説明

液体分配装置

【課題】簡便で且つ効率的に、プラスチックレンズ用モノマーを移送し得る液体分配装置を提供する。
【解決手段】プラスチックレンズ用モノマーを、貯蔵容器から送液管内を経て分配容器に移送する液体分配装置であって、該送液管は該貯蔵容器の開口部及び該分配容器の第一の開口部を通って該貯蔵容器及び該分配容器と連結し、該送液管の一方の端部が該貯蔵容器の底部に配置され、該送液管の他方の端部が該分配容器内部に配置され、該分配容器と排気手段とが該分配容器の第二の開口部を通る排気管を介して連結し、且つ該分配容器の第一の開口部及び第二の開口部が封止部材により封止されていることを特徴とする液体分配装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズ用モノマーを貯蔵容器から送液管内を経て分配容器に移送する液体分配装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、大きな容器から小さな容器に液体を移動する場合、サイフォン効果を理由するか、又は送液ポンプを使用して小さな容器への送液を行っていた。例えば、特許文献1では、液状化学品を分配するように貯蔵器から液体を充排出することによって貯蔵器内の減圧圧力を作り出すポンピング(pumping)を用いている。
しかしながら、サイフォンを使用した場合、送液管の途中に気体(泡)を含んだりする場合に送液が中断することがあった。
また、送液ポンプをした場合、使用送液状態が一定になりにくく、途中で中断することも困難であったので、液が分配容器からこぼれ落ちることもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4,601,409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下で、簡便で且つ効率的に、プラスチックレンズ用モノマーを移送し得る液体分配装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、送液管と排気手段とを適切に配置することにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、プラスチックレンズ用モノマーを、貯蔵容器から送液管内を経て分配容器に移送する液体分配装置であって、該送液管は該貯蔵容器の開口部及び該分配容器の第一の開口部を通って該貯蔵容器及び該分配容器と連結し、該送液管の一方の端部が該貯蔵容器の底部に配置され、該送液管の他方の端部が該分配容器内部に配置され、該分配容器と排気手段とが該分配容器の第二の開口部を通る排気管を介して連結し、且つ該分配容器の第一の開口部及び第二の開口部が封止部材により封止されていることを特徴とする液体分配装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、簡便で且つ効率的に、プラスチックレンズ用モノマーを移送し得る液体分配装置を提供することができる。即ち、比較的小型の分配装置を減圧するため、送液の流れに乱れが生じない。また、分配装置の圧力が実質的に一定になるため、送液の速度が一定になり、分配装置への分配効率を好適に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の液体分配装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の液体分配装置の第二の例を示す模式図である。
【図3】本発明の液体分配装置の第三の例を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の液体分配装置は、プラスチックレンズ用モノマーを、貯蔵容器から送液管内を経て分配容器に移送する液体分配装置であって、該送液管は該貯蔵容器の開口部及び該分配容器の第一の開口部を通って該貯蔵容器及び該分配容器と連結し、該送液管の一方の端部が該貯蔵容器の底部に配置され、該送液管の他方の端部が該分配容器内部に配置され、該分配容器と排気手段とが該分配容器の第二の開口部を通る排気管を介して連結し、且つ該分配容器の第一の開口部及び第二の開口部が封止部材により封止されていることを特徴とする。
【0009】
以下、図面に基づき本発明を更に詳しく説明する。図1は、本発明の液体分配装置1の一例を示す模式図である。図1に示す本発明の液体分配装置1は、貯蔵容器11、送液管12、分配容器13、排気手段14及び排気管15を具備するものである。送液管12は貯蔵容器11の開口部11a及び分配容器13の第一の開口部13aを通って貯蔵容器11及び分配容器13と連結している。送液管12の一方の端部12aは貯蔵容器11の底部に配置されており、送液管12の他方の端部12bは分配容器13内部、好ましくは底部に配置されている。また、分配容器13と排気手段14とが分配容器13の第二の開口部13bを通る排気管15を介して連結している。ここで、分配容器13の第一の開口部13a及び第二の開口部13bは封止部材20により封止され、分配容器13の内部は減圧し得る気密可能な状態となっている。排気手段14の稼動により、分配容器13内の空間30は負圧状態(減圧状態)となり、貯蔵容器11内のプラスチックレンズ用モノマー(以下、「モノマー」と略称することがある。)2は、貯蔵容器11から送液管12内を経て分配容器13内に迅速に移送される。分配容器13内の空間30は、例えば、80kPa程度の減圧状態で迅速な移送が可能となる。
【0010】
図2は、本発明の液体分配装置の第二の例を示す模式図である。図2に示す本発明の液体分配装置1は、図1に示す液体分配装置1に、更に、送液管12に開閉弁41及び/又は42が配置され、排気管15に開閉弁43が配置されている。開閉弁41は送液管12の貯蔵容器11側に配置され、開閉弁42は送液管12の分配容器13側に配置されている。
分配容器13に送液が完了した後に、送液管12に開閉弁41又は42を閉塞することにより、過剰なモノマー2の流入を抑制することができる。過剰なモノマー2の流入を最小限にするという観点からは分配容器13側の開閉弁42を配置することが好ましく、送液管内に残留するモノマー2を最小限にするという観点からは貯蔵容器11側の開閉弁41を配置することが好ましい。開閉弁41及び開閉弁42の両方を配置し、必要に応じ、開閉弁41及び開閉弁42の一方又は両方を用いれば、これら双方の効果を享受し得るので更に好ましい。
開閉弁41及び/又は開閉弁42を閉塞し、開閉弁43を開放した状態で、排気手段14を継続して稼動させることにより、分配容器13内のモノマー2を脱気することができる。これにより、モノマー2に含まれる溶存気体(特に、溶存酸素)などによるモノマー2の変質、例えば酸化を極力抑制することができる。また、分配容器13内の空間30が減圧されることから、モノマー2の自然重合をも抑制することができ、分配容器13内に保管されるモノマー2の品質を長期にわたって維持することができる。
