに基づいて算出する。データ送受信部14は、算出された電力削減可能量を、需要側各設備における電力削減を司る上位システムとしての消費電力削減指令部30に、通信ネットワークを介して送信する。
【0023】
データ送受信部14、最適設定通知部15はサーバ装置1とその外部との通信機能を担うインタフェースである。データ送受信部14は消費電力削減指令部30をはじめとする上位制御系とのデータの授受を担う。最適設定通知部15は、スラット角度の最適値、推奨値、減光パターンなどのデータをユーザ端末40に伝達する。ユーザ端末40は通知されたデータを画面に表示するなどしてユーザに伝える。
【0024】
なお電力削減可能量推定部18は、室内照度推定部17により算出された室内照度に基づいて、室内の照明機器の減光パターンも算出する。この減光パターンは、最適設定通知部15からユーザ端末40を介してユーザに伝えられる。
減光パターンとは、複数配設される照明機器のうちどれを点灯/消灯するかを示す情報である。照明機器(蛍光灯、LEDなど)が例えばアレイ状に配設されているとすれば、例えば一つおきに点灯、消灯を繰り返すパターンが例として挙げられる。どの照明機器をオン/オフするかに応じて多様な態様の減光パターン(減光態様)が考えられる。
【0025】
次に、上記構成における作用を説明する。以下の説明では太陽光を外光として説明する。
図3は、図2に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャートである。処理が開始されると、サーバ装置1はブラインドの最適スラット角度を算出する(ステップS1)。このステップでは、最適スラット角度導出部16が、壁面方位角(建物各面の方角)、ブラインド面の方向、ブラインドのスラット幅やスラット間隔、外光照度計測部12にて計測された全天日射による外光照度などに基づいて、室内への直達日射を避けつつ、天空日射による最大限の室内照度を確保可能なスラット角度の最適値を算出する。この最適値の算出に要するデータは建物情報入力部11を介してサーバ装置1に入力される。
【0026】
次にサーバ装置1は、外光による室内照度を室内の各点について算出する(ステップS2)。この算出された値は推定値として位置づけられる。このステップでは、室内照度推定部17が、外光照度計測部12により計測された天空日射による外光照度、ステップS1で算出された最適スラット角度、および、ブラインド特性を用いて室内照度を算出する。ここで用いられるブラインド特性は、外光(天空日射)による照度とブラインドのスラット角度との関係を示すデータで、建物情報入力部11を介してサーバ装置1に入力される。
【0027】
次にサーバ装置1は、電力削減可能量と減光パターンとを算出する(ステップS3)。このステップでは、電力削減可能量推定部18が、照明特性および現時点での照明消費電力を用いて電力削減可能量と減光パターンとを算出する。ここで用いられる照明特性は光束、各照明機器の配光特性、消費電力、照明機器の配置間隔、照度設定値などであり、建物情報入力部11を介してサーバ装置1に入力される。現時点での照明消費電力は消費電力受信部13において受信される量である。
【0028】
次にサーバ装置1は、ステップS3で算出された電力削減可能量をデータ送受信部14から通信ネットワークを介して消費電力削減指令部30に送信する(ステップS4)。
次にサーバ装置1は、消費電力削減指令部30からの電力削減指令を待ち受ける(ステップS5)。データ送受信部14を介して電力削減指令を受信すると(ステップS5でYES)、サーバ装置1は、ステップS1で算出したブラインドの最適スラット角度と、ステップS4で算出した照明機器の減光パターンとを、最適設定通知部15を介してユーザ端末40に送信する(ステップS6)。これを受けてユーザ端末40はスラット角度の最適値と減光パターンとを、モニタ表示あるいは音声による報知などによりユーザに伝える。
【0029】
図4は、ユーザ端末40における画面表示内容の一例を示す図である。ユーザ端末40はスラット角度の最適値(ここでは23°とする)を伝達されると、インストールされたソフトウェアによる処理のもとで、例えば「おすすめスラット角度 : 23°」なる文字表示や、スラット角度をビジュアルに示す模式図などをモニタ画面に表示する。
【0030】
画面表示はユーザへのいわゆる操作ガイドとしての位置づけにあり、よって表示内容は最適値だけに限らない。ようするに、推奨値や、最適値を含むある程度の範囲の数値、あるいはグラフィックイメージを表示するようにすれば良い。例えばスラット角度に関して、「全開」、「半開」、「全閉」などの3段階の表示でも良いケースもある。
【0031】
なお実施形態ではユーザ端末40としてブラインド操作者(ユーザ)が使用するパソコン端末を想定するが、これに限られるものではない。例えばユーザの携帯するモバイル端末〔PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話端末など〕に無線チャネルを介して通知データ(最適スラット角度や減光パターンなど)を伝送するようにしても良い。要するにユーザ端末は、制御装置1とユーザとのユーザインタフェースとしての機能を担う。次に、実施形態における消費電力削減支援方法につき詳しく説明する。
【0032】
<最適スラット角度の算出について>
図5は、ブラインドを真横から見た状態を示す図である。ブラインドに参照符号Bを付して示す。図5においてブラインド軸から右側を窓側(外側)とし、左側を室内側とする。
一般に照明機器の輝度に比較して太陽からの直達日射の輝度は著しく大きいので、室内に直達日射を取り込むと在室者はまぶしさを感じ、不快感を覚える。また、強い指向性を持つ直達日射による採光は室内照度の分布を不均一にし、さらに、採光による照明電力の低減以上に冷房負荷の増大により空調消費電力の増加を引き起こす懸念がある。よって実施形態では、直達日射を避けた状態で天空日射により室内照度を最大限確保可能なスラット角度を、スラット角度の最適値として算出する。
最適スラット角度の算出のため、まず太陽位置を太陽高度h[度:deg.]と、ブラインドに対する太陽入射角φ[deg.]とをパラメータとして特定する。図5を参照して太陽高度hとブラインドの最適スラット角度の関係を説明する。
【0033】
図5においては太陽入射角φ=0[deg.]、すなわちブラインド面に対して垂直に太陽光線が入射する状態が示される。この状態では、ブラインドの最適スラット角度は、直達日射が入射しないように、ブラインドのスラット角度θB[deg.]を最小に設定した場合となる。
【0034】
これは、天空日射による採光を最大限とするには、室内から屋外を見渡せる視野面積を最大とする(ブラインドのスラット角度を最小にする)必要があるからである。なぜなら、天空日射は、上空や地表面などでの乱反射によって指向性を持たないからである。この状態でのブラインドの最適スラット角度は図5に示すように、上段スラット303の窓側端部と下段スラット304の室内側端部で直達日射を遮蔽しつつ、スラット角度θB[deg.]を最小とすることで実現できる。
【0035】
以下に、ブラインドの最適スラット角度θB[deg.]と太陽高度h[deg.]との、より一般的な関係を説明する。まず、ブラインドの垂直射影長さa[mm]を式(1)に、水平射影長さb[mm]を式(2)に示すように定める。ここで、スラット幅をS[mm]とする。
【数1】
【0036】
式(1)、(2)によれば、ブラインド最適スラット角度θBに対応する太陽高度hの関係は式(3)により示される。ここで、スラット間隔をZとする。
【数2】
【0037】
式(3)の関係から、最適スラット角度θBについて、式(4)が得られる。
【数3】
【0038】
式(4)をθBについて解くことで、最適スラット角度を算出することができる。次に、太陽入射角φ[deg.]に対するブラインドの最適スラット角度の変化を説明する。
【0039】
図6は、ブラインドスラット面401を上から見下ろした状態を示す図である。図6には、太陽入射角φと直達日射のブラインドスラット面上における全水平射影長さとの関係が示される。
【0040】
太陽入射角φ=0[deg.]であれば、直達日射403のスラット面上における全水平射影長さは、2・b[mm]となる(図5のケース)。太陽入射角φ≠0[deg.]であれば、直達日射のスラット面上における全水平射影長さは(2・b)/cosφ[mm]となる。この関係を式(3)に組み込むと、太陽入射角φを考慮した、ブラインド最適スラット角度θBに対応する太陽高度hは式(5)の関係になる。
【数4】
【0041】
この関係から、最適スラット角度θBについて式(6)が得られる。
【数5】
【0042】
式(6)をθBについて解くことにより、最適スラット角度を算出することができる。
【0043】
図7は、第1の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図である。第1の条件では、ブラインドのスラット幅S:30[mm]、スラット間隔Z:30[mm]、太陽入射角φ=0[deg.]とする。
【0044】
図7によれば、太陽高度hが45[deg.]以上であればブラインドスラット角度を0[deg.](水平全開)とする。太陽高度hが45[deg.]より低くなれば、最適スラット角度推移に従ってスラット角度を調整するようにする。最適スラット角度推移は太陽高度に対して線形に変化することがわかる。
日の入り直前、または日の出直後のように、太陽高度hが0[deg.]近傍であれば、ブラインドスラット角度を90[deg.](垂直全閉)として、直達日射の室内への入射を防ぐようにする。
【0045】
図8は、第2の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図である。第2の条件では、ブラインドのスラット幅S:40[mm]、スラット間隔Z:30[mm]、太陽入射角φ=0[deg.]とする。
【0046】
図8によれば、太陽高度hが約37[deg.]以上であればブラインドスラット角度を0[deg.](水平全開)とする。太陽高度hが約37[deg.]より低くなれば最適スラット角度推移に従ってスラット角度を調整するようにする。太陽高度hが0[deg.]近傍であれば、ブラインドスラット角度を約50[deg.]とすることで直達日射の室内への入射を防ぐことができる。以上のような計算により、直達日射を遮断しつつ、天空日射による外光の照度を最大限確保可能なブラインドの最適スラット角度を算出することができる。
【0047】
なお、スラット角度の設定にあたり、全天日射による外光照度(外光照度計測部12により計測される量)を考慮するようにしても良い。つまり、全天日射による外光照度の値が或る閾値以下であれば、直達日射は雲に遮蔽されているとして、ブラインドのスラット角度を0[deg.]としても良い。また夜間においては照明機器の反射光による照度を期待できるので、ブラインドのスラット角度を90[deg.](垂直全閉)とすると良い。
