説明

液体供給システム及び液体収容容器

【課題】カートリッジの誤挿入を防止してインク沈降を確実に防止できる液体供給システム及び液体収容容器を提供する。
【解決手段】液体収容容器5内の液体が容器装着部4側に供給される液体供給システム100aにおいて、容器装着部4は、突起部12aを有し、液体収容容器5は、突起部12aをガイドするとともに係合することで、液体収容容器5を鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても容器装着部4に対して装着可能とする一対の固定部材30,40を有し、一対の固定部材30,40は進入路と退出路と、をそれぞれ含み、一方の固定部材30は、進入路を介して第1の位置にある突起部12aを進入させるとともに、退出路を介して第2の位置の突起部12aを退出させ、他方の固定部材40は、進入路を介して第2の位置にある突起部12aを進入させるとともに、退出路を介して第1の位置の突起部12aを退出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給システム及び液体収容容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、インク滴を吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して往復動作するキャリッジに搭載し、キャリッジにカートリッジを搭載してキャリッジ上に形成されたインク供給針を介して記録ヘッドにインクを供給する方式が知られている。
【0003】
ところで、インクジェット記録方法においては、染料インクに代わり、顔料インクの使用が拡がっている。顔料インクを用いる場合でも、カートリッジを利用するのが便利である。しかしながら、顔料インクは水性分散液であるため、顔料粒子の沈降という問題が存在する。顔料粒子が沈降すると、均一な顔料濃度のインクを記録ヘッドに安定して供給することができなくなってしまう。
そこで、ユーザーにカートリッジの上下方向を入れ替えて装着させることによりカートリッジ内のインク沈降を防止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−262823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、ユーザーがカートリッジを装着する際、該カートリッジの上下を確実に認識していないと、上下方向を入れ替えずに再装着してしまい、カートリッジ内のインク沈降を防止することができない可能性がある。そこで、ユーザーに意識させることなく、カートリッジの誤挿入を防止することのできる新たな機構の提供が望まれていた。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、カートリッジの誤挿入を防止してインク沈降を確実に防止できる液体供給システム及び液体収容容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の液体供給システムは、液体を収容した液体収容容器が容器装着部に着脱可能とされ、前記液体収容容器の装着時に該液体収容容器内の前記液体が前記容器装着部側に供給される液体供給システムにおいて、前記容器装着部は、前記液体収容容器に係合することで該液体収容容器を当該容器装着部に保持可能な突起部を有し、前記液体収容容器は、前記突起部をガイドするとともに該突起部に係合することで、該液体収容容器を鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても前記容器装着部に対して装着可能とする一対の固定部材を有し、前記一対の固定部材は、前記容器装着部に対する前記液体収容容器の装着動作時に前記突起部を進入させる進入路と、前記液体収容容器の脱抜動作時に前記突起部を前記係合部から退出させる退出路と、をそれぞれ備え、前記突起部は、前記容器収容容器の着脱動作に伴って前記第1の位置及び前記第2の位置間を相互に移動可能とされ、一方の前記固定部材は、前記進入路を介して前記第1の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路を介して前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第1の位置から前記第2の位置に移動した前記突起部を退出させ、他方の前記固定部材は、前記進入路を介して前記第2の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路を介して前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第2の位置から前記第1の位置に移動した前記突起部を退出させることを特徴とする。
