説明

液体の消泡装置

【課題】消泡性能を向上することができるとともに、コストを低減することができる液体の消泡装置を提供する。
【解決手段】容器31の内部に無数の細隙38aを有する泡捕捉ネット38を収容する。下蓋34にインキを供給するためのインキ取込口34a,39aを設ける。下蓋34に泡捕捉ネット38の細隙38aを透過して貯留されたインキを外部に吐出するための吐出口34bを設ける。泡捕捉ネット38の内側のインキIに含まれる気泡Kは、泡捕捉ネット38の内側面38bに沿って上方に移動され、ネット内上部空間R3から泡捕捉ネット38の上部の細隙38aを透過して容器31のネット外上部空間R4に移動される。このネット外上部空間R4内の空気は、上蓋部32aに設けた排気口32bによって外部に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインキやオイル等の液体に含まれる気泡を除去することができる液体の消泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷機に用いるインキとして、近年、環境保護のため油性インキに用いられる炭化水素系の溶剤の揮発ガスを少なくするために、水性インキが使用されるようになっている。水性系のインキは、顔料、樹脂(糊)及び希釈液で構成されている。前記希釈液は、例えば80〜90%の水と、20〜10%のアルコールで構成されており、水性系のインキは、溶剤系のインキと比較して泡が発生し易く、一旦発生した泡が消え難いという性質がある。この泡が混入したインキを用いると、紙等の印刷面の品質が低下するという問題がある。
【0003】
又、各種の製品のコーティングに用いられる塗料や油圧シリンダに用いられるオイル等の液体に気泡が混入していると、コーティング面の品質が低下したり、油圧シリンダの作動不良が発生したりする。このため、例えば、インキやオイルに含まれる気泡を除去するための消泡装置として、遠心分離方式のものが提案されている。この消泡装置は、オイルを遠心分離器の内部に供給して、回転する攪拌羽根により軽いオイルを中心側に、重いオイルを外周側に移動させて、外側のオイルを遠心分離器の外部に取り出して再利用するとともに、中心側の軽いオイルは、遠心分離器から取り出した後、二次消泡機構を構成する一対のローラの間を通すことにより気泡を押し潰して、再利用すように構成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記従来の消泡装置は、遠心分離方式を採用しているので、小さい気泡がオイルの中に残留し易く、消泡性能を向上することができないという問題があった。又、遠心分離器を用い、かつ二次消泡機構を必要とするので、装置のコストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、消泡性能を向上することができるとともに、コストを低減することができる液体の消泡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、液体を貯留する容器と、上記容器の内部に該容器を上流側貯留室と下流側貯留室に区画するように収容され、かつ液体が前記上流側貯留室から下流側貯留室に通過可能な無数の細隙を有する泡捕捉部材と、前記容器に設けられ、前記上流側貯留室に液体を取り込む取込手段と、前記容器に設けられ、前記上流側貯留室から前記細隙を透過して下流側貯留室に移動した液体を容器の外部に吐出する吐出手段と、前記容器の上部に設けられ、前記上流側貯留室の液体から前記細隙を透過しないで前記容器の上部空間に移動した気泡よりなる空気を外部に排気する排気手段とを備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記泡捕捉部材は上下方向に指向する筒状に形成され、その内側に上流側貯留室が形成され、外側に下流側貯留室が形成されていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記泡捕捉部材は上下方向に指向する筒状に形成され、その外側に上流側貯留室が形成され、内側に下流側貯留室が形成されていることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1において、前記泡捕捉部材はシート状に形成され、その片側に上流側貯留室が形成され、他側に下流側貯留室が形成されていることを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記容器には前記液体の液位を所定範囲に設定するための液位設定手段が設けられていることを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項5において、前記液位設定手段は、前記排気手段の排気経路に設けられた切換制御弁と、前記