説明

液位検出器

【課題】液位の誤検出を防止すると共に、製作や設置が容易で、取付強度も保てる液位検出器を提供する。
【解決手段】ボイラの水位制御に用いられる液位検出器1であり、外筒30に内筒31が上下に貫通して設けられる。外筒30には、内筒31より外側に電極棒36が差し込まれる。内筒31は、上部が気相側連通管を介して上部管寄せに接続され、下部が液相側連通管を介して下部管寄せに接続される。外筒30内の上下において、内筒31の周側壁に連通穴34,35が開けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ、吸収式冷凍機の再生器など、液体が入れられ加熱される機器と共に用いられ、その機器内の液位を検出する液位検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボイラの缶体の水位制御では、水位を下げ過ぎると、水管が過熱するおそれがある一方、水位を上げ過ぎると、導出される蒸気の乾き度が落ちるおそれがある。そこで、水管の過熱を防止しつつ、乾き度の高い蒸気を得るために、適正範囲に水位を維持する必要がある。
【0003】
そのために、下記特許文献1や下記特許文献2に開示されるように、従来から、ボイラには、電極式水位検出器が設けられている。従来の電極式水位検出器は、水位検出筒に、複数の電極棒が下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれて構成される。水位検出筒は、上端部が気相側連通管を介して上部管寄せまたは気水分離器に接続される一方、下端部が液相側連通管を介して下部管寄せに接続される。
【0004】
そして、各電極棒の下端部における水位検出の有無により、ボイラが制御される。具体的には、水位未検出となると給水ポンプを作動させる給水開始電極棒と、これより高い位置で水位検出するよう設けられ水位検出すると給水ポンプを停止させる給水停止電極棒とにより、缶体内の水位が調整される。また、前記給水開始電極棒より低い位置に、低水位検出電極棒が設けられており、万一この低水位検出電極棒が水位を検出しなくなれば、ボイラの燃焼が停止される。
【0005】
なお、その他の背景技術として、本出願の優先権主張の基礎である国際出願(PCT/JP2008/73458)の国際調査報告で引用された下記特許文献3〜5を挙げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−178206号公報
【特許文献2】特開2000−55305号公報
【特許文献3】特開平10−281853号公報
【特許文献4】特開平4−236331号公報
【特許文献5】特開平8−82404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の電極式水位検出器では、上部管寄せまたは気水分離器から水位検出筒への気相側連通管は、水位検出筒の上壁において下方へ開口するか、水位検出筒の上壁から差し込まれて下方へ開口するか、水位検出筒の周側壁において開口している。いずれの場合も、気相側連通管の軸線方向において、気相側連通管の中空穴がそのまま開口されており、上部管寄せまたは気水分離器からの蒸気やそれに伴う水分は、気相側連通管内の流れに沿って、そのまま吐出されることになる。従って、上部管寄せまたは気水分離器からの蒸気やそれに伴う水分の他、その蒸気が水位検出筒内に入り込んで冷やされて生じる凝縮水が、電極棒に当たりやすく、水位を誤検出するおそれがある。
【0008】
また、従来の電極式水位検出器では、水位検出筒の上部に気相側連通管が接続される一方、水位検出筒の下部に液相側連通管が接続されるため、水位検出筒、気相側連通管および液相側連通管の各軸線を平行にしにくい上、製作上や設置強度の点からも改善の余地がある。さらに、前記特許文献3の図2に示されるように、水位検出筒の周側壁に気相側連通管を接続する場合、製作や設置強度の他、設置スペースの点からも改善の余地がある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、液位の誤検出を防止すると共に、製作や設置が容易で、取付強度も保てる液位検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、液体が入れられ加熱される箇所を液位検出対象とする液位検出器であって、上下方向へ沿って配置される外筒と、この外筒に上下に貫通して設けられ、上端部が前記液位検出対象の気相部に気相側連通管を介して接続される一方、下端部が前記液位検出対象の液相部に液相側連通管を介して接続される内筒と、この内筒より外側において前記外筒に差し込まれ、前記外筒の上部に絶縁材を介して保持される電極棒とを備え、前記各連通管内と前記外筒内とを連通させる穴を、前記外筒内の上下において前記内筒の周側壁に開けたことを特徴とする液位検出器である。