また、本発明の液体供給システムは、液体を収容した液体収容容器が着脱自在とされる容器装着部を有し、前記液体収容容器の装着時に該液体収容容器内の前記液体が前記容器装着部側に供給される液体供給システムにおいて、前記液体収容容器に係合することで該液体収容容器を当該容器装着部に保持可能な突起部と、前記突起部をガイドするとともに該突起部に係合することで、前記液体収容容器を鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても前記容器装着部に対して装着可能とする一対の固定部材と、を備え、前記一対の固定部材は、前記容器装着部に対する前記液体収容容器の装着動作時に前記突起部を進入させる進入路と、前記液体収容容器の脱抜動作時に前記突起部を前記係合部から退出させる退出路と、をそれぞれ有し、前記突起部は、前記容器収容容器の着脱動作に伴って前記第1の位置及び前記第2の位置間を相互に移動可能とされ、一方の前記固定部材は、前記進入路を介して前記第1の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路を介して前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第1の位置から前記第2の位置に移動した前記突起部を退出させ、他方の前記固定部材は、前記進入路を介して前記第2の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路を介して前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第2の位置から前記第1の位置に移動した前記突起部を退出させることを特徴とする。
【0008】
本発明の液体供給システムによれば、例えば一方の固定部材に係合して容器装着部に装着されていた液体収容容器を該容器装着部から一旦脱抜すると、突起部の位置が第2の位置に切り替わる。よって、脱抜後に固定部材を容器装着部に再装着するためには液体収容容器の上下を反転させて他方の固定部材側を突起部に係合させる必要がある。よって、固定部材の挿入方向が間違っている場合、液体収容容器を容器装着部に装着することができない。したがって、ユーザーは装着可能な向きで容器装着部に液体収容容器を挿入すればよいので、該液体収容容器の上下方向を特に意識しなくても液体収容容器の誤装着を防止できる。
【0009】
また、上記液体供給システムにおいては、前記容器装着部は、前記突起部を前記第1の位置又は前記第2の位置に移動させる方向に付勢する付勢手段を含むのが好ましい。
この構成によれば、突起部が付勢力によって第1の位置又は第2の位置で安定保持されるようになる。
【0010】
また、上記液体供給システムにおいては、前記容器装着部に前記液体収容容器が装着された際、該液体収容容器の中央部に形成された液体供給口に接続し、当該液体収容容器内の前記液体を前記容器装着部側に供給可能とする液体供給針を備えるのが好ましい。
この構成によれば、液体収容容器は、容器装着部に対して上下方向を入れ替えた場合でも、容器装着部の液体供給針に対する液体供給口の高さが変化しないので、該液体供給針が液体供給口に確実に接続することができる。
【0011】
本発明の液体収容容器は、容器装着部に着脱可能とされ、前記容器装着部側に供給する液体を収容した液体収容容器であって、前記容器装着部に設けられて該容器装着部に対する前記液体収容容器の着脱動作に伴って第1の位置及び第2の位置間を相互に移動可能な突起部をガイドすることで、鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても該液体収容容器を前記容器装着部に装着させる一対の固定部材を有し、前記一対の固定部材は、前記容器装着部に対する前記液体収容容器の装着動作時に前記突起部を進入させる進入路と、前記液体収容容器の脱抜動作時に前記突起部を退出させる退出路と、をそれぞれ備え、一方の前記固定部材は、前記進入路が前記第1の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路が前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第1の位置から前記第2の位置に移動した前記突起部を退出させ、他方の前記固定部材は、前記進入路が前記第2の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路が前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第2の位置から前記第1の位置に移動した前記突起部を退出させることを特徴とする。
【0012】
本発明の液体収容容器によれば、例えば一方の固定部材が突起部に係合していたものを容器装着部から一旦脱抜すると、突起部の位置が第2の位置に切り替わるため、脱抜後、容器装着部に再装着するためには上下を反転させて他方の固定部材側を突起部に係合させる必要がある。よって、液体収容容器の上下方向が間違っている場合、該液体収容容器を容器装着部に装着できない。したがって、ユーザーは装着可能な向きで容器装着部に液体収容容器を挿入すればよいので、該液体収容容器の上下方向を特に意識しなくても液体収容容器の誤装着を防止できる。