容器内の適正液位及び最低液位を検出する適正液位センサ及び最低液位センサと、前記最低液位センサにより最低液位が検出されたとき、前記切換制御弁を閉路ポートから排気ポートに切り換え制御し、前記適正液位が検出されたとき、前記切換制御弁を排気ポートから閉路ポートに切り換え制御する制御信号を出力する制御装置とにより構成されていることを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記切換制御弁は、圧力空気供給源からの空気を前記容器の上部空間に供給する吸気ポートを備え、異常液位を検出する異常液位センサからの検出信号により前記制御装置から前記切換制御弁を吸気ポートに切り換える制御信号を出力するように構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項2又は3において、筒状の前記泡捕捉部材は下端を開放し、かつ上部を袋状としたメッシュ織物により形成され、前記容器の底部に前記取込手段としての取込口が設けられていることを要旨とする。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか一項において、前記取込手段は液体としてのインキの粘度コントローラから吐出されたインキを取り込むようになっており、前記吐出手段は気泡を除去されたインキを印刷機に供給するようになっていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上流側貯留室に取り込まれた液体は、泡捕捉部材の細隙を透過して下流側貯留室に移動し、液体に含まれる気泡は、該泡捕捉部材の上流側貯留室側の側面に沿って容器の上部空間に移動し、排気手段により外部に排気される。このため、消泡性能を向上することができる。又、遠心分離器や二次消泡機構を必要としないので、装置の構成を簡素化して、製造を容易に行い、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をインキの粘度コントローラの下流側に接続した消泡装置に具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
最初に、図2により粘度コントローラ11について説明すると、本体ケース12の内部には、ダイヤフラムポンプ13が配設され、インキ貯留タンク14から配管15を介してインキを吸入し、配管16を介して印刷機17のインキつぼ18に供給するようになっている。前記ダイヤフラムポンプ13の左右一対のダイヤフラム19,19は、連結軸20によって連動するように連結されている。そして、圧力空気供給源としてのコンプレッサ21から圧力空気を供給する配管22及び圧力調整弁23により所定圧力に調整された空気をダイヤフラムポンプ13に間欠的に供給することによりダイヤフラム19,19を左右方向に往復作動させてインキを圧送するようになっている。
【0016】
前記ダイヤフラムポンプ13には、ポンプ作用に供された空気を排出する配管24が設けられ、この先端から排出される空気を脈動感知レバー25に吹き付けるようになっている。この脈動感知レバー25と対応するように脈動センサ26が設けられ、この脈動センサ26によって検出された脈動信号がコンピュータを備えた脈動計27に入力されるようになっている。前記本体ケース12の上面には、溶剤の貯留タンク28が備えられ、貯留タンク28から配管29を通して溶剤が前記ダイヤフラムポンプ13の上流側に供給されるようになっている。前記配管29の途中には、電磁開閉弁30が設けられ、前記脈動計27から出力された開閉制御信号により開閉制御されるようになっている。
【0017】
前記吐出側の配管16の通路面積は、前記吸入側の配管15の通路面積よりも若干小さく設定され、インキの粘度が高くなると、配管16の吐出圧力の上昇によりダイヤフラムポンプ13の1分間当りの脈動数が減少し、前記脈動センサ26から脈動計27に入力される脈動数も減少するようになっている。
【0018】
従って、インキの粘度が高くなって、脈動数が脈動計27の記憶媒体(図示略)に予め設定された上限設定値(例えば100回/1分)よりも少なく下限設定値(例えば99回/1分)になった場合には、脈動計27から出力された開放信号により電磁開閉弁30が開放されて溶剤が配管15に供給され、インキの粘度が低くなり、ポンプ13の吐出負荷が低下し、脈動数が上がる。そして、この脈動数が上限設定値(100回/1分)を超えると、前記脈動計27から出力された閉鎖信号により前記電磁開閉弁30が閉鎖されて溶剤の供給が停止される。この動作が繰り返し行われ、インキの粘度が適正粘度となるように制御される。
【0019】
次に、前記配管16の途中に配設され、かつインキに含まれる気泡を除去する消泡装置について説明する。
