説明

液体加熱装置

【課題】上水の加熱用の熱交換手段を貯留手段の外部に配しつつ、上水の加熱供給の停止後、上水の加熱供給を再開する際に、上水の温度が所定温度に到達するのに要する期間を最小限に抑制可能な液体加熱装置の提供を目的とする。
【解決手段】液体加熱装置1は、筐体C内に本体部2と燃焼部3および消音器4に加えて、上水系統S、暖房系統Dおよび風呂系統Fの構成部材が内蔵された構成とされている。上水系統Sは、上水用熱交換器30を中心として構成されている。上水用熱交換器30は、貯留部6に対して下方に離反した位置に設けられており、貯留部6から供給される熱媒体との熱交換により上水を加熱可能な構成とされている。液体加熱装置1は、給湯動作の終了後、所定の時間Xが経過するまで給湯ポンプ32を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、下記特許文献1に開示されているような液体加熱装置が提供されている。この種の液体加熱装置の多くは、湯水や熱媒体等の液体を貯留可能な貯留タンクと、貯留タンク内の液体を加熱可能な加熱手段とを有し、この貯留タンクに貯留されている液体を介して熱エネルギーを暖房装置等の負荷端末に供給可能な構成とされている。また、前記したような従来技術の液体加熱装置では、上水を加熱するための熱交換器を貯留タンク内に配置し、貯留タンク内の液体との熱交換により、熱交換器に供給される上水を加熱して供給可能な構成とされている。
【特許文献1】特開2001−235231号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に開示されているような液体加熱装置では、貯留タンク内に熱交換器を配置せねばならない分、貯留タンクの容積が大きくなったり、貯留タンクの高さが高くなってしまうという問題がある。そのため、従来技術の液体加熱装置は、装置構成が大型化してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明者らは、上水の加熱用の熱交換器を貯留タンクの外部に設け、当該貯留タンク内の液体を熱交換器に供給することにより、上水を熱交換加熱可能な構成の液体加熱装置を作製し、実験を行った。その結果、貯留タンクの容量や高さを抑制できる反面、条件によっては、いったん上水を熱交換加熱して液体加熱装置の外部に供給するのを停止した後、再度加熱された上水を外部に供給すべき状態になった際に、上水の供給を開始してから、上水が所定の温度に到達するまでに要する期間が長くなる可能性があることが判明した。
【0005】
かかる知見に基づき、本発明は、上水の加熱用の熱交換手段を貯留手段の外部に配しつつ、上水の加熱供給の停止後、上水の加熱供給を再開する際に、上水の温度が所定温度に到達するのに要する期間を最小限に抑制可能な液体加熱装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、液体を貯留可能な貯留手段と、当該貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能な加熱手段と、前記貯留手段に対して下方に離間した位置に配された熱交換手段と、前記貯留手段内に貯留されている液体を前記熱交換手段に供給可能な一次流路と、上水が流れる二次流路とを備えた加熱系を有し、前記一次流路を介して前記貯留手段と熱交換手段との間で液体を循環させることにより、前記二次流路を介して熱交換手段に供給される上水を熱交換加熱して前記加熱系の外部に供給する上水供給動作を実施可能なものであり、前記貯留手段から熱交換手段への液体の供給を継続するポスト動作を、上水供給動作の停止のタイミングから所定の実施期間にわたって実施可能であることを特徴とする液体加熱装置である。
【0007】
本発明の液体加熱装置では、加熱系の外部への上水の供給が停止しても、上水の供給停止のタイミングから所定の実施期間にわたって熱交換手段に対する貯留手段内の液体の供給が継続される。そのため、本発明の液体加熱装置では、上水の供給停止後、少なくともポスト動作の実施期間が経過するまでの間は熱交換手段を高温に維持することができる。従って、本発明の液体加熱装置によれば、いったん上水の加熱供給を停止した後、上水の加熱供給を再開する際に、上水の供給を開始してから上水が所定の温度に到達するまでに要する期間を最小限に短縮することができる。
【0008】
本発明の液体加熱装置は、上水を加熱するための熱交換手段が貯留手段から離間した位置に配置されているため、貯留手段の容量や高さを抑制することができる。従って、本発明によれば、装置構成がコンパクトな液体加熱装置を提供できる。
【0009】
また、本発明の液体加熱装置は、貯留手段と熱交換手段との間で、貯留手段に貯留されている液体を循環させ、この液体との熱交換により上水を加熱する構成とされている。そのため、本発明の液体加熱装置によれば、上水を効率よく加熱して加熱系の外部に供給することができる。
【0010】
また、本発明の液体加熱装置は、貯留手段に貯留されている液体を貯留手段と熱交換手段との間で循環させる構成であるため、熱交換手段において上水の加熱に供する液体は、貯留手段に貯留されている液体の一部である。そのため、本発明の液体加熱装置では、貯留手段に貯留されている液体の温度ムラ等に殆ど左右されることなく、上水の出湯温度を安定化することができる。
【0011】
さらに、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段に供給される液体が所定温度に到達していれば上水を所望の温度に加熱することができる。そのため、本発明の液体加熱装置は、貯留手段内の液体全体が所定の温度に到達するのを待つことなく、上水を所望の温度に加熱できる。従って、本発明の液体加熱装置は、上水の供給動作を開始してから加熱系の外部に供給される上水が所望の温度に到達するまでに要する時間(立ち上がり時間)が短い。
【0012】
ここで、本発明の液体加熱装置は、加熱手段が貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能なものであるため、加熱手段を作動させて貯留手段内の液体を加熱すると、貯留手段内において液体が対流を起こし、貯留手段の上方側の液体が下方側の液体に比べて高温になる傾向にある。そのため、本発明の液体加熱装置において、上水の加熱用に設けられた熱交換手段が貯留手段と同等の高さ、あるいは、これよりも上方に配置されていると、貯留手段の上方側から一次流路等を介して熱交換手段に熱エネルギーが伝達される可能性がある。上水の供給停止時にこのような事態が発生すると、熱交換手段に滞留している上水が加熱されてしまい、次の上水の供給開始直後に予期せぬ高温の上水が加熱系の外部に供給(排出)されてしまう可能性がある。
【0013】
そこで、かかる知見に基づき、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段が、貯留手段に対して下方に配置され、貯留手段から熱交換手段への伝熱が最小限に抑制されている。そのため、本発明の液体加熱装置では、上水の供給停止時に熱交換手段に滞留している上水が必要以上に加熱されたり、次の上水の供給開始直後に高温の上水が供給されるといったような不具合が起こりにくい。
【0014】
ここで、上記したように、貯留手段内に貯留されている液体を加熱すると、貯留手段の上方側に存在する液体が下方側に存在する液体に対して優先的に加熱される傾向にある。そのため、上記請求項1に記載の液体加熱装置において、貯留手段の上方側に存在する液体を下方側に存在する液体に対して優先的に熱交換手段に供給可能であることが望ましい(請求項2)。
【0015】
かかる構成によれば、貯留手段内において高温に加熱された液体を優先的に熱交換手段に供給することができる。従って、本発明の液体加熱装置によれば、熱エネルギーを有効利用しつつ、上水の供給を開始してから所定温度まで加熱された上水が供給されるまでに要する時間(立ち上がり時間)をさらに短縮することができる。
【0016】
ここで、上記した液体加熱装置では、一次流路を介して貯留手段から液体を取り出して熱交換手段に供給する構成を採用しているため、条件によっては一次流路の中途や熱交換手段等で放熱が起こり、上水の供給温度が多少変動する可能性がある。
【0017】
そこで、かかる事態が想定される場合、請求項1又は2に記載の液体加熱装置は、上水の流量を調整可能な流量調整手段が設けられた構成とすることが望ましい(請求項3)。
【0018】
かかる構成によれば、上水の供給温度をより一層安定化することができる。
【0019】
また、同様の知見に基づき上記請求項1〜3のいずれかに記載の液体加熱装置は、給湯流路の中途に、熱交換手段において加熱された上水と、加熱系の外部から供給された上水とを混合する混合手段が設けられた構成とすることも可能である(請求項4)。
【0020】
かかる構成とすることによっても、上水の供給温度を安定化することができる。
【0021】
ここで、上記請求項4に記載の発明のように混合手段を設ける場合、従来技術の液体加熱装置のように貯留手段内に配された熱交換手段で上水を加熱する構成とすると、上水の加熱を停止している間に給湯動作の停止等に伴って滞留している液体等を介して貯留手段側から伝熱が起こるものと想定される。上水の加熱停止中にこのような伝熱が起こると、混合手段に滞留している上水が高温に加熱されてしまい、次に給湯動作などを開始した直後に予期せぬ高温の上水が供給されてしまうといった不具合が起こり兼ねない。
【0022】
かかる不具合を防止すべく、従来技術の液体加熱装置では、上水の加熱停止中は混合手段に熱交換手段側から上水が流入できない状態とする構成とされている。このような構成とした場合、上記したような予期せぬ高温の上水が供給されるのを防止できる反面、上水を所定の温度に調整された状態で供給すべき状態になってから混合手段に対して熱交換手段において加熱された上水が流入可能な状態とせねばならず、その分だけ上水が所定の温度に到達するのが遅れてしまうという問題がある。
【0023】
そこで、かかる問題に対処すべく提供される請求項5に記載の発明は、熱交換手段において加熱され二次流路を流れる上水と、外部から供給された上水とを流入させて混合可能な混合手段が設けられており、当該混合手段が、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0024】
本発明の液体加熱装置は、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態とされている。そのため、本発明の液体加熱装置では、上記した従来技術のように次に上水を所定の温度に調整して供給すべき状態になった際に、改めて混合手段に対して熱交換手段において加熱された上水が混合手段に流入可能な状態とする必要がない。従って、本発明の液体加熱装置は、上水を所定の温度に調整して供給すべき状態になった後、上水が所定の温度に到達するまでに要する期間を最小限に抑制することができる。
【0025】