【0013】
また、上記液体収容容器においては、前記固定部材は、前記退出路からの前記突起部の進入を防止する侵入防止部を備えるのが好ましい。
この構成によれば、侵入防止部によって突起部が退出路から固定部材内に進入するのを確実に防止できる。
【0014】
また、上記液体収容容器においては、前記固定部材は、前記突起部が当接する当接面が複数の高さを有した段差構造となっているのが好ましい。
この構成によれば、当接面の高さを例えば段階的に複数変化させることで固定部材内における突起部の移動方向を規制することができる。
【0015】
また、上記液体収容容器においては、前記液体を前記容器装着部側に供給可能な液体供給針が接続される液体供給口が、鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても該液体供給針と接続されるように前記一対の固定部材の中央部に配置されているのが好ましい。
この構成によれば、液体供給口が固定部材の中央部に配置されるので、容器装着部に対して上下方向を入れ替えた状態で液体収容容器を装着した場合でも、容器装着部の液体供給針に対する液体供給口の高さが変化しないので、該液体供給針と液体供給口とを確実に接続できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成図。
【図2】キャリッジの構成を示す斜視図。
【図3】固定部材の一実施例に係る構成図。
【図4】カートリッジの一実施例に係る構成図。
【図5】キャリッジにカートリッジが装着された状態を示す図。
【図6】(a),(b)は固定部材の構成を示す斜視図。
【図7】カートリッジの装着時の固定部材の動作を説明図。
【図8】カートリッジの脱抜時の固定部材の動作を説明図。
【図9】変形例に係るカートリッジの構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る一実施形態について説明する。本実施形態では、液体供給システム及び液体収容容器を含む液体噴射装置の一例としてのインクジェット装置を例に挙げ、液体供給システム及び液体収容容器の一実施例について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置(以下、記録装置100と称す)の概略構成を示すものである。図1に示すように、記録装置100は、ケース本体1と蓋体2とから構成されるケース1Aと、該ケース1Aに収容されるプラテン3及び該プラテン3上を往復移動可能なキャリッジ4と、を備えている。キャリッジ(容器装着部)4は、2種類のインクをそれぞれ収容したカートリッジ(液体収容容器)5、6が着脱可能に搭載されている。
【0019】
図2は、上記キャリッジ4の構成を示す斜視図である。図2に示すように、キャリッジ4は、その下面に各カートリッジ5、6からインクの供給を受けるインクジェット記録ヘッド7、8が設けられている。また、キャリッジ4の上面にはカートリッジ5、6の上面を露出させて収容するように垂直壁により箱型の囲いを設けてカートリッジホルダー9が一体に作り付けられている。
【0020】
カートリッジホルダー9は、2種類のカートリッジ5、6を所定の領域に収容するようにリブ10により2つの区画に区分され、それぞれのカートリッジ取付領域を構成する取付面11a、11bの、略中心部には窓11c、11dが形成されている。窓11c、11dは後述する固定部材12、13の固定用突起(突起部)12a、13aをカートリッジ収容領域側に突出させるためのものである。
【0021】
また、カートリッジホルダー9は、カートリッジ5,6のインク供給口(液体供給口)22に対応する凹部9aが形成されており、凹部9a内にインク供給口22に接続され、カートリッジ5,6内のインクをインクジェット記録ヘッド7、8にそれぞれ供給するためのインク供給針(液体供給針)14が形成されている。
【0022】
窓11c、11dは、固定用突起12a、13aの移動を一定の角度範囲(L)に規制するように円弧状の貫通孔として形成されている。また窓11c、11dの中心線で、かつ窓11c、11dの下方には取り付け孔11e、11fが形成されている。これら窓11c、11dと固定部材12、13とによりカートリッジ5,6をキャリッジ4に固定するワンプッシュ型の固定部材が構成されている(図3参照)。
【0023】
図3は、上述した固定部材12,13の一実施例に係る構成を示すものであり、この実施例ではそれぞれ同形に構成されている。具体的に図3(a)は固定部材12,13の構成を示す斜視図であり、図3(b)は取付面11a、11bに取り付けられた固定部材12,13を一方面側から視た図であり、図3(c)は取付面11a、11bに取り付けられた固定部材12,13を他方面側から視た図である。
【0024】
