説明

液位検出装置

【課題】弾性表面波素子を用いて簡単な構造で液体の量を液位として検出することができる液位検出装置を提供する。
【解決手段】液位検出装置10は、圧電基板40の主面に形成される第1のIDT電極50と、第1のIDT電極50と弾性表面波の伝搬方向に離間して配設される第2のIDT電極60と、第1のIDT電極50と第2のIDT電極60との共通の入出力端子58とを備え、弾性表面波の伝搬方向が液体の液面に対して略垂直に配設される弾性表面波素子30と、少なくとも、入出力端子58に入力信号を入力する発信回路と、前記入力信号の入力から応答信号が出力されるまでの応答時間を検出する検出回路と、を有する制御部70と、を備え、第2のIDT電極60が液体に浸漬される位置によって生じる応答時間の変化から液位を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液位検出装置に関する。詳しくは、弾性表面波素子を液位検出センサとして備える液位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性表面波の伝播面上のずり変位の垂直方向に凹凸のあるすべり弾性表面波センサと、凹凸のない平坦なすべり弾性表面波センサとを、同一の弾性表面波素子に設置し、両センサにより液体の密度と粘度を分離測定する液体の密度と粘度の分離測定方法というものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−211705号公報(第4頁、図2,3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような特許文献1では、凹凸がある弾性表面波センサと凹凸のない弾性表面波センサにて、標準液体を供給したときの弾性表面波の位相速度と被測定液体を負荷したときの弾性表面波の位相速度の変化により液体の密度と粘性率の分離測定を行っている。
【0005】
しかしながら、このような方法では微量な液体を被検出液体として用いており、標準液体と被測定液体の位相速度の変化を検出要素としていることから、容器等に収容された液体の量を測定することができない。
【0006】
また、少なくとも入力端子と出力端子とを二対必要としているため、入出力端子数が多く、被測定物として容器等に収容される液体内外にそれら複数の入出力端子及び接続配線を配設することは構造面で複雑となる。
【0007】
さらに、弾性表面波素子と制御回路とを無線通信手段により接続する場合には、入力側と出力側に二つのアンテナが必要であり、構造が複雑になることからコスト高になることが推測される。
【0008】
本発明の目的は、上述した課題を解決することを要旨とし、弾性表面波素子を液位検出センサとして備える簡単な構造で、液体の量を液位として検出することができる液位検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液位検出装置は、圧電基板の主面に形成される第1のIDT電極と当該第1のIDT電極から弾性表面波の伝搬方向に離間して配設される第2のIDT電極と、前記第1のIDT電極と前記第2のIDT電極との共通の入出力端子とを備え、弾性表面波の伝搬方向が液面に対して略垂直に配設される弾性表面波素子と、少なくとも、前記入出力端子に入力信号を入力する発信回路と、前記入力信号の入力から応答信号が出力されるまでの応答時間を検出する検出回路と、を有する制御部と、を備え、前記第2のIDT電極が液体に浸漬される位置によって生じる前記応答時間の変化から液位を検出することを特徴とする。
ここで、液位とは、液面位置(つまり、液面の高さ位置)を意味する。
【0010】
弾性表面波素子は、二つのIDT電極(Interdigital Transducer)を有し、この二つのIDT電極に同時に入力信号を入力すると、遅延時間を伴って応答信号が出力される。一方のIDT電極(仮に第2のIDT電極)が液体に浸漬されると、浸漬された範囲の振動が液体中に放射されることにより著しく減衰し、入力信号の入力から上述の応答信号の最大レベルまでの遅延時間(つまり応答時間、群遅延時間と呼ぶことがある)が発生する。従って、IDT電極が液体に浸漬する位置差により応答時間が変化する。この弾性表面波素子の応答時間を検出することにより、液体の液位を検出することができる。
【0011】
また、液体が容器等に収容されている場合、容器の底面積と液位の積から液体の収容容積、収容容積と液体の密度の積から液体の重量等の液量を測定することが可能となる。
【0012】
また、前記入出力端子が、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極それぞれのバスバーを直列に接続する接続電極から延在され形成されていることが好ましい。
