説明

液体吐出装置、検査方法およびプログラム

【課題】残留振動に基づいて吐出部を検査する際の誤判定を防止する。
【解決手段】液体を吐出する複数の吐出部270と、各吐出部における残留振動を検出する検出部290と、残留振動の検出値に基づいて吐出部270を検査する検査部102とを備え、複数の吐出部270は、残留振動の特性に応じて複数のランクに分類され、検査部102は、吐出部270のランクに応じて設定された判定基準データ120に従って、残留振動に基づく吐出部270の検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置における複数の吐出部を検査する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一つであるインクジェットプリンターは、インクを吐出する複数の吐出部を備え、各吐出部では、ノズルに連通するキャビティーにインクが貯留され、キャビティーに設けられた駆動素子の駆動によりノズルからインクが吐出される。このような液体吐出装置の吐出部では、キャビティー内のインクに気泡が混入した場合や、キャビティー内のインクが増粘した場合には、ノズルが目詰まりし、ノズルからのインクの吐出を良好に行うことができなくなるおそれがある。
【0003】
従来、駆動素子の駆動によりキャビティー内のインクに残留する残留振動に基づいて、吐出部におけるノズルの目詰まりを検査する技術が提案されていた(例えば、特許文献1〜3を参照)。このような残留振動に基づく検査では、複数の吐出部を検査する場合、位置関係や製造誤差などに起因して吐出部間で残留振動の特性にバラツキがあるため、残留振動に基づく検査の判定基準は、残留振動特性のバラツキを許容する範囲で設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−289048号公報
【特許文献2】特開2005−305992号公報
【特許文献3】特開2006−306077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の残留振動に基づく検査では、吐出部間における残留振動特性のバラツキに応じて判定基準の許容範囲を拡張し過ぎると、目詰まりか否かの区別が曖昧になり、検査の誤判定を招くおそれがあるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した課題を踏まえ、残留振動に基づいて吐出部を検査する際の誤判定を防止することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1] 適用例1の液体吐出装置は、キャビティーに連通するノズルから前記キャビティー内の液体を駆動素子の駆動により吐出する複数の吐出部と、前記キャビティー内の液体の振動であって前記駆動素子の駆動により残留する残留振動を検出する検出部と、前記検出部による前記残留振動の検出値に基づいて前記吐出部を検査する検査部とを備え、前記複数の吐出部は、各々における残留振動の特性に応じて、前記複数の吐出部の総数よりも少ない数の複数のランクに分類され、前記検査部は、前記複数のランクに応じた判定基準に従って、前記検出値に基づく前記吐出部の検査を行うことを特徴とする。適用例1の液体吐出装置によれば、残留振動の特性のバラツキが小さくなるように複数の吐出部を分類したランク毎に判定基準を設定することによって、許容範囲の過大な拡張に起因する検査の誤判定を防止することができる。
【0009】
[適用例2] 適用例1の液体吐出装置において、前記判定基準は、前記ランク毎に設定した判定閾値を含み、前記判定閾値は、残留振動の周期、位相および振幅の少なくとも一つの判定に用いられる閾値を含むとしても良い。適用例2の液体吐出装置によれば、ランク毎の検査を容易に行うことができる。
【0010】
[適用例3] 適用例1または適用例2の液体吐出装置において、前記判定基準は、前記複数のランクに加え、前記駆動素子を駆動させる駆動信号の信号レベルにも応じた基準であっても良い。適用例3の液体吐出装置によれば、駆動信号の信号レベルに応じて変化する残留振動の特性を考慮して、残留振動に基づく検査の誤判定を一層防止することができる。
【0011】
[適用例4] 適用例1ないし適用例3のいずれかの液体吐出装置は、更に、前記判定基準を予め記憶する基準記憶部を備えても良い。適用例4の液体吐出装置によれば、予め用意された判定基準に基づいて検査を行うことができる。
【0012】
[適用例5] 適用例1ないし適用例4のいずれかの液体吐出装置は、更に、前記複数の吐出部の各々における残留振動の特性に応じて前記判定基準を生成する基準生成部を備えても良い。適用例5の液体吐出装置によれば、残留振動特性の変化に応じて判定基準を更新することができる。
【0013】
[適用例6] 適用例1ないし適用例5のいずれかの液体吐出装置において、前記複数の吐出部は、各々における残留振動の再現性、周期、位相および振幅の少なくとも一つの特性に応じて前記複数のランクに分類されても良い。適用例6の液体吐出装置によれば、ランク毎の検査を容易に行うことができる。
【0014】
[適用例7] 適用例7の検査方法は、キャビティーに連通するノズルから前記キャビティー内の液体を駆動素子の駆動により吐出する複数の吐出部を検査する検査方法であって、前記キャビティー内の液体の振動であって前記駆動素子の駆動により残留する残留振動を検出する検出工程と、前記検出工程による前記残留振動の検出値に基づいて前記吐出部を検査する検査工程とを備え、前記複数の吐出部は、各々における残留振動の特性に応じて、前記複数の吐出部の総数よりも少ない数の複数のランクに分類され、前記検査において、前記ランクに応じた判定基準に従って、前記検出値に基づく前記吐出部の検査を行うことを特徴とする。適用例7の検査方法によれば、残留振動の特性のバラツキが小さくなるように複数の吐出部を分類したランク毎に判定基準を設定することによって、許容範囲の過大な拡張に起因する検査の誤判定を防止することができる。
【0015】
[適用例8] 適用例8のプログラムは、キャビティーに連通するノズルから前記キャビティー内の液体を駆動素子の駆動により吐出する複数の吐出部を検査する機能をコンピューターに実現させるためのプログラムであって、前記キャビティー内の液体の振動であって前記駆動素子の駆動により残留する残留振動を検出する検出機能と、前記検出機能による前記残留振動の検出値に基づいて前記吐出部を検査する検査機能とを実現させ、前記複数の吐出部は、各々における残留振動の特性に応じて、前記複数の吐出部の総数よりも少ない数の複数のランクに分類され、前記検査機能は、前記ランクに応じた判定基準に従って、前記検出値に基づく前記吐出部の検査を行うことを特徴とする。適用例8のプログラムによれば、残留振動の特性のバラツキが小さくなるように複数の吐出部を分類したランク毎に判定基準を設定することによって、許容範囲の過大な拡張に起因する検査の誤判定を防止することができる。
【0016】
本発明の形態は、液体吐出装置、検査方法およびプログラムに限るものではなく、インクジェットプリンターを始めとする液体吐出装置の具体的な形態の他、液体中や気体中に固体が分散した状態の流体を吐出する吐出装置など他の形態に適用することもできる。また、本発明は、前述の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】プリンターの構成を示す説明図である。
【図2】ヘッドユニットにおけるヘッドの構造を示す説明図である。
【図3】ヘッドユニットにおけるインク吐出機構を示す説明図である。
【図4】制御部およびヘッドユニットの電気的構成を示す説明図である。
【図5】制御部およびヘッドユニットにおける各種信号の一例を示す説明図である。
【図6】残留振動に応じた電気信号の変化の一例を示す説明図である。
【図7】残留振動の周期に基づく吐出部のランク分けの一例を示す説明図である。