固定部材12(13)は、図3(a)に示すように、アーム12b(13b)の一端に、取付面11a、11bの厚みよりも長く、かつカートリッジの挿入に障害とならない程度の長さの固定用突起12a(13a)が、アーム12b(13b)の長手方向に直交するように、また他端には取り付け孔11e(11f)に回動可能に挿入される取り付け部12c(13c)が、固定用突起12a(13a)と同一方向に形成されている。
【0025】
取り付け部12c(13c)の先端には抜け防止のテーパ部12d(13d)と割り溝12e(13e)とが形成されている。アーム12b(13b)は、後述する固定部材30の凹凸にあわせて固定用突起12a(13a)の位置を、固定部材30の面方向と交差する方向にも変位可能に構成されていると共に、前記固定部材30に対して所定の当接力で当接可能な弾性力を有するように構成されている。これにより固定用突起12a(13a)を固定部材30に確実に当接させて、当接不良に起因するカートリッジの不確実な固定を防止することができる。
【0026】
固定部材12,13は、図3(b)、(c)に示すように、一端に設けられた固定用突起12a(13a)が窓11c(11d)に挿入され、他端に設けられた取り付け部12c(13c)のテーパ部12d(13d)が取り付け孔11e(11f)に押し込まれることで割り溝12e(13e)により変形して取り付け孔11e(11f)に回動可能に嵌まり込んでいる。これにより、固定用突起12a(13a)が窓11c(11d)を介して取付面11a、11bの一方面側に突出し、窓11c内に沿って移動可能とされている。
【0027】
また、固定部材12,13は、図3(b)に示すように、アーム12b(13b)における固定用突起12a(13a)の延出方向と反対の面にバネ取付用突起12f(13f)が設けられている。また、取付面11a、11bの他方面(固定用突起12a(13a)が突出する面と反対の面)側には、窓11c、11d及び取り付け孔11e、11fの中心線で、かつ取り付け孔11e、11fの下方にはバネ取付用突起12g(13g)が設けられている。
【0028】
上記バネ取付用突起12f(13f)及びバネ取付用突起12g(13g)には、バネ(付勢手段)15が取り付けられている。バネ15は、バネ取付用突起12f(13f)及びバネ取付用突起12g(13g)に対し、その取付部分が摺動可能となっている。これにより、バネ15は固定部材12,13が回動した場合でも捩れ等が生じることが防止されている。
【0029】
固定部材12,13に付与されるバネ15の付勢力は、バネ取付用突起12g(13g)と固定部材12,13の回動中心となる取り付け孔11e(11f)との位置関係により、固定部材12,13の固定用突起12a(13a)が窓11c(11d)の図3(c)における一端或いは他端に位置する時にその他の位置に位置する時より小さくなるように設定されている。窓11c(11d)の一端は本実施形態における第1の位置H1に相当し、窓11c(11d)の他端は第2の位置H2に相当する。これにより、固定部材12,13は、窓11c(11d)内において、固定用突起12a(13a)が上記第1の位置H1及び第2の位置H2において安定保持される構造(ニ安定保持構造)となっている。
【0030】
図4は上述のカートリッジ5、6の一実施例に係る構成を示すものであり、この実施例ではそれぞれ同形に構成されている。カートリッジ5、6は、それぞれ異なる色のインクを収容している。本実施形態におけるカートリッジ5,6には、沈降が生じ易いインクの一例である顔料インクが収容されている。なお、以下の説明では、カートリッジ5を例に挙げて説明する。
【0031】
図4に示すように、カートリッジ5は、カートリッジ本体の挿入方向に平行な2つの壁面20、21に前述の固定用突起12aをガイドするとともに該固定用突起12aに係合する固定部材30、40が形成されている。また、挿入方向に直交する壁面29には、キャリッジ4のインク供給針14と係合してカートリッジ5内のインクを排出するインク供給口(液体供給口)22が形成されている。インク供給口22は、カートリッジ5の中央部に形成されている。これにより、後述するようにカートリッジ5は、キャリッジ4に対して上下方向を入れ替えた場合でも、キャリッジ4のインク供給針14に対するインク供給口22の高さが変化しないので、該インク供給針14がインク供給口22に確実に挿入できるようになっている。
【0032】
固定部材30、40は、インク供給口22が形成された壁面29に偏した位置、本実施例ではカートリッジの挿入方向の下部領域で、かつインク供給口22が位置する壁面側に形成されている。そのため、固定部材30、40は、カートリッジ5のインク供給口22の近傍をキャリッジ4に対して確実に固定できるようになっている。これにより、インク供給口22にインク供給針14が挿入された状態で外力が加わっても、カートリッジ5のブレ等を防止して、インク供給口22とインク供給針14との接続部への影響を少なくすることができるようになっている。
