説明

液体クロマトグラフィ装置

【課題】
本発明の目的は、液体クロマトグラフィ装置において、分離カラムの不具合検出を容易にすることに関する。
【解決手段】
本発明は、分離カラムと、分離カラムに送液できるポンプと、ポンプによる送液の圧力を検出できるセンサーと、分離カラムの上流側に設けられ、廃液容器と連通可能な、上流側切り替えバルブと、分離カラムの下流流側に設けら、廃液容器と連通可能な、下流側切り替えバルブと、を備える液体クロマトグラフィ装置に関する。分離カラムの上流側及び下流側の切り替えバルブを廃液容器と連通するように切り替え、ポンプにより送液し、ポンプによる送液の圧力を検出することにより、分離カラムの不具合を検出できる。本発明により、分離カラムの異常を容易に検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タンパク質を網羅的に観察し、プロファイリングを行うプロテオーム研究の分野の重要性が広く認知されてきている。この分野の研究成果は診断と治療に広く応用されることが期待されている。臨床分野へのプロテオーム解析を導入する場合には、タンパク質を混合物の状態のまま酵素消化して、生成したペプチドを高分離能の液体クロマトグラフィで分離して質量分析装置で高分解能,高感度,高機能測定を行うことが必要である。臨床分野への応用の場合、対象となる成分は、血液,血清などの血液由来成分、尿,腹水,唾液,涙液,脳骨髄液,胸水,細胞組織からのタンパク質抽出液となるが、例えば、血清については2万2千種類以上のタンパク質が存在するといわれており、質量分析装置へ導入する前に、できるかぎり液体クロマトグラフィで分離する必要がある。また、分離能を向上させるために分離モードの異なる複数本のカラム連結した多次元液体クロマトグラフィ技術も普及している。多次元液体クロマトグラフィは、イオン交換カラムと逆相カラムをカラムスイッチングバルブで連結させ、電荷の差を利用して分離したペプチド分画を、トラップカラムに一旦濃縮して、さらに疎水性・親水性の差を利用して2次元的に分離することで、複雑な試料も分離可能な装置である。
【0003】
特公平4−62024には、一次元の液体クロマトグラフィ装置において、カラムにかかる圧力を測定し、カラムの異常を自動的に検出することが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特公平4−62024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、二次元液体クロマトグラフィ装置においては、1次元目の分離カラム、少なくとも2つのトラップカラム、及び2次元目の分離カラムが装置構成に含まれる。流路も、一般的な1次元クロマトグラフ装置に比べ著しく複雑である。試料および溶媒由来の不純物による流路内の配管またはカラムの詰まり等の問題が発生することがあり、そのつど質量分析計の後段流路から配管またカラムを取り外し、再接続や交換調整を行っている。装置を構成している配管、カラムの内径は20μm〜300μmであり、再接続することでデッドボリュームの構築や不純物の混入の原因となり分析精度が悪化することもある。
【0006】
本発明の目的は、液体クロマトグラフィ装置において、分離カラムの不具合検出を容易にすることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分離カラムと、分離カラムに送液できるポンプと、ポンプによる送液の圧力を検出できるセンサーと、分離カラムの上流側に設けられ、廃液容器と連通可能な、上流側切り替えバルブと、分離カラムの下流流側に設けら、廃液容器と連通可能な、下流側切り替えバルブと、を備える液体クロマトグラフィ装置に関する。分離カラムの上流側及び下流側の切り替えバルブを廃液容器と連通するように切り替え、ポンプにより送液し、ポンプによる送液の圧力を検出することにより、分離カラムの不具合を検出できる。
【0008】
好ましくは、上流側切り替えバルブ、下流側切り替えバルブ、ポンプ、及びセンサーを制御する制御機構を備える。
【0009】
好ましくは、ポンプが洗浄液を送液でき、異常が検出された分離カラムに洗浄液を送液する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、分離カラムの異常を容易に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について説明する。尚、図面はもっぱら説明のためのものであって、権利範囲を減縮するものではない。