【図8】残留振動の周期に基づく判定閾値の一例を示す説明図である。
【図9】残留振動の周期に基づく判定閾値の一例を示す説明図である。
【図10】残留振動の周期に基づく判定閾値の一例を示す説明図である。
【図11】判定基準データの一例を示す説明図である。
【図12】プリンターにおける制御部が実行する検査処理を示すフローチャートである。
【図13】プリンターおよび基準生成装置を示す説明図である。
【図14】基準生成装置が実行するランク分け処理を示すフローチャートである。
【図15】基準生成装置が実行するランク分け処理を示すフローチャートである。
【図16】第2実施例における吐出部のランク分けの一例を示す説明図である。
【図17】第2実施例において基準生成装置が実行するランク分け処理を示すフローチャートである。
【図18】第2実施例において基準生成装置が実行するランク分け処理を示すフローチャートである。
【図19】第3実施例のプリンターを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以上説明した本発明の構成および作用を一層明らかにするために、以下本発明を適用した液体吐出装置について説明する。
【0019】
A.第1実施例:
A1.プリンターの構成:
図1は、プリンター10の構成を示す説明図である。プリンター10は、液体を吐出する液体吐出装置の一つであるインクジェットプリンターであり、液体としてインクを吐出することによって、文字、図形および画像などのデータを、紙やラベルなどの印刷媒体90に印刷する。プリンター10は、制御部100と、ユーザーインターフェイス180と、通信インターフェイス190と、ヘッドユニット200とを備える。
【0020】
プリンター10のユーザーインターフェイス180は、ディスプレーや操作ボタンを備え、プリンター10のユーザーとの間で情報のやり取りを行う。通信インターフェイス190は、プリンター10と電気的に接続可能なパーソナルコンピューター、デジタルスチルカメラ、メモリーカードなどの外部機器との間で情報のやり取りを行う。プリンター10のヘッドユニット200は、インクを吐出するインク吐出機構を備える。なお、インク吐出機構の詳細については後述する。
【0021】
プリンター10の制御部100は、プリンター10の各部を制御する。例えば、制御部100は、通信インターフェイス190を介して入力されるデータに基づいて、ヘッドユニット200および印刷媒体90を相対的に移動させながら、ヘッドユニット200からインク滴を吐出させる制御を行う。これによって、印刷媒体90に対する印刷が実現される。
【0022】
本実施例では、制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備える装置であり、制御部100による各種の機能は、CPUがコンピュータープログラムに基づいて動作することによって実現される。なお、制御部100による機能の少なくとも一部は、制御部100が備える電気回路がその回路構成に基づいて動作することによって実現されても良い。
【0023】
本実施例では、ヘッドユニット200は、キャリッジ210と、インクカートリッジ220と、ヘッド280とを備える。ヘッドユニット200のキャリッジ210は、制御部100とフレキシブルケーブル170を介して接続され、インクカートリッジ220およびヘッド280を搭載した状態で移動可能に構成されている。ヘッドユニット200のインクカートリッジ220は、インクを内部に収容し、そのインクをヘッド280に供給する。本実施例では、インクの色(ブラック、シアン、マゼンタおよびイエロの4色)毎に用意された複数のインクカートリッジ220がキャリッジ210に搭載されている。ヘッドユニット200のヘッド280は、印刷媒体90に対向する部位であり、インクカートリッジ220からヘッド280に供給されたインクは、ヘッド280から印刷媒体90に向けて液滴状に吐出される。
【0024】
本実施例では、プリンター10は、ヘッドユニット200および印刷媒体90を相対的に移動させるために、主走査送り機構および副走査送り機構を備える。プリンター10の主走査送り機構は、キャリッジモーター312および駆動ベルト314を備え、駆動ベルト314を介してキャリッジモーター312の動力をヘッドユニット200に伝達することによって、ヘッドユニット200を主走査方向に往復移動させる。プリンター10の副走査送り機構は、搬送モーター322およびプラテン324を備え、搬送モーター322の動力をプラテン324に伝達することによって、主走査方向に交差する副走査方向に印刷媒体90を搬送する。主走査送り機構のキャリッジモーター312、および副走査送り機構の搬送モーター322は、制御部100からの制御信号に基づいて動作する。
【0025】
本実施例の説明では、ヘッドユニット200を往復移動させる主走査方向に沿った座標軸にX軸を設定し、印刷媒体90を搬送する副走査方向に沿った座標軸にY軸を設定し、重力方向の下方から上方に向かう座標軸にZ軸を設定した。X軸、Y軸およびZ軸は、それぞれ相互に直交する座標軸である。
【0026】
図2は、ヘッドユニット200におけるヘッド280の構造を示す説明図である。図2には、印刷媒体90側から見たヘッド280を図示した。ヘッドユニット200のヘッド280は、インクを吐出する複数のノズル48を備える。本実施例では、インクの色(ブラック、シアン、マゼンタおよびイエロの4色)毎にn個(例えば180個)のノズル48が設けられ、各色のノズル48は、主走査方向(X軸方向)に、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの順に配置されている。各色のn個のノズル48は、相互に副走査方向(Y軸方向)にずらして配列され、本実施例では、副走査方向(Y軸方向)におけるノズル48同士の間隔を狭めるため、副走査方向(Y軸方向)に沿って二列に分けて交互に配列されている。
【0027】
本実施例の説明では、ヘッドユニット200におけるノズルを総称する場合には符号「48」を用い、ブラックのノズルを特定する場合には符号「48k」、シアンのノズルを特定する場合には符号「48c」、マゼンタのノズルを特定する場合には符号「48m」、イエロのノズルを特定する場合には符号「48y」をそれぞれ使用する。更に、個々のノズルを特定する場合には、ノズル番号を付加した符号を用いる。例えば、図2に示すように、イエロの1番目のノズルには符号「48y(1)」、イエロの2番目のノズルには符号「48y(2)」、イエロの3番目のノズルには符号「48y(3)」、・・・、イエロの(n−1)番目のノズルには符号「48y(n−1)」、イエロのn番目のノズルには符号「48y(n)」を用いる。
【0028】
図3は、ヘッドユニット200におけるインク吐出機構を示す説明図である。図3には、ヘッド280を重力方向(Z軸方向)に沿って切断した断面を図示した。ヘッドユニット200のインク吐出機構は、導入路40と、リザーバー42と、供給口44と、キャビティー46と、ノズル48と、駆動素子66と、振動板67とを備える。
【0029】
インク吐出機構の導入路40およびリザーバー42は、インクの色毎に設けられ、インクカートリッジ220からノズル48へとインクを流す流路の一部を形成する。インクカートリッジ220からヘッドユニット200に供給されたインクは、導入路40を通じてリザーバー42に貯留される。
【0030】
インク吐出機構における供給口44、キャビティー46、駆動素子66および振動板67の各部は、ヘッド280に形成された複数のノズル48の各々に対応して設けられ、ノズル48と共に吐出部270を構成する。つまり、ヘッドユニット200は、ノズル48の数に対応した複数の吐出部270を備える。吐出部270は、駆動素子66の駆動により、キャビティー46内のインクを、キャビティー46に連通するノズル48から吐出する。