【0048】
<室内照度の推定について>
次に、外光による室内照度を算出(推定)する手順につき説明する。この手順では、ブラインドのスラット角度と外光(天空日射)による室内照度との関係(ブラインド特性、建物情報入力部11により入力される)を用いて、外光照度計測部12により計測された外光照度とステップS1で算出された最適スラット角度とに基づいて、外光による室内照度を算出する。
【0049】
図9は、ブラインド特性の一例を表すグラフを示す図である。このブラインド特性は室内照度の算出に用いることができる。図9に示されるブラインド特性は、建物北面に設置されたブラインドにおいて、スラット角度を0[deg.](水平全開)から90[deg.](垂直全閉)まで変化させたときの、ブラインド直近での外光のみによる照度を測定した結果を示す。なお北半球における建物北面には、直達日射が少なく天空日射が支配的であるという特徴がある。
【0050】
ブラインド特性は、関数または表(テーブル)として建物情報入力部11に入力される。なお図9に示される、スラット角度が90[deg.]である状態に対応する照度バイアスIMIN[ルクス:lx]は、直達日射の透過分を考慮して、各面のブラインドごとに任意に設定しても良い。
【0051】
図9に示すブラインド特性に、ステップS1で算出されたブラインドの最適スラット角度θB[deg.]を入力すると、外光による室内照度を推定するための基準照度IB[lx]が式(7)により求まる。
【数6】
【0052】
外光は時刻や天候により変動する。そこで、ブラインド特性を測定した際のスラット角度を0[deg.]とした場合の最大照度IMAX[lx]と、外光照度計測部12により計測された天空日射による外光照度IOUT[lx]とを用いて、基準照度IBを補正して、ブラインド直近での外光による照度I0[lx]を式(8)を用いて推定する。
【数7】
【0053】
式(8)により求められたブラインド直近での外光による照度I0[lx]を用いて、例えば式(9)により、ブラインドからの座標(Xp、Yp、Zp)[m]の任意点における室内照度IX[lx]を推定する。
【数8】
【0054】
ここでa0[m]はブラインド面のX座標を示す。照度を計算する室内任意点と、ブラインドとの位置関係を図10に示す。
【0055】
図10は、基準座標系をブラインドに固定した場合の室内任意点の座標を説明するための図である。式(9)においては図10の基準座標系が用いられる。例えば四辺形のブラインドの一つの頂点を原点とし、直行するX軸、Y軸、Z軸を設定することで、室内任意点の位置を表現することができる。
【0056】
<照明機器の電力削減可能量の算出について>
以上の手順により、外光による室内照度IX[lx]を室内の任意点について算出することができる。次に、任意点における室内照度IXを用いて照明に要する電力の削減可能な量を推定する手順につき説明する。外光による採光のみでは室内の照度設定値IX-SP[lx]を満足できないケースがある。そこで、先ず、照明機器に要求される機器要求照度IX-L[lx]を式(10)を用いて算出する。
【数9】
【0057】
この機器要求照度IX-Lと、建物情報入力部11に入力された照明特性とにより、照明機器の減光パターンと電力消費量とを推定ことができる。図11を参照してこのことを説明する。
【0058】
図11は、異なる減光パターンごとの照度と消費電力との関係を示す図である。図11には、各減光パターン〔(1)〜(4)として区別する〕において、照明のみによる照度と消費電力との関係の、推定された情報が示される。
【0059】
式(10)を用いて算出された機器要求照度IX-L[lx]に対して、これを上回りつつ最も近い照度を実現する減光パターン(消灯パターン)を選択するようにする。このときの消費電力が照明系統iの消費電力Ei[kW]となる。
【0060】
需要側全体での照明消費電力量E[kW]は全ての照明系統の消費電力の総計であり、式(11)により示される。
【数10】
【0061】
式(11)のE[kW]と、消費電力受信部13により受信した現時点での照明消費電力ER[kW]とを用いて、式(12)により、照明の電力削減可能量ΔE[kW]を算出することができる。
【数11】
【0062】
図12は、減光パターンの一例を示す図である。図12には、外光照度の強弱に応じた減光パターンの違いが例示される。図12には、室内の平面図に照明機器の配置が重ねて示される。オンされている照明機器をハッチングで示す。外光の強さに応じて例えば3種類の減光パターンが示される。
【0063】
オフされる照明機器の数を、外光が強ければ強いほど多くすることで省エネルギーを促すことができる。各パターンにおいて、(外光 中、強)に示されるように、例えば窓から遠い位置の照明機器をより多くオンにすると良い。なお外光照度はすでに算出されているので、ユーザ端末40に伝達される減光パターンは1種類である。
【0064】
ユーザはブラインドを操作して、伝えられた最適スラット角度にスラット角度を設定することにより、外光を室内に最大限に取り込むことができるようになる。従って、室内の照度設定を満足しつつ、減光による電力消費量の削減が行える。
【0065】
以上説明したように第1の実施形態では、天空日射による外光照度をセンサにより計測する。または、外光照度は時刻、建物情報、日時などに基づいてシミュレーションにより算出することもできる。この外光照度と建物情報とに基づいて、建物各面において室内への直達日射を避けつつ外光(天空日射)を最大限取り込むことができるブラインドのスラット角度の最適値を算出する。
【0066】
次に、スラット角度を最適値とした場合の外光による室内各点の照度を算出し、これをもとに現状の照明消費電力ならびに照明機器の特性を用いて、室内の利便性(照度)を確保した上での減光パターンおよび電力削減可能量を算出する。この電力削減可能量を外部(例えば照明以外の設備の監視・制御を司るシステムや電力会社のシステム)に送信し通知することで、スマートグリッド環境下でのトータルソリューションとして最適な電力削減を実現するための情報を提供する。また、例えば外部から電力削減指令を受けたことを契機として、算出された最適スラット角度をユーザに伝え、スラット角度の調整を促す。
【0067】
特に重要となるのは外光による室内照度の取り扱いである。外光による室内照度は、天候により変動してしまう日射量と、ブラインドのスラット角度によって大きく変化する。しかし、一つ一つのブラインドスラット角度を把握するには多数の計測装置が必要となり、手間やコストなどの負担が大きい。
【0068】
第1の実施形態によれば、ブラインドごとで異なるスラット角度を最適角度に調整するようにユーザを促すことで、多数の計測/制御装置(ブラインドの角度センサ、室内各位置の照度計、調光制御機など)を不要としつつ、外光による照度を最大限確保して、事前に推定した通りに照明消費電力の削減を図ることが可能になる。
【0069】
オフィスビルなどにおける電力は、その約2割を照明設備により消費されている。第1の実施形態によればブラインドのスラット角度の最適化により照明電力を抑制することができるようになり、電力消費量の削減に大きく貢献することが可能になる。すなわち、ユーザにブラインドのスラット角度を最適値に設定するように促すことによって室内に外光を最大限取り込むことができ、よって照明を減光したとしても、室内照度設定値を満足しつつ正確な消費電力の削減が可能となる。つまりユーザに最適なブラインド角度と、減光パターン(外光をこれだけ採光できるので、この箇所の照明機器を消せますよと言う情報)とを知らせることにより、見える化を促して省エネを促進することができる。
さらに、デマンドレスポンス環境において、室内照度および削減可能な電力消費量を事前に推定することで、室内の利便性、快適性を維持しつつ事前に見積もった通りの正確な電力制御が可能となる。
【0070】
これらのことから、電力消費を抑えることの可能な消費電力削減支援システム、消費電力削減支援装置、消費電力削減支援方法およびプログラムを提供することが可能となる。
【0071】
[第2の実施形態]
図13は、第2の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図である。図13において図2と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。第2の実施形態では、室内照明の調光制御手段を備える建物システムを想定する。システムはさらに、この調光制御手段に付随して室内照度センサ(図示せず)を備える。すなわち第2の実施形態では、室内照度センサにより計測される室内照度を適正値に保つべく、照明機器の光束が自動制御されるシステムを想定する。
【0072】
図14は、図13に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャートである。ステップS11〜ステップS15は、図2のステップS1〜ステップS5と同様である。すなわち、制御装置2における電力削減可能量推定部18は、建物情報入力部11に入力された照明特性(照明機器の配置間隔、光束、配光特性、消費電力、照度設定値など)、および、消費電力受信部13で受信した現状での照明消費電力を用いて、電力削減可能量を算出する。この電力削減可能量はデータ送受信部14を介して消費電力削減司令部30に送信される。
図14のステップS16において、最適スラット角度導出部16により算出された最適スラット角度は、最適スラット角度通知部19を解してユーザ端末41に通知される。ユーザ端末41は最適スラット角度をユーザに通知する。
【0073】
第2の実施形態によれば、照明機器を制御する自動制御系を備えるシステムにおいて、ブラインドの最適角度が算出されてユーザに伝えられる。すなわちユーザは外光を最大限取り入れ可能なブラインドのスラット角度を設定するだけで、制御系の機能により、事前に推定した通りの室内照度環境と、減光による照明消費電力の削減とを実現することが可能になる。以上により第1の実施形態と同様の効果に加え、ユーザ負担を軽減することができるようになる。
【0074】
[第3の実施形態]
図15は、第3の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図である。図15において図2、図13と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
図15に示す制御装置3は、人物在/不在情報受信部20を備える。人物在/不在情報受信部20は、カメラ、赤外線、オフィス室内における各人のパソコンの状態、体温センサなどにより、室内任意点における人物の在、および不在を検知するものである。ここでいう任意点は、人が存在すると考えられる、床に近い位置に限定しても良い。