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、外筒を上下に貫通して内筒を設け、外筒内の上下において内筒の周側壁に穴を開けて構成されるので、内筒の軸線方向と略直交する方向で、各連通管内と外筒内とが連通されることになる。これにより、気相側連通管から外筒内へ勢いよく蒸気やそれに伴う液分が入り込むのが防止され、液分が電極棒に当たることによる液位の誤検出を防止できる。また、本請求項に記載の発明によれば、内筒が外筒を貫通することで、内筒は外筒の上下でガイドされる。これにより、外筒の軸線と平行に内筒を確実に取り付けることができ、製作や設置が容易である。しかも、設置強度も高く、設置スペースもとらない。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記内筒の周側壁に開けられる上下の穴の内、下側の穴は、その下端部が前記外筒内の下端部と対応して形成されることを特徴とする請求項1に記載の液位検出器である。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、内筒と外筒との液体の流通を円滑に行うことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記内筒の周側壁に開けられる上下の穴の内、上側の穴は、その上端部が前記外筒内の上端部よりも下方に形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液位検出器である。
【0015】
外筒の上部には絶縁材を介して電極棒が保持されるが、請求項3に記載の発明によれば、内筒の周側壁に開けられる上側の穴は、外筒内の上端部よりも下方に形成されるので、前記絶縁部に液分が当たるのを防止できる。これにより、液位の誤検出を防止できる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、前記内筒の周側壁に開けられる上下の穴の内、上側の穴は、前記電極棒と前記外筒との絶縁部へ対向しないよう形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液位検出器である。
【0017】
外筒の上部には絶縁材を介して電極棒が保持されるが、請求項4に記載の発明によれば、内筒の周側壁に開けられる上側の穴は、電極棒と外筒との絶縁部へ対向しないよう形成されるので、前記絶縁部に液分が当たるのを防止できる。これにより、液位の誤検出を防止できる。
【0018】
さらに、請求項5に記載の発明は、上部管寄せと下部管寄せとの間が水管で接続された缶体と、この缶体外において前記上部管寄せと前記下部管寄せとに接続された気水分離器とを備え、前記上部管寄せからの蒸気は前記気水分離器を介して蒸気使用設備へ供給される蒸気ボイラの水位制御に用いられ、前記内筒は、上端部が前記気相側連通管を介して前記上部管寄せまたは前記気水分離器と接続される一方、下端部が前記液相側連通管を介して前記下部管寄せと接続されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液位検出器である。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、ボイラの缶体の水位制御を、正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の液位検出器によれば、液位の誤検出を防止することができる。また、製作や設置が容易で、取付強度も保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の液位検出器の実施例1を備えるボイラの一例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【図2】本発明の液位検出器の実施例1を示す概略斜視図である。
【図3】図2の液位検出器の概略縦断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3におけるV−V断面図である。
