液体吐出装置、異物検査方法及びそのプログラム
【課題】電極のうち特定の領域に異物があることを検出する。
【解決手段】まず、第1電極側検査領域82aの第1小領域84aとノズルプレート63とを対向した状態にして(a)ノイズ検査を行う。そして、ノイズなしと判定したときには第2小領域84aとノズルプレート63とを対向した状態にして(b)ノイズ検査を行う。このように第1〜第16小領域84a〜84pまで順次ノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行い、ノイズ検査によりノイズありと判定したときの第1電極側検査領域82aとノズルプレート63との位置関係(c)に基づいて、第1電極側検査領域82aのうちの異物領域(第6小領域84f)を特定する。
【解決手段】まず、第1電極側検査領域82aの第1小領域84aとノズルプレート63とを対向した状態にして(a)ノイズ検査を行う。そして、ノイズなしと判定したときには第2小領域84aとノズルプレート63とを対向した状態にして(b)ノイズ検査を行う。このように第1〜第16小領域84a〜84pまで順次ノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行い、ノイズ検査によりノイズありと判定したときの第1電極側検査領域82aとノズルプレート63との位置関係(c)に基づいて、第1電極側検査領域82aのうちの異物領域(第6小領域84f)を特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、異物検査方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体吐出装置として、ヘッドに形成された複数のノズルから吐出される液体を第1電位にする第1電極と、その第1電位とは異なる第2電位である第2電極との間に電圧を印加した状態で、複数のノズルから第2電極に向かって順次液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて各ノズルから液体が吐出されたか否かを判定するものが知られている。このようにノズルから液体が吐出されたか否かを判定する処理は、ノズル検査あるいは吐出検査と称される。また、この吐出検査における誤判定を防止するために、ノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出するノイズ検査を行うことが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の液体吐出装置では、ノズルプレートに1000個を超えるノズルが形成されたヘッドの吐出検査として、15個のノズルを1つのブロックとし、ブロックごとにノズルの吐出検査を行う。また、1ブロックの吐出検査を行うごとに、1つのノイズ検査期間(非吐出ダミー期間ともいう)を設け、この期間中にノイズが発生したか否かによって、吐出検査中にノイズが混入したか否かを検査する。そして、ノイズ検査期間中にノイズが発生しなければ、その直前のブロックの吐出検査を有効とし、ノイズが発生したならば、その直前のブロックの吐出検査を無効として再度吐出検査を行う。また、吐出検査を繰り返してもノイズがなくならない場合には、ノイズを解消するための改善動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−64309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ノイズの原因は電極に付着したインクや埃などの異物である場合が多い。そして、上述した従来のノイズ検査では、ノイズの発生の有無により異物の有無が検出できるに過ぎなかった。しかし、例えば異物を除去する際などにおいて、異物のある位置を特定したいという要望があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、電極のうち特定の領域に異物があることを検出することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、
前記液体と接触する第1電極と、
前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う吐出検査手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うノイズ検査手段と、
前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する異物判定手段と、
を備えたものである。
【0008】
この液体吐出装置では、第1電極と第2電極とを吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行う。そして、ノイズ検査手段によりノイズ検査でノイズが検出されたときには、第1電極又は第2電極のうち、ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する。こうすれば、ノイズ検査時の相対位置が吐出検査時と異なることで、吐出検査時に第1電極と第2電極とが対向する領域のうちの一部の領域についてノイズ検査を行うことができる。これにより、第1電極又は第2電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0009】
本発明の液体吐出装置において、前記第2電極は、該第2電極の一部の領域である小領域を複数有しており、前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第2電極の複数の小領域を順に前記第1電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第2電極のうち複数の小領域について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。なお、前記第2電極の小領域は、外観上視認できる領域である必要はなく、ノイズ検査手段が移動手段により第2電極の複数の小領域を順に第1電極と対向させて複数回のノイズ検査を行うことができればよい。例えば、ノイズ検査手段が複数の小領域の位置,大きさ等を予め記憶していたり、予め記憶した記憶手段から読み出したりするものとしてもよい。このとき、複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定するに際して、前記複数回のノイズ検査によりノイズが検出されたときには、前記第2電極のうち該ノイズが検出された相対位置において前記第1電極と対向する1以上の小領域に異物ありと判定するものとしてもよい。また、前記第2電極の複数の小領域は、該第2電極の少なくとも一部の領域をX方向に分割し且つ該X方向とは異なるY方向に分割してなる領域であり、前記移動手段は、前記第1電極と前記第2電極とをX方向及びY方向に相対的に移動可能な手段であるものとしてもよい。
【0010】
本発明の液体吐出装置において、前記第1電極は、該第1電極の一部の領域である小領域を複数有しており、前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第1電極の複数の小領域を順に前記第2電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第1電極のうち複数の小領域について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。なお、前記第1電極の小領域は、外観上視認できる領域である必要はなく、ノイズ検査手段が移動手段により第1電極の複数の小領域を順に第2電極と対向させて複数回のノイズ検査を行うことができればよい。例えば、ノイズ検査手段が複数の小領域の位置,大きさ等を予め記憶していたり、予め記憶した記憶手段から読み出したりするものとしてもよい。このとき、複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定するに際して、前記複数回のノイズ検査によりノイズが検出されたときには、前記第1電極のうち該ノイズが検出された相対位置において前記第2電極と対向する1以上の小領域に異物ありと判定するものとしてもよい。また、前記第1電極の小領域は、該第1電極の少なくとも一部の領域をX方向に分割し且つ該X方向とは異なるY方向に分割してなる領域であり、前記移動手段は、前記第1電極と前記第2電極とをX方向及びY方向に相対的に移動可能な手段であるものとしてもよい。
【0011】
本発明の液体吐出装置において、前記第2電極に対向可能な第3電極を備え、前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第2電極と前記第3電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第2電極側に異物があると判定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第3電極を用いて第1電極と第2電極とのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0012】
本発明の液体吐出装置において、前記第1電極に対向可能な第4電極を備え、前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第1電極と前記第4電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第1電極側に異物があると判定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第4電極を用いて第1電極と第2電極とのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0013】
本発明の液体吐出装置において、前記異物判定手段は、前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極との相対位置を変えて前記ノイズ検査手段により追加のノイズ検査を行わせ、該追加のノイズ検査の結果に基づいて第1電極又は前記第2電極のうちいずれの側に異物があるかを特定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、追加のノイズ検査を行うことで異物のある領域をより細かく特定することができる。この場合において、前記異物判定手段は、前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、該ノイズが検出された相対位置において前記第1電極及び前記第2電極の対向する領域のうち一方の電極の領域が他方の電極と対向し他方の電極の領域が一方の電極と対向しない相対位置で、前記ノイズ検査手段により追加のノイズ検査を行わせ、該追加のノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記一方の電極の領域側に異物ありと判定する手段であるものとしてもよい。
【0014】
本発明の液体吐出装置において、前記第2電極のうち、前記異物判定手段により異物ありと判定された領域に前記液体を吐出するよう前記ヘッドを制御するヘッド制御手段を備えたものとしてもよい。こうすれば、第2電極のうち異物ありと判定された領域に吐出された液体により異物を除去するか又は第1電極と異物との距離を離すことができ、以降の異物に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触する第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられ自らの一部の領域である小領域を複数有している第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段により前記第2電極の複数の小領域を順に前記第1電極と対向させて、両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出するノイズ検査を複数回行うノイズ検査手段と、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する異物判定手段と、を備えたものであってもよい。こうすれば、第2電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0016】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触し自らの一部の領域である小領域を複数有している第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段により前記第1電極の複数の小領域を順に前記第2電極と対向させて、両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出するノイズ検査を複数回行うノイズ検査手段と、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する異物判定手段と、を備えたものであってもよい。こうすれば、第1電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0017】
本発明の異物検査方法は、
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触する第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、を備え、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う液体吐出装置の異物検査方法であって、
(a)前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うステップと、
(b)前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定するステップと、
を含むものである。
【0018】
この異物検査方法では、ノイズ検査時の相対位置が吐出検査時と異なることで、吐出検査時に第1電極と第2電極とが対向する領域のうちの一部の領域についてノイズ検査を行うことができる。これにより、第1電極又は第2電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。なお、この異物検査方法において、上述した液体吐出装置の種々の態様を採用してもよいし、上述した液体吐出装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0019】
本発明のプログラムは、上述した異物検査方法の各ステップをコンピューターに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターに配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムをコンピューターに実行させれば、上述した本発明の異物検査方法の各ステップが実現されるため、本発明の異物検査方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェット型のプリンター10の構成を表すブロック図。
【図2】プリンター10の概略断面図。
【図3】プリンター10の概略平面図。
【図4】ヘッドユニット60における複数のヘッド62の配置を示す説明図。
【図5】第1ヘッド62aに形成された複数のノズルの配置を示す説明図。
【図6】印刷の様子を示す説明図。
【図7】検査ユニット70の全体構成を表す説明図。
【図8】検査電極72の平面図。
【図9】駆動信号COMとそれに対応した検出信号とを示す説明図。
【図10】検出信号及び検出制御部での判定結果の一例を示す説明図。
【図11】第1ヘッド62aが有するノズルをブロック分けしたときのテーブル。
【図12】ノズルの統合判定ルーチンのフローチャート。
【図13】検出制御部76のメモリーに格納されたデータの説明図。
【図14】デジタル信号出力ルーチンのフローチャート。
【図15】検出制御部76の送信用レジスターのデータの一例を示す説明図。
【図16】統合判定の結果の一例を示す説明図。
【図17】異物特定処理のフローチャート。
【図18】切り分け処理のフローチャート。
【図19】ステップS500の前後の様子を示す説明図。
【図20】第1電極側検査領域82aの複数の小領域84a〜84pを示す説明図。
【図21】電極側異物領域特定処理のフローチャート。
【図22】電極側異物領域特定処理を行う様子を示す説明図。
【図23】ヘッド側異物領域特定処理のフローチャート。
【図24】ヘッド側異物領域特定処理を行う様子を示す説明図。
【図25】変形例の異物特定処理のフローチャート。
【図26】異物候補領域特定処理のフローチャート。
【図27】異物候補領域特定処理を行う様子を示す説明図。
【図28】変形例の切り分け処理のフローチャート。
【図29】異物のある領域を大まかに特定する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を具現化した一実施形態について説明する。図1はインクジェット型のプリンター10の構成を表すブロック図、図2はプリンター10の概略断面図、図3はプリンター10の概略平面図である。
【0022】
プリンター10は、パーソナルコンピューターPCと通信可能に接続され、パーソナルコンピューターPCから印刷データを入力し、その印刷データに基づいて紙や布などの印刷媒体Sに画像を印刷する。このプリンター10は、種々の制御を実行したり指令を出力したりするコントローラー20と、コントローラー20と信号のやり取りを行いながら各種処理を実行するユニット群30とを備えている。
【0023】
コントローラー20は、プリンター10の全体の制御を司るCPU22と、ユニット群30の各ユニットを制御するユニット制御回路24とを備えている。CPU22は、ユニット群30に備えられた各種検出器から入力した検出信号やインターフェース部26を介してパーソナルコンピューターPCから受信した印刷データに基づいて、メモリー28に記憶された各種プログラムを実行し、メモリー28にデータを一時記憶しながらユニット制御回路24を介して各ユニットを制御する。ユニット群30には、印刷媒体Sを搬送する搬送ユニット40、ヘッドユニット60を移動する移動ユニット50、ノズルからインクが吐出するようヘッド62を駆動するヘッドユニット60、ヘッド62に形成されたノズルの検査を行う検査ユニット70などが含まれる。搬送ユニット40は、図2及び図3に示すように、モーター駆動される上流側ローラー42及び下流側ローラー44によってロール状の印刷媒体Sを搬送方向(X方向)の上流側から下流側へ搬送し、巻取機構46によって巻き取るものである。印刷媒体Sは、両ローラー42,44の間の印刷領域においてプラテン48の下側からバキューム吸着される。これにより、印刷中の印刷媒体Sの位置が固定される。移動ユニット50は、図2及び図3に示すように、ヘッドユニット60を印刷媒体Sの搬送方向(X方向)と印刷媒体Sの幅方向(Y方向)に自在に移動させるものである。この移動ユニット50は、X軸ステージ52によってヘッドユニット60をX方向に移動させ、Y軸ステージ54によってヘッドユニット60をX軸ステージ52と共にY方向に移動させる。ヘッドユニット60は、図3に示すように、複数のノズルを有するヘッド62を備え、コントローラー20からの駆動信号によってノズルからインクを印刷媒体Sに向かって吐出させるものである。このヘッドユニット60は、後述するように複数のヘッド62を備えている。各ヘッド62は、ピエゾ素子を用いて圧力によりインクを吐出する。検査ユニット70は、ノズルの詰まりの有無を検査するものであり、図3に示すように、ヘッドユニット60のヘッド62と対向可能な位置に検査電極72を備えている。この検査ユニット70の詳細については後述する。
【0024】
ヘッドユニット60について、更に詳しく説明する。図4は、ヘッドユニット60における複数のヘッド62の配置を示す説明図である。なお、図中では、ヘッド62の配置をプリンター10の上面から透視した状態を示した。図4に示すように、ヘッドユニット60は、15個のヘッド62を有する。15個のヘッド62は、Y方向に沿ってジグザグに並んでいる。説明の便宜上、Y方向の上端側から下端側に向かって、第1ヘッド62a,第2ヘッド62b,……、第14ヘッド62n,第15ヘッド62oと称することにする。このため、奇数番目のヘッド62a,62c,62e……はY方向に平行となるように直線状の列をなし、偶数番目のヘッド62b,62d,62f……はその隣でY方向に平行となるように直線状の列をなす。
【0025】
図5は、第1ヘッド62aに形成された複数のノズルの配置を示す説明図である。なお、図中では、ノズルの配置を第1ヘッド62aの上面から透視した状態を示した。また、第2ヘッド62b〜第15ヘッド62oはいずれも第1ヘッド62aと同じ構成である。第1ヘッド62aは、8色のノズル列を有している。具体的には、図5の左側から順に、マットブラックインクを吐出するMk列、グリーンインクを吐出するGr列、オレンジインクを吐出するOr列、クリアインクを吐出するCl列、フォトブラックインクを吐出するPk列、シアンインクを吐出するCy列、マゼンタインクを吐出するMa列、イエローインクを吐出するYe列である。各ノズル列は、180個のノズルを有する。180個のノズルは、Y方向に沿って、一定のノズルピッチ(1/180インチ)で並んでいる。説明の便宜上、Y方向の上端側のノズルから順に#1,#2,……,#180と称することにする。第1ヘッド62bの各ノズル列と第2ヘッド62bの各ノズル列とを見ると、第1ヘッド62aのY方向の下端側の4つのノズルのそれぞれのY座標位置は、第2ヘッド62bのY方向の上端側の4つのノズルのそれぞれのY座標位置と一致している。このようにY座標位置が同じ2つのノズルは、互いに補間し合いながらドットを形成することが可能である。こうした関係は、第αヘッドと第(α+1)ヘッド(αは1〜14までの整数)との間でも同様である。
【0026】
こうしたヘッドユニット60を用いて印刷媒体Sに印刷する手順を以下に概説する。まず、図2及び図3において、コントローラー20は、印刷領域に印刷媒体Sの新しい面が供給されるよう搬送ユニット40を制御すると共に、ヘッドユニット60が初期位置に来るように移動ユニット50を制御する。なお、初期位置とは、印刷領域におけるX方向の最上流の位置で且つY方向の最上端の位置である。初期位置に配置されているヘッドユニット60を、図2及び図3中、実線で示す。そして、コントローラー20は、ヘッドユニット60が印刷領域のX方向の最上流の位置から最下流の位置(図2及び図3中、1点鎖線で示す)まで移動するよう移動ユニット50を制御すると同時に、移動中のヘッド62のノズルからインクが吐出するようヘッドユニット60を制御することにより、X方向に並ぶドット列を形成する。この動作を1パスと称する。こうして1パス分のドット列を形成した後、コントローラー20は、ヘッドユニット60がY方向の下端側に移動するよう移動ユニット50を制御し、再び次の1パスを実行してX方向のドット列を形成する。Y方向の下端側に移動したヘッドユニット60の一例を図3の2点鎖線で示す。そして、印刷媒体Sの幅方向に応じて決まるパス数の動作を終了したとき、印刷媒体Sの印刷領域の画像が完成する。図6は、印刷の様子を示す説明図である。図6では、説明の便宜上、5つのノズルがY方向に平行に1列に並んだノズル列を例示した。この図6では、パス1〜パス4までの合計4パス分のX方向のドット列が順次形成されていく様子を示した。
【0027】
検査ユニット70について、以下に詳しく説明する。検査ユニット70は、検査回路71を備えている。検査回路71は、基本的には2つのヘッド62に1つの割合で形成されており、本実施形態ではヘッド数が15個であるため、それに対応して検査回路71は8個形成されている。説明の便宜上、8個の検査回路71を第1検査回路71A,第2検査回路71B,・・・と称することにする。図7は検査ユニット71の検査回路71のうちの1つの構成を表す説明図である。この検査回路71は、ヘッド62に形成されたノズルから吐出されたインクを受ける金属板状の検査電極72と、この検査電極72とヘッド62のノズルプレート63との間に電圧を印加する高圧電源74と、検査電極72とノズルプレート63との間に電圧を印加した状態でノズルからインクを吐出させたときの電圧信号に基づいてその信号の大小を判定する検出制御部76とを備えている。なお、ノズルプレート63は複数のノズルが形成されたプレートであり、検査ユニット70の一部としても機能するものである。また、ノズルプレート63のうち後述するノズル検査を行う際に検査電極72と対向する領域をヘッド側検査領域81と称し、検査電極72のうち後述するノズル検査を行う際にノズルプレート63と対向する領域を電極側検査領域82と称する。本実施形態では、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面(図7の下面)全てである。一方、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の面(図7の上面)のうち予め定められた一部の領域である。
【0028】