【実施例1】
【0012】
本実施例では、2つの分離カラムの前後に廃液ボトル側に詰まり検知バルブを経由し廃液ボトルに分岐させる流路を構築する。問題が発生した際に自動的にバルブを廃液ボトル側に切替え、ポンプ内の圧力センサーの変動値から問題箇所を把握する。また、洗浄工程を実施し詰まりの解消を試みることでメンテナンスを行う。
【0013】
図1は、簡易メンテナンス機能付き多次元液体クロマトグラフ質量分析装置の一例として2次元液体クロマトグラフィの概略図を示す。
【0014】
本装置は、第1の分離カラムと、第1の分離カラムに送液できる第1のポンプと、第1のポンプによる送液の圧力を検出できる第1のセンサーと、第1の分離カラムの上流側に設けられ、廃液容器と連通可能な、第1の上流側切り替えバルブと、第1の分離カラムの下流流側に設けら、廃液容器と連通可能な、第1の下流側切り替えバルブと、第2の分離カラムと、第2の分離カラムに送液できる第1のポンプと、第2のポンプによる送液の圧力を検出できる第1のセンサーと、第2の分離カラムの上流側に設けられ、廃液容器と連通可能な、第2の上流側切り替えバルブと、第2の分離カラムの下流流側に設けら、廃液容器と連通可能な、第2の下流側切り替えバルブと、を含む。
【0015】
より具体的には、装置構成は、前段分離カラム部A,トラップカラム部B,後段分離カラム部Cから構成される。前段分離カラム部Aは、溶離液13と溶離液14と溶離液13,14を送液する圧力センサー機能を有するポンプ12とポンプ12の後段に配置し試料を分離カラム10に導入する試料導入装置11と試料を分離する分離カラム10から構成される。分離カラム10は通常、陽イオン交換カラム (strong cation ion
chromatography column)が用いられる。溶離液13は、分離カラム10に用いるカラムの種類によって適宜選択されるが、本実施例では、0.1%HCOOH(pH3.0)を用い、流量10μL/min で送液を行った。溶離液14はCH3CN 溶液であり、配管の洗浄用に用いられる。試料導入装置11は、ポンプ12の後段と分離カラム10の前段に位置し、シリンジで試料を流路内に導入することすることでポンプ12からの溶出液ともに分離カラム10に試料を導入できる。また、分離カラム10の分離はイオン強度に応じて分離を行うが、イオン強度の異なる溶離液を試料導入装置のポートに設置し、試料を分離カラム10に吸着させたのちに、順次導入しイオン交換分離を行った。本実施例では、試料に、ヒト血清(SIGMA社、H1388)をMultiple Affinity Removal Column System (Agilent Technologies社、5185−5984)を用いて血清中から6種類の主要タンパク質を除去したのちに、還元アルキル化を行い、トリプシン消化を行った5mg/mL血清試料を用いて、1μL供試した。イオン強度の異なる溶離液は0.1% HCOOHを含む0mM HCOONH4,50M HCOONH4,100mM HCOONH4,1000
mM HCOONH4を試料導入装置11のサンプルポートに設置し、20μLずつ導入した。イオン強度の異なる溶離液として、他に、CH3COONH4等の不揮発性塩を含む溶離液を用いることも可能である。
【0016】
トラップカラム部Bは溶離液7と溶離液8と溶離液7,8を送液する圧力センサー機能を有するポンプ9と分離カラム10で分離した試料を濃縮するトラップカラム4とトラップカラム5と、トラップカラムの流路およびポンプ9からの流路とポンプ12からの流路を切り替えることを可能にするバルブ3から構成される。分離カラム10の前後には、詰まりが発生した場合に流路を切り替えることを可能にする詰まり検知バルブ17と18が設置されている。バルブ3と詰まり検知バルブ17と詰まり検知バルブ18は制御装置