【0075】
さらには、近年発達の著しい電話通信分野における技術を応用することもできる。例えばSIP(Session Initiation Protocol)を利用するIP(Internet Protocol)電話システムにおいては、プレゼンス管理と称して人物の在/不在を含む情報を管理できるようになっている。これを応用して、SIPサーバから人物の在/不在情報を人物在/不在情報受信部20に通知するようにしても良い。
【0076】
図16は、図15に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて特徴的な点は、ステップS23の電力削減可能量演算処理において、照明特性および照明消費電力に加え、人物の在/不在を示す情報を電力削減可能量推定部18に与える点にある。電力削減可能量推定部18はこれらの情報に基づいて、電力削減可能量と減光パターンを算出する。つまり減光パターンの算出にあたり人物が不在の位置を重点的に消灯し、人物が存在する位置においては点灯するようにすれば良い。
【0077】
図17は、減光パターンの他の例を示す図である。図17には、外光照度の強弱と人物位置による減光パターンの違いが示される。縦長の楕円形で人物の在位置を示す。図17には、外光の弱〜強に応じた3種類の消灯パターンが示される。なお外光照度は既に算出されているので、実際にユーザに伝えられる消灯パターンは1種類である。
【0078】
人物の在が確認された位置の直近の照明機器については点灯を基本とするが、窓側近傍では外光の影響により、減光しても室内照度設定を満足するケースが多い。例えば外光が強いケースでは人物の在位置のうち最も窓から遠い位置の照明機器をオンするほうが、よりインテリジェントな制御といえる。外光照度が弱まるにつれ、人物の在位置を優先的に点灯していくと効率的である。
【0079】
このように第3の実施形態では、外光による室内照度と人物の在/不在情報とをもとに、照明機器の減光パターンとその際の消費電力を算出するようにしている。このようにしたので第1の実施形態と同様の効果を得られるのに加え、室内における人物の在/不在状況に応じたきめ細かな減光制御により、よりいっそうの照明消費電力の低減を実現することが可能になる。
【0080】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えばブラインドに代えてカーテンを遮光手段として用いることもできる。その場合の制御量としてはカーテンの開度、あるいは複数のカーテンの組み合わせ(レースカーテン、遮光カーテンの組み合わせの種類など)が考えられる。
【0081】
また実施形態では外光の一例として太陽光を示し、天空日射による室内照度を議論の対象にした。これに限らず、隣の部屋の照明による明るさや、夜間においては街灯、ネオンなどの光も外光の例として挙げることが可能である。
また、外光照度計測部12として、建物に取り付けられた太陽電池を利用することも可能である。
図18は、太陽電池を備える建物の一例を示す図である。建物の屋根、あるいは壁面には太陽電池200が取り付けられ、その出力がダイオード150を介して室内に導かれる。ダイオードの出力は蓄電池160に導かれて蓄電されるとともに、配電盤180を介してコンセントCから室内各部に供給される。各種の制御はコントローラ170により実施される。コントローラ170には、室内照度を計測する照度センサ4aが接続されることもある。なお太陽電池をブラインドに搭載することもできる。近年ではシースルーの太陽電池も提供されている。
【0082】
このような形態にあっては、太陽電池200の出力をモニタすることで外光照度を定量的かつリアルタイムに計測することが可能になる。コントローラ170に、建物情報入力部11、消費電力受信部13、最適設定通知部15、データ送受信部14、最適スラット角度導出部16、室内照度推定部17、電力削減可能量推定部18などの機能を組み込むことにより実施形態に係わる制御装置として運用することができ、建物における電力消費量を削減することができる。
【0083】
さらに、室温センサを室内に設け、照明および室温の双方の観点からの省エネルギーを目指すことも可能である。つまり外光を過度に取り入れると、季節によっては室温があがりすぎ、エアコンの電力消費量が嵩んでかえって不経済になるケースがある。このような事態を避けるため、スラットを多めに閉めて外光の取入れを削減しつつ部屋の温度上昇を抑える機能をプログラムに組み込めば、さらにインテリジェントなシステムを実現できる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1,2,3…サーバ装置、40,41…ユーザ端末、30…消費電力削減指令部、11…建物情報入力部、12…外光照度計測部、13…消費電力受信部、16…最適スラット角度導出部、17…室内照度推定部、18…電力削減可能量推定部、15…最適設定通知部、14…データ送受信部、303…上段スラット、304…下段スラット、19…最適スラット角度通知部、20…人物在/不在情報受信部、200…太陽電池、150…ダイオード、160…蓄電池、180…配電盤、170…コントローラ、4a…照度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ビルや工場などの建物における省エネルギーを支援する消費電力削減支援システム、消費電力削減支援装置、消費電力削減支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出量削減に向けて、ビルや家庭などの需要側における電力消費量の削減(省エネ)を求められている。近年では省エネルギー法が改正されるなど、法規制も強化され省エネに向けた取り組みの重要性はますます大きくなってきている。
次世代の電力系統では、電力系統を安定して運用するために電力需要側の電力消費量をインテリジェントに制御することが想定されている。すなわち電力の供給側と需要側との間に通信環境を構築し、需要側での電力消費量を供給側で監視することなどを可能とする旧来にはない電力供給網が形成されようとしている。
【0003】
このような次世代の電力インフラが整備された環境下で、需要側の電力消費量を適時に適量だけ制御できるようにする技術が求められている。この種の技術により、需要側のメリットである省エネ効果に加えて、電力系統の安定化にも寄与することが可能になる。需要側における電力制御手法としては、例えば建物の30分間の積算受電量を監視して電力削減を図るデマンド制御が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3315741号公報
【特許文献2】特開2010−222885号公報
【特許文献3】特許第3302800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
旧来のデマンド制御は予め設定したシーケンスに従い空調などの消費電力量を削減するもので、契約電力を超過しないように需要側の電力消費を抑制するのが一般的である。次世代配電網ではこれを推し進めて、需要側が契約電力を超過しそうにない状況においても、供給側などから電力消費量の削減要請が与えられるようにすることで、電力系統のさらなる安定化を図れるようにすることが想定される。
【0006】
旧来のデマンド制御では電力負荷が機械的あるいは盲目的に抑制/遮断されるので、需要側建物室内における快適性や利便性が損なわれ、電力削減に不具合を生じるケースがある。よって快適性や利便性などを考慮したうえで、削減可能な電力量を事前に推定できるようにすることが求められる。
目的は、電力消費を抑えることの可能な消費電力削減支援システム、消費電力削減支援装置、消費電力削減支援方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援システムは、計測部と、室内照度算出部と、電力削減可能量算出部とを具備する。計測部は、建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する。室内照度算出部は、計測された外光照度に基づいて光による室内照度を算出する。電力削減可能量算出部は、算出された室内照度に基づいて、室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係わるシステムの一例を示す図。
【図2】第1の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図。
【図3】図2に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャート。
【図4】ユーザ端末40における画面表示内容の一例を示す図。
【図5】ブラインドを真横から見た状態を示す図。
【図6】ブラインドスラット面401を上から見下ろした状態を示す図。
【図7】第1の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図。
【図8】第2の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図。
【図9】ブラインド特性の一例を表すグラフを示す図。
【図10】基準座標系をブラインドに固定した場合の室内任意点の座標を説明するための図。
【図11】異なる減光パターンごとの照度と消費電力との関係を示す図。
【図12】減光パターンの一例を示す図。
【図13】第2の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図。
【図14】図13に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャート。
【図15】第3の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図。
【図16】図15に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャート。
【図17】減光パターンの他の例を示す図。
【図18】太陽電池を備える建物の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係わるシステムの一例を示す図である。図1には、いわゆるスマートグリッドとして知られる電力配電網の一例が示される。既存の電力送配電網は、原子力、火力、水力などの既存発電所と、一般家庭や、ビル、工場といった多種多様な需要家が電力網によって接続される。スマートグリッドではこれらに加えて、新たな電源として太陽光や風力といった自然エネルギーと蓄電池を組み合わせた分散型電源や、新たな需要として新交通システムや充電スタンドなどが電力送配電網に接続される。
【0010】
