説明

液体吐出ヘッド及び画像形成装置

【課題】配線部材や圧電部材の大型化や部材コストアップを生じる。
【解決手段】FPC15は、2つの圧電部材12、12に対応して開口部15C,15Cが形成されて、2つの圧電部材12、12に跨って2つの圧電部材12、12の外面側で屈曲されて設けられ、FPC15には、個別電極配線32A及び第1共通電極配線32Bが設けられて、2つの圧電部材12、12の外面側の個別外部電極23及び第2共通外部電極25にそれぞれ接続され、FPC15には、2つの圧電部材12、12の間にノズル配列方向に沿って第1共通電極配線32Bに通じる第2共通電極配線32Cが設けられて、第2共通電極配線32Cは2つの圧電部材12、12の内面側の第1共通外部電極24に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する液体吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)からなる記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置、例えばインクジェット記録装置が知られている。
【0003】
液体吐出ヘッドとしては、例えば液室内の液体であるインクを加圧し圧力を発生するための圧力発生手段としての圧電体、特に圧電層と内部電極を交互に積層した積層型圧電部材に溝加工を施して複数の柱状の圧電素子(圧電柱)を形成した圧電アクチュエータを備え、積層型圧電部材のd33またはd31方向の変位で液室に壁面を形成する弾性変形可能な振動板を変形させ、液室内容積、圧力を変化させて液滴を吐出させるいわゆる圧電型ヘッドが知られている。
【0004】
このような圧電型ヘッドとして、複数の圧電素子柱が形成された圧電部材と、圧電部材に形成された少なくとも駆動信号が印加される2以上の圧電素子柱に共通する共通外部電極と、共通外部電極が形成された面と並列に配設された金属部材とを有し、金属部材と共通外部電極面が溶融型導電材料により直接電気的に接合されているものが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、圧電層と内部電極が交互に積層された複数の圧電素子柱を有する圧電部材と、圧電部材の圧電素子柱に給電する配線部材と、を備え、圧電部材は、内部電極を引き出した互いに対向する面の一方に設けられた第1共通外部電極と、他方の面に設けられた個別外部電極とを有し、かつ、個別外部電極が形成された面側に第1共通外部電極と接続された第2共通外部電極を有し、配線部材は、圧電部材の個別外部電極が形成された面側に接続されて、個別外部電極と第2共通外部電極に給電を行い、圧電部材へ接続される先端部に、複数の圧電素子柱に形成された複数の第2共通外部電極にまたがって接続される共通電極配線と、共通電極配線よりも先端方向から後退して配置され、個別外部電極に接続される個別電極配線とを有しているものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−086896号公報
【特許文献2】特開2011−056730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている構成にあっては、金属部材を追加する必要があるためにコストが高くなる。また、金属部材の熱容量が大きいため、圧電部材の共通電極と金属部材を接合するときの熱エネルギーを大きくする必要があり、接合不良や圧電部材の消極が生じるおそれがある。
【0008】
特許文献2に開示されている構成にあっては、配線部材の共通配線を個別電極部より圧電部材の駆動面側に設けているため、駆動IC等を搭載した配線部材では、個別電極より圧電部材の駆動面側にICの動作検査のための電極を設け、検査後に個別電極と動作検査電極の間で切断し、圧電素子との接合電極部を配線基板の端子部とする構成とするためには、多層配線とする必要がある。また、個別電極を動作検査電極として使用するためには、個別電極に損傷を与えないようにソフトタッチできる検査プローブを使用する等、検査コストが高くなる。
【0009】
本願発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、部材コストや検査コストの増加を生じることなく、圧電部材と配線部材との接合不良や両部材の損傷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出するノズルが連通する複数の個別液室に対応して配列された複数の圧電柱と、前記個別液室に対応しない少なくとも1つの共通電極取出し用圧電柱とがノズル配列方向に沿って設けられた2つの圧電部材と、
前記2つの圧電部材の複数の圧電柱に駆動信号を与える1つの可撓性を有する配線部材と、を有し、
