説明

液体吐出ヘッド及びその液体流通方法

【課題】液体を円滑に流通させつつ液体流路内の気泡が吐出口側へ混入するのを抑制する。
【解決手段】流路の天井面118aに、フィルム143の上面に向かって突出する突出部126を設ける。突出部126は、主走査方向に関して、先端126xからインク吐出時の上流側の非突出領域A1までの距離(表面126aの幅)が、先端126xから下流側の非突出領域A2までの距離(表面126bの幅)より小さい。したがって、表面126aに気泡が滞留しやすい一方で、表面126bに沿ってインクが円滑に流れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出口へと液体を供給する流路が形成された液体吐出ヘッド及びその液体流通方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクなどの液体を吐出する液体吐出ヘッドにおいて、ヘッド内の液体に気泡等が混入することがある。特許文献1は、内部の液体に気泡が発生するヘッドに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−162259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体内の気泡が液体と共に自由に流れると、気泡が吐出口側へと移動して吐出不良を生じさせるおそれがある。そこで、気泡が液体と共に自由に流れるのを防止するため、特許文献1の構造を採用することが考えられる。特許文献1は、ヒータによって発生させた気泡を、流路の天井面から下方へと突出した気泡案内構造によって所定の位置に導くものである。これを応用して、流路内の突出構造により、一定の位置に気泡を滞留させることが考えられる。しかしながら、このような突出構造の存在が吐出口側への液体の流れを阻害する原因となりかねない。
【0005】
本発明の目的は、吐出口へと円滑に液体を流通させつつ気泡の吐出口側への移動を抑制できる液体吐出ヘッド及びその液体流通方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口からの液体の吐出方向に交差する方向に延びた部分流路を含み、前記吐出口から液体が吐出されるとき、当該部分流路の一端から他端を経て前記吐出口へと液体を供給する供給流路とを備えており、前記吐出方向に関して前記部分流路の一方側の内表面から他方側の内表面に向かって突出する突出領域と、前記一端側から前記突出領域に連続する領域であって前記部分流路の長さ方向に沿った第1の非突出領域と、前記他端側から前記突出領域に連続する領域であって前記長さ方向に沿った第2の非突出領域とが形成されており、前記吐出方向に関する前記突出領域の先端から前記第1の非突出領域までの前記長さ方向に関する第1の距離が、前記先端から前記第2の非突出領域までの前記長さ方向に関する第2の距離より小さい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、突出領域の先端から一端側の第1の非突出領域までの長さ方向に関する距離が、突出領域の先端から他端側の第2の非突出領域までの長さ方向に関する距離より短いので、突出領域において先端より他端側の部分が一端側の部分より平均的に緩やかな表面をなすこととなる。したがって、吐出口に液体を供給するため、部分流路の一端から他端に向かって液体を流す際、突出領域の他端側の部分が流れを阻害しにくい。その一方で、突出領域の一端側の部分に気泡を滞留させ、吐出口側に気泡が混入するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッドが適用されるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
【図2】図1のインクジェットヘッドの下部構造を構成する流路ユニットの平面図である。
【図3】インクジェットヘッドの斜め上方からの分解斜視図のうち、インクリザーバ及びリザーバユニットのみを示したものである。なお、インクリザーバからはフィルムが除去され、リザーバユニットの最上層のプレートが破線で示されている。
【図4】インクジェットヘッドの斜め下方からの分解斜視図のうち、インクリザーバ及びリザーバユニットのみを示したものである。なお、インクリザーバからはフィルムが除去され、リザーバユニットの最上層のプレートが破線で示されている。
【図5】図5(a)は、インクリザーバに関する図3のV−V線縦断面図である。図5(b)は、図5(a)の断面に沿ったリザーバユニットに関する縦断面図である。図5(c)は、流路ユニットの正面図である。なお、図5(a)において、断面に表れていない流路の一部のみが点線で示されている。
【図6】図6(a)は、図5(a)の突出部周辺の拡大図である。図6(b)は、図5(a)の底面図である。
【図7】インク供給機構の概略構成図である。
【図8】突出部に関する変形例に係るインクリザーバの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0010】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係るインクジェットヘッド100が適用されるインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0011】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。以下の説明上、筐体1aの内部空間を上から順に空間A,B,Cと区分する。空間A及びBは、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成された空間である。空間Aでは、用紙Pの搬送と用紙Pへの画像の記録が行われる。空間Bでは、給紙に係る動作が行われる。空間Cには、インク供給源としてのインクカートリッジ45が収容されている。
【0012】
空間Aには、4つのインクジェットヘッド100、用紙Pを搬送する搬送ユニット21、用紙Pをガイドするガイドユニット(後述)等が配置されている。空間Aの上方には、コントローラ1pが配置されている。コントローラ1pは、これらの機構を含めたプリンタ1各部の動作を制御して、プリンタ1全体の動作を司る。