これらの新旧の電源と需要を効率的に連携するスマートグリッド監視制御システムはμEMS(Micro Energy Management System)(登録商標)と称される。さらに、需要家側にも小規模な分散型電源が配備されるが、これらの制御のために、一般家庭向けにHEMS(Home Energy Management System)、ビル向けにBEMS(Building Energy Management System)が導入される。また、さらに大口の工場向けにはFEMS(Factory Energy Management System)が導入され(図示せず)、よりきめ細かな電力制御を実現する。現状では、これらのシステムは需要家内での自律的なエネルギー管理の実現にとどまっているが、将来的にはμEMSなどと連携して系統全体のエネルギー管理の一役を担うことになると期待される。
【0011】
上記システムによれば、既存の発電所と分散型電源、さらに需要家との間で高度な協調運用が可能になる。これにより電力系統への影響を極小化しつつ、太陽光や風力などの自然エネルギーを豊富に取り込んだ地域エネルギー供給システム、あるいは需要家と電源とのスマートな双方向連系による需要家参加型のデマンドレスポンスといった新しい形態の電力供給サービスが生み出される。
【0012】
次世代の電力系統では電力系統を安定して運用するために電力需要側の電力消費量を制御する「デマンドレスポンス」が想定されている。デマンドレスポンスとは、電力の供給側と需要側との間に構築される通信環境を用いて、供給側から需要側に対してなされた要求に需要側が応じることである。
【0013】
[第1の実施形態]
図2は、第1の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図である。実施形態では、建物の窓際に設けられるブラインドのスラット角度の最適な値を算出してユーザに伝えることで、見える化を促すことの可能な構成を示す。見える化を促すことにより、実施形態のシステムは建物の電力消費量の削減を支援する。ブラインドはスラット角度を制御量として与えられる、光の遮光量を可変可能な遮光手段の一例として捉えることができる。
【0014】
図2に示すシステムはサーバ装置1を中核として形成される。サーバ装置1は、建物における消費電力の削減を支援するコンピュータとして位置づけられる。サーバ装置1は例えばビル内のオペレーションルームのラック架台などに設置される情報処理機器(コンピュータ)である。このほか、サーバ装置1をデータセンタなどに据え付けて使用することもできる。サーバ装置1は、電力需要側の建物内などに設置されるユーザ端末40と、電力供給側に設けられる消費電力削減指令部30とに接続される。この接続にあたっては専用線やVPN(Virtual Private network)、LAN(Local Area Network)などを用いることができる。
【0015】
サーバ装置1は、建物情報入力部11、外光照度計測部12、消費電力受信部13、最適スラット角度導出部16、室内照度推定部17、電力削減可能量推定部18、最適設定通知部15、および、データ送受信部14を備える。このうち外光照度計測部12を、通信回線を介して外付けにすると配置の自由度が増す。
【0016】
建物情報入力部11、外光照度計測部12、消費電力受信部13は、外部から与えられる情報(データや制御信号など)の入力インタフェースとして機能する。建物情報入力部11は、建物情報をサーバ装置1に与える。建物情報は、壁面方位角(建物各面の方角)、ブラインドのスラット幅やスラット間隔、ブラインドの設置面(あるいはブラインド面)の方向、ブラインドの特性情報(ブラインドのスラット角度ごとの外光(天空日射)による照度の関係など:ブラインド特性と総称する)、照明特性(建物内照明機器の光束、配光特性、消費電力、配置間隔、照度設定値など)などの情報である。
建物情報入力部11は、サーバ装置1に備わるキーボードやマウスなどのユーザインタフェースの形態をとっても良いし、または、必要なデータを書き込まれたディスク媒体やUSB(Universal Serial Bus)などの記憶媒体であっても良い。あるいは、ユーザ端末40を用いてサーバ装置1に建物情報を与えるようにしても良い。
【0017】
外光照度計測部12は例えば建物の外壁、窓際、あるいは室内の間仕切り壁などに取り付けられた照度センサ(ルクスメータ)であり、建物の室内に外部から、あるいは隣室から照射される光の照度である外光照度をセンサ値として計測する。
【0018】
最適スラット角度導出部16、室内照度推定部17、電力削減可能量推定部18は、例えばメインメモリにロードされたプログラムに記載されたコマンド列に沿って、サーバ装置1(コンピュータ)のCPU(Central Processing Unit)に演算処理を行わせることで実現される、ソフトウェアによる処理機能である。なお他の処理ブロック、すなわち建物情報入力部11、外光照度計測部12、消費電力受信部13、最適設定通知部15、および、データ送受信部14も、この種の処理モジュールとして実現可能である。
【0019】
最適スラット角度導出部16は、ブラインドの設置される室内への直達日射を抑制した状態、好ましくは遮断した状態で、外光(建物に室外から入射する光、例えば太陽光など)による室内照度を最大限に確保可能な、ブラインドのスラット角度の最適値を算出する。この最適値の算出にあたってはシミュレーション技術を応用できる。
【0020】
最適スラット角度導出部16は、外光の入射方向とブラインド面とのなす角、建物の方位データと、ブラインド特性などを参照し、これらの情報に基づいて最適値を算出する。
【0021】
なお最適スラット角度導出部16は最適値のみを算出するとは限らない。すなわち最適スラット角度導出部16は、外光の入射方向とブラインドの設置面とのなす角と、ブラインドの特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のためのブラインドのスラット角度の推奨値を算出する。推奨値は最適値と一致するケースもあるし、最適値を含む一定の範囲の数値であるケースもある。
【0022】
室内照度推定部17は、外光による室内照度を、外光照度(日射量)と、ブラインドの外光の導入特性(ブラインド特性の一つ)とに基づいて算出する。電力削減可能量推定部18は、室内における照明機器の電力の削減可能量(電力削減可能量)を、室内照度推定部17により算出された外光による室内照度と、室内の照度設定値とに基づいて算出する。データ送受信部14は、算出された電力削減可能量を、需要側各設備における電力削減を司る上位システムとしての消費電力削減指令部30に、通信ネットワークを介して送信する。
【0023】
データ送受信部14、最適設定通知部15はサーバ装置1とその外部との通信機能を担うインタフェースである。データ送受信部14は消費電力削減指令部30をはじめとする上位制御系とのデータの授受を担う。最適設定通知部15は、スラット角度の最適値、推奨値、減光パターンなどのデータをユーザ端末40に伝達する。ユーザ端末40は通知されたデータを画面に表示するなどしてユーザに伝える。
【0024】
なお電力削減可能量推定部18は、室内照度推定部17により算出された室内照度に基づいて、室内の照明機器の減光パターンも算出する。この減光パターンは、最適設定通知部15からユーザ端末40を介してユーザに伝えられる。
減光パターンとは、複数配設される照明機器のうちどれを点灯/消灯するかを示す情報である。照明機器(蛍光灯、LEDなど)が例えばアレイ状に配設されているとすれば、例えば一つおきに点灯、消灯を繰り返すパターンが例として挙げられる。どの照明機器をオン/オフするかに応じて多様な態様の減光パターン(減光態様)が考えられる。
【0025】
次に、上記構成における作用を説明する。以下の説明では太陽光を外光として説明する。
図3は、図2に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャートである。処理が開始されると、サーバ装置1はブラインドの最適スラット角度を算出する(ステップS1)。このステップでは、最適スラット角度導出部16が、壁面方位角(建物各面の方角)、ブラインド面の方向、ブラインドのスラット幅やスラット間隔、外光照度計測部12にて計測された全天日射による外光照度などに基づいて、室内への直達日射を避けつつ、天空日射による最大限の室内照度を確保可能なスラット角度の最適値を算出する。この最適値の算出に要するデータは建物情報入力部11を介してサーバ装置1に入力される。
【0026】
次にサーバ装置1は、外光による室内照度を室内の各点について算出する(ステップS2)。この算出された値は推定値として位置づけられる。このステップでは、室内照度推定部17が、外光照度計測部12により計測された天空日射による外光照度、ステップS1で算出された最適スラット角度、および、ブラインド特性を用いて室内照度を算出する。ここで用いられるブラインド特性は、外光(天空日射)による照度とブラインドのスラット角度との関係を示すデータで、建物情報入力部11を介してサーバ装置1に入力される。
【0027】
次にサーバ装置1は、電力削減可能量と減光パターンとを算出する(ステップS3)。このステップでは、電力削減可能量推定部18が、照明特性および現時点での照明消費電力を用いて電力削減可能量と減光パターンとを算出する。ここで用いられる照明特性は光束、各照明機器の配光特性、消費電力、照明機器の配置間隔、照度設定値などであり、建物情報入力部11を介してサーバ装置1に入力される。現時点での照明消費電力は消費電力受信部13において受信される量である。
【0028】
次にサーバ装置1は、ステップS3で算出された電力削減可能量をデータ送受信部14から通信ネットワークを介して消費電力削減指令部30に送信する(ステップS4)。
次にサーバ装置1は、消費電力削減指令部30からの電力削減指令を待ち受ける(ステップS5)。データ送受信部14を介して電力削減指令を受信すると(ステップS5でYES)、サーバ装置1は、ステップS1で算出したブラインドの最適スラット角度と、ステップS4で算出した照明機器の減光パターンとを、最適設定通知部15を介してユーザ端末40に送信する(ステップS6)。これを受けてユーザ端末40はスラット角度の最適値と減光パターンとを、モニタ表示あるいは音声による報知などによりユーザに伝える。
【0029】
図4は、ユーザ端末40における画面表示内容の一例を示す図である。ユーザ端末40はスラット角度の最適値(ここでは23°とする)を伝達されると、インストールされたソフトウェアによる処理のもとで、例えば「おすすめスラット角度 : 23°」なる文字表示や、スラット角度をビジュアルに示す模式図などをモニタ画面に表示する。
【0030】
画面表示はユーザへのいわゆる操作ガイドとしての位置づけにあり、よって表示内容は最適値だけに限らない。ようするに、推奨値や、最適値を含むある程度の範囲の数値、あるいはグラフィックイメージを表示するようにすれば良い。例えばスラット角度に関して、「全開」、「半開」、「全閉」などの3段階の表示でも良いケースもある。