【0031】
吐出部270の供給口44およびキャビティー46は、インクカートリッジ220からノズル48へとインクを流す流路の一部を形成する。供給口44は、リザーバー42とキャビティー46との間を連通する流路であり、供給口44を通じてリザーバー42からキャビティー46にインクが供給される。キャビティー46は、ノズル48に連通する流路であり、供給口44およびノズル48よりも十分に大きな流路断面を有し、吐出前のインクを貯留する。
【0032】
吐出部270の駆動素子66は、振動板67を介してキャビティー46に設けられ、吐出部270の振動板67は、キャビティー46における流路壁面の一部を形成する。本実施例では、駆動素子66は、二つの電極662,666の間に圧電体664を積層し電極666側に振動板67を設けたユニモルフ型圧電アクチュエーターであるが、他の実施形態において、積層型圧電アクチュエーターを駆動素子66に適用しても良い。駆動素子66は、駆動信号の印加に基づいて重力方向(Z軸方向)に撓み、振動板67を変位させる。これによって、キャビティー46の容積を拡張してリザーバー42からインクを引き込んだ後、キャビティー46の容積を縮小してノズル48からインク滴を吐出することが可能である。
【0033】
図1の説明に戻り、本実施例では、プリンター10は、ヘッドユニット200のヘッド280をメンテナンスする機構として、ヘッドワイパー330と、ヘッドキャップ340とを備える。プリンター10のヘッドワイパー330は、ヘッド280を拭き取ることによって、ヘッド280に付着したインクを除去する。プリンター10のヘッドキャップ340は、気泡や増粘で劣化したインクによって吐出部270のノズル48が目詰まりした場合に、ヘッド280に取り付き、劣化したインクをノズル48から吸引することによって、インクを適切に吐出可能な状態へと吐出部270を回復させる。
【0034】
図4は、制御部100およびヘッドユニット200の電気的構成を示す説明図である。制御部100は、検査部102と、基準記憶部104とを備え、ヘッドユニット200は、シフトレジスター52と、ラッチ回路54と、レベルシフター56と、スイッチ58と、共通電路62,68と、複数のスイッチ64と、検出部290とを備える。
【0035】
ヘッドユニット200のシフトレジスター52は、複数の吐出部270における各駆動素子66の動作を指示する指示データを保持する記憶装置である。制御部100からのシフト入力信号SIには、各駆動素子66に対応する指示データがクロック信号SCKに同期して順次出力され、シフトレジスター52には、シフト入力信号SIおよびクロック信号SCKに基づいて、各駆動素子66に対応する指示データが順次格納される。本実施例では、各駆動素子66に対応する指示データは、2ビットのデータであり、[0,0]、[0,1]、[1,0]、[1,1]のいずれかを示す。
【0036】
ヘッドユニット200のラッチ回路54は、制御部100からのラッチ信号LATに基づいて、シフトレジスター52に格納されている各駆動素子66の指示データを保持し、各指示データに応じた論理信号をレベルシフター56に出力する。ラッチ信号LATは、シフトレジスター52に各駆動素子66の指示データの全てが格納されるタイミングで制御部100から出力される。本実施例では、ラッチ回路54は、[0,0]の指示データに応じてLoレベルの論理信号を出力し、[0,1]の指示データに応じてLoレベルに続いてHiレベルの論理信号を出力し、[1,0]の指示データに応じてHiレベルに続いてLoレベルの論理信号を出力し、[1,1]の指示データに応じてHiレベルの論理信号を出力する。
【0037】
ヘッドユニット200のレベルシフター56は、ラッチ回路54から出力される論理信号に応じて、各駆動素子66に接続された複数のスイッチ64の各々に、各スイッチ64をオン・オフ可能なレベルの電圧を出力する。本実施例では、レベルシフター56は、ラッチ回路54からのLoレベルの論理信号に応じてスイッチ64をオフにするレベルの電圧を出力し、ラッチ回路54からのHiレベルの論理信号に応じてスイッチ64をオンにするレベルの電圧を出力する。
【0038】
ヘッドユニット200における複数のスイッチ64は、共通電路62と各駆動素子66との間の電気的な接続をオン・オフする。ヘッドユニット200の共通電路62には、駆動素子66を駆動する駆動信号COMが制御部100から入力される。スイッチ64によって駆動素子66が共通電路62に電気的に接続されたオン状態では、駆動信号COMが駆動素子66の電極662側に印加され、スイッチ64によって駆動素子66が共通電路62から電気的に切り離されたオフ状態では、駆動信号COMは駆動素子66に印加されない。本実施例では、スイッチ64は、トランスミッションゲートによるアナログスイッチである。
【0039】
ヘッドユニット200のスイッチ58は、各駆動素子66の電極666側に電気的に接続された共通電路68をグランドに接続(接地)する。本実施例では、共通電路68とグランドとの間には、スイッチ58と電気的に並列に抵抗59が接続されており、制御部100から出力される検出実施信号DSELに基づいて、スイッチ58が共通電路68をグランドから電気的に切り離している間、検出部290は、抵抗59に流れる電流に基づく電圧変化をオペアンプで増幅することによって、共通電路68から出力される電気信号HGNDを検出する。これによって、検出部290は、共通電路68の電気信号HGNDとグランドとの間の電圧変化に基づいて、各駆動素子66から共通電路68に印加される起電力を効果的に検出することができる。
【0040】
図5は、制御部100およびヘッドユニット200における各種信号の一例を示す説明図である。図5には、上段から順に、ラッチ信号LAT、切替信号CH、駆動信号COM、および検出実施信号DSELの各時間変化を図示し、その下段に、シフト入力信号SIの指示データに応じて駆動素子66に印加される印加電圧の時間変化を図示した。
【0041】
ラッチ信号LATは、駆動周期TDに応じて立ち上がる論理信号であり、制御部100からラッチ回路54に入力される。駆動周期TDは、各吐出部270における駆動素子66を駆動して印刷媒体90上に1画素を生成する期間に相当する。
【0042】
切替信号CHは、ラッチ信号LATに基づいてヘッドユニット200において生成される信号であり、ラッチ信号LATの立ち上がりから規定時間の経過に応じて立ち上がる論理信号である。ラッチ回路54は、ラッチ信号LATの立ち上がりから切替信号CHの立ち上がりまでの第1期間T1の間、シフトレジスター52から受け取った2ビットの指示データにおける1ビット目に応じた論理信号を出力し、切替信号CHの立ち上がりからラッチ信号LATの次の立ち上がりまでの第2期間T2の間、指示データの2ビット目に応じた論理信号を出力する。
【0043】
駆動信号COMは、駆動周期TDに同期して周期的に出力される電圧信号であり、制御部100から共通電路62およびスイッチ64を通じて駆動素子66に供給される。駆動信号COMは、第1期間T1では、中間電圧Vcを維持した状態から、中間電圧Vcよりも高い電圧V1にまで立ち上がった後、中間電圧Vcよりも低い電圧V2にまで立ち下がり、再び中間電圧Vcになる。その後の第2期間T2では、駆動信号COMは、中間電圧Vcから、中間電圧Vcよりも高い電圧V1にまで立ち上がった後、中間電圧Vcを維持した状態になる。第1期間T1における駆動信号COMは、吐出部270のノズル48からインク滴を吐出させる印加レベルの信号である。第2期間T2における駆動信号COMは、ノズル48からインク滴を吐出させることなく残留振動を発生させる印加レベルの信号である。
【0044】