【0013】
コントローラ1pは、外部から供給された画像データに基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期したインク吐出動作、吐出性能の回復維持動作(メンテナンス動作)等を制御する。
【0014】
コントローラ1pは、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加えて、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(例えば画像データ)が一時的に記憶される。ASICでは、画像データの書き換え、並び替え等(信号処理や画像処理)が行われる。I/Fは、上位装置とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。また、各種機能に特化するように構成された回路部品が設けられていてもよい。
【0015】
各ヘッド100は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するラインヘッドである。4つのヘッド100は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドフレーム3を介して筐体1aに支持されている。画像記録に際して、4つのヘッド100の下面(吐出面100a)からはそれぞれマゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクが吐出される。ヘッド100のより具体的な構成については後に詳述する。
【0016】
搬送ユニット21は、図1に示すように、ベルトローラ6,7及び両ローラ6,7間に巻回されたエンドレスの搬送ベルト8に加え、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置されたプラテン9等を有する。
【0017】
ベルトローラ7は、駆動ローラであって、搬送モータ19の駆動により回転し、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ7の回転に伴い、搬送ベルト8が図1中の太矢印方向に走行する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、搬送ベルト8が走行するのに伴って、図1中時計回りに回転する。ニップローラ4は、ベルトローラ6に対向配置され、上流側ガイド部(後述)から供給された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえつける。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを外周面8aから剥離して下流側ガイド部(後述)へと導く。プラテン9は、4つのヘッド100に対向配置され、搬送ベルト8のループ上部を内側から支える。これにより、外周面8aとヘッド100の吐出面100aとの間に、画像記録に適した所定の間隙が形成される。
【0018】
ガイドユニットは、搬送ユニット21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)から搬送ユニット21までの搬送路に沿っている。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送ユニット21から排紙部31までの搬送路に沿っている。
【0019】
空間Bには、給紙ユニット1bが配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ23及び給紙ローラ25を有し、給紙トレイ23が筐体1aに対して着脱可能である。給紙トレイ23は、上方に開口する箱であり、複数種類のサイズの用紙Pを収納する。給紙ローラ25は、給紙トレイ23内で最上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0020】
空間A及びBには、上述のように、給紙ユニット1bから搬送ユニット21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。コントローラ1pが記録指令に基づいて給紙ローラ25、送りローラ26、28、搬送モータ19等を駆動すると、給紙トレイ23から用紙Pが送り出される。この用紙Pは、送りローラ26によって、搬送ユニット21に供給される。用紙Pが各ヘッド100の真下を副走査方向に通過する際、各吐出面100aからインクが吐出されて、用紙P上にカラー画像が記録される。用紙Pは、その後剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送される。さらに用紙Pは、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0021】
なお、副走査方向とは、搬送ユニット21による用紙Pの搬送方向と平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0022】
また、空間A及びBには、インクカートリッジ45からのインクをヘッド100へと供給する後述のインク供給機構40が、ヘッド100ごとに設けられている。
【0023】
空間Cには、インクユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。インクユニット1cは、カートリッジトレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ45を有する。各カートリッジ45は、インクチューブを介して、対応するヘッド100にインクを供給する。
【0024】