また、上記したように、本発明の液体加熱装置では、貯留手段の外部に別途配された熱交換手段において熱交換加熱された上水を混合手段に供給する構成としているため、上水の加熱の停止中に貯留手段側からの伝熱による上水の昇温が起こりにくい。そのため、本発明の液体加熱装置では、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態としておいても、次に上水の供給を開始した直後に予期せぬ高温の上水が供給されてしまうといった不具合が起こらない。
【0026】
ここで、上記請求項1〜5のいずれかに記載の液体加熱装置は、二次流路を流れる上水の加熱だけでなく、例えば貯留手段内に存在する加熱状態の液体を外部に設けられた負荷端末に供給可能な流路を設けたり、貯留手段内の液体との熱交換により浴槽の湯水などを加熱(追い焚き)可能な流路を上記した一次流路に対して独立的に設けた構成とすることも可能である。かかる構成とした場合、貯留手段内の液体やこれにより加熱された湯水等を負荷端末や浴槽等の熱負荷に供給する動作のように、貯留手段内の液体そのものや、貯留手段内の液体との熱交換により加熱された湯水等の液体を介して熱エネルギーを外部に設けられた負荷端末や浴槽などの熱負荷に対して供給する動作(以下、必要に応じて熱エネルギー供給動作と称する)を実施することができる。
【0027】
一方、上記請求項1〜5に記載の液体加熱装置は、貯留手段から熱交換手段に対して液体を供給することにより上水を加熱することができる。換言すれば、請求項1〜5に記載の液体加熱装置は、貯留手段から熱交換手段に対する液体の供給を停止することにより上水を加熱せず外部に供給する動作(以下、必要に応じて非加熱供給動作と称する)を実施することができる。そのため、上記請求項1〜5に記載の液体加熱装置は、貯留部内の液体を介して付与された熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給可能な熱負荷系統を設けた構成としつつ、熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施可能な構成とすることにより、非加熱状態の上水の使用と熱負荷の使用とを同時に実施でき、使い勝手がさらに向上するものと想定される。
【0028】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項6に記載の発明は、貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給可能な熱負荷系統を有し、一次流路が前記熱負荷系統に対して独立して設けられており、貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給する熱エネルギー供給動作と、貯留手段から熱交換手段への液体の供給を停止した状態において、二次流路を介して供給される上水を熱交換手段を通過させて前記加熱系の外部に供給する非加熱供給動作を実施可能なものであり、熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0029】
本発明の液体加熱装置では、上水の加熱に使用される液体が流れる一次流路が熱負荷系統に対して独立しており、熱交換手段に対する液体の供給と、熱負荷に対する液体の供給とを独立的に行うことができる。そのため、上記した構成によれば、熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施でき、使い勝手に優れた液体加熱装置を提供できる。
【0030】
ここで、上記請求項1〜6に記載の液体加熱装置は、熱交換手段を貯留手段の外部に配し、この熱交換手段を用いて上水を加熱するものであったが、さらに別の用途に使用する液体を加熱可能な構成とすることも可能である。この場合、上記請求項1〜6のいずれかに記載の液体加熱装置は、貯留手段の内部に、貯留手段内に貯留されている液体との熱交換により液体を加熱可能な液−液熱交換手段が設けられた構成とすることが可能である(請求項7)。
【0031】
かかる構成によれば、上水の加熱に加えて、暖房装置等に代表される他の負荷端末に供給するための液体を加熱できる。従って、本発明によれば、給湯に代表されるような上水の供給だけでなく他用途にわたって使用可能な液体加熱装置を提供できる。
【0032】
上記請求項1〜7のいずれかに記載の液体加熱装置は、ポスト動作の実施期間を任意に調整可能な期間調整手段を備えた構成であってもよい(請求項8)。
【0033】
かかる構成によれば、上水の供給を開始してから所定温度まで加熱された上水が供給されるまでに要する時間(立ち上がり時間)や、ポスト動作中に熱交換手段に対して液体を供給することによって消費するエネルギー等を考慮して、液体加熱装置の使用者の都合に合わせてポスト動作の実施期間を設定することができる。
【0034】
ここで、上記請求項1〜8に記載の液体加熱装置は、上水を加熱して加熱系の外部に供給する上水供給動作を実施可能なものであり、例えば浴室内に設置されたカラン(給湯栓)やシャワーにおいて使用する上水や、浴槽への落とし込み用の上水の加熱に使用することができる。一般的に、入浴時には、カランを短時間のうちに何度も開閉したり、シャワーをいったん使用した後、さほど時間をおかずに再度使用するといったような使用形態が想定される。すなわち、入浴時に使用する上水の供給用に液体加熱装置が使用される場合は、上水供給動作が複数回にわたって断続的に実施される可能性があるものと想定される。そのため、上記した本発明の液体加熱装置は、入浴していると想定される状況下で上水供給動作が終了した場合には、上記したポスト動作の実施期間を長目にとり、次の上水供給動作に備えることが望ましい。
【0035】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項9に記載の発明は、加熱系の外部に設置された浴槽における水位変化を検知する水位変化検知手段を備えており、浴槽の水位変化が検知された後、所定期間内に実施される上水供給動作に続いて実施されるポスト動作の実施期間の長さが、浴槽の水位変化の非検知時に実施される上水供給動作に続いて実施されるの実施期間よりも長いことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0036】
浴槽における水位変化が検知される場合は入浴中であり、上水供給動作が複数回にわたって断続的に実施される可能性がある。本発明の液体加熱装置は、かかる特性に着目し、浴槽における水位変化が検知されることを条件として、ポスト動作の実施期間を浴槽の水位変化の非検知時(非入浴時)に実施される上水供給動作に続いて実施されるの実施期間よりも長くとる構成としている。そのため、本発明の液体加熱装置は、入浴時のように頻繁に上水供給動作が実施される状況下において、上水供給動作の開始後、所望の温度の上水が供給されるまでに要する期間を最小限に抑制することができる。
【0037】
また、同様の知見に基づいて提供される請求項10に記載の発明は、浴室における人の有無を検知する人検知手段を備えており、当該人検知手段により人が検知されている間、所定期間内に実施される上水供給動作に続いて実施されるポスト動作の実施期間の長さが、人の非検知時に実施される上水供給動作に続いて実施されるの実施期間よりも長いことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0038】
本発明の液体加熱装置は、浴室内に人が存在することを条件としてポスト動作の実施期間が延長される構成とされているため、入浴中に上水供給動作が複数回にわたって断続的に実施されても、上水供給動作が開始されてから所望の温度の上水が供給されるまでに要する期間を最小限に抑制することができる。従って、本発明の液体加熱装置は、浴室に設置されたカランやシャワー等に供給すべき上水の加熱用として好適に採用することができる。
【0039】
ここで、上記した本発明の液体加熱装置は、ポスト動作を実施することにより次の上水供給動作に備えることが可能な構成であるが、上水供給動作が完了したタイミングから次の上水供給動作が開始されるタイミングまでの期間、すなわち上水供給動作の待機期間の長さによって、ポスト動作の実施期間の最適値が異なるものと想定される。そのため、本発明の液体加熱装置は、前記した待機時間の長さを想定し、これに応じてポスト動作の実施期間を調整することが望ましい。
【0040】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項11に記載の発明は、上水供給動作の停止のタイミングから、次の上水供給動作の開始のタイミングまでの待機期間の長さを検出し、当該検出結果に基づいて以後の上水供給動作の停止後に実施されるポスト動作の実施期間が調整されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0041】
かかる構成によれば、上水供給動作の実施状況に合わせてポスト動作の実施期間を最適化することができる。
【0042】
ここで、本発明の液体加熱装置において上水供給動作の実施期間が短時間である場合は、熱交換手段の内圧が上昇してしまうという問題が起こる可能性がある。さらに具体的には、例えば上水を給湯栓に供給可能な構成とした場合を想定すると、給湯栓を一瞬開いたもののすぐに閉じた場合がこれに相当する。本発明者らが検討を重ねたところ、上水供給動作が短時間で終了された場合にもポスト動作を実施する構成とすると、熱交換手段に二次流路を介して供給される上水の流れが停止しているにもかかわらず、一次流路を介して貯留手段から液体が供給されることとなり、二次流路側に滞留している上水が高温に加熱され、熱交換手段の内圧が上昇してしまうという問題が起こる可能性があることが判明した。
【0043】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項12に記載の発明は、上水供給動作の実施期間が所定時間以内であることを条件として、ポスト動作が中止、あるいは、ポスト動作の実施期間が短縮されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0044】
かかる構成によれば、ポスト動作を実施することにより熱交換手段の内圧が上昇してしまうといった不具合を解消することができる。
【0045】
また、上記請求項1〜12のいずれかに記載の液体加熱装置は、上水供給動作の実施頻度を時間帯毎に検出する実施頻度検出動作を実施し、当該実施頻度検出動作の結果に基づき、所定のタイミングで実施される上水供給動作に対応する時間帯における上水供給動作の実施頻度を推定し、当該推定結果に基づいて前記所定のタイミングで実施される上水供給動作の後に実施されるポスト動作の実施期間を設定することを特徴とするものであってもよい(請求項13)。
【0046】
かかる構成によれば、上水供給動作の実施頻度にあわせてポスト動作の実施期間を最適化することができる。従って、本発明によれば、上水供給動作を再開する際に上水を所定の設定温度に加熱された状態で供給可能な状態になるまでの期間を最小限に抑制すると共に、ポスト動作によるエネルギー消費を最小限に抑制することができる。
