説明

液の境界検出方法と液分離方法

【目的】体液のような分離しようとする液体の第1の層液を第2の層液から確実に分離することができ、汚染や液体の変質を招くおそれもない液の境界検出方法を提供すること。
【構成】第1の層液100をこの第1の層液100とは異なる第2の層液200から分離するために、第1の層液と第2の層液の境界位置Dを検出する方法であって、第1の層液100を吸引するための吸引手段10を第1の層液に入れて吸引手段10に気泡Bを作り、第1の層液から第2の層液に吸引手段10の気泡Bが達した時に生じる吸引手段10における圧力の変化により、第1の層液と第2の層液の境界位置Dを検出する液の境界検出方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、血液等のたとえば少なくとも第1の層液と第2の層液に分離した液体から第1の層液を分離する液の境界検出方法と液分離方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】体液のような対象液、たとえば血液を、たとえば第1の層液と第2の層液に分離して、第1の層液(うわずみ液)である血清を第2の層液から分離することがある。この場合、その血液を容器に入れて、たとえば遠心分離をかけてその容器内において第1の層液と第2の層液の2層状態にする。第1の層液は、上層液であり、第2の層液は下層液である。
【0003】従来、この上層液を吸い取って、下層液から分離する際には、その上層液の領域を作業者が目視で監視しながら作業者がスポイト等でその上層液を吸引して分離するようにしていた。あるいは超音波や通電あるいは光により、上層液と下層液の境界を検出して、作業者がその境界までスポイト等でその上層液を吸引して分離するようにしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前者の人手による分離作業においては、次のような問題がある。人の体液等の上層液(うわずみ液)を抽出する作業では、たとえば医学検査において必須のものであり、近年の検査量の増大から人手による処理では限界に達している。また、上層液を吸引するためのチップともいうチューブにより、上層液を吸引していく場合に、上層液と下層液の境界の近くになりチューブの先端が下層液に触れてチューブの先端が汚染されることがある。
【0005】また、後者の液の境界の検出方法では、超音波や通電あるいは光を通すことにより、分離しようとする液の上層液や下層液の変質を招くおそれがある。
【0006】そこで、本発明は上記課題を解消するためになされたものであり、体液のような分離しようとする液体の第1の層液を第2の層液から確実に分離することができ、汚染や液体の変質を招くおそれもない液の境界検出方法と液分離方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、第1の発明にあっては、第1の層液をこの第1の層液とは異なる第2の層液から分離するために、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を検出する方法であって、上記第1の層液を吸引するための吸引手段を上記第1の層液に入れて上記吸引手段に気泡を作り、上記第1の層液から上記第2の層液に上記吸引手段の上記気泡が達した時に生じる上記吸引手段における圧力の変化により、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を検出する液の境界検出方法により、達成される。
【0008】本発明にあっては、好ましくは前記第1の層液は、うわずみ液であり、好ましくは前記第1の層液と前記第2の層液は、体液である。
【0009】上記目的は、第2の発明にあっては、第1の層液をこの第1の層液とは異なる第2の層液から分離する液分離方法であって、上記第1の層液を吸引するための吸引手段を上記第1の層液に入れて上記吸引手段に気泡を作り、上記第1の層液から上記第2の層液に上記吸引手段の上記気泡が達した時に生じる上記吸引手段における圧力の変化により、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を検出し、上記検出した上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置まで上記吸引手段を移動して、上記吸引手段により上記第1の層液を吸引して上記第1の層液と上記第2の層液を分離する液分離方法により、達成される。
