説明

消音装置

【課題】イニシャルコストもランニングコストも低廉で、しかも、低周波の騒音を効果的に消音できる消音装置の提供。
【解決手段】振動により騒音を発生する騒音発生機器1が筐体2で囲繞された空間内に位置される構造に対する消音装置で、騒音発生機器1の振動の位相を逆転して伝達する位相逆転伝達機構6の一端側が筐体2に連結され、その位相逆転伝達機構6を介して騒音発生機器1により振動される筐体2の筐体面を逆位相で振動させて筐体2による音の伝播を阻止して消音する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動により騒音を発生する騒音発生機器が筐体で囲繞された空間内に位置される構造に対する消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
騒音発生機器が筐体内に位置される構造では、騒音発生機器の振動が、空気や固定部分を介して筐体に伝達されて筐体面が振動し、筐体面の振動に伴って筐体外の空気が振動し、それが騒音となって周辺に伝播する。
このような騒音を消音するため、従来、筐体の内面などに吸音材を貼着し、その吸音材により筐体面の振動を吸収して消音する消音装置が知られている。
しかし、吸音材の場合、比較的高周波の振動については吸収効果を期待できるが、低周波の振動については十分な吸収効果を期待することができず、低周波の騒音が周辺に伝播するという問題がある。
そのような低周波の騒音に関しては、消音が必要となる位置に、騒音と逆位相で同音圧の音をスピーカーから積極的に送り出し、音波干渉によって音波を打ち消すことにより消音する消音装置が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−129227号公報
【特許文献2】特開平11−15477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1および2に記載の従来装置では、騒音と逆位相の音を送り出すためのスピーカーやスピーカーを制御するための制御装置などが必要となり、付帯装置の増加によってイニシャルコストが高くなるばかりか、スピーカーなどを作動させるための電力が必要となってランニングコストも高くなるという欠点がある。
【0005】
本発明は、このような従来の欠点に着目したもので、その目的は、イニシャルコストもランニングコストも低廉で、しかも、低周波の騒音を効果的に消音できる消音装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、振動により騒音を発生する騒音発生機器が筐体で囲繞された空間内に位置される構造に対する消音装置であって、前記騒音発生機器の振動の位相を逆転して伝達する位相逆転伝達機構の一端側が前記筐体に連結され、その位相逆転伝達機構を介して前記騒音発生機器により振動される前記筐体の筐体面を逆位相で振動させて筐体による音の伝播を阻止して消音するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、振動により騒音を発生する騒音発生機器の振動の位相を逆転して伝達する位相逆転伝達機構の一端側が、その騒音発生機器を囲繞する筐体に連結され、その位相逆転伝達機構を介して騒音発生機器により振動される筐体の筐体面を逆位相で振動させて筐体による音の伝播を阻止して消音するので、上述した従来装置のようなスピーカーや制御装置などを必要とせず、例えば、複数のリンクなどから構成される機械式の位相逆転伝達機構を設けるだけで済む。
したがって、機械式の位相逆転伝達機構を設けるという比較的安価なイニシャルコストを要するだけで、低周波の騒音をも効果的に消音することが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記位相逆転伝達機構の他端側が前記騒音発生機器に連結されているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、位相逆転伝達機構の他端側が騒音発生機器に連結されているので、騒音発生機器の振動は、その位相が位相逆転伝達機構により逆転されるとともに、位相逆転伝達機構によって筐体に直接伝達されるので、筐体面の振動をより確実に抑制して、低周波の騒音をより一層効果的に消音することができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記騒音発生機器と前記筐体が振動伝達機構により連結され、その振動伝達機構を介して前記筐体面が振動される構成で、前記振動伝達機構と前記位相逆転伝達機構とにより、前記筐体面に振動ノードが形成されるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、騒音発生機器と筐体が振動伝達機構により連結され、その振動伝達機構を介して筐体面が振動される構成で、振動伝達機構と位相逆転伝達機構とにより、筐体面に振動ノードが形成されるので、低周波音を高周波音側に逃がして吸収することになり、筐体面における振動の打ち消しがより効果的となって、低周波の騒音をより一層確実に消音することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】消音装置の概略を示す正面図
【図2】消音装置の概略を示す平面図
【図3】消音装置の作用を示す平面図
【図4】消音装置の別実施形態の概略とその作用を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明による消音装置の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の消音装置は、図1および図2に示すように、振動により騒音を発生する騒音発生機器の一例であるエンジン1が、筐体2により囲繞された空間内に位置されて収納配置された構造となっている。