前記2つの圧電部材は、ノズル配列方向と直交する方向に所定の間隔で配置され、
前記2つの圧電部材には、ノズル配列方向と直交する方向で対向する内面側に、前記複数の圧電柱に共通の第1共通外部電極が設けられ、前記内面側と反対側の外面側に、前記複数の圧電柱毎の個別外部電極が設けられるとともに、前記共通電極取出し用圧電柱に前記内面側の第1共通外部電極に通じる第2共通外部電極が設けられ、
前記配線部材は、前記2つの圧電部材に対応して開口部が形成されて、前記2つの圧電部材に跨って前記2つの圧電部材の外面側で屈曲されて設けられ、
前記配線部材には、個別電極配線及び第1共通電極配線が設けられて、前記2つの圧電部材の外面側の個別外部電極及び第2共通外部電極にそれぞれ接続され、
前記配線部材には、前記2つの圧電部材の間にノズル配列方向に沿って前記第1共通電極配線に通じる第2共通電極配線が設けられて、前記第2共通電極配線は前記2つの圧電部材の前記内面側の第1共通外部電極に接続されている
構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、配線部材は、2つの圧電部材に対応して開口部が形成されて、2つの圧電部材に跨って2つの圧電部材の外面側で屈曲されて設けられ、配線部材には、個別電極配線及び第1共通電極配線が設けられて、2つの圧電部材の外面側の個別外部電極及び第2共通外部電極にそれぞれ接続され、配線部材には、2つの圧電部材の間にノズル配列方向に沿って第1共通電極配線に通じる第2共通電極配線が設けられて、第2共通電極配線は2つの圧電部材の内面側の第1共通外部電極に接続されている構成としたので、部材コストや検査コストの増加を生じることなく、圧電部材と配線部材との接合不良や両部材の損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの一例を示す分解斜視図である。
【図2】同ヘッドの液室長手方向に沿う断面説明図である。
【図3】同ヘッドの液室短手方向に沿うバイピッチ構造の断面説明図である。
【図4】同ヘッドの液室短手方向に沿うノーマルピッチ構造の断面説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態の説明に供するFPCを屈曲する前の状態の平面説明図である。
【図6】同じく側面説明図である。
【図7】FPCを屈曲接合後の状態の図5のA−A線に沿う断面説明図である。
【図8】同じく図5のB−B線に沿う断面説明図である。
【図9】圧電部材とFPCの接続構造を説明するノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
【図10】本発明の第2実施形態の説明に供する図6と同様な側面説明図である。
【図11】本発明に係る画像形成装置の一例の説明に供する機構部の側面説明図である。
【図12】同じく機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明に係る液体吐出ヘッドの一例について図1ないし図4を参照して説明する。なお、図1は同ヘッドの分解斜視説明図、図2は同ヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図、図3及び図4は同ヘッドのノズル配列方向(液室短手方向)に沿う異なる例の断面説明図である。
【0014】
この液体吐出ヘッドは、SUS基板で形成した流路基板(液室基板)1と、この流路基板1の下面に接合した振動板部材2と、流路基板1の上面に接合したノズル板3とを有し、これらによって液滴(液体の滴)を吐出する複数のノズル4がそれぞれノズル連通路5を介して連通する個別流路としての複数の個別液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。以下、単に「液室」ともいう。)6、液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して液室6と連通する連通部8を形成し、連通部8に振動板部材2に形成した供給口9を介して後述するフレーム部材17に形成した共通液室10からインクを供給する。
【0015】
流路基板1は、流路板1Aと連通板1Bとを接着して構成している。この流路基板1は、SUS基板を、酸性エッチング液を用いてエッチング、あるいは打ち抜き(プレス)などの機械加工することで、連通路5、加圧液室6、流体抵抗部7などの開口をそれぞれ形成している。
【0016】
振動板部材2は各液室6に対応してその壁面を形成する各振動領域(ダイアフラム部)2aを有し、振動領域2aの面外側(液室6と反対面側)に島状凸部2bが設けられ、この島状凸部2bに振動領域2aを変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての積層型圧電部材12の圧電柱12A、12Bの上端面(接合面)を接合している。また、積層型圧電部材12の下端面はベース部材13に接合している。