【0013】
このようにすれば、外部の制御部と接続される入出力端子は一つ設ければよく、入出力端子と制御部との接続配線が容易にできるという効果を有する。
【0014】
また、接続電極を、第1のIDT電極及び第2のIDT電極それぞれのバスバーを直列に接続していることから、弾性表面波素子上の配線も簡素化できる。
【0015】
また、前記第1のIDT電極と前記第2のIDT電極とが一方向性電極からなり、前記第1のIDT電極領域から発生する弾性表面波の伝搬方向と前記第2のIDT電極領域から発生する弾性表面波の伝搬方向とが、それぞれ対向する方向となるように構成されていることが好ましい。
【0016】
各IDT電極を上述のように構成すれば、第1のIDT電極及び第2のIDT電極それぞれの領域から発生する弾性表面波が、相互に他方のIDT電極の方向に伝搬する。従って、一般的な弾性表面波が双方向に伝搬する弾性表面波素子よりも検出感度を高めることができる。
【0017】
また、前記第1のIDT電極と前記第2のIDT電極との離間距離が、前記入力信号を入力した直後に発生するノイズと前記第1のIDT電極または前記第2のIDT電極から発生する出力信号との時間差と、弾性表面波の位相速度との積から求められる時間距離よりも大きいことが望ましい。
【0018】
このようにすれば、第1のIDT電極から発生するノイズが第2のIDT電極から発生する出力信号に対して影響することを抑制し、検出感度を高めることができる。
なお、第2のIDT電極側のノイズも、第1のIDT電極と第2のIDT電極の時間距離を上述した関係に設定することで、第1のIDT電極側の出力信号への影響を抑制することができる。
【0019】
また、前記第2のIDT電極を構成する電極指の数が、前記第1のIDT電極を構成する電極指の数より多く形成されていることが望ましい。
【0020】
第1のIDT電極と第2のIDT電極それぞれの電極指の数は特に限定されない。しかし、液体中に浸漬される第2のIDT電極の電極指の数を多くすることで、第1のIDT電極と第2のIDT電極それぞれの電極指の総和を一定にすれば、圧電基板のサイズを大きくしなくても、液位の測定範囲を広くすることができる。
【0021】
また、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極の表面に絶縁性保護膜が形成されていることが好ましい。
【0022】
第1のIDT電極及び第2のIDT電極は、一般にAl等によって形成される金属電極である。従って、被測定物としての液体の種類によってはIDT電極が腐食されることがある。そこで、IDT電極を保護する被膜を形成することによってIDT電極を保護し、多様な液体に使用することができる。
さらに、保護膜が絶縁性を有することから、電導性を有する液体についても液位を検出することができる。
【0023】
また、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極の表面にさらに撥液性膜が形成されているか、または、前記絶縁性保護膜の表面に撥液性膜が形成されているか、または絶縁性保護膜が撥液性を有していることが好ましい。
【0024】
液体がIDT電極に接触した位置から移動、または液体から離間した際に、液体がIDT電極表面に付着していることがある。このような場合、弾性表面波素子の駆動が不安定になる。そこで、本発明では、各IDT電極の液体と接触する表面に撥液性膜を形成することで、IDT電極に付着する液体の除去を促進するという効果を奏する。
【0025】
また、絶縁性保護膜の表面に撥液性膜を形成する構造、または絶縁性保護膜が撥液性を有している構造においても同様な効果が得られる。
【0026】
さらに、本発明の液位検出装置が、前記弾性表面波素子と前記制御部それぞれにアンテナを含む無線送受信部を備え、前記弾性表面波素子と前記制御部とが無線通信にて接続されていることを特徴とする。
【0027】
液位検出センサとしての弾性表面波素子は液体側に配設され、制御部は外部に配設される。従って、弾性表面波素子と制御部との間の入出力を無線通信にて接続すれば、弾性表面波素子と制御部との接続配線が不用であり、接続構造を簡単にすることができる。また、制御部の配設位置の制約を低減することができる。
また、従来は入力側と出力側に二つのアンテナが必要であったが、本発明によればアンテナが一つだけでよいという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5は実施形態1に係る液位検出装置及び弾性表面波素子を示し、図6は実施形態2に係る弾性表面波素子、図7は実施形態3に係る液位検出装置を示している。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。また、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