【0033】
図5は固定部材30に固定用突起12aが係合してキャリッジ4にカートリッジ5が装着された状態を示す図である。本実施形態に係る記録装置100は、インク供給システム(液体供給システム)100aを含んでいる。インク供給システム100aは、カートリッジ5がキャリッジ4に装着されることでカートリッジ5内からキャリッジ4側にインクを供給するシステムである。
【0034】
インク供給口22には、図5に示したように、インク供給針14の周囲に密着して封止すると封止部材であるパッキン26と、カートリッジがキャリッジ4から外された状態ではパッキン26の一方の端面と当接してパッキン26に形成された開口を封止して閉弁し、またカートリッジ5がキャリッジ4に装着された状態ではインク供給針14の挿入により開弁する弁体23が、コイルスプリングであるバネ24により付勢された状態で装填されている。このバネ24は、カートリッジ5にインクがフルに充填され、かつインク供給針14にインク供給口22が係合した状態でも、インク供給針14とパッキン26との摩擦力に負けることなくカートリッジ5を挿入方向と反対の側に付勢できる程度の弾性強度を備えている。
【0035】
なお、上述の実施例では、インク供給口22に設けられた弁体23を閉弁方向に付勢するバネ24によりカートリッジ5を挿入方向と反対方向に付勢するようにしているが、バネ24の反力が小さかったり、またバネ24で付勢された弁体23とを有しないカートリッジにあっては、インク供給口22の近傍に付勢用のバネ25をカートリッジの挿入方向の先端面、つまりインク供給口22が形成されている面に設けたり、またはキャリッジ4の、インク供給口22に対向する面に設けても同様の作用を奏する。
【0036】
図6(a)は、ワンプッシュ型の固定部材を構成する固定部材30の構成を示す斜視図であり、図6(b)は固定部材40の構成を示す斜視図である。図6(a),(b)に示すように、固定部材40と固定部材30とは、図中の1点鎖線で示される中心線Cで反転すると形状が一致する所謂、鏡像の関係となっている。そのため、以下の説明では、図6(a)に示す固定部材30の構成を主体に説明する。
【0037】
固定部材30は、図6(a)に示すように、固定用突起12aの移動範囲(L)をカバーできる程度の幅Wの進入口を有する凹部31を有している。凹部31の、カートリッジ5の挿入方向における中央には、固定用突起12aが通り抜けることのできる路を、その両側に形成する略V字状の凸部32が形成されている。
【0038】
具体的に凸部32は、凹部31内に、カートリッジ5の装着動作時に固定用突起12aを進入させる進入路36と、カートリッジ5の脱抜動作時に固定用突起12aを退出させる退出路37と、を構成している。固定部材30における進入路36は、固定用突起12aが第1の位置H1に位置する場合においてのみ進入可能となっている。一方、固定部材40における進入路36は、固定用突起12aが第2の位置H2に位置する場合においてのみ進入可能となっている。
【0039】
凸部32の一方側(図中、右側)に設けられた上記進入路36には、カートリッジ5の挿入方向における移動において、固定用突起12aが容易に乗り越えることができる斜面32dが形成されている。また、進入路36には、カートリッジ5の取り外し方向における移動において、固定用突起12aの乗り越えが不可能な垂直壁32eが形成されている。
【0040】
一方、凸部32の他方側(図中、左側)に設けられた上記退出路37と凹部31との境界には、固定用突起12aの乗り越えが不可能な垂直壁(侵入防止部)32bが形成されている。つまり、固定部材30では、カートリッジ5のキャリッジ4への着脱動作において、固定用突起12aが進入路36の斜面32dを介して保持部34に案内され、退出路37を介して保持部34から退出されるようになっている。
【0041】
凹部31の固定用突起12aの進入側の奥には凹部31の中心線Cよりも斜面32dの側に若干ずれた位置を頂点33とする山型の垂直壁33aが形成されている。また凸部32の略中心線Cから出口側(図では左側)に斜めに上昇する垂直壁32gを形成して、固定用突起12aと係合する谷型の凹部を形成する保持部34が設けられている。
【0042】
この保持部34は、カートリッジ5の幅方向の中心、またはインク供給口22の中心軸を通る壁面に垂直な面上に位置されていて、インク供給針14にモーメントを作用させることなく、固定用突起12aと共同してカートリッジ5を所定の位置に確実に固定させるようになっている。
【0043】
なお図中符号35は、保持部34よりも退出路37側に位置するように設けられた移動方向規制部材で、突起12aが容易に乗り越えることができる斜面35aと、固定用突起12aの乗り越えが困難な垂直壁35bとにより構成されている。
【0044】