検出実施信号DSELは、残留振動に基づいて吐出部270を検査する場合に、第2期間T2において駆動信号COMが電圧V1から中間電圧Vcに復帰したタイミングから、第2期間T2が終了する前のタイミングまでの間に立ち下がる論理信号である。検出実施信号DSELが立ち下がると、ヘッドユニット200のスイッチ58は、共通電路68をグランドから電気的に切り離し、ヘッドユニット200の検出部290は、共通電路68の電気信号HGNDを検出する。
【0045】
シフト入力信号SIの指示データが[0,0]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、駆動周期TDの間、中間電圧Vcを維持した状態となる。これによって、その駆動素子66に対応する吐出部270においてインク滴は吐出されず、残留振動も発生しない。シフト入力信号SIの指示データ[0,0]は、印刷時に画素を形成しない吐出部270や、残留振動に基づいた検査の実施対象ではない吐出部270に対して設定される。
【0046】
シフト入力信号SIの指示データが[0,1]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、第1期間T1において中間電圧Vcを維持した後、第2期間T2において電圧V1に立ち上がる。これによって、その駆動素子66に対応する吐出部270において、インク滴を吐出することなく残留振動を発生させることができる。シフト入力信号SIの指示データ[0,1]は、画素を形成することなく検査を実施する際に、残留振動に基づいた検査の実施対象となる吐出部270に対して設定される。
【0047】
シフト入力信号SIの指示データが[1,0]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、第1期間T1において電圧V1および電圧V2に変化した後、第2期間T2において中間電圧Vcを維持した状態となる。これによって、その駆動素子66に対応する吐出部270においてインク滴が吐出される。シフト入力信号SIの指示データ[1,0]は、印刷時に画素を形成する吐出部270に対して設定される。
【0048】
シフト入力信号SIの指示データが[1,1]の場合、駆動素子66に印加される印加電圧は、第1期間T1において電圧V1および電圧V2に変化した後、第2期間T2において電圧V1に変化する。これによって、その駆動素子66に対応する吐出部270において、インク滴を吐出させつつ、吐出部270の検査に適した残留振動を発生させることができる。シフト入力信号SIの指示データ[1,1]は、画素を形成しつつ検査を実施する際に、残留振動に基づいた検査の実施対象となる吐出部270に対して設定される。
【0049】
図4の説明に戻り、ヘッドユニット200の検出部290は、吐出部270におけるキャビティー46内のインクの振動であって駆動素子66の駆動により残留する残留振動に応じた電気信号SWを検出する。本実施例では、駆動素子66は、残留振動を感知して残留振動に応じた電気信号SWを出力する感知部として機能し、共通電路68には、残留振動に伴う起電力によって各駆動素子66から出力される電気信号SWが印加される。これによって、検出部290は、共通電路68の電気信号HGNDを検出することによって、残留振動に応じた電気信号を検出することができる。本実施例では、検出部290は、制御部100から出力される検出実施信号DSELに基づいて、共通電路68の電気信号HGNDを検出し、その検出結果として残留振動の検出値を示す検出信号POUTを制御部100に出力する。
【0050】
制御部100の検査部102は、ヘッドユニット200の検出部290によって検出された電気信号に基づいて吐出部270を検査する。本実施例では、検査部102は、ヘッドユニット200の検出部290から出力される検出信号POUTに基づいて、吐出部270の状態としてノズル48の目詰まり(インクの気泡混入および増粘)を検査する。
【0051】
制御部100の基準記憶部104は、検査部102による検査の判定基準を示す判定基準データ120を予め記憶しており、検査部102は、基準記憶部104の判定基準データ120に従って、検出信号POUTに基づく吐出部270の検査を行う。基準記憶部104の判定基準データ120には、ヘッド280における複数の吐出部270が、各々における残留振動の特性に応じて、吐出部270の総数よりも少ない数の複数のランクに分類されており、その複数のランク毎に、吐出部270における残留振動を判定するための判定閾値が設定されている。本実施例では、基準記憶部104の判定基準データ120は、プリンター10の工場出荷時に作成され、基準記憶部104に記憶されたデータである。
【0052】
図6は、残留振動に応じた電気信号SWの変化の一例を示す説明図である。図6には、縦軸に電圧、横軸に時間を設定して、電気信号SWg,SWb,SWvを図示した。図6の電気信号SWgは、インクを吐出可能な状態にある単独の吐出部270における残留振動に応じた電気信号SWを示す。
【0053】
ここで、吐出部270における振動板67を想定した単振動の計算モデルに圧力Pを与えた時のステップ応答を体積速度uについて計算すると、次式が得られる。
【0054】
【数1】

【0055】
上記の数式1において、流路抵抗rは、供給口44、キャビティー46およびノズル48などの流路形状やこれら流路におけるインクの粘度に依拠し、イナータンスmは、供給口44、キャビティー46およびノズル48などの流路内におけるインクの質量に依拠し、コンプライアンスcは、振動板67の伸縮性に依拠する。
【0056】
図6の電気信号SWbは、キャビティー46内のインクに気泡が発生したためにインクを吐出できない状態にある単独の吐出部270における残留振動に応じた電気信号SWを示す。キャビティー46内のインクに気泡が発生するとキャビティー46内のインクが少なくなるため、主にイナータンスmが減少する。イナータンスmが減少すると、前述の数式1に示すように、角速度ωが大きくなる。そのため、図6に示すように、電気信号SWbの振動周期は、電気信号SWgよりも短くなり、電気信号SWbにおける最初の半周期を示す時間tf_bは、電気信号SWgにおける最初の半周期を示す時間tf_gよりも短くなる。
【0057】
図6の電気信号SWvは、キャビティー46内のインクが増粘したためにインクを吐出できない状態にある単独の吐出部270における残留振動に応じた電気信号SWを示す。キャビティー46内のインクが増粘すると流路抵抗rが増加する。流路抵抗rが増加すると、前述の数式1に示すように、角速度ωが小さくなる。そのため、図6に示すように、電気信号SWvの振動周期は、電気信号SWgよりも長くなり、電気信号SWbにおける最初の半周期を示す時間tf_vは、電気信号SWgにおける最初の半周期を示す時間tf_gよりも長くなる。
【0058】
図7は、残留振動の周期に基づく吐出部270のランク分けの一例を示す説明図である。図7には、縦軸に時間、横軸にノズル番号を設定して、インクを吐出可能な状態にある各吐出部270において検出された残留振動の検出値として、残留振動における最初の半周期を示す時間tf_gを図示した。図7に示す時間tf_gは、ヘッド280における複数の吐出部270のうち、同じ色のインクを吐出するn個の吐出部270に関するものである。
【0059】
図7に示すように、各吐出部270の位置関係や製造誤差などに起因して、時間tf_gにはバラツキがある。本実施例では、ヘッド280における複数の吐出部270は、インクの色毎に、時間tf_gの分布に応じて三段階のランクR1,R2,R3に分類されている。本実施例では、各ランクにおける時間tf_gの分布幅は同じであり、ランクR1,R2,R3の順に時間tf_gは長くなる。
【0060】
図8ないし図10は、残留振動の周期に基づく判定閾値の一例を示す説明図である。図8ないし図10には、縦軸に電圧、横軸に時間を設定して、ランク毎の代表的な電気信号SWgとして、ランクR1の電気信号SWg_R1、ランクR2の電気信号SWg_R2、ランクR3の電気信号SWg_R3を図示した。
【0061】