【0010】また、上記目的は、第3の発明にあっては、第1の層液をこの第1の層液とは異なる第2の層液から分離する液分離方法であって、上記第1の層液を吸引するための吸引手段を上記第1の層液に入れる際の上記吸引手段における圧力を検出して、上記第1の層液の第1の位置を求め、上記吸引手段を上記第1の層液に入れて上記吸引手段に気泡を作り、上記第1の層液から上記第2の層液に上記吸引手段の上記気泡が達した時に生じる上記吸引手段における圧力の変化により、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を第2の位置として検出し、上記第1の層液の上記第1の位置から上記第2の位置まで上記吸引手段を移動して、上記吸引手段により上記第1の層液を吸引して上記第1の層液と上記第2の層液を分離する液分離方法により、達成される。本発明にあっては、好ましくは前記第1の層液はうわずみ液であり、好ましくは前記第1の層液と前記第2の層液は、体液である。
【0011】
【作用】上記構成によれば、第1の発明によれば、第1の層液を吸引するための吸引手段を第1の層液に入れて吸引手段に気泡を作る。そして、第1の層液から第2の層液に吸引手段の気泡が達した時に、これらの第1の層液と第2の層液の比重の違いにより生じる吸引手段における圧力の変化により、第1の層液と第2の層液の境界位置を検出する。これにより、作業者が目視でこの境界位置を確認する必要がなくなり、境界位置の検出の自動化が図れる。
【0012】また、第2の発明によれば、第1の層液を吸引するための吸引手段を第1の層液に入れて上記吸引手段に気泡を作る。そして、第1の層液から第2の層液に吸引手段の気泡が達した時に生じる吸引手段における圧力の変化により、第1の層液と第2の層液の境界位置を検出する。検出した境界位置まで吸引手段を移動して、吸引手段により上記第1の層液を吸引する。これにより、境界位置の確認と第1の層液の吸引作業の自動化が図れる。しかも、吸引手段は第2の層液に接触することがない。
【0013】さらに、第3の発明によれば、第1の層液を吸引するための吸引手段を第1の層液に入れる際の圧力を検出して、第1の層液の第1の位置を求める。吸引手段を第1の層液に入れて吸引手段に気泡を作る。そして、第1の層液から第2の層液に吸引手段の気泡が達した時に生じる吸引手段における圧力の変化により、第1の層液と第2の層液の境界位置を第2の位置として検出する。第1の層液の第1の位置から第2の位置まで吸引手段を移動して、吸引手段により第1の層液を吸引する。これにより、境界位置の確認と第1の位置から第2の位置の間における第1の層液の吸引作業の自動化が図れる。しかも、吸引手段は第2の層液に接触することがない。
【0014】
【実施例】以下、本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0015】図1は、本発明の液の境界検出方法と液分離方法を実施するための、液の境界検出装置を含む液分離装置の好ましい実施例を示す側面図である。図2は、図1の液分離装置の背面から見た図であり、図3は図1の液分離装置を正面から見た図であり、そして図4は図1R>1の液分離装置を上から見た図である。
【0016】図1ないし図4に基づいて、液分離装置1,2と、この液分離装置にそれぞれ含まれる液の境界検出装置90について順次説明する。液分離装置1,2は、分注器ともいい同様の構造を持つものであるが、図3R>3に示すようにチューブ24,24aの形状がそれぞれ異なっている。すなわち図3に示すように、液分離装置1のチューブ24は太く、これに比べて液分離装置2のチューブ24aは細くなっている。これらのチューブ24,24aは、用途により使い分けることができる。
【0017】そこで、液分離装置1とその液の境界検出装置90を代表して詳しく説明する。液分離装置1は、吸引手段10、圧力センサ12、ロボット14、移動手段16、制御手段18等を有している。また、液の境界検出装置90は、吸引手段10、圧力センサ12、そして制御手段18により構成されている。
【0018】吸引手段10次に、吸引手段10について説明する。図1と図5を参照すると、吸引手段10は、気泡発生手段を兼ねる減圧手段20、そしてチューブ24等を有している。チューブ24は、特に図5に示すようにチップともいい、たとえば樹脂やガラス等により作られた中空円筒状のものである。チューブ24の下部分は、テーパ状に先細りとなっていて、先端開口部25となっている。チューブ24の上端は、部材136側に着脱可能に設定されている。
【0019】この図5のチューブ24の着脱は、たとえば次のようにして行う。チューブ24を取り付ける際には、バネ36が伸びている状態で部材136は上方位置に位置している。この状態にて、部材34にOリングBを介してチューブ24を挿入して取り付ける。チューブ24は、このOリングBにより、部材34に対してやや圧入状態になっている。一方、チューブ24を外す際には、継ぎ手310を通してエアーを供給して、バネ36の力に抗して部材136を押しさげて、チューブ24を部材34より押し出して取り外す。このエアーの供給を止めると、部材136はバネ36によって元の上方位置に戻る。