21で制御されており、バルブ3の切り替えるタイミングは、あらかじめ制御装置21にプログラムを作成しておき、バルブ3を一定時間間隔で切り替えることにより、流路を分離カラム10⇒トラップカラム4⇒廃液ボトル6から分離カラム10⇒トラップカラム5⇒廃液ボトル6へ切替えることができる。このバルブ3の切替えにより、分離カラム10から溶出した試料成分をトラップカラム4とトラップカラム5に一定時間間隔で濃縮することが可能となる。詰まり検知バルブ18の切り替えは、装置内の配管またはカラムに詰まりが発生した場合に、制御装置21からの制御により詰まり検知バルブ18を切り替え、分離カラム10⇒詰まり検知バルブ18⇒バルブ3から分離カラム10⇒詰まり検知バルブ18⇒廃液ボトル15へと流路の変更を行う。詰まりが発生したかどうかは、ポンプ12の圧力センサーの値により判断し、あらかじめ制御装置21に詰まりが発生した場合の圧力値を設定しておき、その値以上になると詰まりが発生したと判断する。この値は、測定に用いる分離カラム10およびトラップカラム4、5の背圧値により適宜決定される。今回用いたSCXカラム(Poly LC社製)とトラップカラム(京都モノテック社製)の流量10μL/min での背圧値は合わせて9MPa程度であるため、詰まり発生したかどうかを判断するための圧力値は本実施例では10MPa以上とした。ポンプ12の圧力値が10MPa以上を示した場合、装置内の流路またはカラム内に詰まりが発生したと判断し、バルブ18の切り替えを行い、圧力値の変動幅を観察する。ポンプ12の圧力値に変動がない場合は詰まり検知バルブ18より前段が、圧力値が分離カラム2の背圧からトラップカラムの背圧を引いた値に変動した場合には詰まり検知バルブより後段に詰まり発生箇所が存在していることが分かる。圧力値に変動がない場合には、次に、制御装置21の制御により自動的に詰まり検知バルブ17が切り替えられ、試料導入装置11⇒詰まり検知バルブ17⇒分離カラム10から試料導入装置11⇒詰まり検知バルブ17⇒廃液ボトル15へと流路の変更を行う。ポンプ12の圧力値に変動がない場合には、詰まり検知バルブ17より前段に、圧力値が0〜0.5 Mpaの値に変動した場合には、詰まり検知バルブ17より後段に詰まり発生箇所が存在していることが分かる。図2に詰り検知バルブ17と18の制御機構による詰り箇所把握までのフローチャートを示す。
【0017】
後段分離カラム部Cは、質量分析装置1と試料を分離する分離カラム2と分離カラム2の前後には、詰まりが発生した場合に流路を切り替えることを可能にする詰まり検知バルブ19と20から構成される。分離カラム2には、逆相カラムまたはモノリスカラムが用いられ、疎水性相互作用により分離が行われる。溶離液7と溶離液8の組成は、カラムの種類により適宜選択されるが、本実施例では、溶離液7に0.1% HCOOHを含む2%CH3CN水溶液を溶離液8には0.1% HCOOHを含む98%CH3CN水溶液を用い、制御装置21にあらかじめ設定したプログラムに従い溶離液7と溶離液8を混合し、流量200nL/min で送液を行った。バルブ3と詰まり検知バルブ19と詰まり検知バルブ20は制御装置21で制御されており、バルブ3の切り替えるタイミングは、あらかじめ制御装置21にプログラムを作成しておき、バルブ3を一定時間間隔で切り替えることにより、流路をポンプ9⇒トラップカラム4⇒分離カラム2からポンプ9⇒トラップカラム5⇒分離カラム2へ切り替えることができる。このバルブ3の切り替えにタイミングを合わせて、溶離液7と溶離液8の混合を開始させ、ポンプ9からの送液により、トラップカラムへ濃縮した試料成分を溶出させ分離カラム2で分離することが可能である。詰まり検知バルブ20の切り替えは、装置内の配管またはカラムに詰まりが発生した場合に、制御装置21からの制御により詰まり検知バルブ20を切り替え、分離カラム2⇒詰まり検知バルブ20⇒質量分析装置1から分離カラム2⇒詰まり検知バルブ20⇒廃液ボトル
16へと流路の変更を行う。詰まりが発生したかどうかは、ポンプ9の圧力センサーの値により判断し、あらかじめ制御装置21に詰まりが発生した場合の圧力値を設定しておき、その値以上になると詰まりが発生したと判断する。この値は、測定に用いる分離カラム2およびトラップカラム4、5の背圧値により適宜決定される。今回用いたモノリスカラム(GLサイエンス社製)とトラップカラム(京都モノテック社製)流量200nL/
