液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法
【課題】活性光線の照射により硬化する液体を用いた液体吐出において、活性光線が迷光して液体吐出面やノズルに照射されても、液体吐出面に付着した液体やノズル内の液体の硬化を防止する液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法を提供する。
【解決手段】紫外線の照射によって硬化するインクを記録媒体へ吐出させるノズル70の開口部が形成され、インクに対する親液性を示すインク吐出面70Dを有するノズルプレートを具備し、ノズルと連通する圧力室内のインクを加圧する圧電素子を具備し、インク吐出面がインクで覆われた状態で使用されるインクジェットヘッド24の駆動方法であって、非吐出ノズルに対応する圧電素子に対して非吐出駆動電圧を供給し、非吐出ノズルからインク吐出面へインクをあふれ出させて、インク吐出面を覆っているインクを流動させる。
【解決手段】紫外線の照射によって硬化するインクを記録媒体へ吐出させるノズル70の開口部が形成され、インクに対する親液性を示すインク吐出面70Dを有するノズルプレートを具備し、ノズルと連通する圧力室内のインクを加圧する圧電素子を具備し、インク吐出面がインクで覆われた状態で使用されるインクジェットヘッド24の駆動方法であって、非吐出ノズルに対応する圧電素子に対して非吐出駆動電圧を供給し、非吐出ノズルからインク吐出面へインクをあふれ出させて、インク吐出面を覆っているインクを流動させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法に係り、特に紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドのメンテナンス技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いて画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。かかるインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジに紫外線照射用の光源を搭載し、紫外線光源をインクジェットヘッドに追従して走査させ、媒体に着弾した直後のインク液滴に紫外線を照射して、インク液滴の位置ずれや着弾干渉を回避している。
【0003】
紫外線照射型インクが適用されるインクジェット記録装置では、紫外線光源から記録媒体に照射された紫外線が反射等によって、インク吐出面やノズル開口部に照射されてしまうことがある。
【0004】
そうすると、インク吐出面に付着したインクミストや、ノズル内のインクに紫外線が照射されて硬化してしまい、インクジェットヘッドの吐出性能に大きな影響を与えてしまうことがありうる。
【0005】
特許文献1は、活性エネルギー(紫外線)の照射により硬化するインクを用いたインクジェット記録装置を開示している。特許文献1に開示されたインクジェット記録装置は、各色のヘッドごとに活性エネルギー照射手段が設けられ、各ヘッドの記録媒体Sの搬送方向下流側にヘッドごとの活性エネルギー照射手段が配置されている。かかるインクジェット記録装置は、活性光線照射手段がヘッドよりも下方に位置するように活性光線照射手段を上下させる上下機構を備え、活性光線照射手段から下方に向けて活性光線が照射されることで、下方へ進んだ光が反射や回折により迷光となって上方のヘッドへ達することがないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−210244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたインクジェット記録装置のように、記録媒体であるウエッブを上下させながら搬送し、上方でインクを吐出させ、下方で光を照射させる構成を採用すると、記録媒体を上方向及び下方向へ搬送する構成が必要になり、記録媒体を搬送する構成が複雑化してしまう。
【0008】
また、記録媒体にインクが着弾してから光が照射されるまでに、ヘッドがある上方の位置から活性光線照射手段がある下方の位置へ記録媒体を移動させなければならないので、インクが着弾してから光が照射されるまでに、着弾干渉やインクの移動が起こり得る。そうすると、高品質の画像を得ることが困難になる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、活性光線の照射により硬化する液体を用いた液体吐出において、活性光線が迷光して液体吐出面やノズルに照射されても、液体吐出面に付着した液体やノズル内の液体の硬化を防止する液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出装置は、活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドと、液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体が付着した媒体へ活性光線を照射する活性光線照射手段と、を備え、前記駆動電圧供給手段により前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、親液性を有する液体吐出面を具備し、液体吐出面が液体で覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドを備えた液体吐出記録装置において、ノズルから液体を吐出させない非吐出駆動電圧を加圧手段へ供給し、ノズル内の液体を振動させるとともに液体吐出面へあふれ出させて、液体吐出面を覆う液体を流動させることにより、活性光線が液体吐出面に照射されても液体吐出面における液体の硬化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の用紙搬送路を模式的に示す説明図
【図3】図1に示すインクジェットヘッド及び紫外線照射部の配置構成を示す平面透視図
【図4】図3の斜視図
【図5】インクジェットヘッドのノズル配置を示すインク吐出面の平面図
【図6】インクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の要部構成を示すブロック図
【図8】図7に図示した制御系のさらに詳細な構成を示すブロック図
【図9】非吐出駆動電圧の供給中のインクの挙動を模式的に図示した説明図である。a:インク吐出面のインクの流れの説明図、b:ノズルの内部からインク吐出面へのインクの流れの説明図
【図10】非吐出駆動電圧の供給停止後のインクの挙動を模式的に図示した説明図、a:インク吐出面のインクの流れの説明図、b:ノズルの内部からインク吐出面へのインクの流れの説明図
【図11】本発明の第1実施形態の効果の説明図
【図12】非吐出駆動電圧の一例を示す波形図
【図13】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の制御の流れを示すフローチャート
【図14】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッド駆動方法)の説明図
【図15】本発明の第2実施形態の効果の説明図
【図16】本発明の第2実施形態に適用される非吐出駆動電圧の一例を示す波形図
【図17】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図18】本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の制御の流れを示すフローチャート
【図19】本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッド駆動方法)の説明図
【図20】本発明の第3実施形態の効果の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0014】
〔第1実施形態〕
(インクジェット記録装置の全体構成)
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0015】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22と、を備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0016】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0017】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。仮硬化光源32A,32Bから紫外線が照射されたインクは、着弾干渉を回避するものの、ドット展開がされる(十分に広がることができる)程度に仮硬化する。
【0018】
本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、記録媒体12上のインクに仮硬化光源32A,32Bから紫外線を照射した後の追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0019】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)が「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)が「副走査方向」に相当する。
【0020】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0021】
図1において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0022】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0023】
(記録媒体搬送路の説明)
図2は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図2に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0024】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0025】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0026】
(画像形成部の構成)
図3は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0027】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図3ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0028】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列のいずれか一方を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、Wのノズル列に代わりメタルインクのノズル列を具備する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は仮硬化光源32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0029】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wと、をキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0030】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って一列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、一列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl(ピコリットル)、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0031】
(作画モードについて)
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度(記録解像度)を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0032】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0033】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により、ノズルピッチ間の間を埋める補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0034】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
【0035】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1200dpi×1200dpiの解像度を得ている。
【0036】
(シングリング走査によるスワス幅について)
ワイドフォーマット機の作画モードでは、解像度設定ごとに、それぞれシングリング(インターレス)する作画条件が決定されている。具体的には、インクジェットヘッドの吐出ノズル列の幅Lw(ノズル列の長さ)をパス数(スキャン繰り返し回数)だけ分割してシングリング作画するので、インクジェットヘッドのノズル列幅、並びに、主走査方向及び副走査方向のパス数(インターレースする分割数)によってスワス幅が異なる。なお、マルチパス方式によるシングリング作画の詳細については、例えば、特開2004−306617号公報に説明されている。
【0037】
一例として、FUJIFILM Dimatix社製のQS-10ヘッド(100dpi,256ノズル)を用いた場合のシングリング作画によるパス数とスワス幅の関係は下表〔表1〕のようになる。作画によって想定されるスワス幅は使用するノズル列幅を主走査方向パス数と副走査方向パス数の積で分割した値となる。
【0038】
【表1】
(本硬化光源の構成例について)
図4に示したように、本硬化光源34A,34Bは、それぞれ複数個のUV‐LED素子35が並べられた構造を有している。2つの本硬化光源34A,34Bは、共通の構成である。本例では、本硬化光源34A,34Bとして、Y方向に6個、X方向に2個のUV‐LED素子35がマトリクス状に配置されたLED素子配列(6×2)を例示したが、LED素子数及びその配列形態はこの例に限定されない。例えば、複数個のLED素子をY方向に沿って一列に並べた構成も可能である。
【0039】
また、本硬化光源34A,34Bの発光源としては、UV‐LED素子35に限らず、UVランプなどを用いることも可能である。
【0040】
(仮硬化光源について)