【0020】気泡発生手段20は減圧手段を兼ねている。気泡発生手段兼減圧手段20のシリンダ26は、その内部にピストン28を有している。このピストン28はロッド32の下端に取り付けられている。ロッド32の上端32aは、部材44に固定されている。シリンダ26の下端部は、エアチューブ38に接続されている。このエアチューブ38は部材34内に配置されている。またこのエアチューブ38は、圧力検出手段としての圧力センサ12に接続されている。部材34はチューブ24の上部分内に配置されている。
【0021】従って、シリンダ26内のピストン28を矢印Zの上方向(Z2)に移動することにより減圧手段として作用し、エアチューブ38内とチューブ24内を減圧することができる。また、シリンダ26内のピストン28を矢印Zの下方向(Z1)に移動することにより気泡発生手段として作用し、図10に例示するように、エアチューブ38内とチューブ24内を介して、チューブ24の先端開口部25に気泡Bを生成することができる。さらに、この圧力センサ12は、エアチューブ38内の圧力を検出することができる。
【0022】図5の部材44はナット42を有している。このナット42はボールネジ40にかみ合っている。ボールネジ40の上端は、固定部材41に対して回転可能に取り付けられている。ボールネジ40の下端は、モータ30とその減速機等に取り付けられている。この固定部材41は、部材300に固定されている。この部材300は、矢印Z方向に沿って基部52に配置されている。部材300は第2のブロック体49,49と一体になっている。これによりモータ30を作動してボールネジ40を回転することにより、ナット42とともに部材44を矢印Z方向に移動することが可能である。すなわちこの移動により、シリンダ26のピストン28を、シリンダ26に対して矢印Z方向に上下動可能である。
【0023】シリンダ26の周囲部分181にはチューブ(チップ)障害物当接検出センサ54が設けられている。この障害物当接検出センサ54は、たとえば図7に示すような構造になっている。センサ54は、いわゆるインタラプタ形式のセンサであり、投光部54aと受光部54bを有している。チューブ24にたとえば容器の底部などの障害物が当たってこの投光部54aと受光部54bの間に図5と図7に示す遮断部99が入ると、図6R>6に示すように制御手段18に対して障害物当接検出信号S1を出力するようになっている。
【0024】また、上述した圧力センサ12は、エアチューブ38内の圧力を検出して、制御手段18に圧力信号S2を送ることができるようになっている。図1と図5R>5に示すヘッドカバー39は、基台52に対して取り付けられており、ボールネジ40や、モータともいうアクチュエータ30、圧力センサ12等をカバーしている。
【0025】上述した図5に示す遮断部99は、移動ブロックともいう第1のブロック体47に固定されている。この第1のブロック体47は、取り付け部材60に取り付けられている。これに対して、第2のブロック体49,49は、シリンダ26やモータ30などと一体になっている。第2のブロック体49,49は、第1のブロック体47の上に載っている。この第2のブロック体49,49と第1のブロック体47の間にはスプリング74が設けられている。さらに、第3のブロック体53,53は、第2のブロック体49,49の上に載っている。第3のブロック体53,53は、上述した部材44に対して固定されている。
【0026】これら第1のブロック体47、第2のブロック体49,49および第3のブロック体53,53は、いずれも直線型レール(リニアレールともいう)Rに沿って矢印Z方向に移動可能になっている。この直線型レールRは、基台52に対して矢印Z方向に沿って(垂直に)固定されている。しかも、第1のブロック体47と第2のブロック体49,49は相互に分離して移動可能である。しかも第2のブロック体49,49は、第3のブロック体53,53に対して分離して矢印Z方向に移動可能になっている。図5に示すロボット14は、吸引手段10、移動手段16を含む全体の部分を矢印Y方向(図5において紙面に垂直方向)に沿って移動および位置決め可能な装置である。
【0027】移動手段16次に、移動手段16について説明する。この移動手段16は、上述した吸引手段10などを矢印Z方向(上下方向)に移動させるためのものである。図5に示す移動手段16のモータ70は、ブラケット72を介して基台52に取り付けられている。モータ70の減速機70bの軸70aは、プーリ64に接続されている。このプーリ64は上方に位置しており、もう1つのプーリ66は下方に位置している。
【0028】これらのプーリ64,66には、たとえばタイミングベルト62のような無限軌道型の動力伝達部材が配置されている。このベルト62には取り付け部材60が固定されている。これによりモータ70を正逆回転することにより、取り付け部材60と第1のブロック体47を、直線型レールRに沿って矢印Z方向に上下動できるようになっている。