【0047】
ここで、上記した本発明の液体加熱装置において、加熱系の外部に供給すべき上水の設定温度がある程度低温である場合は、上水をさほど高温に加熱する必要がないものと想定される。そのため、供給すべき上水の設定温度がある程度低温である場合は、上水供給動作の開始直後に高温の上水を供給しなくても、上水の供給温度が設定温度と大差ないものと想定される。
【0048】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項14に記載の発明は、加熱系の外部に供給する上水の設定温度が所定温度よりも低いことを条件としてポスト動作が中止される、あるいは、ポスト動作の実施期間が短縮されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の液体加熱装置である。
【0049】
かかる構成によれば、加熱系の外部に供給すべき上水の設定温度が所定温度より低温である場合に、ポスト動作を実施しない構成としたり、ポスト動作の実施期間を短縮しつつ、次の上水供給動作の開始時に加熱系の外部に供給される上水の温度を設定温度と大差ない程度の温度に調整することができる。従って、本発明によれば、ポスト動作に伴うエネルギー消費を最小限に抑制できる。
【0050】
ここで、上記した本発明の液体加熱装置において、加熱系の外部から供給(導入)される上水の温度がある程度高い場合は、上水供給動作において加熱系の外部に供給(排出)する際に熱交換手段でさほど上水を加熱する必要がないものと想定される。そのため、外部から供給される上水の供給温度がある程度高い場合は、先の上水供給動作の後にポスト動作を実施しない構成としたり、ポスト動作の実施期間を短く設定しても、次の上水供給動作の開始時に設定温度と大差ない温度に加熱された状態で上水を加熱系の外部に供給できる可能性が高い。
【0051】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項15に記載の液体加熱装置は、加熱系の外部から熱交換手段に供給される上水の温度が、所定温度よりも高いことを条件としてポスト動作が中止される、あるいは、ポスト動作の実施期間が短縮されることを特徴とするものである。
【0052】
かかる構成によれば、加熱系の外部から供給(導入)される上水の温度が所定温度よりも高温である場合に、ポスト動作を実施しない構成としたり、ポスト動作の実施期間を短縮しつつ、上水供給動作の開始時に加熱系の外部に供給される上水の温度を設定温度と大差ない程度の温度に調整することができる。従って、本発明によれば、より一層省エネルギーに資することができる。
【0053】
上記請求項1〜15のいずれかに記載の液体加熱装置は、熱交換手段に存在する上水の温度、及び/又は、二次流路において熱交換手段よりも上水の流れ方向下流側に存在する上水の温度を直接的あるいは間接的に検知可能な温度検知手段を備えており、上水供給動作の待機中に、上記温度検知手段の検知温度が所定温度以下になることを条件として、所定期間にわたって前記貯留手段と熱交換手段との間で液体を循環させる構成とすることも可能である(請求項16)。
【0054】
かかる構成によれば、上水供給動作の待機中に、熱交換手段や熱交換手段よりも二次流路の下流側に存在する上水の温度が所定温度以下になるのを防止することができる。そのため、本発明によれば、上水供給動作の開始直後から、設定温度と大差ない温度に加熱された状態の上水を加熱系の外部に供給可能な液体加熱装置を提供できる。
【0055】
上記請求項1〜16のいずれかに記載の液体加熱装置は、上水供給動作の待機中であって、上水供給動作の開始が想定されるタイミングに対して所定期間だけ遡ったタイミングから前記貯留手段と熱交換手段との間における液体の循環動作が開始される構成とすることも可能である(請求項17)。
【0056】
かかる構成によれば、上水供給動作の開始に先立って貯留手段に貯留されている液体を熱交換手段に対して供給し、熱交換手段に滞留している上水をある程度加熱しておくことができる。そのため、本発明の液体加熱装置によれば、上水供給動作の開始直後から上水を設定温度あるいはこれと大差ない温度に加熱された状態で加熱系の外部に供給することができる。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、上水の加熱用の熱交換手段を貯留手段の外部に配しつつ、いったん上水の熱交換加熱して供給するのを停止した後、再度上水を外部に供給する際に、上水の供給開始から上水が所定温度に到達するのに要する期間を最小限に抑制可能な液体加熱装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
続いて、本発明の一実施形態にかかる液体加熱装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の液体加熱装置である。図1および図2に示すように、液体加熱装置1は、金属製の筐体Cの内部に本体部2と燃焼部3および消音器4に加えて、後述する上水系統S、暖房系統Dおよび風呂系統Fの構成部材を内蔵し、これらによって加熱系Hを形成した構成とされている。
【0059】
本体部2は、大きく燃焼空間部5と貯留部6(貯留手段)とに分かれている。燃焼部3および燃焼空間部5は、貯留部6内に貯留される熱媒体を加熱する加熱手段7として機能する。本体部2は、全体形状が円筒形であり、2重構造となっている。本体部2の内部には、貯留部6が形成されている。より具体的には、本体部2は外筒8と内筒9とを有し、その内部に熱媒体を貯留できる構造とされている。また、特に本体部2の上半分には、上鏡板10と下鏡板11とによって囲まれた熱媒体室12が形成されている。
【0060】
熱媒体室12には、複数の燃焼ガス通路13が形成されている。燃焼ガス通路13は、貯留部6の熱媒体室12を軸方向に貫通する貫通孔である。また、燃焼部3は、灯油等の液体燃料の燃焼を行うバーナを備えており、燃料噴射ノズル15が内蔵されている。また、燃焼部3は、送風機16を具備しており、本体部2の下方に位置する燃焼空間部5に接続されている。燃焼空間部5は、燃焼部3の燃焼室として機能する。
【0061】
一方、本体部2の上方には、消音器4が設けられている。消音器4は、外観が円筒状または直方体状をしており、内部がラビリンス構造となっており、燃焼音を低減させるものである。なお、図1および図2において、消音器4のラビリンス構造は図示せず省略している。
【0062】
燃焼部3の燃料噴射ノズル15から噴射された燃料は、燃焼空間部5内において燃焼し、高温の燃焼ガスと火炎とを発生する。燃焼ガスは、熱媒体室12内の燃焼ガス通路13を流れ、消音器4を通過した後、外部に排出される。熱媒体室12内の熱媒体は、燃焼ガス通路13を流れる高温の燃焼ガスにより加熱され、昇温する。
【0063】
貯留部6には、熱媒体として不凍液を貯留することができる。貯留部6には、内部に貯留されている熱媒体の温度を測定するための温度センサ24が設けられている。温度センサ24はサーミスタにより構成されている。本実施形態において、温度センサ24は貯留部6内のいかなる場所に設けられてもよいが、安定した検知精度を得るため貯留部6の上方側に取り付けられることが望ましい。温度センサ24の検知温度に基づいて燃焼部3が駆動し、貯留部6内の熱媒体は沸騰しない程度の温度に維持される。さらに具体的には、常時は、貯留部6内の熱媒体が80℃以上に維持され、より好ましくは85℃以上の高温に維持される。
【0064】
貯留部6には、上水系統Sを構成する上水一次側往き流路20(一次流路)および上水一次側戻り流路21(一次流路)と、暖房系統Dを構成する暖房往き流路22と、暖房戻り流路23とが接続されている。また、貯留部6の内部には、コイル状の熱交換器17(液−液熱交換手段)が内蔵されており、これに風呂系統Fを構成する風呂往き流路25および風呂戻り流路26が接続されている。
【0065】
上水系統Sは、図1に示すように上水用熱交換器30(熱交換手段)を中心として構成されるものであり、これに上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21をはじめとする流路を接続して構成されるものである。上水用熱交換器30は、いわゆるプレート型の熱交換器によって構成されており、一次側接続口30a,30bおよび二次側接続口30c,30dを有する。上水用熱交換器30は、一次側接続口30a,30b間、および、二次側接続口30c,30d間で連通しており、一次側接続口30a,30b間を流れる液体と、二次側接続口30c,30d間を流れる液体とを熱交換させることができる構成となっている。上水用熱交換器30は、内部に多数のフィンが設けられており、このフィンの数を調整することにより、熱交換効率を適宜調整することができる。
【0066】
上水用熱交換器30は、図1では図示の都合で貯留部6に隣接する位置に記しているが、実際は図2に示すように筐体Cの内部であって、貯留部6から離間した位置に設けられている。さらに具体的には、上水用熱交換器30は、貯留部6を含む本体部2の下方に配置されている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6の上端側から上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21、上水用熱交換器30等への伝熱が起こりにくい構成となっている。
【0067】
貯留部6に接続されている上水一次側往き流路20および上水一次側戻り流路21は、それぞれ上水用熱交換器30の一次側接続口30a,30bに接続されている。また、上水一次側戻り流路21の中途には、給湯ポンプ32(圧送手段)が設けられている。そのため、給湯ポンプ32を作動させることにより、貯留部6内に貯留されている熱媒体を、貯留部6の上端側に接続された上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給し、貯留部6側に戻すことができる。すなわち、給湯ポンプ32を作動させることにより、貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体の循環流を発生させ、熱媒体の持つ熱エネルギーを上水用熱交換器30に供給することができる。
【0068】
上水用熱交換器30の二次側接続口30cには給水流路33が接続されており、二次側接続口30dには上水二次側往き流路34(二次流路)が接続されている。給水流路33は、外部の給水源から液体加熱装置1に湯水(上水)を供給するための流路であり、中途に水量センサ36、水温センサ37および給水用膨張タンク38が設けられている。また、水量センサ36よりも上流側には、逆止弁29が設けられている。そのため、万一、上水用熱交換器30の内部破壊によりその一次側(熱媒体側)と二次側(湯水側)とが連通しても、図示しない上水の上流側に熱媒体が逆流することがない。給水流路33は、中途で分岐流路40に分岐されている。分岐流路40は、後述する水量サーボ41(混合手段)に接続されている。
【0069】