min での背圧値は合わせて3MPa程度であるため、詰まりが発生したかどうかを判断するための圧力値は本実施例では5Mpa以上とした。ポンプ9の圧力値が5Mpa以上を示した場合、装置内の流路またはカラム内に詰まりが発生したと判断し、バルブ20の切り替えを行い、圧力値の変動幅を観察する。ポンプ9の圧力値に変動がない場合は詰まり検知バルブ20より前段が、5Mpa以下に変動した場合には詰まり検知バルブ20より後段に詰まり発生箇所が存在していることが分かる。圧力値に変動がない場合には、次に、制御装置21の制御により自動的に詰まり検知バルブ19が切り替えられ、バルブ3⇒詰まり検知バルブ19⇒分離カラム2からバルブ3⇒詰まり検知バルブ19⇒廃液ボトル16へと流路の変更を行う。ポンプ12の圧力値に変動がない場合には、詰まり検知バルブ19より前段に、圧力値がトラップカラムの背圧値に変動した場合には詰まり検知バルブ19より後段に詰まり発生箇所が存在していることが分かる。図3に詰り検知バルブ
19と20の制御機構による詰り箇所把握までのフローチャートを示す。
【0018】
このように詰まり発生箇所が把握された後、制御装置21の制御により、詰まりを取り除くために洗浄が行われる。詰まり検知バルブ17,18の切り替えにより(1)詰まり検知バルブ17から前段、(2)詰まり検知バルブ17から詰まり検知バルブ18の間、(3)詰まり検知バルブ18より後段のいずれかにに詰まり発生箇所が存在することが確認される。詰まり発生箇所が把握された後に、制御装置21の制御により、自動的にバルブ3と詰まり検知バルブ17、18、19が切り替えられ、ポンプ12またはポンプ9から詰まり発生箇所に適した洗浄液が送液され洗浄が行われる。(1)の場合は、詰まり検知バルブ17が試料導入装置11⇒詰まり検知バルブ17⇒廃液ボトル15の流路に切り替えられ、溶離液14がポンプ12により100%の組成で送液し、一定時間洗浄が行われる。(2)の場合は、詰まり検知バルブ18が分離カラム10⇒詰まり検知バルブ18⇒廃液ボトル15の流路に切り替えられ、試料導入装置11のサンプルポートに設置した1000mM HCOONH4がポンプ12により溶離液13が送液される流路に導入され、分離カラム10の洗浄が一定時間行われる。(3)の場合は、詰まり検知バルブ19をバルブ3⇒詰まり検知バルブ19⇒廃液ボトル16の流路に切り替え、バルブ3も切り替えることによりポンプ12⇒トラップカラム4⇒廃液ボトル6からポンプ9⇒トラップカラム4⇒廃液ボトル16またはポンプ12⇒トラップカラム5⇒廃液ボトル6からポンプ9⇒トラップカラム5⇒廃液ボトル16へと流路を切り替え、溶離液8を100%の組成でポンプ9により送液され、洗浄が一定時間行われる。ある一定時間洗浄を行い、ポンプ12の圧力値が10Mpa以下に戻った場合にメンテナンスが完了する。洗浄により効果が見られない場合は、配管およびカラムの交換を実施し、メンテナンスを行う。
【0019】
同様に、詰まり検知バルブ19,20の切り替えにより(4)詰まり検知バルブ19から前段、(5)詰まり検知バルブ19から詰まり検知バルブ20の間、(6)詰まり検知バルブ20より後段のいずれかにに詰まり発生箇所が存在することが確認される。詰まり発生箇所が把握された後に、制御装置21の制御により、自動的にバルブ3と詰まり検知バルブ19,20が切り替えられ、ポンプ9から詰まり発生箇所に適した洗浄液が送液され洗浄が行われる。(4)の場合は、詰まり検知バルブ19がバルブ3⇒詰まり検知バルブ19⇒廃液ボトル16の流路に切り替えられ、溶離液8がポンプ9により100%の組成で送液し、トラップカラム4またはトラップカラム5の洗浄が行われる。(5)の場合は、詰まり検知バルブ20が分離カラム2⇒詰まり検知バルブ20⇒廃液ボトル16の流路に切り替えられ、溶離液8がポンプ9により100%の組成で送液し、分離カラム2の洗浄が行われる。(6)の場合は、洗浄を行うと質量分析装置に不純物が導入されることになり、測定精度の劣化をまねく恐れがあるため洗浄は行わず、詰まり検知バルブ20と質量分析装置1の間の配管を交換する。ある一定時間洗浄を行い、ポンプ9の5Mpa以下に戻った場合にメンテナンスが完了する。洗浄により効果が見られない場合は、手動で配管およびカラムの交換を実施し、メンテナンスを行う。
【0020】
配管や詰まりが発生した場合、通常は装置の最前段、図1では質量分析装置に近い側から順次配管やカラム等の脱着や交換を行い、ポンプ圧力値の変動幅から詰まり箇所を特定し、装置の復旧を行っていた。この方法であるとメンテナンスに手間がかかるのと同時に、配管やカラムの脱着の際に、デッドボリュームの形成や不純物の混入が生じる恐れがあった。そのため、測定の精度やスループットまたは再現性に多大な影響を及ぼしていた。しかし、本実施例を用いることで、的確に詰まり箇所を容易に発見することが可能であり、洗浄工程を実施し詰まりの解消を試みることで、カラムや配管の脱着と交換が最小限にとどめることができるため、デッドボリュームの形成や不純物の混入を最小限におさえることが可能となる。そのため、短時間で装置のメンテナンスが完了し、測定の精度や再現性を確保しつつ、安定したデータの取得が可能となる。