【図6】図1のボイラの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の液位検出器は、液体が入れられ加熱される機器と共に用いられ、その機器内の液位を検出する装置である。液位検出器の用途や、液体の種類は特に問わない。以下の実施例では蒸気ボイラの水位制御に用いる例について説明するが、たとえば吸収式冷凍機の再生器などにも同様に用いることができる。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の液位検出器1の実施例1を備えるボイラ2の一例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。このボイラ2は、ボイラ本体としての缶体3が円筒状とされた多管式貫流ボイラである。缶体3は、上部管寄せ4と下部管寄せ5との間を、円筒状に配列された多数の水管6,6,…で接続して構成される。
【0024】
上部管寄せ4と下部管寄せ5とは、互いに同径の円環状に形成されている。この円環は、内部が中空に形成されており、各部における断面は、本実施例では略矩形状とされている。上部管寄せ4と下部管寄せ5とは、同一軸線上に、上下に離隔して平行に配置される。
【0025】
各水管6は、上下に細長い管から構成され、上端部が上部管寄せ4に接続される一方、下端部が下部管寄せ5に接続される。各水管6は、上部管寄せ4と下部管寄せ5との周方向へ順次に配置されることで、円筒状の水管列7を構成する。図示例では、水管列7は、一列とされるが、所望により同心円筒状に二列またはそれ以上とされてもよい。
【0026】
このようにして各管寄せ4,5と各水管6とを接続した状態で、上部管寄せ4および下部管寄せ5には、耐火材8が設けられる。この際、耐火材8は、下部管寄せ5の中央部をも閉塞するように設けられる。また、図示していないが、耐火材8は、各管寄せ4,5と各水管6との接続部を覆うように設けられる。さらに、上部管寄せ4と下部管寄せ5との間は、水管列7を取り囲んで、缶体カバー3Aが設けられる。
【0027】
上部管寄せ4の中央部には、下方へ向けてバーナ9が設けられる。本実施例では、油焚きのボイラとされており、バーナ9において、給油路10からの燃料がノズルチップ(図示省略)を介して噴霧されると共に、送風機11からの燃焼用空気がウィンドボックス12を介して吐出される。そして、円筒状の水管列7の内側において、燃料の燃焼が図られる。従って、水管列7の内側は、燃焼室13として機能する。
【0028】
燃焼室13での燃料の燃焼による燃焼ガスは、設定された経路で缶体3内を流通した後、缶体3外へ導出される。この間、燃焼ガスは、各水管6内の水と熱交換し、各水管6内の水の加熱を図る。これにより、上部管寄せ4から蒸気を取り出すことができ、その蒸気は気水分離器14を介して、蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。一方、缶体3外へ導出された排ガスは、煙道(図示省略)および煙突(図示省略)を介して、外部へ放出される。
【0029】
ボイラ2は、負荷に応じて、たとえば、高燃焼(100%燃焼)、低燃焼(50%燃焼)および停止の三位置で、燃焼量を制御される。そのために、図示例のボイラ2では、給油路10に燃料弁15が設けられており、この燃料弁15の開度を調整することで、ノズルチップから噴霧する燃料の流量を調整可能とされている。但し、給油路10を並列に二本設けておき、それぞれの給油路10に設けた燃料弁15の内、一方のみを開くか、両方を開くかにより、バーナ9から噴霧する燃料の量を変えてもよい。燃料の量に応じて、送風機11および/またはダンパ(図示省略)を制御して、燃焼室13へ供給する空気量が調整される。
【0030】
本実施例のボイラ2は、遠心式の気水分離器14を備えている。この気水分離器14は、縦向き円筒状の胴16を備え、その側部に蒸気入口管17、上部に蒸気出口管18、下部に分離水戻し管19が設けられる。
【0031】
蒸気入口管17は、上部管寄せ4と胴16の側部とを接続して、上部管寄せ4からの蒸気を胴16内へ供給する。蒸気出口管18は、胴16の上端部から外方へ延出して設けられ、気水分離器14により乾き度を向上した蒸気を外部へ導出する。分離水戻し管19は、胴16の下端部と下部管寄せ5とを接続して、気水分離器14により分離された水を下部管寄せ5へ導出する。
【0032】
上部管寄せ4からの蒸気は、蒸気入口管17から胴16内へ接線方向で導入される。上部管寄せ4からの蒸気は、気水混合体としての湿り飽和蒸気であるが、胴16内へ接線方向で導入されることで、胴16内で旋回して気水分離を図られる。すなわち、旋回による遠心力で、水分は外周部へ飛ばされて下方へ脱落する一方、そのような遠心分離により乾き度を向上された蒸気は、胴16の上端部に設けた蒸気出口管18から導出され、主蒸気弁20や蒸気ヘッダ(図示省略)を介して、適宜の配管で蒸気使用設備(図示省略)へ送られる。そして、気水分離器14により分離された水は、分離水戻し管19を介して、下部管寄せ5へ戻される。