上水二次側往き流路34は、上水用熱交換器30において熱交換加熱された湯水が流れる流路であり、水量サーボ41に接続されている。上水二次側往き流路34の中途には、缶体サーミスタ39が設けられており、これにより上水用熱交換器30において加熱され、上水二次側往き流路34に存在する湯水の温度を検知することができる。
【0070】
水量サーボ41は、3つの接続部41a,41b,41cを有し、接続部41a,41bから流入した湯水(液体)を混合して接続部41cから排出可能な構成とされている。水量サーボ41は、接続部41a,41bの開度、すなわち接続部41a,41bから流入可能な湯水の量を調整可能な構成とされており、これにより接続部41a,41bから流入する湯水の混合比を調整可能な構成とされている。水量サーボ41の接続部41a,41bの開度は、供給すべき湯水の設定温度や、前記した分岐流路40を介して外部の給水源から供給される湯水の温度(入水温度)、供給すべき湯水の量に応じて調整される。
【0071】
上記した上水二次側往き流路34は、水量サーボ41の接続部41aに接続されている。また、水量サーボ41の接続部41bには、給水流路33から分岐された分岐流路40が接続されている。そのため、液体加熱装置1では、上水用熱交換器30において加熱され、上水二次側往き流路34を介して供給される高温の湯水と、分岐流路40を介して加熱系Hの外部から供給される低温の湯水とを水量サーボ41で混合して接続部41cから排出可能な構成とされている。
【0072】
水量サーボ41は、後述する給湯運転や落とし込み運転の待機中に、上水二次側往き流路34が接続された接続部41aが多少開いた状態とされている。すなわち、給湯運転の待機中、水量サーボ41は上水二次側往き流路34に対して開状態に維持されている。
【0073】
水量サーボ41には、上水流路35が接続されている。上水流路35は、給湯用や浴槽60への落とし込み用に使用される上水を供給するための流路である。上水流路35は、水量サーボ41の接続部41cに接続されており、中途に水量調整弁43(流量調整手段)と出湯温度センサ45とを有する。上水流路35の末端には、給湯栓47に繋がる配管48を接続するための給湯接続口46が設けられている。
【0074】
上水流路35は、出湯温度センサ45の取り付け位置よりも湯水の流れ方向下流側の位置で注湯バイパス流路50に分岐されている。注湯バイパス流路50は、後述する風呂戻り流路26に接続されている。注湯バイパス流路50は、浴槽60への落とし込み用の湯水を供給するための流路であり、中途に注湯電磁弁51と、注湯水量センサ52と、逆止弁53,54が設けられている。注湯水量センサ52は、注湯バイパス流路50を流れる水量を検知するものである。注湯電磁弁51は、後述する制御手段90から発信される浴槽60への落とし込み運転のための制御信号に基づいて開閉される。また、逆止弁53,54は、浴槽60側から湯水が逆流するのを防止するために設けられている。
【0075】
図1に示すように、暖房系統Dは、貯留部6に接続された暖房往き流路22と、暖房戻り流路23とを備えている。暖房往き流路22は貯留部6の頂部側に接続されており、暖房戻り流路23は貯留部6の底部側の位置に接続されている。暖房戻り流路23の中途には、暖房タンク65と循環ポンプ66とが設けられている。暖房往き流路22および暖房戻り流路23の末端には、暖房接続口67,68が設けられており、これらに液体加熱装置1の外部に設けられた負荷端末75に繋がる配管69,70を接続することにより、負荷端末75と液体加熱装置1との間で貯留部6内に貯留されている熱媒体が往き来可能な状態とすることができる。
【0076】
暖房タンク65には、暖房系統D内に存在する空気を外部に排出するためのエア抜き弁71が取り付けられている。また、暖房タンク65には、バイパス流路72が接続されている。バイパス流路72は、循環ポンプ66の保護を主目的として設けられた流路であり、暖房タンク65と貯留部6の上端側の部位とをバイパスするように取り付けられている。バイパス流路72は、暖房戻り流路23よりも流路断面積が小さく、流路抵抗が大きい。そのため、負荷端末75に液体を供給可能な状態で循環ポンプ66を作動させると、貯留部6から暖房往き流路22を介して吸い出された熱媒体が、配管69,70および負荷端末75を流れ、暖房戻り流路23を介して貯留部6に戻る。一方、負荷端末75に液体を供給不可能な状態で循環ポンプ66が作動すると、熱媒体が貯留部6からバイパス流路72を介して吸い出され、暖房戻り流路23を経て貯留部6に戻る。
【0077】
風呂系統Fは、浴槽60内の湯水を加熱(追い焚き)したり、浴槽60内に湯水を落とし込むために使用されるものである。風呂系統Fは、図1に示すように、貯留部6内に配置された熱交換器17に風呂往き流路25および風呂戻り流路26を接続した構成とされている。
【0078】
熱交換器17は、貯留部6内に配されており、貯留部6の底部側および頂部側に接続口17a,17bを有する。貯留部6の底部側に設けられた接続口17aには、風呂往き流路25が接続されており、頂部側に設けられた接続口17bには、風呂戻り流路26が接続されている。風呂往き流路25および風呂戻り流路26の端部には、それぞれ浴槽60に繋がる配管77,78を接続するための風呂接続口61,62が設けられている。また、風呂往き流路25および風呂戻り流路26は、バイパス流路63によってバイパスされている。
【0079】
風呂戻り流路26の中途には、熱交換器17側から湯水の流れ方向上流側に向けて三方弁80、湯温センサ81、水流スイッチ82、循環ポンプ83および水位センサ84の順で設けられている。また、風呂戻り側流路26の中途であって、循環ポンプ83よりも上流側の位置には、上記した注湯バイパス流路50が接続されている。三方弁80は、上記したバイパス流路63と風呂戻り流路26との接続部分に設けられており、必要に応じて開閉できる構成とされている。さらに具体的には、予め浴槽60内に張られている湯水を加熱(追い焚き)する場合は、三方弁80の熱交換器17側のポートと循環ポンプ83側のポートとが連通した状態とされる。これにより、熱交換器17と浴槽60との間で湯水の往き来が可能な状態になる。一方、浴槽60内に湯水を供給(落とし込み)する場合は、三方弁80の熱交換器17側のポートが閉止した状態とされる。これにより、上水用熱交換器30において加熱された湯水を、注湯バイパス流路50側から風呂往き流路25や風呂戻り流路26に流し、配管77,78を介して浴槽60に供給可能な状態になる。
【0080】
液体加熱装置1は、制御手段90とリモートコントローラ91(以下、単にリモコン91と称す)とを備えている。制御手段90は、例えばCPUを中心として構成され、RAM、ROM、I/Oポート、および、アナログのセンサ信号をデジタル信号に変換するA/D変換回路、あるいは、生成されたデジタル制御信号をアナログ制御信号に変換するD/A変換回路などを備えた構成とすることができる。
【0081】
制御手段90は、温度センサ24や水量センサ36、缶体サーミスタ39等の検知手段の検知信号や、リモコン91等を介して入力される入力信号を参照し、燃焼部3や給湯ポンプ32、循環ポンプ66,83等のポンプ類、水量サーボ41、水量調整弁43、注湯電磁弁51、三方弁80等の弁類をはじめとする各構成部材を動作させるものである。すなわち、制御手段90は、液体加熱装置1の動作全般を司るものである。制御手段90は、制御に用いる各種の判別基準値や制御プログラム等を予めROMに格納しており、CPUで上記した各検知手段の検知信号を随時参照し、制御プログラムに従って処理を行う。
【0082】
続いて、本実施形態の液体加熱装置1の動作について説明する。液体加熱装置1は、給湯栓47に加熱された湯水を供給する給湯運転に加えて、外部から供給された湯水を熱交換加熱せずにそのまま給湯栓47に供給する給水運転、負荷端末75に貯留部6内に貯留されている熱媒体を介して熱エネルギーを供給する負荷運転、浴槽60に湯水を落とし込む落とし込み運転、浴槽60内の湯水を加熱する追い焚き運転から一又は複数の運転方法を選択して実施することができる。以下、液体加熱装置1の動作を各運転方法毎に説明する。
【0083】
(給湯運転)
液体加熱装置1において給湯運転が選択された場合、液体加熱装置1は、図3に示すフローチャートに従って動作する。さらに具体的に説明すると、液体加熱装置1は、図示しない運転スイッチがオン状態になると、ステップ1において、燃焼部3が燃焼運転を開始し、貯留部6内に貯留されている熱媒体が所定温度まで加熱される。その後、貯留部6内の熱媒体を所定温度に維持するように燃焼運転を断続的に繰り返す。
【0084】
ステップ1において燃焼部3が燃焼運転を開始した後、給湯栓47が開栓されると、外部の給水源から給水流路33を介して低温の湯水が供給される。給水流路33の中途に設けられた水量センサ36が所定量以上の水流を検知すると、液体加熱装置1の制御手段90は、液体加熱装置1に対して給湯要求が出されたものと判断する(ステップ2)。
【0085】
ステップ2において液体加熱装置1に対する給湯要求が確認されると、制御フローがステップ3に進み、給湯ポンプ32がオン状態とされる。給湯ポンプ32がオン状態とされると、貯留部6の頂部側に設けられた一次側接続口30aから吸い出された高温の熱媒体が上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給される。貯留部6から吸い出された高温の熱媒体は、上水用熱交換器30において熱エネルギーを放出した後、上水一次側戻り流路21を介して貯留部6に戻る。
【0086】
給水流路33を介して外部から供給された低温の湯水の一部は、上水用熱交換器30に供給され、残部は、分岐流路40を介して水量サーボ41に供給される。ここで、上水用熱交換器30に供給される湯水と、分岐流路40側に流れる湯水の流量比は、給湯栓47において必要とされる湯水の設定温度等に基づいて水量サーボ41により調整される。
【0087】
給水流路33を介して上水用熱交換器30に供給された湯水は、上水一次側往き流路20を介して上水用熱交換器30に供給されている高温の熱媒体との熱交換により加熱される。上水用熱交換器30において加熱された高温の湯水は、上水二次側往き流路34を介して水量サーボ41に供給される。
【0088】
水量サーボ41に供給された高温の湯水は、分岐流路40を介して供給された低温の湯水と混合されて所定温度に調整された後、上水流路35に流れ込む。上水流路35に流れ込んだ湯水は、給湯接続口46に接続された配管48を介して給湯栓47に供給され、給湯に使用される。
【0089】
説明を制御フローに戻すと、上記したように給湯栓47が開いている間、すなわち給湯要求がオン状態である間、液体加熱装置1は、給湯ポンプ32を作動させて上水用熱交換器30に熱媒体を介して熱エネルギーを供給し続け、給湯用の湯水の加熱を継続する(ステップ4)。一方、給湯栓47が閉止され、水量センサ36によって検知される水量が所定量未満になると、制御手段90により、給湯要求がオフ状態になったものと判断され、制御フローがステップ5に進められる。この時、給湯ポンプ32は、直ちに停止せず作動し続ける。