【0031】
なお実施形態ではユーザ端末40としてブラインド操作者(ユーザ)が使用するパソコン端末を想定するが、これに限られるものではない。例えばユーザの携帯するモバイル端末〔PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話端末など〕に無線チャネルを介して通知データ(最適スラット角度や減光パターンなど)を伝送するようにしても良い。要するにユーザ端末は、制御装置1とユーザとのユーザインタフェースとしての機能を担う。次に、実施形態における消費電力削減支援方法につき詳しく説明する。
【0032】
<最適スラット角度の算出について>
図5は、ブラインドを真横から見た状態を示す図である。ブラインドに参照符号Bを付して示す。図5においてブラインド軸から右側を窓側(外側)とし、左側を室内側とする。
一般に照明機器の輝度に比較して太陽からの直達日射の輝度は著しく大きいので、室内に直達日射を取り込むと在室者はまぶしさを感じ、不快感を覚える。また、強い指向性を持つ直達日射による採光は室内照度の分布を不均一にし、さらに、採光による照明電力の低減以上に冷房負荷の増大により空調消費電力の増加を引き起こす懸念がある。よって実施形態では、直達日射を避けた状態で天空日射により室内照度を最大限確保可能なスラット角度を、スラット角度の最適値として算出する。
最適スラット角度の算出のため、まず太陽位置を太陽高度h[度:deg.]と、ブラインドに対する太陽入射角φ[deg.]とをパラメータとして特定する。図5を参照して太陽高度hとブラインドの最適スラット角度の関係を説明する。
【0033】
図5においては太陽入射角φ=0[deg.]、すなわちブラインド面に対して垂直に太陽光線が入射する状態が示される。この状態では、ブラインドの最適スラット角度は、直達日射が入射しないように、ブラインドのスラット角度θB[deg.]を最小に設定した場合となる。
【0034】
これは、天空日射による採光を最大限とするには、室内から屋外を見渡せる視野面積を最大とする(ブラインドのスラット角度を最小にする)必要があるからである。なぜなら、天空日射は、上空や地表面などでの乱反射によって指向性を持たないからである。この状態でのブラインドの最適スラット角度は図5に示すように、上段スラット303の窓側端部と下段スラット304の室内側端部で直達日射を遮蔽しつつ、スラット角度θB[deg.]を最小とすることで実現できる。
【0035】
以下に、ブラインドの最適スラット角度θB[deg.]と太陽高度h[deg.]との、より一般的な関係を説明する。まず、ブラインドの垂直射影長さa[mm]を式(1)に、水平射影長さb[mm]を式(2)に示すように定める。ここで、スラット幅をS[mm]とする。
【数1】
【0036】
式(1)、(2)によれば、ブラインド最適スラット角度θBに対応する太陽高度hの関係は式(3)により示される。ここで、スラット間隔をZとする。
【数2】
【0037】
式(3)の関係から、最適スラット角度θBについて、式(4)が得られる。
【数3】
【0038】
式(4)をθBについて解くことで、最適スラット角度を算出することができる。次に、太陽入射角φ[deg.]に対するブラインドの最適スラット角度の変化を説明する。
【0039】
図6は、ブラインドスラット面401を上から見下ろした状態を示す図である。図6には、太陽入射角φと直達日射のブラインドスラット面上における全水平射影長さとの関係が示される。
【0040】
太陽入射角φ=0[deg.]であれば、直達日射403のスラット面上における全水平射影長さは、2・b[mm]となる(図5のケース)。太陽入射角φ≠0[deg.]であれば、直達日射のスラット面上における全水平射影長さは(2・b)/cosφ[mm]となる。この関係を式(3)に組み込むと、太陽入射角φを考慮した、ブラインド最適スラット角度θBに対応する太陽高度hは式(5)の関係になる。
【数4】
【0041】
この関係から、最適スラット角度θBについて式(6)が得られる。
【数5】
【0042】
式(6)をθBについて解くことにより、最適スラット角度を算出することができる。
【0043】
図7は、第1の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図である。第1の条件では、ブラインドのスラット幅S:30[mm]、スラット間隔Z:30[mm]、太陽入射角φ=0[deg.]とする。
【0044】
図7によれば、太陽高度hが45[deg.]以上であればブラインドスラット角度を0[deg.](水平全開)とする。太陽高度hが45[deg.]より低くなれば、最適スラット角度推移に従ってスラット角度を調整するようにする。最適スラット角度推移は太陽高度に対して線形に変化することがわかる。
日の入り直前、または日の出直後のように、太陽高度hが0[deg.]近傍であれば、ブラインドスラット角度を90[deg.](垂直全閉)として、直達日射の室内への入射を防ぐようにする。
【0045】
図8は、第2の条件下での最適スラット角度θBと太陽高度hとの関係を表すグラフを示す図である。第2の条件では、ブラインドのスラット幅S:40[mm]、スラット間隔Z:30[mm]、太陽入射角φ=0[deg.]とする。
【0046】
図8によれば、太陽高度hが約37[deg.]以上であればブラインドスラット角度を0[deg.](水平全開)とする。太陽高度hが約37[deg.]より低くなれば最適スラット角度推移に従ってスラット角度を調整するようにする。太陽高度hが0[deg.]近傍であれば、ブラインドスラット角度を約50[deg.]とすることで直達日射の室内への入射を防ぐことができる。以上のような計算により、直達日射を遮断しつつ、天空日射による外光の照度を最大限確保可能なブラインドの最適スラット角度を算出することができる。
【0047】
なお、スラット角度の設定にあたり、全天日射による外光照度(外光照度計測部12により計測される量)を考慮するようにしても良い。つまり、全天日射による外光照度の値が或る閾値以下であれば、直達日射は雲に遮蔽されているとして、ブラインドのスラット角度を0[deg.]としても良い。また夜間においては照明機器の反射光による照度を期待できるので、ブラインドのスラット角度を90[deg.](垂直全閉)とすると良い。
【0048】
<室内照度の推定について>
次に、外光による室内照度を算出(推定)する手順につき説明する。この手順では、ブラインドのスラット角度と外光(天空日射)による室内照度との関係(ブラインド特性、建物情報入力部11により入力される)を用いて、外光照度計測部12により計測された外光照度とステップS1で算出された最適スラット角度とに基づいて、外光による室内照度を算出する。
【0049】
図9は、ブラインド特性の一例を表すグラフを示す図である。このブラインド特性は室内照度の算出に用いることができる。図9に示されるブラインド特性は、建物北面に設置されたブラインドにおいて、スラット角度を0[deg.](水平全開)から90[deg.](垂直全閉)まで変化させたときの、ブラインド直近での外光のみによる照度を測定した結果を示す。なお北半球における建物北面には、直達日射が少なく天空日射が支配的であるという特徴がある。
【0050】
ブラインド特性は、関数または表(テーブル)として建物情報入力部11に入力される。なお図9に示される、スラット角度が90[deg.]である状態に対応する照度バイアスIMIN[ルクス:lx]は、直達日射の透過分を考慮して、各面のブラインドごとに任意に設定しても良い。
【0051】
図9に示すブラインド特性に、ステップS1で算出されたブラインドの最適スラット角度θB[deg.]を入力すると、外光による室内照度を推定するための基準照度IB[lx]が式(7)により求まる。
【数6】
【0052】
外光は時刻や天候により変動する。そこで、ブラインド特性を測定した際のスラット角度を0[deg.]とした場合の最大照度IMAX[lx]と、外光照度計測部12により計測された天空日射による外光照度IOUT[lx]とを用いて、基準照度IBを補正して、ブラインド直近での外光による照度I0[lx]を式(8)を用いて推定する。
【数7】
【0053】
式(8)により求められたブラインド直近での外光による照度I0[lx]を用いて、例えば式(9)により、ブラインドからの座標(Xp、Yp、Zp)[m]の任意点における室内照度IX[lx]を推定する。
【数8】
【0054】
ここでa0[m]はブラインド面のX座標を示す。照度を計算する室内任意点と、ブラインドとの位置関係を図10に示す。
【0055】
図10は、基準座標系をブラインドに固定した場合の室内任意点の座標を説明するための図である。式(9)においては図10の基準座標系が用いられる。例えば四辺形のブラインドの一つの頂点を原点とし、直行するX軸、Y軸、Z軸を設定することで、室内任意点の位置を表現することができる。
【0056】
<照明機器の電力削減可能量の算出について>
以上の手順により、外光による室内照度IX[lx]を室内の任意点について算出することができる。次に、任意点における室内照度IXを用いて照明に要する電力の削減可能な量を推定する手順につき説明する。外光による採光のみでは室内の照度設定値IX-SP[lx]を満足できないケースがある。そこで、先ず、照明機器に要求される機器要求照度IX-L[lx]を式(10)を用いて算出する。
【数9】
【0057】
この機器要求照度IX-Lと、建物情報入力部11に入力された照明特性とにより、照明機器の減光パターンと電力消費量とを推定ことができる。図11を参照してこのことを説明する。
【0058】
図11は、異なる減光パターンごとの照度と消費電力との関係を示す図である。図11には、各減光パターン〔(1)〜(4)として区別する〕において、照明のみによる照度と消費電力との関係の、推定された情報が示される。
【0059】
式(10)を用いて算出された機器要求照度IX-L[lx]に対して、これを上回りつつ最も近い照度を実現する減光パターン(消灯パターン)を選択するようにする。このときの消費電力が照明系統iの消費電力Ei[kW]となる。
【0060】
需要側全体での照明消費電力量E[kW]は全ての照明系統の消費電力の総計であり、式(11)により示される。
【数10】
【0061】
式(11)のE[kW]と、消費電力受信部13により受信した現時点での照明消費電力ER[kW]とを用いて、式(12)により、照明の電力削減可能量ΔE[kW]を算出することができる。
【数11】
【0062】
図12は、減光パターンの一例を示す図である。図12には、外光照度の強弱に応じた減光パターンの違いが例示される。図12には、室内の平面図に照明機器の配置が重ねて示される。オンされている照明機器をハッチングで示す。外光の強さに応じて例えば3種類の減光パターンが示される。