仮硬化光源32A,32Bについても、UV‐LED素子やUVランプを用いることができる。なお、複数個のUV‐LED素子を用いる場合、ノズル列方向に沿ってLEDを配列させる態様に限らず、仮硬化光源32A,32Bのユニットの端面(上流側端面、又は下流側端面、若しくは、その両方の端面)にLED素子を配置する形態もあり得る。
【0041】
(インクジェットヘッドの構造)
図5(a)は、インクジェットヘッド24のノズル配置を示す平面透視図であり、一色分のノズル列61が図示されている。同図に示すように、一色分のノズル列61は、副走査方向(図1に図示したX方向)に沿って一列にノズル70が配置されている。各ノズル70は吐出させるインクが収容される圧力室72(破線により図示)と連通している。なお、図5(b)に示すように、ノズル70を二列の千鳥配置させる態様も可能である。
【0042】
図6は、インクジェットヘッド24の立体構造を示す断面図であり、1ノズル分(1吐出素子分)の構造が図示されている。本例に適用されるインクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式が有利である。
【0043】
図6に示すように、ノズル70はノズル流路71を介して圧力室72と連通している。ノズル70は、ノズルプレート70Aのインク吐出面70Dに形成される開口部70B、テーパ形状(略円すい形状)を有するテーパ部70Cを含んで構成される。
【0044】
圧力室72は、ノズル流路71を介してノズル70と連通するととともに、供給口(供給絞り)74を介して共通流路76と連通される。共通流路76は、一色分のノズル列61(図5参照)を構成するノズル70のそれぞれに対応する圧力室72と連通して、各圧力室72に対してインクを供給している。
【0045】
圧力室72の天井面を構成する振動板78は、圧力室72の外側面の圧力室72に対応する位置に圧電素子80が設けられている。圧電素子80は、上部電極82と下部電極84との間に圧電体がはさまれた構造を有しており、上部電極82と下部電極84との間に駆動電圧が供給されるとひずみ変形が生じ、振動板78を変形させる。
【0046】
すなわち、画像データに応じて圧電素子80へ駆動電圧を供給すると、振動板78が変形して圧力室72の体積を収縮させ、圧力室72の体積減少に対応する量のインクがノズル70から吐出される。圧電素子80への駆動電圧の供給を停止させると、圧電素子80のひずみ変形が復元されるとともに圧力室72が元の形状に復元され、供給口74を介して共通流路76から圧力室72へインクが充填される。
【0047】
インクジェットヘッド24はノズルプレート70Aのインク吐出面70Dが親液性を有している。インク吐出面70Dのインクに対する接触角は、40度以下であり、ノズル70の内部(例えば、テーパ部70C)のインクに対する接触角以上となっている。インク吐出面70Dの親液処置の具体例として、インク吐出面70Dに酸化処理を施して酸化膜を形成することや、スパッタ法等により金属膜を形成することが挙げられる。
【0048】
図6に示すように、インク吐出面70Dには、インクによる液層(インク層)88が形成され、インク吐出面70Dはインクにより覆われた状態で使用される。なお、ノズル70内のメニスカス(不図示)が安定している状態(静定状態)では、インク吐出面70Dを覆っているインクと、ノズル70内のインクは分離されている。
【0049】
このような親液性を有するインク吐出面70Dを具備することで、以下の効果を得ることができる。まず、インク吐出面70Dが撥液性を有する場合は、インクミストが堆積し、不吐や曲がりを引き起こす。これに対して、インク吐出面70Dが親液性を有する場合が、インクミストがインク吐出面70Dのインク層に吸収されてしまうので、インクミストによる曲がりや不吐が発生しない。
【0050】
また、ノズルプレートのメンテナンスが容易であることと、すなわち、インク吐出面70Dのインク層によりウエットワイピングになるので、ワイピングに対する耐久性が強いといえる。
【0051】
(制御系の構成)
図7は、インクジェット記録装置10の制御系の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置102が設けられている。
【0052】
制御装置102としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置102は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置102には、記録媒体搬送制御部104、キャリッジ駆動制御部106、光源制御部108、画像処理部110、吐出制御部112が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0053】
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12(図1参照)の搬送を行うための搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、図2に示すニップローラ40を駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図1参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、副走査方向へ間欠送りされる。
【0054】
図7に示すキャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30(図1参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部108は、LED駆動回路118を介して仮硬化光源32A,32BのUV‐LED素子の発光を制御するとともに、LED駆動回路119を介して本硬化光源34A,34BのUV‐LED素子の発光を制御する制御手段である。
【0055】
制御装置102は、操作パネル等の入力装置120、表示装置122が接続されている。入力装置120は、手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置122には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置120を操作することにより、作画モード(「作画フォーマット」と同義)の選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置122の表示を通じて確認することができる。
【0056】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部124と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース126が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0057】
画像入力インターフェース126を介して入力された画像データは、画像処理部110にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0058】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、二値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0059】
こうして得られた二値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0060】
吐出制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路128に対する吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部112は、駆動波形生成部(図8に符号140を付して図示)を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧の電圧波形を生成する手段である。駆動波形データは、予め情報記憶部124に格納されており、必要に応じて使用される駆動波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された駆動波形は、ヘッド駆動回路128に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0061】
ヘッド駆動回路128を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0062】
情報記憶部124は、制御装置102のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部124は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、副走査送り量の制御に必要な送り量情報、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの制御情報などが格納されている。
【0063】
エンコーダ130は、主走査駆動部116の駆動用モータ、及び搬送駆動部114の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置102に送られる。エンコーダ130から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12(図1参照)の位置が把握される。
【0064】
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ132から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。なお、図7に図示した構成は、適宜変更、追加、削除が可能である。
【0065】
(インクジェットヘッドの駆動制御の詳細な説明)
次に、インクジェットヘッドの駆動制御について詳述する。図8は、図7に図示した制御系のさらに詳細な構成を示すブロック図であり、各ノズル70に対して、吐出波形又は非吐出波形のいずれかを設定する構成が図示されている。
【0066】
図8に示すように、情報記憶部124は、吐出波形が記憶される吐出波形記憶部125Aと、非吐出波形が記憶される非吐出波形記憶部125Bと、を備えている。吐出波形及び非吐出波形は、予め駆動波形生成部(不図示)により生成されている。
【0067】
図8に示す波形設定部140は、各ノズル70に対して吐出タイミングごとに、画像データに基づいてインクを吐出させる吐出ノズルであるか、インクを吐出させない非吐出ノズルであるかを設定する波形設定信号を生成する。波形設定信号はヘッド駆動回路128へ送られる。
【0068】
本例に示すインクジェット記録装置10では、非吐出ノズルに対して非吐出波形に基づいて生成された非吐出駆動電圧が適用され、吐出ノズルに対して吐出波形に基づいて生成された吐出駆動電圧が適用される。
【0069】
図9は、非吐出駆動電圧(図12に符号200,210を付して図示)の供給中のインクの挙動を模式的に図示した説明図である。図9(a)は、インク吐出面70Dのインクの流れが図示されており、図9(b)は、ノズル70の内部からインク吐出面70Dへのインクの流れが図示されている。
【0070】
図9(a)に示すように、一列に並べられた複数のノズル70に対応する圧電素子80(図6参照)に同一の電圧及び同一の周波数を有する非吐出駆動電圧が供給されると、該圧電素子80に対応するノズル70のメニスカスが揺らされ、その結果、当該ノズル70からインク吐出面70Dへインクがあふれ出す。
【0071】
非吐出駆動電圧が供給された直後は、インク吐出面70Dのインクはノズル70からインク吐出面のエッジ方向へ向かって移動する。図9(a),(b)では、ノズル70からインク吐出面70Dのエッジへ向かうインクの流れが、符号88Aを付した矢印線によって図示されている。
【0072】
なお、1つのノズル70に着目するとインクは当該ノズル70から放射状にあふれ出すものの、各ノズル70からあふれ出したインクは隣接するノズル70からあふれ出したインクと衝突し、結果としてインクの流れは、ノズル70からノズル70の配置方向と直交する方向のインク吐出面70Dのエッジに向かって生じることになる。
【0073】
図10は、非吐出駆動電圧の供給停止後のインクの挙動を模式的に図示した説明図である。図10(a)は、インク吐出面70Dのインクの流れが図示されており、図10(b)は、ノズル70の内部からインク吐出面70Dへのインクの流れが図示されている。
【0074】
非吐出駆動電圧の供給が停止されてから所定時間(数μsec程度)が経過すると、インク吐出面70Dのインクはインク吐出面70Dのエッジからノズル70の中心の方向へ向かって移動する。図10(a),(b)では、インク吐出面70Dのエッジからノズル70へ向かうインクの流れが、符号88Bを付した矢印線によって図示されている。
【0075】
すなわち、非吐出駆動電圧が供給された圧電素子80は、対応するノズル70からインクを吐出させずに、該ノズル70からインク吐出面70Dへインクをしみ出させるように、対応する圧力室72を加圧する。非吐出駆動電圧の供給が停止されると、該圧電素子80の変形が復元され、インク吐出面70Dへしみ出させたインクはノズル70の内部に回収される。
【0076】
このようにして、ノズル70からインク吐出面70Dへインクをしみ出させるとともに、インク吐出面70Dにしみ出させたインクをノズル70の内部へ回収させることで、インク吐出面70Dに形成されているインク層88が流動するので、インク吐出面70DにUV光が照射されたとしてもインク吐出面70D及びノズル70の開口部70Bにおけるインクの硬化を防止しうる。
【0077】
なお、インク吐出面70Dが使用されるインクに対する所定の親液性を有していない場合には、非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を適用したとしても、該非吐出ノズルからインクがあふれ出すことがなく、インク吐出面70Dにインクの流れを形成することはできない。
【0078】
図11は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッドの駆動方法)の効果の説明図であり、記録媒体12(図1参照)にUV光の照射を開始したタイミングからの経過時間(分)に対する不吐出ノズルの発生数を示している。
【0079】
図11の符号90を付した実線は、非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を作用させて、インク吐出面70Dにインクの流動を発生させた場合の評価結果であり、図11の符号92を付した破線は、非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を作用させなかった場合の評価結果である。
【0080】
図11に示すように、非吐出駆動電圧を作用させた場合でも2つから3つの不吐出ノズルが発生するものの、非吐出駆動電圧の供給開始から20分程度経過後は不吐出ノズル数は増加していない。一方、非吐出駆動電圧を作用させていない場合は、休止時間が長くなると不吐出ノズル数は増加する傾向がある。