【0017】
ここで、圧電部材12は、圧電材料層21と内部電極22a、22bとを交互に積層したものであり、内部電極22a、22bをそれぞれ端面、即ち圧電部材12の振動板部材2に略垂直な側面に引き出して、この側面に形成された端面電極(外部電極)23、24に接続し、端面電極(外部電極)23、24間に電圧を印加することで積層方向の変位を生じる。ここで、外部電極23を個別外部電極(個別電極)とし、外部電極24を第1共通外部電極(共通電極)として使用する。
【0018】
この圧電部材12は、ハーフカットダイシングによって溝40を加工することで、1つの圧電部材12に対して所要数の柱状の圧電素子である圧電柱12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成したものである。
【0019】
なお、圧電部材12の圧電柱12A、12Bは、同じものであるが、駆動波形を与えて駆動させる圧電柱を駆動柱12A、駆動波形を与えないで単なる支柱として使用する圧電柱を非駆動柱12Bとして区別している。この場合、図3に示すように、駆動柱12Aと非駆動柱12Bとを交互に使用するバイピッチ構成でも、あるいは、図4に示すようにすべての圧電柱を駆動柱12Aとして使用するノーマルピッチ構成のいずれでも採用できる。
【0020】
また、圧電部材12には駆動柱12Aに駆動信号を与えるための可撓性を有する配線部材としてのFPC15が接続されている。
【0021】
ノズル板3は、ニッケル(Ni)の金属プレートから形成したもので、エレクトロフォーミング法(電鋳)で製造している。このノズル板3には各液室6に対応して直径10〜35μmのノズル4を形成し、流路基板1に接着剤接合している。そして、このノズル板3の液滴吐出側面(吐出方向の表面:吐出面、又は液室6側と反対の面)には撥水層を設けている。
【0022】
また、これらの圧電部材12、ベース部材13及びFPC15などで構成されるアクチュエータ部の外周側には、エポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトで射出成形により形成したフレーム部材17を接合している。そして、このフレーム部材17には前述した共通液室10を形成し、更に共通液室10に外部から記録液を供給するための供給口19を形成し、この供給口19は更に図示しないサブタンクやインクカートリッジなどのインク供給源に接続される。
【0023】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば押し打ち方式で駆動する場合には、図示しない制御部から記録する画像に応じて駆動柱12Aに20〜50Vの駆動パルス電圧を選択的に印加することによって、パルス電圧が印加された駆動柱12Aが変位して振動板部材2の振動領域2aをノズル板3方向に変形させ、液室6の容積(体積)変化によって液室6内の液体を加圧することで、ノズル板3のノズル4から液滴が吐出される。
【0024】
そして、液滴の吐出に伴って液室6内の圧力が低下し、このときの液流れの慣性によって液室6内には若干の負圧が発生する。この状態の下において、駆動柱12Aへの電圧の印加をオフ状態にすることによって、振動板部材2が元の位置に戻って液室6が元の形状になるため、さらに負圧が発生する。このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填され、次の駆動パルスの印加に応じて液滴がノズル4から吐出される。
【0025】
なお、液体吐出ヘッドは、上記の押し打ち以外にも、引き打ち方式(振動板部材2を引いた状態から開放して復元力で加圧する方式)、引き−押し打ち方式(振動板部材2を中間位置で保持しておき、この位置から引いた後、押出す方式)などの方式で駆動することもできる。
【0026】
次に、本発明の第1実施形態について図5ないし図9を参照して説明する。なお、図5は同実施形態の説明に供するFPCを屈曲する前の状態の平面説明図、図6は同じく側面説明図、図7はFPCを屈曲接合後の状態の図5のA−A線に沿う断面説明図、図8は同じく図5のB−B線に沿う断面説明図、図9は圧電部材とFPCの接続構造を説明するノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
【0027】
1つの圧電部材12の一端部(又は両端部)には、駆動柱12Aよりも圧電柱配列方向(ノズル配列方向)の幅(以下同様)が広い非駆動柱である共通電極取出し用圧電柱12Baを形成し、その他の圧電柱を駆動柱12Aと非駆動柱(支柱)12Bとを交互に使用するバイピッチ構成としている。
【0028】