【0033】
缶体3の各水管6内へは、給水管21を介して水が供給可能とされる。具体的には、軟水器(図示省略)からの軟水は、給水ポンプ22および逆止弁23を介して、下部管寄せ5から各水管6内へ供給される。上部管寄せ4と下部管寄せ5とに接続した液位検出器1に基づき、缶体3内(具体的には各水管6内)の水位を監視して、給水ポンプ22の作動を制御することで、缶体3内の水位は適正範囲に維持される。
【0034】
下部管寄せ5には、主排水管24が接続される。主排水管24に設けた主排水弁25を開くことで、缶体3内の水は全量または所望量、外部へ排出(ブローと呼ばれる)できる。一方、気水分離器14から下部管寄せ5への分離水戻し管19には、濃縮排水管26が接続される。濃縮排水管26に設けた濃縮排水弁27を開くことで、分離水戻し管19内の水を外部へ排出(濃縮ブローと呼ばれる)できる。
【0035】
分離水戻し管19には、その管内の水の電気伝導度を計測する電気伝導度センサ28が設けられる。従って、電気伝導度センサ28により缶体3内の水の電気伝導度を監視することで、缶体3内の水の濃縮具合を把握することができる。そして、ボイラ2の運転に伴い、缶体3内の水が所定より濃縮した場合、濃縮排水弁27を開けて、分離水戻し管19から濃縮水を外部へ排出すればよい。また、ボイラ2の起動時には、缶体3内を満水にして各水管6の過熱を防止するが、それに伴い乾き度の低い蒸気が蒸気出口管18へ導出されないように、缶体3内の水の昇温に伴って、濃縮排水弁27を開いて缶体3内の水を外部へ排出することも行われる。
【0036】
給水ポンプ22、主排水弁25および濃縮排水弁27などの他、液位検出器1および電気伝導度センサ28などは、それぞれ制御器29に接続される。制御器29は、液位検出器1に基づき給水ポンプ22を制御して、缶体3内の水位を適正範囲に維持する。また、制御器29は、万一、缶体3内の水位が設定よりも下がったことを液位検出器1により検知した場合には、燃料弁15を閉じて、バーナ9の燃焼を停止させる。また、制御器29は、ボイラ2の運転中、電気伝導度センサ28による水の濃縮度を監視し、缶体3内の水の電気伝導度が設定値を超えると、濃縮排水弁27を開くことで、濃縮水を外部へ排水する。さらに、制御器29は、所望により、主排水弁25を開いて缶体3内からの排水を図った後、給水管21を介して再給水することで、缶体3内の水の一部または全部の入れ替えを図ることができる。その他、制御器29は、缶体3内の蒸気圧に基づき、燃料弁15や送風機11などを制御して、バーナ9の燃焼量を制御する。
【0037】
次に、本実施例1の液位検出器1について、さらに詳細に説明する。図2から図5は、本実施例1の液位検出器1を示す概略図であり、図2は斜視図、図3は縦断面図、図4はIV−IV断面図、図5はV−V断面図である。
【0038】
本実施例の液位検出器1は、液位検出筒を構成する外筒30と、この外筒30を上下に貫通して設けられる内筒31とを備える。外筒30は、上下方向へ沿って配置される円筒状で、上部開口は上蓋32で閉塞され、下部開口は底蓋33で閉塞される。本実施例では、上蓋32および底蓋33は、それぞれ外筒30と溶接されて、両者の隙間が封止される。外筒30は、たとえば鋼管などの導電性材料により形成される。
【0039】
内筒31は、外筒30よりも細長い円筒状で、その軸線を外筒30と平行に、上下方向へ沿って配置される。この際、内筒31は、外筒30の上蓋32と底蓋33とを貫通して、その上蓋32および底蓋33よりも上下へ延出して設けられる。また、内筒31の外周面と上蓋32との間、および内筒31の外周面と底蓋33との間は、それぞれ溶接されて隙間が封止される。図3に示すように、内筒31の周側壁には、外筒30内の上下において、それぞれ内筒31の内外を連通させる連通穴(上連通穴34,下連通穴35)が形成される。
【0040】
図4および図5に示すように、平面視において、内筒31は外筒30と偏心して配置される。本実施例では、内筒31の外径が外筒30の内径の半分よりも小さく形成されると共に、内筒31の外周面が外筒30の内周面に近接して配置される。このようにして、図4に示すように、平面視において、外筒30の内側空間の内、略半分の領域に内筒31が配置され、残り半分の領域に、一または複数の電極棒36が設けられる。本実施例では、三つの電極棒36が設けられる。
【0041】