図8には、ランクR1に分類された吐出部270を検査するための判定閾値として、下限閾値tf_L1および上限閾値tf_U1を示した。ランクR1の吐出部270について検出された残留振動における最初の半周期を示す時間tf_R1が、下限閾値tf_L1から上限閾値tf_U1までの間の許容範囲AR1に収まる場合、その吐出部270はインクを吐出可能な状態にあると判断され、許容範囲AR1に収まらない場合、ノズル48の目詰まりによりインクを吐出できない状態であると判断される。
【0062】
図9には、ランクR2に分類された吐出部270を検査するための判定閾値として、下限閾値tf_L2および上限閾値tf_U2を示した。ランクR2の吐出部270について検出された残留振動における最初の半周期を示す時間tf_R2が、下限閾値tf_L2から上限閾値tf_U2までの間の許容範囲AR2に収まる場合、その吐出部270はインクを吐出可能な状態にあると判断され、許容範囲AR2に収まらない場合、ノズル48の目詰まりによりインクを吐出できない状態であると判断される。
【0063】
図10には、ランクR3に分類された吐出部270を検査するための判定閾値として、下限閾値tf_L3および上限閾値tf_U3を示した。ランクR3の吐出部270について検出された残留振動における最初の半周期を示す時間tf_R3が、下限閾値tf_L3から上限閾値tf_U3までの間の許容範囲AR3に収まる場合、その吐出部270はインクを吐出可能な状態にあると判断され、許容範囲AR3に収まらない場合、ノズル48の目詰まりによりインクを吐出できない状態であると判断される。
【0064】
図11は、判定基準データ120の一例を示す説明図である。図11の判定基準データ120は、吐出部270毎にランクを示すランク情報122と、ランク毎に判定閾値を示す閾値情報124とを含む。本実施例では、判定基準データ120には、ランク情報122および閾値情報124がインクの色毎に用意されている。本実施例では、判定基準データ120のランク情報122には、ヘッド280における複数の吐出部270が、図7に示した三段階のランクR1,R2,R3に分類され、判定基準データ120の閾値情報124には、吐出部270における残留振動の周期を判定するための判定閾値として、図8ないし図10に示した下限閾値tf_L1〜3および上限閾値tf_U1〜3がランク毎に設定されている。
【0065】
A2.プリンターの動作:
図12は、プリンター10における制御部100が実行する検査処理(ステップS100)を示すフローチャートである。検査処理(ステップS100)は、ヘッドユニット200における複数の吐出部270を残留振動に基づいて検査する処理である。本実施例では、検査処理(ステップS100)は、制御部100のCPUがコンピュータープログラムに基づいて検査部102として動作することによって実現される。本実施例では、制御部100は、予め設定された時期や、ユーザーからの指示入力に基づいて、検査処理(ステップS100)を開始する。
【0066】
検査処理(ステップS100)を開始すると、制御部100は、複数の吐出部270の中から検査対象として吐出部270を一つ選定する(ステップS120)。本実施例では、制御部100は、インクの色毎にノズル番号の順に従って吐出部270を一つ選定する。
【0067】
検査対象として吐出部270を一つ選定した後(ステップS120)、制御部100は、判定基準データ120に基づいて、検査対象の吐出部270のランクに応じた判定閾値を設定する(ステップS125)。具体的には、制御部100は、判定基準データ120のランク情報122に基づいて、検査対象の吐出部270が分類されているランクを特定した後、判定基準データ120の閾値情報124に基づいて、検査対象のランクに応じた下限閾値tf_Lおよび上限閾値tf_Uを判定閾値として設定する。
【0068】
ランクに応じた判定閾値を設定した後(ステップS125)、制御部100は、検査対象の吐出部270における駆動素子66を駆動する(ステップS130)。具体的には、検査対象である一つの吐出部270に対応するシフト入力信号SIの指示データに[0,1]を設定し、その他の吐出部270に対応するシフト入力信号SIの指示データに[0,0]を設定して、シフト入力信号SIおよびクロック信号SCKと共に、図5に示すように、ラッチ信号LAT、駆動信号COMおよび検出実施信号DSELをヘッドユニット200に出力する。これによって、検査対象の吐出部270における各駆動素子66から残留振動に応じた電気信号SWが共通電路68に印加される。その際に、ヘッドユニット200の検出部290によって検出される共通電路68の電気信号HGNDは、検査対象の吐出部270における残留振動に応じた電気信号SWとなり、検出部290は、その検出結果として電気信号SWの検出値を示す検出信号POUTを制御部100に出力する。
【0069】
検査対象の駆動素子66を駆動した後(ステップS130)、制御部100は、ヘッドユニット200の検出部290から出力される検出信号POUTを通じて、電気信号SWの検出値を取得する(ステップS140)。本実施例では、制御部100は、残留振動に応じた電気信号SWの検出値として、電気信号SWにおける最初の半周期を示す時間tfを取得する。
【0070】
残留振動の検出値を取得した後(ステップS140)、制御部100は、判定処理(ステップS150)を実行する。判定処理(ステップS150)では、制御部100は、ヘッドユニット200の検出部290によって検出された電気信号SWに基づいて、検査対象である吐出部270の状態としてノズル48の目詰まり(インクの気泡混入および増粘)の有無を判定する。
【0071】
具体的には、制御部100は、残留振動の検出値として取得した時間tfと、判定基準データ120に基づいて判定閾値として設定した下限閾値tf_Lから上限閾値tf_Uまでの許容範囲ARとを比較する。制御部100は、時間tfが許容範囲AR内である場合、検査対象の吐出部270がインクを吐出可能な状態(目詰まり無しの状態)にあると判定する。他方、制御部100は、時間tfが下限閾値tf_Lよりも小さい場合、インクに気泡が発生したためにインクを吐出できない状態(気泡による目詰まり状態)と判定し、時間tfが上限閾値tf_Uよりも大きい場合、インクが増粘したためにインクを吐出できない状態(増粘による目詰まり状態)と判定する。
【0072】
判定処理(ステップS150)の後、制御部100は、判定処理(ステップS150)の判定結果を保存する(ステップS160)。その後、制御部100は、ヘッド280における吐出部270の全てを検査するまで判定処理(ステップS150)を繰り返し実行する(ステップS170:「NO」)。ヘッド280における吐出部270の全てについて検査を終えると(ステップS170:「YES」)、制御部100は、検査処理(ステップS100)を終了する。本実施例では、検査処理(ステップS100)の検査結果に応じて、制御部100は、ヘッドキャップ340を用いてヘッドユニット200をメンテナンスする処理を実行する。
【0073】
A3.ランク分け:
図13は、プリンター10および基準生成装置80を示す説明図である。基準生成装置80は、プリンター10の工場出荷時に、判定基準データ120を生成し、その判定基準データ120をプリンター10の基準記憶部104に書き込む装置である。
【0074】
本実施例では、基準生成装置80は、CPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェイスなどを備え、プリンター10と通信インターフェイス190を通じて電気的に接続可能なコンピューターである。基準生成装置80による各種の機能は、CPUがコンピュータープログラムに基づいて動作することによって実現されるが、他の実施形態において、基準生成装置80による機能の少なくとも一部は、基準生成装置80が備える電気回路がその回路構成に基づいて動作することによって実現されても良い。