次に、図2〜図6を参照し、ヘッド100の構成についてより詳細に説明する。ヘッド100は、いくつかの機能部材の集合体である。機能部材としては、インクの流出入に係わる流路部材、熱の放熱・均熱に係わる熱伝部材、駆動信号の伝達に係わる回路部材、さらに筐体1aに対する位置決め・取付に係わる支持部材等がある。このうち、流路部材は、上から順に、インクリザーバ110、リザーバユニット150及びヘッド本体101が積層された積層体である。インクリザーバ110及びリザーバユニット150は、下方のヘッド本体101へとインクを供給する。以下ではまず、ヘッド本体101について説明し、その後、インクリザーバ110及びリザーバユニット150について説明する。なお、インクリザーバ110が本発明における第1の流路体に、リザーバユニット150及びヘッド本体101の複合体が本発明における第2の流路体にそれぞれ対応している。
【0025】
ヘッド本体101(図2、図5(c)参照)は、ヘッド100において最も下部に配置されており、その下面(後述の流路ユニット104の下面)の吐出面100aには、インクを吐出する複数の吐出口109が開口している。吐出面100aは平坦な表面であり、搬送ベルト8の上面と平行に配置されている。
【0026】
ヘッド本体101は、流路ユニット104とその上面に貼り付けられた8つのアクチュエータユニット102とを有している。アクチュエータユニット102は、図2に示すように、流路ユニット104の上面に2列の千鳥状に配置されている。また、これらアクチュエータユニット102を避けるように、開口104x及び104yが形成されている。流路ユニット104の内部には、開口104x及び104yを一端とするマニホールド流路104aが形成されている。マニホールド流路104aは、複数の副マニホールド流路104bに分岐し、図5(c)に示すように、副マニホイールド流路104bの複数の出口には、それぞれ個別インク流路104cが接続されている。開口104x及び104yには、リザーバユニット150からインクが供給される。インクは、 マニホールド流路104a(副マニホールド流路104b)を介して、個別インク流路104cに分配され、各吐出口109へと至る。
【0027】
アクチュエータユニット102の上面には、FPC(フレキシブルプリント基板)が接続されており、このFPCを介してコントローラ1pからの駆動信号が送信される。アクチュエータユニット102は、かかる駆動信号に基づいて個別インク流路内のインクに圧力を付与し、吐出口から選択的にインクを吐出させる。
【0028】
インクリザーバ110は、流路部材の最上層に配置されている。インクリザーバ110は、図3〜図5(a)に示すように、主走査方向に長尺な略直方体形状を有し、合成樹脂の一体成型により構成されている。インクリザーバ110の上面には、上方に向かって突出した2つのインク導通部131及び132が形成されており、下面には、下方に向かって突出した3つのインク導通部133〜135が形成されている。インク導通部131及び132は、主走査方向に関して、一端付近に配置されており、略円筒形状を有している。インク導通部133及び135は、両端付近に配置され、インク導通部134は、中央部に配置されている。インク導通部133〜135は、略角柱形状を有している。
【0029】
インク導通部131〜135の内部には、上下方向に沿った導通流路131a〜135aがそれぞれ形成されている。これらの流路を通じて、インクリザーバ110内にインクが導入されたり、インクリザーバ110外へとインクが導出されたりする。インク導通部131〜135先端には、導通流路131a〜135aが開口している。これら5つの開口は、本発明における第1の供給口、第3の供給口、第1の流出口、第2の流出口及び第1の流出口にそれぞれ対応する。
【0030】
インクリザーバ110には、インク導通部131〜135同士を連通する連通流路が形成されている。これらの連通流路は、(a)インク導通部131の開口とインク導通部133の開口とを連通する連通流路A、(b)インク導通部131の開口とインク導通部135の開口とを連通する連通流路B、及び(c)インク導通部132の開口とインク導通部134の開口とを連通する連通流路Cを含んでいる。インクリザーバ110の上面では、連通流路Aの上面側部分流路が、連通流路Bに共有されている。連通流路Cは、主に上面側に配設されている。下面には、主に、連通流路A及び連通流路Bの下面側部分流路が配設されている。
【0031】
各流路A、B及びCは、インクリザーバ110を貫通する貫通部を除いて、表面に開口する溝と、開口を封止する合成樹脂製フィルム141〜143とで構成されている。図5に示すように、上面では、フィルム141が、連通流路Aの上面側部分流路及び連通流路Cを構成している。下面では、フィルム142が、連通流路Aの下面側部分流路を構成し、フィルム143が、連通流路Bの下面側部分流路を構成している。なお、本実施形態では、フィルム141は、上面のほぼ全面を被覆している。また、フィルム141〜143は、インク流路内のインクに生じた振動を吸収するダンパとしての機能も有している。
【0032】
連通流路Aは、主に、導通流路131a、部分流路112〜115及び導通流路133aから構成されている。部分流路112は、下面配設部と貫通部とから構成されている。下面配設部は、下面側に配設された断面が凹部状の流路であり、フィルム142により封止されている。図4に示すように、下面配設部は、一端が導通流路131aの下端と接続しており、主走査方向に対して斜めに延び、他端が貫通部の下端と接続している。貫通部は、副走査方向中央部に配置され、上端が部分流路113の一端と接続している。
【0033】
部分流路113は、インクリザーバ110の上半分に形成された凹部状の流路であり、フィルム141により封止されている(図3、図5(a))。部分流路113は、部分流路112と接続した上記一端から、主走査方向に沿って、インクリザーバ110のほぼ中央部の他端まで延びている。部分流路113は、一端から拡幅し、幅広のまま先細りの他端に至る。当該他端付近からは、分岐流路113a及び113bに接続している。分岐流路113aは、下方に延びた貫通部であって、下面側で、部分流路114の一端と接続している。分岐流路113bは、主走査方向に沿って延び、後述の部分流路117の上端と接続している。なお、連通流路Aにおいて、インク導通部131の開口から部分流路114までを結ぶ流路、つまり、導通流路131a、部分流路112及び部分流路113からなる流路は、連通流路Bに共有される上面側部分流路であって、本発明における第1の流路に対応する。
