説明

液体供給装置

【課題】単純な構成で容易に容器の載置が可能であり、内部の液体を残らず送出可能な不定形液体容器内の液体を送出する液体供給装置を提供する。
【解決手段】柔軟なフィルム状部材からなる袋部と、袋部の口に装着された筒状の首部52の上端外周から外側へ張り出す環状フランジ54とを備えた注出口とを有する不定形液体容器8内の液体49を送出する液体供給装置6であって、底板56から立設された柱58に支持され中央に向かって形成された環状フランジ54の外径より小さく首部52の直径より大きい幅の案内溝62を有する天井板60とを含む枠体7と、注出口から袋部内に挿入される送出用パイプとの途中に介装された吸い上げポンプ20とを含む液体供給手段とを具備し、環状フランジ54を案内溝62に挿入し袋部を枠体7内に収容すると、袋部が枠体7内に垂下して固定され、送出用パイプは枠体7内に垂下した袋部の底部近傍に到達する長さを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柔軟なフィルム状の袋部内の液体を外部へ供給する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料水や工業用の薬液等の液体を保存したり搬送したりするために、缶や瓶、硬質の樹脂製ボトル等の様々な定形型容器が使用されている(例えば、特開2005−335713号公報及び特開2007−204120号公報参照)。
【0003】
近年では、空となった容器の容易な廃棄や、容器自体の軽量化のため、定形型容器にかわって柔軟なフィルム状の袋状容器が広い用途で使用され始めている。こうした柔軟な袋状容器は、使用後折りたたんで収納可能であったり、容器自体の重さが非常に軽いため、輸送コストの大幅削減等の大きな効果が期待されている。また、こうした柔軟な袋状容器等の不定形な液体容器の中に保存された液体、例えば飲料水や工業用の薬液等を外部に送出する液体供給装置も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−335713号公報
【特許文献2】特開2007−204120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、不定形な液体容器を用いた液体供給装置の場合、容器自体の形状が不定形であるという特徴から定型容器とは違った工夫が必要となる。例えば、容器の固定方法の工夫、内部の液体を残らず注出する方法の工夫、内部の液体の残量を正確に把握する工夫等が必要である。
【0006】
容器自体が不定形であるため、容器の固定は何らかの枠体内に載置するか、又は箱の中に収めた後箱ごと装置内部に載置する必要があるが、内容物が液体であるためその重量は重い場合が多く、上方から箱内に収めるのは容易ではない。
【0007】
更に、容器が不定形であるため、残量無く液体を注出するには袋の外部から圧力等をかけて搾り出したり、容器の底近くに注出口を設ける等の工夫が必要であるが、圧力手段が必要であったり、注出口が低くなり使いにくいといった課題が残る。また、定形型の容器であれば、液面の高さを見れば即座に残量が把握可能であるが、容器の形状が変化してしまえば液面高さによる残量把握は正確とは言えない。
【0008】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、単純な構成で容易に容器の載置が可能であり、内部の液体を残らず送出可能で且つ残量の把握が可能な不定形液体容器内の液体を送出する液体供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によると、柔軟なフィルム状部材からなる袋部と、該袋部の口に装着された筒状の首部と該首部の上端外周から外側へ張り出す環状フランジとを備えた注出口と、を有する不定形液体容器内の液体を送出する液体供給装置であって、底部と、該底部から立設された側部と、該側部に支持され該側部から中央に向かって形成された該環状フランジの外径より小さく該首部の直径より大きい幅の案内溝を有する天井部とを含む枠体と、該注出口から該袋部内に挿入される送出用パイプと、該送出用パイプの途中に介装された吸い上げポンプとを含む液体供給手段とを具備し、該注出口の該環状フランジを該天井部より上方にして該首部を該案内溝に挿入しつつ該袋部を該枠体内に収容すると、該袋部内の液体の重量で該案内溝に該環状フランジが係合し該袋部が該枠体内に垂下して固定され、該送出用パイプは該枠体内に垂下した該袋部の底部近傍に到達する長さを有していることを特徴とする液体供給装置が提供される。