上述したように、検査回路71は基本的には2つのヘッド62に1つの割合で形成されているため、検査電極72も同様に、基本的には2つのヘッド62に1つの割合で形成され、1つの検査電極72は2つの電極側検査領域82を有している。図8に検査電極72の平面図を示す。本実施形態では、ヘッド数は15個であるため、それに対応して検査電極72は8個形成され、電極側検査領域82は15個存在している。説明の便宜上、8個の検査電極72を第1検査電極72A,第2検査電極72B,……と称し、15個の電極側検査領域82を第1電極側検査領域82a,第2電極側検査領域82b,……と称することにする。具体的には、図8に示すように、第1検査電極は第1電極側検査領域82aと第3電極側検査領域82cとを有し、第2検査電極72Bは第5電極側検査領域82eと第7電極側検査領域82gとを有し、第3検査電極72Cは第9電極側検査領域82iと第11電極側検査領域82kとを有し、第4検査電極72Dは第13電極側検査領域82mと第15電極側検査領域82oとを有し、第5検査電極72Eは第2電極側検査領域82bと第4電極側検査領域82dとを有し、第6検査電極72Fは第6電極側検査領域82fと第8電極側検査領域82hとを有し、第7検査電極72Gは第10電極側検査領域82jと第12電極側検査領域82lとを有し、第8検査電極72Hは第14電極側検査領域82nを有している。そして、第1〜第15電極側検査領域82a〜82oが第1〜第15ヘッド62a〜62o(図4参照)と一対一に対応している。すなわち、第1〜第15電極側検査領域82a〜82oが15個のノズルプレート63(第1〜第15ノズルプレート63a〜63oと称する)のヘッド側検査領域81(第1ヘッド側検査領域81a〜第15ヘッド側検査領域81oと称する)と一対一に対応している。なお、本実施形態ではヘッド62の数が15個であるため、第14ヘッド62nについては、1つの電極側検査領域82nを有し、1つのヘッド62n(ヘッド側検査領域81n)と対応している。このような検査電極72は、図3に示すように、印刷領域から左側(X方向の上流側)に外れた位置に設けられている。なお、図7には一つの検査電極72についての電気回路の構成を示したが、第1〜第8検査電極72A〜72Hのそれぞれについて、こうした電気回路が組まれている。
【0029】
高圧電源74は、検査電極72を所定電位にするための電源であり、ここでは600〜1000Vの直流電源によって構成される。高圧電源74と検査電極72との間には、第1制限抵抗73と第2制限抵抗75とが配置されている。これらの制限抵抗73,75は、高圧電源74と検査電極72との間に流れる電流を制御するものであり、ここでは両者の抵抗値を共に1.6MΩとした。
【0030】
検出制御部76は、高圧電源74による検査電極72とノズルプレート63との電圧印加を制御する。また、検出制御部76は、増幅器77で増幅された検査電極72の電圧信号(アナログ信号)に基づいて検査対象ノズルがインクを吐出したか否かを判定し、判定結果をデジタル信号としてコントローラー20に送信する。増幅器77と検査電極72との間には、検査電極72のバイアス成分(直流成分)を除去する検査用コンデンサー78が配置されている。また、第1制限抵抗73と第2制限抵抗75との間には、平滑コンデンサー79の一端が接続されている。この平滑コンデンサー79の他端は接地されている。平滑コンデンサー79は、電位の急激な変化を抑制するものである。ここでは、検査用コンデンサー78の容量を4700pF、増幅器77の増幅率を4000倍、平滑コンデンサー79の容量を0.1μFとした。
【0031】
次に、本実施形態のプリンター10の動作、特にノズルを検査するときの動作について説明する。コントローラー20は、検査対象ノズルの検査において、インクを良好に吐出できるか否かを調べる吐出検査と、吐出検査中にその判定結果に影響を与えるノイズが発生したか否かを調べるノイズ検査とを実施する。
【0032】
まず、吐出検査について説明する。図9は駆動信号COMとそれに対応した検出信号とを示す説明図であり、(a)は駆動信号COMの波形、(b)は増幅器77から出力される検出信号の波形を示す。コントローラー20は、ノズルプレート63と検査電極72との間に高圧電源74の電圧を印加した状態で、図9(a)に示すピエゾ素子を駆動する駆動信号COMを各ヘッド62に出力する。駆動信号COMは、20〜30個のインク吐出用パルスを出力するパルス出力区間と一定電位(中間電位)の休止区間との組み合わせとなっている。このような駆動信号COMがピエゾ素子に印加されると、そのピエゾ素子に対応するノズルから20〜30個のインク滴が吐出される。すると、これに対応して、増幅器77から検出信号(アナログ信号、図9(b)参照)が検出制御部76へ出力される。検出制御部76は、駆動信号COMに対応した検出信号の振幅Va(検出信号の最高電位VHと最低電位VLとの差)を検出し、検出された振幅Vaと予め定められた閾値Vth(例えば3V)とを比較する。そして、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも大きければ、検出制御部76は、「振幅大」(吐出良好)を表すデジタル信号を生成する。逆に、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも小さければ、「振幅小」(吐出不良)を表すデジタル信号を生成する。
【0033】
ここで、吐出検査の原理について説明する。図7において、ヘッド側検査領域81と電極側検査領域82とを対向させ、ノズルプレート63と検査電極72との間に電圧を印加した状態で、検査対象ノズルからインクが吐出するようにヘッドユニット60を制御したとき、実際にそのノズルからインクが吐出した場合には検査電極72の電圧信号が大きく変化するが、そのノズルからインクが吐出しなかった場合には検査電極72の電圧信号はほとんど変化しない。このため、その電圧信号の変化に基づいて検査対象ノズルがインクを吐出したか否かを判定することができる。この原理は正確には解明されていないが、次のように考えられる。一般的に、コンデンサーを構成する一対の電極板の間隔が変化すると、コンデンサーに蓄えられる電荷が変化することが知られている。グランド電位のノズルプレート63から高電位の検査電極72に向かってインクが吐出されると、グランド電位のインク滴と検査電極72との間隔d(図6参照)が変化し、コンデンサーの一対の電極板の間隔が変化したときのように、検査電極72に蓄えられる電荷が変化する。この結果、検査電極72に電荷が移動し、これに伴って変化する電圧を検査用コンデンサー78及び増幅器77が検出し、検出信号が検出制御部76に出力されると考えられる。
【0034】
次に、ノイズ検査について説明する。ノイズ検査期間中は、コントローラー20は、ヘッド側検査領域81と電極側検査領域82とを対向させ、ノズルプレート63と検査電極72との間に高圧電源74の電圧を印加した状態で、どのノズルのピエゾ素子にも駆動信号COMを付与しない。つまり、ノイズ検査期間は、インク滴を吐出させない非吐出期間になる。この期間中も、増幅器77から検出信号(アナログ信号)が検出制御部76へ出力される。検出制御部76は、この検出信号の振幅Vaと閾値Vthとを比較し、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも大きければ、「振幅大」(ノイズあり)を表すデジタル信号をコントローラー20へ送信する。逆に、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも小さければ、「振幅小」(ノイズなし)を表すデジタル信号をコントローラー20へ送信する。図7において、ノズルプレート63と検査電極72との間に電圧を印加した状態で、どのノズルのピエゾ素子にも駆動信号COMを付与しない場合、本来であれば検査電極72の電圧信号はほとんど変化しないが、検査電極72にノイズが発生するとそのノイズによって検査電極72の電圧信号が大きく変化する。このため、その電圧信号の変化に基づいてノイズの有無を判定することができる。このようなノイズの発生原因は、ヘッド側検査領域81や電極側検査領域82に付着したインクや埃などの異物である場合が多い。なお、ノイズの原因となるのは、電圧が印加されたノズルプレート63と検査電極72とのうち対向する領域内に存在する異物である。そのため、検査電極72のうち電極側検査領域82以外の領域や、電圧が印加されていないノズルプレート63,検査電極72に存在する異物はノイズの発生原因とはならない。また、ノズルプレート63と検査電極72との一方に異物が付着している場合、他方と異物との距離が近いほど、ノイズが発生しやすい。
【0035】
吐出検査とノイズ検査の具体例について説明する。ここでは、1つのノズルに対して、吐出検査を2回行い、その後ノイズ検査を1回行う場合を例に挙げて説明する。そのときの増幅器77から出力される検出信号及び検出制御部76での判定結果の例を図10に示す。図10(a)では、2回の吐出検査で共に検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えているため、検出制御部76で共に「振幅大」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判定すると、そのノズルは「正常」と決定される。図10(b)では、2回の吐出検査で共に検出信号の振幅Vaが閾値Vth以下のため、検出制御部76で共に「振幅小」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判断すると、そのノズルは「異常」と決定される。図10(c)の検出信号では、1回目の吐出検査で検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えたため、検出制御部76で「振幅大」のデジタル信号が生成され、2回目の吐出検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判断すると、そのノズルは「異常」と決定される。つまり、複数の吐出検査のうち1回でも「振幅小」のものがあれば、そのノズルは詰まり等が生じている可能性があることから、「異常」と判定するのである。図10(d)では、2回の吐出検査で共に検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えているため、検出制御部76で共に「振幅大」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査でも振幅Vaが閾値Vthを超えたため「振幅大」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判断すると、そのノズルは「不明」と決定される。ノイズ検査で振幅Vaが閾値Vthを超えたということは、その前の吐出検査においてノイズが混入している可能性が高く、ノイズのせいで振幅Vaが閾値Vthを超えた可能性があるため、正常か異常かを判定できず、「不明」と判定するのである。このように、ノイズ検査の結果が「振幅大」の場合には、その直前の吐出検査はノイズの影響を受けている可能性が高いことから、統合判断では吐出検査の結果にかかわらず「不明」と判定する。
【0036】
次に、コントローラー20が実行するノズルの統合判定ルーチンと、検査ユニット70の検出制御部76が実行するデジタル信号出力ルーチンについて、説明する。ここでは、ノズルをブロック単位で処理していく。このため、各ルーチンの説明に先立って、ブロックの分け方について説明する。ブロックは、ヘッド62ごとに、そのヘッド62が有する複数のノズルを15個のノズルが1つのブロックになるように分ける。図11は、第1ヘッド62aが有する1440個(180個×8列)のノズルをブロック分けしたときの様子を示すテーブルである。具体的には、Mk列において、#1〜#15を第1ブロック、#16〜#30を第2ブロック、……という具合にブロック分けを行い、その後、Gr列、Or列、Cl列、Pk列、Cy列、Ma列、Ye列の順に同様にしてブロック分けを行う。なお、第2〜第15ヘッド62b〜62oについても図11と同様にしてブロック分けされる。
【0037】
ノズルの統合判定ルーチンについて、図12のフローチャートを用いて説明する。コントローラー20は、統合判定の実行タイミングが到来するごとに、この統合判定ルーチンを開始する。このルーチンが開始されると、コントローラー20は、まず、移動ユニット50を制御して、ヘッドユニット60の各ヘッド62が各検査電極72に対向するようにヘッドユニット60を移動させる(ステップS100)。これにより、各ヘッド62と各検査電極72とは図8に示した位置関係となる。次いで、各検査電極72と対向するヘッド62のうち各検査電極72についてそれぞれ1つを検査対象ヘッドに設定する(ステップS105)。なお、統合判定ルーチンにおけるステップS105以降の処理は、8つの検査回路71A〜Hのそれぞれについて独立して実行される。また、本実施形態では、各検査電極72と対向するヘッド62が複数あるときには、図8で上側に位置するヘッド62を先に検査対象ヘッドに設定するものとした。したがって、例えば第1検査回路71AについてステップS105以降の処理を行う際には、ステップS105でまず第1ヘッド62aを検査対象ヘッドに設定し、第2検査回路71BについてステップS105以降の処理を行う際には、ステップS105でまず第5ヘッド62eを検査対象ヘッドに設定する。他の検査回路71についても同様である。第8検査回路71Hについては、第14ヘッド62nのみと対向しているため、ステップS105で第14ヘッド62nを検査対象ヘッドに設定する。
【0038】
続いて、ブロックの番号を表す変数pに値1をセット(ステップS110)し、第pブロックを検査対象ブロックに設定して(ステップS120)、検査対象ブロックの検査を実行する(ステップS130)。具体的には、コントローラー20は、検査対象ヘッドの第pブロックに属する15個のノズルを順次、検査対象ノズルに設定し、検査対象ノズルのピエゾ素子に、図9(a)に示す駆動信号COMを2回連続して付与し、その後、駆動信号COMを所定期間付与しないようにする。これにより、検査対象ノズルは、2回の吐出検査と1回のノイズ検査とが実施されることになる。検査ユニット70の検出制御部76は、検査電極72とノズルプレート63との間に電圧を印加した状態で、増幅器77から出力される2回の吐出検査の検出信号と1回のノイズ検査の検出信号を取得し、検出制御部76の図示しない一時記憶領域に記憶する。そして、第pブロックに属する15個のノズルのすべてについて、各3つの検出信号を一時記憶した後、検出制御部76は、デジタル信号出力ルーチンを実行する。このときの検出制御部76の一時記憶領域に記憶されたデータを図13に示す。1〜3番目のデータは、第pブロックに属するノズルのうち番号(#1とか#2)の最小のものについての吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の検出信号であり、4〜6番目のデータは、第pブロックに属するノズルのうち番号が2番目に小さいものについての吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の検出信号である。これ以降のデータについても、意味するところは同じであるため説明を省略する。
【0039】
ここで、検出制御部76が実行するデジタル信号出力ルーチンについて、図14のフローチャートを用いて説明する。このルーチンは、第pブロックに含まれるすべてのノズルの検出信号の検出が終了した時点、つまり、図13に示す一時記憶領域に1〜45個のデータがすべて記憶された時点で開始される。このルーチンが開始されると、検出制御部76は、まず、変数kに値1をセットする(ステップS310)。続いて、検出制御部76の一時記憶領域から第k番目のデータを読み出し(ステップS320)、そのデータつまり検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えるか否かを判定する(ステップS330)。そして、振幅Vaが閾値Vthを超えていたならば、「振幅大」を表すデジタル信号を検出制御部76の図示しない送信用レジスターの第k番目の位置に書き込む(ステップS340)。一方、振幅Vaが閾値Vth以下ならば、「振幅小」を表すデジタル信号を検出制御部76の送信用レジスターの第k番目の位置に書き込む(ステップS350)。そして、ステップS340又はステップS350で送信用レジスターへの書き込みが終了した後、変数kは上限値(ここでは1ブロックに含まれるノズル数は15個のため上限値は値45)に達しているか否かを判定し(ステップS360)、変数kが上限値に達していなければ、変数kを1インクリメントし(ステップS370)、再びステップS320に戻る。一方、変数kが上限値に達していたならば、送信用レジスターの内容をコントローラー20へ送信し(ステップS380)、このルーチンを終了する。つまり、検出制御部76は、送信用レジスターのフル容量分のデジタル信号(45個のデジタル信号)が格納されたあと、その送信用レジスターの内容をコントローラー20へ送信する。このときの送信用レジスターのデータを図15に示す。
【0040】
図12に戻り、コントローラー20は、検出制御部76から1ブロック分のデジタル信号(45個のデジタル信号)を取得したか否かを判定し(ステップS140)、取得していなければ再びステップS140に戻る。一方、検出制御部76から1ブロック分のデジタル信号を取得したならば、統合判定を実施し、ノズルと統合判定結果との対応付けを行う(ステップS150)。例えば、検査対象ブロックが第1ブロックの場合には、45個のデジタル信号のうち1〜3番目のデジタル信号がMk列の#1のノズルの吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の結果を表し、4〜6番目のデジタル信号がMk列の#2のノズルの吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の結果を表す、という具合に、どのデジタル信号がどのノズルに対応しているかを特定していく。それと共に、特定したノズルにつき、それに対応した3つのデジタル信号を統合判定して正常か異常かを決定する。なお、正常か異常かの判定(統合判定)は、既に図10を用いて説明したとおりである。こうして統合判定を実施した後、特定したノズルにつき、統合判定の結果を対応づける。その一例を図16に示す。図16(a)は検査制御部76からのデジタル信号、図16(b)はノズルごとの統合判定の結果を示す。
【0041】
続いて、コントローラー20は、第pブロックに含まれる15個のノズルの統合判定の結果に「不明」のものがあるか否かを判定する(ステップS160)。ステップS160で「不明」のものがあったならば、再検査回数Sを値1インクリメントし(ステップS170)、再検査回数Sが閾値Sthを超過したか否かを判定する(ステップS180)。
ここで、再検査回数Sは、今回の第pブロックを再度検査対象ブロックに設定するステップS190(後述)の繰り返し回数を表す値であり、初期値は値0に設定されている。また、閾値Sthは、ステップS190の繰り返し回数の上限値(例えば値5)として設定されている値である。そして、このステップS180で否定的な判定をしたときには、今回の第pブロックを再度検査対象ブロックに設定し(ステップS190)、ステップS130に戻る。これにより、ブロック単位で再検査が実施される。
【0042】
最初の検査において不明ノズルがない場合や再検査により不明ノズルがなくなったときには、ステップS160で否定的な判定をして、再検査回数Sを値0に初期化し(ステップS215)、第pブロックのうちの15個の特定されたノズルとその統合判定の結果との対応関係を確定してメモリー28に保存する(ステップS220)。その後、変数pは上限値(ここではブロックの総数)に達しているか否かを判定し(ステップS230)、変数pが上限値に達していなければ、変数pを1インクリメントし(ステップS240)、再びステップS120に戻る。これにより、次のブロックの検査が実施されることになる。
【0043】
ステップS230で変数pが上限値に達していたならば、検査電極72と対向する未検査のヘッド62があるか否かを判定する(ステップS250)。例えば、第1検査回路71Aについて、上述したステップS105により第1ヘッド62aを検査対象ヘッドに設定してノズル検査を行ったときには、第1検査電極72Aと対向する第3ヘッド62cが未検査であるため、ステップS250で肯定的な判定をする。そして、肯定的な判定をすると、未検査のヘッドを次の検査対象ヘッドに設定して(ステップS260)、ステップS110に戻る。これにより、未検査のヘッドについてノズル検査が行われることになる。そして、検査電極72と対向する未検査のヘッドがなくなったときには、ステップS250で肯定的な判定をして、本ルーチンを終了する。
【0044】
一方、再検査を繰り返しても不明ノズルがなくならず、再検査回数Sが閾値Sthを超えたときには、ステップS180で肯定的な判定をし、異物特定処理を行う(ステップS270)。この異物特定処理は、閾値Sth回の再検査を行っても不明ノズルがなくならず正しい吐出検査の結果が得られないときに、ノイズの原因である異物の位置を特定し、可能であればノイズの原因を取り除く処理である。以下、統合判定ルーチンの説明を中断して、異物特定処理について図17のフローチャートを用いて説明する。なお、説明の便宜のため、以降の処理は第1ヘッド62aを検査対象ヘッドとし検査回路71Aを用いて統合判定ルーチンを実行しているときにステップS180で肯定的な判定をした場合を例として説明する。この場合、ノイズ検査において対向していたのは第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとであるため、これらの領域のいずれかに異物があることによりノイズが発生しているものとする。
【0045】
この異物特定処理が開始されると、コントローラー20は、まず、統合判定ルーチンを停止する(ステップS400)。上述したように、統合判定ルーチンにおけるステップS105以降の処理は、8つの検査回路71A〜Hのそれぞれについて独立して実行されている。そこで、今回異物特定処理を実行する検査回路71(第1検査回路71A)を用いた統合判定ルーチンだけでなく、それ以外の検査回路71(第2〜第8検査回路71B〜71H)を用いた統合判定ルーチンについても停止するのである。後述する処理でヘッドユニット60を移動させる処理を行うことから、このようにしている。続いて、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域とのいずれに異物があるかを特定する切り分け処理を行う(ステップS405)。以下、異物特定処理の説明を中断して、切り分け処理について図18のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
この切り分け処理が実行されると、コントローラー20は、まず、統合判定ルーチンのステップS100によって対向している第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのうち、第1電極側検査領域82aが第1ノズルプレート63a(第1ヘッド側検査領域81a)以外のノズルプレート63と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS500)。図19(a),(b)は、ステップ500の処理を行う前と行った後とにおける各ヘッド側検査領域81と各電極側検査領域82との位置関係を示す説明図である。図19(a)に示すように、ステップS500の処理を行う前は、統合判定ルーチンのステップS100によって第1ヘッド側検査領域81a〜第15ヘッド側検査領域81oと第1〜第15電極側検査領域82a〜82oとが一対一に対応している。この状態でステップS500の処理を行うと、コントローラー20がヘッドユニット60をY方向上端側に移動させて、図19(b)に示すように第1電極側検査領域82aと第3ノズルプレート63c(第3ヘッド側検査領域81c)とを対向させる。なお、第1電極側検査領域82aと対向させるのは第2〜第15ヘッド側検査領域81b〜81oであればよく、第3ヘッド側検査領域81cに限られない。
【0047】
続いて、コントローラー20は、ステップS500で対向させた第3ヘッド側検査領域81cと第1電極側検査領域82aとを用いてノイズ検査を行う(ステップS510)。すなわち、第3ノズルプレート63cと第1検査電極72Aとの間に高圧電源74の電圧を印加した状態で、ノイズ検査期間中はノズルからインク滴を吐出させないようにヘッドユニット60及び検査ユニット70を制御し、ノイズ検査の結果を表すデジタル信号を送信するよう検出制御部76を制御する。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS520)。このステップS520で肯定的な判定をすると、第1電極側検査領域82aに異物があると判定する(ステップS530)。すなわち、第1電極側検査領域82aを第1ヘッド側検査領域81a以外のヘッド側検査領域81と対向させ、第1ヘッド側検査領域81aを電圧の印加された検査電極72と対向させない状態においてノイズ検査を行ってもノイズが発生したため、第1電極側検査領域82a側に異物があると判定するのである。
【0048】
一方、ノイズ検査の結果が「振幅小」(ノイズなし)でありステップS520で否定的な判定をしたときには、第1ヘッド側検査領域81aが第1電極側検査領域82aを有する第1検査電極72a以外の検査電極72と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS540)。すなわち、第1ヘッド側検査領域81aと第2〜第8検査電極72B〜72Hのいずれかとを対向させる。なお、ここでは第1ヘッド側検査領域81aと第2検査電極72Bの第5電極側検査領域82eとを対向させるものとして以降の説明を行う。
【0049】
続いて、コントローラー20は、ステップS540で対向させた第1ヘッド側検査領域81aと第5電極側検査領域82eとを用いてノイズ検査を行う(ステップS550)。この処理は、第1ヘッド側検査領域81aと第5電極側検査領域82eとを対向させ第1ノズルプレート63aと第2検査電極72Bとの間に高圧電源74の電圧を印加した状態で行う点以外は、上述したステップS510と同様に行う。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS560)。このステップS560で肯定的な判定をすると、第1ヘッド側検査領域81aに異物があると判定する(ステップS570)。すなわち、第1ヘッド側検査領域81aを第1検査電極72A以外の検査電極72と対向させ第1電極側検査領域82aを電圧の印加されたノズルプレート63と対向させない状態においてノイズ検査を行ってもノイズが発生したため、第1ヘッド側検査領域81a側に異物があると判定するのである。
【0050】
一方、ノイズ検査の結果が「振幅小」(ノイズなし)でありステップS560で否定的な判定をしたときには、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのいずれにも異物はないと判定する(ステップS580)。このような場合は、例えば異物が移動して第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとの間に存在しなくなった場合など、切り分け処理を実行する間に何らかの理由によりノイズが発生しない状態になったものと考えられる。