【0034】
部分流路114は、インクリザーバ110の下半分に形成された凹部状の流路であり、フィルム142により封止されている(図4、図5(a))。部分流路114は、薄肉状の隔壁110aを介して背中合わせに部分流路113と対向している。隔壁110aの突出部125については、後述する。部分流路114は、部分流路113側の端部114x、その反対側の端部114z及びこれらの中間部分である中間部114yから構成されている(図4)。端部114xは、その一端から副走査方向に関して幅を広げながら主走査方向に沿って延び、中間部114yへと接続している。中間部114yは、ほぼインクリザーバ110の幅いっぱいで主走査方向に沿って延び、端部114zへと接続している。端部114zは、中間部114yとの接続位置から幅を狭めながら主走査方向に沿って延び、先細りの先端付近で部分流路115と接続している。
【0035】
部分流路115は、上面配設部と貫通部とから構成されている。貫通部は、部分流路114の先端から上方に向かって延び、インクリザーバ110の上面に開口している(図3、図5(a))。上面配設部は、そこから導通流路133aに向かって延び、導通流路133aの上端と接続している。上面配設部は、フィルム141により封止された断面凹形状の流路である。なお、連通流路Aにおいて部分流路113からインク導通部133の開口までを結ぶ流路、つまり、分岐流路113a、部分流路114、部分流路115及び導通流路133aからなる流路は、本発明における一方の第2の流路に対応する。
【0036】
連通流路Bは、導通流路131a、部分流路112、113、117〜119及び導通流路135aから構成されている。連通流路Bは、導通流路131aから部分流路113を連通流路Aと共有する。部分流路113に接続した分岐流路113bは、部分流路117の上端と接続している(図5(a))。部分流路117は、そこから下方に向かって部分流路118の一端と接続している。
【0037】
部分流路118は、インクリザーバ110の下半分に形成された凹部状の流路であり、フィルム143により封止されている(図4、図5(a))。部分流路118の天井面の突出部126については、後述する。部分流路118は、部分流路117側の端部118x、その反対側の端部118z及びこれらの中間部分である中間部118yから構成されている(図4)。部分流路118は、平面視で、インク導通部134に関して、部分流路114とほぼ対称な形態を有している。端部118xでの拡幅形態、中間部118yでの延在形態、及び端部118zでの先細り形態は、部分流路114での態様とほぼ同じである。
【0038】
部分流路119は、上面配設部と貫通部とから構成されている。貫通部は、部分流路118の先端から上方に向かって延び、上面配設部の一端と接続している。上面配設部は、断面が凹部状の流路であり、フィルム141により封止されている。上面配設部は、ほぼ主走査方向に沿って延び、導通流路135aの上端と接続している。なお、連通流路Bにおいて部分流路113からインク導通部135の開口までを結ぶ流路、つまり、分岐流路113b、部分流路117〜119及び導通流路135aからなる流路は、本発明における他方の第2の流路に対応する。
【0039】
連通流路Cは、導通流路132a、部分流路122、123及び導通流路134aから構成されている。下面配設部と貫通部とから構成されている。下面配設部は、断面が凹部状の流路であり、フィルム142により封止されている。図4に示すように、下面配設部は、一端が導通流路132aの下端と接続しており、副走査方向端縁近傍をほぼ主走査方向に沿って延び、他端が貫通部の下端と接続している。貫通部は、上端が部分流路123の一端と接続している。部分流路123は、インクリザーバ110の上面に開口した凹部状の流路であり(図3)、フィルム141により封止されている。部分流路123は、上面において、副走査方向端縁近傍を主走査方向中央部の他端に向かって、細長く延びている。部分流路123は、副走査方向内側で、部分流路113の外縁(隔壁)を共有する。部分流路123の他端は、インクリザーバ110の中央部において、導通流路134aの上端と接続している(図5(a))。なお、インク導通部132の開口からインク導通部134の開口までを結ぶ流路、つまり、導通流路132a、部分流路122及び123、並びに導通流路133aからなる流路は、本発明における第4の流路に対応する。
【0040】
以上のように、部分流路113、114及び118は、他の流路部分に比べて、平面視で広い流路面積を有している。各流路113、114及び118を構成するフィルム141〜143の部分は、流路内のインクの振動吸収に大きく寄与し、部分流路113、114及び118は、インクを一時的貯留する貯留部でもあるが、ダンパ室としても機能する。
【0041】
部分流路114及び118内に形成された突出部125及び126について、図5(a)、図6(a)及び図6(b)を参照しつつ説明する。なお、部分流路114に形成された突出部125の構成は、部分流路118内に形成された突出部126とほぼ同様の構成であるため、以下では、主に突出部126について説明する。
【0042】
突出部126は、部分流路118の天井面118aからフィルム143の上面に向かって突出している。図中上方が、本発明におけるインクの吐出方向(下方向)に関する一方側に対応し、図中下方が他方側に対応する。つまり、部分流路118の一方側の内表面が天井面118aに対応し、他方側の内表面がフィルム143の上面に対応する。天井面118a及びフィルム143の上面は、それぞれ平坦且つ互いに平行である。部分流路118の延び方向である主走査方向が、本発明における長さ方向に対応している。
【0043】
突出部126は、主走査方向に関して離隔して等間隔に配列されている。各突出部126は、突出部が形成されていない非突出領域A1(第1の非突出領域)と非突出領域A2(第2の非突出領域)とに挟まれている。ここで、非突出領域A1は、画像形成時のインクの流れ(後述)に関して上流側から突出部126に接続し、非突出領域A2は、下流側から突出部126に接続している。なお、図6(a)においては、左から2番目の突出部126に対する非突出領域A1及びA2のみを表示している。また、突出部126は、副走査方向に関してわずかに離隔して等間隔に配列されている。突出部126同士の間は、スリット状の空間127である。この空間127は、突出部126と非突出領域A1との境界B1から、突出部126と非突出領域A2との境界B2まで、主走査方向に沿って延びている。また、空間127の天井面は、天井面118aの延長面上にある。