液位検出器1による液位検出対象は、本実施例ではボイラ2の缶体3である。ボイラ2の缶体3の水位制御では、水位を下げ過ぎると、水管6が過熱するおそれがある一方、水位を上げ過ぎると、導出される蒸気の乾き度が落ちるおそれがある。そこで、水管6の過熱を防止しつつ、乾き度の高い蒸気を得るために、缶体3内の水位は、適正範囲に維持する必要がある。これに伴い、ボイラ2の運転中、缶体3の上部は、蒸気で満たされた気相部となり、缶体3の下部は、水で満たされた液相部となる。そして、液位検出器1は、前記気相部と気相側連通管37を介して接続される一方、前記液相部と液相側連通管38を介して接続される(図1)。具体的には、本実施例では、内筒31の上端部が、気相側連通管37を介して上部管寄せ4と接続される一方、内筒31の下端部が、液相側連通管38を介して下部管寄せ5と接続される。内筒31の上下両端部には、ネジ部39,39が形成されており、このネジ部39,39を用いて、内筒31に前記各連通管34,35を接続することができる。
【0042】
このようにして、缶体3外において、上部管寄せ4と下部管寄せ5とに連通して、液位検出器1が設けられる。前述したように、液位検出器1の外筒30には、複数の電極棒36が、その下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれている。各電極棒36は、上蓋32を貫通して上方から外筒30内に差し込まれ、上端部が絶縁性材料のガイシ40を介して外筒30の上蓋32に保持される。
【0043】
本実施例では、三本の電極棒36が設けられる。その際、図4に示すように、各電極棒36は、平面視において、外筒30の周方向に等間隔に配置される。各電極棒36は、導電性材料により形成された細長い棒材である。本実施例では、給水停止電極棒、給水開始電極棒および低水位検出電極棒が、順に下端部の高さ位置を低くして、外筒30内に挿入されている。そして、各電極棒36および外筒30は制御器29に電気的に接続される。具体的には、外筒30の上蓋32から上方へ突出する各電極棒36の上端部と、外筒30の周側壁上部に径方向外側へ突出するアース取付部41とが、それぞれ制御器29に電気的に接続される。このような構成であるから、各電極棒36は、その下端部が水に浸かれば、外筒30との間で電気的な導通が確保される。これにより、制御器29は、各電極棒36に流れる電流の有無によって、各電極棒36の下端部に水位があるか否かを検出する。
【0044】
制御器29は、各電極棒36による水位検出の有無に基づき、ボイラ2を制御する。具体的には、制御器29は、給水開始電極棒が水を検出しないと、給水ポンプ22を作動させて缶体3内への給水を開始する一方、給水停止電極棒が水を検出すると、給水ポンプ22を停止して缶体3内への給水を停止する。これにより、缶体3内の水位は、給水開始電極棒の下端部と、給水停止電極棒の下端部との間で維持される。一方、ボイラ2の運転中、万一、低水位検出電極棒が水を検出しなくなると、制御器29はバーナ9の燃焼を停止する。
【0045】
前述したように、外筒30内の上下において、内筒31の周側壁には、上連通穴34と下連通穴35とが形成される。本実施例では、各連通穴34,35として、同一の大きさの二つの丸穴が上下にそれぞれ形成される。但し、内筒31に形成する連通穴34,35の大きさや形状および個数は、適宜に変更可能である。
【0046】
上連通穴34は、電極棒36と対向しない配置で形成されるのがよい。特に、電極棒36と外筒30との絶縁部へ対向しない配置で形成されるのがよい。すなわち、上連通穴34は、その上端部が外筒30内の上端部よりも下方に形成されるか、それに代えてまたはそれに加えて、平面視において各電極棒36と対向しないよう形成されるのがよい。これにより、上部管寄せ4からの蒸気やそれに伴う水分の他、その蒸気が液位検出器1内に入り込んで冷やされて生じる凝縮水が、電極棒36や前記絶縁部に直接に当たるのが防止され、水位の誤検出が防止される。
【0047】
本実施例では、図4に示す平面視において、上連通穴34は、内筒31の中心から前記各電極棒36が配置された領域と遠ざかる方向へ開口するよう形成される。すなわち、図4において、外筒30内の空間の内、左半分に内筒31が配置され、右半分に三つの電極棒36が配置されるが、上連通穴34は、内筒31の中心を通る前後方向の線よりも左側へ向けて開口される。このような構成の場合、上連通穴34と電極棒36との間に、内筒31の周側壁が配置されることになる。言い換えれば、気相側連通管37からの配管(具体的には内筒31)が液位検出筒(具体的には外筒30)内へ開口する開口部(具体的には上連通穴34,34)と、前記各電極棒36との間に、壁体(具体的には内筒31の周側壁の内、図4において右側部)31aが配置されることになる。従って、上部管寄せ4からの蒸気やそれに伴う水分の他、その蒸気が液位検出器1内に入り込んで冷やされて生じる凝縮水が、電極棒36に直接に当たるのが防止され、水位の誤検出が防止される。