続いて、図7、8を参照しながら、カートリッジ5のキャリッジ4に対する着脱動作について説明する。図7はカートリッジ5のキャリッジ4からの装着動作を説明するための図であり、図8はカートリッジ5のキャリッジ4からの脱抜動作を説明するための図である。なお、カートリッジ6のキャリッジ4に対する着脱動作は、カートリッジ5の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0045】
固定用突起12aを固定部材30に係合させる場合において、固定用突起12aが進入路36に進入するためには、図7(a)に示すように、固定用突起12aが凹部31に対する進入方向に対する右側、すなわち第1の位置H1に位置している必要がある。この場合、カートリッジ5がキャリッジ4に挿入されると、第1の位置H1に位置する固定用突起12aが進入路36の斜面32dを乗り越えることが可能となる。
【0046】
一方、固定用突起12aが第2の位置H2に位置している場合、カートリッジ5がキャリッジ4に挿入されると、固定用突起12aは退出路37に進入しようとする。このとき、退出路37と凹部31との境界に設けられた垂直壁32bに固定用突起12aが当接する。固定用突起12aは垂直壁32bを乗り越えることができないため、固定用突起12aが退出路37内に進入することが防止され、カートリッジ5をキャリッジ4に装着することができない。
【0047】
このようにカートリッジ5は、固定用突起12aの位置(第1の位置H1又は第2の位置H2)によってキャリッジ4に挿入できる方向が規制される構造を有している。すなわち、カートリッジ5をキャリッジ4に装着する際、固定部材30、40のいずれを下面側(固定用突起12aに対向する面側)に向けて行うかが、固定用突起12aの位置によって決定されるようになっている。
【0048】
固定用突起12aが斜面32dを乗り越えた状態でさらにカートリッジ5をインク供給口のバネ24の弾性力に抗して押し込むと、図7(b)に示すように、凹部31の奥の山型による死点に到達する。この状態でカートリッジ5から手を離すと、カートリッジ5がバネ24の反力により挿入方向と反対の方向に若干の距離ΔGだけ移動し、固定用突起12aが垂直壁32eにガイドされながら図7(b)中の矢印の方向である中心線Cの側に移動する。そして、図7(c)に示すように、固定用突起12aが保持部34に嵌まり込む。
【0049】
保持部34に嵌り込んだ固定用突起12aは、窓11c内の中央に位置している。窓11c内の中央に位置する固定用突起12aは上述したようにバネ15により付勢されているため、窓11c内を左右に移動しやすい状態となるものの、保持部34に嵌り込むことで固定用突起12aは窓11c内の中央に固定された状態で保持される。このように固定用突起12aは固定部材30の保持部34に確実に係合することで、カートリッジ5をキャリッジ4に確実に保持するようになっている。
【0050】
また、カートリッジ5のカートリッジホルダー9への押し込み時の死点と保持位置との間には若干の間隙が存在するため、押し込み時の死点から保持位置までカートリッジが移動する際に、パッキン26がインク供給針14との摩擦により収縮方向に移動してインク供給針14の周面に確実に弾接して気密性を確保する。なお、このような間隙は、固定用突起12aの径や、保持部34との位置により決めることができる。
【0051】
一方、カートリッジ5を取り外す場合には、カートリッジ5をバネ24の反力に抗して押し込むと、図8(a)に示すように、固定用突起12aが凹部31の奥の山型によりガイドされて移動方向規制部材35の斜面35aを乗り越える。
【0052】
このとき、固定部材12の固定用突起12aは、垂直壁33aの退出路37側の傾斜の働きによって窓11c内をスムーズに移動して移動方向規制部材35の垂直壁35aを乗り越え、第2の位置H2へと移る。第2の位置H2に移動した固定用突起12aは移動方向規制部材35の垂直壁35bによって固定部材12は第2の位置H2に安定して保持される。このように本実施形態では、カートリッジ5のキャリッジ4に対する着脱動作に伴って、固定用突起12aが第1の位置H1から第2の位置H2へと移動するようになっている。
【0053】
この状態でカートリッジ5から手を離すと、図8(b)に示すように、バネ24の反力によってカートリッジ5がキャリッジ4から離れる方向に押し出され固定用突起12aが垂直壁32bから凹部31へと移動する。これにより、カートリッジ5はキャリッジ4から着脱可能となる。なお、カートリッジ6も同様にして、キャリッジ4に対して着脱可能となる。
【0054】
このように、本実施形態においては、カートリッジ5の押し込み動作だけで該カートリッジ5を所定位置に固定する、或いは該所定位置から取り外すことができるようになっており、カートリッジ5の着脱動作を容易に行うことができる。また、固定部材12は、固定用突起12aが当接する面が複数の高さを有した段差構造となっているため、該固定部材12内における固定用突起12aの移動方向を規制できるようになっている。
【0055】