(実施形態1)
【0029】
図1は、本発明の実施形態1に係る液位検出装置の概略構成を示す斜視図である。図1において、液位検出装置10は、液体が収容される容器20の内部側壁21に固着される液位検出センサとしての弾性表面波素子30と、容器20の外部に配設される制御部70とから構成されている。
【0030】
容器20は、本実施形態では立方体の容器を例示しているが、その形状は立方体に限らず任意に選択することが可能である。また、弾性表面波素子30は、弾性表面波の伝播方向を液面に対して垂直となるように配設されている。
【0031】
弾性表面波素子30には、圧電基板40の主面(表面と表すことがある)に第1のIDT電極50(以降、単にIDT電極50と表すことがある)と第2のIDT電極60(以降、単にIDT電極60と表すことがある)とが形成されている。IDT電極50及びIDT電極60は、液面に対して弾性表面波の伝播方向が垂直になるように構成されている。また、圧電基板40の表面には、IDT電極50及びIDT電極60共通の入出力端子58が設けられている。
【0032】
制御部70と弾性表面波素子30とは、容器20の内部側壁21を挟んで図示しないリードで接続される。このリードは、液体及び容器20に対して電気的に絶縁されると共に、容器20との間において防水処置が施されている。この制御部70には、図示を省略するが、入出力端子58に入力信号を入力する発信回路と、入力信号の入力から応答信号が出力されるまでの応答時間を検出する検出回路、電源及び検出した応答時間から液位を求める演算回路、検出した液位を表示する表示部等を含んでいる。
【0033】
次に、本実施形態にて用いられる弾性表面波素子30の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る弾性表面波素子30を模式的に表す平面図である。図2において、弾性表面波素子30には、圧電基板40の同一表面上にIDT電極50,60とが直列に接続され形成されている。
【0034】
IDT電極50は、交差指電極52と交差指電極51とが、それぞれの電極指が交互に並設されて構成される。具体的には、図2にて上方から電極指51a,52a,51b,51c,52bの順に配列される。このように各電極指が構成されるIDT電極を一方向性電極と呼び、弾性表面波の大部分が一方向、つまり、矢印A方向に伝搬する。
【0035】
上述した各電極指の幅、電極の間隔(電極間ピッチと表す)について説明を加える。弾性表面波の波長をλとしたとき、電極指51aの幅W1を(3/8)λ、電極指52aの幅W2を(1/8)λ、電極指51bの幅W3を(1/8)λ、電極指51cの幅W4を(3/8)λに設定している。
【0036】
また、各電極間ピッチWp1,Wp2,Wp3,Wp4をそれぞれ(1/8)λに設定している。従って、交差指電極51のピッチは、W1+Wp1+W2+Wp2+W3+Wp3=λで表される。交差指電極52のピッチは、W2+Wp2+W3+Wp3+W4+Wp4=λで表される。
【0037】
ここで、電極指51a,52a,51bのかたまりを1対としたとき、本実施形態のIDT電極50は、4対の電極指で構成されている。なお、電極指の対数は4対に限定されない。
【0038】
次に、IDT電極60の構成について説明する。IDT電極60の交差指電極61,62の基本的な構成は、IDT電極50の構成と同じであるため詳細な説明を省略するが、交差指電極61,62の各電極指の配列順序がIDT電極50とは逆になるように配設されている。つまり、IDT電極60も一方向性電極であり、弾性表面波の伝搬方向が矢印B方向となる。
【0039】
また、本実施形態のIDT電極60は、6対の電極指で構成されており、IDT電極50よりも電極指の対数が多く設定されている。これは、詳しくは後述するが、液位検出の際に液体中に浸漬されるIDT電極60の電極指を多くすることにより液位の検出範囲を広くすることを目的としている。本実施形態の弾性表面波素子30においては、IDT電極50とIDT電極60の電極指の対数を適宜割り振ることで、弾性表面波素子のサイズを大きくせずに液位検出範囲を広くすることができるのである。
【0040】
IDT電極50とIDT電極60とは、それぞれのバスバー53,63とを接続電極56にて直列接続し、この接続電極56の中間位置から入出力端子58が延在されている。入出力端子58と容器20の外部に設けられている制御部70と(図1、参照)が図示しないリードにて接続される。