【0029】図6を参照すると、制御手段18は、Z軸方向用のモータ70およびシリンダ用のモータ30に接続されており、それぞれに対して駆動信号を与えることができるようになっている。また、図5のロボット14は、別の制御手段により制御されるようになっている。
【0030】次に、図1ないし図7で示した液の境界検出装置90を含む分離装置1,2を用いて、体液、たとえば血液からうわずみ液である血清などを分離する方法と、液の境界検出装置90による液の境界面Dの検出方法を、図14を参照しながら詳しく説明する。
【0031】図8に示す容器Cには、分離対象液としての血液BLが収容されている。この血液BLは、たとえば遠心分離方法により第1の層液100と第2の層液200に分離されている。第1の層液100は上層液もしくはうわずみ液(血清などを含む)ともいう。また第2の層液200は下層液であり、血漿、けっぺい、分離剤等を含み、比較的固形物に近いものである。このようにして、当初血液BLは比重等の差により第1の層液100と第2の層液200に分離された状態にする。この第1の層液100と第2の層液200の間には液の境界面Dがある。
【0032】図8では図1のチップともいうチューブ24の一部を示している。このチューブ24には部材34が示されている。部材34に接続されたエアチューブ38には圧力センサ12が接続されていて、エアチューブ38はチューブ24の中空部24bに開口しており、圧力センサ12は、この中空部24bの内部の圧力とエアチューブ38の内部の圧力を検出できるようになっている。
【0033】まず、図8と図9を参照して、第1の層液100の上面100aの位置の検出について説明する。この第1の層液100の上面100aの位置の検出工程は、図14のフローチャートにおいてステップS1からステップS5で示している。当初、チューブ24のチップ先端開口部25は、第1の層液100から離れた上方に位置することにより、待避している(ステップS1)。
【0034】そして、図5の吸引手段10の下の所定位置に、図8の容器Cを搭載する(ステップS2)。図5の制御手段18はモータ70を作動して、ベルト62と第1のブロック体47を矢印Z方向のZ1方向(下方向)に移動することにより、この第1のブロック体47の上に載っている第2のブロック体49,49および第3のブロック体53,53が共に矢印Z方向の下方向に、共通の直線型レールRに沿って移動する。
【0035】これにより、チューブ24の先端開口部25が、図9に示すように第1の層液100の上面100aに接触する(ステップS3)。
【0036】図9に示すように、チップ先端開口部25が第1の層液100の上面100aから第1の層液100内にわずかでも入ると、チューブ24内の中空部24bとエアーチューブ38内の内圧が高まり(第1の圧力)、エアチューブ38内の圧力が変化する。この圧力の変化を、圧力センサ12により検出する。そして、この圧力センサ12により得られる図6に示す圧力信号S2に基づき、制御手段18は図9のエアチューブ38内の圧力が変化したかどうかを判断する(図14のステップS4)。
【0037】そこで、圧力変化があったと図6の制御手段18が判断すると、制御手段18は図9のチューブ24の先端開口部25の位置を、第1の位置L1として記憶する。この第1の位置L1は、第1の層液100の上面100aに先端開口部25が到達した位置を表わしている(図14のステップS5)。
【0038】次に、第1の層液100と第2の層液200の境界面Dの位置である第2の位置L2を、液の境界面検出装置90により検出する方法を説明する。この第2の位置の検出は、図14のステップS6からステップS10に示している。まず図5の制御手段18は、さらにモータ70を作動して、ベルト62と共に第1のブロック体47を矢印Z方向の下方向に下げていく。この場合においても第2のブロック体49,49と第3のブロック体53,53は第1のブロック体47に追随して下がっていく(ステップS6)。
【0039】次に、図5のモータ30を作動することにより、ナット42と共に部材44を矢印Z方向の下方向にわずかに移動する。つまり、シリンダ26のピストン28をシリンダ26に対してわずかに下方向に移動する。これにより、図10に示すように気泡発生手段20のエアーチューブ38を介して、チューブ24の中空部24b内の空気がわずかに先端開口部25から押し出されて、第1の層液100内に気泡Bを生成する(ステップS7)。
【0040】さらに、図5の制御手段18はモータ70に指令することにより、ベルト26と共に第1のブロック体47を下げていくと(ステップS8)、チューブ24が第1の層液100内に少しずつ入っていき、チューブ24内の内圧が少しずつ上がってゆく。この際に、好ましくは、この気泡Bの大きさが圧力により小さくならないように、気泡Bの大きさを調整する。そして、図11R>1に示すように、チューブ24の気泡Bの下部が境界面Dに達する。