ところで、本実施形態に係るカートリッジ5、6には顔料インクが収容されているため、カートリッジ内のインクを定期的に攪拌させる必要がある。本実施形態では、カートリッジ5,6をキャリッジ4から脱抜し、キャリッジ4に再装着する際に、カートリッジ5,6の上下を反転させることでカートリッジ内のインクの攪拌を行うようにしている。
【0056】
このようにカートリッジ5,6の上下を入れ替えることでインクの攪拌を行う場合、ユーザーはカートリッジ5,6を再装着するに際し、該カートリッジ5,6の上下を確実に認識しておく必要がある。しかしながら、例えばカートリッジ5,6をテーブル等に一端置いた後、再装着するような場合には、取り外す前のカートリッジ5,6の上下が不明となってしまい、結果的に上下方向が入れ替わらずに再装着がされてしまう可能性があり、カートリッジ5,6内のインク沈降を防止できないおそれがある。
【0057】
これに対し、本実施形態では、カートリッジ5,6をキャリッジ4から取り外すと、上述のように固定用突起12aが第1の位置H1から第2の位置H2へと移動する構成を採用している。また、固定部材30の進入路36には第1の位置H1に位置する固定用突起12aのみ進入可能であり、固定部材40の進入路36には第2の位置H2に位置する固定用突起12aのみ進入可能な構成となっている。すなわち、カートリッジ5,6をキャリッジ4から1度取り外した場合、カートリッジ5,6の上下を反転させることで固定用突起12aに係合させる固定部材30,40を切り替える必要がある。
【0058】
したがって、ユーザーがカートリッジ5,6を再装着するに際し、カートリッジ5,6を装着時の状態から上下を反転させない場合、固定用突起12aの位置(第1の位置H1又は第2の位置H2)が固定部材30,40の退出路37側に対応しているので、固定用突起12aは凹部31内に挿入されるものの、垂直壁32bを乗り越えることができない。すなわち、ユーザーがカートリッジ5、6を押し込んだ場合でも、固定用突起12aが垂直壁32bに当接することでカートリッジ5,6がキャリッジ4に装着されるのを防止できる。これにより、ユーザーに対し、カートリッジ5,6の装着方向が間違っていることを容易に認識することができる。
【0059】
このように本実施形態によれば、上述したようにカートリッジ5,6をキャリッジ4に再装着する際、該カートリッジ5,6を鉛直方向における上下方向が正しい場合のみ装着できる。そのため、ユーザーはカートリッジ5,6が装着可能な向きでカートリッジホルダー9内にカートリッジ5,6を挿入すればよい。したがって、カートリッジ5,6の上下方向を特に意識することなく、カートリッジ5,6の誤装着を防止することができる。
【0060】
これにより、カートリッジ5,6がキャリッジ4に再装着される際、上下方向が反転した状態とされるので、カートリッジ5,6内に収容されているインクが攪拌され、インク沈降の発生を確実に防止できる。
【0061】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることは無く、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、キャリッジ4にカートリッジを2個搭載可能な構成について説明したが、本発明は3個以上のカートリッジが搭載可能なキャリッジを備えた記録装置においても適用可能である。
【0062】
また、上記実施形態では、カートリッジホルダをキャリッジに搭載する形式の記録装置について説明したが、カートリッジ5,6をケース本体1に設置し、インク供給チューブにより記録ヘッドにインクを供給する形式の記録装置に適用しても構わない。
【0063】
また、上記実施形態では、カートリッジ5、6の中央部にインク供給口22を設け、カートリッジ5,6の上下を入れ替えた場合でも、キャリッジ4のインク供給針14が挿入可能な場合を例としたが、本発明はこれに限定されることは無い。例えば、カートリッジ5、6にインク供給口22を2個設ける事で、上下を入れ替えた場合にそれぞれ使用するインク供給口22も入れ替える構成であっても構わない。
【0064】
また、上記実施形態に係るカートリッジ5,6にキャリッジ4に設けられた情報読み出し部との間でインク噴射に伴って変化するインク残量等の所定の情報を通信し、該情報を記憶可能な情報通信部を搭載するようにしてもよい。例えば、図9に示すように、カートリッジ5,6に設けられるチップ(情報通信部)CHは、キャリッジ4に設けられる情報読み出し部CH1との間で非接触による情報通信を行うのが望ましい。このようにすれば、チップCHと情報読み出し部CH1との情報通信が非接触で行われるので、カートリッジ5,6の上下を入れ替えた場合であっても上述の情報通信を確実に行うことができる。或いは、情報読み出し部CH1として接触方式のものを用いてもよい。この場合、キャリッジ4に情報読み出し部CH1を2個設ける事で、カートリッジ5,6の上下を入れ替えることでチップCHの位置が変化した時でもいずれの位置のチップCHに対しても接触させることができる。