そして、2つの圧電部材12,12は、図8にも示すように、ノズル配列方向と直交する方向に所定の間隔でベース部材13上に配置されている。この場合、各圧電部材12、12は駆動柱12Aが千鳥状に配置されるようにしている。
【0029】
ここで、2つの圧電部材12、12には、前述したように、ノズル配列方向と直交する方向で対向する内面側に、複数の駆動柱12Aに共通の共通外部電極(これを「第1共通外部電極」という。)24が設けられ、内面側と反対側の外面側に、複数の駆動柱12A毎の個別外部電極23が設けられている。
【0030】
また、圧電部材12、12の共通電極取出し用圧電柱12Baには、駆動柱12Aの個別外部電極23が設けられた面と同じ外面側に、内面側の第1共通外部電極24に通じる第2共通外部電極25が設けられている。
【0031】
なお、個別外部電極23、第1共通外部電極24、第2共通外部電極25は、厚さ1μm程度の金属膜をスパッタ処理等により形成したもあのである。金属膜は、Cr、Ni、Cu、Au等の多層膜とし、最表面は半田との接合信頼性の高いAu膜としている。
【0032】
また、共通電極取出し用圧電柱12Baの高さH2は、他の圧電柱12A、12Bの高さH1より低く(H2<H1)形成している。この高低差(H1−H2)は、FPC15の電極部(基材31+配線32+接続部材(はんだ)41)の厚さ−振動板部材2の島状凸部2bの高さ、以上としている。
【0033】
また、圧電部材12の第1共通外部電極24側の内部電極22a,22bに挟まれておらず電圧が印加されない不活性領域部の高さは、第2共通外部電極25を設けた共通電極取出し用圧電柱12Baの高さH2と同じ高さとしている。
【0034】
なお、ここでは、FPC15の基材31が圧電柱12Aを超えない高さとしているため、振動板部材2の島状凸部2bの高さにかかわらず、両端部の圧電柱12Baを除く圧電柱12A、12Bと振動板部材2が接合できるようにしている。
【0035】
また、圧電部材12の共通電極取り出し用圧電柱12Ba及びこれと同じ高さの第1共通外部電極24側の不活性領域部は、最上層の内部電極22bが部分的に露出する高さとしている。なお、圧電部材12の高さを部分的に低く形成する方法としては、機械的加工で除去する方法を用いることができる。
【0036】
一方、FPC15は、基材31、個別電極配線32A、第1共通電極配線32B、第2共通電極配線32C(区別しないときは「配線32」という。)、ソルダレジスト33からなり、駆動IC34が実装されている。
【0037】
配線32は、高導電性のCuを例えば膜厚8μmで形成したものである。より低抵抗とする場合には、12,18,35μm等の膜厚のものも用いることができる。
【0038】
ソルダレジスト33はFPC15のベース部材13の側面に対向する領域15Bに形成している。
【0039】
FPC15の電極部15Aは、配線32が露出し、電極配線として使用する。
【0040】
また、FPC15には、基材31を打ち抜いて2つの圧電部材12、12に対応する開口部15Cを形成している。
【0041】
ここで、個別電極配線32Aは、第1共通電極配線32Bより内側に配置され、駆動IC34の接続端子まで形成されている。
【0042】
第1共通電極配線32Bは、個別電極配線32Aより外側に配置され、2つの圧電部材12、12間に相当する位置まで引き出されて、2つの圧電部材12、12間に対応する位置でノズル配列方向に沿って設けられた第2共通電極配線32Cと連結されている。
【0043】
ここでは、FPC15には、2つの圧電部材12を駆動する2個の駆動IC34、34を搭載している。また、FPC15は、2つの圧電部材12、12の第1共通外部電極24の電位を同一にするため、2つの圧電部材12、12に接続する第1共通電極配線32B同士を連結している。なお、2つの圧電部材12、12の共通外部電極24の電位を同一にする必要がない場合には、第1共通電極配線32B同士を連結する必要はない。
【0044】
また、配線32には、印刷法やめっき法等により、あらかじめ、半田41を形成している。
【0045】
そして、2つの圧電部材12、12とFPC15は、個別外部電極23と個別電極配線32A、第2共通外部電極25と第1共通電極配線32B、第1共通外部電極24と第2共通電極配線32C、内部電極22bと第2共通電極配線32Cが、それぞれ半田41で接合されて電気的に接続されている。
【0046】
次に、圧電部材12とFPC15の接合工程について説明する。
まず、FPC15は2つの圧電部材12、12と位置合わせし、圧電部材12の両端部の圧電柱12Baを除く圧電柱12A、12Bの振動板部材2との接合面が、開口部15Cから露出した状態で、2つの圧電部材12、12と重ね合わせる。
【0047】