【0051】
そして、ステップS530,S570,S580のいずれかを実行して、第1ヘッド側検査領域81aに異物があるか第1電極側検査領域82aに異物があるか又は異物がないかの判定を行うと、コントローラー20は判定結果をメモリー28に記憶して(ステップS590)切り分け処理を終了する。
【0052】
図17の異物特定処理の説明に戻る。ステップS405の切り分け処理を行うと、コントローラー20は、ステップS590で記憶した切り分け処理の判定結果を調べる(ステップS410)。そして、第1電極側検査領域82aに異物があるとの判定結果(切り分け処理でステップS530を実行)であったときには、第1電極側検査領域82aにおける異物の位置を特定する電極側異物領域特定処理を行う(ステップS415)。
【0053】
この電極側異物領域特定処理は、第1電極側検査領域82aを複数の小領域に分割し、異物のある小領域を異物領域として特定する処理である。そこで、まず、複数の小領域について説明する。図20は、第1電極側検査領域82aを複数の小領域84に分割した様子を示す説明図である。なお、図20では、検査電極72のうち第1検査電極72Aのみを拡大して示している。図示するように、第1電極側検査領域82aをX方向,Y方向にそれぞれ4分割して16個の小領域84(第1〜第16小領域84a〜84p)としている。この小領域84の位置や大きさはメモリー28に予め記憶されており、必要に応じてCPU22が読み出して、第1電極側検査領域82aのうち各小領域84の位置を特定できるようになっている。以下、異物特定処理の説明を中断して、電極側異物領域特定処理について図21のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
この電極側異物領域特定処理が開始されると、コントローラー20は、まず、変数mに値1をセットする(ステップS600)。そして、複数の小領域84のうち第m小領域84がノズルプレート63と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS610)。なお、第m小領域84と対向させるノズルプレート63は、第1〜第15ノズルプレート63a〜63oのうちのいずれでもよい。そして、ステップS610で対向させたノズルプレート63と第1電極側検査領域82a(第1検査電極72A)とを用いてノイズ検査を行う(ステップS620)。この処理は、上述したステップS510やステップS550と同様の処理である。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS630)。このステップS630で否定的な判定をすると、変数mが上限値(ここでは小領域84の総数である値16)であるか否かを判定し(ステップS640)。上限値でなかったときには変数mを値1インクリメントして(ステップS650)、上述したステップS610に戻る。これにより、ステップS630でノイズありと判定するか又は変数mが上限値となってステップS640で肯定的な判定をするまでステップS610〜S650を繰り返す。こうすることで、第1〜第16小領域84a〜84pを順次ノズルプレート63と対向させてノイズ検査が行われることになる。
【0055】
そして、ステップS630でノイズありと判定すると、第1電極側検査領域82aの第m小領域84を異物領域として特定して(ステップS660)、電極側異物特定処理を終了する。一方、ステップS640で変数mが上限値であると判定すると、第1電極側検査領域82aの異物領域を特定せず(ステップS670)、電極側異物特定処理を終了する。
【0056】
ここで、電極側異物特定処理を行う様子を図22を用いて説明する。ここでは第6小領域84fに異物がある場合を例として説明する。まず、電極側異物特定処理を開始して最初のステップS610を行うと、変数mを値1とし、図22(a)に示すように第1電極側検査領域82aの第1小領域84aとノズルプレート63とを対向した状態にする。続いて、第1小領域84aには異物はないため、ステップS620のノイズ検査を行ってステップS630でノイズなしと判定する。そして、変数mは値1であるためステップS640で否定的な判定をし、ステップS650で変数mを値2にインクリメントしてステップS610に戻る。このステップS620では、変数mが値2であるため、図22(b)に示すように第1電極側検査領域82aの第2小領域84bとノズルプレート63とを対向した状態にする。第2小領域84bにも異物はないため、次のステップS630でも否定的な判定をして、ステップS640,S650を行ってステップS610に戻る。以降同様に、ステップS650で変数mが値6になるまでステップS610〜S650を繰り返して、第1小領域84a〜第5小領域84eまではノイズなしと判定されることになる。そして、変数mが値6になったあとのステップS610では、図22(c)に示すように第6小領域84fとノズルプレート63とが対向した状態になる。第6小領域84fには異物があるため、次のステップS630では肯定的な判定をして、ステップS660では第6小領域84fを異物領域として特定することになる。
【0057】
なお、図22(c)では第6小領域84fの他に第1,第2,第5小領域84a,84b,84eもノズルプレートと対向しているため、この状態でのノイズ検査のみでは第1,第2,第5,第6小領域84a,84b,84e,84fのいずれに異物があるかは特定できない。しかし、第1,第2,第5小領域84a,84b,84eについては、変数mがそれぞれ値1,2,5のときにノイズ検査を行いステップS630で否定的な判定をしているため、これらには異物がないと考えられる。そのため、変数mが値6のときのステップS630で肯定的な判定をしたときには、第6小領域83fを異物領域として特定するのである。
【0058】
図17の異物特定処理の説明に戻る。ステップS415で電極側異物領域特定処理を行うと、コントローラー20は、この処理で異物領域が特定されたか否かを判定する(ステップS420)。電極側異物領域特定処理でステップS660を実行していたときには、このステップS420で肯定的な判定をして、特定した異物領域にノズルからインクを吐出するようヘッドユニット60を制御する(ステップS425)。これは、インクにより異物領域中の異物を除去するか又はノズルプレート63と異物との距離を離して、ノイズが発生しないようにするために行う処理である。なお、上述した電極側異物領域特定処理のステップS660を実行するときには、例えば図22(c)に示したように異物領域(第6小領域84f)はノズルプレート63(ヘッド62)と対向しているため、ステップS425においてヘッドユニット60を移動させる必要はない。また、ヘッド62の複数のノズルのうち、異物領域と対向しているノズルのみからインクを吐出すればよい。こうすることで第1電極側検査領域82aの全てにインクを吐出する場合と比べて無駄なインクの消費を抑えることができる。なお、ステップS425におけるインクの吐出は、一度各ノズルから吐出させたインクの間を埋めるようにさらにヘッドユニット60を移動させて再度インクを吐出させるなど、ヘッドユニット60の移動とインクの吐出とを複数回行ってもよい。また、インクの吐出量は、例えば吐出検査時よりも多量のインクを吐出するようにしてもよい。さらに、ヘッドから吐出可能な複数種類のインクのうち他よりも乾きやすいインクを吐出するものとしてもよい。こうすれば、乾きにくいインクを吐出する場合と比べて吐出したインクに新たに異物が付着してノイズの原因となることを抑制できる。
【0059】
異物領域へのインクの吐出を行うと、コントローラー20は、ノイズ検査を行う(ステップS430)。この処理は、異物領域を有する第1電極72Aといずれかのノズルプレート63とを用いて上述したステップS510と同様に行えばよい。なお、このノイズ検査は、インクの吐出により異物領域でノイズが発生しなくなったか否かを確認するために行うものである。そのため、第1電極72Aのうち異物領域がノズルプレート63と対向してさえいればよい。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS435)。このステップS435で否定的な判定をすると、異物領域の異物によるノイズが発生したままであるため、エラーメッセージを出力して(ステップS440)、異物特定処理を終了する。エラーメッセージの出力は、例えばプリンター10の図示しないディスプレイに、異物のある検査電極72及びそのうちの異物領域の位置を表示して検査電極72の清掃を促すエラー画面を表示することで行う。異物領域を特定できるようにエラーメッセージを出力することで、ユーザーが異物のない領域に対して不要な清掃を行うことを防止できる。
【0060】
一方、電極側異物領域特定処理でステップS670を実行しておりステップS420で否定的な判定をしたときや、ステップS430のノイズ検査の結果がノイズなしでありステップS435で否定的な判定をしたときには、ステップS400で停止していた統合判定ルーチンを再開して(ステップS445)、異物特定処理を終了する。これにより、各検査回路71を用いた統合判定ルーチンが全て再開される。
【0061】
また、ステップS405の切り分け処理の判定結果が、ステップS410で第1ヘッド側検査領域81aに異物があるとの判定結果(切り分け処理でステップS570を実行)であったときには、第1ヘッド側検査領域81aにおける異物の位置を特定するヘッド側異物領域特定処理を行う(ステップS450)。このヘッド側異物領域特定処理は、第1ヘッド側検査領域81aを複数の小領域に分割し、異物のある小領域を異物領域として特定する処理であり、上述した電極側異物領域特定処理と同様に行うことができる。以下、異物特定処理の説明を中断して、ヘッド側異物領域特定処理について図23のフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態では第1電極側検査領域82aと同様に、第1ヘッド側検査領域81aをX方向,Y方向にそれぞれ4分割して16個の小領域83(第1〜第16小領域83a〜83p)とするものとした。この小領域83の位置や大きさはメモリー28に予め記憶されており、必要に応じてCPU22が読み出して、第1ヘッd側検査領域81aのうち各小領域83の位置を特定できるようになっている。
【0062】
このヘッド側異物領域特定処理が開始されると、コントローラー20は、まず、変数nに値1をセットする(ステップS700)。そして、複数の小領域83のうち第n小領域が検査電極72と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS710)。なお、第n小領域と対向させる検査電極72は、第1〜第8検査電極72A〜72Hのうちのいずれでもよい。そして、ステップS710で対向させた検査電極72と第1ヘッド側検査領域81a(第1ノズルプレート63a)とを用いてノイズ検査を行う(ステップS720)。この処理は、上述したステップS510やステップS550と同様の処理である。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS730)。このステップS730で否定的な判定をすると、変数nが上限値(ここでは小領域83の総数である値16)であるか否かを判定し(ステップS740)。上限値でなかったときには変数nを値1インクリメントして(ステップS750)、上述したステップS710に戻る。これにより、ステップS730でノイズありと判定するか又は変数nが上限値となってステップS740で肯定的な判定をするまでステップS710〜S750を繰り返す。こうすることで、第1〜第16小領域83a〜83pを順次検査電極72と対向させてノイズ検査が行われることになる。
【0063】
そして、ステップS730でノイズありと判定すると、第1ヘッド側検査領域81aの第n小領域83を異物領域として特定して(ステップS760)、ヘッド側異物特定処理を終了する。一方、ステップS740で変数nが上限値であると判定すると、第1ヘッド側検査領域81aの異物領域を特定せず(ステップS770)、ヘッド側異物領域特定処理を終了する。このヘッド側異物領域特定処理を行うことで、電極側異物領域特定処理と同様に、第1〜第16小領域83a〜83pのうちいずれかを異物領域として特定するか、又は異物領域を特定しない処理が行われる。
【0064】
ヘッド側異物領域特定処理を行う様子を図22に示す。ここでは第13小領域83nに異物がある場合を例として説明する。変数nが値1,2,14のときのステップS710を行った状態をそれぞれ図22(a),(b),(c)に示す。図22(a),(b)に示するように、変数nが値1,2のときには異物のある第14小領域83nは検査電極72と対向していないため、ステップS730ではノイズなしと判定することになる。変数nが値3〜13のときも同様である。そして、変数nが値14のときのステップS710を行うと、図22(c)に示すように第14小領域83nが検査電極72と対向するため、ステップS730でノイズありと判定して、ステップS760で第14小領域83nを異物領域として特定することになる。なお、図示するように、ステップS710で第n小領域83と対向させるのは検査電極72であればよく、電極側検査領域82である必要はない。
【0065】
図17の異物特定処理の説明に戻る。ステップS450でヘッド側異物領域特定処理を行うと、コントローラー20は、この処理で異物領域が特定されたか否かを判定する(ステップS455)。ヘッド側異物領域特定処理でステップS760を実行していたときには、このステップS455で肯定的な判定をし、エラーメッセージを出力して(ステップS460)、異物特定処理を終了する。エラーメッセージの出力は、上述したステップS440と同様に、例えばプリンター10の図示しないディスプレイに異物のあるノズルプレート63及びそのうちの異物領域の位置を表示してノズルプレート63の清掃を促すエラー画面を表示することで行う。
【0066】
一方、ヘッド側異物領域特定処理でステップS770を実行しておりステップS455で否定的な判定をしたときには、上述したステップS445に進んで統合判定ルーチンを再開して、異物特定処理を終了する。また、切り分け処理でステップS580を実行しておりステップS410で異物なしと判定したときも、同様にステップS445に進んで統合判定ルーチンを再開し、異物特定処理を終了する。
【0067】
図12の統合判定ルーチンの説明に戻る。ステップS270の異物特定処理を行うと、コントローラー20は、異物特定処理で統合判定ルーチンを再開したか否かを判定する(ステップS280)。この判定は、上述した異物特定処理のステップS445を行ったか否かを判定することにより行う。そして、異物特定処理でステップS445を行っておりステップS280で肯定的な判定をすると、ステップS190に進んで以降の処理を行う。ここで、異物特定処理を行っている間にノイズが発生しなくなった場合は、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとを用いた統合判定ルーチンについても継続が可能と考えられる。そのため、ステップS190に進んで処理を再開するのである。一方、異物特定処理でステップS440又はステップS460を行っておりステップS280で否定的な判定をすると、そのまま本ルーチンを終了する。すなわち、異物によるノイズが発生したままでありユーザーによる清掃作業等が必要となるため、統合判定ルーチンを中断して終了するのである。この場合、コントローラー20は、第1検査電極72a以外の検査電極72を用いた他の統合判定ルーチンについても再開することなく終了する。このように、異物特定処理を行うことで、異物が検査電極72とノズルプレート63とのいずれ側にあるかを切り分け、さらに異物がどの位置にあるかを特定して、特定した異物領域に対する異物の対処を行うのである。
【0068】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のヘッド62が本発明のヘッドに相当し、ノズルプレート63が第1電極に相当し、検査電極72が第2電極に相当し、移動ユニット50が移動手段に相当し、コントローラー20と検査ユニット70とが吐出検査手段及びノイズ検査手段に相当し、コントローラー20が異物判定手段及びヘッド制御手段に相当し、図18の切り分け処理で第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのいずれに異物があるかを特定する場合における第2〜第8検査電極72B〜72Hが第3電極に相当し、図18の切り分け処理で第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのいずれに異物があるかを特定する場合における第2〜第15ノズルプレート63b〜63oが第4電極に相当する。なお、本実施形態では、プリンター10の動作を説明することにより本発明の異物検査方法の一例も明らかにしている。
【0069】
以上説明した本実施形態のプリンター10によれば、ノズルプレート63と検査電極72とを吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両者間に電圧を印加した状態で、複数のノズルから液体を吐出させないときの両者間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行う。そして、ノイズ検査手段によりノイズ検査でノイズが検出されたときには、ノズルプレート63又は検査電極72のうち、ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する。こうすれば、ノイズ検査時の相対位置が吐出検査時と異なることで、吐出検査時にノズルプレート63と検査電極72とが対向する領域のうちの一部の領域についてノイズ検査を行うことができる。これにより、ノズルプレート63又は検査電極72のうち特定の領域に異物があることを検出できる。また、検査電極72の電極側検査領域82のうち複数の小領域84について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。さらに、ノズルプレート63のヘッド側検査領域81のうち複数の小領域83について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。
【0070】
また、ノズルプレート63のうちの1つ(例えば第1ノズルプレート63a)及び検査電極72のうちの1つ(例えば第1検査電極72A)のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、第1検査電極72Aと第1ノズルプレート63a以外のノズルプレート63とを対向させ両者間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両者間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには第1検査電極72A側に異物があると判定する。このため、第1ノズルプレート63a以外のノズルプレート63を用いて第1検査電極72Aと第1ノズルプレート63aとのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0071】
さらに、ノズルプレート63のうちの1つ(例えば第1ノズルプレート63a)及び検査電極72のうちの1つ(例えば第1検査電極72A)のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、第1ノズルプレート63aと第1検査電極72A以外の検査電極72とを対向させ両者間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両者間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには第1ノズルプレート63a側に異物があると判定する。このため、第1検査電極72A以外の検査電極72を用いて第1検査電極72Aと第1ノズルプレート63aとのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0072】
さらにまた、検査電極72のうち異物領域として特定された領域にインクを吐出するため、吐出されたインクにより異物を除去するか又はノズルプレート63と異物との距離を離すことができ、以降の異物に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、図17の異物特定処理において、ノズルプレート63側と検査電極72側とのいずれに異物があるかを特定する切り分け処理を先に行い、切り分け処理の判定結果に基づいて電極側異物領域特定処理又はヘッド側異物領域特定処理を行って異物領域を特定するものとしたが、先に異物領域を特定してから切り分け処理を行ってもよい。この場合の変形例の異物特定処理のフローチャートを図25に示す。なお図25では、図17の異物特定処理と同じ処理については同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。この変形例の異物特定処理では、ステップS400の処理を行ったあと、異物候補領域特定処理を行う。この異物候補領域特定処理のフローチャートを図26に示す。なお図26では、図21の電極側異物領域特定処理と同じ処理については同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。この異物候補領域特定処理は、ステップS630又はステップS640で肯定的な判定をするまでステップS600〜S650を繰り返す点は電極側異物領域特定処理と同じである。そして、ステップS630で肯定的な判定をすると、電極側検査領域82の小領域84のうち直前のステップS610で初めてノズルプレート63と対向した領域と、ヘッド側検査領域81の小領域83のうち直前のステップS610で初めて検査電極72と対向した領域とを異物候補領域として特定して(ステップS660a)、異物候補領域特定処理を終了する。
【0075】
この異物候補領域を特定する様子を図27を用いて説明する。なお、図27は、第1電極側検査領域82aと第1ヘッド側検査領域81aとについて異物領域特定処理を行う様子を示している。また、異物は第1ヘッド側検査領域81aの小領域83cにあるものとする。異物候補領域特定処理を開始して最初のステップS610を行うと、コントローラー20は図27(a)に示すように第1電極側検査領域82aの第1小領域83aを第1ヘッド側検査領域81aの第1小領域83aと対向させた状態とする。そして、この状態でノイズ検査を行ってもノイズなしと判定するため、コントローラー20は変数mを値2としてステップS610の処理を行う。これにより、図27(b)に示すように第1電極側検査領域82aの第1小領域83aを第1ヘッド側検査領域83aの第2小領域83bと対向させた状態とする。そして、この状態ではノイズ検査を行ってノイズありと判定するため、ステップS660aの処理を行う。この処理により、電極側検査領域82の小領域84のうち直前のステップS610で初めてノズルプレート63と対向した領域である第2小領域84bと、ヘッド側検査領域81の小領域83のうち直前のステップS610で初めて検査電極72と対向した領域である第3小領域83c,第7小領域83g(の一部)とを異物候補領域として特定する。すなわち、ノイズがあると判定された位置関係において対向していたのは第1電極側検査領域82aの第1,第2小領域84a,84bと、第1ヘッド側検査領域81aの第1〜第3小領域83a〜83c及び第5〜第7小領域83e〜83f(の一部)の領域であるが、そのうちの第1小領域84a、第2〜第3小領域83a〜83b、第5〜第6小領域83e〜83fについては図27(a)に示すように直前のステップS610より以前にノイズなしと判定しているため、第2小領域84b,第3小領域83c,第7小領域83g(の一部)のみを異物候補領域として特定するのである。このように、ステップS660aでは、電極側検査領域82とヘッド側検査領域81とのいずれに異物があるかが不明なため、電極側検査領域82とヘッド側検査領域81との両方について異物候補領域を特定するのである。一方、ステップS640で肯定的な判定をしたときには、異物候補領域を特定せずに(ステップS670a)、異物候補領域特定処理を終了する。
【0076】
このようにして図25のステップS700の異物候補領域特定処理を行うと、異物候補領域特定処理で異物候補領域を特定したか否かを判定する(ステップS710)。そして、異物候補領域を特定していない(異物候補領域特定処理でステップS670aを実行)ときには、ステップS445に進む。一方、異物候補領域を特定したときには(異物候補領域特定処理でステップS660aを実行)、異物候補領域のうち電極側とヘッド側とのいずれ側に異物があるかを判定する切り分け処理を行う(ステップS720)。この変形例の切り分け処理のフローチャートを図28に示す。なお図28では、図18の切り分け処理と同じ処理については同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。この変形例の切り分け処理では、コントローラー20は、図18の切り分け処理のステップS500の代わりに、異物候補領域特定処理で特定した異物候補領域のうち電極側の領域が別のノズルプレート63と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる処理を行う(ステップS500a)。すなわち、ステップS500では電極側検査領域82全体を別のノズルプレート63と対向させたのに対し、ステップS500aでは、電極側検査領域82のうちの異物候補領域が別のノズルプレート63と対向するようにヘッドユニット60を移動させるのである。このとき、ヘッド側検査領域81のうちの異物候補領域は電圧の印加された検査電極72と対向しないようにする。なお、異物候補領域は電極側検査領域82の一部であるため、ステップS500aの処理は、ステップS500と同じ処理としてもよい。そして、この状態でノイズ検査を実行してノイズありと判定すると(ステップS520で肯定判定)、異物候補領域のうち電極側が異物領域であると判定して(ステップS530a)、ステップS590に進んでこの領域を記憶する。また、ステップS520でノイズなしと判定すると、図18の切り分け処理のステップS540の代わりに、異物候補領域特定処理で特定した異物候補領域のうちヘッド側の領域が別の検査電極72と対向し、電極側の領域が電圧の印加されたノズルプレート63と対向しないように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる処理を行う(ステップS540a)。なおこの処理も、上述したステップS540と同じ処理としてもよい。そして、ノイズ検査を実行してノイズありと判定すると(ステップS560で肯定判定)、異物候補領域のうちヘッド側が異物領域であると判定して(ステップS570a)、ステップS590に進んでこの領域を記憶する。このように変形例の切り分け処理を行うことで、異物候補領域のうちの電極側とヘッド側とのいずれが異物領域であるかを判定するのである。例えば、図27のように第1ヘッド側検査領域81aの小領域83cに異物があり第2小領域84b,第3小領域83c,第7小領域83g(の一部)を異物候補領域として特定したときには、変形例の切り分け処理ではまず、ステップS500aで第2小領域84bと第1ノズルプレート63a以外のノズルプレートとを対向させる。そして異物は第2小領域84bにはないためステップS520で否定的な判定をして、ステップS540aで第3小領域83c,第7小領域83gを第1検査電極72a以外の検査電極72と対向させる。すると異物が第3小領域83cにあるためステップS560で肯定的な判定をして、ステップS570aで第3小領域83c及び第7小領域83gを異物領域として特定する。