【0063】
オフされる照明機器の数を、外光が強ければ強いほど多くすることで省エネルギーを促すことができる。各パターンにおいて、(外光 中、強)に示されるように、例えば窓から遠い位置の照明機器をより多くオンにすると良い。なお外光照度はすでに算出されているので、ユーザ端末40に伝達される減光パターンは1種類である。
【0064】
ユーザはブラインドを操作して、伝えられた最適スラット角度にスラット角度を設定することにより、外光を室内に最大限に取り込むことができるようになる。従って、室内の照度設定を満足しつつ、減光による電力消費量の削減が行える。
【0065】
以上説明したように第1の実施形態では、天空日射による外光照度をセンサにより計測する。または、外光照度は時刻、建物情報、日時などに基づいてシミュレーションにより算出することもできる。この外光照度と建物情報とに基づいて、建物各面において室内への直達日射を避けつつ外光(天空日射)を最大限取り込むことができるブラインドのスラット角度の最適値を算出する。
【0066】
次に、スラット角度を最適値とした場合の外光による室内各点の照度を算出し、これをもとに現状の照明消費電力ならびに照明機器の特性を用いて、室内の利便性(照度)を確保した上での減光パターンおよび電力削減可能量を算出する。この電力削減可能量を外部(例えば照明以外の設備の監視・制御を司るシステムや電力会社のシステム)に送信し通知することで、スマートグリッド環境下でのトータルソリューションとして最適な電力削減を実現するための情報を提供する。また、例えば外部から電力削減指令を受けたことを契機として、算出された最適スラット角度をユーザに伝え、スラット角度の調整を促す。
【0067】
特に重要となるのは外光による室内照度の取り扱いである。外光による室内照度は、天候により変動してしまう日射量と、ブラインドのスラット角度によって大きく変化する。しかし、一つ一つのブラインドスラット角度を把握するには多数の計測装置が必要となり、手間やコストなどの負担が大きい。
【0068】
第1の実施形態によれば、ブラインドごとで異なるスラット角度を最適角度に調整するようにユーザを促すことで、多数の計測/制御装置(ブラインドの角度センサ、室内各位置の照度計、調光制御機など)を不要としつつ、外光による照度を最大限確保して、事前に推定した通りに照明消費電力の削減を図ることが可能になる。
【0069】
オフィスビルなどにおける電力は、その約2割を照明設備により消費されている。第1の実施形態によればブラインドのスラット角度の最適化により照明電力を抑制することができるようになり、電力消費量の削減に大きく貢献することが可能になる。すなわち、ユーザにブラインドのスラット角度を最適値に設定するように促すことによって室内に外光を最大限取り込むことができ、よって照明を減光したとしても、室内照度設定値を満足しつつ正確な消費電力の削減が可能となる。つまりユーザに最適なブラインド角度と、減光パターン(外光をこれだけ採光できるので、この箇所の照明機器を消せますよと言う情報)とを知らせることにより、見える化を促して省エネを促進することができる。
さらに、デマンドレスポンス環境において、室内照度および削減可能な電力消費量を事前に推定することで、室内の利便性、快適性を維持しつつ事前に見積もった通りの正確な電力制御が可能となる。
【0070】
これらのことから、電力消費を抑えることの可能な消費電力削減支援システム、消費電力削減支援装置、消費電力削減支援方法およびプログラムを提供することが可能となる。
【0071】
[第2の実施形態]
図13は、第2の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図である。図13において図2と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。第2の実施形態では、室内照明の調光制御手段を備える建物システムを想定する。システムはさらに、この調光制御手段に付随して室内照度センサ(図示せず)を備える。すなわち第2の実施形態では、室内照度センサにより計測される室内照度を適正値に保つべく、照明機器の光束が自動制御されるシステムを想定する。
【0072】
図14は、図13に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャートである。ステップS11〜ステップS15は、図2のステップS1〜ステップS5と同様である。すなわち、制御装置2における電力削減可能量推定部18は、建物情報入力部11に入力された照明特性(照明機器の配置間隔、光束、配光特性、消費電力、照度設定値など)、および、消費電力受信部13で受信した現状での照明消費電力を用いて、電力削減可能量を算出する。この電力削減可能量はデータ送受信部14を介して消費電力削減司令部30に送信される。
図14のステップS16において、最適スラット角度導出部16により算出された最適スラット角度は、最適スラット角度通知部19を解してユーザ端末41に通知される。ユーザ端末41は最適スラット角度をユーザに通知する。
【0073】
第2の実施形態によれば、照明機器を制御する自動制御系を備えるシステムにおいて、ブラインドの最適角度が算出されてユーザに伝えられる。すなわちユーザは外光を最大限取り入れ可能なブラインドのスラット角度を設定するだけで、制御系の機能により、事前に推定した通りの室内照度環境と、減光による照明消費電力の削減とを実現することが可能になる。以上により第1の実施形態と同様の効果に加え、ユーザ負担を軽減することができるようになる。
【0074】
[第3の実施形態]
図15は、第3の実施形態に係わる消費電力削減支援システムの一例を示す機能ブロック図である。図15において図2、図13と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
図15に示す制御装置3は、人物在/不在情報受信部20を備える。人物在/不在情報受信部20は、カメラ、赤外線、オフィス室内における各人のパソコンの状態、体温センサなどにより、室内任意点における人物の在、および不在を検知するものである。ここでいう任意点は、人が存在すると考えられる、床に近い位置に限定しても良い。
【0075】
さらには、近年発達の著しい電話通信分野における技術を応用することもできる。例えばSIP(Session Initiation Protocol)を利用するIP(Internet Protocol)電話システムにおいては、プレゼンス管理と称して人物の在/不在を含む情報を管理できるようになっている。これを応用して、SIPサーバから人物の在/不在情報を人物在/不在情報受信部20に通知するようにしても良い。
【0076】
図16は、図15に示されるシステムにおける処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて特徴的な点は、ステップS23の電力削減可能量演算処理において、照明特性および照明消費電力に加え、人物の在/不在を示す情報を電力削減可能量推定部18に与える点にある。電力削減可能量推定部18はこれらの情報に基づいて、電力削減可能量と減光パターンを算出する。つまり減光パターンの算出にあたり人物が不在の位置を重点的に消灯し、人物が存在する位置においては点灯するようにすれば良い。
【0077】
図17は、減光パターンの他の例を示す図である。図17には、外光照度の強弱と人物位置による減光パターンの違いが示される。縦長の楕円形で人物の在位置を示す。図17には、外光の弱〜強に応じた3種類の消灯パターンが示される。なお外光照度は既に算出されているので、実際にユーザに伝えられる消灯パターンは1種類である。
【0078】
人物の在が確認された位置の直近の照明機器については点灯を基本とするが、窓側近傍では外光の影響により、減光しても室内照度設定を満足するケースが多い。例えば外光が強いケースでは人物の在位置のうち最も窓から遠い位置の照明機器をオンするほうが、よりインテリジェントな制御といえる。外光照度が弱まるにつれ、人物の在位置を優先的に点灯していくと効率的である。
【0079】
このように第3の実施形態では、外光による室内照度と人物の在/不在情報とをもとに、照明機器の減光パターンとその際の消費電力を算出するようにしている。このようにしたので第1の実施形態と同様の効果を得られるのに加え、室内における人物の在/不在状況に応じたきめ細かな減光制御により、よりいっそうの照明消費電力の低減を実現することが可能になる。
【0080】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えばブラインドに代えてカーテンを遮光手段として用いることもできる。その場合の制御量としてはカーテンの開度、あるいは複数のカーテンの組み合わせ(レースカーテン、遮光カーテンの組み合わせの種類など)が考えられる。
【0081】
また実施形態では外光の一例として太陽光を示し、天空日射による室内照度を議論の対象にした。これに限らず、隣の部屋の照明による明るさや、夜間においては街灯、ネオンなどの光も外光の例として挙げることが可能である。
また、外光照度計測部12として、建物に取り付けられた太陽電池を利用することも可能である。
図18は、太陽電池を備える建物の一例を示す図である。建物の屋根、あるいは壁面には太陽電池200が取り付けられ、その出力がダイオード150を介して室内に導かれる。ダイオードの出力は蓄電池160に導かれて蓄電されるとともに、配電盤180を介してコンセントCから室内各部に供給される。各種の制御はコントローラ170により実施される。コントローラ170には、室内照度を計測する照度センサ4aが接続されることもある。なお太陽電池をブラインドに搭載することもできる。近年ではシースルーの太陽電池も提供されている。
【0082】
このような形態にあっては、太陽電池200の出力をモニタすることで外光照度を定量的かつリアルタイムに計測することが可能になる。コントローラ170に、建物情報入力部11、消費電力受信部13、最適設定通知部15、データ送受信部14、最適スラット角度導出部16、室内照度推定部17、電力削減可能量推定部18などの機能を組み込むことにより実施形態に係わる制御装置として運用することができ、建物における電力消費量を削減することができる。
【0083】
さらに、室温センサを室内に設け、照明および室温の双方の観点からの省エネルギーを目指すことも可能である。つまり外光を過度に取り入れると、季節によっては室温があがりすぎ、エアコンの電力消費量が嵩んでかえって不経済になるケースがある。このような事態を避けるため、スラットを多めに閉めて外光の取入れを削減しつつ部屋の温度上昇を抑える機能をプログラムに組み込めば、さらにインテリジェントなシステムを実現できる。