【0044】
各突出部126は、その先端126xから非突出領域A1との境界まで延びる表面126aと、先端126xから非突出領域A2との境界まで延びる表面126bとを有している。表面126aは、主走査方向に直交する平らな面であり、主走査方向から見て矩形の形状である。表面126bは、副走査方向に平行であり、天井面118aとの間に鋭角αを有する平らな面である。鋭角αは、表面126bに沿ってインクが円滑に流れるよう、45°以下の所定の大きさに設定されている。このとき、主走査方向に関して、先端126xから境界B1までの距離(つまり、主走査方向に関する表面126aの幅;第1の距離)が、先端126xから境界B2までの距離(つまり、主走査方向に関する表面126bの幅;第2の距離)より小さく構成されている。表面126bは、主走査方向に対して、表面126aと比べて緩やかに傾斜している。
【0045】
一方、部分流路114に形成された突出部125は、ほぼ突出部126と同様の構成を有しているが、図5(a)に示すように、主走査方向に関する向きが反対である。部分流路114と部分流路118とでは、インクが互いに反対の方向に流れる。これにより、突出部125において主走査方向に直交する表面は、突出部126と同様に、画像形成時のインクの流れにおいて上流側に配置されている。
【0046】
リザーバユニット150は、図3及び図5(b)に示すように、金属製のプレート151〜155が上下に積層された積層体である。プレート151〜153は、主走査方向に長尺な互いに同じ大きさの矩形の平面形状を有している。プレート154及び155は、プレート151〜153よりもかなり小さく、図4に示すようにプレート154の周縁付近に配置されている。
【0047】
最上層のプレート151には、主走査方向に関して、中央部に1つの連通流路151aが、両端部に1つずつの連通流路151bが形成されている。いずれも、図5(b)に示すように、プレート151を貫通している。連通流路(第5の流路)151aは、インクリザーバ110側の導通流路134aと連通している。2つの連通流路151bは、一方が導通流路133aと連通し、他方が導通流路135aと連通している。なお、連通流路151aの上端の開口は、本発明における第4の供給口に対応し、連通流路151bの上端の開口は、本発明における第2の供給口に対応する。
【0048】
上から2番目のプレート152には、図3及び図5(b)に示すように、主走査方向にほぼ両端間に亘って、インク流路(リザーバ)152aが形成されている。インク流路152aは、ほぼ全体がプレート151を貫通している。インク流路152aは、主走査方向に中央部及び両端部を除いて、副走査方向にほぼ一定の幅を有している。両端部は、それぞれ端部に向かって先細りの形状を有しており、その先端においてプレート151の連通流路151bと接続している。中央部は、その両側の部分に比べて若干幅が狭いくびれ部である。プレート152の剛性低下を抑制する観点から、くびれ部では、図3に示すように、薄肉部152aがインク流路152aの副走査方向両端縁を結んでいる。薄肉部152aは、プレート152のハーフエッチングで形成され、副走査方向に関して若干斜めに延びている。連通流路151aの開口は、薄肉部152aの副走査方向中央付近に対向している。なお、図3では、プレート152はプレート151に隠れて見えないところ、説明の都合上から、プレート151を点線で外形を示すのみとしてある。
【0049】
インク流路152aの副走査方向に両端縁には、図3に示すように、8つの分岐流路152bが設けられている。このうち4つが一方の端縁に、残りが他方の端縁に、主走査方向に沿って千鳥状に配置されている。分岐流路152bは、プレート152を貫通しており、インク流路152aの端縁から副走査方向の外側に配置されている。各分岐流路152bは、図3に示すように、島状部152fを挟んでインク流路152aと連通されている。主走査方向に関して、島状部152fの一端側では、連通部152cが両者を連通し、島状部152fの他端側では、連通部152dが両者を連通している。ここで、連通部152cは、インク流路152aと同様に、プレート152を貫通している。一方、連通部152dは、薄肉部を残した凹部であって、プレート152をハーフエッチングして形成されている。また、この薄肉部により、島状部152fがプレート152の本体部分と繋がれている。
【0050】
いずれの分岐流路152bにおいても、連通部152dがインク流路152aの中央部(薄肉部152e)に近い側に配置され、連通部152cがその反対側に配置されている。後述の画像形成時には、連通部152cが連通部152dの上流側に位置することになり、より滑らかにインクが分岐流路152bに供給される。
【0051】
上から3番目のプレート153には、図3及び図5(b)に示すように、分岐流路152bと対向する各位置に、貫通孔153aが形成されている。また、連通流路151bと対向する各位置に、貫通孔153bが形成されている。貫通孔153aは分岐流路152bと接続し、貫通孔153bはインク流路152aの端部と接続している。
【0052】
最も下層のプレート154及び155には、図3及び図5(b)に示すように、貫通孔154a及び155aがそれぞれ形成されている。貫通孔154aは、上端が貫通孔153aと接続し、下端が流路ユニット104の開口104xと接続している。貫通孔155aは、上端が貫通孔153bと接続し、下端が流路ユニット104の開口104yと接続している。ここで、貫通孔153a及び貫通孔154aからなる流路は、分岐流路152bに接続した落とし込み流路であって、上方のリザーバ(インク流路152a)から下方の流路ユニット104にインクを落とし込む。貫通孔153b及び貫通孔155aからなる流路は、インク流路152aの端部に接続した落とし込み流路である。