次いで、FPC15を圧電部材12、12のそれぞれの外面側の角部に対応する部位15Dで屈曲させ、個別電極配線32A,第1共通電極配線32Bと圧電部材12、12の個別外部電極23,第2共通外部電極25を重ねる。そして、接合部分を、加圧及び加熱することにより、FPC15の個別電極配線32A,第1共通電極配線32Bと圧電部材12、12の個別外部電極23,第2共通外部電極25を接合する。
【0048】
また、FPC15の第2共通電極配線32Cと圧電部材12、12の第1共通外部電極24及び内部電極22bも同様に接合する。
【0049】
具体的には、ヒータチップ(ブロック)でFPC15の電極部15A裏面の基材31を加圧しながらヒータチップの温度をパルス的に上昇させて半田41を溶融硬化させることにより接合するヒーター接合法や、FPC15をガラス等のレーザー透過剛性部材で加圧した状態でレーザー光を配線32や半田41に照射して半田41を溶融硬化させることにより接合するレーザー接合法等を用いることができる。
【0050】
特に、第2共通電極配線32Cと圧電部材12の第1共通外部電極24及び内部電極22bとの接合には、2つの圧電部材12、12間が狭いため、レーザー接合法が好適である。
【0051】
なお、半田41は、金属部材からなるFPC15の配線32及び基材31に比較して低い融点を有する材料であり、かつ導電性を有する材料から構成されたものであればよく、鉛(Pb)を含有しないものであることが好ましい。例えば、半田41としてスズ(Sn)及びビスマス(Bi)を主成分とする半田を用いることができる。鉛が含有されていないことから、環境保護の観点において効果的であるとともに、スズ(Sn)及びビスマス(Bi)が主成分の半田41は非鉛の部材の中では非常に低い融点を有していることから、FPC15及び圧電部材12にダメージを与えることなくFPC15の電極と圧電部材12の電極とを容易に溶着することができる。
【0052】
また、ここでは、電気接続部材として半田41を用いたが、異方性導電膜や導電性接着剤等を用いることもできる。
【0053】
この電気接続部材は、圧電部材12の外部電極に形成することもできるが、FPC15の配線32(電極部15A)に形成することにより、圧電部材12の内部電極22bの露出部とFPC15の第2共通電極配線32Cも接合することができる。
【0054】
また、ここでは、配線部材として、FPCを用いたが、薄膜状であり互いに並列された複数の電極が設けられ、屈曲できるものであればよく、例えば、TAB(Tape Automated Bonding)を用いることもできる。
【0055】
また、2つの圧電部材12に接続するFPC15の第2共通電極配線32Cを別々に形成している。これにより、接合時に加熱量に対する放熱量を減らすことができ、接合部の温度上昇を抑えることができる。すなわち、接合時の圧電部材12やFPC15への熱ダメージを低減することができる。
【0056】
なお、接合時の圧電素子やFPCへの熱ダメージが少ない場合には、2つの圧電部材12に接続する第2共通電極配線32Cを別々にせず、1本の太い配線としてもよい。また、圧電部材12の第1共通外部電極24、露出させた内部電極22bとFPC15の第2共通電極配線32Cは、全面が接合されず、スポット状に接合されていてもよい。
【0057】
このように、可撓性を有する1つの配線部材を屈曲し、配線部材の配線と2つの圧電部材の内面及び外面の外部電極とを電気接続部材により接続しているので、圧電部材の駆動柱に流れる電流の大部分が配線部材の第2共通電極配線に流れるため、配線抵抗の高い第2共通外部電極だけに通電する場合と比べ、より多くの電流を流すことができる。
【0058】
すなわち、ヘッドの長尺化・高密度化に伴って、特に複数チャンネルの圧電柱を同時に駆動させる場合に、共通電極への電流が増大しても、発熱による焼け・焦げなどを防止することができ、抵抗が増大することで、圧電部材の端部のチャンネルと比較して中央部のチャンネルの吐出特性が劣化せず、安定して良好な液滴吐出を実現できる。
【0059】
また、2つの圧電部材間に金属部材を追加する場合に比べ、部材のコストアップがなく、しかも、金属部材の熱容量に比べ、配線部材の第2共通電極配線の熱容量は十分小さいため、接合不良や圧電素子の消極の発生を抑えることができる。
【0060】
また、FPC15の開口部15CにIC検査用パッドを設けることにより、配線部材であるFPCの検査に係わるコストアップがない。
【0061】
また、2つの圧電部材12、12の端部の第2共通外部電極25を設けた共通電極取出し用圧電柱12Baの少なくとも一部の高さを、他の圧電柱12A、12Bより低くしている。これにより、FPC15の第1共通電極配線32Bを、2つの圧電部材12、12間に配線し駆動電極を連結した第2共通電極配線32Cと繋げた状態で、第2共通電極配線32Cと圧電部材12の第1共通外部電極24を接続することと、圧電部材12と振動板部材2の接合を両立することができる。