【0077】
このようにして図25のステップS720の切り分け処理を行うと、この切り分け処理の判定結果を調べる(ステップS730)。そして、異物候補領域のうち電極側が異物領域と特定(切り分け処理でステップS530aを実行)したときにはステップS425に進み、異物候補領域のうちヘッド側が異物領域と特定(切り分け処理でステップS570aを実行)したときにはステップS460に進み、異物なしと判定(切り分け処理でステップS580を実行)したときには、ステップS445に進む。このように、変形例の異物特定処理では、まずノイズ検査により異物候補領域を特定する処理を行う。そして、ノイズが検出されて異物候補領域が特定されたときには、移動ユニット50によりノズルプレート63と検査電極72との相対位置を変えて追加のノイズ検査を行う切り分け処理を行い、切り分け処理の結果に基づいて異物候補領域のうちヘッド側と電極側とのいずれの側に異物があるかを特定する。このようにしても、異物のある1以上の小領域を特定することができる。なお、この変形例の異物特定処理において、切り分け処理を行わずに異物候補領域を全て異物領域としてもよい。この場合、異物領域のうち電極側の領域についてはステップS425〜S440,S445の処理を行い、異物領域のうちヘッド側の領域についてはステップS460の処理を行うものとしてもよい。
【0078】
上述した実施形態では、異物特定処理においてまずステップS405の切り分け処理を行ってからステップS415の電極側異物領域特定処理やステップS450のヘッド側異物領域特定処理を行うものとしたが、切り分け処理を行わなくともよい。例えば、初めから異物は電極側検査領域82にあるものとみなして切り分け処理を行わずに電極側異物領域特定処理を行ってもよい。同様に、異物はヘッド側検査領域81にあるものとみなして切り分け処理を行わずにヘッド側異物領域特定処理を行ってもよい。
【0079】
上述した実施形態では、電極側異物領域特定処理やヘッド側異物領域特定処理における小領域は、電極側検査領域84やヘッド側検査領域83をX方向,Y方向にそれぞれ4分割して16個の小領域に分割した領域としたが、これに限らず、15個以下や17個以上に分割した領域としてもよい。例えば、電極側検査領域84をX方向,Y方向にそれぞれ3分割した9個の領域を小領域としてもよい。また、電極側検査領域84をX方向,Y方向のいずれか一方のみに分割した複数の領域としてもよい。さらに、電極側検査領域84やヘッド側検査領域83を分割するものに限らず、電極側異物領域特定処理における小領域は検査電極72の一部の領域であればよく、ヘッド側異物領域特定処理における小領域はノズルプレート63の一部の領域であればよい。また、電極側異物領域特定処理とヘッド側異物領域特定処理とで、小領域の数や分割の方法が異なっていてもよい。
【0080】
上述した実施形態では、移動ユニット50は、X方向及びY方向にヘッドユニット60を移動可能なものとしたが、これに限られず、異物特定処理を行うために必要な移動方向にヘッドユニット60を移動可能であればよい。例えば、電極側検査領域84及びヘッド側検査領域83をX方向,Y方向のいずれか一方のみに分割した複数の領域とする場合には、移動ユニット50も同じ一方の方向にのみヘッドユニット60を移動可能としてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、本実施形態では、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面(図7の下面)全てであり、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の面(図7の上面)のうち予め定められた一部の領域であるものとしたが、これに限られない。例えば、ノズル検査時に検査電極72の全面とノズルプレート63の全面とが対向する構成として、電極側検査領域82を検査電極72のノズルプレート63側の全面としてもよい。また、ノズル検査時に検査電極72の全面とノズルプレート63の一部とが対向する構成として、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面(図7の下面)の一部とし、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の全面としてもよい。さらに、ノズル検査時に検査電極72の一部とノズルプレート63の一部とが対向する構成として、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面の一部とし、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の面の一部としてもよい。
【0082】
上述した実施形態では、電極側異物領域特定処理のステップS610を繰り返し行う際には、図22に示すように第1〜第16小領域84a〜84pを1つずつノズルプレート63と新たに対向させていくものとしたが、これに限らず、検査電極72とノズルプレート63との位置関係を変えながら複数回のノイズ検査を行って異物領域を特定するものであれば、これに限られない。例えば、小領域84のうち異物のある領域を大まかに特定するものとしてもよい。異物のある領域を大まかに特定する様子を図29を用いて説明する。まず、電極側異物領域特定処理の最初のステップS610では、図29(a)に示すように小領域84のうち第1,第2,第5,第6小領域84a,84b,84e,84fのみをノズルプレート63と対向させる。そして、ステップS610を繰り返し実行する度に、小領域84のうち第3,第4,第7,第8小領域84c,84d,84g,84hのみをノズルプレート63と対向させ(図29(b))、小領域84のうち第9,第10,第13,第14小領域84i,84j,84m,84nのみをノズルプレート63と対向させ(図29(c))、小領域84のうち第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pのみをノズルプレート63と対向させる(図29(d))。このように電極側検査領域82aを大まかに4つの領域に分けてノズルプレート63と順次対向させてノズル検査を行い、4つの大まかな領域のうちいずれに異物があるかを判定してもよい。この場合、例えば第11小領域84kに異物がある場合には、図29(d)の状態のノイズ検査でノイズありと判定して、第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pが異物領域として特定される。なおこの場合、さらに第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pを1つずつノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行って、第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pのうちいずれの小領域に異物があるかを判定するものとしてもよい。
【0083】
上述した実施形態では、切り分け処理のステップS500において電極側検査領域83と対向させる別のノズルプレート63には異物がないものとして説明したが、別のノズルプレートに異物がないことを予め確認するものとしてもよい。例えば、図19を用いて説明した例の場合には、ステップS500を行う前に、第3ノズルプレート63c(第1ヘッド側検査領域81c)には異物がないことを確認するものとしてもよい。例えば、第3ノズルプレート63cと第1検査電極72a(すなわち異物があるか否かを確認しようとしている検査電極72)以外の検査電極72とを対向させてノイズ検査を行い、ノイズがないことを確認してからステップS500を行うものとすればよい。また、ノイズがある場合には、他のノズルプレート63についても同様にノイズ検査を行ってノイズのないノズルプレート63を特定し、特定したノズルプレート63をステップS500において第1電極側検査領域83aと対向させるものとすればよい。このようにすることで、異物の有無を判定する対象以外の領域に異物がある場合における誤判定を防止することができる。ステップS540についても、同様に予めヘッド側検査領域と対向させる別の検査電極72に異物がないことを確認するものとしてもよい。なお、この場合は、ステップS540でヘッド側検査領域63と対向する領域(すなわちノイズ検査の対象となる領域)は検査電極72のうちの一部であるため、その一部の領域に異物がないことを予め確認するものとすればよい。また、電極側異物領域特定処理やヘッド側異物領域特定処理についても同様に、ステップS610で対向させるノズルプレート63に異物がないことを予め確認するものとしてもよいし、ステップS710で対向させる検査電極72のうちノズルプレート63と対向する領域に異物がないことを予め確認するものとしてもよい。
【0084】
上述した実施形態では、切り分け処理において電極側検査領域82とヘッド側検査領域81のいずれかに異物があるものとして説明したが、いずれにも異物がある場合に備えて電極側検査領域82に異物があるか否かの判定とヘッド側検査領域81に異物があるか否かの判定とを常に行うものとしてもよい。例えば、ステップS520の判定結果に関わらずステップS540〜ステップS560の処理を行うものとしてもよい。この場合、ステップS520及びステップS560でいずれも肯定判定をしたときには、異物特定処理のステップS415とステップS450とを共に実行して電極側検査領域82及びヘッド側検査領域81の異物領域をそれぞれ特定するものとしてもよい。
【0085】
上述した実施形態では、電極側異物領域特定処理において複数の小領域84のうちいずれかに異物があるものとして説明したが、2つ以上の小領域84に異物がある場合に備えて、途中のノイズ検査の結果に関わらず第1〜第16小領域84a〜84pの全てについて常にノイズ検査を行って、複数の異物領域を特定するようにしてもよい。例えば、ステップS630の判定結果に関わらずステップS640で変数mが上限値と判定するまでステップS610〜S650を繰り返し、ノイズ検査の結果に基づいて異物があると判定された複数の小領域84を異物領域と特定してもよい。この場合、ステップS610を繰り返し行うにあたり、それ以前のノイズ検査により異物領域と判定された小領域84がある場合には、その小領域84はノズルプレート63と対向しないようにヘッドユニット60の位置を定めるものとしてもよい。例えば、図22を用いて説明した例では、図22(c)の状態で行うノイズ検査により小領域84fを異物領域と特定するため、その次のステップS610ではノズルプレート63を小領域84のうち第3,第4,第7,第8小領域84c,84d,84g,84hのみと対向させるものとすればよい。このようにすることで、複数の小領域84に異物がある場合でも、精度よく複数の異物領域を特定することができる。なお、ヘッド側異物領域特定処理においても、同様にステップS730の判定結果に関わらずステップS740で変数nが上限値と判定するまでステップS710〜S750を繰り返すものとしてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、切り分け処理において電極側検査領域82のノイズ検査でノイズがなかったときにはヘッド側検査領域81のノイズ検査を行うものとしたが、電極側検査領域82とヘッド側検査領域81とのうち電極側検査領域82側にノイズなしと判定したときには、ヘッド側検査領域81のノイズ検査を行うことなくヘッド側検査領域81に異物があると判定してもよい。例えば、切り分け処理のステップS540〜S560,S580を行わないものとし、ステップS520でノイズなしと判定したときにはステップS570の処理を行うものとしてもよい。こうすれば、切り分け処理を迅速に行うことができる。なお、上述した実施形態の切り分け処理では、先に電極側検査領域82にノイズがあるか否かを判定するものとしたが、先にヘッド側検査領域81にノイズがあるか否かを判定するものとしてもよい。また、ヘッド側検査領域81にノイズがあるか否かを判定して、否定的な判定をしたときには電極側検査領域82のノイズ検査を行うことなく電極側検査領域82に異物があると判定してもよい。
【0087】
上述した実施形態では、電極側異物特定処理においてノイズがない場合には最後の第16小領域84まで順にノイズ検査を行うものとしたが、複数の小領域84のうち最後の1つについてはノイズ検査を行わないものとし、他の小領域84のいずれでもノイズがなかったときには最後の1つの小領域84を異物領域として特定してもよい。例えば、上述した実施形態ではステップS630でノイズありと判定されるか又はステップS640で変数mが上限値と判定するまでステップS610〜ステップS650を繰り返すものとしたが、変数mが上限値(値16)より1小さい値と判定するまでステップS610〜S650を繰り返すものとして、変数mが上限値より1小さい値と判定したときには、電極側検査領域82の第16小領域を異物領域として特定してもよい。なお、この場合において、ステップS610で電極側検査領域82のうち一部(例えば半分)を別のノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行い、ノイズがあったときには電極側検査領域82のうちノズルプレート63と対向させた領域を異物領域として特定し、ノイズがなかったときには電極側検査領域82のうちノズルプレート63と対向させていない領域を異物領域として特定してもよい。すなわち、電極側異物特定処理においてノイズ検査を1回しか行わないものとしてもよい。このようにしても、電極側検査領域82のうちの特定の領域に異物があることを特定できる。
【0088】
上述した実施形態では、切り分け処理のステップS540において、ヘッド側検査領域83と別の検査電極72とを対向させるものとしたが、同じ検査電極72を対向させるものとしてもよい。例えば、上述した実施形態の説明ではステップS540において第1ヘッド側検査領域81aと第1検査電極72a以外の検査電極72とを対向させるものとしたが、第1ヘッド側検査領域81aと第1検査電極72aとを対向させるものとしてもよい。この場合、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82a以外とを対向させるものとしてもよい。すなわち、ステップS540の処理を行うのは第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのうち第1ヘッド側検査領域81aに異物があるか否かを判定するためであるので、第1ヘッド側検査領域81aが電圧を印加した検査電極72と対向し、第1電極側検査領域82aが電圧を印加したノズルプレート63と対向しないようにすれば、どのような位置関係でノズルプレート63と検査電極72とを対向させてもよい。ステップS500においても同様に、第1電極側検査領域82aが電圧を印加したノズルプレート63と対向し、第1ヘッド側検査領域81aが電圧を印加した検査電極72と対向しないようにすれば、どのような位置関係でノズルプレート63と検査電極72とを対向させてもよい。図28の変形例の切り分け処理のステップS500a,S540aについても同様である。すなわち、ステップS500aにおいては、電極側の異物候補領域が電圧を印加したノズルプレート63と対向し、ヘッド側の異物候補領域が電圧を印加した検査電極72と対向しないようにすれば、どのような位置関係でノズルプレート63と検査電極72とを対向させてもよい。ステップS540aにおいては、ヘッド側の異物候補領域が電圧を印加した検査電極72と対向し、電極側の異物候補領域が電圧を印加したノズルプレート63と対向しないようにすれば、どのような位置関係でもよい。
【0089】
上述した実施形態では、統合判定ルーチンにおいて再検査回数Sが閾値Sthを超えたときに異物特定処理を行うものとしたが、これに限られない。例えば、統合判定ルーチンとは無関係に所定時間ごとに異物特定処理を行うものとしてもよい。あるいは、統合判定ルーチンのステップS100を行ったあとに、各検査電極72と各ノズルプレート63との間でノイズ検査を行い、ノイズ検査でノイズありと判定した検査電極72とノズルプレート63との組み合わせについて、異物特定処理を行ってもよい。
【0090】
上述した実施形態では、電極側異物特定処理やヘッド側異物特定処理において、吐出検査時のノズルプレート63と検査電極72との相対位置とは異なる相対位置にてノズルプレート63と検査電極72とを対向させてノイズ検査を行って、異物領域を特定するものとしたが、吐出検査時と同じ相対位置にてノイズ検査を行って異物領域を特定するものとしてもよい。例えば、吐出検査時においても、電極側異物特定処理と同様に複数の小領域63を順次ノズルプレート63と対向させたり、ヘッド側異物特定処理と同様に複数の小領域73を順次検査電極72と対向させたりしてもよい。すなわち、吐出検査時のノズルプレート63と検査電極72との相対位置がどのようであっても、電極側異物特定処理において検査電極72の一部である複数の小領域を順にノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行うものとすれば、検査電極72のうち特定の領域に異物があることを検出できる。同様に、吐出検査時のノズルプレート63と検査電極72との相対位置がどのようであっても、ヘッド側異物特定処理においてノズルプレート63の一部である複数の小領域を順に検査電極72と対向させてノイズ検査を行うものとすれば、ノズルプレート63のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0091】
上述した実施形態では、各ノズルプレート63は各ヘッド62にそれぞれ取り付けられているものとしたが、これに限らず、吐出検査時に検査対象のノズルから吐出されるインクと接触可能であり、吐出検査時及びノイズ検査時に検査電極72と対向可能であればよい。例えば、ノズルプレート63とヘッド62とを分離して移動可能とし、吐出検査時やノイズ検査時にのみ図7のようにヘッド62とノズルプレート63とが接触するようにしてもよい。
【0092】
上述した実施形態では、ヘッドユニット60を移動させることによりノズルプレート63と検査電極72との位置関係を変更するものとしたが、ノズルプレート63と検査電極72との相対的な位置関係を変更するものであればよい。例えば、検査電極72を移動させるものとしてもよい。
【0093】
上述した実施形態では、ノズルプレート63をグランド電位、検査電極72を高電位にし、検査電極72の電圧変化を検出したが、ノズルプレート63を高電位、検査電極72をグランド電位にし、ノズルプレート63の電圧変化を検出してもよい。
【0094】
上述した実施形態では、インクジェットの方式として、ピエゾ素子を用いて圧力によりインクを吐出させる方式を例示したが、例えば、熱によりノズル内に気泡を発生させる方式などを採用してもよい。
【0095】
上述した実施形態では、本発明の流体吐出装置をインクジェットプリンター10に具体化した例を示したが、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体などを吐出する流体吐出装置に具体化してもよいし、流体として吐出可能な固体を吐出する流体吐出装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を溶解した液体を吐出する液体吐出装置、同材料を分散した液状体を吐出する液状体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置としてもよい。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体を吐出する粉体吐出式記録装置としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 プリンター、20 コントローラー、22 CPU、24 ユニット制御回路、26 インターフェース部、28 メモリー、30 ユニット群、40 搬送ユニット、42 上流側ローラー、44 下流側ローラー、46 巻取機構、48 プラテン、50 移動ユニット、52 X軸ステージ、54 Y軸ステージ、60 ヘッドユニット、62 ヘッド、62a〜62o 第1〜第15ヘッド、63 ノズルプレート、63a〜63o 第1〜第15ノズルプレート、70 検査ユニット、71 検査回路、71A〜71H 第1〜第8検査回路、72 検査電極、72A〜72H 第1〜第8検査電極、73 第1制限抵抗、74 高圧電源、75 第2制限抵抗、76 検出制御部、77 増幅器、78 検査用コンデンサー、79 平滑コンデンサー、81 ヘッド側検査領域、81a〜81o 第1〜第15ヘッド側検査領域、82 電極側検査領域、82a〜82o 第1〜第15電極側検査領域、82,83 小領域、82a〜82p,83a〜83p 第1〜第16小領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、異物検査方法及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体吐出装置として、ヘッドに形成された複数のノズルから吐出される液体を第1電位にする第1電極と、その第1電位とは異なる第2電位である第2電極との間に電圧を印加した状態で、複数のノズルから第2電極に向かって順次液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて各ノズルから液体が吐出されたか否かを判定するものが知られている。このようにノズルから液体が吐出されたか否かを判定する処理は、ノズル検査あるいは吐出検査と称される。また、この吐出検査における誤判定を防止するために、ノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出するノイズ検査を行うことが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1の液体吐出装置では、ノズルプレートに1000個を超えるノズルが形成されたヘッドの吐出検査として、15個のノズルを1つのブロックとし、ブロックごとにノズルの吐出検査を行う。また、1ブロックの吐出検査を行うごとに、1つのノイズ検査期間(非吐出ダミー期間ともいう)を設け、この期間中にノイズが発生したか否かによって、吐出検査中にノイズが混入したか否かを検査する。そして、ノイズ検査期間中にノイズが発生しなければ、その直前のブロックの吐出検査を有効とし、ノイズが発生したならば、その直前のブロックの吐出検査を無効として再度吐出検査を行う。また、吐出検査を繰り返してもノイズがなくならない場合には、ノイズを解消するための改善動作を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−64309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、ノイズの原因は電極に付着したインクや埃などの異物である場合が多い。そして、上述した従来のノイズ検査では、ノイズの発生の有無により異物の有無が検出できるに過ぎなかった。しかし、例えば異物を除去する際などにおいて、異物のある位置を特定したいという要望があった。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、電極のうち特定の領域に異物があることを検出することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体吐出装置は、
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、
前記液体と接触する第1電極と、
前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う吐出検査手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うノイズ検査手段と、
前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する異物判定手段と、
を備えたものである。
【0008】
この液体吐出装置では、第1電極と第2電極とを吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行う。そして、ノイズ検査手段によりノイズ検査でノイズが検出されたときには、第1電極又は第2電極のうち、ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する。こうすれば、ノイズ検査時の相対位置が吐出検査時と異なることで、吐出検査時に第1電極と第2電極とが対向する領域のうちの一部の領域についてノイズ検査を行うことができる。これにより、第1電極又は第2電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0009】