【0090】
制御フローがステップ5に進むと、ステップ4において給湯要求がオフ状態になった時点から時間Xだけ経過したか否かを確認する。ここで、給湯要求がオフ状態になった後、経過した時間が時間Xに満たない場合は、制御フローがステップ4に戻され、給湯ポンプ32がオン状態に維持された状態で給湯要求の有無が確認される。ここで、給湯要求が再びオン状態になった場合は、制御フローがステップ3に戻され、給湯ポンプ32のオン状態が維持されたまま給湯動作が再開される。すなわち、液体加熱装置1は、給湯要求がオフ状態になっても、直ちに給湯ポンプ32を停止するのではなく、給湯要求がオフ状態になってから時間Xにわたって作動するポスト動作を実施する。換言すれば、液体加熱装置1は、ステップ1〜4に至る一連の給湯動作に対して給湯ポンプ32の停止のタイミングが所定の時間Xだけ遅延される。
【0091】
一方、ステップ4において給湯要求がオフ状態になってから、給湯要求が再びオン状態になることなく時間Xが経過したことが確認されると、制御フローがステップ6に進められ、給湯ポンプ32がオフ状態(停止状態)とされる。すなわち、給湯ポンプ32は、ステップ4において給湯栓47が閉止され、給湯要求がオフ状態になった後、時間Xだけ経過するのを待ってからオフ状態とされる。給湯ポンプ32がオフ状態とされると、一連の給湯動作が完了する。
【0092】
(給水運転)
給水運転は、液体加熱装置1の外部にある給水源から供給された湯水を上水用熱交換器30で熱交換加熱することなく、そのまま給湯栓47に供給する運転形態である。給水運転を実施する場合は、さらに具体的には、液体加熱装置1は、図示しない運転スイッチがオフ状態の場合は、給湯運転を行わない。すなわち、運転スイッチがオフ状態である場合は、給湯ポンプ32が作動せず、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)が供給されない。そのため、この状態において給湯栓47が開栓されると、外部の給水源から給水流路33を介して供給された低温の湯水が上水用熱交換器30を素通りして給湯栓47に供給される。
【0093】
本実施形態の液体加熱装置1は、上記した運転スイッチがオン状態であるか否かにかかわらず、負荷運転のように外部の給水源から供給された湯水(上水)の加熱を伴わない運転を実施できる構成とされている。また、液体加熱装置1は、仮に給湯ポンプ32がオフ状態で故障し、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)を供給不可能な状態になったとしても、湯水を加熱して供給する給湯動作を実施することは不可能であるが、給水動作は実施することができる。
【0094】
(負荷運転)
液体加熱装置1が負荷運転で運転する場合、図示しない負荷運転用の運転スイッチがオン状態とされると、燃焼部3が燃焼運転を開始し、貯留部6内に貯留されている熱媒体が加熱される。また、暖房戻り流路23に設けられた循環ポンプ66が作動し、貯留部6内の熱媒体が暖房往き流路22、暖房戻り流路23および配管69,70で構成される循環流路内を循環する。これにより、熱媒体を介して熱エネルギーが負荷端末75に供給される。
【0095】
(落とし込み運転)
液体加熱装置1は、浴槽60に湯水を落とし込む落とし込み運転を湯張りモード、足し湯モード、足し水モードからなる3つの動作モードで実施することができる。足し水モードは、上記した給水運転と同様に、外部から供給された湯水を加熱することなく浴槽60に供給するモードである。液体加熱装置1が足し水モードで落とし込み運転を実施する場合は、湯水を加熱する必要がないため、上水加熱用ポンプ32が作動しない。すなわち、足し水モードで動作する場合は、外部から供給された低温の湯水の一部が上水用熱交換器30を素通りして水量サーボ41に供給されると共に、外部から供給された低温の湯水の残部が分岐流路40を介して水量サーボ41に流入して合流し、上水流路35および注湯バイパス流路50を介して浴槽60に落とし込まれる。
【0096】
液体加熱装置1が足し水モードで落とし込み運転を実施する場合は、上記した給水運転と同様に、仮に上水加熱用ポンプ32がオフ状態で故障しており、貯留部6から上水用熱交換器30に熱媒体(熱エネルギー)を供給不可能な状態においても実施することができる。
【0097】
湯張りモードは、外部から供給された湯水を上水用熱交換器30において加熱して浴槽60に落とし込み、浴槽60に湯水を張るモードである。また、足し湯モードは、予めある程度の湯水が浴槽60に溜められている状況下で、浴槽60内に上水用熱交換器30において加熱された湯水を追加するモードである。
【0098】
液体加熱装置1が湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転で運転する場合は、給水源から供給された低温の湯水が上水用熱交換器30において加熱され、これが浴槽60に落とし込まれる。すなわち、湯張りモードあるいは足し湯モードで落とし込み運転が実施される場合は、外部の給水源から湯水が供給される。給水流路33の中途に設けられた水量センサ36が所定量以上の水量を検知すると、上水加熱用ポンプ32が作動し始める。
【0099】
一方、液体加熱装置1が落とし込み運転で運転を実施する場合は、風呂戻り流路26の中途に設けられた三方弁80が熱交換器17側に閉止された状態とされると共に、上水流路35の分岐流路である注湯バイパス流路50に設けられた注湯電磁弁51が開かれる。これにより、上水用熱交換器30において加熱された湯水は、分岐流路40を介して供給された低温の湯水と水量サーボ41において混合された後、上水流路35および注湯バイパス流路50を経て、風呂戻り流路26に流入する。風呂戻り流路26に流入した湯水の一部は、そのまま配管78に流入し、浴槽60に落とし込まれる。また、風呂戻り流路26に流入した湯水の残部は、バイパス流路63を経て風呂往き流路25に流入し、配管77を介して浴槽60に落とし込まれる。
【0100】
(追い焚き運転)
追い焚き運転は、貯留部6内に設けられたコイル式の熱交換器17と浴槽60との間で湯水の循環流を発生させ、貯留部6内に貯留されている高温の熱媒体との熱交換により、熱交換器17内を流れる湯水を加熱するモードである。さらに具体的には、液体加熱装置1が追い焚き運転で作動する場合は、上記した各運転で動作する場合と同様に燃焼部3が燃焼運転を実施し、貯留部6内の熱媒体が加熱される。また、追い焚き運転で運転を実施する場合は、風呂戻り流路26の中途に設けられた三方弁80の熱交換器17側のポートと循環ポンプ83側のポートとが連通した状態とされる。この状態で循環ポンプ83を作動させると、浴槽60内の湯水が配管78を介して吸い出されて風呂戻り流路26に流れ込み、熱交換器17に流入する。熱交換器17に流入した湯水は、貯留部6内の熱媒体との熱交換により加熱され、風呂往き流路25および配管77を介して浴槽60に戻される。これにより、浴槽60内の湯水が次第に加熱される。
【0101】
上記したように、本実施形態の液体加熱装置1は、給湯運転の際に給湯要求がオフ状態となっても、給湯ポンプ32を直ちに停止させるのではなく、給湯要求がオフ状態となってから所定の時間Xが経過するまで給湯ポンプ32が作動し続け、貯留部6から上水用熱交換器30に高温の熱媒体が供給される。すなわち、液体加熱装置1は、図3のフローチャートに示すように、給湯運転を行う際にステップ1〜ステップ4において一連の給湯動作を行うと共に、給湯動作の終了後、ステップ5において時間Xにわたって上水用熱交換器30に対して熱媒体の供給を継続するポスト動作を実施する構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、給湯動作の終了後、少なくともポスト動作の実施期間(時間X)が経過するまでの間は上水用熱交換器30や、上水用熱交換器30内あるいはこの近傍に存在する湯水や熱媒体を高温に維持しておくことができる。そのため、液体加熱装置1は、いったん給湯動作が停止した後、給湯栓47が開かれ、給湯要求が出された場合に、給湯用の湯水が所定の設定温度に到達するまでに要する期間(立ち上がり時間)を最小限に短縮することができる。
【0102】
上記実施形態では、給湯運転において、給湯動作の後に実施されるポスト動作の実施期間の長さが時間Xで一定であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばリモコン91等を介して液体加熱装置1の使用者が任意に設定可能な構成としてもよい。すなわち、ポスト動作の実施期間(時間X)を任意に設定可能な期間調整手段としての機能をリモコン91に付与したり、期間調整手段を別途設けた構成としてもよい。かかる構成によれば、液体加熱装置1の使用者の使用形態に合わせてポスト動作を実施することができる。
【0103】
上記実施形態では、給湯運転において、給湯動作が実施された後に時間Xにわたって給湯ポンプ32を作動させてポスト動作を実施し、次の給湯動作に備えて上水用熱交換器30を予熱しておく構成を例示したが、ポスト動作とは別の所定のタイミングで給湯ポンプ32を作動させる構成としてもよい。
【0104】
さらに具体的には、例えば液体加熱装置1の運転スイッチがオン状態となると、給湯運転が実施される可能性が高いことに鑑み、運転スイッチがオン状態となることを条件として給湯ポンプ32を作動させる構成としてもよい。すなわち、給湯動作に先立って、給湯動作の実施が予想されるタイミングに先だって給湯ポンプ32を作動させ、上水用熱交換器30を予熱しておく構成としてもよい。
【0105】
また、液体加熱装置1は、落とし込み運転の実施要求が出された際に、落とし込み運転の実施に先だって所定時間にわたって給湯ポンプ32を作動させる構成としてもよい。かかる構成の一形態として、例えばリモコン91などに落とし込み運転を実施するためのボタンを設けた構成とし、このボタンがオン状態とされることを条件として、所定時間だけ給湯ポンプ32を作動させた後、落とし込み運転を実施する構成としてもよい。かかる構成によれば、落とし込み運転の開始直後から所望の温度に加熱された湯水を浴槽60に落とし込むことが可能となる。
【0106】
また、液体加熱装置1は、給湯ポンプ32の作動用のスイッチをリモコン91等に設けるなどしてもよい。かかる構成によれば、給湯動作に先駆けて給湯ポンプ32の作動用のスイッチを操作することにより、給湯動作を実施する前に上水用熱交換器30を予熱することができ、給湯動作の開始から出湯温度が設定温度に到達するまでの期間を最小限に抑制することができる。
【0107】
ここで、液体加熱装置1を家庭等で使用する場合、給湯運転や落とし込み運転の実施状況は、例えば一日毎や一週間毎に所定の周期性をもって変化するものと想定される。そのため、液体加熱装置1は、給湯運転や落とし込み運転の実施状況を学習しておき、この学習結果に基づいてポスト動作の実施期間(時間X)を調整することにより、給湯運転や落とし込み運転の開始時に設定温度の湯水が供給されるまでに要する期間を最小限に抑制しつつ、省エネルギーに資することができるものと想定される。