【0048】
また、上連通穴34が前記絶縁部に向かないように、上連通穴34は、その上端部が外筒30内の上端部よりも下方に形成されるのがよい。但し、図2に示すように、上連通穴34は、その上端部が外筒30内の上端部と対応して形成されてもよい。つまり、上連通穴34は、外筒30の上蓋32と接するような配置で、内筒31の周側壁に開けられてもよい。この場合、外筒30内の上部に空気や蒸気が溜まるのが防止される。
【0049】
一方、下連通穴35は、その下端部が外筒30内の下端部と対応して形成されるのがよい。つまり、下連通穴35は、外筒30の底蓋33と接するような配置で、内筒31の周側壁に開けられるのがよい。これにより、内筒31と外筒30との水の流通を円滑に行うことができる。但し、場合により、下連通穴35は、その下端部が外筒30内の下端部よりも上方に形成されてもよい。
【0050】
ところで、各上連通穴34は、前述したように、各電極棒36やその絶縁保持部と対向しない配置で形成するのが好ましいが、各下連通穴35は、その形成位置を特に問わない。これは、外筒30内に差し込まれる各電極棒36の下端部が、通常、外筒30内の下端部まで達しないからである。これに伴い、上連通穴34は、内筒31の径方向両側に貫通させないが、下連通穴35は、内筒31の径方向両側に貫通させて形成してもよい。二つの上連通穴34の内の一方を形成する際、それと同一方向に、下連通穴35の両方を貫通形成すれば、製作が容易となる。
【0051】
但し、電極棒36が外筒30内の下端部付近まで延びる場合、下連通穴35も、電極棒36と対向しない配置とするのがよい。これにより、水面の揺れを抑制して、電極棒36による水位検出の有無のチャタリングを防止できる。下連通穴35よりも下方に配置される内筒31、その内筒31と接続される液相側連通管38、または内筒31と液相側連通管38との接続部などに、オリフィス(図示省略)を設ければ、水面の揺れを一層抑制することができる。この際、オリフィスに限らず、内筒31または液相側連通管38の一部において、その管径を小さくした圧損部を設けるだけでもよい。
【0052】
外筒30には、外筒30内の液位を目視で確認可能に、液面計42が設けられる。この液面計42は、従来公知の平形反射式液面計とされる。また、外筒30の下端部には、水抜き穴43が形成されており、この水抜き穴43にはプラグ44が着脱可能に設けられる。従って、このプラグ44を取り外すことで、外筒30内の水を外部へ排水することができる。さらに、内筒31の周側壁下端部には、ソケット45が設けられている。図示例では、ソケット45はプラグ46で閉塞されているが、所望によりソケット45に各種センサなどを取り付けて使用することができる。
【実施例2】
【0053】
図6は、本発明の液位検出器1の実施例2を備えるボイラ2の一例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。本実施例2のボイラ2および液位検出器1は、基本的に前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0054】
前記実施例1では、液位検出器1は、内筒31の上端部が気相側連通管37を介して上部管寄せ4に接続される一方、内筒31の下端部が液相側連通管38を介して下部管寄せ5に接続されたが、本実施例2では、内筒31の上端部が気相側連通管37を介して気水分離器14に接続される一方、内筒31の下端部が実施例1と同様に液相側連通管38を介して下部管寄せ5に接続される。
【0055】
気水分離器14は、前記実施例1と同様に、胴16を備え、この胴16には、蒸気入口管17、蒸気出口管18および分離水戻し管19が設けられる。そして、蒸気入口管17は、胴16の側部上方と上部管寄せ4の上部とを接続する。また、蒸気出口管18は、胴16の上端部から外方へ延出して設けられる。さらに、分離水戻し管19は、胴16の下端部と下部管寄せ5とを接続する。
【0056】
そして、本実施例2では、液位検出器1は、内筒31の上端部が気相側連通管37を介して、気水分離器14の胴16と接続される。この際、気相側連通管37は、胴16の周側部に接続されてもよいし、胴16の上端部に接続されてもよい。このようにして、液位検出器1は、気相側連通管37、気水分離器14および蒸気入口管17を介して、上部管寄せ4に接続される。なお、液位検出器1は、内筒31の下端部が液相側連通管38を介して、下部管寄せ5と接続される。