【0081】
なお、図11に示す結果を得た評価実験の条件は以下のとおりである。インクジェットヘッドの総ノズル数は256ノズルであり、すべてのノズルに対して非吐出駆動電圧を適用している。また、非吐出駆動電圧として、図12(a)に図示した非吐出駆動電圧200、図12(b)に図示した非吐出駆動電圧210が用いられる。
【0082】
図12(a)に示す非吐出駆動電圧200は、基準電位(ゼロボルト)から最大電圧へ立ち上がる立ち上がり部202と、最大電圧部(定電圧部)204と、最大電圧から基準電圧へ立ち下がる立ち下がり部206と、を含む台形形状を有している。
【0083】
また、非吐出駆動電圧200の最大振幅(電位差)は25Vであり、立ち上がり部202の開始タイミングから立ち下がり部206の開始タイミングまでの時間は5μsecである。
【0084】
図12(b)に示す非吐出駆動電圧(群)210は、図12(a)に図示された非吐出駆動電圧200が所定の周期で連続しており、その周期は約66.7μsecである。この周期を周波数に換算すると15kHzとなり、吐出周波数(吐出駆動電圧の周波数)と一致している。
【0085】
図12(b)に示す非吐出駆動電圧210は、一吐出周期内に非吐出駆動電圧200が1つだけ含まれ態様である。すなわち、一吐出周期内に非吐出駆動電圧200が少なくとも1つ供給されれば、不吐出ノズルの発生を回避することができる。
【0086】
なお、図12(a)に図示した非吐出駆動電圧200、及び図12(b)に図示した非吐出駆動電圧210はあくまでも一例であり、ノズル70からインクを吐出させずに(ノズル70内のインクから分離されずに)、ノズル70からインク吐出面70Dへインクをしみ出させることができればよい。
【0087】
例えば、非吐出駆動電圧200に矩形波や三角波を適用してもよいし、一吐出周期内に複数の非吐出駆動電圧200が含まれる態様も可能である。すなわち、「非吐出駆動電圧」とは、ノズル70からインクを吐出させずに、ノズル70内部のインクをインク吐出面70Dへしみ出させる際に該ノズルに対応する圧電素子80に印加される駆動電圧であり、例えば、吐出駆動電圧の振幅に対して10パーセント以上50パーセント以下の振幅を有する態様がある。
【0088】
すなわち、非吐出駆動電圧の振幅を吐出駆動電圧の振幅の10パーセント以上とすることで、ノズル70内部のインクを振動させるとともに、インク吐出面70Dへあふれ出させることができる。
【0089】
また、非吐出駆動電圧の振幅を吐出駆動電圧の振幅の50パーセント以上とすることで、誤ってノズル70からインクが吐出されることが防止される。
【0090】
また、非吐出駆動電圧210の周波数は、非吐出ノズルからあふれ出させたインクの体積と、非吐出駆動電圧200の休止(供給終了)によってノズル70へ吸い込まれる(回収される)インクの体積が均一になるように決められる。
【0091】
(制御フロー)
図13は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの駆動方法の制御の流れを示すフローチャートである。
【0092】
インクジェットヘッド24の駆動が開始されると(ステップS10)、画像データに基づいてすべてのノズルについて、吐出ノズルであるか非吐出ノズルであるかが設定される(ステップS12)。ステップS12において非吐出ノズルに設定されたノズルは(Yes判定)、非吐出波形が設定されるとともに(ステップS14)、非吐出波形(非吐出駆動電圧)の周波数が設定される(ステップS16)。
【0093】
そして、非吐出ノズル対応する圧電素子80に非吐出駆動電圧の供給が開始され(ステップS18)、その後、非吐出駆動電圧の供給が停止される(ステップS20)。次に、非吐出駆動電圧の供給の停止からの所定時間(インク吐出面70Dにしみ出させたインクがノズル70内に回収されるまでの時間)が経過したか否かが監視される(ステップS22)。
【0094】
ステップS22において、所定時間が経過していないと判断されると(No判定)、非吐出駆動電圧の供給停止からの経過時間の監視が継続され、所定時間が経過したと判断されると(Yes判定)、ステップS24へ進む。
【0095】
ステップS24では、次の吐出タイミングのデータが存在するか否かが判断され、次の吐出タイミングのデータが存在する場合は(No判定)、ステップS12に進み、ステップS12からの工程が繰り返し実行される。一方、次の吐出タイミングのデータが存在しない場合は(ステップS24のYes判定)、インクジェットヘッドの駆動が終了される(ステップS32)。
【0096】
ステップS12において、吐出ノズルとして設定されたノズルは(No判定)、吐出波形が設定されるとともに(ステップS26)、当該ノズルに対応する圧電素子80に対して吐出駆動電圧が供給され(ステップS28)、吐出駆動電圧の供給が終了すると(ステップS30)、ステップS24へ進む。
【0097】
本例に示すインクジェットヘッド駆動方法では、印刷中(画像データに基づく画像形成中)は、常時非吐出ノズルの少なくとも一部に対して非吐出駆動電圧が適用されるので、印刷中における不吐出ノズルの発生が確実に防止される。
【0098】
(効果)
上記の如く構成されたインクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの駆動方法によれば、紫外線硬化型インクに対する親液性を有するインク吐出面を具備するインクジェットヘッドにおいて、非吐出ノズルに対応する圧電素子80に非吐出駆動電圧を供給し、非吐出ノズルからインク吐出面70Dへインクをしみ出させて、インク吐出面70D内でインクを移動させることで、インク吐出面70DにUV光があたった場合でもインク吐出面70Dにおいてインクが硬化せず、吐出異常ノズルの発生を防止しうる。
【0099】
また、ノズル70からインク吐出面70Dのエッジへ向かう方向、及びインク吐出面70Dからノズル70へ向かう方向についてインクを移動させることで、ノズル70の内部にもインクの流れが発生するので、ノズル70の開口部70B近傍にUV光があたった場合にも、ノズル70の内部のインクの硬化が防止されうる。
【0100】
本例では、非吐出ノズルに対応する圧電素子80のすべてに非吐出駆動電圧が供給される態様を例示したが、インク吐出面70Dのインクが硬化しない程度にインクが流動すればよく、非吐出ノズルの一部に対応する圧電素子80に対して選択的に非吐出駆動電圧が供給される態様も可能である。
【0101】
〔第2実施形態〕
(概要)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、先に説明した第1実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図14は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置に適用されるインクジェットヘッド駆動方法の説明図である。
【0102】
本例に示すインクジェットヘッド駆動方法は、非吐出ノズルの一部について非吐出駆動電圧(群)の周波数を変えており、すべての非吐出ノズルに同一の周波数を有する非吐出駆動電圧群を適用する場合よりも、インク吐出面70Dにおけるインクの流れが速くなり、特に、ノズル70の近傍でのインクの硬化が防止される。
【0103】
図14に示す上半分のノズル群73Aに対して高周波の非吐出駆動電圧が適用され、下半分のノズル群73Bに対して低周波の非吐出駆動電圧が適用されると、符号Fを付して図示した矢印線のように、ノズル70の配置方向に沿うインクの流れ(高周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73A側から、低周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73B側へ向かう流れ)が発生する。
【0104】
一方、図14に示す上半分のノズル群73Aに対して低周波の非吐出駆動電圧が適用され、下半分のノズル群73Bに対して高周波の非吐出駆動電圧が適用されると、符号Rを付して図示した矢印線のように、ノズル70の配置方向に沿うインクの流れ(高周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73B側から、低周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73A側へ向かう流れ)が発生する。
【0105】
図14に示す上半分のノズル群73Aには、吐出ノズルが含まれていてもよいし、図14に示す下半分のノズル群73Bにも、吐出ノズルが含まれていてもよい。つまり、ノズル群73A及びノズル群73Bのうち、吐出ノズルを除く非吐出ノズルの一部又は全部の中から、非吐出駆動電圧が適用されるノズルが選択され、ノズル群73A及びノズル群73Bのうち、一方に高周波(例えば、30kHz、吐出周波数の2倍)の非吐出駆動電圧が適用され、他方に低周波の非吐出駆動電圧(例えば、3kHz、吐出周波数の5分の1)が適用される。
【0106】
図15は、第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の効果の説明図であり、記録媒体12(図1参照)にUV光の照射を開始したタイミングからの経過時間(分)に対する不吐出ノズルの発生数を示している。
【0107】
図15の符号94を付した実線は、本例に示す駆動方法が適用された場合の評価結果であり、同図の符号90を付した破線は、すべてのノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧を適用した場合の評価結果(図11に実線で図示した評価結果)である。
【0108】
図15に示すように、本例に示す駆動方法が適用されると、すべてのノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧を適用した場合よりも、さらに不吐出ノズルの発生が防止されることがわかる。なお、図15に示す結果を得た評価実験の条件は、図12に評価結果を示した評価実験と同一である。
【0109】
(非吐出駆動電圧)
図16は、高周波の非吐出駆動電圧210A及び低周波の非吐出駆動電圧210Bの一例を示す波形図であり、図16(a)は高周波の非吐出駆動電圧210Aが図示され、図16(b)は低周波の非吐出駆動電圧210Bが図示されている。
【0110】
図16(a)に示す高周波の非吐出駆動電圧210Aは、30kHzの周波数(吐出駆動電圧の2倍の周波数)を有し、図16(b)に示す低周波の非吐出駆動電圧210Bは、15kHzの周波数(吐出駆動電圧と同一の周波数)を有している。また、高周波の非吐出駆動電圧210Aは低周波の非吐出駆動電圧210Bの二倍の周波数を有している。
【0111】
高周波の非吐出駆動電圧は、最高吐出周波数の2分の1以上の周波数を有していればよい。また、低周波の非吐出駆動電圧は、最高吐出周波数の2分の1以下であり、高周波非吐出波形の周波数未満の周波数を有していればよい。
【0112】
(制御系の構成)
図17は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置における制御系の構成を示すブロック図である。なお、図17中、図8と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0113】
図17に示す吐出制御部112は、図8に図示した波形設定部140に加えて、周波数設定部142と、切換周期設定部144が含まれる。周波数設定部142は、非吐出駆動電圧の周波数を設定するための周波数情報を表す周波数設定信号を生成し、周波数設定信号をヘッド駆動回路128へ送出する。
【0114】
切換周期設定部144は、高周波の非吐出駆動電圧210Aと低周波の非吐出駆動電圧210Bとの切換周期情報を表す切換周期信号を生成し、切換周期信号をヘッド駆動回路128へ送出する。ヘッド駆動回路128は、周波数設定信号に基づいて、吐出タイミングごと、かつ、ノズルごとに非吐出駆動電圧の周波数を設定するとともに、切換周期設定信号に基づいて、吐出タイミングごと、かつ、ノズルごとに高周波の非吐出駆動電圧と低周波の非吐出駆動電圧との切換周期を設定する。
【0115】
(制御フロー)
図18は、第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の制御の流れを示すフローチャートである。なお、図18中、図13と同一又は類似する部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0116】
図18に示すフローチャートでは、図13のステップS16(周波数設定工程)が変更され、ステップS17(切換周期設定工程)が追加されている。図18に示す周波数設定工程(ステップS16’)は、非吐出駆動電圧が適用されるノズルに対して、高周波の周波数又は低周波の周波数が設定される。切換周期工程(ステップS17)は、低周波と高周波とを切り換える周期が設定される。
【0117】
切換周期は、1秒から10秒程度(例えば、3秒)とすることができ、インクジェットヘッド24の駆動条件や環境条件等により適宜決められる。
【0118】
(効果)
以上説明した、第2実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッドの駆動方法)によれば、非吐出駆動電圧が適用されるノズルのうち、一部のノズルに対して低周波の非吐出駆動電圧210Bが適用され、他の一部のノズルに対して高周波の非吐出駆動電圧210Aが適用されるので、インク吐出面70Dにおいて、高周波の非吐出駆動電圧210Aが適用されるノズル側から低周波の非吐出駆動電圧210Bが適用されるノズル側へ、より速いインクの流れが発生し、ノズル70の開口部70B近傍でのインクの硬化が防止される。
【0119】
本例では、すべてのノズル70を2つの領域(ノズル群73A,73B)に区画して、それぞれについて異なる周波数を有する非吐出駆動電圧を適用する態様を例示したが、すべてのノズル70を3つ以上の領域に分割してもよいし、3つ以上の領域に対して3種類以上の周波数を有する非吐出駆動電圧を適用してもよい。
【0120】
〔第3実施形態〕
(概要)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図19は、第3実施形態に係るインクジェットヘッドの駆動方法の説明図である。なお、図19中、図14と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0121】
図19に示すインクジェットヘッド駆動方法では、非吐出ノズルの中から選択的に非吐出駆動電圧を適用するノズルを設定して、インク吐出面70Dに任意のインク流れを発生させている。
【0122】
例えば、インク吐出面70Dの中でUV光があたりやすい部分のインクの流れを速くすることで、インク吐出面70Dにおけるインクの硬化を防止する効果を高めている。図19に示すインクジェットヘッドの駆動方法では、インク吐出面70Dの中央部を含む領域のノズル群73Cに非吐出駆動電圧を適用し、インク吐出面70Dの中央部を含まない領域のノズル群73Dには、非吐出駆動電圧が適用されない。