【0108】
そこで、かかる知見に基づき、液体加熱装置1は、給湯動作や落とし込み運転の実施状況を学習して、この学習結果をポスト動作の実施期間(時間X)に反映する構成としてもよい。さらに詳細に説明すると、液体加熱装置1は、制御手段90により、所定期間において時間帯毎に給湯動作や落とし込み運転の実施頻度を検出して給湯動作の実施頻度に関するデータベースを作製しておき、給湯動作が実施される際に、前記データベースからこの給湯動作の実施時間帯に対応する時間帯における給湯動作の実施頻度を確認し、この頻度に応じてポスト動作の実施期間(時間X)を調整する構成としてもよい。
【0109】
さらに具体的に説明すると、液体加熱装置1は、例えば給湯動作や落とし込み運転の実施頻度について1日分のデータを1時間毎に記憶してデータベース化しておき、翌日に給湯動作や落とし込み運転が実施される際に、その実施時間帯Aに対応するデータDB(実施頻度)を確認し、このデータDBに基づいてポスト動作の実施期間(時間X)を調整する構成としてもよい。この際、ポスト動作の実施期間に相当する時間Xは、例えばデータDBに応じて複数段階に切り替えて設定したり、データDBを所定の演算式に代入して導出する等、適宜の方法で導出することができる。かかる構成によれば、給湯運転や落とし込み運転の開始から設定温度の湯水が供給されるまでに要する期間を最小限に抑制しつつ、ポスト動作によるエネルギー消費を最小限に抑制できる。すなわち、上記したように給湯動作や落とし込み運転の実績をポスト動作の実施期間(時間X)に反映すれば、給湯運転や落とし込み運転における出湯特性を改善し、省エネルギーに資することができる。
【0110】
上記した例では、給湯動作および落とし込み運転の双方について実施頻度を学習する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、いずれか一方のみの実施頻度を学習し、これに基づいてポスト動作の実施期間(時間X)を調整する構成としてもよい。
【0111】
ここで、液体加熱装置1において、給湯動作が上記した時間X程度の間隔毎に実施される場合は、上記したように給湯動作の後、一定の時間Xにわたってポスト動作を実施することにより、給湯動作を再開した際にすぐに所望の温度に加熱された湯水を給湯可能となると共に、ポスト動作によるエネルギーロスを最小限に抑制できる。しかし、給湯動作の間隔が時間Xに対して長い場合は、時間Xにわたってポスト運転を実施しても、次の給湯動作の際の出湯特性を改善できるとは限らず、ポスト運転によって消費されるエネルギーが無駄になる可能性がある。また逆に、給湯動作の間隔が時間Xよりも短い場合は、ポスト運転の実施期間を時間Xよりも短縮しても次の給湯動作における出湯特性に悪影響を及ぼす可能性が低い。そのため、液体加熱装置1は、ある一定の期間において実施される給湯動作の間隔に基づいて、次の給湯動作の後に実施されるポスト動作の実施期間を調整する構成としてもよい。
【0112】
さらに具体的に説明すると、例えば液体加熱装置1は、直近のn回分の給湯動作の間隔P(インターバル)を測定して記憶しておき、この間隔Pのバラツキに基づいてポスト動作の実施期間を設定する構成とすることができる。より詳細には、間隔Pが0〜時間Xである場合を領域α、間隔Pが時間X〜時間Y(X<Y)である場合を領域β、間隔Pが時間Y以上である場合を領域γにあると規定し、直近のn回分の給湯動作における間隔Pn(n=1〜n)を分類する。
【0113】
上記したようにして分類した結果、間隔Pnの全てが領域α,βになく、領域γにのみ分類される場合は、次の給湯動作においても、給湯動作が完了してから時間Y以上にわたって給湯動作が実施されないものと想定される。そのため、この場合は、仮に時間Xにわたってポスト動作を実施しても、これに消費したエネルギーが無駄になる可能性が高い。そこで、間隔Pnの全てが領域γに分類される場合は、時間Xよりも十分短く最短の時間Zに設定される。
【0114】
上記した分類の結果、間隔Pnのうちの一つでも領域βに含まれている場合は、給湯動作の間隔が時間X以内である可能性がある。そのため、このような場合は、ポスト動作の実施期間が時間Xに設定される。また、上記した分類の結果、間隔Pnの全てが領域β,γに含まれていない場合は、領域αに含まれている間隔Pnのうち最長のもの(Pmax)を選択し、これに所定の時間Zを足した時間(Pmax+Z≦X)をポスト動作の実施期間として設定する。
【0115】
液体加熱装置1は、給湯動作の間隔P(インターバル)を測定して記憶しておき、この間隔Pに基づいてポスト動作の実施期間を設定する構成とすれば、ポスト動作の実施期間を最適化することができる。なお、上記した例では、直近n回分の給湯動作についての間隔Pのバラツキに基づいてポスト動作の実施期間を設定する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばn回分の給湯動作についての間隔Pnの平均値等に基づいてポスト動作の実施期間を設定する構成としてもよい。また、上記した変形例では、n回分の給湯動作の間隔Pnを3つの領域α,β,γに分類する構成を例示したが、さらに多段階あるいは2段階に分類し、これに基づいてポスト動作の実施期間を調整する構成としてもよい。
【0116】
上記した各変形例は、給湯動作の実施履歴や、給湯動作のインターバルPに基づいて給湯動作の実施頻度を想定し、ポスト動作の実施期間の最適化を図るものであった。すなわち、上記各変形例は、給湯動作の実施履歴等に基づき、次の給湯動作に備えて一定期間にわたり、給湯動作の停止期間中における上水用熱交換器30の温度、あるいは、上水用熱交換器30やこの近傍に滞留している湯水や熱媒体の温度が低下するのを抑制するものであった。換言すれば、上記した変形例は、給湯動作の停止期間中における上水用熱交換器30の温度、あるいは、上水用熱交換器30やこの近傍に滞留している湯水や熱媒体の温度の低下を間接的に予測し、この予測に基づいて導出された時間にわたってポスト動作を実施し、上水用熱交換器30の温度や、滞留している湯水や熱媒体の温度をある程度の高温に維持するものであった。
【0117】
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上水二次側往き流路34に設けられた缶体サーミスタ39の検知温度に基づいて給湯動作の停止に伴って上水用熱交換器30付近に滞留している湯水の温度を検知し、この検知温度が所定温度以下になることを条件として一定期間あるいは缶体サーミスタ39の検知温度が所定の待機温度になるまで給湯ポンプ32を作動させる構成としてもよい。
【0118】
上記した変形例では、缶体サーミスタ39の検知温度に基づいて給湯ポンプ32を作動させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。液体加熱装置1は、例えば上水用熱交換器30の温度や、この内部に残存している湯水や熱媒体の温度を直接的あるいは間接的に検知可能な構成とし、これらの検知結果に基づいて給湯ポンプ32を作動させたり、給湯ポンプ32の作動時間を調整する構成としてもよい。
【0119】
上記実施形態では、外部の給水源から上水用熱交換器30に供給される湯水の温度の高低にかかわらず給湯運転においてポスト動作を実施する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、上記した液体加熱装置1は、例えば、いわゆる太陽熱温水器のような加熱装置によって加熱系Hの外部で予熱(加熱)された湯水を上水用熱交換器30に供給可能な構成とすることが可能である。かかる構成とした場合、上水用熱交換器30に流入する湯水は、ある程度高温である可能性が高く、給湯動作の停止時にポスト動作を実施して上水用熱交換器30を保温しておかなくても、次の給湯動作の際にそれほど低温の湯水がでない可能性が高い。そのため、液体加熱装置1は、実際に入水温度が高いことや、例えば加熱系Hの外部で加熱された湯水が上水用熱交換器30に供給される場合や外気温が高い場合のように入水温度が高いと想定されることを条件としてポスト動作を実施しない構成としたり、ポスト動作の実施期間(時間X)を短縮する構成としてもよい。かかる構成によれば、必要以上にポスト動作が実施されるのを防止でき、より一層省エネルギーに資することができる。
【0120】
また、上記実施形態の液体加熱装置1は、給湯運転や落とし込み運転において要求される湯水の設定温度の高低にかかわらず給湯動作の後にポスト動作を実施するものであったが、次の給湯運転や落とし込み運転において供給すべき湯水の設定温度が低いと想定される場合は、ポスト動作を実施する必要がない。さらに具体的には、例えば浴槽60の湯水にこれよりも低温の水を加えて温度を下げる動作を行う場合は、上水用熱交換器30に加熱系Hの外部から供給された湯水を素通りさせ、そのまま浴槽60に供給すればよい。そのため、かかる動作が想定される場合は、仮にポスト動作の実施中であっても給湯ポンプ32を停止させ、ポスト動作を中途で終了する構成としてもよい。かかる構成によれば、必要以上にポスト動作を実施するのを防止でき、省エネルギーに資することができる。
【0121】
液体加熱装置1は、給湯運転において、給湯動作の長短にかかわらず所定の時間Xにわたってポスト動作を実施する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、給湯動作の長短に応じてポスト動作を実施しない構成としたり、ポスト動作の実施期間(時間X)を短縮する構成としてもよい。
【0122】
さらに具体的には、給湯動作の実施期間が短い場合は、例えば給湯栓47を一瞬開いたもののすぐに閉じた場合のように、給湯栓47が突発的に開閉されたに過ぎず、給湯を望まない使用形態である可能性が高い。そのため、液体加熱装置1は、制御手段90により給湯動作の実施期間を監視し、給湯動作の実施期間が短いことを条件としてポスト動作の実施期間を短縮したり、ポスト動作を実施しない構成とすることも可能である。かかる構成とすれば、液体加熱装置1が必要以上にポスト動作を実施するのを防止でき、省エネルギーに資することができる。
【0123】
また、給湯ポンプ32の耐久性の観点からすると、給湯運転において、給湯動作の実施期間が短い場合は、ポスト動作の実施期間を長くとることが望ましい。すなわち、給湯動作が短い場合は、給湯栓47の開閉が頻繁に行われている可能性が高い。そのため、このような場合は、給湯動作が終わる度に給湯ポンプ32を停止する構成とすると、給湯ポンプ32が頻繁に起動、停止を繰り返すこととなり、給湯ポンプ32の耐久性に悪影響を及ぼす可能性がある。従って、給湯動作の実施期間が短い場合は、ポスト動作の実施期間(時間X)を長くとる構成とすることが望ましい。さらに具体的には、給湯動作の実施期間(時間Y)に応じてポスト動作の実施期間(時間X)を複数段階に切り替え可能な構成としたり、時間Yに応じて何らかの関係式に基づいて時間Xを調整可能な構成としてもよい。かかる構成によれば、給湯ポンプ32の耐久性に悪影響を与えることなく、給湯動作をいったん終了してから給湯動作を再開する際に、設定温度の湯水を供給可能な状態になるまでの期間を最小限に抑制することができる。