【0053】
なお、連通流路151bからインク流路152a(、分岐流路152b)、貫通孔153a及び154a(あるいは貫通孔153b及び155a)、マニホールド流路104a、副マニホールド流路104b及び個別インク流路104cを経て吐出口109に至る流路は、本発明における第3の流路に対応する。
【0054】
以下、インク供給機構40の構成について図7を参照しつつ説明する。インク供給機構40は、サブタンク41を有している。サブタンク41内で分離された空気は、排出口(不図示)を通じて外部へと排出される。サブタンク41は、インクチューブt1及びt2を介してヘッド100と接続されていると共に、インクチューブt3を介してインクカートリッジ45と接続されている。インクチューブt1は、インク導通部131と接続され、インクチューブt2は、インク導通部132と接続されている。インクチューブt1〜t3には、開閉弁42〜44が設けられている。開閉弁42〜44は、インクチューブt1〜t3内をインクが流通できるようにする開放状態と、インクが流通できないようにする閉鎖状態とを選択的に取る。サブタンク41には、ポンプ41aが設けられている。ポンプ41aは、インクチューブt2を介してヘッド100へとインクを強制的に送り込む。
【0055】
以下、コントローラ1pによってインクカートリッジ45、インク供給機構40及びヘッド100間でインクを流通させる制御である各種のインク流通制御とそれに伴うインクの流通態様について説明する。本実施形態のインク流通制御は、インク吐出に伴うインク吐出制御と、気泡が混入したヘッド100内のインクを回収するためのインク循環制御とを含む。例えば、インク吐出制御は画像形成時の制御であり、インク循環制御はメンテナンス時の制御である。
【0056】
インク吐出制御の際、コントローラ1pは、開閉弁42及び44を開放状態にすると共に、開閉弁43を閉鎖状態とし、ポンプ41aを停止する。そして、ヘッド100のアクチュエータユニット102を駆動し、吐出口109からインクを吐出させる。これによって消費されたインクは、インクカートリッジ45からインク供給機構40を介して、ヘッド100へと自然に補充される。
【0057】
このとき、インク導通部131の開口を介してヘッド100内へと流入したインクは、以下のとおりに流通する。インクリザーバ110に流れ込んだインクは、図3〜図5(a)に示す白抜き矢印に沿って、連通流路Aの経路:導通流路131a→部分流路112→部分流路113→分岐流路113a→部分流路114→導通流路133a、及び、連通流路Bの経路:導通流路131a→部分流路112→部分流路113→分岐流路113b→部分流路117→部分流路118→部分流路119→導通流路135aを経て、リザーバユニット150へと流出する。
【0058】
このように、インク吐出時のインクの流れは、部分流路113において分岐流路113aに分岐し、部分流路114に向かう経路と、分岐流路113bに分岐し、部分流路118に向かう経路とに分かれる。前者の分岐経路が本発明における分岐流路の一方に対応し、後者の分岐経路が分岐流路の他方に対応する。また、インク吐出時には、部分流路114内では図5(a)中、右から左に向かってインクが流れ、部分流路118内では図5(a)、図6(a)及び図6(b)中、左から右に向かってインクが流れる。
【0059】
リザーバユニット150では、図3、図4及び図5(b)の白抜き矢印に沿って、連通流路151b→インク流路152a→分岐流路152b→貫通孔153a及び154aの経路、並びに、連通流路151b→インク流路152a→貫通孔153b及び155aの経路を経て、流路ユニット104へと流出する。流路ユニット104では、マニホールド流路104a、副マニホールド流路104b及び個別インク流路104cを経て、吐出口109へとインクが分配される。以上のようにインクを流通させつつ吐出口109からインクを吐出させることが、本発明における液体吐出ステップに対応する。また、部分流路114又は118を含み、ヘッド100に流入したインクを吐出口109まで供給する上記の経路に沿った流路全体は、本発明における供給流路に対応する。
【0060】
インク循環制御の際、コントローラ1pは、開閉弁42及び43を開放状態にすると共に、開閉弁44を閉鎖状態とする。そして、ポンプ41aを駆動し、インクチューブt2を介して、サブタンク41内のインクをインク導通部132からヘッド100内へと流入させる。
【0061】
このとき、ヘッド100では、インクは以下のとおりに流通する。インクリザーバ110に流れ込んだインクは、図3〜図5(a)に示す黒塗り矢印に沿って、連通流路Cの経路:導通流路132a→部分流路122→部分流路123→導通流路134aを経て、リザーバユニット150へと流出する。リザーバユニット150では、図5(b)の黒塗り矢印に沿って、連通流路151a→インク流路152a→連通流路151bを経て、再びインクリザーバ110へと戻る。
【0062】
インクリザーバ110に戻ったインクは、図3〜図5(a)に示す黒塗り矢印に沿って、連通流路Aの逆経路:導通流路133a→部分流路114→部分流路113→部分流路112→導通流路131a、及び、連通流路Bの逆経路:導通流路135a→部分流路119→部分流路118→部分流路117→部分流路113→部分流路112→導通流路131aを経て、インク導通部131を通じてヘッド100外へと排出される。つまり、インク循環時には、部分流路114及び118内ではそれぞれ、インク吐出時とは逆方向にインクが流れる。
【0063】
ヘッド100外に排出されたインクは、インクチューブt1を介してサブタンク41へと回収され、サブタンク41内で空気と分離される。以上のようにインク供給機構40とヘッド100との間で循環するようにインクを流通させることが、本発明における液体供給排出ステップに対応する。
【0064】