【0123】
そうすると、ノズル群73C側からノズル群73D側へ向かうインクの流れ、すなわち、符号R1,R2,F1,F2を付して図示するインク吐出面70Dの略中央からインクジェットヘッド24の長手方向の両端へ向かう流れが発生する。
【0124】
図19に示すインクジェットヘッド駆動方法によれば、インク吐出面70Dの中央部を含む中央部近傍にUV光があたりやすい場合に、当該UV光があたりやすい領域におけるインクの効果を効率よく防止することができる。
【0125】
なお、第3実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法に対して、先に説明した第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法を組み合わせることも可能である。例えば、図19における中央部のノズル群73Cに高周波の非吐出駆動電圧を適用し、両端部のノズル群73Dに低周波の非吐出駆動電圧を適用して、インク吐出面70Dの中央部から両端部へのより速いインクの流れを生成してもよいし、高周波の非吐出駆動電圧と低周波の非吐出駆動電圧とを所定の切換タイミングで切り換えるように構成してもよい。
【0126】
(効果)
図20は、第3実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の効果の説明図である。図20の実線は、本例のインクジェットヘッドの駆動方法が適用された場合であり、図20の破線は、すべての非吐出ノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧が適用された場合(図11の実線と同じ)である。
【0127】
図20に示すように、第3実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法によれば、不吐出ノズルの発生が効果的に防止されている。
【0128】
上記第1実施形態から第3実施形態では、カラーインクを用いて記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はインクジェット方式により媒体上へ液体を吐出させる液体吐出装置に適用することができる。また、本例では、シリアル方式のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、フルライン型インクジェットヘッドを備えた構成にも、本発明を適用可能である。
【0129】
以上、本発明に適用されるインクジェット記録装置及びインクジェットヘッド駆動方法について詳細に説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。
【0130】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0131】
(第1態様):活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドと、液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体が付着した媒体へ活性光線を照射する活性光線照射手段と、を備え、前記駆動電圧供給手段により前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させている。
【0132】
かかる態様によれば、親液性を有する液体吐出面を具備し、液体吐出面が液体で覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドを備えた液体吐出記録装置において、ノズルから液体を吐出させない非吐出駆動電圧を加圧手段へ供給し、ノズル内の液体を振動させるとともに液体吐出面へあふれ出させて、液体吐出面を覆う液体を流動させることにより、活性光線が液体吐出面に照射されても液体吐出面における液体の硬化が防止される。
【0133】
(第2態様):前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、前記駆動電圧供給手段は、前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対して、他の非吐出ノズルに対応する加圧手段に供給される非吐出駆動電圧の周波数よりも相対的に高い周波数を有する非吐出駆動電圧を供給する。
【0134】
かかる態様によれば、すべての非吐出ノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧が適用される場合と比較して、液体吐出面における液体の流動が速くなり、ノズル近傍における液体の硬化が防止される。
【0135】
また、相対的に高い周波数を有する非吐出駆動電圧が適用されるノズルから、相対的に低い周波数を有する非吐出駆動電圧が適用されるノズルに向かう方向へ、液体吐出面に付着している液体を流動させることができる。
【0136】
(第3態様):前記駆動電圧供給手段により相対的に高い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、相対的に低い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、を切り換える周波数切換手段を備えている。
【0137】
かかる態様によれば、液体吐出面に付着している液体の流動方向を切り換えることができ、より効果的に液体の硬化が防止される。
【0138】
(第4態様):前記周波数切換手段による前記非吐出駆動電圧の切換周期を設定する切換周期設定手段を備えている。
【0139】
かかる態様によれば、液体吐出面に付着している液体の流動方向を一定の周期で切り換えることができ、より効果的に液体の硬化が防止される。
【0140】
(第5態様):前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、前記駆動電圧供給手段は、複数の前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給しない。
【0141】
かかる態様によれば、非吐出駆動電圧が適用される非吐出ノズルの位置における液体の流動がより速くなり、当該非吐出ノズル位置及びその近傍における液体の硬化が防止される。
【0142】
(第6態様):前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧を供給する加圧手段と非吐出駆動電圧を供給しない加圧手段を選択的に切り換える供給切換手段を備えている。
【0143】
かかる態様によれば、活性光線があたりやすい位置の非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を適用することができる。
【0144】
(第7態様):前記供給切換手段は、前記液体吐出面の中央部及び前記中央部近傍の非吐出ノズルに対応する前記加圧手段に対してのみ、前記非吐出駆動電圧を供給する。
【0145】
かかる態様によれば、活性光線が比較的あたりやすいインク吐出面の中央部及び中央部の近傍における液体の硬化をより効果的に防止しうる。
【0146】
(第8態様):前記駆動電圧供給手段は、吐出データに基づく液体吐出中は、前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給する。
【0147】
かかる態様によれば、吐出データに基づく液体吐出中において、液体吐出面における液体の硬化を防止しうる。
【0148】
(第9態様):前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧の供給を停止してから所定の時間が経過した後に次の非吐出駆動電圧を供給する。
【0149】
かかる態様によれば、ノズルからしみ出させた液体がノズルへ回収されるので、ノズルへ向かう液体の流れを発生させることができる。
【0150】
(第10態様):活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドの駆動方法であって、液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させている。
【符号の説明】
【0151】
10…インクジェット記録装置、12…記録媒体、24,24Y,24M,24C,24K,…インクジェットヘッド、32A,32B…仮硬化光源、34A,34B…硬化光源、70…ノズル、70A…ノズルプレート、70B…開口部、70D…インク吐出面、72…圧力室、73A,73B,73C,D…ノズル群、80…圧電素子、102…制御装置、112…吐出制御部、128…ヘッド駆動回路、140…波形設定部、142…周波数設定部、144…切換周期設定部、200,210…非吐出駆動電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法に係り、特に紫外線硬化型インクを用いたインクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドのメンテナンス技術に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型インクを用いて画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。かかるインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジに紫外線照射用の光源を搭載し、紫外線光源をインクジェットヘッドに追従して走査させ、媒体に着弾した直後のインク液滴に紫外線を照射して、インク液滴の位置ずれや着弾干渉を回避している。
【0003】
紫外線照射型インクが適用されるインクジェット記録装置では、紫外線光源から記録媒体に照射された紫外線が反射等によって、インク吐出面やノズル開口部に照射されてしまうことがある。
【0004】
そうすると、インク吐出面に付着したインクミストや、ノズル内のインクに紫外線が照射されて硬化してしまい、インクジェットヘッドの吐出性能に大きな影響を与えてしまうことがありうる。
【0005】
特許文献1は、活性エネルギー(紫外線)の照射により硬化するインクを用いたインクジェット記録装置を開示している。特許文献1に開示されたインクジェット記録装置は、各色のヘッドごとに活性エネルギー照射手段が設けられ、各ヘッドの記録媒体Sの搬送方向下流側にヘッドごとの活性エネルギー照射手段が配置されている。かかるインクジェット記録装置は、活性光線照射手段がヘッドよりも下方に位置するように活性光線照射手段を上下させる上下機構を備え、活性光線照射手段から下方に向けて活性光線が照射されることで、下方へ進んだ光が反射や回折により迷光となって上方のヘッドへ達することがないように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−210244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたインクジェット記録装置のように、記録媒体であるウエッブを上下させながら搬送し、上方でインクを吐出させ、下方で光を照射させる構成を採用すると、記録媒体を上方向及び下方向へ搬送する構成が必要になり、記録媒体を搬送する構成が複雑化してしまう。
【0008】
また、記録媒体にインクが着弾してから光が照射されるまでに、ヘッドがある上方の位置から活性光線照射手段がある下方の位置へ記録媒体を移動させなければならないので、インクが着弾してから光が照射されるまでに、着弾干渉やインクの移動が起こり得る。そうすると、高品質の画像を得ることが困難になる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、活性光線の照射により硬化する液体を用いた液体吐出において、活性光線が迷光して液体吐出面やノズルに照射されても、液体吐出面に付着した液体やノズル内の液体の硬化を防止する液体吐出装置及びインクジェットヘッド駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る液体吐出装置は、活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドと、液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体が付着した媒体へ活性光線を照射する活性光線照射手段と、を備え、前記駆動電圧供給手段により前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、親液性を有する液体吐出面を具備し、液体吐出面が液体で覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドを備えた液体吐出記録装置において、ノズルから液体を吐出させない非吐出駆動電圧を加圧手段へ供給し、ノズル内の液体を振動させるとともに液体吐出面へあふれ出させて、液体吐出面を覆う液体を流動させることにより、活性光線が液体吐出面に照射されても液体吐出面における液体の硬化が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図
【図2】図1に示すインクジェット記録装置の用紙搬送路を模式的に示す説明図
【図3】図1に示すインクジェットヘッド及び紫外線照射部の配置構成を示す平面透視図
【図4】図3の斜視図
【図5】インクジェットヘッドのノズル配置を示すインク吐出面の平面図
【図6】インクジェットヘッドの立体構造を示す断面図
【図7】図1に示すインクジェット記録装置の制御系の要部構成を示すブロック図
【図8】図7に図示した制御系のさらに詳細な構成を示すブロック図
【図9】非吐出駆動電圧の供給中のインクの挙動を模式的に図示した説明図である。a:インク吐出面のインクの流れの説明図、b:ノズルの内部からインク吐出面へのインクの流れの説明図
【図10】非吐出駆動電圧の供給停止後のインクの挙動を模式的に図示した説明図、a:インク吐出面のインクの流れの説明図、b:ノズルの内部からインク吐出面へのインクの流れの説明図
【図11】本発明の第1実施形態の効果の説明図
【図12】非吐出駆動電圧の一例を示す波形図
【図13】本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の制御の流れを示すフローチャート
【図14】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッド駆動方法)の説明図
【図15】本発明の第2実施形態の効果の説明図
【図16】本発明の第2実施形態に適用される非吐出駆動電圧の一例を示す波形図
【図17】本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図
【図18】本発明の第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の制御の流れを示すフローチャート