【0010】
好ましくは、前記枠体内に前記不定形液体容器が固定される際は、前記注出口の前記首部が前記案内溝の所定の位置に固定され、該枠体の該底部を構成する底板は、該案内溝の前記所定の位置の直下に窪み部若しくは開口部を有し、該窪み部若しくは該開口部周囲の該底板の少なくとも一部は該窪み部若しくは該開口部に向かって下方に傾斜して形成されており、該不定形液体容器内の液体が該傾斜によって該窪み部内若しくは該開口部内に落ち込んだ袋部に溜まり易くなっている。
【0011】
好ましくは、枠体は重量測定器上に配設されており、これにより不定形液体容器内の残量を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体供給装置によると、枠体に側方から不定形液体容器を挿入するので、不必要に重い容器を持ち上げる必要がない。更に注出口が上方にあるので、注出口にパイプを挿入するのも容易である。パイプが不定形容器の底部にまで届く長さを有しているため、内部の液体を残量無く送出できる。
【0013】
底部に窪み若しくは開口部が形成されている実施形態においては、不定形液体容器の固定に効果がある上、液体がパイプの吸込口付近に溜まるような構成となっているため、容器の変形による液体の送出残が発生しないという効果を奏する。更に、枠体が重量測定器上に載置されているため、液体の残量を常に正確に把握することが可能であり、容器の大きさや材質の変更があっても、容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の液体供給装置が適用可能な混合液供給装置の全体構成図である。
【図2】不定形液体容器の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明第1実施形態に係る液体供給装置の分解斜視図である。
【図4】液体供給装置内に不定形液体容器を装着した状態の斜視図である。
【図5】本発明第2実施形態に係る液体供給装置に不定形液体容器を装着した状態の斜視図である。
【図6】図5のVI―VI線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、本発明の液体供給装置を採用した混合液供給装置の全体構成図が示されている。符号2で示された混合液供給装置は、研磨装置4に液体と研磨剤が混合された混合液(スラリー)を供給する。後で詳細に説明する液体供給装置6内には、純水等の液体とシリカ等の研磨剤が混合された濃度の高い研磨剤原液9が収容された不定形液体容器8が収容されている。
【0016】
10は希釈タンクであり、不定形液体容器8内の濃度の高い研磨剤原液9が管路(研磨剤原液供給路)14を介して希釈タンク10内に供給されるとともに、液体供給路16を介して純水等の液体が希釈タンク10内に供給され、研磨剤原液9が液体により希釈され、希釈タンク10は濃度が希釈されたスラリー(混合液)18を収容する。
【0017】
希釈タンク10内には図示しない攪拌装置が設置されており、この攪拌装置で研磨剤源液9と液体供給路16を介して送られた液体とを攪拌して、濃度が希釈された一様濃度のスラリー18とする。20は吸い上げポンプであり、管路14には開閉弁22が挿入されている。一方、液体供給路16には流量調整弁24が挿入されている。
【0018】
希釈タンク10からは管路(第1混合液供給路)26を介して希釈された混合液(スラリー)18が供給タンク12に供給され、供給タンク12は濃度の希釈された混合液18を収容する。管路26にはポンプ28及び開閉弁30が挿入されている。
【0019】
供給タンク12からは管路(第2混合液供給路)32を介して濃度の希釈された混合液(スラリー)18が研磨装置4に供給され、研磨装置4で半導体ウエーハ等の板状物の研磨が実施される。管路32にはポンプ34及び開閉弁36が挿入されている。
【0020】
液体供給装置6は重量測定器38上に搭載されている。同様に、希釈タンク18も重量測定器40上に搭載されている。重量測定器38,40は制御手段(コントローラ)42に接続されている。