【0041】
ここで、IDT電極50の長手方向中央とIDT電極60の長手方向中央との距離を弾性表面波実効伝搬長さL0(平均伝搬長さと表すことがある)とし、IDT電極50とIDT電極60との離間距離をIDT電極間距離Dと表す。
【0042】
続いて、本実施形態による液位検出における基本作用について図面を参照して説明する。
図3(a)、(b)、(c)は、弾性表面波素子の基本作用について模式的に表す説明図である。まず、図3(a)において、入出力端子58に入力信号SINを入力すると、IDT電極50及びIDT電極60それぞれに弾性表面波R1,R2(簡略化して図示している)が発生する。そして弾性表面波R1は矢印A方向に、弾性表面波R2は矢印B方向に伝搬する。
【0043】
図3(b)は、弾性表面波の伝搬の途中を表している。弾性表面波R1,R2は徐々にそれぞれ矢印A、矢印B方向に伝搬して弾性表面波実効伝搬長さL0の中央部で交差し、なお伝搬を続ける。
【0044】
そして、図3(c)に示す位置に到達すると、弾性表面波R2がIDT電極50、弾性表面波R1がIDT電極60の形成領域において共振する。そのときの弾性表面波をR1’、R2’で表す。ここで弾性表面波実効伝搬長さL0が示す位置(各IDT電極の中央位置)で最大レベルの応答信号が発生する(図4も参照する)。
【0045】
つまり、入出力端子58に入力信号を入力すると、弾性表面波の位相速度をVsawとすると、弾性表面波実効伝搬長さL0間をL0/Vsawで表される遅延時間を伴い応答信号(出力信号Soutに相当する)が出力される。この遅延時間(群遅延時間と呼称することがある)を応答時間τ1と表す。図3では、弾性表面波素子30が液体に浸漬されていない状態であるため、この応答時間τ1が基準応答時間である。本実施形態では、IDT電極60が液体に浸漬されたときに応答時間が変化することを利用して液位を測定するのである。
【0046】
続いて、液位検出作用について具体例を図4,5に例示して説明する。
図4(a)は弾性表面波素子が液体に浸漬されていない状態、(b)はこの状態における応答時間について模式的に表す説明図である。図4(a)において、弾性表面波素子30は、液体に浸漬されておらず、従って、IDT電極60も液体に接触していない。
この状態で入出力端子58に入力信号を入力するとIDT電極50及びIDT電極60が励振されて弾性表面波が発生し、それぞれ矢印A及び矢印B方向に伝搬する。
【0047】
図4(b)において、入力信号SINを入力すると直後にノイズNが発生する。ノイズNは時間経過とともに減衰する。弾性表面波は、弾性表面波実効伝搬長さL0を伝搬してIDT電極50及びIDT電極60の中央部に達したときに最大の信号レベルの出力信号Soutを出力する。入力信号SIN入力から最大の信号レベル(グラフのピーク位置)までの時間が応答時間τ1として検出される。
【0048】
なお、ノイズNが減衰した時間から出力信号Soutの立ち上がり位置までには時間差dを設けている。時間差dを設けることによって、このノイズNが出力信号Soutに影響を与えることはない。時間差dは、所望の時間差と弾性表面波の位相速度の積から求められる時間距離に換算し、IDT電極間距離Dをこの時間距離よりも大きくすることによって得られる。しかし、その大きさは限定されない。
【0049】
図5(a)は、弾性表面波素子30の一部が液体中に浸漬された状態、(b)はこの状態における応答時間について模式的に表す説明図である。図5(a)において、弾性表面波素子30は、液体に浸漬されており、IDT電極60が液体中に浸漬されている。IDT電極60の液体中に浸漬されている範囲では、発生する弾性表面波は著しく減衰されるため、有効励振部は液体に浸漬されない部位のみと考えられる。従って、IDT電極60の有効励振位置は液体から突出しているIDT電極の中央部となることから弾性表面波実効伝搬長さはL1で表される。
【0050】
図5(a)の状態における応答時間について図5(b)を参照して説明する。入力信号SINを入力すると直後にノイズNが発生する。ノイズNは時間経過とともに減衰する。弾性表面波は、弾性表面波実効伝搬長さL1を伝搬してIDT電極50の中央部及びIDT電極60の液体から突出した範囲の中央部において最大の信号レベルの出力信号Soutを出力する。そして、入力信号SIN入力から最大の信号レベル(グラフのピーク位置)までの時間が応答時間τ2として検出される。
【0051】