【図19】本発明の第3実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッド駆動方法)の説明図
【図20】本発明の第3実施形態の効果の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0014】
〔第1実施形態〕
(インクジェット記録装置の全体構成)
図1は本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の外観斜視図である。このインクジェット記録装置10は、紫外線硬化型インク(UV硬化インク)を用いて記録媒体12上にカラー画像を形成するワイドフォーマットプリンタである。ワイドフォーマットプリンタは、大型ポスターや商業用壁面広告など、広い描画範囲を記録するのに好適な装置である。ここでは、A3ノビ以上に対応するものを「ワイドフォーマット」と呼ぶ。
【0015】
インクジェット記録装置10は、装置本体20と、この装置本体20を支持する支持脚22と、を備えている。装置本体20には、記録媒体(メディア)12に向けてインクを吐出するドロップオンデマンド型のインクジェットヘッド24と、記録媒体12を支持するプラテン26と、ヘッド移動手段(走査手段)としてのガイド機構28及びキャリッジ30が設けられている。
【0016】
ガイド機構28は、プラテン26の上方において、記録媒体12の搬送方向(X方向)に直交し且つプラテン26の媒体支持面と平行な走査方向(Y方向)に沿って延在するように配置されている。キャリッジ30は、ガイド機構28に沿ってY方向に往復移動可能に支持されている。キャリッジ30には、インクジェットヘッド24が搭載されるとともに、記録媒体12上のインクに紫外線を照射する仮硬化光源(ピニング光源)32A,32Bと、本硬化光源(キュアリング光源)34A,34Bとが搭載されている。
【0017】
仮硬化光源32A,32Bは、インクジェットヘッド24から吐出されたインク滴が記録媒体12に着弾した後に、隣接液滴同士が合一化しない程度にインクを仮硬化させるための紫外線を照射する光源である。仮硬化光源32A,32Bから紫外線が照射されたインクは、着弾干渉を回避するものの、ドット展開がされる(十分に広がることができる)程度に仮硬化する。
【0018】
本硬化光源34A,34Bは、仮硬化後に追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。本硬化光源34A,34Bは、記録媒体12上のインクに仮硬化光源32A,32Bから紫外線を照射した後の追加露光を行い、最終的にインクを完全に硬化(本硬化)させるための紫外線を照射する光源である。
【0019】
キャリッジ30上に配置されたインクジェットヘッド24、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bは、ガイド機構28に沿ってキャリッジ30とともに一体的に(一緒に)移動する。キャリッジ30の往復移動方向(Y方向)が「主走査方向」、記録媒体12の搬送方向(X方向)が「副走査方向」に相当する。
【0020】
記録媒体12には、紙、不織布、塩化ビニル、合成化学繊維、ポリエチレン、ポリエステル、ターポリンなど、材質を問わず、また、浸透性媒体、非浸透性媒体を問わず、様々な媒体を用いることができる。記録媒体12は、装置の背面側からロール紙状態(図2参照)で給紙され、印字後は装置正面側の巻き取りローラ(図1中不図示、図2の符号44)で巻き取られる。プラテン26上に搬送された記録媒体12に対して、インクジェットヘッド24からインク滴が吐出され、記録媒体12上に付着したインク滴に対して仮硬化光源32A,32B、本硬化光源34A,34Bから紫外線が照射される。
【0021】
図1において、装置本体20の正面に向かって左側の前面に、インクカートリッジ36の取り付け部38が設けられている。インクカートリッジ36は、紫外線硬化型インクを貯留する交換自在なインク供給源(インクタンク)である。インクカートリッジ36は、本例のインクジェット記録装置10で使用される各色インクに対応して設けられている。色別の各インクカートリッジ36は、それぞれ独立に形成された不図示のインク供給経路によってインクジェットヘッド24に接続される。各色のインク残量が少なくなった場合にインクカートリッジ36の交換が行われる。
【0022】
また、図示を省略するが、装置本体20の正面に向かって右側には、インクジェットヘッド24のメンテナンス部が設けられている。該メンテナンス部は、非印字時におけるインクジェットヘッド24を保湿するためのキャップと、インクジェットヘッド24のノズル面(インク吐出面)を清掃するための払拭部材(ブレード、ウエブ等)が設けられている。インクジェットヘッド24のノズル面をキャッピングするキャップは、メンテナンスのためにノズルから吐出されたインク滴を受けるためのインク受けが設けられている。
【0023】
(記録媒体搬送路の説明)
図2は、インクジェット記録装置10における記録媒体搬送路を模式的に示す説明図である。図2に示すように、プラテン26は逆樋状に形成され、その上面が記録媒体12の支持面(媒体支持面)となる。プラテン26の近傍における記録媒体搬送方向(X方向)の上流側には、記録媒体12を間欠搬送するための記録媒体搬送手段である一対のニップローラ40が配設される。このニップローラ40は記録媒体12をプラテン26上で記録媒体搬送方向へ移動させる。
【0024】
ロール・ツー・ロール方式の媒体搬送手段を構成する供給側のロール(送り出し供給ロール)42から送り出された記録媒体12は、印字部の入り口(プラテン26の記録媒体搬送方向の上流側)に設けられた一対のニップローラ40によって、記録媒体搬送方向に間欠搬送される。インクジェットヘッド24の直下の印字部に到達した記録媒体12は、インクジェットヘッド24により印字が実行され、印字後に巻き取りロール44に巻き取られる。印字部の記録媒体搬送方向の下流側には、記録媒体12のガイド46が設けられている。
【0025】
印字部においてインクジェットヘッド24と対向する位置にあるプラテン26の裏面(記録媒体12を支持する面と反対側の面)には、印字中の記録媒体12の温度を調整するための温調部50が設けられている。印字時の記録媒体12が所定の温度となるように調整されると、記録媒体12に着弾したインク液滴の粘度や、表面張力等の物性値が所望の値になり、所望のドット径を得ることが可能となる。なお、必要に応じて、温調部50の上流側にプレ温調部52を設けてもよいし、温調部50の下流側にアフター温調部54を設けてもよい。
【0026】
(画像形成部の構成)
図3は、キャリッジ30上に配置されるインクジェットヘッド24と仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの配置形態の例を示す平面透視図である。
【0027】
インクジェットヘッド24には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、クリア(透明)インク(CL)、ホワイト(白)インク(W)の各色のインクごとに、それぞれ色のインクを吐出するためのノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wが設けられている。図3ではノズル列を点線により図示し、ノズルの個別の図示は省略されている。また、以下の説明では、ノズル列61Y、61M、61C、61K、61LC、61LM、61CL、61Wを総称して符号61を付してノズル列を表すことがある。
【0028】
インク色の種類(色数)や色の組合せについては本実施形態に限定されない。例えば、LC、LMのノズル列を省略する形態、CLやWのノズル列のいずれか一方を省略する形態、メタルインクのノズル列を追加する形態、Wのノズル列に代わりメタルインクのノズル列を具備する形態、特別色のインクを吐出するノズル列を追加する形態などが可能である。また、色別のノズル列の配置順序も特に限定はない。ただし、複数のインク種のうち紫外線に対する硬化感度の低いインクを仮硬化光源32A又は仮硬化光源32Bに近い側に配置する構成が好ましい。
【0029】
色別のノズル列61ごとにヘッドモジュールを構成し、これらを並べることによって、カラー描画が可能なインクジェットヘッド24を構成することができる。例えば、イエローインクを吐出するノズル列61Yを有するヘッドモジュール24Yと、マゼンタインクを吐出するノズル列61Mを有するヘッドモジュール24Mと、シアンインクを吐出するノズル列61Cを有するヘッドモジュール24Cと、黒インクを吐出するノズル列61Kを有するヘッドモジュール24Kと、LC、LM、CL、Wの各色のインクを吐出するノズル列61LC、61LM、61CL、61Wをそれぞれ有する各ヘッドモジュール24LC、24LM、24CL、24Wと、をキャリッジ30の往復移動方向(主走査方向、Y方向)に沿って並ぶように等間隔に配置する態様も可能である。色別のヘッドモジュール24Y、24M、24C、24K、24LC、24LMのモジュール群(ヘッド群)を「インクジェットヘッド」と解釈してもよいし、各モジュールをそれぞれ「インクジェットヘッド」と解釈することも可能である。或いはまた、1つのインクジェットヘッド24の内部で色別にインク流路を分けて形成し、1ヘッドで複数色のインクを吐出するノズル列を備える構成も可能である。
【0030】
各ノズル列61は、複数個のノズルが一定の間隔で記録媒体搬送方向(副走査方向、X方向)に沿って一列に(直線的に)並んだものとなっている。本例のインクジェットヘッド24は、各ノズル列61を構成するノズルの配置ピッチ(ノズルピッチ)が254μm(100dpi)、一列のノズル列61を構成するノズルの数は256ノズル、ノズル列61の全長Lw(ノズル列の全長)は約65mm(254μm×255=64.8mm)である。また、吐出周波数は15kHzであり、駆動波形の変更によって10pl(ピコリットル)、20pl、30plの3種類の吐出液滴量を打ち分けることができる。
【0031】
(作画モードについて)
本例に示すインクジェット記録装置10は、マルチパス方式の描画制御が適用され、印字パス数の変更によって印字解像度(記録解像度)を変更することが可能である。例えば、高生産モード、標準モード、高画質モードの3種類の作画モードが用意され、各モードでそれぞれ印字解像度が異なる。印刷目的や用途に応じて作画モードを選択することができる。
【0032】
高生産モードでは、600dpi(主走査方向)×400dpi(副走査方向)の解像度で印字が実行される。高生産モードの場合、主走査方向は2パス(2回の走査)によって600dpiの解像度が実現される。1回目の走査(キャリッジ30の往路)では300dpiの解像度でドットが形成される。2回目の走査(復路)では1回目の走査(往路)で形成されたドットの中間を300dpiで補間するようにドットが形成され、主走査方向について600dpiの解像度が得られる。
【0033】
一方、副走査方向については、ノズルピッチが100dpiであり、一回の主走査(1パス)により副走査方向に100dpiの解像度でドットが形成される。したがって、4パス印字(4回の走査)により、ノズルピッチ間の間を埋める補間印字を行うことで400dpiの解像度が実現される。なお、高生産モードのキャリッジ30の主走査速度は、1270mm/secである。
【0034】
標準モードでは、600dpi×800dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は2パス印字、副走査は8パス印字により600dpi×800dpiの解像度を得ている。
【0035】
高画質モードでは、1200×1200dpiの解像度で印字が実行され、主走査方向は4パス、副走査方向が12パスにより1200dpi×1200dpiの解像度を得ている。
【0036】
(シングリング走査によるスワス幅について)
ワイドフォーマット機の作画モードでは、解像度設定ごとに、それぞれシングリング(インターレス)する作画条件が決定されている。具体的には、インクジェットヘッドの吐出ノズル列の幅Lw(ノズル列の長さ)をパス数(スキャン繰り返し回数)だけ分割してシングリング作画するので、インクジェットヘッドのノズル列幅、並びに、主走査方向及び副走査方向のパス数(インターレースする分割数)によってスワス幅が異なる。なお、マルチパス方式によるシングリング作画の詳細については、例えば、特開2004−306617号公報に説明されている。
【0037】
一例として、FUJIFILM Dimatix社製のQS-10ヘッド(100dpi,256ノズル)を用いた場合のシングリング作画によるパス数とスワス幅の関係は下表〔表1〕のようになる。作画によって想定されるスワス幅は使用するノズル列幅を主走査方向パス数と副走査方向パス数の積で分割した値となる。
【0038】
【表1】
(本硬化光源の構成例について)
図4に示したように、本硬化光源34A,34Bは、それぞれ複数個のUV‐LED素子35が並べられた構造を有している。2つの本硬化光源34A,34Bは、共通の構成である。本例では、本硬化光源34A,34Bとして、Y方向に6個、X方向に2個のUV‐LED素子35がマトリクス状に配置されたLED素子配列(6×2)を例示したが、LED素子数及びその配列形態はこの例に限定されない。例えば、複数個のLED素子をY方向に沿って一列に並べた構成も可能である。
【0039】
また、本硬化光源34A,34Bの発光源としては、UV‐LED素子35に限らず、UVランプなどを用いることも可能である。
【0040】
(仮硬化光源について)
仮硬化光源32A,32Bについても、UV‐LED素子やUVランプを用いることができる。なお、複数個のUV‐LED素子を用いる場合、ノズル列方向に沿ってLEDを配列させる態様に限らず、仮硬化光源32A,32Bのユニットの端面(上流側端面、又は下流側端面、若しくは、その両方の端面)にLED素子を配置する形態もあり得る。
【0041】
(インクジェットヘッドの構造)
図5(a)は、インクジェットヘッド24のノズル配置を示す平面透視図であり、一色分のノズル列61が図示されている。同図に示すように、一色分のノズル列61は、副走査方向(図1に図示したX方向)に沿って一列にノズル70が配置されている。各ノズル70は吐出させるインクが収容される圧力室72(破線により図示)と連通している。なお、図5(b)に示すように、ノズル70を二列の千鳥配置させる態様も可能である。
【0042】
図6は、インクジェットヘッド24の立体構造を示す断面図であり、1ノズル分(1吐出素子分)の構造が図示されている。本例に適用されるインクジェットヘッド24のインク吐出方式としては、圧電素子(ピエゾアクチュエータ)の変形によってインク滴を飛ばす方式(ピエゾジェット方式)が採用されている。紫外線硬化型インクは、一般に溶剤インクと比べて高粘度であるため、吐出力が比較的大きなピエゾジェット方式が有利である。
【0043】
図6に示すように、ノズル70はノズル流路71を介して圧力室72と連通している。ノズル70は、ノズルプレート70Aのインク吐出面70Dに形成される開口部70B、テーパ形状(略円すい形状)を有するテーパ部70Cを含んで構成される。
【0044】