図1に示すように、インキIを貯留する容器31は、ステンレススチール等の金属よりなる有蓋円筒状の容器本体32と、その下端開口部にOリングよりなるシールリング33を介して接合されたステンレススチール等の金属製の有底円筒状をなす下蓋34とにより構成されている。前記下蓋34には逆U字状をなす固定用アーム35が左右一対の連結ピン36により回動可能に連結され、固定用アーム35の上部には、容器固定用ボルト37が螺合され、その操作つまみ37aを回動することにより、前記下蓋34の上端部に対し容器本体32の下端部を押圧し、容器31内を密閉状態にするようにしている。
【0020】
容器31の内部には、袋状に織成された泡捕捉部材としての泡捕捉ネット38が収容され、該泡捕捉ネット38の下端開口縁が前記下蓋34の上面にネットホルダ39及びネット固定用リング40によって取り付けられている。この泡捕捉ネット38は、例えばポリエチレン樹脂等の合成樹脂によりメッシュフィルター状に形成されている。前記ポンプ13により循環できるインキの粘度は、通常1CPSから3万CPSまでであり、粘度の低いインキは、泡捕捉ネット38の細隙38aを300メッシュに細かくしても透過性が保たれるが、粘度の高いインキは、透過性が悪くなるので、50メッシュ程度にする。従って、泡捕捉ネット38の無数の細隙38aは、50〜300メッシュの範囲に設定され、この実施形態では、150メッシュに設定されている。なお、インキの粘度が80CPS以下の場合には、インキ内の気泡が速く液面に浮き上がるので、泡捕捉ネット38による脱泡の意義が低くなる。
【0021】
前記容器31内は前記泡捕捉ネット38によって、内側の上流側貯留室R1と、外側の下流側貯留室R2に区画形成されている。前記下蓋34及びネット固定用リング40の中央部には、前記上流側貯留室R1と連通するようにインキ取込口34a,39aが形成され、前記配管16からインキIが泡捕捉ネット38の内側に取り込まれるようになっている。
【0022】
前記泡捕捉ネット38は、インキIに含まれる気泡Kを泡捕捉ネット38の内側面38bに沿ってネット内上部空間R3に移動させ、インキI自体を、泡捕捉ネット38の無数の細隙38aを通して泡捕捉ネット38の外側に導き、容器31の前記下流側貯留室R2に貯留するようになっている。この下流側貯留室R2内のインキIは下蓋34に形成した吐出口34bから容器31の下流側の配管16を通して前記印刷機17のインキつぼ18に導かれるようになっている。又、泡捕捉ネット38の内側面38bに沿って上方に移動した気泡Kは、前記ネット内上部空間R3から泡捕捉ネット38の上部の細隙38aを透過して容器31の上部空間、つまりネット外上部空間R4に貯留されるようになっている。
【0023】
前記容器本体32の上蓋部32aには、容器31の前記ネット外上部空間R4に導かれた気泡Kの集合された空気を外部に排出するための排気口32bが形成され、該排気口32bには排気管41が接続され、該排気管41には電磁式の切換制御弁42が設けられている。この切換制御弁42は、常には閉路ポート42aに保持され、必要に応じてネット外上部空間R4の空気をサイレンサSを介して排気する排気ポート42b又は前記コンプレッサ21から空気をネット外上部空間R4に供給する吸気ポート42cに切り換え可能に構成されている。前記排気管41には手動式の開閉弁43も設けられている。
【0024】
前記容器本体32及び下蓋34には、容器31内の液位を検出するための液位検出機構44装着されている。この液位検出機構44は前記容器本体32の上側壁部に貫通支持され、前記ネット外上部空間R4と連通する上部のエルボ継手45と、前記容器本体32の下側壁部に貫通支持され、容器31の下流側貯留室R2と連通するエルボ継手46と、両継手45,46の間に連通された透明合成樹脂製の液位表示管47とを備えている。又、前記液位表示管47の上下方向の中間部には、適正液位を検出するための適正液位センサ48が取り付けられ、下部には最低液位を検出するための最低液位センサ49が取り付けられている。さらに、前記液位表示管47には、液位が何らかの要因によって異常液位L3となった場合に、それを検出するための異常液位センサ50が取り付けられている。
【0025】
図3に示すようにコンピュータを内蔵した制御装置51には、適正液位センサ48、最低液位センサ49及び異常液位センサ50が接続されるとともに、図示しない駆動回路を介して前記切換制御弁42が接続されている。
【0026】
次に、前記のように構成されたインキの消泡装置の動作について説明する。
図1の実線の状態は、粘度コントローラ11により設定された粘度に調整されたインキIがダイヤフラムポンプ13によって配管16を介して消泡装置に所定圧力で供給され、インキIが適正液位L1に保持された状態を示す。
【0027】