【0062】
また、2つの圧電部材12、12の圧電柱の内面側の電圧が印加されない不活性領域部の高さを、第2共通外部電極を設けた共通電極取り出し用圧電柱の高さと同じにしているので、2つの圧電部材の間隔を狭くできる。
【0063】
また、第2共通外部電極を設けた共通電極取出し用圧電柱の高さが低くなった部分及び上記不活性領域部分では最上層の内部電極を露出させているので、露出した内部電極とFPCの配線を電気接続部材により接続でき、共通電極配線部の抵抗をさらに下げることができる。
【0064】
さらに、第2共通電極配線32Cと圧電部材12の第1共通外部電極24とは垂直接合であるため、接続面積が小さいが、第2共通電極配線32Cと露出した内部電極22bを接続することにより、接続面積が増大し、接続信頼性が向上する。
【0065】
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同実施形態の説明に供する図6と同様な側面説明図である。
【0066】
前記第1実施形態では第2共通外部電極25を設けた共通電極取り出し用圧電柱12Baの高さ全体を低くしていたのに対し、本実施形態では、第2共通外部電極25を設けた共通電極取り出し用圧電柱12Baの高さを他の圧電柱12A、12Bよりも部分的に低くしている。
【0067】
このように構成しても前記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0068】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを搭載する画像形成装置の一例について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11は同装置の機構部の側面説明図、図12は同じく機構部の要部平面説明図である。
【0069】
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0070】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド234a、234b(区別しないときは「記録ヘッド234」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0071】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、各色毎の記録ヘッドを備えることもできるし、4色の液滴を吐出する複数のノズルを並べたノズル列を有する1つの記録ヘッド構成とすることもできる。
【0072】
また、キャリッジ233には、記録ヘッド234のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク235a、235b(区別しないときは「サブタンク235」という。)を搭載している。このサブタンク235には各色の供給チューブ236を介して、図示しない供給ユニットによって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0073】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0074】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0075】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0076】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0077】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0078】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための回復手段を含む本発明に係るヘッドの維持回復装置である維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0079】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける液体回収容器であるインク回収ユニット(空吐出受け)288を配置し、このインク回収ユニット288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0080】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド237で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0081】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0082】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0083】