本発明の液体吐出装置において、前記第2電極は、該第2電極の一部の領域である小領域を複数有しており、前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第2電極の複数の小領域を順に前記第1電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第2電極のうち複数の小領域について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。なお、前記第2電極の小領域は、外観上視認できる領域である必要はなく、ノイズ検査手段が移動手段により第2電極の複数の小領域を順に第1電極と対向させて複数回のノイズ検査を行うことができればよい。例えば、ノイズ検査手段が複数の小領域の位置,大きさ等を予め記憶していたり、予め記憶した記憶手段から読み出したりするものとしてもよい。このとき、複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定するに際して、前記複数回のノイズ検査によりノイズが検出されたときには、前記第2電極のうち該ノイズが検出された相対位置において前記第1電極と対向する1以上の小領域に異物ありと判定するものとしてもよい。また、前記第2電極の複数の小領域は、該第2電極の少なくとも一部の領域をX方向に分割し且つ該X方向とは異なるY方向に分割してなる領域であり、前記移動手段は、前記第1電極と前記第2電極とをX方向及びY方向に相対的に移動可能な手段であるものとしてもよい。
【0010】
本発明の液体吐出装置において、前記第1電極は、該第1電極の一部の領域である小領域を複数有しており、前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第1電極の複数の小領域を順に前記第2電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第1電極のうち複数の小領域について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。なお、前記第1電極の小領域は、外観上視認できる領域である必要はなく、ノイズ検査手段が移動手段により第1電極の複数の小領域を順に第2電極と対向させて複数回のノイズ検査を行うことができればよい。例えば、ノイズ検査手段が複数の小領域の位置,大きさ等を予め記憶していたり、予め記憶した記憶手段から読み出したりするものとしてもよい。このとき、複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定するに際して、前記複数回のノイズ検査によりノイズが検出されたときには、前記第1電極のうち該ノイズが検出された相対位置において前記第2電極と対向する1以上の小領域に異物ありと判定するものとしてもよい。また、前記第1電極の小領域は、該第1電極の少なくとも一部の領域をX方向に分割し且つ該X方向とは異なるY方向に分割してなる領域であり、前記移動手段は、前記第1電極と前記第2電極とをX方向及びY方向に相対的に移動可能な手段であるものとしてもよい。
【0011】
本発明の液体吐出装置において、前記第2電極に対向可能な第3電極を備え、前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第2電極と前記第3電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第2電極側に異物があると判定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第3電極を用いて第1電極と第2電極とのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0012】
本発明の液体吐出装置において、前記第1電極に対向可能な第4電極を備え、前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第1電極と前記第4電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第1電極側に異物があると判定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、第4電極を用いて第1電極と第2電極とのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0013】
本発明の液体吐出装置において、前記異物判定手段は、前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極との相対位置を変えて前記ノイズ検査手段により追加のノイズ検査を行わせ、該追加のノイズ検査の結果に基づいて第1電極又は前記第2電極のうちいずれの側に異物があるかを特定する手段であるものとしてもよい。こうすれば、追加のノイズ検査を行うことで異物のある領域をより細かく特定することができる。この場合において、前記異物判定手段は、前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、該ノイズが検出された相対位置において前記第1電極及び前記第2電極の対向する領域のうち一方の電極の領域が他方の電極と対向し他方の電極の領域が一方の電極と対向しない相対位置で、前記ノイズ検査手段により追加のノイズ検査を行わせ、該追加のノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記一方の電極の領域側に異物ありと判定する手段であるものとしてもよい。
【0014】
本発明の液体吐出装置において、前記第2電極のうち、前記異物判定手段により異物ありと判定された領域に前記液体を吐出するよう前記ヘッドを制御するヘッド制御手段を備えたものとしてもよい。こうすれば、第2電極のうち異物ありと判定された領域に吐出された液体により異物を除去するか又は第1電極と異物との距離を離すことができ、以降の異物に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【0015】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触する第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられ自らの一部の領域である小領域を複数有している第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段により前記第2電極の複数の小領域を順に前記第1電極と対向させて、両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出するノイズ検査を複数回行うノイズ検査手段と、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する異物判定手段と、を備えたものであってもよい。こうすれば、第2電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0016】
本発明の液体吐出装置は、液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触し自らの一部の領域である小領域を複数有している第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、前記移動手段により前記第1電極の複数の小領域を順に前記第2電極と対向させて、両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出するノイズ検査を複数回行うノイズ検査手段と、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する異物判定手段と、を備えたものであってもよい。こうすれば、第1電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0017】
本発明の異物検査方法は、
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触する第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、を備え、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う液体吐出装置の異物検査方法であって、
(a)前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うステップと、
(b)前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定するステップと、
を含むものである。
【0018】
この異物検査方法では、ノイズ検査時の相対位置が吐出検査時と異なることで、吐出検査時に第1電極と第2電極とが対向する領域のうちの一部の領域についてノイズ検査を行うことができる。これにより、第1電極又は第2電極のうち特定の領域に異物があることを検出できる。なお、この異物検査方法において、上述した液体吐出装置の種々の態様を採用してもよいし、上述した液体吐出装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0019】
本発明のプログラムは、上述した異物検査方法の各ステップをコンピューターに実現させるためのものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターに配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムをコンピューターに実行させれば、上述した本発明の異物検査方法の各ステップが実現されるため、本発明の異物検査方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】インクジェット型のプリンター10の構成を表すブロック図。
【図2】プリンター10の概略断面図。
【図3】プリンター10の概略平面図。
【図4】ヘッドユニット60における複数のヘッド62の配置を示す説明図。
【図5】第1ヘッド62aに形成された複数のノズルの配置を示す説明図。
【図6】印刷の様子を示す説明図。
【図7】検査ユニット70の全体構成を表す説明図。
【図8】検査電極72の平面図。
【図9】駆動信号COMとそれに対応した検出信号とを示す説明図。
【図10】検出信号及び検出制御部での判定結果の一例を示す説明図。
【図11】第1ヘッド62aが有するノズルをブロック分けしたときのテーブル。
【図12】ノズルの統合判定ルーチンのフローチャート。
【図13】検出制御部76のメモリーに格納されたデータの説明図。
【図14】デジタル信号出力ルーチンのフローチャート。
【図15】検出制御部76の送信用レジスターのデータの一例を示す説明図。
【図16】統合判定の結果の一例を示す説明図。
【図17】異物特定処理のフローチャート。
【図18】切り分け処理のフローチャート。
【図19】ステップS500の前後の様子を示す説明図。
【図20】第1電極側検査領域82aの複数の小領域84a〜84pを示す説明図。
【図21】電極側異物領域特定処理のフローチャート。
【図22】電極側異物領域特定処理を行う様子を示す説明図。
【図23】ヘッド側異物領域特定処理のフローチャート。
【図24】ヘッド側異物領域特定処理を行う様子を示す説明図。
【図25】変形例の異物特定処理のフローチャート。
【図26】異物候補領域特定処理のフローチャート。
【図27】異物候補領域特定処理を行う様子を示す説明図。
【図28】変形例の切り分け処理のフローチャート。
【図29】異物のある領域を大まかに特定する様子を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を具現化した一実施形態について説明する。図1はインクジェット型のプリンター10の構成を表すブロック図、図2はプリンター10の概略断面図、図3はプリンター10の概略平面図である。
【0022】
プリンター10は、パーソナルコンピューターPCと通信可能に接続され、パーソナルコンピューターPCから印刷データを入力し、その印刷データに基づいて紙や布などの印刷媒体Sに画像を印刷する。このプリンター10は、種々の制御を実行したり指令を出力したりするコントローラー20と、コントローラー20と信号のやり取りを行いながら各種処理を実行するユニット群30とを備えている。
【0023】
コントローラー20は、プリンター10の全体の制御を司るCPU22と、ユニット群30の各ユニットを制御するユニット制御回路24とを備えている。CPU22は、ユニット群30に備えられた各種検出器から入力した検出信号やインターフェース部26を介してパーソナルコンピューターPCから受信した印刷データに基づいて、メモリー28に記憶された各種プログラムを実行し、メモリー28にデータを一時記憶しながらユニット制御回路24を介して各ユニットを制御する。ユニット群30には、印刷媒体Sを搬送する搬送ユニット40、ヘッドユニット60を移動する移動ユニット50、ノズルからインクが吐出するようヘッド62を駆動するヘッドユニット60、ヘッド62に形成されたノズルの検査を行う検査ユニット70などが含まれる。搬送ユニット40は、図2及び図3に示すように、モーター駆動される上流側ローラー42及び下流側ローラー44によってロール状の印刷媒体Sを搬送方向(X方向)の上流側から下流側へ搬送し、巻取機構46によって巻き取るものである。印刷媒体Sは、両ローラー42,44の間の印刷領域においてプラテン48の下側からバキューム吸着される。これにより、印刷中の印刷媒体Sの位置が固定される。移動ユニット50は、図2及び図3に示すように、ヘッドユニット60を印刷媒体Sの搬送方向(X方向)と印刷媒体Sの幅方向(Y方向)に自在に移動させるものである。この移動ユニット50は、X軸ステージ52によってヘッドユニット60をX方向に移動させ、Y軸ステージ54によってヘッドユニット60をX軸ステージ52と共にY方向に移動させる。ヘッドユニット60は、図3に示すように、複数のノズルを有するヘッド62を備え、コントローラー20からの駆動信号によってノズルからインクを印刷媒体Sに向かって吐出させるものである。このヘッドユニット60は、後述するように複数のヘッド62を備えている。各ヘッド62は、ピエゾ素子を用いて圧力によりインクを吐出する。検査ユニット70は、ノズルの詰まりの有無を検査するものであり、図3に示すように、ヘッドユニット60のヘッド62と対向可能な位置に検査電極72を備えている。この検査ユニット70の詳細については後述する。
【0024】
ヘッドユニット60について、更に詳しく説明する。図4は、ヘッドユニット60における複数のヘッド62の配置を示す説明図である。なお、図中では、ヘッド62の配置をプリンター10の上面から透視した状態を示した。図4に示すように、ヘッドユニット60は、15個のヘッド62を有する。15個のヘッド62は、Y方向に沿ってジグザグに並んでいる。説明の便宜上、Y方向の上端側から下端側に向かって、第1ヘッド62a,第2ヘッド62b,……、第14ヘッド62n,第15ヘッド62oと称することにする。このため、奇数番目のヘッド62a,62c,62e……はY方向に平行となるように直線状の列をなし、偶数番目のヘッド62b,62d,62f……はその隣でY方向に平行となるように直線状の列をなす。
【0025】
図5は、第1ヘッド62aに形成された複数のノズルの配置を示す説明図である。なお、図中では、ノズルの配置を第1ヘッド62aの上面から透視した状態を示した。また、第2ヘッド62b〜第15ヘッド62oはいずれも第1ヘッド62aと同じ構成である。第1ヘッド62aは、8色のノズル列を有している。具体的には、図5の左側から順に、マットブラックインクを吐出するMk列、グリーンインクを吐出するGr列、オレンジインクを吐出するOr列、クリアインクを吐出するCl列、フォトブラックインクを吐出するPk列、シアンインクを吐出するCy列、マゼンタインクを吐出するMa列、イエローインクを吐出するYe列である。各ノズル列は、180個のノズルを有する。180個のノズルは、Y方向に沿って、一定のノズルピッチ(1/180インチ)で並んでいる。説明の便宜上、Y方向の上端側のノズルから順に#1,#2,……,#180と称することにする。第1ヘッド62bの各ノズル列と第2ヘッド62bの各ノズル列とを見ると、第1ヘッド62aのY方向の下端側の4つのノズルのそれぞれのY座標位置は、第2ヘッド62bのY方向の上端側の4つのノズルのそれぞれのY座標位置と一致している。このようにY座標位置が同じ2つのノズルは、互いに補間し合いながらドットを形成することが可能である。こうした関係は、第αヘッドと第(α+1)ヘッド(αは1〜14までの整数)との間でも同様である。
【0026】
こうしたヘッドユニット60を用いて印刷媒体Sに印刷する手順を以下に概説する。まず、図2及び図3において、コントローラー20は、印刷領域に印刷媒体Sの新しい面が供給されるよう搬送ユニット40を制御すると共に、ヘッドユニット60が初期位置に来るように移動ユニット50を制御する。なお、初期位置とは、印刷領域におけるX方向の最上流の位置で且つY方向の最上端の位置である。初期位置に配置されているヘッドユニット60を、図2及び図3中、実線で示す。そして、コントローラー20は、ヘッドユニット60が印刷領域のX方向の最上流の位置から最下流の位置(図2及び図3中、1点鎖線で示す)まで移動するよう移動ユニット50を制御すると同時に、移動中のヘッド62のノズルからインクが吐出するようヘッドユニット60を制御することにより、X方向に並ぶドット列を形成する。この動作を1パスと称する。こうして1パス分のドット列を形成した後、コントローラー20は、ヘッドユニット60がY方向の下端側に移動するよう移動ユニット50を制御し、再び次の1パスを実行してX方向のドット列を形成する。Y方向の下端側に移動したヘッドユニット60の一例を図3の2点鎖線で示す。そして、印刷媒体Sの幅方向に応じて決まるパス数の動作を終了したとき、印刷媒体Sの印刷領域の画像が完成する。図6は、印刷の様子を示す説明図である。図6では、説明の便宜上、5つのノズルがY方向に平行に1列に並んだノズル列を例示した。この図6では、パス1〜パス4までの合計4パス分のX方向のドット列が順次形成されていく様子を示した。
【0027】
検査ユニット70について、以下に詳しく説明する。検査ユニット70は、検査回路71を備えている。検査回路71は、基本的には2つのヘッド62に1つの割合で形成されており、本実施形態ではヘッド数が15個であるため、それに対応して検査回路71は8個形成されている。説明の便宜上、8個の検査回路71を第1検査回路71A,第2検査回路71B,・・・と称することにする。図7は検査ユニット71の検査回路71のうちの1つの構成を表す説明図である。この検査回路71は、ヘッド62に形成されたノズルから吐出されたインクを受ける金属板状の検査電極72と、この検査電極72とヘッド62のノズルプレート63との間に電圧を印加する高圧電源74と、検査電極72とノズルプレート63との間に電圧を印加した状態でノズルからインクを吐出させたときの電圧信号に基づいてその信号の大小を判定する検出制御部76とを備えている。なお、ノズルプレート63は複数のノズルが形成されたプレートであり、検査ユニット70の一部としても機能するものである。また、ノズルプレート63のうち後述するノズル検査を行う際に検査電極72と対向する領域をヘッド側検査領域81と称し、検査電極72のうち後述するノズル検査を行う際にノズルプレート63と対向する領域を電極側検査領域82と称する。本実施形態では、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面(図7の下面)全てである。一方、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の面(図7の上面)のうち予め定められた一部の領域である。
【0028】
上述したように、検査回路71は基本的には2つのヘッド62に1つの割合で形成されているため、検査電極72も同様に、基本的には2つのヘッド62に1つの割合で形成され、1つの検査電極72は2つの電極側検査領域82を有している。図8に検査電極72の平面図を示す。本実施形態では、ヘッド数は15個であるため、それに対応して検査電極72は8個形成され、電極側検査領域82は15個存在している。説明の便宜上、8個の検査電極72を第1検査電極72A,第2検査電極72B,……と称し、15個の電極側検査領域82を第1電極側検査領域82a,第2電極側検査領域82b,……と称することにする。具体的には、図8に示すように、第1検査電極は第1電極側検査領域82aと第3電極側検査領域82cとを有し、第2検査電極72Bは第5電極側検査領域82eと第7電極側検査領域82gとを有し、第3検査電極72Cは第9電極側検査領域82iと第11電極側検査領域82kとを有し、第4検査電極72Dは第13電極側検査領域82mと第15電極側検査領域82oとを有し、第5検査電極72Eは第2電極側検査領域82bと第4電極側検査領域82dとを有し、第6検査電極72Fは第6電極側検査領域82fと第8電極側検査領域82hとを有し、第7検査電極72Gは第10電極側検査領域82jと第12電極側検査領域82lとを有し、第8検査電極72Hは第14電極側検査領域82nを有している。そして、第1〜第15電極側検査領域82a〜82oが第1〜第15ヘッド62a〜62o(図4参照)と一対一に対応している。すなわち、第1〜第15電極側検査領域82a〜82oが15個のノズルプレート63(第1〜第15ノズルプレート63a〜63oと称する)のヘッド側検査領域81(第1ヘッド側検査領域81a〜第15ヘッド側検査領域81oと称する)と一対一に対応している。なお、本実施形態ではヘッド62の数が15個であるため、第14ヘッド62nについては、1つの電極側検査領域82nを有し、1つのヘッド62n(ヘッド側検査領域81n)と対応している。このような検査電極72は、図3に示すように、印刷領域から左側(X方向の上流側)に外れた位置に設けられている。なお、図7には一つの検査電極72についての電気回路の構成を示したが、第1〜第8検査電極72A〜72Hのそれぞれについて、こうした電気回路が組まれている。
【0029】
高圧電源74は、検査電極72を所定電位にするための電源であり、ここでは600〜1000Vの直流電源によって構成される。高圧電源74と検査電極72との間には、第1制限抵抗73と第2制限抵抗75とが配置されている。これらの制限抵抗73,75は、高圧電源74と検査電極72との間に流れる電流を制御するものであり、ここでは両者の抵抗値を共に1.6MΩとした。
【0030】
検出制御部76は、高圧電源74による検査電極72とノズルプレート63との電圧印加を制御する。また、検出制御部76は、増幅器77で増幅された検査電極72の電圧信号(アナログ信号)に基づいて検査対象ノズルがインクを吐出したか否かを判定し、判定結果をデジタル信号としてコントローラー20に送信する。増幅器77と検査電極72との間には、検査電極72のバイアス成分(直流成分)を除去する検査用コンデンサー78が配置されている。また、第1制限抵抗73と第2制限抵抗75との間には、平滑コンデンサー79の一端が接続されている。この平滑コンデンサー79の他端は接地されている。平滑コンデンサー79は、電位の急激な変化を抑制するものである。ここでは、検査用コンデンサー78の容量を4700pF、増幅器77の増幅率を4000倍、平滑コンデンサー79の容量を0.1μFとした。
【0031】
次に、本実施形態のプリンター10の動作、特にノズルを検査するときの動作について説明する。コントローラー20は、検査対象ノズルの検査において、インクを良好に吐出できるか否かを調べる吐出検査と、吐出検査中にその判定結果に影響を与えるノイズが発生したか否かを調べるノイズ検査とを実施する。
【0032】
まず、吐出検査について説明する。図9は駆動信号COMとそれに対応した検出信号とを示す説明図であり、(a)は駆動信号COMの波形、(b)は増幅器77から出力される検出信号の波形を示す。コントローラー20は、ノズルプレート63と検査電極72との間に高圧電源74の電圧を印加した状態で、図9(a)に示すピエゾ素子を駆動する駆動信号COMを各ヘッド62に出力する。駆動信号COMは、20〜30個のインク吐出用パルスを出力するパルス出力区間と一定電位(中間電位)の休止区間との組み合わせとなっている。このような駆動信号COMがピエゾ素子に印加されると、そのピエゾ素子に対応するノズルから20〜30個のインク滴が吐出される。すると、これに対応して、増幅器77から検出信号(アナログ信号、図9(b)参照)が検出制御部76へ出力される。検出制御部76は、駆動信号COMに対応した検出信号の振幅Va(検出信号の最高電位VHと最低電位VLとの差)を検出し、検出された振幅Vaと予め定められた閾値Vth(例えば3V)とを比較する。そして、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも大きければ、検出制御部76は、「振幅大」(吐出良好)を表すデジタル信号を生成する。逆に、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも小さければ、「振幅小」(吐出不良)を表すデジタル信号を生成する。
【0033】
ここで、吐出検査の原理について説明する。図7において、ヘッド側検査領域81と電極側検査領域82とを対向させ、ノズルプレート63と検査電極72との間に電圧を印加した状態で、検査対象ノズルからインクが吐出するようにヘッドユニット60を制御したとき、実際にそのノズルからインクが吐出した場合には検査電極72の電圧信号が大きく変化するが、そのノズルからインクが吐出しなかった場合には検査電極72の電圧信号はほとんど変化しない。このため、その電圧信号の変化に基づいて検査対象ノズルがインクを吐出したか否かを判定することができる。この原理は正確には解明されていないが、次のように考えられる。一般的に、コンデンサーを構成する一対の電極板の間隔が変化すると、コンデンサーに蓄えられる電荷が変化することが知られている。グランド電位のノズルプレート63から高電位の検査電極72に向かってインクが吐出されると、グランド電位のインク滴と検査電極72との間隔d(図6参照)が変化し、コンデンサーの一対の電極板の間隔が変化したときのように、検査電極72に蓄えられる電荷が変化する。この結果、検査電極72に電荷が移動し、これに伴って変化する電圧を検査用コンデンサー78及び増幅器77が検出し、検出信号が検出制御部76に出力されると考えられる。