【0021】
本実施例により、自動的に詰まり箇所を把握し、洗浄工程で詰りを取り除くことが可能である。洗浄工程において詰りを取り除けなかった場合でも、詰まり箇所を把握できているので測定者による配管およびカラム交換や再接続の煩雑な作業をできるだけ減らし、簡易な装置メンテナンスを可能にする。また、デッドボリュームの構築や不純物の混入の原因となり分析精度が悪化する恐れを防ぎ、信頼性の高いデータが得られることを可能にする。
【実施例2】
【0022】
実施例2は、実施例1のように複数のカラムを用いることなく、1本のカラムにより試料の分離を行う液体クロマトグラフィ質量分析計に関するものである。本実施例の主な用途は、疾患プロテオーム分野において疾患に関連したマーカーや代謝関連マーカー等のバイオマーカー探索研究に用いられており、試料として血液,血清などの血液由来成分、尿,腹水,唾液,涙液,脳骨髄液,胸水,細胞組織からのタンパク質抽出液を用いる。
【0023】
以下、本実施例について、図4を用いて説明する。本装置は、溶離液405と溶離液
406、溶離液405と溶離液406を送液する圧力センサー機能を有するポンプ404と試料をポンプ404の送液により導入する試料導入装置403と分離カラム402および質量分析装置401から構成される。また、分離カラム402の前後には、制御装置
410の制御により流路の変更を行うことが可能である詰まり検知バルブ407と詰まり検知バルブ408が配置され、廃液ボトル409へ流路を変更することができる。本実施例では、疎水性相互作用により分離を行い、10MPa以上の高い背圧のもとでも使用可能なカラムを用いている。溶離液405には0.1% HCOOHを含む2%CH3CN 水溶液を溶離液6には0.1% HCOOHを含む98%CH3CN 水溶液を用い、制御装置
410にあらかじめ設定したプログラムに従い溶離液405と溶離液406を混合し、流量5μL/min で送液を行った。詰まりが発生したかどうかは、ポンプ404の圧力センサーの値により判断し、あらかじめ制御装置410に詰まりが発生した場合の圧力値を設定しておき、その値以上になると詰まりが発生したと判断する。この値は分離カラム402の背圧値により適宜決定されるが、今回分離カラム402には逆相カラム(資生堂製)を用い、流量5μL/minでの背圧値は合わせて3MPa程度であるため、詰まりが発生したかどうかを判断するための圧力値は本実施例では5Mpa以上とした。ポンプ404の圧力値が5Mpa以上を示した場合、装置内の流路またはカラム内に詰まりが発生したと判断し、バルブ408の切り替えを行い、分離カラム402⇒詰まり検知バルブ408⇒質量分析計401から分離カラム402⇒詰まり検知バルブ408⇒廃液ボトル409へ流路の切替えを行い、圧力値の変動幅を観察する。ポンプ404の圧力値に変動がない場合は詰まり検知バルブ408より前段が、5Mpa以下に変動した場合には詰まり検知バルブ408より後段に詰まり発生箇所が存在していることが分かる。圧力値に変動がない場合には、次に、制御装置410の制御により自動的に詰まり検知バルブ407が切り替えられ、試料導入装置403⇒詰まり検知バルブ407⇒分離カラム402から、試料導入装置403⇒詰まり検知バルブ407⇒廃液ボトル409へと流路の変更を行う。ポンプ404の圧力値に変動がない場合には、詰まり検知バルブ407より前段に、0〜
0.5MPa の背圧値に変動した場合には詰まり検知バルブ407より後段に詰まり発生箇所が存在していることが分かる。
【0024】
