説明

液体吐出用ノズルおよびノズルユニット

【課題】接着剤を使用することなくノズルを組立てることのできるノズルおよび同ノズルを装着したノズルユニットを提供する。
【解決手段】円筒形の上半部と截頭円錐形の下半部とで構成され、先端面は軸芯に直交する平面13で形成され、後端面は挿入面を構成し、先端面13から後端面に至る流路15が同心に形成されており、先端面13の流路15が液体吐出口を構成し、ノズルホルダーに穿設されているノズル挿入孔に圧入装着し、ノズルホルダーから突出し外界に先端面13を露出させて、ノズルホルダーとともに、液体吐出口が最先端位置に設けられた液体吐出用ノズルユニットを構成するための液体吐出用ノズルであって、主たる鉱物相がコランダム、ルビーからなる多結晶性材料で作成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体およびペースト等の液体材料を、定量に吐出および精密に塗布するための装置に関し、詳しくは、微量の液体を精密に吐出または微量の液体を高精度に塗布するノズルおよびノズルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
ノズル先端の吐出口より液体を吐出する技術は広く知られており、微量の液体を精密に吐出し、または微量の液体を高精度に塗布する技術としては、例えば液体が貯留された貯留容器とノズル、が着脱可能に連通するように配設され、予め制御された空圧を前記貯留容器内の前記液体に加圧作用して前記ノズルより所望量の液体を吐出する方法が知られている。
【0003】
前記ノズルの一般的な形態は、他の吐出用部材から液体をノズルに流入する流入口と、前記他の吐出用部材と接続するための接続部と、液体を吐出する吐出口を具えており、詳しくは、前記流入口および前記接続部を具えるノズルホルダーと、吐出口を具えるノズルとで構成されており、前記ノズルホルダーの前記流入口に相向かう側面部と、前記張り先部の吐出口と相対する側面部とが、接合、連通している。
【0004】
このような技術で使用されているノズルは、金属製材料であることが一般的であるが、金属製材料のノズルは、精密かつ微細な加工が難しいため、極微量の液体を吐出する、または極微量の液体を所望位置に高精度に塗布するには、金属製材料に比べて精密かつ微細加工が可能な高硬度な材料、例えば工業用ルビー材料といった安価な鉱物性材料で作成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来使用されているルビー材料は、単結晶ルビーであるため劈開しやすく、他の物体との接触による、破損、損傷するおそれがあり、先端が破損、損傷したノズルで塗布描画すると、描画形状に乱れ、ムラが生じ、均一な描画形状とならず、また、ワーク表面とノズル先端との距離を所望量だけ設けるために、ノズル先端をワーク表面に当接した位置を基準として、前記距離を前記ワークと前記ノズルを相対的に移動して設ける技術が知られているが、当該技術もノズルが破損、損傷するから使用することができないので、その取り扱いには充分注意をはらわねければならなかった。
【0006】
また、ノズルホルダーと、ノズルとを異なる材料で構成する場合には、つまり、ノズルホルダーとノズルとを別々に作成した後に、ノズルホルダーとノズルとをアセンブリしてノズルとする場合においては、単結晶ルビーが劈開しやすいため、ノズルホルダーにノズルを圧入接合することが不可能であるから、ノズルホルダーとノズルとを接着剤にて接合してノズルを組立ていた。しかし、液体の種類によっては、前記接着剤の成分が液材に溶出し、液体が前記接着剤成分に汚染され、前記液体が機能性材料である場合には、所望する機能が働かず、液材に期待する効果が得られないことがあった。
【0007】
そこで、本発明は、金属製材料に比べて精密かつ微細な加工が可能である材料の鉱物性材料を使用したノズルにおいて、ノズル先端の劈開による破損・損傷を効果的に防止して、微量吐出、精密塗布を可能とする、液体の吐出方法、およびその方法に用いるためのノズルを提供することを目的とする。
すなわち、本発明は、接着剤を使用することなくノズルを組立てることのできるノズルおよび同ノズルを装着したノズルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、多結晶性材料で作成した液体吐出用ノズルを要旨としている。
【0009】
多結晶性材料が単結晶性材料を改質処理した多結晶性材料であり、その場合、本発明は、単結晶性材料を改質処理した多結晶性材料で作成した液体吐出用ノズルである。
【0010】
多結晶性材料がコランダムであり、その場合、本発明は、多結晶性コランダム、好ましくは単結晶性コランダムを改質処理した多結晶性コランダムで作成した液体吐出用ノズルである。
【0011】
多結晶性材料がルビーであり、その場合、本発明は、多結晶性ルビー、好ましくは単結晶性ルビーを改質処理した多結晶性ルビーで作成した液体吐出用ノズルである。
【0012】
また、本発明は、流体流入口と液体吐出口を具えるノズルと、ノズルホルダーとで構成された液体吐出用ノズルユニットであって、ノズルを多結晶性材料で作成したことを特徴とする液体吐出用ノズルユニットを要旨としている。
【0013】