前記吐出口34bの通路面積は、インキ取込口34aの通路面積よりも若干小さく設定されているので、容器31が空の状態でその内部にインキの供給が開始されると、インキの容積が徐々に増加するように貯留されることになる。そして、インキIの液位が図1に鎖線で示す最低液位L2になると、最低液位センサ49により切換制御弁42が閉路ポート42aから排気ポート42bに切り換えられて、前記ネット内上部空間R3及びネット外上部空間R4の空気が外部に排出され、インキIの液位が最低液位L2から図1に実線で示す適正液位L1に速やかに上昇する。そして、適正液位センサ48が作動されると、切換制御弁42が排気ポート42bから閉路ポート42aに切り換えられて、液位の上昇が停止される。この状態ではインキIの容積が多くなっているので、その中に含まれる気泡も多くなり、分離される気泡の容積が多くなって、インキIの液位が適正液位L1から徐々に下がる傾向となる。
【0028】
泡捕捉ネット38の内側のインキIに含まれる気泡Kは、泡捕捉ネット38の内側面38bに集合し、互いに結合して浮力を増し、泡捕捉ネット38の内部のネット内上部空間R3に移動した後、ネット内上部空間R3から該泡捕捉ネット38の上部の細隙38aを通して容器31のネット外上部空間R4に移動される。一方、インキIそのものは泡捕捉ネット38の無数の細隙38aを通して泡捕捉ネット38の外側の下流側貯留室R2に移動される。
【0029】
インキI内の気泡Kの分離が徐々に進行して、ネット内上部空間R3及びネット外上部空間R4の容積が増大し、インキIの液位が最低液位L2まで下がると、最低液位センサ49が作動されて、切換制御弁42が閉路ポート42aから排気ポート42bに切り換えられ、前述したように容器31のネット外上部空間R4の圧力が低下し、インキIの液位が図1に実線で示す適正液位L1まで上昇する。その後、適正液位センサ48からの検出信号により切換制御弁42が排気ポート42bから閉路ポート42aに切り換えられ、液位の上昇が停止される。
【0030】
ところで、例えば、下蓋34のインキ取込口34a,39aからインキが何らかの要因によって大量に取り込まれて、液位が異常液位L3に上昇し、容器31のネット内上部空間R3及びネット外上部空間R4の容積が減少すると、液位センサ50が作動されて、切換制御弁42が閉路ポート42aから吸気ポート42cに切り換えられ、コンプレッサ21から排気管41を介して空気がネット外上部空間R4内に供給され、液位が異常液位L3から適正液位L1に下がり、気泡Kの適正な捕捉が行われる状態に切り換えられる。
【0031】
前記手動式の開閉弁43は、切換制御弁42或いは適正液位センサ48、最低液位センサ49が故障したときに用いられる。この開閉弁43の開閉操作は、液位検出機構44の液位表示管47の液位を作業者が目視して、インキの液位が最低液位L2になったとき、開閉弁43が開放され、適正液位L1になったとき閉鎖され、それらの作用は前述した通りである。
【0032】
なお、前記泡捕捉ネット38の内側面38bには、インキIに含まれる異物が堆積するので、使用時間が所定の時間を経過した場合には、容器固定用ボルト37を緩めて、固定用アーム35を連結ピン36を中心に回動して退避位置に移動した後、容器本体32を下蓋34から分離し、泡捕捉ネット38を洗浄したり、裏返したりして使用する。
【0033】
上記実施形態の液体の消泡装置によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、容器31の内部に泡捕捉ネット38を収容し、この泡捕捉ネット38の内側の上流側貯留室R1にインキIを導き、泡捕捉ネット38によってインキIに含まれる気泡Kを上方に移動させて、泡捕捉ネット38内のネット内上部空間R3からネット外上部空間R4に貯留するようにした。このため、インキIの気泡Kを確実に捕捉することができるとともに、攪拌機構が不要のため装置のコストを低減することができる。又、ローラ式の補助捕捉機構を設けなくてもよいので、この点からも装置のコストを低減することができる。
【0034】
(2)上記実施形態では、液位検出機構44を設けるとともに、適正液位センサ48、最低液位センサ49及び異常液位センサ50によって、切換制御弁42を制御するようにしたので、インキIの液位を気泡Kの捕捉に適した範囲に自動的に保持することができる。
【0035】
(3)上記実施形態では、泡捕捉ネット38を用いたので、インキに含まれるゴミやインキカスも除去することができる。
(4)上記実施形態では、容器31の容器本体32を取り外し可能に構成したので、容器本体32を取り外した状態で、泡捕捉ネット38の点検や清掃等の保守管理を容易に行うことができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○図4に示す別例は、前記泡捕捉ネット38に代えて、50〜300メッシュ程度の無数の細隙38aを有する泡捕捉部材としての有蓋円筒状の泡捕捉筒38´がホルダ39´に取り付けられ、下蓋34の外周側にインキ取込口34aが設けられ、下蓋34及びホルダ39´の中央に吐出口34b及び吐出口39bが形成されている。前記泡捕捉筒38´の外側に上流側貯留室R5が形成され、内側に下流側貯留室R6が形成されている。又、容器31の上部は、泡捕捉筒38´の外側に筒外上部空間R7が形成され、筒内に筒内上部空間R8が形成されている。この別例の他の構成は、図1の消泡装置の構成と同様である。