【0057】
ボイラ2および液位検出器1について、その他の構成および制御は、前記実施例1と同様のため、説明は省略する。ところで、前記実施例1の液位検出器1に代えてではなく、それに加えて本実施例2の液位検出器1を設けてもよい。その場合、第一の液位検出器1は、上部管寄せ4と下部管寄せ5とに接続され、第二の液位検出器1は、気水分離器14と下部管寄せ5とに接続される。
【0058】
本発明の液位検出器1は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、前記各実施例では、給水停止電極棒、給水開始電極棒および低水位検出電極棒の三つの電極棒36を用いたが、液位検出筒(外筒)30に設ける電極棒36の本数や、各電極棒36による水位検出結果をボイラ2の制御にどのように利用するかについては、適宜に変更可能なことは言うまでもない。
【0059】
また、前記各実施例では、各電極棒36と液位検出筒(外筒)30との間での電気的な導通の有無により、各電極棒36の下端部における液の有無を検知する構成であったが、液位に比例した出力を得ることができる静電容量式の電極棒を用いてもよい。
【0060】
また、前記各実施例において、ボイラ2の構成(特に缶体3の構造)および制御は、一例であり、その他のボイラにも利用可能である。たとえば、前記各実施例では、油焚きのボイラに用いた例について説明したが、ガス焚きのボイラや、電気ボイラなどにも同様に適用可能である。さらに、本発明の液位検出器は、ボイラ以外にも幅広く用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1 液位検出器
2 ボイラ
3 缶体(液位検出対象)
4 上部管寄せ
5 下部管寄せ
6 水管
14 気水分離器
30 外筒
31 内筒
34 上連通穴
35 下連通穴
36 電極棒
37 気相側連通管
38 液相側連通管
40 ガイシ(絶縁材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が入れられ加熱される箇所を液位検出対象とする液位検出器であって、
上下方向へ沿って配置される外筒と、
この外筒に上下に貫通して設けられ、上端部が前記液位検出対象の気相部に気相側連通管を介して接続される一方、下端部が前記液位検出対象の液相部に液相側連通管を介して接続される内筒と、
この内筒より外側において前記外筒に差し込まれ、前記外筒の上部に絶縁材を介して保持される電極棒とを備え、
前記各連通管内と前記外筒内とを連通させる穴を、前記外筒内の上下において前記内筒の周側壁に開けた
ことを特徴とする液位検出器。
【請求項2】
前記内筒の周側壁に開けられる上下の穴の内、下側の穴は、その下端部が前記外筒内の下端部と対応して形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の液位検出器。
【請求項3】
前記内筒の周側壁に開けられる上下の穴の内、上側の穴は、その上端部が前記外筒内の上端部よりも下方に形成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液位検出器。
【請求項4】
前記内筒の周側壁に開けられる上下の穴の内、上側の穴は、前記電極棒と前記外筒との絶縁部へ対向しないよう形成される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液位検出器。
【請求項5】
上部管寄せと下部管寄せとの間が水管で接続された缶体と、この缶体外において前記上部管寄せと前記下部管寄せとに接続された気水分離器とを備え、前記上部管寄せからの蒸気は前記気水分離器を介して蒸気使用設備へ供給される蒸気ボイラの水位制御に用いられ、
前記内筒は、上端部が前記気相側連通管を介して前記上部管寄せまたは前記気水分離器と接続される一方、下端部が前記液相側連通管を介して前記下部管寄せと接続される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液位検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−78589(P2010−78589A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108588(P2009−108588)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】