【0124】
ここで、上記したように、液体加熱装置1は、加熱系Hの外部から供給された湯水を上水用熱交換器30で熱交換加熱し、これを浴槽60への落とし込み用の湯水として使用できる。また、液体加熱装置1を家庭に設置する場合、浴室内に設置された給湯栓47やシャワー(図示せず)に上水用熱交換器30で加熱した湯水を供給可能な構成とされることが多い。そのため、このような形態で液体加熱装置1が使用される場合は、入浴に伴って給湯栓47やシャワーへの湯水の供給が何度も断続的に実施されるものと想定される。従って、液体加熱装置1は、人が浴槽60内や浴室内に居ることを何らかの方法で検知し、人が浴槽60や浴室内に居ることを検知した場合に、検知した時点から所定期間において給湯動作が行われた際に、給湯動作の終了後ポスト動作を通常よりも長目に実施して、次の給湯動作に備える構成とすることも可能である。
【0125】
さらに具体的には、液体加熱装置1は、例えば風呂戻り流路26の中途に設けられた水位センサ84によって浴槽60内に貯留されている湯水の水位を監視し、落とし込み運転の停止中であるにもかかわらず水位が上昇することを条件として入浴中であるものと判断し、入浴中であると判断された時点から所定期間の間に給湯動作が実施された際に、その給湯動作の後に実施されるポスト動作を通常時よりも長目に実施する構成としてもよい。かかる構成によれば、入浴に伴う給湯動作が実施されるか否かを的確に把握し、浴室に設置された給湯栓47やシャワーの使用開始から間もなく所望の温度に加熱された湯水を供給可能な構成とすることができる。
【0126】
上記した変形例では、浴槽60における水位変化に基づいて入浴状況を推測するものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば特開2001−299623号公報に開示されている浴室のように、浴室内に人の有無を検知する人検知手段を設け、この人検知手段により浴室内に人が居ることを検知し、浴室内に人が居るものと検知されている間に給湯動作が実施された際に、その給湯動作の後に実施されるポスト動作の長さを通常時よりも長くする構成としてもよい。また、特開2003−10276号公報に開示されている入浴ガイド装置や、特開2005−102859号公報に開示されている温水システムのように、浴槽60に入浴している人の心拍数や心電図、血圧等に代表される生体信号を検知可能な構成としておき、人体に関する信号(生体信号)を検知して入浴状態を判断し、入浴状態であると検知された時点から所定期間の間に給湯動作が実施されることを条件として、ポスト動作の実施期間を延長する構成としてもよい。また、液体加熱装置1は、リモコン91を浴室に設置する構成とし、リモコン91が操作されることを条件として入浴中であると制御手段90が判断し、入浴中であると判断した時点から所定期間内に給湯動作が実施されることを条件としてポスト動作の実施期間を通常時よりも延長する構成としてもよい。かかる構成とした場合についても、上記した変形例と同様に、入浴に伴う給湯動作の実施可能性を的確に把握し、これにあわせて的確にポスト動作を実施することができる。
【0127】
上記したように、本実施形態の液体加熱装置1は、上水用熱交換器30が貯留部6に対して下方に離間した位置に配置されている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6の容量や高さが小さく、装置構成がコンパクトである。
【0128】
液体加熱装置1は、貯留部6に貯留されている熱媒体を貯留部6と上水用熱交換器30との間で循環させ、この熱媒体との熱交換により外部の給水源から上水用熱交換器30に供給された湯水を加熱する構成とされている。そのため、液体加熱装置1によれば、給湯や浴槽60への落とし込みに使用する湯水を効率よく加熱して供給することができる。
【0129】
また、液体加熱装置1は、貯留部6と上水用熱交換器30との間で熱媒体を循環させる構成であり、上水用熱交換器30において湯水の加熱に供する熱媒体の量は、貯留部6に貯留されている熱媒体の一部である。そのため、本発明の液体加熱装置1は、貯留部6に貯留されている熱媒体の温度ムラ等の影響を受けることなく、給湯用や落とし込み用に使用される湯水の供給温度を安定化することができる。
【0130】
液体加熱装置1は、熱媒体を貯留部6の上方側から取り出して上水用熱交換器30に供給する構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6の上方側に存在する熱媒体が所定温度に達していれば上水用熱交換器30に供給される湯水を所望の温度に加熱することができる。また、本実施形態の液体加熱装置1は、燃焼部3を作動させて貯留部6内の熱媒体を加熱すると、貯留部6内の熱媒体が対流を起こし、貯留部6の上方側に存在する熱媒体が下方側に存在する熱媒体よりも熱くなる傾向にある。従って、液体加熱装置1は、貯留部6内の熱媒体全体が所定の温度に到達するのを待つことなく、上水を所望の温度に加熱できる。すなわち、液体加熱装置1は、給湯運転が開始されてから、給湯用に供給される湯水が所望の温度に到達するまでに要する時間(立ち上がり時間)が短い。
【0131】
上記したように、液体加熱装置1は、上水用熱交換器30が、貯留部6に対して下方に配置されている。そのため、給湯運転の停止中に貯留部6内の熱媒体が加熱されても、貯留部6側から上水用熱交換器30への伝熱が起こりにくい。従って、液体加熱装置1は、給湯運転の停止中に上水用熱交換器30や、これに滞留している熱媒体や湯水が過剰に高温に加熱されることがなく、次の給湯運転の開始直後に高温の湯水が給湯用に供給される、いわゆる高温出湯が起こるのを防止できる。
【0132】
上記実施形態では、高温出湯等の不具合の発生を考慮して上水用熱交換器30を貯留部6の下方に配置する構成を例示したが、高温出湯等の不具合を考慮する必要がない場合は上水用熱交換器30を貯留部6と同等の高さ、あるいは、これよりも上方に配置した構成としてもよい。
【0133】
本実施形態では、上水用熱交換器30が貯留部6よりも下方に配置されているため、給湯運転や落とし込み運転の停止時に上水用熱交換器30に高温の熱媒体が供給されたり、上水用熱交換器30が伝熱により高温になるといったような事態が発生しにくい。そのため、上記したように、給湯運転や落とし込み運転の待機中に、上水系統Sに設けられた水量サーボ41の接続部41aを多少開いた状態としておいても、水量サーボ41には高温の湯水が流入せず、次回の給湯運転や落とし込み運転の開始直後に高温の湯水が出るといった不具合が起こりにくい。
【0134】
また、液体加熱装置1は、水量サーボ41の接続部41aを多少開いた状態として給湯運転や落とし込み運転の開始まで待機する構成である。そのため、液体加熱装置1は、工場出荷時等に燃焼試験や通水検査を行った後や、長期にわたって不使用とされる場合、部品交換等のメンテナンスを行う際に上水系統Sから水抜きを行う際に、手間や時間をかけずに水抜きを実施することができる。
【0135】
本実施形態の液体加熱装置1では、貯留部6や加熱手段7、上水用熱交換器30等に加えて上水系統S、暖房系統Dおよび風呂系統Fの構成部材や配管を収容した構成とされている。そのため、液体加熱装置1は、貯留部6と上水用熱交換器30との間における熱媒体の往来等に伴う放熱や、上水用熱交換器30における放熱に伴う熱エネルギーロスが少ない。
【0136】
液体加熱装置1は、上水用熱交換器30としてプレート型の熱交換器を採用しているため、上水用熱交換器30をさほど大きくしなくても所望の熱交換効率を得ることができる。よって、液体加熱装置1は、筐体C内において上水用熱交換器30の設置に要するスペースが小さく、全体の装置構成がコンパクトである。
【0137】
上記実施形態では、上水用熱交換器30として、いわゆるプレート型の熱交換器を採用した例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の種類の熱交換器を採用してもよい。
【0138】
上記したように液体加熱装置1は、上水一次側戻り流路21の中途に給湯ポンプ32を設け、これを作動させることにより上水用熱交換器30と貯留部6との間で熱媒体を循環させることができる構成となっている。そのため、液体加熱装置1は、給湯ポンプ32の動作を制御することにより、給湯用や落とし込み用に使用される上水の加熱状態を制御することができる。
【0139】
液体加熱装置1は、水量サーボ41を有し、これに上水用熱交換器30において加熱された湯水と、外部から供給された低温の湯水とを供給して混合した後、上水流路35を介して給湯栓47に湯水を供給可能な構成とされている。また、液体加熱装置1は、上水流路35の中途に水量調整弁43が設けられている。そのため、本実施形態の液体加熱装置1は、上水一次側往き流路20や上水一次側戻り流路21、上水二次側往き流路34等の中途で放熱等が起こるなどしても、給湯用あるいは落とし込み用として供給される上水の温度を精度良く調整することができる。
【0140】
また、液体加熱装置1は、水量サーボ41や水量調整弁43を設けた構成であるため、給湯運転中にリモコン91の操作により給湯の設定温度Stが急激に変更されたり、給湯栓47の操作により給湯流量が急激に変更されるなどして、湯水(上水)の供給条件が急激に変更された場合であっても安定的な出湯温度で給湯運転を実施することができる。
【0141】
上記実施形態では、水量サーボ41や水量調整弁43を設けることにより、上水の供給温度を安定化させる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、水量サーボ41や水量調整弁43のいずれか一方あるいは双方をもたない構成であってもよい。
【0142】
上記したように、液体加熱装置1は、上水用熱交換器30を貯留部6の外部に配すると共に、貯留部6内の熱媒体を負荷端末75に供給したり、貯留部6内に配された熱交換器17において熱交換加熱することにより浴槽60内の湯水を追い焚き可能な構成とされている。そのため、液体加熱装置1では、貯留部6内に熱媒体を介して貯留されている熱エネルギーを負荷端末75の使用や浴槽60内の湯水の追い焚きに有効利用することができる。
【0143】
また、本実施形態の液体加熱装置1は、給湯ポンプ32を作動させて貯留部6内の熱媒体を上水用熱交換器30に供給することにより、給湯や落とし込みに使用される湯水(上水)を熱交換加熱できる。また逆に、給湯ポンプ32を停止状態として上水用熱交換器30への貯留部6内の熱媒体の供給を停止することにより、外部から供給された湯水を上水用熱交換器30に素通りさせ、非加熱状態で供給することができる。そのため、液体加熱装置1は、給湯ポンプ32を停止状態にすれば、負荷運転や追い焚き運転と、加熱系Hの外部から供給された湯水を非加熱状態で供給する給水運転や足し水モードでの落とし込み運転とを並行して実施することができる。また、液体加熱装置1は、故障等の理由で給湯ポンプ32が作動できない状態においても、負荷運転や追い焚き運転と、給水運転や足し水モードでの落とし込み運転とを並行して実施することができる。