【0021】
制御手段42のメモリには予め液体供給装置6の重量と不定形液体容器8本体の重量の和が記憶されており、制御手段42では重量測定器38で測定した液体供給装置6と研磨剤原液9を含む不定形液体容器8の総重量から液体供給装置6と不定形液体容器8本体の重量を減算することにより、研磨剤原液9の正確な残量を算出することができ、この研磨剤原液の残量は液晶ディスプレイ等の残量表示手段44に表示される。
【0022】
供給タンク12には、複数の液面センサ46a,46b,46c,46dが設置されている。液面センサ46a〜46dは制御手段42に接続されており、供給タンク12内の混合液(スラリー)18の液面が液面センサ46cと46dの間に来た場合に、制御手段42で開閉弁30を開くとともにポンプ28を駆動して、希釈タンク10内の混合液(スラリー)18を供給タンク12内に供給する。
【0023】
ポンプ20,28,34は制御手段42に接続されており、制御手段42によりその駆動が制御される。流量調整弁24も制御手段42に接続されており、流量調整弁24で純水等の液体の供給量を調整して、研磨剤原液9を所望の濃度の混合液(スラリー)18に調整する。
【0024】
希釈タンク10内の混合液(スラリー)18の残量は、重量測定器40上に希釈タンク10を搭載することにより、不定形液体容器8内の研磨剤原液の残量と同様な方法により、制御手段42で容易に算出することができる。
【0025】
希釈タンク10内の混合液(スラリー)18の濃度調整は、ポンプ20の駆動時間及び流量調整弁24を介して供給される液体の量を制御するとともに、更に希釈タンク10内の混合液(スラリー)18の残量に基づいて、所望の濃度に調整することができる。
【0026】
特に図示しないが、研磨剤原液供給路14及び液体供給路16中に流量計を設けて、希釈タンク10内に供給される研磨剤原液9及び液体供給源15から供給される純水等の液体の量を正確に測定することにより、希釈タンク10内の混合液(スラリー)18の濃度をより正確に調整することができる。
【0027】
以上の説明は、本発明の液体供給装置6を混合液供給装置2の研磨剤原液の供給に適用した例についての説明であるが、以下図2乃至図6を参照して、液体供給装置6の詳細な構造について説明する。
【0028】
図2を参照すると、不定形液体容器8の一例の斜視図が示されている。不定形液体容器8は、柔軟なフィルム状部材からなる袋部48と、袋部48の口に装着された筒状の首部52と該首部52の上端外周から外側へ張り出す環状フランジ54とを備えた注出口50とを有している。袋部48内には、上述した研磨剤原液、飲料水、工業用の薬液等の液体49が収容されている。
【0029】
図3を参照すると、本発明第1実施形態の液体供給装置6の分解斜視図が示されている。液体供給装置6は、底板56と、底板56に立設された4本の柱58と、柱58で支持された天井板60とを有する枠体7を含んでいる。
【0030】
天井板60には、天井板60の側部から中央に向かって伸長する図2に示した不定形液体容器8の環状フランジ54の外径より小さく首部52の直径より大きい幅の案内溝62が形成されている。天井板60の側部には切欠き65を有するブラケット64が突設されている。
【0031】
66は液体供給手段であり、図2に示した不定形液体容器8の注出口50から袋部48内に挿入される送出用パイプ68と、送出用パイプ68の途中に介装された吸い上げポンプ20とから構成される。
【0032】
送出用パイプ68の出口部近傍にはコック(栓)70が装着されている。液体供給手段66は、その不使用時には、送出用パイプ68が矢印Aで示すように枠体7のブラケット64の切欠き65内に収容されて、ブラケット64で支持されている。
【0033】
図2に示した不定形液体容器8を液体供給装置6内に収容するには、注出口50の環状フランジ54を液体供給装置6の天井板60より上方にして、図4に示すように首部52を案内溝62中に挿入する。
【0034】
これにより、不定形液体容器8の袋部48が枠体7内に収容され、袋部48内の液体49の重量で案内溝62に環状フランジ54が係合し、袋部48が枠体7内に垂下して不定形液体容器8が固定される。
【0035】