更に、排気管15の開閉弁43を閉塞することにより、排気手段14の稼動を停止しても減圧状態を維持することができる。
【0011】
図3は、本発明の液体分配装置の第三の例を示す模式図である。図3に示す本発明の液体分配装置1の貯蔵容器11は、容器傾斜手段50を具備している。この容器傾斜手段50により、貯蔵容器11を傾けることができ、これにより、貯蔵容器11内のモノマー2が少量になっても、モノマー2をより確実に分配容器13に送液し、モノマー2が貯蔵容器11内に残余することを抑制することができる。
【0012】
本発明において、貯蔵容器は、貯蔵槽などの液体を貯蔵するための建築物であっても良いし、運搬可能な容器であっても良いが、通常、大型の容器であることが好ましい。
分配容器は、通常、貯蔵容器より小型の容器であるが、可動容器であっても良いし、固定設置されたものでも良い。
貯蔵容器及び分配容器の材質は限定されず、例えば、鋼鉄、アルミニウムなどの金属、プラスチックレンズ用モノマーに溶解又は反応しない熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂などのプラスチック、陶磁器、ガラス、セメントなどのセラミックスなどが挙げられる。
【0013】
本発明における送液管は、プラスチックレンズ用モノマーに溶解又は反応しないものであれば材質を限定されないが、貯蔵容器及び分配容器と脱着可能な可撓性のあるプラスチック製又は金属製のものが好ましい。管の形状は環状、非環状のいずれでも良い。
また、本発明における排気手段は、所謂低真空領域の空間を形成できるものであれば良い。例えば、アスピレータ(25℃で通常32kPa程度である。アスピレータで得られる真空度は水の蒸気圧に依存するため、3.2kPa以下にすることはできない。)、機械式真空ポンプ、スチームエグゼクタポンプ、各種エアポンプなどが好適に挙げられる。
なお、機械式真空ポンプとしては、液封真空ポンプ、油回転真空ポンプ、ルーツ真空ポンプ、ターボ分子ポンプ、ドライ真空ポンプなどが挙げられる。
真空能力が非常に高い排気手段を用いると、かえって送液の制御が難しくなる場合があるので、通常は、低真空領域(1〜90kPa、好ましくは10〜90kPa)で作動するポンプ能力で十分である。
本発明における排気管は、空気を透過しない管であればよく、材質を限定されない。管の形状は環状、非環状のいずれでも良い。
【0014】
本発明における封止部材としては、例えば、ブチルゴム、シリコーンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムなどの合成ゴム製のガスケットやパッキン、例えばO−リングなどが好適に用いられ、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)などのフィルム状シール材も好適に用いられる。また、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂などの樹脂と上記合成ゴムやフィルム状シール材との複合体であっても良い。
【0015】
本発明における容器傾斜手段としては、例えばジャッキなどが用いられる。ジャッキとしては、機械式のラック駆動ジャッキやねじジャッキ、液体作動式の油圧ジャッキ、空気式のエアージャッキなどが用いられる。ねじジャッキとしては、ラチェット式ねじジャッキ、軸受付ねじジャッキ、普通形ねじジャッキなどが挙げられる。また、油圧ジャッキとしては、ポンプ一体型とポンプ分離型とがある。
【0016】
本発明において移送すべき対象物であるプラスチックレンズ用モノマー2は、モノマー単体で貯蔵可能なものであれば良く、モノマー種は限定されないが、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートモノマー、メチルメタクリレートモノマーなどが対象となる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の液体分配装置は、プラスチックレンズ用モノマー2の貯蔵容器から分配容器への移送に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0018】
1 液体分配装置
2 プラスチックレンズ用モノマー
11 貯蔵容器
11a 貯蔵容器の開口部
12 送液管
12a 送液管の一方の端部
12b 送液管の他方の端部
13 分配容器
13a 分配容器の第一の開口部
13b 分配容器の第二の開口部
14 排気手段
15 排気管
15a 排気管の分配容器側端部
20 封止部材
21 送液管と分配容器とを封止する封止部材
22 分配容器と排気手段とを封止する封止部材
30 分配容器内の空間
41 送液管の第一の開閉弁
42 送液管の第二の開閉弁
43 排気管の開閉弁
50 容器傾斜手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックレンズ用モノマーを、貯蔵容器から送液管内を経て分配容器に移送する液体分配装置であって、該送液管は該貯蔵容器の開口部及び該分配容器の第一の開口部を通って該貯蔵容器及び該分配容器と連結し、該送液管の一方の端部が該貯蔵容器の底部に配置され、該送液管の他方の端部が該分配容器内部に配置され、該分配容器と排気手段とが該分配容器の第二の開口部を通る排気管を介して連結し、且つ該分配容器の第一の開口部及び第二の開口部が封止部材により封止されていることを特徴とする液体分配装置。
【請求項2】
前記送液管に開閉弁が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体分配装置。
【請求項3】
前記排気管に開閉弁が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体分配装置。
【請求項4】
前記貯蔵容器が容器傾斜手段を具備していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−195163(P2011−195163A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63114(P2010−63114)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(509333807)ホヤ レンズ タイランド リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
【Fターム(参考)】