従って、図5(b)に示す応答時間τ2は、図4(b)に示す状態のときの応答時間τ1よりも短くなる。応答時間は、IDT電極60が液体中に浸漬される位置、つまり液位によって弾性表面波実効伝搬長さL1が変化することにより変化する。この変化量は、応答時間が、弾性表面波実効伝搬長さを弾性表面波の位相速度で除して算出されることから、液位に対応して線形変化する。従って、予め、液位と応答時間の関係を求めておけば、応答時間の検出により液位の測定を行うことができる。
【0052】
なお、ノイズNが減衰した時間から出力信号Soutの立ち上がり位置までの時間差dは、IDT電極50,60の構成が同じであれば変化はなく、ノイズNの影響はない。
【0053】
また、IDT電極60が液体中に全浸漬された状態では、IDT電極60側からは出力信号は著しく減衰し、弾性表面波実効伝搬長さが存在しないことから応答出力が検出されない。
【0054】
従って、前述した実施形態1によれば、弾性表面波素子30は、第1のIDT電極50と第2のIDT電極60とを有し、この二つのIDT電極に同時に入力信号SINを入力することにより、遅延時間を伴って応答信号(出力信号Sout)が出力され、応答信号出力までの応答時間を検出する。IDT電極60の一部が液体に浸漬されると、浸漬位置(液位)によって応答時間が変化することを利用して液位を容易に検出することができる。
【0055】
また、液体が容器20等に収容されている場合、容器20の底面積と液位の積から液体の収容容積、収容容積と液体の密度の積から液体の重量等の液量を測定することが可能となる。
【0056】
さらに、本発明における液位の検出は、弾性表面波実効伝搬長さの変化と位相速度から求められるが、それぞれ、液体内外に関係しないIDT電極の構成により決定する項目であるため、液体の粘度、密度には関わりなく検出することができる。
【0057】
また、入出力端子58が、第1のIDT電極50のバスバー53及び第2のIDT電極60のバスバー63とを直列接続する接続電極56から延在されて形成されているため、外部の制御部70と接続する入出力端子は一つ設ければよく、入出力端子58と制御部70との接続配線が容易にできる。さらに、弾性表面波素子上の配線も簡素化できるという効果を有する。
【0058】
また、第1のIDT電極50と第2のIDT電極60とが一方向性電極からなり、それぞれの領域から発生する弾性表面波の伝搬方向とが、それぞれ対向する方向となるように構成されているため、一般的な弾性表面波が双方向に伝搬する弾性表面波素子よりも検出感度を高めることができる。
【0059】
また、第1のIDT電極50と第2のIDT電極60とのIDT電極間距離Dが、入力信号を入力した直後に発生するノイズNと出力信号Soutとの時間差dと位相速度から求められる時間距離よりも大きく設定していることから、出力信号Soutへの影響を抑制し、検出感度を高めることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、第2のIDT電極60を構成する電極指の数(対数)が、第1のIDT電極50を構成する電極指の数(対数)より多く形成されている。従って、液体中に浸漬される第2のIDT電極60の電極指の数を増加することで、第1のIDT電極50と第2のIDT電極60それぞれの電極指の総和を一定とすれば、圧電基板40のサイズを大きくしなくても、液位の測定範囲を広くすることができる。
(実施形態2)
【0061】
続いて、本発明の実施形態2に係る液位検出装置について図面を参照して説明する。実施形態2は、液位検出装置を構成する弾性表面波素子の構造に特徴を有している。従って、前述した実施形態1による弾性表面波素子(図2、参照)との相違個所のみ図示し説明する。共通要素には同じ符号を附している。
【0062】
図6は、本実施形態に係る弾性表面波素子の平面図を示している。図6において、弾性表面波素子30は、圧電基板40の表面に形成されるIDT電極50,60と、これらIDT電極50,60の全体を被覆する絶縁性保護膜90と、から構成されている。IDT電極50,60の構成は、前述した実施形態(図2、参照)と同じ構成である。
【0063】
この絶縁性保護膜90はSiO2等からなり、IDT電極50,60がAl等の金属で形成される場合、IDT電極50,60が液体により腐食されることを防止するために設けられるものである。
【0064】
また、図示は省略するが、IDT電極50,60の全体を被覆する撥液性膜を形成することができる。つまり、図6に示す絶縁性保護膜90と撥液性膜を置き換えて形成する。撥液性膜を設ける目的は、IDT電極50,60に付着する液滴の除去を促進することにより、励振効率の低下を防止することである。
【0065】
他の構造として、絶縁性保護膜90の表面に、さらに撥液性膜を形成する構造としてもよく、さらには、絶縁性保護膜として撥液性を有する材料を採用すれば製造工程の短縮化を図ることもできる。