エンジン1を収納する筐体2は、エンジン1を載置する台座3、台座3上に配設されてエンジン1の周囲を囲う側板4、および、側板4の上面に配設されてエンジン1の上面を囲う天板5により構成されている。
【0014】
台座3は、例えば、コンクリートや金属製の板材により、また、側板4と天板5は、金属製の板材により構成されているが、これら台座3、側板4、および、天板5は、特にコンクリートや金属製の板材に限らず、種々の材料で構成することができる。
騒音発生機器に関しては、特にエンジン1に限るものではなく、エンジン、コンプレッサ、ポンプ、ファンなどのような振動により騒音を発生する構成部品そのものや、そのような構成部品を備えた発電装置や空調機などの各種の機器類を含むものである。
【0015】
その騒音発生機器であるエンジン1を囲繞する筐体2、例えば、筐体2を構成する側板4には、エンジン1の振動の位相を逆転して伝達する位相逆転伝達機構6の一端部が、図2の平面図に示すように、側板4の横方向の一側方(図2において下側)に連結され、位相逆転伝達機構6の他端部がエンジン1に連結されている。
位相逆転伝達機構6は、台座3の上に設置された支柱7に対して横軸心P周りに回動自在に枢支された回動リンク8と、その回動リンク8の端部にそれぞれ横軸心P1とP2周りに回動自在に枢支された第1リンク9および第2リンク10により構成され、第1リンク9がエンジン1に連結され、第2リンク10が筐体2の側板4に連結されている。
【0016】
その位相逆転伝達機構6において、横軸心PとP1間の距離Aは、原則として横軸心PとP2間の距離Bと同一に設定されているが、これらの距離AとBは、図示はしないが、いずれか一方または両方の長さが調整可能に構成されている。
そして、エンジン1と筐体2の側板4が、位相逆転伝達機構6の横側方に配置された振動伝達機構としての固定リンク11により互いに連結されて、エンジン1の振動をそのまま筐体2の側板4に伝達するように構成されている。
なお、固定リンク11の側板4側の端部は、図2の平面図に示すように、側板4の横方向の他側方(図2において上側)、つまり、位相逆転伝達機構6の連結箇所と逆の側方に連結されている。
【0017】
本発明による消音装置によれば、図3に示すように、エンジン1の振動が、固定リンク11を介して筐体2の側板4に直接伝達されて、筐体2の筐体面がエンジン1と同じ振動数で振動される。それと同時に、エンジン1の振動が、その位相を位相逆転伝達機構6により逆転された逆位相で、かつ、同振幅のまま筐体2の側板4に伝達される。
詳述すると、図3に示すように、側板4において、固定リンク11の連結部位と位相逆転伝達機構6の連結部位とが、側板4の横方向の中央部を挟んで両側に振り分けた状態となるため、側板4の両側が互いに逆位相となり、側板4の中央部に振動ノードNが形成される。すなわち、側板4が、仮想線で示すように、その左右の両端部を振動ノードとして振動するのを防止して、低周波音を高周波音側に逃がして吸収するので、その結果、筐体面の振動が位相逆転伝達機構6からの振動によって打ち消され、筐体2による音の伝播が阻止されて消音される。
【0018】
〔別実施形態〕
つぎに、図4を参照して、別の実施形態について説明するが、重複説明を避けるため、先の実施形態で説明した構成部材については、同じ符号を付すことにより説明を省略し、主として先の実施形態と異なる構成について説明する。
【0019】
図4の(a)に示す別の実施形態では、位相逆転伝達機構6が、側板4の横方向のほぼ中央に位置する状態で台座3の上に設置された支柱7に対して縦軸心P3周りに回動自在に枢支されたコの字状のリンク12により構成されている。
すなわち、コの字状リンク12が、その中央位置において縦軸心P3周りに回動自在に枢支され、コの字状リンク12の一端部12aが、固定リンク11の連結箇所に近接する部位で側板4に連結され、コの字状リンク12の他端部12bが、固定リンク11の連結箇所から離れた部位で同じ側板4に連結されている。
【0020】
この消音装置によれば、図4の(b)に示すように、エンジン1の振動が、固定リンク11を介して筐体2の側板4に直接伝達され、固定リンク11の連結箇所近くの部位がエンジン1と同じ振動数で振動される。
その振動が、位相逆転伝達機構6を介して逆位相で固定リンク11の連結箇所から離れた部位に伝達され、その結果、側板4の中央部に振動ノードNが形成され、側板4の振動が打ち消され、筐体2による音の伝播が阻止されて消音される。
【0021】
なお、図1〜図3と図4に示した実施形態では、いずれも、エンジン1と筐体2の側板4を振動伝達機構としての固定リンク11により互いに連結した構成を示したが、エンジン1の振動は、台座3や空気を介して筐体2の側板4に伝達されるので、固定リンク11は必ずしも必要なものではなく、この固定リンク11をなくして実施することもできる。
【符号の説明】
【0022】
1 騒音発生機器
2 筐体
6 位相逆転伝達機構
11 振動伝達機構
N 振動ノード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動により騒音を発生する騒音発生機器が筐体で囲繞された空間内に位置される構造に対する消音装置であって、
前記騒音発生機器の振動の位相を逆転して伝達する位相逆転伝達機構の一端側が前記筐体に連結され、その位相逆転伝達機構を介して前記騒音発生機器により振動される前記筐体の筐体面を逆位相で振動させて筐体による音の伝播を阻止して消音する消音装置。
【請求項2】
前記位相逆転伝達機構の他端側が前記騒音発生機器に連結されている請求項1に記載の消音装置。
【請求項3】
前記騒音発生機器と前記筐体が振動伝達機構により連結され、その振動伝達機構を介して前記筐体面が振動される構成で、前記振動伝達機構と前記位相逆転伝達機構とにより、前記筐体面に振動ノードが形成される請求項1または2に記載の消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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