【0041】このように、チューブ24の気泡Bの下部が境界面Dに達すると、気泡Bには第2の層液200から圧力がかかり、チューブ24内の内圧が急激に上がる(第2の圧力)。圧力センサ12が、そのチューブ24の中空部24b内とエアチューブ38内の内圧力の急激な変化を検出して(ステップS9)、図6に示す圧力信号S1を制御手段18に送る。
【0042】制御手段18は、その圧力信号S1に基づいて、チューブ24の中空部24b内の圧力が変化したと判断した場合には、制御手段18はその気泡Bの下部が第2の層液200の上面すなわち境界面Dに当った位置として、第2の位置(境界位置)を記憶する(ステップS10)。この場合に、図11に示すように気泡BのZ方向に関する厚みΔL分だけ、先端開口部25の位置が第2の位置L2より高い位置になっている。このため、先端開口部25は、常に第2の層液200に触れず、言い換えれば汚染されることがない。ところで、上述した図11に示す第1の位置L1と第2の位置L2は、たとえばモータ70に付属してロータリエンコーダ(図示せず)からの信号に基づいて、制御手段18が設定することができるようになっている。
【0043】次に、図5の制御手段18は、モータ70に指令を与えて逆転させる。これにより、第1のブロック体47と、この第1のブロック体47に載っている第2のブロック体49,49および第3のブロック体53,53は共に矢印Z方向の上方向に上昇してほぼ図9に示す状態に復帰させる。すなわちチューブ24の先端25を第1の層液100の上面100aである第1の位置L1までほぼ上昇させる(ステップS11)。
【0044】そして、図5の制御手段18はモータ70を作動して、図12に示すようにZ1方向(下方向)にチューブ24を下げつつ、図5のモータ30を作動して、気泡発生手段を兼ねている減圧手段20のシリンダ26に対して、ピストン28を上げていく。この場合には、図5の制御手段18がモータ70に指令を与えて、ベルト62と共に第1のブロック体47をZ1方向に下げていく。この第1のブロック体47が下がっていくと第2のブロック体49,49および第3のブロック体53,53も共に下がっていく。しかし、この時モータ30を作動することで、ピストン28をZ2方向(上方向)に上げていって、チューブ24の中空部24a内とエアーチューブ38を減圧する。この減圧により、第1の層液100を図12の矢印で示すように吸引チューブ24の中空部24b内に吸引していく(ステップS12)。
【0045】このようにして、図13に示すようにほぼ第1の層液100を吸引してしまい、チューブ24の先端開口部25が、境界面Dに近づく。そして先端開口部25が第2の位置L2にほぼ近づいた時に、制御手段18はモータ70を停止する(ステップS13)。
【0046】このようにすることにより、第1の層液、たとえば血液の血清を、第2の層液とは別にして確実に吸引することができる。しかもチューブ24の先端開口部25は、境界面Dには接触しないので、先端開口部25が第2の層液200により汚染されるおそれはない。
【0047】ところで、上述のようにしてチューブともいうチップ24により分離して吸引した第1の層液100は、別に用意した容器に入れる。この容器に第1の層液100を入れる際には、制御手段18が図5のモータ70などを制御して、チップ24をこの容器の底部に近い位置まで近づけてから、容器に第1の層液100を入れる。このようにするのは、第1の層液100の量の精度を上げるためである。この時、もしチップ24の先端開口部25が容器の底部に当たった時には、第1のブロック体47と一体の遮断部99が図7のセンサ54の投光部54aの光を遮断する。つまり、図6のセンサ54の障害物当接検出信号S1が制御手段18に与えられ、制御手段18はこの信号S1に基づいてモータ70を即座に停止する。 また、本発明の実施例を適用することにより、層液を分離して吸引する作業を容易に自動化することができる。また、第1ないし第3のブロック体47,49,53と1つの共通する直線型レールR上に配列して直線ガイドするので、高い相互の直線性を確保できる。
【0048】ところで、本発明は上記実施例に限定されない。上述した実施例では、分離して吸引しようとする対象液として、体液特に血液を例にして説明している。しかし、本発明は、これに限らず、他の領域もしくは分野の液の分離にも勿論適用することができる。また、本発明の実施例では、2層液に適用しているが、これに限らず3層液以上に分離する液にも適用することができる。回転型のモータ70と、そのモータの回転動作力を直線移動に変えるベルト62およびプーリ64,66を用いる代わりに、リニアモータを用いてよい。また、回転型のモータ30と、そのモータ30の回転動作を直線移動に変えるボールねじ40の代わりに、リニアモータを用いてよい。