【符号の説明】
【0065】
H1…第1の位置、H2…第2の位置、CH…チップ(情報通信部)、CH1…情報読み出し部、4…キャリッジ(容器装着部)、5,6…カートリッジ(液体収容容器)、12a,13a…固定用突起(突起部)、14…インク供給針(液体供給針)、15…バネ(付勢手段)、22…インク供給口(液体供給口)、30,40…固定部材、32b…垂直壁(侵入防止部)、36…進入路、37…退出路、100…記録装置、100a…インク供給システム(液体供給システム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容した液体収容容器が容器装着部に着脱可能とされ、前記液体収容容器の装着時に該液体収容容器内の前記液体が前記容器装着部側に供給される液体供給システムにおいて、
前記容器装着部は、前記液体収容容器に係合することで該液体収容容器を当該容器装着部に保持可能な突起部を有し、
前記液体収容容器は、前記突起部をガイドするとともに該突起部に係合することで、該液体収容容器を鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても前記容器装着部に対して装着可能とする一対の固定部材を有し、
前記一対の固定部材は、前記容器装着部に対する前記液体収容容器の装着動作時に前記突起部を進入させる進入路と、前記液体収容容器の脱抜動作時に前記突起部を前記係合部から退出させる退出路と、をそれぞれ備え、
前記突起部は、前記容器収容容器の着脱動作に伴って前記第1の位置及び前記第2の位置間を相互に移動可能とされ、
一方の前記固定部材は、前記進入路を介して前記第1の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路を介して前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第1の位置から前記第2の位置に移動した前記突起部を退出させ、
他方の前記固定部材は、前記進入路を介して前記第2の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路を介して前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第2の位置から前記第1の位置に移動した前記突起部を退出させる液体供給システム。
【請求項2】
前記容器装着部は、前記突起部を前記第1の位置又は前記第2の位置に移動させる方向に付勢する付勢手段を含む請求項1に記載の液体供給システム。
【請求項3】
前記容器装着部に前記液体収容容器が装着された際、該液体収容容器の中央部に形成された液体供給口に接続し、当該液体収容容器内の前記液体を前記容器装着部側に供給可能とする液体供給針を備える請求項1又は2に記載の液体供給システム。
【請求項4】
容器装着部に着脱可能とされ、前記容器装着部側に供給する液体を収容した液体収容容器であって、
前記容器装着部に設けられて該容器装着部に対する前記液体収容容器の着脱動作に伴って第1の位置及び第2の位置間を相互に移動可能な突起部をガイドすることで、鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても該液体収容容器を前記容器装着部に装着させる一対の固定部材を有し、
前記一対の固定部材は、前記容器装着部に対する前記液体収容容器の装着動作時に前記突起部を進入させる進入路と、前記液体収容容器の脱抜動作時に前記突起部を退出させる退出路と、をそれぞれ備え、
一方の前記固定部材は、前記進入路が前記第1の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路が前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第1の位置から前記第2の位置に移動した前記突起部を退出させ、
他方の前記固定部材は、前記進入路が前記第2の位置にある前記突起部を進入させるとともに、前記退出路が前記液体収容容器の脱抜動作時に前記第2の位置から前記第1の位置に移動した前記突起部を退出させる液体収容容器。
【請求項5】
前記固定部材は、前記退出路からの前記突起部の進入を防止する侵入防止部を備える請求項4に記載の液体収容容器。
【請求項6】
前記固定部材は、前記突起部が当接する当接面が複数の高さを有した段差構造となっている請求項4又は5に記載の液体収容容器。
【請求項7】
前記液体を前記容器装着部側に供給可能な液体供給針が接続される液体供給口が、鉛直方向における上下を反転したいずれの姿勢においても該液体供給針と接続されるように前記一対の固定部材の中央部に配置されている請求項4〜6のいずれか一項に記載の液体収容容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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