【0075】
図14および図15は、基準生成装置80が実行するランク分け処理(ステップS600)を示すフローチャートである。ランク分け処理(ステップS600)は、図7に示したランク分けに基づく判定基準データ120を生成し、その判定基準データ120をプリンター10の基準記憶部104に書き込む処理である。本実施例では、ランク分け処理(ステップS600)は、基準生成装置80がコンピュータープログラムに基づいて動作することによって実現される。本実施例では、ヘッド280の吐出部270の全てがインクを吐出可能な状態であることが確認された工場出荷前のプリンター10に対して、基準生成装置80を取り扱う作業者によって基準生成装置80が接続された後、基準生成装置80は、作業者からの指示入力に基づいてランク分け処理(ステップS600)を開始する。
【0076】
ランク分け処理(ステップS600)を開始すると、基準生成装置80は、制御変数であるノズル番号nおよびランク番号mを初期化する(ステップS612)。本実施例では、基準生成装置80は、ノズル番号nおよびランク番号mを「0」に設定する。
【0077】
ノズル番号nおよびランク番号mを初期化した後、基準生成装置80は、ランク幅tf_RGおよびランク余裕値αを設定する(ステップS614)。ランク幅tf_RGは、一段階毎のランクの幅を時間tf_gの幅で示す値であり、ランク余裕値αは、判定閾値である下限閾値tf_Lおよび上限閾値tf_Uを算出するための時間tf_gに対する余裕を示す値である。本実施例では、ランク幅tf_RGおよびランク余裕値αは、プリンター10の設計者によって予め規定された値である。
【0078】
ランク幅tf_RGおよびランク余裕値αを設定した後(ステップS614)、基準生成装置80は、ノズル番号nをインクリメントしつつ(ステップS620)、そのノズル番号nの吐出部270における残留振動の検出値を取得することによって(ステップS630)、全ての吐出部270における残留振動の検出値を取得する(ステップS650)。具体的には、基準生成装置80は、ノズル番号nを指定して残留振動の検出値をプリンター10に要求し、その要求に応じて、プリンター10は、検査処理(ステップS100)と同様にノズル番号nに対応する吐出部270を駆動して残留振動を検出した後、その検出結果である残留振動の検出値を基準生成装置80に提供する。本実施例では、基準生成装置80は、残留振動の検出値として、その残留振動に応じた電気信号SW_gにおける最初の半周期を示す時間tf_gを取得する。
【0079】
残留振動の検出値である時間tf_gの取得に併せて(ステップS630)、基準生成装置80は、最大の検出値を最大値tf_Maxに設定し(ステップS642:「YES」、S644)、最小の検出値を最小値tf_Minに設定する(ステップS646:「YES」、S648)。
【0080】
図15の説明に移り、全ての吐出部270についての検出値を取得した後(ステップS650:「YES」)、基準生成装置80は、最大値tf_Max、最小値tf_Minおよびランク幅tf_RGに基づいて、複数の吐出部270を分類するためのランクの数であるランク数R_Numを算出する(ステップS660)。
【0081】
ランク数R_Numを算出した後(ステップS660)、基準生成装置80は、最大値tf_Max、ランク幅tf_RGおよびランク余裕値αに基づいて、ランク毎に上限閾値tf_Uおよび下限閾値tf_Lを算出する(ステップS670,S672,S674,S678)。本実施例では、複数の吐出部270を分類するための各ランクは、最大値tf_Maxから順にランク幅tf_RGを取った時間tf_gの範囲に設定される。
【0082】
ランク毎に上限閾値tf_Uおよび下限閾値tf_Lを算出した後(ステップS658:「YES」)、基準生成装置80は、プリンター10から取得済みである各吐出部270の時間tf_gが、最大値tf_Maxから順にランク幅tf_RGを取った時間tf_gの範囲である複数のランクのいずれに該当するかを判断することによって、各吐出部270をランク分けする(ステップS682,S684,S686,S688)。
【0083】
全ての吐出部270をランク分けした後(ステップS688:「YES」)、基準生成装置80は、ランク分けの結果、およびランク毎に算出した上限閾値tf_Uおよび下限閾値tf_Lに基づいて、判定基準データ120を生成する(ステップS692)。判定基準データ120を生成した後(ステップS692)、基準生成装置80は、プリンター10における制御部100の基準記憶部104に判定基準データ120を書き込み(ステップS694)、ランク分け処理(ステップS600)を終了する。
【0084】
A4.効果:
以上説明した第1実施例のプリンター10によれば、ヘッド280における複数の吐出部270は、インクを吐出可能な状態での残留振動における最初の半周期を示す時間tf_gの分布領域に応じて複数のランクR1,R2,R3に分類され、ランク毎に判定基準が判定基準データ120に設定されているため、許容範囲の過大な拡張に起因する検査の誤判定を防止することができる。
【0085】
また、残留振動の周期に関する時間tf_gに応じて複数の吐出部270が複数のランクR1,R2,R3に分類され、判定基準データ120の閾値情報124における判定閾値が残留振動の周期に関する時間tf_gであることから、ランク毎の検査を容易に行うことができる。また、判定基準データ120を予め記憶する基準記憶部104を備えることから、予め用意された判定基準に基づいて検査を実施することができる。
【0086】
B.第2実施例:
第2実施例のプリンター10は、基準記憶部104に予め記憶されている判定基準データ120が異なる点を除き、第1実施例と同様である。第2実施例の判定基準データ120は、第1実施例とは異なるランク分けに基づくデータである点を除き、第1実施例と同様である。
【0087】
図16は、第2実施例における吐出部270のランク分けの一例を示す説明図である。図16には、縦軸に時間、横軸にノズル番号を設定して、インクを吐出可能な状態にある各吐出部270において検出された残留振動の検出値として、残留振動における最初の半周期を示す時間tf_gを図示した。図16に示す時間tf_gは、ヘッド280における複数の吐出部270のうち、同じ色のインクを吐出するn個の吐出部270に関するものである。
【0088】
図16に示すように、各吐出部270の位置関係や製造誤差などに起因して、時間tf_gにはバラツキがある。第1実施例における時間tf_gは、ノズル番号に関係なく分散していたが、第2実施例における時間tf_gは、ノズル番号の増加に従って短くなる傾向がある。本実施例では、ヘッド280における複数の吐出部270は、インクの色毎に、ノズル番号が連続するように、時間tf_gの分布に応じて四段階のランクR1,R2,R3,R4に分類されている。本実施例では、各ランクにおける時間tf_gの分布幅は同じであり、ランクR1,R2,R3,R4の順にランク番号が大きくなる。
【0089】
図17および図18は、第2実施例において基準生成装置80が実行するランク分け処理(ステップS700)を示すフローチャートである。第2実施例の基準生成装置80は、ランク分け処理(ステップS600)に代えてランク分け処理(ステップS700)を実行する点を除き、第1実施例と同様である。
【0090】
ランク分け処理(ステップS700)を開始すると、基準生成装置80は、制御変数であるノズル番号nおよびランク番号mを初期化する(ステップS712)。本実施例では、基準生成装置80は、ノズル番号nおよびランク番号mを「0」に設定する。
【0091】