【0049】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、体液のような分離しようとする液体の第1の層液を第2の層液から確実に分離することができ、汚染や液体の変質を招くおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液の境界検出方法とこの液の境界検出方法を実施するための液の境界検出装置とこの液の境界検出装置を含む液分離装置の実施例を示す側面図。
【図2】図1の装置の背面図。
【図3】図1の装置の正面図。
【図4】図1の装置の平面図。
【図5】図1の装置を拡大して詳しく示す図。
【図6】制御手段とその制御対象およびセンサの接続を示すブロック図。
【図7】障害物当接検出手段の例を示す斜視図。
【図8】吸引手段のチューブが第1の層液に接する前の当初の状態を示す図。
【図9】チューブの先端が第1の層液の上面に接した状態を示す図。
【図10】軸の先端が第1の層液内に位置されしかも気泡が形成されている状態を示す図。
【図11】気泡が境界面Dに達した状態を示す図。
【図12】チューブにより第1の層液を吸引し始める当初の状態を示す図。
【図13】第1の層液をほぼ吸引し終った状態を示す図。
【図14】液の境界検出と液分離を説明する図。
【符号の説明】
1,2 液分離装置
10 吸引手段
12 圧力センサ
14 ロボット
16 移動手段
18 制御手段
20 減圧手段を兼ねる気泡発生手段
24 チューブ(チップともいう)
25 先端
26 シリンダ
28 ピストン
30 アクチュエータとしてのモータ
32 ロッド
34 部材
36 バネ
38 エアチューブ
47 第1のブロック体
49 第2のブロック体
53 第3のブロック体
62 ベルト
64,66 プーリ
70 モータ
74 スプリング
90 液の境界検出装置
99 遮断部
100 第1の層液
200 第2の層液
D 境界面
BL 血液

【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の層液をこの第1の層液とは異なる第2の層液から分離するために、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を検出する方法であって、上記第1の層液を吸引するための吸引手段を上記第1の層液に入れて上記吸引手段に気泡を作り、上記第1の層液から上記第2の層液に上記吸引手段の上記気泡が達した時に生じる上記吸引手段における圧力の変化により、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を検出することを特徴とする液の境界検出方法。
【請求項2】 前記第1の層液は、うわずみ液である請求項1に記載の液の境界検出方法。
【請求項3】 前記第1の層液と前記第2の層液は、体液である請求項1または請求項2に記載の液の境界検出方法。
【請求項4】 第1の層液をこの第1の層液とは異なる第2の層液から分離する液分離方法であって、上記第1の層液を吸引するための吸引手段を上記第1の層液に入れて上記吸引手段に気泡を作り、上記第1の層液から上記第2の層液に上記吸引手段の上記気泡が達した時に生じる上記吸引手段における圧力の変化により、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を検出し、上記検出した上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置まで上記吸引手段を移動して、上記吸引手段により上記第1の層液を吸引して上記第1の層液と上記第2の層液を分離することを特徴とする液分離方法。
【請求項5】 第1の層液をこの第1の層液とは異なる第2の層液から分離する液分離方法であって、上記第1の層液を吸引するための吸引手段を上記第1の層液に入れる際の上記における圧力を検出して、上記第1の層液の第1の位置を求め、上記吸引手段を上記第1の層液に入れて上記吸引手段に気泡を作り、上記第1の層液から上記第2の層液に上記吸引手段の上記気泡が達した時に生じる上記吸引手段における圧力の変化により、上記第1の層液と上記第2の層液の境界位置を第2の位置として検出し、上記第1の層液の上記第1の位置から上記第2の位置まで上記吸引手段を移動して、上記吸引手段により上記第1の層液を吸引して上記第1の層液と上記第2の層液を分離することを特徴とする液分離方法。
【請求項6】 前記第1の層液は、うわずみ液である請求項4または請求項5に記載の液分離方法。
【請求項7】 前記第1の層液と前記第2の層液は、体液である請求項4または請求項5に記載の液分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開平7−260798
【公開日】平成7年(1995)10月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−73819
【出願日】平成6年(1994)3月17日
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)