【0034】
次に、ノイズ検査について説明する。ノイズ検査期間中は、コントローラー20は、ヘッド側検査領域81と電極側検査領域82とを対向させ、ノズルプレート63と検査電極72との間に高圧電源74の電圧を印加した状態で、どのノズルのピエゾ素子にも駆動信号COMを付与しない。つまり、ノイズ検査期間は、インク滴を吐出させない非吐出期間になる。この期間中も、増幅器77から検出信号(アナログ信号)が検出制御部76へ出力される。検出制御部76は、この検出信号の振幅Vaと閾値Vthとを比較し、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも大きければ、「振幅大」(ノイズあり)を表すデジタル信号をコントローラー20へ送信する。逆に、検出信号の振幅Vaが閾値Vthよりも小さければ、「振幅小」(ノイズなし)を表すデジタル信号をコントローラー20へ送信する。図7において、ノズルプレート63と検査電極72との間に電圧を印加した状態で、どのノズルのピエゾ素子にも駆動信号COMを付与しない場合、本来であれば検査電極72の電圧信号はほとんど変化しないが、検査電極72にノイズが発生するとそのノイズによって検査電極72の電圧信号が大きく変化する。このため、その電圧信号の変化に基づいてノイズの有無を判定することができる。このようなノイズの発生原因は、ヘッド側検査領域81や電極側検査領域82に付着したインクや埃などの異物である場合が多い。なお、ノイズの原因となるのは、電圧が印加されたノズルプレート63と検査電極72とのうち対向する領域内に存在する異物である。そのため、検査電極72のうち電極側検査領域82以外の領域や、電圧が印加されていないノズルプレート63,検査電極72に存在する異物はノイズの発生原因とはならない。また、ノズルプレート63と検査電極72との一方に異物が付着している場合、他方と異物との距離が近いほど、ノイズが発生しやすい。
【0035】
吐出検査とノイズ検査の具体例について説明する。ここでは、1つのノズルに対して、吐出検査を2回行い、その後ノイズ検査を1回行う場合を例に挙げて説明する。そのときの増幅器77から出力される検出信号及び検出制御部76での判定結果の例を図10に示す。図10(a)では、2回の吐出検査で共に検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えているため、検出制御部76で共に「振幅大」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判定すると、そのノズルは「正常」と決定される。図10(b)では、2回の吐出検査で共に検出信号の振幅Vaが閾値Vth以下のため、検出制御部76で共に「振幅小」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判断すると、そのノズルは「異常」と決定される。図10(c)の検出信号では、1回目の吐出検査で検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えたため、検出制御部76で「振幅大」のデジタル信号が生成され、2回目の吐出検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査で振幅Vaが閾値Vth以下のため「振幅小」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判断すると、そのノズルは「異常」と決定される。つまり、複数の吐出検査のうち1回でも「振幅小」のものがあれば、そのノズルは詰まり等が生じている可能性があることから、「異常」と判定するのである。図10(d)では、2回の吐出検査で共に検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えているため、検出制御部76で共に「振幅大」のデジタル信号が生成され、その後のノイズ検査でも振幅Vaが閾値Vthを超えたため「振幅大」のデジタル信号が生成される。これらの3つのデジタル信号を統合して判断すると、そのノズルは「不明」と決定される。ノイズ検査で振幅Vaが閾値Vthを超えたということは、その前の吐出検査においてノイズが混入している可能性が高く、ノイズのせいで振幅Vaが閾値Vthを超えた可能性があるため、正常か異常かを判定できず、「不明」と判定するのである。このように、ノイズ検査の結果が「振幅大」の場合には、その直前の吐出検査はノイズの影響を受けている可能性が高いことから、統合判断では吐出検査の結果にかかわらず「不明」と判定する。
【0036】
次に、コントローラー20が実行するノズルの統合判定ルーチンと、検査ユニット70の検出制御部76が実行するデジタル信号出力ルーチンについて、説明する。ここでは、ノズルをブロック単位で処理していく。このため、各ルーチンの説明に先立って、ブロックの分け方について説明する。ブロックは、ヘッド62ごとに、そのヘッド62が有する複数のノズルを15個のノズルが1つのブロックになるように分ける。図11は、第1ヘッド62aが有する1440個(180個×8列)のノズルをブロック分けしたときの様子を示すテーブルである。具体的には、Mk列において、#1〜#15を第1ブロック、#16〜#30を第2ブロック、……という具合にブロック分けを行い、その後、Gr列、Or列、Cl列、Pk列、Cy列、Ma列、Ye列の順に同様にしてブロック分けを行う。なお、第2〜第15ヘッド62b〜62oについても図11と同様にしてブロック分けされる。
【0037】
ノズルの統合判定ルーチンについて、図12のフローチャートを用いて説明する。コントローラー20は、統合判定の実行タイミングが到来するごとに、この統合判定ルーチンを開始する。このルーチンが開始されると、コントローラー20は、まず、移動ユニット50を制御して、ヘッドユニット60の各ヘッド62が各検査電極72に対向するようにヘッドユニット60を移動させる(ステップS100)。これにより、各ヘッド62と各検査電極72とは図8に示した位置関係となる。次いで、各検査電極72と対向するヘッド62のうち各検査電極72についてそれぞれ1つを検査対象ヘッドに設定する(ステップS105)。なお、統合判定ルーチンにおけるステップS105以降の処理は、8つの検査回路71A〜Hのそれぞれについて独立して実行される。また、本実施形態では、各検査電極72と対向するヘッド62が複数あるときには、図8で上側に位置するヘッド62を先に検査対象ヘッドに設定するものとした。したがって、例えば第1検査回路71AについてステップS105以降の処理を行う際には、ステップS105でまず第1ヘッド62aを検査対象ヘッドに設定し、第2検査回路71BについてステップS105以降の処理を行う際には、ステップS105でまず第5ヘッド62eを検査対象ヘッドに設定する。他の検査回路71についても同様である。第8検査回路71Hについては、第14ヘッド62nのみと対向しているため、ステップS105で第14ヘッド62nを検査対象ヘッドに設定する。
【0038】
続いて、ブロックの番号を表す変数pに値1をセット(ステップS110)し、第pブロックを検査対象ブロックに設定して(ステップS120)、検査対象ブロックの検査を実行する(ステップS130)。具体的には、コントローラー20は、検査対象ヘッドの第pブロックに属する15個のノズルを順次、検査対象ノズルに設定し、検査対象ノズルのピエゾ素子に、図9(a)に示す駆動信号COMを2回連続して付与し、その後、駆動信号COMを所定期間付与しないようにする。これにより、検査対象ノズルは、2回の吐出検査と1回のノイズ検査とが実施されることになる。検査ユニット70の検出制御部76は、検査電極72とノズルプレート63との間に電圧を印加した状態で、増幅器77から出力される2回の吐出検査の検出信号と1回のノイズ検査の検出信号を取得し、検出制御部76の図示しない一時記憶領域に記憶する。そして、第pブロックに属する15個のノズルのすべてについて、各3つの検出信号を一時記憶した後、検出制御部76は、デジタル信号出力ルーチンを実行する。このときの検出制御部76の一時記憶領域に記憶されたデータを図13に示す。1〜3番目のデータは、第pブロックに属するノズルのうち番号(#1とか#2)の最小のものについての吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の検出信号であり、4〜6番目のデータは、第pブロックに属するノズルのうち番号が2番目に小さいものについての吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の検出信号である。これ以降のデータについても、意味するところは同じであるため説明を省略する。
【0039】
ここで、検出制御部76が実行するデジタル信号出力ルーチンについて、図14のフローチャートを用いて説明する。このルーチンは、第pブロックに含まれるすべてのノズルの検出信号の検出が終了した時点、つまり、図13に示す一時記憶領域に1〜45個のデータがすべて記憶された時点で開始される。このルーチンが開始されると、検出制御部76は、まず、変数kに値1をセットする(ステップS310)。続いて、検出制御部76の一時記憶領域から第k番目のデータを読み出し(ステップS320)、そのデータつまり検出信号の振幅Vaが閾値Vthを超えるか否かを判定する(ステップS330)。そして、振幅Vaが閾値Vthを超えていたならば、「振幅大」を表すデジタル信号を検出制御部76の図示しない送信用レジスターの第k番目の位置に書き込む(ステップS340)。一方、振幅Vaが閾値Vth以下ならば、「振幅小」を表すデジタル信号を検出制御部76の送信用レジスターの第k番目の位置に書き込む(ステップS350)。そして、ステップS340又はステップS350で送信用レジスターへの書き込みが終了した後、変数kは上限値(ここでは1ブロックに含まれるノズル数は15個のため上限値は値45)に達しているか否かを判定し(ステップS360)、変数kが上限値に達していなければ、変数kを1インクリメントし(ステップS370)、再びステップS320に戻る。一方、変数kが上限値に達していたならば、送信用レジスターの内容をコントローラー20へ送信し(ステップS380)、このルーチンを終了する。つまり、検出制御部76は、送信用レジスターのフル容量分のデジタル信号(45個のデジタル信号)が格納されたあと、その送信用レジスターの内容をコントローラー20へ送信する。このときの送信用レジスターのデータを図15に示す。
【0040】
図12に戻り、コントローラー20は、検出制御部76から1ブロック分のデジタル信号(45個のデジタル信号)を取得したか否かを判定し(ステップS140)、取得していなければ再びステップS140に戻る。一方、検出制御部76から1ブロック分のデジタル信号を取得したならば、統合判定を実施し、ノズルと統合判定結果との対応付けを行う(ステップS150)。例えば、検査対象ブロックが第1ブロックの場合には、45個のデジタル信号のうち1〜3番目のデジタル信号がMk列の#1のノズルの吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の結果を表し、4〜6番目のデジタル信号がMk列の#2のノズルの吐出検査(1回目)、吐出検査(2回目)及びノイズ検査の結果を表す、という具合に、どのデジタル信号がどのノズルに対応しているかを特定していく。それと共に、特定したノズルにつき、それに対応した3つのデジタル信号を統合判定して正常か異常かを決定する。なお、正常か異常かの判定(統合判定)は、既に図10を用いて説明したとおりである。こうして統合判定を実施した後、特定したノズルにつき、統合判定の結果を対応づける。その一例を図16に示す。図16(a)は検査制御部76からのデジタル信号、図16(b)はノズルごとの統合判定の結果を示す。
【0041】
続いて、コントローラー20は、第pブロックに含まれる15個のノズルの統合判定の結果に「不明」のものがあるか否かを判定する(ステップS160)。ステップS160で「不明」のものがあったならば、再検査回数Sを値1インクリメントし(ステップS170)、再検査回数Sが閾値Sthを超過したか否かを判定する(ステップS180)。
ここで、再検査回数Sは、今回の第pブロックを再度検査対象ブロックに設定するステップS190(後述)の繰り返し回数を表す値であり、初期値は値0に設定されている。また、閾値Sthは、ステップS190の繰り返し回数の上限値(例えば値5)として設定されている値である。そして、このステップS180で否定的な判定をしたときには、今回の第pブロックを再度検査対象ブロックに設定し(ステップS190)、ステップS130に戻る。これにより、ブロック単位で再検査が実施される。
【0042】
最初の検査において不明ノズルがない場合や再検査により不明ノズルがなくなったときには、ステップS160で否定的な判定をして、再検査回数Sを値0に初期化し(ステップS215)、第pブロックのうちの15個の特定されたノズルとその統合判定の結果との対応関係を確定してメモリー28に保存する(ステップS220)。その後、変数pは上限値(ここではブロックの総数)に達しているか否かを判定し(ステップS230)、変数pが上限値に達していなければ、変数pを1インクリメントし(ステップS240)、再びステップS120に戻る。これにより、次のブロックの検査が実施されることになる。
【0043】
ステップS230で変数pが上限値に達していたならば、検査電極72と対向する未検査のヘッド62があるか否かを判定する(ステップS250)。例えば、第1検査回路71Aについて、上述したステップS105により第1ヘッド62aを検査対象ヘッドに設定してノズル検査を行ったときには、第1検査電極72Aと対向する第3ヘッド62cが未検査であるため、ステップS250で肯定的な判定をする。そして、肯定的な判定をすると、未検査のヘッドを次の検査対象ヘッドに設定して(ステップS260)、ステップS110に戻る。これにより、未検査のヘッドについてノズル検査が行われることになる。そして、検査電極72と対向する未検査のヘッドがなくなったときには、ステップS250で肯定的な判定をして、本ルーチンを終了する。
【0044】
一方、再検査を繰り返しても不明ノズルがなくならず、再検査回数Sが閾値Sthを超えたときには、ステップS180で肯定的な判定をし、異物特定処理を行う(ステップS270)。この異物特定処理は、閾値Sth回の再検査を行っても不明ノズルがなくならず正しい吐出検査の結果が得られないときに、ノイズの原因である異物の位置を特定し、可能であればノイズの原因を取り除く処理である。以下、統合判定ルーチンの説明を中断して、異物特定処理について図17のフローチャートを用いて説明する。なお、説明の便宜のため、以降の処理は第1ヘッド62aを検査対象ヘッドとし検査回路71Aを用いて統合判定ルーチンを実行しているときにステップS180で肯定的な判定をした場合を例として説明する。この場合、ノイズ検査において対向していたのは第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとであるため、これらの領域のいずれかに異物があることによりノイズが発生しているものとする。
【0045】
この異物特定処理が開始されると、コントローラー20は、まず、統合判定ルーチンを停止する(ステップS400)。上述したように、統合判定ルーチンにおけるステップS105以降の処理は、8つの検査回路71A〜Hのそれぞれについて独立して実行されている。そこで、今回異物特定処理を実行する検査回路71(第1検査回路71A)を用いた統合判定ルーチンだけでなく、それ以外の検査回路71(第2〜第8検査回路71B〜71H)を用いた統合判定ルーチンについても停止するのである。後述する処理でヘッドユニット60を移動させる処理を行うことから、このようにしている。続いて、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域とのいずれに異物があるかを特定する切り分け処理を行う(ステップS405)。以下、異物特定処理の説明を中断して、切り分け処理について図18のフローチャートを用いて説明する。
【0046】
この切り分け処理が実行されると、コントローラー20は、まず、統合判定ルーチンのステップS100によって対向している第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのうち、第1電極側検査領域82aが第1ノズルプレート63a(第1ヘッド側検査領域81a)以外のノズルプレート63と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS500)。図19(a),(b)は、ステップ500の処理を行う前と行った後とにおける各ヘッド側検査領域81と各電極側検査領域82との位置関係を示す説明図である。図19(a)に示すように、ステップS500の処理を行う前は、統合判定ルーチンのステップS100によって第1ヘッド側検査領域81a〜第15ヘッド側検査領域81oと第1〜第15電極側検査領域82a〜82oとが一対一に対応している。この状態でステップS500の処理を行うと、コントローラー20がヘッドユニット60をY方向上端側に移動させて、図19(b)に示すように第1電極側検査領域82aと第3ノズルプレート63c(第3ヘッド側検査領域81c)とを対向させる。なお、第1電極側検査領域82aと対向させるのは第2〜第15ヘッド側検査領域81b〜81oであればよく、第3ヘッド側検査領域81cに限られない。
【0047】
続いて、コントローラー20は、ステップS500で対向させた第3ヘッド側検査領域81cと第1電極側検査領域82aとを用いてノイズ検査を行う(ステップS510)。すなわち、第3ノズルプレート63cと第1検査電極72Aとの間に高圧電源74の電圧を印加した状態で、ノイズ検査期間中はノズルからインク滴を吐出させないようにヘッドユニット60及び検査ユニット70を制御し、ノイズ検査の結果を表すデジタル信号を送信するよう検出制御部76を制御する。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS520)。このステップS520で肯定的な判定をすると、第1電極側検査領域82aに異物があると判定する(ステップS530)。すなわち、第1電極側検査領域82aを第1ヘッド側検査領域81a以外のヘッド側検査領域81と対向させ、第1ヘッド側検査領域81aを電圧の印加された検査電極72と対向させない状態においてノイズ検査を行ってもノイズが発生したため、第1電極側検査領域82a側に異物があると判定するのである。
【0048】
一方、ノイズ検査の結果が「振幅小」(ノイズなし)でありステップS520で否定的な判定をしたときには、第1ヘッド側検査領域81aが第1電極側検査領域82aを有する第1検査電極72a以外の検査電極72と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS540)。すなわち、第1ヘッド側検査領域81aと第2〜第8検査電極72B〜72Hのいずれかとを対向させる。なお、ここでは第1ヘッド側検査領域81aと第2検査電極72Bの第5電極側検査領域82eとを対向させるものとして以降の説明を行う。
【0049】
続いて、コントローラー20は、ステップS540で対向させた第1ヘッド側検査領域81aと第5電極側検査領域82eとを用いてノイズ検査を行う(ステップS550)。この処理は、第1ヘッド側検査領域81aと第5電極側検査領域82eとを対向させ第1ノズルプレート63aと第2検査電極72Bとの間に高圧電源74の電圧を印加した状態で行う点以外は、上述したステップS510と同様に行う。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS560)。このステップS560で肯定的な判定をすると、第1ヘッド側検査領域81aに異物があると判定する(ステップS570)。すなわち、第1ヘッド側検査領域81aを第1検査電極72A以外の検査電極72と対向させ第1電極側検査領域82aを電圧の印加されたノズルプレート63と対向させない状態においてノイズ検査を行ってもノイズが発生したため、第1ヘッド側検査領域81a側に異物があると判定するのである。
【0050】
一方、ノイズ検査の結果が「振幅小」(ノイズなし)でありステップS560で否定的な判定をしたときには、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのいずれにも異物はないと判定する(ステップS580)。このような場合は、例えば異物が移動して第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとの間に存在しなくなった場合など、切り分け処理を実行する間に何らかの理由によりノイズが発生しない状態になったものと考えられる。
【0051】
そして、ステップS530,S570,S580のいずれかを実行して、第1ヘッド側検査領域81aに異物があるか第1電極側検査領域82aに異物があるか又は異物がないかの判定を行うと、コントローラー20は判定結果をメモリー28に記憶して(ステップS590)切り分け処理を終了する。
【0052】
図17の異物特定処理の説明に戻る。ステップS405の切り分け処理を行うと、コントローラー20は、ステップS590で記憶した切り分け処理の判定結果を調べる(ステップS410)。そして、第1電極側検査領域82aに異物があるとの判定結果(切り分け処理でステップS530を実行)であったときには、第1電極側検査領域82aにおける異物の位置を特定する電極側異物領域特定処理を行う(ステップS415)。
【0053】
この電極側異物領域特定処理は、第1電極側検査領域82aを複数の小領域に分割し、異物のある小領域を異物領域として特定する処理である。そこで、まず、複数の小領域について説明する。図20は、第1電極側検査領域82aを複数の小領域84に分割した様子を示す説明図である。なお、図20では、検査電極72のうち第1検査電極72Aのみを拡大して示している。図示するように、第1電極側検査領域82aをX方向,Y方向にそれぞれ4分割して16個の小領域84(第1〜第16小領域84a〜84p)としている。この小領域84の位置や大きさはメモリー28に予め記憶されており、必要に応じてCPU22が読み出して、第1電極側検査領域82aのうち各小領域84の位置を特定できるようになっている。以下、異物特定処理の説明を中断して、電極側異物領域特定処理について図21のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
この電極側異物領域特定処理が開始されると、コントローラー20は、まず、変数mに値1をセットする(ステップS600)。そして、複数の小領域84のうち第m小領域84がノズルプレート63と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS610)。なお、第m小領域84と対向させるノズルプレート63は、第1〜第15ノズルプレート63a〜63oのうちのいずれでもよい。そして、ステップS610で対向させたノズルプレート63と第1電極側検査領域82a(第1検査電極72A)とを用いてノイズ検査を行う(ステップS620)。この処理は、上述したステップS510やステップS550と同様の処理である。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS630)。このステップS630で否定的な判定をすると、変数mが上限値(ここでは小領域84の総数である値16)であるか否かを判定し(ステップS640)。上限値でなかったときには変数mを値1インクリメントして(ステップS650)、上述したステップS610に戻る。これにより、ステップS630でノイズありと判定するか又は変数mが上限値となってステップS640で肯定的な判定をするまでステップS610〜S650を繰り返す。こうすることで、第1〜第16小領域84a〜84pを順次ノズルプレート63と対向させてノイズ検査が行われることになる。
【0055】
そして、ステップS630でノイズありと判定すると、第1電極側検査領域82aの第m小領域84を異物領域として特定して(ステップS660)、電極側異物特定処理を終了する。一方、ステップS640で変数mが上限値であると判定すると、第1電極側検査領域82aの異物領域を特定せず(ステップS670)、電極側異物特定処理を終了する。
【0056】
ここで、電極側異物特定処理を行う様子を図22を用いて説明する。ここでは第6小領域84fに異物がある場合を例として説明する。まず、電極側異物特定処理を開始して最初のステップS610を行うと、変数mを値1とし、図22(a)に示すように第1電極側検査領域82aの第1小領域84aとノズルプレート63とを対向した状態にする。続いて、第1小領域84aには異物はないため、ステップS620のノイズ検査を行ってステップS630でノイズなしと判定する。そして、変数mは値1であるためステップS640で否定的な判定をし、ステップS650で変数mを値2にインクリメントしてステップS610に戻る。このステップS620では、変数mが値2であるため、図22(b)に示すように第1電極側検査領域82aの第2小領域84bとノズルプレート63とを対向した状態にする。第2小領域84bにも異物はないため、次のステップS630でも否定的な判定をして、ステップS640,S650を行ってステップS610に戻る。以降同様に、ステップS650で変数mが値6になるまでステップS610〜S650を繰り返して、第1小領域84a〜第5小領域84eまではノイズなしと判定されることになる。そして、変数mが値6になったあとのステップS610では、図22(c)に示すように第6小領域84fとノズルプレート63とが対向した状態になる。第6小領域84fには異物があるため、次のステップS630では肯定的な判定をして、ステップS660では第6小領域84fを異物領域として特定することになる。
【0057】