【0144】
上記したように、液体加熱装置1は、給湯ポンプ32を停止状態とすることにより、外部から供給された上水を非加熱状態で供給する(給水運転、足し水モードでの落とし込み運転)ことができる。そのため、液体加熱装置1は、例えば、いわゆる太陽熱温水器のような加熱装置によって加熱系Hの外部で予熱(加熱)された湯水を上水用熱交換器30に供給可能な構成とすれば、給湯ポンプ32を作動させない状態であったり、給湯ポンプ32が故障等で作動できない状態であっても加熱状態の湯水を給湯栓47や浴槽60に供給することができる。
【0145】
上記した液体加熱装置1は、浴槽60内の湯水を追い焚きするために使用する熱交換器17を貯留部6の内部に配した構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、熱交換器17を持たない構成であってもよい。かかる構成によれば、貯留部6をさらに小容量化したり、貯留部6の高さを低くすることができ、液体加熱装置1の小型化に資することができる。
【0146】
また、液体加熱装置1は、追焚き用の熱交換器17としてコイル式の熱交換器を採用し、これを貯留部6内に配置した構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば上水用熱交換器30と同様に貯留部6の外部に別途熱交換器を配し、これに貯留部6内の熱媒体を供給することによって浴槽60内の湯水を追い焚き可能な構成としてもよい。
【0147】
なお、貯留部6の外部に追い焚き用の熱交換器を配置する構成とした場合についても、負荷端末75に熱エネルギーを供給するために必要な量の熱媒体を貯留部6に貯留して加熱可能な構成とする必要がある。そのため、貯留部6の容量が負荷端末75に供給する熱媒体の加熱に対して必要最小限の大きさである場合は、追い焚き用の熱交換器を貯留部6の外部に設けることによる、液体加熱装置1の装置構成のコンパクト化に対する寄与が小さいものと想定される。従って、液体加熱装置1は、貯留部6の容量を負荷端末75に供給する熱媒体の加熱に対して必要最小限の大きさとしつつ、上記したように追い焚き用の熱交換器17を貯留部6の内部に収容した構成とすることにより装置構成をコンパクト化することができる。
【0148】
上記実施形態では、貯留部6の下方に加熱手段7を配し、貯留部6内に貯留されている熱媒体を貯留部6の下方側から加熱可能な構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば加熱手段7としていわゆる逆燃焼方式の燃焼形態をとるものを採用し、これを貯留部6の上方側に加熱手段7を配した構成としたり、加熱手段7を貯留部6の側方から貯留部6内の熱媒体を加熱可能な構成とすることも可能である。かかる構成とした場合についても、熱媒体が貯留部6内において対流を起こし、貯留部6の上方側に存在する熱媒体が下方側よりも高温になる可能性が高い。すなわち、加熱手段7を貯留部6の下方や上方、側方に配置することにより貯留部6が局所的に高温になると対流が起こり、熱媒体の温度分布が発生する可能性が高い。そのため、かかる構成の場合に、上記した液体加熱装置1と同様の構成を採用すれば、いわゆる出湯特性の改善や省エネルギーに資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の一実施形態にかかる液体加熱装置を示す作動原理図である。
【図2】図1に示す液体加熱装置の一部を破断した状態を示す正面図である。
【図3】図1に示す液体加熱装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0150】
1 液体加熱装置
2 本体部
6 貯留部(貯留手段)
7 加熱手段
17 熱交換器(液−液熱交換手段)
20 上水一次側往き流路(一次流路)
21 上水一次側戻り流路(一次流路)
30 上水用熱交換器(熱交換手段)
32 給湯ポンプ(圧送手段)
34 上水二次側往き流路(二次流路)
35 上水流路
41 水量サーボ(混合手段)
43 水量調整弁(流量調整手段)
84 水位センサ
90 制御手段
91 リモートコントローラ(リモコン)
C 筐体
S 上水系統
D 暖房系統
F 風呂系統
H 加熱系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留可能な貯留手段と、当該貯留手段の下方、上方あるいは側方から貯留手段内の液体を加熱可能な加熱手段と、前記貯留手段に対して下方に離間した位置に配された熱交換手段と、前記貯留手段内に貯留されている液体を前記熱交換手段に供給可能な一次流路と、上水が流れる二次流路とを備えた加熱系を有し、
前記一次流路を介して前記貯留手段と熱交換手段との間で液体を循環させることにより、前記二次流路を介して熱交換手段に供給される上水を熱交換加熱して前記加熱系の外部に供給する上水供給動作を実施可能なものであり、
前記貯留手段から熱交換手段への液体の供給を継続するポスト動作を、上水供給動作の停止のタイミングから所定の実施期間にわたって実施可能であることを特徴とする液体加熱装置。
【請求項2】
貯留手段の上方側に存在する液体が、下方側に存在する液体に対して優先的に熱交換手段に供給されることを特徴とする請求項1に記載の液体加熱装置。
【請求項3】
上水の流量を調整可能な流量調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体加熱装置。
【請求項4】
給湯流路の中途に、熱交換手段において加熱された上水と、加熱系の外部から供給された上水とを混合する混合手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項5】
熱交換手段において加熱され二次流路を流れる上水と、外部から供給された上水とを流入させて混合可能な混合手段が設けられており、
当該混合手段が、熱交換手段における上水の加熱の停止中に、熱交換手段側から上水が流入可能な状態とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項6】
貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給可能な熱負荷系統を有し、
一次流路が前記熱負荷系統に対して独立して設けられており、
貯留手段内の液体及び/又は貯留手段内の液体との熱交換により加熱された液体を介して熱エネルギーを外部の熱負荷に対して供給する熱エネルギー供給動作と、
貯留手段から熱交換手段への液体の供給を停止した状態において、二次流路を介して供給される上水を熱交換手段を通過させて前記加熱系の外部に供給する非加熱供給動作を実施可能なものであり、
熱エネルギー供給動作と非加熱供給動作とを同時に実施可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項7】
貯留手段の内部に、貯留手段内に貯留されている液体との熱交換により液体を加熱可能な液−液熱交換手段が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項8】
ポスト動作の実施期間を任意に調整可能な期間調整手段を備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項9】
加熱系の外部に設置された浴槽における水位変化を検知する水位変化検知手段を備えており、
浴槽の水位変化が検知された後、所定期間内に実施される上水供給動作に続いて実施されるポスト動作の実施期間の長さが、浴槽の水位変化の非検知時に実施される上水供給動作に続いて実施されるポスト動作の実施期間よりも長いことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項10】
浴室における人の有無を検知する人検知手段を備えており、
当該人検知手段により人が検知されている間、所定期間内に実施される上水供給動作に続いて実施されるポスト動作の実施期間の長さが、人の非検知時に実施される上水供給動作に続いて実施されるの実施期間よりも長いことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項11】
上水供給動作の停止のタイミングから、次の上水供給動作の開始のタイミングまでの待機期間の長さを検出し、当該検出結果に基づいて以後の上水供給動作の停止後に実施されるポスト動作の実施期間が調整されることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項12】
上水供給動作の実施期間が所定時間以内であることを条件として、ポスト動作が中止、あるいは、ポスト動作の実施期間が短縮されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項13】
上水供給動作の実施頻度を時間帯毎に検出する実施頻度検出動作を実施し、
当該実施頻度検出動作の結果に基づき、所定のタイミングで実施される上水供給動作に対応する時間帯における上水供給動作の実施頻度を推定し、当該推定結果に基づいて前記所定のタイミングで実施される上水供給動作の後に実施されるポスト動作の実施期間を設定することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項14】
加熱系の外部に供給する上水の設定温度が所定温度よりも低いことを条件としてポスト動作が中止される、あるいは、ポスト動作の実施期間が短縮されることを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項15】
加熱系の外部から熱交換手段に供給される上水の温度が、所定温度よりも高いことを条件としてポスト動作が中止される、あるいは、ポスト動作の実施期間が短縮されることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項16】
熱交換手段に存在する上水の温度、及び/又は、二次流路において熱交換手段よりも上水の流れ方向下流側に存在する上水の温度を直接的あるいは間接的に検知可能な温度検知手段を備えており、
上水供給動作の待機中に、上記温度検知手段の検知温度が所定温度以下になることを条件として、所定期間にわたって前記貯留手段と熱交換手段との間で液体を循環させることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の液体加熱装置。
【請求項17】
上水供給動作の待機中であって、上水供給動作の開始が想定されるタイミングに対して所定期間だけ遡ったタイミングから前記貯留手段と熱交換手段との間における液体の循環動作が開始されることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載の液体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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