【0066】
従って、上述した実施形態2によれば、IDT電極50,60の表面に絶縁性保護膜90を形成することによりIDT電極50,60を保護し、多様な種類の液体に使用することができる。また、保護膜が絶縁性を有することから、電導性を有する液体についても液位を検出することができる。
【0067】
さらに、IDT電極50,60の表面に撥液性膜を形成している。IDT電極50,60が液体に浸漬されていない部位に液体が付着することが考えられるが、このような場合、弾性表面波素子30の駆動が不安定になることがある。そこで、本実施形態では撥液性膜を形成することで、IDT電極50,60の表面に付着する液体の除去を促進するという効果を奏する。
(実施形態3)
【0068】
続いて、本発明の実施形態3について図面を参照して説明する。実施形態3は、液位検出装置において、液位検出センサとしての弾性表面波素子と制御部との間を無線通信にて接続することを特徴としている。
【0069】
図7は、実施形態3に係る液位検出装置の概略構成を示す斜視図である。図7において、液位検出装置10は、容器20の内部に取り付けられた弾性表面波素子30と、容器20の外部に備えられた制御部70とから構成されている。
【0070】
弾性表面波素子30の近傍には、アンテナと無線受送信回路を含む無線受送信部80が配設されている。無線受送信部80は、セラミックス等の基板上に形成されている。従って、アンテナは平面アンテナが好ましい。また、無線受送信部80は絶縁性保護膜(図示せず)によって被覆されている。
【0071】
アンテナと無線受送信回路とIDT電極50のバスバー53とは、図示しない配線によって接続されている。
なお、アンテナと無線受送信回路とは、弾性表面波素子30の圧電基板40上にIDT電極50,60と並設する構造としてもよい。
【0072】
制御部70は、図示しない発信回路、検出回路、演算回路、電源、及び無線送受信回路とアンテナを含む無線送受信部85と、検出結果を表示する表示部等(図示せず)を含んでいる。
【0073】
制御部70の無線送受信部85から発信された入力信号は、無線受送信部80にて受信されIDT電極50,60が励振される。そして、前述した応答信号(出力信号Sout)が無線受送信部80から発信され、無線送受信部85に入力される。応答信号は演算回路にて応答時間、そして液位に変換し表示部にて表示する。
【0074】
従って、上述した実施形態3によれば、弾性表面波素子30と制御部70とは無線通信によって信号の入出力を行うことができるため、液位検出センサとしての弾性表面波素子30と、制御部70の配設位置の制約を低減することができる。つまり、容器20の形状の制約を排除し、弾性表面波素子30と制御部70との接続リードの形成が困難な場合、さらには容器がない環境における液位の検出を可能にするという効果を有する。
【0075】
また、実施形態1(図2、参照)で示したように、IDT電極50及びIDT電極60共通の入出力端子58が設けられていることから、従来は入力側と出力側に二つのアンテナが必要であったが、本実施形態によればアンテナが一つだけでよいという効果がある。
【0076】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前述した実施形態1〜実施形態3では、液位を検出する例を示して説明したが、出力信号Soutを単純な応答信号としてとらえ、液体が定量以上存在するか定量以下であるかの残量検出装置として使用することも可能である。
【0077】
また、前述した実施形態1〜実施形態3では、1個の弾性表面波素子を用いる場合を例示したが、複数個の弾性表面波素子を並設することもできる。このような場合、複数の弾性表面波素子それぞれの第2のIDT電極を液体の深さ方向において交差しないように配設する。このようにすれば、液位の検出範囲をより一層広げることができる。
【0078】
従って、本実施形態によれば、二つのIDT電極を有する弾性表面波素子を用いて、液位によって変化する応答時間を検出することによって、簡単な構造で液体の量を液位として検出することができる液位検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態1に係る液位検出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子を模式的に表す平面図。
【図3】本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子の基本作用について模式的に表す説明図であり、(a)は入力信号を入力した直後の状態、(b)は弾性表面波が伝搬する途中の状態、(c)は出力信号が出力された直後の状態を示す説明図。