なお、図22(c)では第6小領域84fの他に第1,第2,第5小領域84a,84b,84eもノズルプレートと対向しているため、この状態でのノイズ検査のみでは第1,第2,第5,第6小領域84a,84b,84e,84fのいずれに異物があるかは特定できない。しかし、第1,第2,第5小領域84a,84b,84eについては、変数mがそれぞれ値1,2,5のときにノイズ検査を行いステップS630で否定的な判定をしているため、これらには異物がないと考えられる。そのため、変数mが値6のときのステップS630で肯定的な判定をしたときには、第6小領域83fを異物領域として特定するのである。
【0058】
図17の異物特定処理の説明に戻る。ステップS415で電極側異物領域特定処理を行うと、コントローラー20は、この処理で異物領域が特定されたか否かを判定する(ステップS420)。電極側異物領域特定処理でステップS660を実行していたときには、このステップS420で肯定的な判定をして、特定した異物領域にノズルからインクを吐出するようヘッドユニット60を制御する(ステップS425)。これは、インクにより異物領域中の異物を除去するか又はノズルプレート63と異物との距離を離して、ノイズが発生しないようにするために行う処理である。なお、上述した電極側異物領域特定処理のステップS660を実行するときには、例えば図22(c)に示したように異物領域(第6小領域84f)はノズルプレート63(ヘッド62)と対向しているため、ステップS425においてヘッドユニット60を移動させる必要はない。また、ヘッド62の複数のノズルのうち、異物領域と対向しているノズルのみからインクを吐出すればよい。こうすることで第1電極側検査領域82aの全てにインクを吐出する場合と比べて無駄なインクの消費を抑えることができる。なお、ステップS425におけるインクの吐出は、一度各ノズルから吐出させたインクの間を埋めるようにさらにヘッドユニット60を移動させて再度インクを吐出させるなど、ヘッドユニット60の移動とインクの吐出とを複数回行ってもよい。また、インクの吐出量は、例えば吐出検査時よりも多量のインクを吐出するようにしてもよい。さらに、ヘッドから吐出可能な複数種類のインクのうち他よりも乾きやすいインクを吐出するものとしてもよい。こうすれば、乾きにくいインクを吐出する場合と比べて吐出したインクに新たに異物が付着してノイズの原因となることを抑制できる。
【0059】
異物領域へのインクの吐出を行うと、コントローラー20は、ノイズ検査を行う(ステップS430)。この処理は、異物領域を有する第1電極72Aといずれかのノズルプレート63とを用いて上述したステップS510と同様に行えばよい。なお、このノイズ検査は、インクの吐出により異物領域でノイズが発生しなくなったか否かを確認するために行うものである。そのため、第1電極72Aのうち異物領域がノズルプレート63と対向してさえいればよい。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS435)。このステップS435で否定的な判定をすると、異物領域の異物によるノイズが発生したままであるため、エラーメッセージを出力して(ステップS440)、異物特定処理を終了する。エラーメッセージの出力は、例えばプリンター10の図示しないディスプレイに、異物のある検査電極72及びそのうちの異物領域の位置を表示して検査電極72の清掃を促すエラー画面を表示することで行う。異物領域を特定できるようにエラーメッセージを出力することで、ユーザーが異物のない領域に対して不要な清掃を行うことを防止できる。
【0060】
一方、電極側異物領域特定処理でステップS670を実行しておりステップS420で否定的な判定をしたときや、ステップS430のノイズ検査の結果がノイズなしでありステップS435で否定的な判定をしたときには、ステップS400で停止していた統合判定ルーチンを再開して(ステップS445)、異物特定処理を終了する。これにより、各検査回路71を用いた統合判定ルーチンが全て再開される。
【0061】
また、ステップS405の切り分け処理の判定結果が、ステップS410で第1ヘッド側検査領域81aに異物があるとの判定結果(切り分け処理でステップS570を実行)であったときには、第1ヘッド側検査領域81aにおける異物の位置を特定するヘッド側異物領域特定処理を行う(ステップS450)。このヘッド側異物領域特定処理は、第1ヘッド側検査領域81aを複数の小領域に分割し、異物のある小領域を異物領域として特定する処理であり、上述した電極側異物領域特定処理と同様に行うことができる。以下、異物特定処理の説明を中断して、ヘッド側異物領域特定処理について図23のフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態では第1電極側検査領域82aと同様に、第1ヘッド側検査領域81aをX方向,Y方向にそれぞれ4分割して16個の小領域83(第1〜第16小領域83a〜83p)とするものとした。この小領域83の位置や大きさはメモリー28に予め記憶されており、必要に応じてCPU22が読み出して、第1ヘッd側検査領域81aのうち各小領域83の位置を特定できるようになっている。
【0062】
このヘッド側異物領域特定処理が開始されると、コントローラー20は、まず、変数nに値1をセットする(ステップS700)。そして、複数の小領域83のうち第n小領域が検査電極72と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる(ステップS710)。なお、第n小領域と対向させる検査電極72は、第1〜第8検査電極72A〜72Hのうちのいずれでもよい。そして、ステップS710で対向させた検査電極72と第1ヘッド側検査領域81a(第1ノズルプレート63a)とを用いてノイズ検査を行う(ステップS720)。この処理は、上述したステップS510やステップS550と同様の処理である。そして、検査制御部76から送信されたノイズ検査の結果が「振幅大」(ノイズあり)であったか否かを判定する(ステップS730)。このステップS730で否定的な判定をすると、変数nが上限値(ここでは小領域83の総数である値16)であるか否かを判定し(ステップS740)。上限値でなかったときには変数nを値1インクリメントして(ステップS750)、上述したステップS710に戻る。これにより、ステップS730でノイズありと判定するか又は変数nが上限値となってステップS740で肯定的な判定をするまでステップS710〜S750を繰り返す。こうすることで、第1〜第16小領域83a〜83pを順次検査電極72と対向させてノイズ検査が行われることになる。
【0063】
そして、ステップS730でノイズありと判定すると、第1ヘッド側検査領域81aの第n小領域83を異物領域として特定して(ステップS760)、ヘッド側異物特定処理を終了する。一方、ステップS740で変数nが上限値であると判定すると、第1ヘッド側検査領域81aの異物領域を特定せず(ステップS770)、ヘッド側異物領域特定処理を終了する。このヘッド側異物領域特定処理を行うことで、電極側異物領域特定処理と同様に、第1〜第16小領域83a〜83pのうちいずれかを異物領域として特定するか、又は異物領域を特定しない処理が行われる。
【0064】
ヘッド側異物領域特定処理を行う様子を図22に示す。ここでは第13小領域83nに異物がある場合を例として説明する。変数nが値1,2,14のときのステップS710を行った状態をそれぞれ図22(a),(b),(c)に示す。図22(a),(b)に示するように、変数nが値1,2のときには異物のある第14小領域83nは検査電極72と対向していないため、ステップS730ではノイズなしと判定することになる。変数nが値3〜13のときも同様である。そして、変数nが値14のときのステップS710を行うと、図22(c)に示すように第14小領域83nが検査電極72と対向するため、ステップS730でノイズありと判定して、ステップS760で第14小領域83nを異物領域として特定することになる。なお、図示するように、ステップS710で第n小領域83と対向させるのは検査電極72であればよく、電極側検査領域82である必要はない。
【0065】
図17の異物特定処理の説明に戻る。ステップS450でヘッド側異物領域特定処理を行うと、コントローラー20は、この処理で異物領域が特定されたか否かを判定する(ステップS455)。ヘッド側異物領域特定処理でステップS760を実行していたときには、このステップS455で肯定的な判定をし、エラーメッセージを出力して(ステップS460)、異物特定処理を終了する。エラーメッセージの出力は、上述したステップS440と同様に、例えばプリンター10の図示しないディスプレイに異物のあるノズルプレート63及びそのうちの異物領域の位置を表示してノズルプレート63の清掃を促すエラー画面を表示することで行う。
【0066】
一方、ヘッド側異物領域特定処理でステップS770を実行しておりステップS455で否定的な判定をしたときには、上述したステップS445に進んで統合判定ルーチンを再開して、異物特定処理を終了する。また、切り分け処理でステップS580を実行しておりステップS410で異物なしと判定したときも、同様にステップS445に進んで統合判定ルーチンを再開し、異物特定処理を終了する。
【0067】
図12の統合判定ルーチンの説明に戻る。ステップS270の異物特定処理を行うと、コントローラー20は、異物特定処理で統合判定ルーチンを再開したか否かを判定する(ステップS280)。この判定は、上述した異物特定処理のステップS445を行ったか否かを判定することにより行う。そして、異物特定処理でステップS445を行っておりステップS280で肯定的な判定をすると、ステップS190に進んで以降の処理を行う。ここで、異物特定処理を行っている間にノイズが発生しなくなった場合は、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとを用いた統合判定ルーチンについても継続が可能と考えられる。そのため、ステップS190に進んで処理を再開するのである。一方、異物特定処理でステップS440又はステップS460を行っておりステップS280で否定的な判定をすると、そのまま本ルーチンを終了する。すなわち、異物によるノイズが発生したままでありユーザーによる清掃作業等が必要となるため、統合判定ルーチンを中断して終了するのである。この場合、コントローラー20は、第1検査電極72a以外の検査電極72を用いた他の統合判定ルーチンについても再開することなく終了する。このように、異物特定処理を行うことで、異物が検査電極72とノズルプレート63とのいずれ側にあるかを切り分け、さらに異物がどの位置にあるかを特定して、特定した異物領域に対する異物の対処を行うのである。
【0068】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のヘッド62が本発明のヘッドに相当し、ノズルプレート63が第1電極に相当し、検査電極72が第2電極に相当し、移動ユニット50が移動手段に相当し、コントローラー20と検査ユニット70とが吐出検査手段及びノイズ検査手段に相当し、コントローラー20が異物判定手段及びヘッド制御手段に相当し、図18の切り分け処理で第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのいずれに異物があるかを特定する場合における第2〜第8検査電極72B〜72Hが第3電極に相当し、図18の切り分け処理で第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのいずれに異物があるかを特定する場合における第2〜第15ノズルプレート63b〜63oが第4電極に相当する。なお、本実施形態では、プリンター10の動作を説明することにより本発明の異物検査方法の一例も明らかにしている。
【0069】
以上説明した本実施形態のプリンター10によれば、ノズルプレート63と検査電極72とを吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両者間に電圧を印加した状態で、複数のノズルから液体を吐出させないときの両者間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行う。そして、ノイズ検査手段によりノイズ検査でノイズが検出されたときには、ノズルプレート63又は検査電極72のうち、ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する。こうすれば、ノイズ検査時の相対位置が吐出検査時と異なることで、吐出検査時にノズルプレート63と検査電極72とが対向する領域のうちの一部の領域についてノイズ検査を行うことができる。これにより、ノズルプレート63又は検査電極72のうち特定の領域に異物があることを検出できる。また、検査電極72の電極側検査領域82のうち複数の小領域84について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。さらに、ノズルプレート63のヘッド側検査領域81のうち複数の小領域83について、順にノイズ検査を行って異物の位置を特定するため、異物のある領域をより精度よく特定することができる。
【0070】
また、ノズルプレート63のうちの1つ(例えば第1ノズルプレート63a)及び検査電極72のうちの1つ(例えば第1検査電極72A)のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、第1検査電極72Aと第1ノズルプレート63a以外のノズルプレート63とを対向させ両者間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両者間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには第1検査電極72A側に異物があると判定する。このため、第1ノズルプレート63a以外のノズルプレート63を用いて第1検査電極72Aと第1ノズルプレート63aとのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0071】
さらに、ノズルプレート63のうちの1つ(例えば第1ノズルプレート63a)及び検査電極72のうちの1つ(例えば第1検査電極72A)のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、第1ノズルプレート63aと第1検査電極72A以外の検査電極72とを対向させ両者間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両者間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには第1ノズルプレート63a側に異物があると判定する。このため、第1検査電極72A以外の検査電極72を用いて第1検査電極72Aと第1ノズルプレート63aとのいずれに異物があるかを特定することができる。
【0072】
さらにまた、検査電極72のうち異物領域として特定された領域にインクを吐出するため、吐出されたインクにより異物を除去するか又はノズルプレート63と異物との距離を離すことができ、以降の異物に起因するノイズの発生を抑制することができる。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、図17の異物特定処理において、ノズルプレート63側と検査電極72側とのいずれに異物があるかを特定する切り分け処理を先に行い、切り分け処理の判定結果に基づいて電極側異物領域特定処理又はヘッド側異物領域特定処理を行って異物領域を特定するものとしたが、先に異物領域を特定してから切り分け処理を行ってもよい。この場合の変形例の異物特定処理のフローチャートを図25に示す。なお図25では、図17の異物特定処理と同じ処理については同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。この変形例の異物特定処理では、ステップS400の処理を行ったあと、異物候補領域特定処理を行う。この異物候補領域特定処理のフローチャートを図26に示す。なお図26では、図21の電極側異物領域特定処理と同じ処理については同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。この異物候補領域特定処理は、ステップS630又はステップS640で肯定的な判定をするまでステップS600〜S650を繰り返す点は電極側異物領域特定処理と同じである。そして、ステップS630で肯定的な判定をすると、電極側検査領域82の小領域84のうち直前のステップS610で初めてノズルプレート63と対向した領域と、ヘッド側検査領域81の小領域83のうち直前のステップS610で初めて検査電極72と対向した領域とを異物候補領域として特定して(ステップS660a)、異物候補領域特定処理を終了する。
【0075】
この異物候補領域を特定する様子を図27を用いて説明する。なお、図27は、第1電極側検査領域82aと第1ヘッド側検査領域81aとについて異物領域特定処理を行う様子を示している。また、異物は第1ヘッド側検査領域81aの小領域83cにあるものとする。異物候補領域特定処理を開始して最初のステップS610を行うと、コントローラー20は図27(a)に示すように第1電極側検査領域82aの第1小領域83aを第1ヘッド側検査領域81aの第1小領域83aと対向させた状態とする。そして、この状態でノイズ検査を行ってもノイズなしと判定するため、コントローラー20は変数mを値2としてステップS610の処理を行う。これにより、図27(b)に示すように第1電極側検査領域82aの第1小領域83aを第1ヘッド側検査領域83aの第2小領域83bと対向させた状態とする。そして、この状態ではノイズ検査を行ってノイズありと判定するため、ステップS660aの処理を行う。この処理により、電極側検査領域82の小領域84のうち直前のステップS610で初めてノズルプレート63と対向した領域である第2小領域84bと、ヘッド側検査領域81の小領域83のうち直前のステップS610で初めて検査電極72と対向した領域である第3小領域83c,第7小領域83g(の一部)とを異物候補領域として特定する。すなわち、ノイズがあると判定された位置関係において対向していたのは第1電極側検査領域82aの第1,第2小領域84a,84bと、第1ヘッド側検査領域81aの第1〜第3小領域83a〜83c及び第5〜第7小領域83e〜83f(の一部)の領域であるが、そのうちの第1小領域84a、第2〜第3小領域83a〜83b、第5〜第6小領域83e〜83fについては図27(a)に示すように直前のステップS610より以前にノイズなしと判定しているため、第2小領域84b,第3小領域83c,第7小領域83g(の一部)のみを異物候補領域として特定するのである。このように、ステップS660aでは、電極側検査領域82とヘッド側検査領域81とのいずれに異物があるかが不明なため、電極側検査領域82とヘッド側検査領域81との両方について異物候補領域を特定するのである。一方、ステップS640で肯定的な判定をしたときには、異物候補領域を特定せずに(ステップS670a)、異物候補領域特定処理を終了する。
【0076】
このようにして図25のステップS700の異物候補領域特定処理を行うと、異物候補領域特定処理で異物候補領域を特定したか否かを判定する(ステップS710)。そして、異物候補領域を特定していない(異物候補領域特定処理でステップS670aを実行)ときには、ステップS445に進む。一方、異物候補領域を特定したときには(異物候補領域特定処理でステップS660aを実行)、異物候補領域のうち電極側とヘッド側とのいずれ側に異物があるかを判定する切り分け処理を行う(ステップS720)。この変形例の切り分け処理のフローチャートを図28に示す。なお図28では、図18の切り分け処理と同じ処理については同じステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。この変形例の切り分け処理では、コントローラー20は、図18の切り分け処理のステップS500の代わりに、異物候補領域特定処理で特定した異物候補領域のうち電極側の領域が別のノズルプレート63と対向するように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる処理を行う(ステップS500a)。すなわち、ステップS500では電極側検査領域82全体を別のノズルプレート63と対向させたのに対し、ステップS500aでは、電極側検査領域82のうちの異物候補領域が別のノズルプレート63と対向するようにヘッドユニット60を移動させるのである。このとき、ヘッド側検査領域81のうちの異物候補領域は電圧の印加された検査電極72と対向しないようにする。なお、異物候補領域は電極側検査領域82の一部であるため、ステップS500aの処理は、ステップS500と同じ処理としてもよい。そして、この状態でノイズ検査を実行してノイズありと判定すると(ステップS520で肯定判定)、異物候補領域のうち電極側が異物領域であると判定して(ステップS530a)、ステップS590に進んでこの領域を記憶する。また、ステップS520でノイズなしと判定すると、図18の切り分け処理のステップS540の代わりに、異物候補領域特定処理で特定した異物候補領域のうちヘッド側の領域が別の検査電極72と対向し、電極側の領域が電圧の印加されたノズルプレート63と対向しないように、移動ユニット50を制御してヘッドユニット60を移動させる処理を行う(ステップS540a)。なおこの処理も、上述したステップS540と同じ処理としてもよい。そして、ノイズ検査を実行してノイズありと判定すると(ステップS560で肯定判定)、異物候補領域のうちヘッド側が異物領域であると判定して(ステップS570a)、ステップS590に進んでこの領域を記憶する。このように変形例の切り分け処理を行うことで、異物候補領域のうちの電極側とヘッド側とのいずれが異物領域であるかを判定するのである。例えば、図27のように第1ヘッド側検査領域81aの小領域83cに異物があり第2小領域84b,第3小領域83c,第7小領域83g(の一部)を異物候補領域として特定したときには、変形例の切り分け処理ではまず、ステップS500aで第2小領域84bと第1ノズルプレート63a以外のノズルプレートとを対向させる。そして異物は第2小領域84bにはないためステップS520で否定的な判定をして、ステップS540aで第3小領域83c,第7小領域83gを第1検査電極72a以外の検査電極72と対向させる。すると異物が第3小領域83cにあるためステップS560で肯定的な判定をして、ステップS570aで第3小領域83c及び第7小領域83gを異物領域として特定する。
【0077】
このようにして図25のステップS720の切り分け処理を行うと、この切り分け処理の判定結果を調べる(ステップS730)。そして、異物候補領域のうち電極側が異物領域と特定(切り分け処理でステップS530aを実行)したときにはステップS425に進み、異物候補領域のうちヘッド側が異物領域と特定(切り分け処理でステップS570aを実行)したときにはステップS460に進み、異物なしと判定(切り分け処理でステップS580を実行)したときには、ステップS445に進む。このように、変形例の異物特定処理では、まずノイズ検査により異物候補領域を特定する処理を行う。そして、ノイズが検出されて異物候補領域が特定されたときには、移動ユニット50によりノズルプレート63と検査電極72との相対位置を変えて追加のノイズ検査を行う切り分け処理を行い、切り分け処理の結果に基づいて異物候補領域のうちヘッド側と電極側とのいずれの側に異物があるかを特定する。このようにしても、異物のある1以上の小領域を特定することができる。なお、この変形例の異物特定処理において、切り分け処理を行わずに異物候補領域を全て異物領域としてもよい。この場合、異物領域のうち電極側の領域についてはステップS425〜S440,S445の処理を行い、異物領域のうちヘッド側の領域についてはステップS460の処理を行うものとしてもよい。
【0078】
上述した実施形態では、異物特定処理においてまずステップS405の切り分け処理を行ってからステップS415の電極側異物領域特定処理やステップS450のヘッド側異物領域特定処理を行うものとしたが、切り分け処理を行わなくともよい。例えば、初めから異物は電極側検査領域82にあるものとみなして切り分け処理を行わずに電極側異物領域特定処理を行ってもよい。同様に、異物はヘッド側検査領域81にあるものとみなして切り分け処理を行わずにヘッド側異物領域特定処理を行ってもよい。
【0079】
上述した実施形態では、電極側異物領域特定処理やヘッド側異物領域特定処理における小領域は、電極側検査領域84やヘッド側検査領域83をX方向,Y方向にそれぞれ4分割して16個の小領域に分割した領域としたが、これに限らず、15個以下や17個以上に分割した領域としてもよい。例えば、電極側検査領域84をX方向,Y方向にそれぞれ3分割した9個の領域を小領域としてもよい。また、電極側検査領域84をX方向,Y方向のいずれか一方のみに分割した複数の領域としてもよい。さらに、電極側検査領域84やヘッド側検査領域83を分割するものに限らず、電極側異物領域特定処理における小領域は検査電極72の一部の領域であればよく、ヘッド側異物領域特定処理における小領域はノズルプレート63の一部の領域であればよい。また、電極側異物領域特定処理とヘッド側異物領域特定処理とで、小領域の数や分割の方法が異なっていてもよい。
【0080】
上述した実施形態では、移動ユニット50は、X方向及びY方向にヘッドユニット60を移動可能なものとしたが、これに限られず、異物特定処理を行うために必要な移動方向にヘッドユニット60を移動可能であればよい。例えば、電極側検査領域84及びヘッド側検査領域83をX方向,Y方向のいずれか一方のみに分割した複数の領域とする場合には、移動ユニット50も同じ一方の方向にのみヘッドユニット60を移動可能としてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、本実施形態では、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面(図7の下面)全てであり、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の面(図7の上面)のうち予め定められた一部の領域であるものとしたが、これに限られない。例えば、ノズル検査時に検査電極72の全面とノズルプレート63の全面とが対向する構成として、電極側検査領域82を検査電極72のノズルプレート63側の全面としてもよい。また、ノズル検査時に検査電極72の全面とノズルプレート63の一部とが対向する構成として、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面(図7の下面)の一部とし、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の全面としてもよい。さらに、ノズル検査時に検査電極72の一部とノズルプレート63の一部とが対向する構成として、ヘッド側検査領域81はノズルプレート63の検査電極72側の面の一部とし、電極側検査領域82は検査電極72のノズルプレート63側の面の一部としてもよい。