ノズル番号nおよびランク番号mを初期化した後、基準生成装置80は、ランク幅tf_RGおよびランク余裕値αを設定する(ステップS714)。ランク幅tf_RGは、一段階毎のランクの幅を時間tf_gの幅で示す値であり、ランク余裕値αは、判定閾値である下限閾値tf_Lおよび上限閾値tf_Uを算出するための時間tf_gに対する余裕を示す値である。本実施例では、ランク幅tf_RGおよびランク余裕値αは、プリンター10の設計者によって予め規定された値である。
【0092】
ランク幅tf_RGおよびランク余裕値αを設定した後(ステップS714)、基準生成装置80は、ランク番号mおよびノズル番号nをインクリメントし(ステップS716)、開始ノズル番号n_Iをノズル番号nの値に設定する。開始ノズル番号n_I(m)は、ランク番号mに対応するランクにおける最初のノズル番号を示す。例えば、開始ノズル番号n_I(1)は、ランク番号1に対応するランクR1における最初のノズル番号を示し、開始ノズル番号n_I(2)は、ランク番号2に対応するランクR2における最初のノズル番号を示す。
【0093】
開始ノズル番号n_Iを設定した後(ステップS718)、基準生成装置80は、ノズル番号nをインクリメントしつつ(ステップS720)、そのノズル番号nの吐出部270における残留振動の検出値を取得することによって(ステップS730)、ノズル番号nの順に残留振動の検出値を取得する(ステップS750:「YES」,S752:「NO」)。具体的には、基準生成装置80は、ノズル番号nを指定して残留振動の検出値をプリンター10に要求し、その要求に応じて、プリンター10は、検査処理(ステップS100)と同様にノズル番号nに対応する吐出部270を駆動して残留振動を検出した後、その検出結果である残留振動の検出値を基準生成装置80に提供する。本実施例では、基準生成装置80は、残留振動の検出値として、その残留振動に応じた電気信号SW_gにおける最初の半周期を示す時間tf_gを取得する。
【0094】
残留振動の検出値である時間tf_gの取得に併せて(ステップS730)、基準生成装置80は、最大の検出値を最大値tf_Maxに設定し(ステップS742:「YES」、S744)、最小の検出値を最小値tf_Minに設定し(ステップS746:「YES」、S748)、最大値tf_Maxと最小値tf_Minとの差がランク幅tf_RG以下であるか否かを判断する(ステップS750)。最大値tf_Maxと最小値tf_Minとの差がランク幅tf_RG以下であり(ステップS750:「YES」)、全ての吐出部270について検出値を取得していない場合(ステップS752:「NO」)、基準生成装置80は、検出値の取得(ステップS730)を繰り返す。
【0095】
最大値tf_Maxと最小値tf_Minとの差がランク幅tf_RGを超えた場合(ステップS750:「NO」)、基準生成装置80は、最大値tf_Maxおよび最小値tf_Minを、一つ前のノズル番号(nー1)について検出値を取得した際の値に戻し(ステップS762)、ノズル番号nをデクリメントする(ステップS764)。
【0096】
ノズル番号nのデクリメント後(ステップS764)、または全ての吐出部270について検出値を取得している場合(ステップS752:「YES」)、基準生成装置80は、終了ノズル番号n_Eをノズル番号nの値に設定する。終了ノズル番号n_E(m)は、ランク番号mに対応するランクにおける最後のノズル番号を示す。例えば、終了ノズル番号n_E(1)は、ランク番号1に対応するランクR1における最後のノズル番号を示し、終了ノズル番号n_E(2)は、ランク番号2に対応するランクR2における最後のノズル番号を示す。
【0097】
終了ノズル番号n_E(m)を設定した後(ステップS768)、基準生成装置80は、処理中のランク番号mに対応するランクの判定閾値として、最大値tf_Maxおよびランク余裕値αに基づいて上限閾値tf_Uを算出し(ステップS772)、最小値tf_Minおよびランク余裕値αに基づいて下限閾値tf_Lを算出する(ステップS774)。本実施例では、基準生成装置80は、上限閾値tf_Uおよび下限閾値tf_Lの算出を終えると、最大値tf_Maxおよび最小値tf_Minを初期化する。
【0098】
上限閾値tf_Uおよび下限閾値tf_Lを算出した後(ステップS772,S774)、基準生成装置80は、全ての吐出部270について検出値を取得しているか否かを判断する(ステップS780)。全ての吐出部270について検出値を取得していない場合(ステップS780:「NO」)、基準生成装置80は、ランク番号mおよびノズル番号nのインクリメント(ステップS716)からの処理を繰り返し実行することによって、後続のランクについても、開始ノズル番号n_I、終了ノズル番号n_E、上限閾値tf_Uおよび下限閾値tf_Lを決定する。
【0099】
全ての吐出部270について検出値を取得している場合(ステップS780:「YES」)、基準生成装置80は、ランク分けの結果、およびランク毎に算出した上限閾値tf_Uおよび下限閾値tf_Lに基づいて、判定基準データ120を生成する(ステップS792)。判定基準データ120を生成した後(ステップS792)、基準生成装置80は、プリンター10における制御部100の基準記憶部104に判定基準データ120を書き込み(ステップS794)、ランク分け処理(ステップS600)を終了する。
【0100】
以上説明した第2実施例のプリンター10によれば、ヘッド280における複数の吐出部270は、インクを吐出可能な状態での残留振動における最初の半周期を示す時間tf_gの分布に応じてノズル番号が連続するように複数のランクR1,R2,R3,R4に分類され、ランク毎に判定基準が判定基準データ120に設定されているため、第1実施例と同様に、許容範囲の過大な拡張に起因する検査の誤判定を防止することができる。
【0101】
C.第3実施例:
図19は、第3実施例のプリンター10を示す説明図である。第3実施例のプリンター10は、基準生成部106を備える点を除き、第1実施例と同様である。
【0102】
プリンター10の基準生成部106は、複数の吐出部270の各々における残留振動の特性に応じて判定基準データ120を生成する。本実施例では、基準記憶部104における判定基準データ120は、当初、プリンター10の工場出荷時に予め記憶されたものであるが、プリンター10の累積稼働時間が設定値を超えた場合や、ヘッド280が交換された場合、基準生成部106は、判定基準データ120を新たに生成し、基準記憶部104の判定基準データ120を更新する。
【0103】
本実施例では、基準生成部106は、第1実施例の基準生成装置80によるランク分け処理(ステップS600)と同様に判定基準データ120を生成するが、他の実施形態において、第2実施例の基準生成装置80によるランク分け処理(ステップS700)と同様に判定基準データ120を生成しても良い。本実施例では、基準生成部106の機能は、制御部100のCPUがコンピュータープログラムに基づいて動作することによって実現される。
【0104】
第3実施例のプリンター10によれば、ランク毎に判定基準が判定基準データ120に設定されているため、第1実施例と同様に、許容範囲の過大な拡張に起因する検査の誤判定を防止することができる。また、基準生成部106によって判定基準データ120を生成するため、複数の吐出部270における残留振動特性の変化に応じて判定基準を更新することができる。
【0105】
D.その他の実施形態:
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。
【0106】
例えば、上述の実施例では、吐出部270における残留振動を感知する感知部として駆動素子66を利用したが、他の実施形態において、駆動素子66とは別に、残留振動を感知する専用のセンサーを適用しても良い。
【0107】
また、上述の実施例では、インク滴を吐出させることなく残留振動を発生させる印加レベルで駆動素子66を駆動させて残留振動を検出したが、他の実施形態において、インク滴を吐出させる印加レベルで駆動素子66を駆動させて残留振動を検出しても良い。