【図4】(a)は本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子が液体に浸漬されていない状態を示し、(b)はこの状態における応答時間について模式的に表す説明図。
【図5】(a)は本発明の実施形態1に係る弾性表面波素子の一部が液体に浸漬されている状態、(b)はこの状態における応答時間について模式的に表す説明図。
【図6】本発明の実施形態2に係る弾性表面波素子を示す平面図。
【図7】本発明の実施形態3に係る液位検出装置の概略構成を示す斜視図。
【符号の説明】
【0080】
10…液位検出装置、30…弾性表面波素子、40…圧電基板、50…第1のIDT電極、58…入出力端子、60…第2のIDT電極、70…制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の主面に形成される第1のIDT電極と当該第1のIDT電極から弾性表面波の伝搬方向に離間して配設される第2のIDT電極と、前記第1のIDT電極と前記第2のIDT電極との共通の入出力端子とを備え、弾性表面波の伝搬方向が液面に対して略垂直に配設される弾性表面波素子と、
少なくとも、前記入出力端子に入力信号を入力する発信回路と前記入力信号の入力から応答信号が出力されるまでの応答時間を検出する検出回路とを有する制御部と、を備え、
前記第2のIDT電極が液体に浸漬される位置によって生じる前記応答時間の変化から液位を検出することを特徴とする液位検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液位検出装置において、
前記入出力端子が、前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極それぞれのバスバーを直列に接続する接続電極から延在され形成されていることを特徴とする液位検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液位検出装置において、
前記第1のIDT電極と前記第2のIDT電極とが一方向性電極からなり、
前記第1のIDT電極の領域から発生する弾性表面波の伝搬方向と前記第2のIDT電極の領域から発生する弾性表面波の伝搬方向とが、それぞれ対向する方向となるように構成されていることを特徴とする液位検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液位検出装置において、
前記第1のIDT電極と前記第2のIDT電極との離間距離が、前記入力信号を入力した直後に発生するノイズと前記第1のIDT電極または前記第2のIDT電極から発生する出力信号との時間差と、弾性表面波の位相速度との積から求められる時間距離よりも大きいことを特徴とする液位検出装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液位検出装置において、
前記第2のIDT電極を構成する電極指の数が、前記第1のIDT電極を構成する電極指の数より多く形成されていることを特徴とする液位検出装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の液位検出装置において、
前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極の表面に絶縁性保護膜が形成されていることを特徴とする液位検出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液位検出装置において、
前記第1のIDT電極及び前記第2のIDT電極の表面にさらに撥液性膜が形成されているか、または、前記絶縁性保護膜の表面に撥液性膜が形成されているか、または絶縁性保護膜が撥液性を有していることを特徴とする液位検出装置。
【請求項8】
請求項1に記載の液位検出装置において、
前記弾性表面波素子と前記制御部それぞれにアンテナを含む無線送受信部を備え、
前記弾性表面波素子と前記制御部とが無線通信にて接続されていることを特徴とする液位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−64646(P2008−64646A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243751(P2006−243751)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000003104)エプソントヨコム株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】