このように詰まり発生箇所が把握された後、制御装置410の制御により、詰まりを取り除くために洗浄が行われる。詰まり検知バルブ407,408の切り替えにより(1)詰まり検知バルブ407から前段、(2)詰まり検知バルブ7から詰まり検知バルブ408の間、(3)詰まり検知バルブ408より後段のいずれかにに詰まり発生箇所が存在することが確認される。詰まり発生箇所が把握された後に、制御装置410の制御により、自動的に詰まり検知バルブ407,408が切り替えられ、ポンプ404から詰まり発生箇所に適した洗浄液が送液され洗浄が行われる。(1)の場合は、詰まり検知バルブ7が試料導入装置403⇒詰まり検知バルブ407⇒廃液ボトル409の流路に切り替えられ、溶離液406がポンプ404により100%の組成で送液し、一定時間洗浄が行われる。(2)の場合は、詰まり検知バルブ8が分離カラム2⇒詰まり検知バルブ408⇒廃液ボトル409の流路に切り替えられ、溶離液406がポンプ404により100%の組成で送液し、一定時間洗浄が行われる。(3)の場合は、詰まり検知バルブ407を試料導入装置403⇒詰まり検知バルブ407⇒廃液ボトル409と流路を切り替え、溶離液406を100%の組成でポンプ404により送液され、洗浄が一定時間行われる。ある一定時間洗浄を行い、ポンプ404の圧力値が5Mpa以下に戻った場合にメンテナンスが完了する。洗浄により効果が見られない場合は、手動で配管およびカラムの交換を実施し、メンテナンスを行う。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例1に係る多次元液体クロマトグラフ装置の概略図。
【図2】検知バルブ17と18の制御機構による詰り箇所把握までのフローチャト。
【図3】検知バルブ19と20の制御機構による詰り箇所把握までのフローチャト。
【図4】実施例2に係る液体液体クロマトグラフ装置の概略図。
【符号の説明】
【0026】
1,401 質量分析装置
2,10,402 分離カラム
3 バルブ
4,5 トラップカラム
6,15,16,409 廃液ボトル
7,8,13,14,405,406 溶離液
9,12,404 ポンプ
11,403 試料導入装置
17,18,19,20,407,408 詰り検知バルブ
21,410 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分離カラムと、
第1の分離カラムに送液できる第1のポンプと、
第1のポンプによる送液の圧力を検出できる第1のセンサーと、
第1の分離カラムの上流側に設けられ、廃液容器と連通可能な、第1の上流側切り替えバルブと、
第1の分離カラムの下流流側に設けら、廃液容器と連通可能な、第1の下流側切り替えバルブと、
第2の分離カラムと、
第2の分離カラムに送液できる第1のポンプと、
第2のポンプによる送液の圧力を検出できる第1のセンサーと、
第2の分離カラムの上流側に設けられ、廃液容器と連通可能な、第2の上流側切り替えバルブと、
第2の分離カラムの下流流側に設けら、廃液容器と連通可能な、第2の下流側切り替えバルブと、を備える多次元液体クロマトグラフィ装置。
【請求項2】
請求項1記載の液体クロマトグラフィ装置であって、
第1の上流側切り替えバルブ、第1の下流側切り替えバルブ、第1のポンプ、第1のセンサー、第2の上流側切り替えバルブ、第2の下流側切り替えバルブ、第2のポンプ、及び第2のセンサーを制御する制御機構を備え、
第1の分離カラム、及び第2の分離カラムの異常を自動検出することを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体クロマトグラフィ装置であって、
第1のポンプ、及び第2のポンプが洗浄液を送液でき、
異常が検出された分離カラムに洗浄液を送液することを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。
【請求項4】
請求項1記載の液体クロマトグラフィ装置であって、
第2の下流側切り替えバルブの下流側が、質量分析装置と連通していることを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。
【請求項5】
分離カラムと、
分離カラムに送液できるポンプと、
ポンプによる送液の圧力を検出できるセンサーと、
分離カラムの上流側に設けられ、廃液容器と連通可能な、上流側切り替えバルブと、
分離カラムの下流流側に設けら、廃液容器と連通可能な、下流側切り替えバルブと、を備える液体クロマトグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−209334(P2008−209334A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48370(P2007−48370)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)