ノズルを圧入装着してノズルホルダーに接合したものであり、その場合、本発明は、流体流入口と液体吐出口を具えるノズルと、ノズルホルダーとで構成された液体吐出用ノズルユニットであって、ノズルを多結晶性材料で作成したこと、ならびに、ノズルを圧入装着してノズルホルダーに接合したものであることを特徴とする液体吐出用ノズルユニットである。
【0014】
多結晶性材料が単結晶性材料を改質処理した多結晶性材料であり、その場合、本発明は、流体流入口と液体吐出口を具えるノズルと、ノズルホルダーとで構成された液体吐出用ノズルユニットであって、ノズルを単結晶性材料を改質処理した多結晶性材料で作成したこと、好ましくはノズルを圧入装着してノズルホルダーに接合したものであることを特徴とする液体吐出用ノズルユニットである。
【0015】
多結晶性材料がコランダムであり、その場合、本発明は、流体流入口と液体吐出口を具えるノズルと、ノズルホルダーとで構成された液体吐出用ノズルユニットであって、ノズルを多結晶性コランダム、好ましくは単結晶性コランダムを改質処理した多結晶性コランダムで作成したこと、好ましくはノズルを圧入装着してノズルホルダーに接合したものであることを特徴とする液体吐出用ノズルユニットである。
【0016】
多結晶性材料がルビーであり、その場合、本発明は、流体流入口と液体吐出口を具えるノズルと、ノズルホルダーとで構成された液体吐出用ノズルユニットであって、ノズルを多結晶性ルビー、好ましくは単結晶性ルビーを改質処理した多結晶性ルビーで作成したこと、好ましくはノズルを圧入装着してノズルホルダーに接合したものであることを特徴とする液体吐出用ノズルユニットである。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によると、多結晶性材料でノズルを形成するから、ノズル先端の劈開による破損・損傷を効果的に防止して、微量吐出、精密塗布を可能とし、また、多結晶性材料で形成されたノズルと、多結晶性材料と異なる材料で形成されたノズルホルダー部とを、圧入接合することが可能であるから、前記ノズルとノズルホルダーの接合に接着剤が不要となり、接着剤成分の液体への溶出が無く、液体をクリーンに吐出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の液体吐出用ノズルの原料は、鉱物性多結晶性材料、好ましくは鉱物相がコランダムからなる多結晶性材料である。コランダム(鋼玉)は、結晶系が六方晶系、モース硬度9の硬いアルミニウムの酸化鉱物であり、クロムの混入に基づく赤色のルビー、チタンと鉄の混入に基づく青色のサファイヤなどがある。本発明ではこれらの単結晶性材料を改質処理した多結晶性材料を用いることが好ましい。微量吐出、精密塗布用のノズルは、多結晶性材料で形成することにより、ノズル先端の劈開による破損・損傷を効果的に防止することができる。多結晶性コランダム原料は電融法、焼結法が例示される。
【0019】
本発明の液体吐出用ノズルにおいて、その製造方法は特に限定されるものではないが、従来から行われているように、コランダム原料にバインダーを添加し、常温もしくは加熱下で混練した後、混練物を成形、焼成することにより製造することができる。
【0020】
本発明の詳細を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
図1〜図6にもとづいて、本発明の実施例として、ノズルの構成、ノズルをノズルホルダーに取付けたノズルユニットの構成、および、ノズルユニットを液体吐出装置の液体供給に用いる貯留容器に接続して使用するための構成にもとづいて説明する。
【0022】
《ノズル》
図1に示すノズル10は、多結晶ルビー材料で形成され、円筒形の上半部11と截頭円錐形の下半部12とで構成されており、先端面は軸芯に直交する平面13で形成され、後端面は挿入面14を構成する。また、先端面から後端面に至る流路15が同心に形成されており、その孔径は使用する液体等の使用条件に応じて適宜定められる。
【0023】
なお、上記実施例においては、ノズル10は、円筒形の上半部と截頭円錐形の下半部とで砲弾形に構成しているが、液体の種類、吐出量、塗布形状等の条件に応じて、全体を円筒形等の所望の形状にすることができ、また、流路15の形状についても、本実施例においては、ストレート形状としているが、液体の種類、吐出量、塗布形状等の条件に応じて、テーパ形状等の所望する形状にすることができる。
【0024】
《ノズルホルダー》
図2に示すノズルホルダー20は、円筒形の本体部21と、本体部21の下部に一体に成形した、本体部21より小径の先端部25と、本体部21の上部に、他の吐出用部材、例えば貯留容器等の他の吐出用部材に接続するための、本体部21と一体に形成された接続部とで構成されており、上記接続部は、本体部21に続く小径部22と、小径部22の上面に形成された周面に対向する切り欠き部24、24を具えるフランジ部23とで構成されている。また、フランジ部23、小径部22および本体部21に亘って、他の吐出用部材に装着するための装着孔28が穿たれており、先端部25から本体部21に亘って、ノズル10の円筒部を圧入するためのノズル挿入孔26が穿設されていおり、ノズル挿入孔26と装着孔28とは同心に形成されており、両者の境界にはノズル10の挿入面14が当接させるための、軸芯に直交する環状の平面を有する段部27が形成されている。
【0025】
《ノズルユニット》