このように、この画像形成装置では本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、接合不良がなく、記録ヘッドの信頼性が向上し、安定した記録を行うことができる。
【0084】
なお、本願において、「用紙」とは材質を紙に限定するものではなく、OHP、布、ガラス、基板などを含み、インク滴、その他の液体などが付着可能なものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含む。また、画像形成、記録、印字、印写、印刷はいずれも同義語とする。
【0085】
また、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に液体を吐出して画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。
【0086】
また、「インク」とは、特に限定しない限り、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用い、例えば、DNA試料、レジスト、パターン材料、樹脂なども含まれる。
【0087】
また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0088】
また、画像形成装置には、特に限定しない限り、シリアル型画像形成装置及びライン型画像形成装置のいずれも含まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 流路板
2 ノズル板
3 振動板
4 ノズル
6 個別液室
10 共通液室
12 圧電部材
12A 圧電柱(駆動柱)
12B 圧電柱(非駆動柱)
12Ba 共通電極取出し用圧電柱
13 ベース部材
15 FPC(配線部材)
15C 開口部
23 個別外部電極
24 第1共通外部電極
25 第2共通外部電極
31A 個別電極配線
31B 第1共通電極配線
31C 第2共通電極配線
234 キャリッジ
235 記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルが連通する複数の個別液室に対応して配列された複数の圧電柱と、前記個別液室に対応しない少なくとも1つの共通電極取出し用圧電柱とがノズル配列方向に沿って設けられた2つの圧電部材と、
前記2つの圧電部材の複数の圧電柱に駆動信号を与える1つの可撓性を有する配線部材と、を有し、
前記2つの圧電部材は、ノズル配列方向と直交する方向に所定の間隔で配置され、
前記2つの圧電部材には、ノズル配列方向と直交する方向で対向する内面側に、前記複数の圧電柱に共通の第1共通外部電極が設けられ、前記内面側と反対側の外面側に、前記複数の圧電柱毎の個別外部電極が設けられるとともに、前記共通電極取出し用圧電柱に前記内面側の第1共通外部電極に通じる第2共通外部電極が設けられ、
前記配線部材は、前記2つの圧電部材に対応して開口部が形成されて、前記2つの圧電部材に跨って前記2つの圧電部材の外面側で屈曲されて設けられ、
前記配線部材には、個別電極配線及び第1共通電極配線が設けられて、前記2つの圧電部材の外面側の個別外部電極及び第2共通外部電極にそれぞれ接続され、
前記配線部材には、前記2つの圧電部材の間にノズル配列方向に沿って前記第1共通電極配線に通じる第2共通電極配線が設けられて、前記第2共通電極配線は前記2つの圧電部材の前記内面側の第1共通外部電極に接続されている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記共通電極取出し用圧電柱の少なくとも一部の高さが、他の圧電柱より低いことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記2つの圧電部材の内面側の不活性領域部の高さが、前記共通電極取出し用圧電柱の高さと同じであることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記共通電極取出し用圧電柱は、前記他の圧電柱より高さが低い部分で内部電極が露出していることを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−35136(P2013−35136A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170451(P2011−170451)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】