圧力室72は、ノズル流路71を介してノズル70と連通するととともに、供給口(供給絞り)74を介して共通流路76と連通される。共通流路76は、一色分のノズル列61(図5参照)を構成するノズル70のそれぞれに対応する圧力室72と連通して、各圧力室72に対してインクを供給している。
【0045】
圧力室72の天井面を構成する振動板78は、圧力室72の外側面の圧力室72に対応する位置に圧電素子80が設けられている。圧電素子80は、上部電極82と下部電極84との間に圧電体がはさまれた構造を有しており、上部電極82と下部電極84との間に駆動電圧が供給されるとひずみ変形が生じ、振動板78を変形させる。
【0046】
すなわち、画像データに応じて圧電素子80へ駆動電圧を供給すると、振動板78が変形して圧力室72の体積を収縮させ、圧力室72の体積減少に対応する量のインクがノズル70から吐出される。圧電素子80への駆動電圧の供給を停止させると、圧電素子80のひずみ変形が復元されるとともに圧力室72が元の形状に復元され、供給口74を介して共通流路76から圧力室72へインクが充填される。
【0047】
インクジェットヘッド24はノズルプレート70Aのインク吐出面70Dが親液性を有している。インク吐出面70Dのインクに対する接触角は、40度以下であり、ノズル70の内部(例えば、テーパ部70C)のインクに対する接触角以上となっている。インク吐出面70Dの親液処置の具体例として、インク吐出面70Dに酸化処理を施して酸化膜を形成することや、スパッタ法等により金属膜を形成することが挙げられる。
【0048】
図6に示すように、インク吐出面70Dには、インクによる液層(インク層)88が形成され、インク吐出面70Dはインクにより覆われた状態で使用される。なお、ノズル70内のメニスカス(不図示)が安定している状態(静定状態)では、インク吐出面70Dを覆っているインクと、ノズル70内のインクは分離されている。
【0049】
このような親液性を有するインク吐出面70Dを具備することで、以下の効果を得ることができる。まず、インク吐出面70Dが撥液性を有する場合は、インクミストが堆積し、不吐や曲がりを引き起こす。これに対して、インク吐出面70Dが親液性を有する場合が、インクミストがインク吐出面70Dのインク層に吸収されてしまうので、インクミストによる曲がりや不吐が発生しない。
【0050】
また、ノズルプレートのメンテナンスが容易であることと、すなわち、インク吐出面70Dのインク層によりウエットワイピングになるので、ワイピングに対する耐久性が強いといえる。
【0051】
(制御系の構成)
図7は、インクジェット記録装置10の制御系の要部構成を示すブロック図である。同図に示すように、インクジェット記録装置10は、制御手段としての制御装置102が設けられている。
【0052】
制御装置102としては、例えば、中央演算処理装置(CPU)を備えたコンピュータ等を用いることができる。制御装置102は、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。制御装置102には、記録媒体搬送制御部104、キャリッジ駆動制御部106、光源制御部108、画像処理部110、吐出制御部112が含まれる。これらの各部は、ハードウエア回路又はソフトウエア、若しくはこれらの組合せによって実現される。
【0053】
記録媒体搬送制御部104は、記録媒体12(図1参照)の搬送を行うための搬送駆動部114を制御する。搬送駆動部114は、図2に示すニップローラ40を駆動する駆動用モータ、及びその駆動回路が含まれる。プラテン26(図1参照)上に搬送された記録媒体12は、インクジェットヘッド24による主走査方向の往復走査(印刷パスの動き)に合わせて、副走査方向へ間欠送りされる。
【0054】
図7に示すキャリッジ駆動制御部106は、キャリッジ30(図1参照)を主走査方向に移動させるための主走査駆動部116を制御する。主走査駆動部116は、キャリッジ30の移動機構に連結される駆動用モータ、及びその制御回路が含まれる。光源制御部108は、LED駆動回路118を介して仮硬化光源32A,32BのUV‐LED素子の発光を制御するとともに、LED駆動回路119を介して本硬化光源34A,34BのUV‐LED素子の発光を制御する制御手段である。
【0055】
制御装置102は、操作パネル等の入力装置120、表示装置122が接続されている。入力装置120は、手動による外部操作信号を制御装置102へ入力する手段であり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、操作ボタンなど各種形態を採用しうる。表示装置122には、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、CRTなど、各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置120を操作することにより、作画モード(「作画フォーマット」と同義)の選択、印刷条件の入力や付属情報の入力・編集などを行うことができ、入力内容や検索結果等の各種情報は、表示装置122の表示を通じて確認することができる。
【0056】
また、インクジェット記録装置10には、各種情報を格納しておく情報記憶部124と、印刷用の画像データを取り込むための画像入力インターフェース126が設けられている。画像入力インターフェースには、シリアルインターフェースを適用してもよいし、パラレルインターフェースを適用してもよい。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0057】
画像入力インターフェース126を介して入力された画像データは、画像処理部110にて印刷用のデータ(ドットデータ)に変換される。ドットデータは、一般に、多階調の画像データに対して色変換処理、ハーフトーン処理を行って生成される。色変換処理は、sRGBなどで表現された画像データ(例えば、RGB各色について8ビットの画像データ)をインクジェット記録装置10で使用するインク各色の色データに変換する処理である。
【0058】
ハーフトーン処理は、色変換処理により生成された各色の色データに対して、誤差拡散法や閾値マトリクス等の処理で各色のドットデータに変換する処理である。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般にM値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も簡単な例では、二値(ドットのオンオフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
【0059】
こうして得られた二値又は多値の画像データ(ドットデータ)は、各ノズルの駆動(オン)/非駆動(オフ)、さらに、多値の場合には液滴量(ドットサイズ)を制御するインク吐出データ(打滴制御データ)として利用される。
【0060】
吐出制御部112は、画像処理部110において生成されたドットデータに基づいて、ヘッド駆動回路128に対する吐出制御信号を生成する。また、吐出制御部112は、駆動波形生成部(図8に符号140を付して図示)を備えている。駆動波形生成部は、インクジェットヘッド24の各ノズルに対応した吐出エネルギー発生素子(本例では、ピエゾ素子)を駆動するための駆動電圧の電圧波形を生成する手段である。駆動波形データは、予め情報記憶部124に格納されており、必要に応じて使用される駆動波形データが出力される。駆動波形生成部から出力された駆動波形は、ヘッド駆動回路128に供給される。なお、駆動波形生成部から出力される信号はデジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0061】
ヘッド駆動回路128を介してインクジェットヘッド24の各吐出エネルギー発生素子に対して、共通の駆動電圧が印加され、各ノズルの吐出タイミングに応じて各エネルギー発生素子の個別電極に接続されたスイッチ素子(不図示)のオンオフを切り換えることで、対応するノズルからインクが吐出される。
【0062】
情報記憶部124は、制御装置102のCPUが実行するプログラム、及び制御に必要な各種データなどが格納されている。情報記憶部124は、作画モードに応じた解像度の設定情報、パス数(スキャンの繰り返し数)、副走査送り量の制御に必要な送り量情報、仮硬化光源32A,32B及び本硬化光源34A,34Bの制御情報などが格納されている。
【0063】
エンコーダ130は、主走査駆動部116の駆動用モータ、及び搬送駆動部114の駆動用モータに取り付けられており、該駆動モータの回転量及び回転速度に応じたパルス信号を出力し、該パルス信号は制御装置102に送られる。エンコーダ130から出力されたパルス信号に基づいて、キャリッジ30の位置、及び記録媒体12(図1参照)の位置が把握される。
【0064】
センサ132は、キャリッジ30に取り付けられており、センサ132から得られたセンサ信号に基づいて記録媒体12の幅が把握される。なお、図7に図示した構成は、適宜変更、追加、削除が可能である。
【0065】
(インクジェットヘッドの駆動制御の詳細な説明)
次に、インクジェットヘッドの駆動制御について詳述する。図8は、図7に図示した制御系のさらに詳細な構成を示すブロック図であり、各ノズル70に対して、吐出波形又は非吐出波形のいずれかを設定する構成が図示されている。
【0066】
図8に示すように、情報記憶部124は、吐出波形が記憶される吐出波形記憶部125Aと、非吐出波形が記憶される非吐出波形記憶部125Bと、を備えている。吐出波形及び非吐出波形は、予め駆動波形生成部(不図示)により生成されている。
【0067】
図8に示す波形設定部140は、各ノズル70に対して吐出タイミングごとに、画像データに基づいてインクを吐出させる吐出ノズルであるか、インクを吐出させない非吐出ノズルであるかを設定する波形設定信号を生成する。波形設定信号はヘッド駆動回路128へ送られる。
【0068】
本例に示すインクジェット記録装置10では、非吐出ノズルに対して非吐出波形に基づいて生成された非吐出駆動電圧が適用され、吐出ノズルに対して吐出波形に基づいて生成された吐出駆動電圧が適用される。
【0069】
図9は、非吐出駆動電圧(図12に符号200,210を付して図示)の供給中のインクの挙動を模式的に図示した説明図である。図9(a)は、インク吐出面70Dのインクの流れが図示されており、図9(b)は、ノズル70の内部からインク吐出面70Dへのインクの流れが図示されている。
【0070】
図9(a)に示すように、一列に並べられた複数のノズル70に対応する圧電素子80(図6参照)に同一の電圧及び同一の周波数を有する非吐出駆動電圧が供給されると、該圧電素子80に対応するノズル70のメニスカスが揺らされ、その結果、当該ノズル70からインク吐出面70Dへインクがあふれ出す。
【0071】
非吐出駆動電圧が供給された直後は、インク吐出面70Dのインクはノズル70からインク吐出面のエッジ方向へ向かって移動する。図9(a),(b)では、ノズル70からインク吐出面70Dのエッジへ向かうインクの流れが、符号88Aを付した矢印線によって図示されている。
【0072】
なお、1つのノズル70に着目するとインクは当該ノズル70から放射状にあふれ出すものの、各ノズル70からあふれ出したインクは隣接するノズル70からあふれ出したインクと衝突し、結果としてインクの流れは、ノズル70からノズル70の配置方向と直交する方向のインク吐出面70Dのエッジに向かって生じることになる。
【0073】
図10は、非吐出駆動電圧の供給停止後のインクの挙動を模式的に図示した説明図である。図10(a)は、インク吐出面70Dのインクの流れが図示されており、図10(b)は、ノズル70の内部からインク吐出面70Dへのインクの流れが図示されている。
【0074】
非吐出駆動電圧の供給が停止されてから所定時間(数μsec程度)が経過すると、インク吐出面70Dのインクはインク吐出面70Dのエッジからノズル70の中心の方向へ向かって移動する。図10(a),(b)では、インク吐出面70Dのエッジからノズル70へ向かうインクの流れが、符号88Bを付した矢印線によって図示されている。
【0075】
すなわち、非吐出駆動電圧が供給された圧電素子80は、対応するノズル70からインクを吐出させずに、該ノズル70からインク吐出面70Dへインクをしみ出させるように、対応する圧力室72を加圧する。非吐出駆動電圧の供給が停止されると、該圧電素子80の変形が復元され、インク吐出面70Dへしみ出させたインクはノズル70の内部に回収される。
【0076】
このようにして、ノズル70からインク吐出面70Dへインクをしみ出させるとともに、インク吐出面70Dにしみ出させたインクをノズル70の内部へ回収させることで、インク吐出面70Dに形成されているインク層88が流動するので、インク吐出面70DにUV光が照射されたとしてもインク吐出面70D及びノズル70の開口部70Bにおけるインクの硬化を防止しうる。
【0077】
なお、インク吐出面70Dが使用されるインクに対する所定の親液性を有していない場合には、非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を適用したとしても、該非吐出ノズルからインクがあふれ出すことがなく、インク吐出面70Dにインクの流れを形成することはできない。
【0078】
図11は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッドの駆動方法)の効果の説明図であり、記録媒体12(図1参照)にUV光の照射を開始したタイミングからの経過時間(分)に対する不吐出ノズルの発生数を示している。
【0079】
図11の符号90を付した実線は、非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を作用させて、インク吐出面70Dにインクの流動を発生させた場合の評価結果であり、図11の符号92を付した破線は、非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を作用させなかった場合の評価結果である。
【0080】
図11に示すように、非吐出駆動電圧を作用させた場合でも2つから3つの不吐出ノズルが発生するものの、非吐出駆動電圧の供給開始から20分程度経過後は不吐出ノズル数は増加していない。一方、非吐出駆動電圧を作用させていない場合は、休止時間が長くなると不吐出ノズル数は増加する傾向がある。
【0081】
なお、図11に示す結果を得た評価実験の条件は以下のとおりである。インクジェットヘッドの総ノズル数は256ノズルであり、すべてのノズルに対して非吐出駆動電圧を適用している。また、非吐出駆動電圧として、図12(a)に図示した非吐出駆動電圧200、図12(b)に図示した非吐出駆動電圧210が用いられる。
【0082】
図12(a)に示す非吐出駆動電圧200は、基準電位(ゼロボルト)から最大電圧へ立ち上がる立ち上がり部202と、最大電圧部(定電圧部)204と、最大電圧から基準電圧へ立ち下がる立ち下がり部206と、を含む台形形状を有している。
【0083】