【0082】
上述した実施形態では、電極側異物領域特定処理のステップS610を繰り返し行う際には、図22に示すように第1〜第16小領域84a〜84pを1つずつノズルプレート63と新たに対向させていくものとしたが、これに限らず、検査電極72とノズルプレート63との位置関係を変えながら複数回のノイズ検査を行って異物領域を特定するものであれば、これに限られない。例えば、小領域84のうち異物のある領域を大まかに特定するものとしてもよい。異物のある領域を大まかに特定する様子を図29を用いて説明する。まず、電極側異物領域特定処理の最初のステップS610では、図29(a)に示すように小領域84のうち第1,第2,第5,第6小領域84a,84b,84e,84fのみをノズルプレート63と対向させる。そして、ステップS610を繰り返し実行する度に、小領域84のうち第3,第4,第7,第8小領域84c,84d,84g,84hのみをノズルプレート63と対向させ(図29(b))、小領域84のうち第9,第10,第13,第14小領域84i,84j,84m,84nのみをノズルプレート63と対向させ(図29(c))、小領域84のうち第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pのみをノズルプレート63と対向させる(図29(d))。このように電極側検査領域82aを大まかに4つの領域に分けてノズルプレート63と順次対向させてノズル検査を行い、4つの大まかな領域のうちいずれに異物があるかを判定してもよい。この場合、例えば第11小領域84kに異物がある場合には、図29(d)の状態のノイズ検査でノイズありと判定して、第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pが異物領域として特定される。なおこの場合、さらに第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pを1つずつノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行って、第11,第12,第15,第16小領域84k,84l,84o,84pのうちいずれの小領域に異物があるかを判定するものとしてもよい。
【0083】
上述した実施形態では、切り分け処理のステップS500において電極側検査領域83と対向させる別のノズルプレート63には異物がないものとして説明したが、別のノズルプレートに異物がないことを予め確認するものとしてもよい。例えば、図19を用いて説明した例の場合には、ステップS500を行う前に、第3ノズルプレート63c(第1ヘッド側検査領域81c)には異物がないことを確認するものとしてもよい。例えば、第3ノズルプレート63cと第1検査電極72a(すなわち異物があるか否かを確認しようとしている検査電極72)以外の検査電極72とを対向させてノイズ検査を行い、ノイズがないことを確認してからステップS500を行うものとすればよい。また、ノイズがある場合には、他のノズルプレート63についても同様にノイズ検査を行ってノイズのないノズルプレート63を特定し、特定したノズルプレート63をステップS500において第1電極側検査領域83aと対向させるものとすればよい。このようにすることで、異物の有無を判定する対象以外の領域に異物がある場合における誤判定を防止することができる。ステップS540についても、同様に予めヘッド側検査領域と対向させる別の検査電極72に異物がないことを確認するものとしてもよい。なお、この場合は、ステップS540でヘッド側検査領域63と対向する領域(すなわちノイズ検査の対象となる領域)は検査電極72のうちの一部であるため、その一部の領域に異物がないことを予め確認するものとすればよい。また、電極側異物領域特定処理やヘッド側異物領域特定処理についても同様に、ステップS610で対向させるノズルプレート63に異物がないことを予め確認するものとしてもよいし、ステップS710で対向させる検査電極72のうちノズルプレート63と対向する領域に異物がないことを予め確認するものとしてもよい。
【0084】
上述した実施形態では、切り分け処理において電極側検査領域82とヘッド側検査領域81のいずれかに異物があるものとして説明したが、いずれにも異物がある場合に備えて電極側検査領域82に異物があるか否かの判定とヘッド側検査領域81に異物があるか否かの判定とを常に行うものとしてもよい。例えば、ステップS520の判定結果に関わらずステップS540〜ステップS560の処理を行うものとしてもよい。この場合、ステップS520及びステップS560でいずれも肯定判定をしたときには、異物特定処理のステップS415とステップS450とを共に実行して電極側検査領域82及びヘッド側検査領域81の異物領域をそれぞれ特定するものとしてもよい。
【0085】
上述した実施形態では、電極側異物領域特定処理において複数の小領域84のうちいずれかに異物があるものとして説明したが、2つ以上の小領域84に異物がある場合に備えて、途中のノイズ検査の結果に関わらず第1〜第16小領域84a〜84pの全てについて常にノイズ検査を行って、複数の異物領域を特定するようにしてもよい。例えば、ステップS630の判定結果に関わらずステップS640で変数mが上限値と判定するまでステップS610〜S650を繰り返し、ノイズ検査の結果に基づいて異物があると判定された複数の小領域84を異物領域と特定してもよい。この場合、ステップS610を繰り返し行うにあたり、それ以前のノイズ検査により異物領域と判定された小領域84がある場合には、その小領域84はノズルプレート63と対向しないようにヘッドユニット60の位置を定めるものとしてもよい。例えば、図22を用いて説明した例では、図22(c)の状態で行うノイズ検査により小領域84fを異物領域と特定するため、その次のステップS610ではノズルプレート63を小領域84のうち第3,第4,第7,第8小領域84c,84d,84g,84hのみと対向させるものとすればよい。このようにすることで、複数の小領域84に異物がある場合でも、精度よく複数の異物領域を特定することができる。なお、ヘッド側異物領域特定処理においても、同様にステップS730の判定結果に関わらずステップS740で変数nが上限値と判定するまでステップS710〜S750を繰り返すものとしてもよい。
【0086】
上述した実施形態では、切り分け処理において電極側検査領域82のノイズ検査でノイズがなかったときにはヘッド側検査領域81のノイズ検査を行うものとしたが、電極側検査領域82とヘッド側検査領域81とのうち電極側検査領域82側にノイズなしと判定したときには、ヘッド側検査領域81のノイズ検査を行うことなくヘッド側検査領域81に異物があると判定してもよい。例えば、切り分け処理のステップS540〜S560,S580を行わないものとし、ステップS520でノイズなしと判定したときにはステップS570の処理を行うものとしてもよい。こうすれば、切り分け処理を迅速に行うことができる。なお、上述した実施形態の切り分け処理では、先に電極側検査領域82にノイズがあるか否かを判定するものとしたが、先にヘッド側検査領域81にノイズがあるか否かを判定するものとしてもよい。また、ヘッド側検査領域81にノイズがあるか否かを判定して、否定的な判定をしたときには電極側検査領域82のノイズ検査を行うことなく電極側検査領域82に異物があると判定してもよい。
【0087】
上述した実施形態では、電極側異物特定処理においてノイズがない場合には最後の第16小領域84まで順にノイズ検査を行うものとしたが、複数の小領域84のうち最後の1つについてはノイズ検査を行わないものとし、他の小領域84のいずれでもノイズがなかったときには最後の1つの小領域84を異物領域として特定してもよい。例えば、上述した実施形態ではステップS630でノイズありと判定されるか又はステップS640で変数mが上限値と判定するまでステップS610〜ステップS650を繰り返すものとしたが、変数mが上限値(値16)より1小さい値と判定するまでステップS610〜S650を繰り返すものとして、変数mが上限値より1小さい値と判定したときには、電極側検査領域82の第16小領域を異物領域として特定してもよい。なお、この場合において、ステップS610で電極側検査領域82のうち一部(例えば半分)を別のノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行い、ノイズがあったときには電極側検査領域82のうちノズルプレート63と対向させた領域を異物領域として特定し、ノイズがなかったときには電極側検査領域82のうちノズルプレート63と対向させていない領域を異物領域として特定してもよい。すなわち、電極側異物特定処理においてノイズ検査を1回しか行わないものとしてもよい。このようにしても、電極側検査領域82のうちの特定の領域に異物があることを特定できる。
【0088】
上述した実施形態では、切り分け処理のステップS540において、ヘッド側検査領域83と別の検査電極72とを対向させるものとしたが、同じ検査電極72を対向させるものとしてもよい。例えば、上述した実施形態の説明ではステップS540において第1ヘッド側検査領域81aと第1検査電極72a以外の検査電極72とを対向させるものとしたが、第1ヘッド側検査領域81aと第1検査電極72aとを対向させるものとしてもよい。この場合、第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82a以外とを対向させるものとしてもよい。すなわち、ステップS540の処理を行うのは第1ヘッド側検査領域81aと第1電極側検査領域82aとのうち第1ヘッド側検査領域81aに異物があるか否かを判定するためであるので、第1ヘッド側検査領域81aが電圧を印加した検査電極72と対向し、第1電極側検査領域82aが電圧を印加したノズルプレート63と対向しないようにすれば、どのような位置関係でノズルプレート63と検査電極72とを対向させてもよい。ステップS500においても同様に、第1電極側検査領域82aが電圧を印加したノズルプレート63と対向し、第1ヘッド側検査領域81aが電圧を印加した検査電極72と対向しないようにすれば、どのような位置関係でノズルプレート63と検査電極72とを対向させてもよい。図28の変形例の切り分け処理のステップS500a,S540aについても同様である。すなわち、ステップS500aにおいては、電極側の異物候補領域が電圧を印加したノズルプレート63と対向し、ヘッド側の異物候補領域が電圧を印加した検査電極72と対向しないようにすれば、どのような位置関係でノズルプレート63と検査電極72とを対向させてもよい。ステップS540aにおいては、ヘッド側の異物候補領域が電圧を印加した検査電極72と対向し、電極側の異物候補領域が電圧を印加したノズルプレート63と対向しないようにすれば、どのような位置関係でもよい。
【0089】
上述した実施形態では、統合判定ルーチンにおいて再検査回数Sが閾値Sthを超えたときに異物特定処理を行うものとしたが、これに限られない。例えば、統合判定ルーチンとは無関係に所定時間ごとに異物特定処理を行うものとしてもよい。あるいは、統合判定ルーチンのステップS100を行ったあとに、各検査電極72と各ノズルプレート63との間でノイズ検査を行い、ノイズ検査でノイズありと判定した検査電極72とノズルプレート63との組み合わせについて、異物特定処理を行ってもよい。
【0090】
上述した実施形態では、電極側異物特定処理やヘッド側異物特定処理において、吐出検査時のノズルプレート63と検査電極72との相対位置とは異なる相対位置にてノズルプレート63と検査電極72とを対向させてノイズ検査を行って、異物領域を特定するものとしたが、吐出検査時と同じ相対位置にてノイズ検査を行って異物領域を特定するものとしてもよい。例えば、吐出検査時においても、電極側異物特定処理と同様に複数の小領域63を順次ノズルプレート63と対向させたり、ヘッド側異物特定処理と同様に複数の小領域73を順次検査電極72と対向させたりしてもよい。すなわち、吐出検査時のノズルプレート63と検査電極72との相対位置がどのようであっても、電極側異物特定処理において検査電極72の一部である複数の小領域を順にノズルプレート63と対向させてノイズ検査を行うものとすれば、検査電極72のうち特定の領域に異物があることを検出できる。同様に、吐出検査時のノズルプレート63と検査電極72との相対位置がどのようであっても、ヘッド側異物特定処理においてノズルプレート63の一部である複数の小領域を順に検査電極72と対向させてノイズ検査を行うものとすれば、ノズルプレート63のうち特定の領域に異物があることを検出できる。
【0091】
上述した実施形態では、各ノズルプレート63は各ヘッド62にそれぞれ取り付けられているものとしたが、これに限らず、吐出検査時に検査対象のノズルから吐出されるインクと接触可能であり、吐出検査時及びノイズ検査時に検査電極72と対向可能であればよい。例えば、ノズルプレート63とヘッド62とを分離して移動可能とし、吐出検査時やノイズ検査時にのみ図7のようにヘッド62とノズルプレート63とが接触するようにしてもよい。
【0092】
上述した実施形態では、ヘッドユニット60を移動させることによりノズルプレート63と検査電極72との位置関係を変更するものとしたが、ノズルプレート63と検査電極72との相対的な位置関係を変更するものであればよい。例えば、検査電極72を移動させるものとしてもよい。
【0093】
上述した実施形態では、ノズルプレート63をグランド電位、検査電極72を高電位にし、検査電極72の電圧変化を検出したが、ノズルプレート63を高電位、検査電極72をグランド電位にし、ノズルプレート63の電圧変化を検出してもよい。
【0094】
上述した実施形態では、インクジェットの方式として、ピエゾ素子を用いて圧力によりインクを吐出させる方式を例示したが、例えば、熱によりノズル内に気泡を発生させる方式などを採用してもよい。
【0095】
上述した実施形態では、本発明の流体吐出装置をインクジェットプリンター10に具体化した例を示したが、インク以外の他の液体や機能材料の粒子が分散されている液状体(分散液)、ジェルのような流状体などを吐出する流体吐出装置に具体化してもよいし、流体として吐出可能な固体を吐出する流体吐出装置に具体化してもよい。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を溶解した液体を吐出する液体吐出装置、同材料を分散した液状体を吐出する液状体吐出装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を吐出する液体吐出装置としてもよい。また、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を吐出する液体吐出装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に吐出する液体吐出装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を吐出する液体吐出装置、ジェルを吐出する流状体吐出装置、トナーなどの粉体を吐出する粉体吐出式記録装置としてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 プリンター、20 コントローラー、22 CPU、24 ユニット制御回路、26 インターフェース部、28 メモリー、30 ユニット群、40 搬送ユニット、42 上流側ローラー、44 下流側ローラー、46 巻取機構、48 プラテン、50 移動ユニット、52 X軸ステージ、54 Y軸ステージ、60 ヘッドユニット、62 ヘッド、62a〜62o 第1〜第15ヘッド、63 ノズルプレート、63a〜63o 第1〜第15ノズルプレート、70 検査ユニット、71 検査回路、71A〜71H 第1〜第8検査回路、72 検査電極、72A〜72H 第1〜第8検査電極、73 第1制限抵抗、74 高圧電源、75 第2制限抵抗、76 検出制御部、77 増幅器、78 検査用コンデンサー、79 平滑コンデンサー、81 ヘッド側検査領域、81a〜81o 第1〜第15ヘッド側検査領域、82 電極側検査領域、82a〜82o 第1〜第15電極側検査領域、82,83 小領域、82a〜82p,83a〜83p 第1〜第16小領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、
前記液体と接触する第1電極と、
前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う吐出検査手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うノイズ検査手段と、
前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する異物判定手段と、
を備えた液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2電極は、該第2電極の一部の領域である小領域を複数有しており、
前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第2電極の複数の小領域を順に前記第1電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、
前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段である、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1電極は、該第1電極の一部の領域である小領域を複数有しており、
前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第1電極の複数の小領域を順に前記第2電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、
前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段である、
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第2電極に対向可能な第3電極を備え、
前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第2電極と前記第3電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第2電極側に異物があると判定する手段である、
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1電極に対向可能な第4電極を備え、
前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第1電極と前記第4電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第1電極側に異物があると判定する手段である、
液体吐出装置。
【請求項6】
前記異物判定手段は、前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極との相対位置を変えて前記ノイズ検査手段により追加のノイズ検査を行わせ、該追加のノイズ検査の結果に基づいて第1電極又は前記第2電極のうちいずれの側に異物があるかを特定する手段である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第2電極のうち、前記異物判定手段により異物ありと判定された領域に前記液体を吐出するよう前記ヘッドを制御するヘッド制御手段、
を備えた液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触する第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、を備え、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う液体吐出装置の異物検査方法であって、
(a)前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うステップと、
(b)前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定するステップと、
を含む異物検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の異物検査方法の各ステップを1又は複数のコンピューターに実現させるプログラム。
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、
前記液体と接触する第1電極と、
前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う吐出検査手段と、
前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うノイズ検査手段と、
前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定する異物判定手段と、
を備えた液体吐出装置。
【請求項2】
前記第2電極は、該第2電極の一部の領域である小領域を複数有しており、
前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第2電極の複数の小領域を順に前記第1電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、
前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段である、
請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1電極は、該第1電極の一部の領域である小領域を複数有しており、
前記ノイズ検査手段は、前記移動手段により前記第1電極の複数の小領域を順に前記第2電極と対向させて複数回のノイズ検査を行う手段であり、
前記異物判定手段は、前記複数回のノイズ検査の結果に基づいて、異物のある前記1以上の小領域を特定する手段である、
請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第2電極に対向可能な第3電極を備え、
前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第2電極と前記第3電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第2電極側に異物があると判定する手段である、
液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第1電極に対向可能な第4電極を備え、
前記異物判定手段は、前記第1電極及び前記第2電極のいずれの側に異物があるかを判定するにあたり、該第1電極と前記第4電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいてノイズの有無を検出し、ノイズを検出したときには該第1電極側に異物があると判定する手段である、
液体吐出装置。
【請求項6】
前記異物判定手段は、前記ノイズ検査手段により前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極との相対位置を変えて前記ノイズ検査手段により追加のノイズ検査を行わせ、該追加のノイズ検査の結果に基づいて第1電極又は前記第2電極のうちいずれの側に異物があるかを特定する手段である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、
前記第2電極のうち、前記異物判定手段により異物ありと判定された領域に前記液体を吐出するよう前記ヘッドを制御するヘッド制御手段、
を備えた液体吐出装置。
【請求項8】
液体を吐出する複数のノズルを備えたヘッドと、前記液体と接触する第1電極と、前記第1電極に対向可能な位置に設けられた第2電極と、前記第1電極と前記第2電極とを相対的に移動させる移動手段と、を備え、前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記ノズルから前記第2電極に向かって液体を吐出させたときの両電極間の電気的変化に基づいて、前記ノズルからの前記液体の吐出の有無を検出する吐出検査を行う液体吐出装置の異物検査方法であって、
(a)前記移動手段により前記第1電極と前記第2電極とを前記吐出検査時とは異なる相対位置にて対向させ両電極間に電圧を印加した状態で、前記複数のノズルから液体を吐出させないときの両電極間の電気的変化に基づいて、ノイズの有無を検出するノイズ検査を行うステップと、
(b)前記ノイズ検査でノイズが検出されたときには、前記第1電極又は前記第2電極のうち、該ノイズが検出された相対位置において対向する領域の少なくともいずれかに異物ありと判定するステップと、
を含む異物検査方法。
【請求項9】
請求項8に記載の異物検査方法の各ステップを1又は複数のコンピューターに実現させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【公開番号】特開2012−232559(P2012−232559A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104491(P2011−104491)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]