【0037】
この別例では、泡捕捉筒38´の外側に形成された上流側貯留室R5にインキIが取り込まれ、インキI自体は細隙38aを透過して泡捕捉筒38´の内側の下流側貯留室R6に導かれる。インキIに含まれる気泡Kは、泡捕捉筒38´の外側面38cに沿って上方に移動され、容器31の筒外上部空間R7に移動される。
【0038】
この別例においても前述した本実施形態と同様にインキIの気泡Kを確実に捕捉して消泡性能を向上することができるとともに、攪拌機構が不要のため装置のコストを低減することができる。
【0039】
○図4に示す別例において、泡捕捉筒38´の上端の蓋部を省略してもよい。又、泡捕捉筒38´に代えて、泡捕捉ネット38を用いる場合には、図示しないが姿勢保持枠により泡捕捉ネット38を保持する。
【0040】
○図5に示す別例は、上蓋54を備えた容器55の内部に50〜300メッシュ程度の無数の細隙56aを有する泡捕捉部材としての扁平シート状の泡捕捉ネット56を収容し、その片側にインキの上流側貯留室R9を設け、他側に下流側貯留室R10を設けている。前記容器55の底板には、インキを取り込む取込口55aと吐出する吐出口55bが形成されている。前記上流側貯留室R9の上方の上部空間R11と連通するように前記上蓋54には排気孔54aが形成されている。なお、下流側貯留室R10の上方には上部空間R11が形成され、前記泡捕捉ネット56によって前記上部空間R11と区画されている。前記上蓋54はボルト57を外すことにより開放されるようになっている。この別例のその他の構成及び作用は、図1に示す前記実施形態の構成及び作用と同様である。
【0041】
この別例においても、インキの消泡性能を向上することができ、装置の構成を簡素化して、部品点数を低減し、製造を容易にコストを低減することができる。
○図6に示す別例は、前記エルボ継手46を下蓋34に取り付け固定し、エルボ継手46に液位表示管47の下端部を連結し、液位表示管47の上端部にエルボ継手45を分離可能に図示しないシールリングを介して接続したものである。又、容器本体32の上蓋部32aには、排気口32bと連通するフランジ61が連結され、このフランジ61の上端部に排気管41の一端に設けた継手62が取り外し可能に接続されている。
【0042】
この別例では、容器固定用ボルト37を緩め、フランジ61から継手62を外して、容器本体32を下蓋34から取り外す際に、容器本体32が単体で下蓋34から分離される。このため、エルボ継手46及び液位表示管47が下蓋34に残り、液位検出機構44の各センサ48、49、50に接続されたリード線(図示略)を移動する必要がないので、そのリード線の断線を防止することができる。
【0043】
○前記切換制御弁42、液位検出機構44及び液位センサ50を省略し、手動式の開閉弁43のみにしてもよい。この場合には、液位表示管47の液位を目視して、手動式の開閉弁43を開閉操作することによりインキIの液位を適正液位に保持することができる。
【0044】
○図示しないが、前記容器本体32を透明のガラスや樹脂等により形成し、前記液位表示管47を省略してもよい。
○図示しないが、図1に示す泡捕捉ネット38に代えて、50〜300メッシュ程度の無数の細隙を有する有蓋円筒状の例えば金属製の泡捕捉筒を泡捕捉部材として用いてもよい。
【0045】
○図示しないが、液位が適正液位L1以上に上昇しない機構として例えば、ダイヤフラムポンプ13と容器31の間の配管16に流量制御弁を設け、前記異常液位センサ50を省略し、切換制御弁42を吸気ポート42cの無い電磁開閉弁としてもよい。
【0046】
○前記切換制御弁42の吸気ポート42cを省略し、液位センサ50が作動された場合に作業者がインキ貯留タンク14から配管15を引き上げて、インキに空気を混入し、異常液位L3を適正液位L1に下げるように構成してもよい。
【0047】
○前記ダイヤフラムポンプ13に代えて、ギヤポンプ、トロコイドポンプ、タービンポンプ等のインキ循環用のポンプを用いてもよい。
○インキ以外の例えばオイルや石油等の各種の液体に含まれる気泡を除去する消泡装置に具体化してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明をインキの消泡装置に具体化した一実施形態を示す縦断面図。
【図2】粘度コントローラ及び消泡装置を示す回路図。
【図3】消泡装置のブロック制御回路図。
【図4】この発明のインキの消泡装置の別例を示す縦断面図。