図3および図4は、図1に示すノズル10を図2に示すノズルホルダー20に圧入装着したノズルユニットを示す。
このノズルユニットは、ノズル10の挿入面14がノズルホルダー20のノズル挿入孔26の段部27に当接するまで圧入し、ノズルホルダー20の規定位置にノズル10を固定することにより組立てる。
このとき、ノズル10は、多結晶性材料で構成されているから、劈開、破損、損傷が無くノズルホルダー20に圧入接合することができ、ノズルユニットを得ることができる。
【0026】
次に、図5および図6にしたがって、上記構成のノズルユニットを、液体吐出装置の液体供給に用いる貯留容器に接続するための構成を説明する。
本実施例で使用する貯留容器30は、容器本体31、注出用ノズル32、内周面にはネジ条34が形成されたノズル32を囲繞するスリーブ33、液体吐出装置に装着するためのフランジ35で構成されている。
このようにノズルホルダーのフランジ部23が、貯留容器30先端に形成されたネジ条34に螺合して固定される。その際、貯留容器30のノズル32はノズルホルダー20の挿入孔28に挿入され、貯留容器のノズル32の外壁面が挿入孔28の内壁面に密着して液体の不要な漏出を防止する。
【産業上の利用可能性】
【0027】
金属製材料に比べて精密かつ微細な加工が可能である材料の鉱物性材料を使用したノズルにおいて、ノズル先端の劈開による破損・損傷を効果的に防止して、微量吐出、精密塗布を可能とする、液体の吐出方法、およびその方法に用いるためのノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例のノズルの斜視図である。
【図2】本発明の一実施例のノズルホルダーの斜視図である。
【図3】本発明の一実施例のノズルユニットの斜視図である。
【図4】図3のノズルユニットの断面図である。
【図5】図3のノズルユニットを装着した貯留容器の正面図である。
【図6】ノズルユニットを貯留容器に装着状態の説明図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ノズル
15 流路
20 ノズルホルダー
26 ノズル挿入孔
27 段部
30 貯留容器
34 ネジ条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形の上半部11と截頭円錐形の下半部12とで構成され、先端面は軸芯に直交する平面13で形成され、後端面は挿入面14を構成し、先端面13から後端面14に至る流路15が同心に形成されており、先端面13の流路15が液体吐出口を構成し、ノズルホルダーに穿設されているノズル挿入孔26に圧入装着し、ノズルホルダーから突出し外界に先端面13を露出させて、ノズルホルダーとともに、液体吐出口が最先端位置に設けられた液体吐出用ノズルユニットを構成するための液体吐出用ノズルであって、主たる鉱物相がコランダムからなる多結晶性材料で作成されていることを特徴とする液体吐出用ノズル。
【請求項2】
主たる鉱物相がルビーからなる多結晶性材料で作成されていることを特徴とする請求項1の液体吐出用ノズル。
【請求項3】
円筒形の上半部11と截頭円錐形の下半部12とで構成され、先端面は軸芯に直交する平面13で形成され、後端面は挿入面14を構成し、先端面13から後端面14に至る流路15が同心に形成されており、先端面13の流路15が液体吐出口を構成する液体吐出用ノズルと、ノズルホルダーとで、該ノズルをノズルホルダーに穿設されているノズル挿入孔26に圧入装着しノズルホルダーから突出し外界に先端面13を露出させて該ノズルホルダーに接合して構成された、液体吐出口が最先端位置に設けられた液体吐出用ノズルユニットであって、該液体吐出用ノズルが主たる鉱物相がコランダムからなる多結晶性材料で作成されていることを特徴とする液体吐出用ノズルユニット。
【請求項4】
前記液体吐出用ノズルが、主たる鉱物相がルビーからなる多結晶性材料のノズルである請求項3の液体吐出用ノズルユニット。
【請求項5】
前記ノズルホルダーが他の吐出用部材に装着するための装着孔28が穿たれており、先端部25から本体部21に亘って、ノズル10の円筒部を圧入するためのノズル挿入孔26が穿設されていおり、ノズル挿入孔26と装着孔28とは同心に形成されており、両者の境界にはノズル10の挿入面14が当接させるための、軸芯に直交する環状の平面を有する段部27が形成されており、ノズル10の挿入面14がノズルホルダー20のノズル挿入孔26の段部27に当接するまで圧入し、ノズルホルダー20の規定位置にノズル10を固定することにより組立てたものである請求項3または4の液体吐出用ノズルユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−268532(P2007−268532A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156773(P2007−156773)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【分割の表示】特願2001−351755(P2001−351755)の分割
【原出願日】平成13年11月16日(2001.11.16)
【出願人】(390026387)武蔵エンジニアリング株式会社 (56)
【Fターム(参考)】