【0084】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0085】
1,2,3…サーバ装置、40,41…ユーザ端末、30…消費電力削減指令部、11…建物情報入力部、12…外光照度計測部、13…消費電力受信部、16…最適スラット角度導出部、17…室内照度推定部、18…電力削減可能量推定部、15…最適設定通知部、14…データ送受信部、303…上段スラット、304…下段スラット、19…最適スラット角度通知部、20…人物在/不在情報受信部、200…太陽電池、150…ダイオード、160…蓄電池、180…配電盤、170…コントローラ、4a…照度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援システムにおいて、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する計測部と、
前記計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出する室内照度算出部と、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する電力削減可能量算出部とを具備する、消費電力削減支援システム。
【請求項2】
さらに、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段を具備し、
前記室内照度算出部は、前記遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項3】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出する推奨値算出部と、
前記算出された推奨値を通知する通知部とを具備する、請求項2に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項4】
前記推奨値算出部は、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知部は、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項3に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項5】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出する減光態様算出部と、
前記算出された減光態様を通知する通知部とを具備する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項6】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求める位置特定手段を具備し、
前記減光態様算出部は、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する請求項5に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項7】
前記建物は太陽電池を備え、
前記計測部は、前記太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項8】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する送信部を具備する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項9】
建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援装置において、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する計測手段により計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出する室内照度算出部と、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する電力削減可能量算出部とを具備する、消費電力削減支援装置。
【請求項10】
前記室内照度算出部は、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項11】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出する推奨値算出部と、
ユーザインタフェースと、
前記算出された推奨値を前記ユーザインタフェースを介して通知する通知部とを具備する、請求項10に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項12】
前記推奨値算出部は、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知部は、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項11に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項13】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出する減光態様算出部と、
前記算出された減光態様を通知する通知部とを具備する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項14】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求める位置特定手段を具備し、
前記減光態様算出部は、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する請求項13に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項15】
前記計測部は、前記建物に備わる太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項16】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する送信部を具備する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項17】
建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援方法において、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測し、
前記計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出し、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する、消費電力削減支援方法。
【請求項18】
前記室内照度を算出することは、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項19】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出し、
前記算出された推奨値を通知する、請求項18に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項20】
前記推奨値を算出することは、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知することは、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項19に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項21】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出し、
前記算出された減光態様を通知する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項22】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求め、
前記減光態様を算出することは、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する、請求項21に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項23】
前記計測することは、前記建物に備わる太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項24】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項25】
建物における消費電力の削減を支援するコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測し、
前記計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出し、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する、プログラム。
【請求項26】
前記室内照度を算出することは、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項25に記載のプログラム。
【請求項27】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出し、
前記算出された推奨値を通知する、請求項26に記載のプログラム。
【請求項28】
前記推奨値を算出することは、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知することは、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項27に記載のプログラム。
【請求項29】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出し、
前記算出された減光態様を通知する、請求項25に記載のプログラム。
【請求項30】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求め、
前記減光態様を算出することは、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する、請求項29に記載のプログラム。
【請求項31】
前記計測することは、前記建物に備わる太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項25に記載のプログラム。