【図5】この発明のインキの消泡装置の別例を示す縦断面図。
【図6】この発明のインキの消泡装置の別例を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0049】
I…インキ、L1…適正液位、L2…最低液位、R1,R5,R9…上流側貯留室、R2,R6,R10…下流側貯留室、R11…上部空間、11…粘度コントローラ、17…印刷機、31,55…容器、34a,55a…取込口、32b…排気口、34b…吐出口、38…泡捕捉部材としての泡捕捉ネット、38a…細隙、38b…内側面、38c…外側面、38´…泡捕捉部材としての泡捕捉筒、42…切換制御弁、42a…閉路ポート、42b…排気ポート、42c…吸気ポート、48…適正液位センサ、49…最低液位センサ、51…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する容器と、
上記容器の内部に該容器を上流側貯留室と下流側貯留室に区画するように収容され、かつ液体が前記上流側貯留室から下流側貯留室に通過可能な無数の細隙を有する泡捕捉部材と、
前記容器に設けられ、前記上流側貯留室に液体を取り込む取込手段と、
前記容器に設けられ、前記上流側貯留室から前記細隙を透過して下流側貯留室に移動した液体を容器の外部に吐出する吐出手段と、
前記容器の上部に設けられ、前記上流側貯留室の液体から前記細隙を透過しないで前記容器の上部空間に移動した気泡よりなる空気を外部に排気する排気手段と
を備えたことを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項2】
請求項1において、前記泡捕捉部材は上下方向に指向する筒状に形成され、その内側に上流側貯留室が形成され、外側に下流側貯留室が形成されていることを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項3】
請求項1において、前記泡捕捉部材は上下方向に指向する筒状に形成され、その外側に上流側貯留室が形成され、内側に下流側貯留室が形成されていることを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項4】
請求項1において、前記泡捕捉部材はシート状に形成され、その片側に上流側貯留室が形成され、他側に下流側貯留室が形成されていることを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記容器には前記液体の液位を所定範囲に設定するための液位設定手段が設けられていることを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項6】
請求項5において、前記液位設定手段は、前記排気手段の排気経路に設けられた切換制御弁と、前記容器内の適正液位及び最低液位を検出する適正液位センサ及び最低液位センサと、前記最低液位センサにより最低液位が検出されたとき、前記切換制御弁を閉路ポートから排気ポートに切り換え制御し、前記適正液位が検出されたとき、前記切換制御弁を排気ポートから閉路ポートに切り換え制御する制御信号を出力する制御装置とにより構成されていることを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項7】
請求項6において、前記切換制御弁は、圧力空気供給源からの空気を前記容器の上部空間に供給する吸気ポートを備え、異常液位を検出する異常液位センサからの検出信号により前記制御装置から前記切換制御弁を吸気ポートに切り換える制御信号を出力するように構成されていることを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項8】
請求項2又は3において、筒状の前記泡捕捉部材は下端を開放し、かつ上部を袋状としたメッシュ織物により形成され、前記容器の底部に前記取込手段としての取込口が設けられていることを特徴とする液体の消泡装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、前記取込手段は液体としてのインキの粘度コントローラから吐出されたインキを取り込むようになっており、前記吐出手段は気泡を除去されたインキを印刷機に供給するようになっていることを特徴とする液体の消泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−320800(P2006−320800A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144649(P2005−144649)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(592165255)有限会社メイセイ (1)
【Fターム(参考)】