また、非吐出駆動電圧200の最大振幅(電位差)は25Vであり、立ち上がり部202の開始タイミングから立ち下がり部206の開始タイミングまでの時間は5μsecである。
【0084】
図12(b)に示す非吐出駆動電圧(群)210は、図12(a)に図示された非吐出駆動電圧200が所定の周期で連続しており、その周期は約66.7μsecである。この周期を周波数に換算すると15kHzとなり、吐出周波数(吐出駆動電圧の周波数)と一致している。
【0085】
図12(b)に示す非吐出駆動電圧210は、一吐出周期内に非吐出駆動電圧200が1つだけ含まれ態様である。すなわち、一吐出周期内に非吐出駆動電圧200が少なくとも1つ供給されれば、不吐出ノズルの発生を回避することができる。
【0086】
なお、図12(a)に図示した非吐出駆動電圧200、及び図12(b)に図示した非吐出駆動電圧210はあくまでも一例であり、ノズル70からインクを吐出させずに(ノズル70内のインクから分離されずに)、ノズル70からインク吐出面70Dへインクをしみ出させることができればよい。
【0087】
例えば、非吐出駆動電圧200に矩形波や三角波を適用してもよいし、一吐出周期内に複数の非吐出駆動電圧200が含まれる態様も可能である。すなわち、「非吐出駆動電圧」とは、ノズル70からインクを吐出させずに、ノズル70内部のインクをインク吐出面70Dへしみ出させる際に該ノズルに対応する圧電素子80に印加される駆動電圧であり、例えば、吐出駆動電圧の振幅に対して10パーセント以上50パーセント以下の振幅を有する態様がある。
【0088】
すなわち、非吐出駆動電圧の振幅を吐出駆動電圧の振幅の10パーセント以上とすることで、ノズル70内部のインクを振動させるとともに、インク吐出面70Dへあふれ出させることができる。
【0089】
また、非吐出駆動電圧の振幅を吐出駆動電圧の振幅の50パーセント以上とすることで、誤ってノズル70からインクが吐出されることが防止される。
【0090】
また、非吐出駆動電圧210の周波数は、非吐出ノズルからあふれ出させたインクの体積と、非吐出駆動電圧200の休止(供給終了)によってノズル70へ吸い込まれる(回収される)インクの体積が均一になるように決められる。
【0091】
(制御フロー)
図13は、本発明の第1実施形態に係るインクジェットヘッドの駆動方法の制御の流れを示すフローチャートである。
【0092】
インクジェットヘッド24の駆動が開始されると(ステップS10)、画像データに基づいてすべてのノズルについて、吐出ノズルであるか非吐出ノズルであるかが設定される(ステップS12)。ステップS12において非吐出ノズルに設定されたノズルは(Yes判定)、非吐出波形が設定されるとともに(ステップS14)、非吐出波形(非吐出駆動電圧)の周波数が設定される(ステップS16)。
【0093】
そして、非吐出ノズル対応する圧電素子80に非吐出駆動電圧の供給が開始され(ステップS18)、その後、非吐出駆動電圧の供給が停止される(ステップS20)。次に、非吐出駆動電圧の供給の停止からの所定時間(インク吐出面70Dにしみ出させたインクがノズル70内に回収されるまでの時間)が経過したか否かが監視される(ステップS22)。
【0094】
ステップS22において、所定時間が経過していないと判断されると(No判定)、非吐出駆動電圧の供給停止からの経過時間の監視が継続され、所定時間が経過したと判断されると(Yes判定)、ステップS24へ進む。
【0095】
ステップS24では、次の吐出タイミングのデータが存在するか否かが判断され、次の吐出タイミングのデータが存在する場合は(No判定)、ステップS12に進み、ステップS12からの工程が繰り返し実行される。一方、次の吐出タイミングのデータが存在しない場合は(ステップS24のYes判定)、インクジェットヘッドの駆動が終了される(ステップS32)。
【0096】
ステップS12において、吐出ノズルとして設定されたノズルは(No判定)、吐出波形が設定されるとともに(ステップS26)、当該ノズルに対応する圧電素子80に対して吐出駆動電圧が供給され(ステップS28)、吐出駆動電圧の供給が終了すると(ステップS30)、ステップS24へ進む。
【0097】
本例に示すインクジェットヘッド駆動方法では、印刷中(画像データに基づく画像形成中)は、常時非吐出ノズルの少なくとも一部に対して非吐出駆動電圧が適用されるので、印刷中における不吐出ノズルの発生が確実に防止される。
【0098】
(効果)
上記の如く構成されたインクジェット記録装置及びインクジェットヘッドの駆動方法によれば、紫外線硬化型インクに対する親液性を有するインク吐出面を具備するインクジェットヘッドにおいて、非吐出ノズルに対応する圧電素子80に非吐出駆動電圧を供給し、非吐出ノズルからインク吐出面70Dへインクをしみ出させて、インク吐出面70D内でインクを移動させることで、インク吐出面70DにUV光があたった場合でもインク吐出面70Dにおいてインクが硬化せず、吐出異常ノズルの発生を防止しうる。
【0099】
また、ノズル70からインク吐出面70Dのエッジへ向かう方向、及びインク吐出面70Dからノズル70へ向かう方向についてインクを移動させることで、ノズル70の内部にもインクの流れが発生するので、ノズル70の開口部70B近傍にUV光があたった場合にも、ノズル70の内部のインクの硬化が防止されうる。
【0100】
本例では、非吐出ノズルに対応する圧電素子80のすべてに非吐出駆動電圧が供給される態様を例示したが、インク吐出面70Dのインクが硬化しない程度にインクが流動すればよく、非吐出ノズルの一部に対応する圧電素子80に対して選択的に非吐出駆動電圧が供給される態様も可能である。
【0101】
〔第2実施形態〕
(概要)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、先に説明した第1実施形態と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。図14は、本発明の第2実施形態に係るインクジェット記録装置に適用されるインクジェットヘッド駆動方法の説明図である。
【0102】
本例に示すインクジェットヘッド駆動方法は、非吐出ノズルの一部について非吐出駆動電圧(群)の周波数を変えており、すべての非吐出ノズルに同一の周波数を有する非吐出駆動電圧群を適用する場合よりも、インク吐出面70Dにおけるインクの流れが速くなり、特に、ノズル70の近傍でのインクの硬化が防止される。
【0103】
図14に示す上半分のノズル群73Aに対して高周波の非吐出駆動電圧が適用され、下半分のノズル群73Bに対して低周波の非吐出駆動電圧が適用されると、符号Fを付して図示した矢印線のように、ノズル70の配置方向に沿うインクの流れ(高周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73A側から、低周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73B側へ向かう流れ)が発生する。
【0104】
一方、図14に示す上半分のノズル群73Aに対して低周波の非吐出駆動電圧が適用され、下半分のノズル群73Bに対して高周波の非吐出駆動電圧が適用されると、符号Rを付して図示した矢印線のように、ノズル70の配置方向に沿うインクの流れ(高周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73B側から、低周波の非吐出駆動電圧が適用されるノズル群73A側へ向かう流れ)が発生する。
【0105】
図14に示す上半分のノズル群73Aには、吐出ノズルが含まれていてもよいし、図14に示す下半分のノズル群73Bにも、吐出ノズルが含まれていてもよい。つまり、ノズル群73A及びノズル群73Bのうち、吐出ノズルを除く非吐出ノズルの一部又は全部の中から、非吐出駆動電圧が適用されるノズルが選択され、ノズル群73A及びノズル群73Bのうち、一方に高周波(例えば、30kHz、吐出周波数の2倍)の非吐出駆動電圧が適用され、他方に低周波の非吐出駆動電圧(例えば、3kHz、吐出周波数の5分の1)が適用される。
【0106】
図15は、第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の効果の説明図であり、記録媒体12(図1参照)にUV光の照射を開始したタイミングからの経過時間(分)に対する不吐出ノズルの発生数を示している。
【0107】
図15の符号94を付した実線は、本例に示す駆動方法が適用された場合の評価結果であり、同図の符号90を付した破線は、すべてのノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧を適用した場合の評価結果(図11に実線で図示した評価結果)である。
【0108】
図15に示すように、本例に示す駆動方法が適用されると、すべてのノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧を適用した場合よりも、さらに不吐出ノズルの発生が防止されることがわかる。なお、図15に示す結果を得た評価実験の条件は、図12に評価結果を示した評価実験と同一である。
【0109】
(非吐出駆動電圧)
図16は、高周波の非吐出駆動電圧210A及び低周波の非吐出駆動電圧210Bの一例を示す波形図であり、図16(a)は高周波の非吐出駆動電圧210Aが図示され、図16(b)は低周波の非吐出駆動電圧210Bが図示されている。
【0110】
図16(a)に示す高周波の非吐出駆動電圧210Aは、30kHzの周波数(吐出駆動電圧の2倍の周波数)を有し、図16(b)に示す低周波の非吐出駆動電圧210Bは、15kHzの周波数(吐出駆動電圧と同一の周波数)を有している。また、高周波の非吐出駆動電圧210Aは低周波の非吐出駆動電圧210Bの二倍の周波数を有している。
【0111】
高周波の非吐出駆動電圧は、最高吐出周波数の2分の1以上の周波数を有していればよい。また、低周波の非吐出駆動電圧は、最高吐出周波数の2分の1以下であり、高周波非吐出波形の周波数未満の周波数を有していればよい。
【0112】
(制御系の構成)
図17は、第2実施形態に係るインクジェット記録装置における制御系の構成を示すブロック図である。なお、図17中、図8と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0113】
図17に示す吐出制御部112は、図8に図示した波形設定部140に加えて、周波数設定部142と、切換周期設定部144が含まれる。周波数設定部142は、非吐出駆動電圧の周波数を設定するための周波数情報を表す周波数設定信号を生成し、周波数設定信号をヘッド駆動回路128へ送出する。
【0114】
切換周期設定部144は、高周波の非吐出駆動電圧210Aと低周波の非吐出駆動電圧210Bとの切換周期情報を表す切換周期信号を生成し、切換周期信号をヘッド駆動回路128へ送出する。ヘッド駆動回路128は、周波数設定信号に基づいて、吐出タイミングごと、かつ、ノズルごとに非吐出駆動電圧の周波数を設定するとともに、切換周期設定信号に基づいて、吐出タイミングごと、かつ、ノズルごとに高周波の非吐出駆動電圧と低周波の非吐出駆動電圧との切換周期を設定する。
【0115】
(制御フロー)
図18は、第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の制御の流れを示すフローチャートである。なお、図18中、図13と同一又は類似する部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0116】
図18に示すフローチャートでは、図13のステップS16(周波数設定工程)が変更され、ステップS17(切換周期設定工程)が追加されている。図18に示す周波数設定工程(ステップS16’)は、非吐出駆動電圧が適用されるノズルに対して、高周波の周波数又は低周波の周波数が設定される。切換周期工程(ステップS17)は、低周波と高周波とを切り換える周期が設定される。
【0117】
切換周期は、1秒から10秒程度(例えば、3秒)とすることができ、インクジェットヘッド24の駆動条件や環境条件等により適宜決められる。
【0118】
(効果)
以上説明した、第2実施形態に係るインクジェット記録装置(インクジェットヘッドの駆動方法)によれば、非吐出駆動電圧が適用されるノズルのうち、一部のノズルに対して低周波の非吐出駆動電圧210Bが適用され、他の一部のノズルに対して高周波の非吐出駆動電圧210Aが適用されるので、インク吐出面70Dにおいて、高周波の非吐出駆動電圧210Aが適用されるノズル側から低周波の非吐出駆動電圧210Bが適用されるノズル側へ、より速いインクの流れが発生し、ノズル70の開口部70B近傍でのインクの硬化が防止される。
【0119】
本例では、すべてのノズル70を2つの領域(ノズル群73A,73B)に区画して、それぞれについて異なる周波数を有する非吐出駆動電圧を適用する態様を例示したが、すべてのノズル70を3つ以上の領域に分割してもよいし、3つ以上の領域に対して3種類以上の周波数を有する非吐出駆動電圧を適用してもよい。
【0120】
〔第3実施形態〕
(概要)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図19は、第3実施形態に係るインクジェットヘッドの駆動方法の説明図である。なお、図19中、図14と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0121】
図19に示すインクジェットヘッド駆動方法では、非吐出ノズルの中から選択的に非吐出駆動電圧を適用するノズルを設定して、インク吐出面70Dに任意のインク流れを発生させている。
【0122】
例えば、インク吐出面70Dの中でUV光があたりやすい部分のインクの流れを速くすることで、インク吐出面70Dにおけるインクの硬化を防止する効果を高めている。図19に示すインクジェットヘッドの駆動方法では、インク吐出面70Dの中央部を含む領域のノズル群73Cに非吐出駆動電圧を適用し、インク吐出面70Dの中央部を含まない領域のノズル群73Dには、非吐出駆動電圧が適用されない。
【0123】
そうすると、ノズル群73C側からノズル群73D側へ向かうインクの流れ、すなわち、符号R1,R2,F1,F2を付して図示するインク吐出面70Dの略中央からインクジェットヘッド24の長手方向の両端へ向かう流れが発生する。
【0124】
図19に示すインクジェットヘッド駆動方法によれば、インク吐出面70Dの中央部を含む中央部近傍にUV光があたりやすい場合に、当該UV光があたりやすい領域におけるインクの効果を効率よく防止することができる。
【0125】
なお、第3実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法に対して、先に説明した第2実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法を組み合わせることも可能である。例えば、図19における中央部のノズル群73Cに高周波の非吐出駆動電圧を適用し、両端部のノズル群73Dに低周波の非吐出駆動電圧を適用して、インク吐出面70Dの中央部から両端部へのより速いインクの流れを生成してもよいし、高周波の非吐出駆動電圧と低周波の非吐出駆動電圧とを所定の切換タイミングで切り換えるように構成してもよい。