【0108】
また、上述の実施例では、印刷媒体90に対する印刷とは異なるタイミングで検査処理(ステップS100)を実施したが、他の実施形態において、印刷媒体90に対する印刷を実行中に、残留振動に応じた電気信号SWに基づいて吐出部270を検査しても良い。
【0109】
また、上述の実施例では、残留振動における最初の半周期を示す時間tfに基づいて検査処理(ステップS100)を実施したが、他の実施形態において、残留振動の周期、位相および振幅の少なくとも一つの判定に用いられる判定閾値を判定基準データ120に設定しておき、残留振動の周期、位相および振幅の少なくとも一つに基づいて検査処理(ステップS100)を実施しても良い。
【0110】
また、上述の実施例では、各吐出部270における駆動素子を駆動させる駆動信号の信号レベルは電圧V1の一つであったが、他の実施形態において、ランク毎に更に駆動信号の信号レベル(例えば、電圧、電流、電力量など)に応じた判定基準を判定基準データ120に設定しておき、駆動信号の信号レベルに応じて検査処理(ステップS100)を実施しても良い。これによって、駆動信号の信号レベルに応じて変化する残留振動の特性を考慮して、残留振動に基づく検査の誤判定を一層防止することができる。
【0111】
また、上述の実施例では、複数の吐出部270は、残留振動における最初の半周期を示す時間tfに基づいてランク分けされているが、他の実施形態において、残留振動の再現性、周期、位相および振幅の少なくとも一つの特性に応じてランク分けされても良い。
【0112】
また、複数の吐出部270をランク分けしたランクの数は、二つ以上であって吐出部270の総数よりも少ない数に適宜設定することができる。
【0113】
上述した実施例では、液体吐出装置の一例として、インクを吐出するインクジェットプリンターについて説明したが、本発明の液体吐出装置が吐出する液体は、インクに限るものではなく、各種の液体の他、液体中や気体中に固体が分散した状態の流体であっても良い。例えば、本発明は、インクジェット方式のプリンターに限るものではなく、他の方式のプリンターに適用することもできる。また、液晶ディスプレー、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、および面発光ディスプレー(Field Emission Display、FED)等の製造に用いられ、電極材や色材などの材料を分散や溶解の状態で含む液状体を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、バイオチップの製造に用いられ、生体有機物を含有する液体を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、精密ピペットとして用いられ、試料となる液体を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する吐出装置や、光通信素子に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)を形成するために紫外線硬化性樹脂を始めとする透明樹脂液を吐出する吐出装置に適用することもできる。また、ウェハーをエッチングするためのエッチング液を吐出する吐出装置や、トナーを始めとする粉体を吐出する吐出装置に適用することもできる。
【符号の説明】
【0114】
10…プリンター
40…導入路
42…リザーバー
44…供給口
46…キャビティー
48,48k,48c,48m,48y…ノズル
52…シフトレジスター
54…ラッチ回路
56…レベルシフター
58…スイッチ
59…抵抗
62…共通電路
64…スイッチ
66…駆動素子
67…振動板
68…共通電路
80…基準生成装置
90…印刷媒体
100…制御部
102…検査部
104…基準記憶部
106…基準生成部
120…判定基準データ
122…ランク情報
124…閾値情報
170…フレキシブルケーブル
180…ユーザーインターフェイス
190…通信インターフェイス
200…ヘッドユニット
210…キャリッジ
220…インクカートリッジ
270…吐出部
280…ヘッド
290…検出部
312…キャリッジモーター
314…駆動ベルト
322…搬送モーター
324…プラテン
330…ヘッドワイパー
340…ヘッドキャップ
662…電極
664…圧電体
666…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティーに連通するノズルから前記キャビティー内の液体を駆動素子の駆動により吐出する複数の吐出部と、
前記キャビティー内の液体の振動であって前記駆動素子の駆動により残留する残留振動を検出する検出部と、
前記検出部による前記残留振動の検出値に基づいて前記吐出部を検査する検査部と
を備え、
前記複数の吐出部は、各々における残留振動の特性に応じて、前記複数の吐出部の総数よりも少ない数の複数のランクに分類され、
前記検査部は、前記複数のランクに応じた判定基準に従って、前記検出値に基づく前記吐出部の検査を行う、液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記判定基準は、前記ランク毎に設定した判定閾値を含み、
前記判定閾値は、残留振動の周期、位相および振幅の少なくとも一つの判定に用いられる閾値を含む、液体吐出装置。
【請求項3】
前記判定基準は、前記複数のランクに加え、前記駆動素子を駆動させる駆動信号の信号レベルにも応じた基準である、請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
更に、前記判定基準を予め記憶する基準記憶部を備える請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
更に、前記複数の吐出部の各々における残留振動の特性に応じて前記判定基準を生成する基準生成部を備える請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記複数の吐出部は、各々における残留振動の再現性、周期、位相および振幅の少なくとも一つの特性に応じて前記複数のランクに分類される、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
キャビティーに連通するノズルから前記キャビティー内の液体を駆動素子の駆動により吐出する複数の吐出部を検査する検査方法であって、
前記キャビティー内の液体の振動であって前記駆動素子の駆動により残留する残留振動を検出する検出工程と、
前記検出工程による前記残留振動の検出値に基づいて前記吐出部を検査する検査工程と
を備え、
前記複数の吐出部は、各々における残留振動の特性に応じて、前記複数の吐出部の総数よりも少ない数の複数のランクに分類され、
前記検査において、前記ランクに応じた判定基準に従って、前記検出値に基づく前記吐出部の検査を行う、検査方法。
【請求項8】
キャビティーに連通するノズルから前記キャビティー内の液体を駆動素子の駆動により吐出する複数の吐出部を検査する機能をコンピューターに実現させるためのプログラムであって、
前記キャビティー内の液体の振動であって前記駆動素子の駆動により残留する残留振動を検出する検出機能と、
前記検出機能による前記残留振動の検出値に基づいて前記吐出部を検査する検査機能と
を実現させ、
前記複数の吐出部は、各々における残留振動の特性に応じて、前記複数の吐出部の総数よりも少ない数の複数のランクに分類され、
前記検査機能は、前記ランクに応じた判定基準に従って、前記検出値に基づく前記吐出部の検査を行う、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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