【請求項32】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する、請求項25に記載のプログラム。
【請求項1】
建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援システムにおいて、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する計測部と、
前記計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出する室内照度算出部と、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する電力削減可能量算出部とを具備する、消費電力削減支援システム。
【請求項2】
さらに、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段を具備し、
前記室内照度算出部は、前記遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項3】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出する推奨値算出部と、
前記算出された推奨値を通知する通知部とを具備する、請求項2に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項4】
前記推奨値算出部は、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知部は、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項3に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項5】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出する減光態様算出部と、
前記算出された減光態様を通知する通知部とを具備する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項6】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求める位置特定手段を具備し、
前記減光態様算出部は、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する請求項5に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項7】
前記建物は太陽電池を備え、
前記計測部は、前記太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項8】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する送信部を具備する、請求項1に記載の消費電力削減支援システム。
【請求項9】
建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援装置において、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測する計測手段により計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出する室内照度算出部と、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する電力削減可能量算出部とを具備する、消費電力削減支援装置。
【請求項10】
前記室内照度算出部は、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項11】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出する推奨値算出部と、
ユーザインタフェースと、
前記算出された推奨値を前記ユーザインタフェースを介して通知する通知部とを具備する、請求項10に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項12】
前記推奨値算出部は、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知部は、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項11に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項13】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出する減光態様算出部と、
前記算出された減光態様を通知する通知部とを具備する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項14】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求める位置特定手段を具備し、
前記減光態様算出部は、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する請求項13に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項15】
前記計測部は、前記建物に備わる太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項16】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する送信部を具備する、請求項9に記載の消費電力削減支援装置。
【請求項17】
建物における消費電力の削減を支援する消費電力削減支援方法において、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測し、
前記計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出し、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する、消費電力削減支援方法。
【請求項18】
前記室内照度を算出することは、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項19】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出し、
前記算出された推奨値を通知する、請求項18に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項20】
前記推奨値を算出することは、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知することは、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項19に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項21】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出し、
前記算出された減光態様を通知する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項22】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求め、
前記減光態様を算出することは、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する、請求項21に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項23】
前記計測することは、前記建物に備わる太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項24】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する、請求項17に記載の消費電力削減支援方法。
【請求項25】
建物における消費電力の削減を支援するコンピュータにより実行されるプログラムであって、
前記建物の室内に照射される光の照度である外光照度を計測し、
前記計測された外光照度に基づいて前記光による室内照度を算出し、
前記算出された室内照度に基づいて、前記室内の照明機器により消費される電力の削減可能量を算出する、プログラム。
【請求項26】
前記室内照度を算出することは、前記室内に設置され遮光量を可変可能な遮光手段の前記室外からの光の導入特性と、前記計測された外光照度とに基づいて前記室内照度を算出する、請求項25に記載のプログラム。
【請求項27】
さらに、前記光の入射方向と前記遮光手段の設置面とのなす角と、前記遮光手段の特性データとの少なくとも一方に基づいて、消費電力削減のための前記遮光手段に対する制御量の推奨値を算出し、
前記算出された推奨値を通知する、請求項26に記載のプログラム。
【請求項28】
前記推奨値を算出することは、前記室内への直達日射を抑制した状態で前記光による室内照度を最大限に確保可能な前記制御量の最適値を算出し、
前記通知することは、前記最適値を含む前記遮光手段の操作ガイドをユーザに通知する、請求項27に記載のプログラム。
【請求項29】
さらに、前記照明機器の減光態様を、前記算出された室内照度と前記室内の照度設定値とに基づいて算出し、
前記算出された減光態様を通知する、請求項25に記載のプログラム。
【請求項30】
さらに、前記室内に存在する人物の位置を求め、
前記減光態様を算出することは、前記照明機器の減光態様を、前記室内に存在する人物の位置に基づいて算出する、請求項29に記載のプログラム。
【請求項31】
前記計測することは、前記建物に備わる太陽電池の出力に基づいて前記外光照度を計測する、請求項25に記載のプログラム。
【請求項32】
さらに、前記削減可能量を、通信回線を介して上位システムに送信する、請求項25に記載のプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−58395(P2013−58395A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196152(P2011−196152)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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