以上説明した本実施形態によると、インク吐出時には、部分流路118において、天井面118aに形成された各突出部126を横切るようにインクが流れる。このとき、インクは、表面126aと向かい合いつつ流れる(図6(a)及び図6(b))。表面126aは、インクの流れ方向(主走査方向)に直交しており、天井面118aから垂直に切り立っている。しかし、インク吐出時のインクは、ゆっくりした流れを作る。このため、インクに気泡が混入している場合、表面126aに気泡が引っかかって滞留しやすい(図6(b))。したがって、気泡が吐出口109側へと流下しにくい。また、ゆるやかなインクの流れは、突出部126を障壁とせずに、円滑に流れることができる。
【0065】
また、本実施形態の突出部126にはスリット状の空間127が形成されている。このため、表面126aに気泡を滞留させつつ、スリットに沿ってインクがより円滑に流れる。
【0066】
一方、インク循環時には、インク吐出時とは逆方向にインクが流れる。このときには表面126bが上流側となり、表面126bに沿ってインクが円滑に流れる。この流れに乗って、表面126aに滞留した気泡が押し流され、インク導通部132を介してヘッド100外へと排出される。このとき、空間127内を流れたインクにより、図6(b)のように空間127の端部に滞留した気泡も適切に押し流される。なお、突出部125も、突出部126と同様の構成を有しているため、以上のような突出部126による効果と同様の効果を奏する。
【0067】
また、本実施形態では、フィルム141及び143によって内表面が画定された部分流路114及び118に突出部125及び126が設けられている。フィルム141及び143は、素材によっては空気を通しやすい場合があるため、内部のインクに気泡が発生しやすい場合がある。したがって、このような箇所に突出部125及び126を設置することにより、気泡を滞留させる機能が有効に発揮される。
【0068】
以下、本実施形態の変形例について、図8(a)〜図8(e)を参照しつつ説明する。第1の変形例は、図8(a)に示すように、上述の実施形態に加え、フィルム143の上面に突出部128を設けたものである。突出部128は、主走査方向に関して突出部126の先端126x間に配置されている。インク吐出時のインクの流れに関して上流側の表面128aは、主走査方向に対して緩やかに傾斜している。下流側の表面128b(案内面)は、主走査方向に直交しており、先端126xよりやや上流側に配置されている。これにより、インク吐出時には、表面128aに沿ってインクが円滑に流れる。また、インク循環時には、上流側からのインクの流れを表面128bが上方に向かって案内する。これによって、表面126aに滞留した気泡を適切に押し流すことができる。
【0069】
第2の変形例は、図8(b)に示すように、突出部126の代わりに突出部226を設けたものである。突出部226は、インク吐出時の上流側の表面226aが主走査方向に直交しておらず、若干傾斜している。下流側の表面226bは表面226aに比べて主走査方向に対して緩やかに傾斜している。つまり、突出部226においても、主走査方向に関して、先端226xから非突出領域A1までの距離d1(主走査方向に関する表面226aの幅)が、先端から非突出領域A1までの距離d2(主走査方向に関する表面226bの幅)より小さい。これにより、突出部126と同様に、インク吐出時に表面226aに気泡が滞留しやすく、表面226bに沿ってインクが円滑に流れやすい。なお、点線で示された表面226a’のように、表面226aとは逆方向に傾斜した表面が突出部に設けられていてもよい。
【0070】
第3の変形例に係る突出部326は、図8(c)に示すように、インク吐出時の下流側の表面326bが、下方に向かって緩やかに凸形状となった曲面で構成されている。また、第4の変形例に係る突出部426は、図8(d)に示すように、インク吐出時の下流側の表面426bが、上方に向かって緩やかに凸形状となった曲面で構成されている。なお、上流側の表面が曲面で構成されていてもよい。第5の変形例は、図8(e)に示すように、互いに形状の異なる突出部526〜528が設けられたものである。また、突出部間に配置された天井面518a〜518dも、互いに高さが異なっている。
【0071】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0072】
例えば、上述の実施形態では、インクリザーバ110の下半分に形成された部分流路114及び118に突出部125及び126が設けられている。しかし、インクリザーバ110の上半分に形成された部分流路113に設けられていてもよい。この場合は、フィルム141に突出部が設けられることとなる。
【0073】
本実施の形態では、複数の突出部125及び126が、主走査方向に関して、間隔を介して配列していたが、1つの突出部125及び126が配置されていても良い。
【0074】
また、突出部125及び126を画定する壁面として、画像形成時の上流側壁面が主走査方向に垂直な面であり、下流側が傾斜面であるとしたが、上流側の非突出領域と下流側の非突出領域とが段違いに形成されており、突出部が非突出領域に平行な平行面とこの平行面と各非突出領域とを結ぶ接続面とで画定されていても良い。接続面は、主走査方向に対して、垂直でも傾斜していても良い。このとき、画像形成時の上流側には、気泡にとってより移動しにくい障壁となる接続面が位置するように構成されればよい。具体的には、平行面からより遠くの非突出領域を結ぶ接続面が、画像形成時のインクの流れの上流側に位置することになる。なお、この形態における突出部の先端は、平行面において画像形成時の上流側端縁と接続面とが作る角部である。
【0075】
本発明に係る液体吐出ヘッドは、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等の液体吐出装置に適用可能である。また、液体吐出装置に適用される液体吐出ヘッドの数は4に限定されず、1以上であればよい。液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式でもよい。さらに、本発明に係る液体吐出ヘッドは、インク以外の液体を吐出してもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 インクジェット式プリンタ(プリンタ)
40 インク供給機構
100 インクジェットヘッド(ヘッド)
110 インクリザーバ
118a 天井面