ブラケット64に支持されている液体供給手段66をブラケット64から取り外して、送出用パイプ68を注出口50から不定形液体容器8内に挿入し、環状フランジ54で吸い上げポンプ20を支持する。この状態が図4に示されており、送出用パイプ68は枠体7内に垂下した袋部48の底部近傍に到達する長さを有している。
【0036】
不定形液体容器8内の液体49を外部に供給するには、コック70を開けてから吸出し用ポンプ20を駆動する。これにより、例えば図1に示した実施形態に示されるように液体49が管路14内に送り出される。
【0037】
図5を参照すると、本発明第2実施形態の液体供給装置6Aの斜視図が示されている。図6は図5のVI−VI線断面図である。図5に示すように、不定形液体容器8が枠体7A内に固定される際は、注出口50の首部52が案内溝62の所定の位置で固定される。
【0038】
枠体7Aの底板56Aは、案内溝62の所定の位置の直下に開口57を有している。図6に示すように、底板56Aは角度θ傾斜して取り付けられている。これにより、不定形液体容器8内の液体49は、底板56Aの開口57内に落ち込んだ袋部48a内に底板56Aの傾斜取付によって溜まり易くなっている。
【0039】
送出用パイプ68の下端は開口57内に落ち込んだ袋部48a内に到達する長さに形成されている。底板56Aに開口57を形成するのに替えて、厚い底板を採用して底板に窪みを形成するようにしてもよい。
【0040】
本実施形態によると、底板56Aに開口57が形成されているため、不定形液体容器8の固定に効果がある上、液体49が送出用パイプ68の吸引口付近の袋部48a内に溜まるような構成となっているため、容器8の変形による液体の送出残が発生しない。
【0041】
また、図1に示すように液体供給装置6を重量測定器38上に載置すると、不定形液体容器8内の液体の残量を常に正確に把握することが可能であり、容器の大きさや材質の変更があっても、容易に対応することができる。
【符号の説明】
【0042】
2 混合液供給装置
4 研磨装置
6 液体供給装置
7 枠体
8 不定形液体容器
9 研磨剤原液
10 希釈タンク
12 供給タンク
18 混合液(スラリー)
20 吸い上げポンプ
38,40 重量測定器
48 袋部
49 液体
50 注出口
52 首部
54 環状フランジ
56 底板
57 開口
60 天井板
62 案内溝
66 液体供給手段
68 送出用パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟なフィルム状部材からなる袋部と、該袋部の口に装着された筒状の首部と該首部の上端外周から外側へ張り出す環状フランジとを備えた注出口と、を有する不定形液体容器内の液体を送出する液体供給装置であって、
底部と、該底部から立設された側部と、該側部に支持され該側部から中央に向かって形成された該環状フランジの外径より小さく該首部の直径より大きい幅の案内溝を有する天井部とを含む枠体と、
該注出口から該袋部内に挿入される送出用パイプと、該送出用パイプの途中に介装された吸い上げポンプとを含む液体供給手段とを具備し、
該注出口の該環状フランジを該天井部より上方にして該首部を該案内溝に挿入しつつ該袋部を該枠体内に収容すると、該袋部内の液体の重量で該案内溝に該環状フランジが係合し該袋部が該枠体内に垂下して固定され、
該送出用パイプは該枠体内に垂下した該袋部の底部近傍に到達する長さを有していることを特徴とする液体供給装置。
【請求項2】
前記枠体内に前記不定形液体容器が固定される際は、前記注出口の前記首部が前記案内溝の所定の位置に固定され、
該枠体の該底部を構成する底板は、該案内溝の前記所定の位置の直下に窪み部若しくは開口部を有し、該窪み部若しくは該開口部周囲の該底板の少なくとも一部は該窪み部若しくは該開口部に向かって下方に傾斜して形成されており、
該不定形液体容器内の液体が該傾斜によって該窪み部内若しくは該開口部内に落ち込んだ袋部に溜まり易くなっていることを特徴とする請求項1記載の液体供給装置。
【請求項3】
前記枠体が重量測定器上に配設されていることを特徴とする請求項1又は2記載の液体供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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