【0126】
(効果)
図20は、第3実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法の効果の説明図である。図20の実線は、本例のインクジェットヘッドの駆動方法が適用された場合であり、図20の破線は、すべての非吐出ノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧が適用された場合(図11の実線と同じ)である。
【0127】
図20に示すように、第3実施形態に係るインクジェットヘッド駆動方法によれば、不吐出ノズルの発生が効果的に防止されている。
【0128】
上記第1実施形態から第3実施形態では、カラーインクを用いて記録媒体上にカラー画像を形成するインクジェット記録装置を例示したが、本発明の適用範囲はインクジェット方式により媒体上へ液体を吐出させる液体吐出装置に適用することができる。また、本例では、シリアル方式のインクジェット記録装置を例に挙げて説明したが、フルライン型インクジェットヘッドを備えた構成にも、本発明を適用可能である。
【0129】
以上、本発明に適用されるインクジェット記録装置及びインクジェットヘッド駆動方法について詳細に説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更が可能である。
【0130】
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
【0131】
(第1態様):活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドと、液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、前記インクジェットヘッドから吐出させた液体が付着した媒体へ活性光線を照射する活性光線照射手段と、を備え、前記駆動電圧供給手段により前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させている。
【0132】
かかる態様によれば、親液性を有する液体吐出面を具備し、液体吐出面が液体で覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドを備えた液体吐出記録装置において、ノズルから液体を吐出させない非吐出駆動電圧を加圧手段へ供給し、ノズル内の液体を振動させるとともに液体吐出面へあふれ出させて、液体吐出面を覆う液体を流動させることにより、活性光線が液体吐出面に照射されても液体吐出面における液体の硬化が防止される。
【0133】
(第2態様):前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、前記駆動電圧供給手段は、前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対して、他の非吐出ノズルに対応する加圧手段に供給される非吐出駆動電圧の周波数よりも相対的に高い周波数を有する非吐出駆動電圧を供給する。
【0134】
かかる態様によれば、すべての非吐出ノズルに対して同一の周波数を有する非吐出駆動電圧が適用される場合と比較して、液体吐出面における液体の流動が速くなり、ノズル近傍における液体の硬化が防止される。
【0135】
また、相対的に高い周波数を有する非吐出駆動電圧が適用されるノズルから、相対的に低い周波数を有する非吐出駆動電圧が適用されるノズルに向かう方向へ、液体吐出面に付着している液体を流動させることができる。
【0136】
(第3態様):前記駆動電圧供給手段により相対的に高い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、相対的に低い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、を切り換える周波数切換手段を備えている。
【0137】
かかる態様によれば、液体吐出面に付着している液体の流動方向を切り換えることができ、より効果的に液体の硬化が防止される。
【0138】
(第4態様):前記周波数切換手段による前記非吐出駆動電圧の切換周期を設定する切換周期設定手段を備えている。
【0139】
かかる態様によれば、液体吐出面に付着している液体の流動方向を一定の周期で切り換えることができ、より効果的に液体の硬化が防止される。
【0140】
(第5態様):前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、前記駆動電圧供給手段は、複数の前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給しない。
【0141】
かかる態様によれば、非吐出駆動電圧が適用される非吐出ノズルの位置における液体の流動がより速くなり、当該非吐出ノズル位置及びその近傍における液体の硬化が防止される。
【0142】
(第6態様):前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧を供給する加圧手段と非吐出駆動電圧を供給しない加圧手段を選択的に切り換える供給切換手段を備えている。
【0143】
かかる態様によれば、活性光線があたりやすい位置の非吐出ノズルに対して非吐出駆動電圧を適用することができる。
【0144】
(第7態様):前記供給切換手段は、前記液体吐出面の中央部及び前記中央部近傍の非吐出ノズルに対応する前記加圧手段に対してのみ、前記非吐出駆動電圧を供給する。
【0145】
かかる態様によれば、活性光線が比較的あたりやすいインク吐出面の中央部及び中央部の近傍における液体の硬化をより効果的に防止しうる。
【0146】
(第8態様):前記駆動電圧供給手段は、吐出データに基づく液体吐出中は、前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給する。
【0147】
かかる態様によれば、吐出データに基づく液体吐出中において、液体吐出面における液体の硬化を防止しうる。
【0148】
(第9態様):前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧の供給を停止してから所定の時間が経過した後に次の非吐出駆動電圧を供給する。
【0149】
かかる態様によれば、ノズルからしみ出させた液体がノズルへ回収されるので、ノズルへ向かう液体の流れを発生させることができる。
【0150】
(第10態様):活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドの駆動方法であって、液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させている。
【符号の説明】
【0151】
10…インクジェット記録装置、12…記録媒体、24,24Y,24M,24C,24K,…インクジェットヘッド、32A,32B…仮硬化光源、34A,34B…硬化光源、70…ノズル、70A…ノズルプレート、70B…開口部、70D…インク吐出面、72…圧力室、73A,73B,73C,D…ノズル群、80…圧電素子、102…制御装置、112…吐出制御部、128…ヘッド駆動回路、140…波形設定部、142…周波数設定部、144…切換周期設定部、200,210…非吐出駆動電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドと、
液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、
前記インクジェットヘッドから吐出させた液体が付着した媒体へ活性光線を照射する活性光線照射手段と、
を備え、
前記駆動電圧供給手段により前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させる液体吐出装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、
前記駆動電圧供給手段は、前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対して、他の非吐出ノズルに対応する加圧手段に供給される非吐出駆動電圧の周波数よりも相対的に高い周波数を有する非吐出駆動電圧を供給する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記駆動電圧供給手段により相対的に高い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、相対的に低い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、を切り換える周波数切換手段を備えた請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記周波数切換手段による前記非吐出駆動電圧の切換周期を設定する切換周期設定手段を備えた請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、
前記駆動電圧供給手段は、複数の前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対してのみ非吐出駆動電圧を供給する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧を供給する加圧手段と非吐出駆動電圧を供給しない加圧手段とを選択的に切り換える供給切換手段を備えた請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記供給切換手段は、前記液体吐出面の中央部及び前記中央部近傍の非吐出ノズルに対応する前記加圧手段に対してのみ、前記非吐出駆動電圧を供給する請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記駆動電圧供給手段は、吐出データに基づく液体吐出中は、前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給する請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧の供給を停止してから所定の時間が経過した後に次の非吐出駆動電圧を供給する請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドの駆動方法であって、
液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させるインクジェットヘッド駆動方法。
【請求項1】
活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドと、
液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給する駆動電圧供給手段と、
前記インクジェットヘッドから吐出させた液体が付着した媒体へ活性光線を照射する活性光線照射手段と、
を備え、
前記駆動電圧供給手段により前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させる液体吐出装置。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、
前記駆動電圧供給手段は、前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対して、他の非吐出ノズルに対応する加圧手段に供給される非吐出駆動電圧の周波数よりも相対的に高い周波数を有する非吐出駆動電圧を供給する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記駆動電圧供給手段により相対的に高い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、相対的に低い周波数を有する前記非吐出駆動電圧が供給される加圧手段と、を切り換える周波数切換手段を備えた請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記周波数切換手段による前記非吐出駆動電圧の切換周期を設定する切換周期設定手段を備えた請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドは、複数のノズルを具備し、
前記駆動電圧供給手段は、複数の前記非吐出ノズルの一部に対応する加圧手段に対してのみ非吐出駆動電圧を供給する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧を供給する加圧手段と非吐出駆動電圧を供給しない加圧手段とを選択的に切り換える供給切換手段を備えた請求項5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記供給切換手段は、前記液体吐出面の中央部及び前記中央部近傍の非吐出ノズルに対応する前記加圧手段に対してのみ、前記非吐出駆動電圧を供給する請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記駆動電圧供給手段は、吐出データに基づく液体吐出中は、前記非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して非吐出駆動電圧を供給する請求項1から7のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記駆動電圧供給手段は、非吐出駆動電圧の供給を停止してから所定の時間が経過した後に次の非吐出駆動電圧を供給する請求項1から8のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
活性光線の照射によって硬化する液体を媒体へ吐出させるノズルの開口が形成され、前記液体に対する親液性を示す液体吐出面を有するノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通する液室内の液体を加圧する加圧手段を具備し、前記液体吐出面が前記液体により覆われた状態で使用されるインクジェットヘッドの駆動方法であって、
液体を吐出させない非吐出ノズルに対応する加圧手段に対して液体を吐出させない非吐出駆動電圧を供給し、前記非吐出ノズル内の液体を振動させるとともに前記液体吐出面へあふれ出させて、前記液体吐出面を覆っている前記液体を流動させるインクジェットヘッド駆動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−75367(P2013−75367A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215054(P2011−215054)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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