126x 先端
128a 表面(案内面)
127 (スリット状の)空間
128 突出部
150 リザーバユニット
114,118 部分流路
125,126,128 突出部
126a,126b 表面
131-135 インク導通部
141-144 フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と、
前記吐出口からの液体の吐出方向に交差する方向に延びた部分流路を含み、前記吐出口から液体が吐出されるとき、当該部分流路の一端から他端を経て前記吐出口へと液体を供給する供給流路とを備えており、
前記吐出方向に関して前記部分流路の一方側の内表面から他方側の内表面に向かって突出する突出領域と、前記一端側から前記突出領域に連続する領域であって前記部分流路の長さ方向に沿った第1の非突出領域と、前記他端側から前記突出領域に連続する領域であって前記長さ方向に沿った第2の非突出領域とが形成されており、
前記吐出方向に関する前記突出領域の先端から前記第1の非突出領域までの前記長さ方向に関する第1の距離が、前記先端から前記第2の非突出領域までの前記長さ方向に関する第2の距離より小さいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
複数の前記突出領域が前記長さ方向に沿って配列されており、
前記突出領域のそれぞれに関して、前記第1の距離が前記第2の距離より小さいことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記突出領域における前記先端から前記第2の非突出領域との境界までの領域が、前記長さ方向に対して傾斜した平面状の表面を有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記突出領域における前記先端から前記第1の非突出領域との境界までの領域が、前記長さ方向にほぼ直交する平面状の表面を有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記突出領域において前記第1の非突出領域との境界から前記第2の非突出領域との境界までの領域に亘って、前記長さ方向に沿ったスリットが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記他方側の内表面には、前記他端から前記一端に向かう流れを前記一方側に向かって案内する案内面を含む、前記突出領域とは別の突出領域が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
液体が供給される第1の供給口と、液体が流出する第1の流出口と、前記部分流路と、前記第1の供給口から前記部分流路の前記一端まで延びた第1の流路と、前記第1の流出口から前記部分流路の前記他端まで延びた第2の流路とを有する第1の流路体と、
前記第1の流出口と連通した第2の供給口と、前記吐出口と、前記第2の供給口から前記吐出口までを結ぶ第3の流路とを有する第2の流路体とをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記部分流路、前記第1の流出口及びこれらを結ぶ前記第2の流路が2組設けられており、
前記長さ方向に関して、前記第1の流出口の一方が前記第1の流路体の一端付近に配置され、他方が他端付近に配置されており、
前記長さ方向に関して、前記部分流路の一方が前記第1の流路体の中央部から前記第1の流出口の一方に向かって延び、他方が前記中央部から前記第1の流出口の他方に向かって延びており、
前記第1の流路が、前記中央部において2つに分岐しており、当該分岐流路の一方が前記部分流路の一方と接続し、当該分岐流路の他方が前記部分流路の他方と接続していることを特徴とする請求項7に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記吐出方向に関して、前記第1の流路体の前記一方側に前記第1の流路が、前記他方側に前記部分流路が、互いに対向して配置されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1の流路体が、
液体が供給される第3の供給口と、
液体が流出する第2の流出口と、
前記第3の供給口と前記第2の流出口とを結ぶ第4の流路とをさらに有しており、
前記第2の流路体が、
前記第2の流出口と連通した第4の供給口と、
前記第4の供給口から前記第3の流路の途中部とを結ぶ第5の流路とをさらに有していることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
前記他方側の内表面の一部を画定するフィルムが前記第1の流路体に設けられており、
前記突出領域が前記フィルムに向かって突出していることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項12】
請求項10に記載の液体吐出ヘッドにおいて、前記一方側が前記他方側に対して上方になる状態で液体を流通させる液体流通方法であって、
前記第1の供給口を介して前記液体吐出ヘッドへと液体を流入させると共に、前記第1の流路、前記部分流路、前記第2の流路、前記第1の流出口、前記第2の供給口及び前記第3の流路を経て、前記吐出口から液体を吐出させる液体吐出ステップと、
前記第3の供給口を介して前記液体吐出ヘッドへと液体を流入させると共に、前記第4の流路、前記第2の流出口、前記第4の供給口、前記第5の流路、前記第3の流路、前記第2の供給口、前記第1の流出口、前記第2の流路、前記部分流路及び前記第1の流路を経て、前記第1の供給口を介して前記液体吐出ヘッドから液体を排出させる液体供給排出ステップとを選択的に実行することを特徴とする液体流通方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−28133(P2013−28133A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167037(P2011−167037)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】