説明

液体吐出装置

【課題】液滴吐出装置において、複数の液滴吐出ヘッドの間に使用頻度の差を生じさせない。
【解決手段】プリンタ1は、プリンタ1に対して固定されたインクジェットヘッド2と、反転機構10を回動させることで、ノズル11が記録用紙Pの上面に対向する第1位置、及び、ノズル11が記録用紙Pの下面に対向する第2位置のいずれかの位置に選択的に移動させることが可能なインクジェットヘッド3とを備えている。そして、インクジェットヘッド3を上記第1位置に移動させて、インクジェットヘッド2、3のノズル11から記録用紙Pにインクを吐出することにより記録用紙Pの上面にのみ印刷を行う。一方、インクジェットヘッド3を上記第2位置に移動させて、インクジェットヘッド2、3のノズル11から記録用紙Pにインクを吐出することにより、記録用紙Pの両面に印刷を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のインクジェット印字装置においては、用紙の幅方向の全長を覆うように延在する2つ印字ヘッドが、用紙を挟んで互いに対向して配置されている。これら2つの印字ヘッドから、用紙の幅方向と直交する搬送方向に搬送される用紙にインクを噴射する。これによって用紙の両面に同時に印刷を行うことが可能となっている。
【0003】
また、特許文献2に記載の画像形成装置においては、1つの記録ヘッドが、用紙の片側の面にのみ対向するように配置されている。そして、用紙の片面にのみ印刷を行う場合には、搬送されてきた用紙に記録ヘッドからインクを吐出して用紙の片側の面に印刷を行った後、そのまま用紙を排出する。一方、用紙の両面に印刷を行う場合には用紙の片側の面に印刷を行った後、スイッチバック搬送を行うことにより用紙を反転させ、この状態で記録ヘッドからインクを吐出して用紙の反対側の面に印刷を行ってから用紙を排出する。このように、特許文献2に記載の画像形成装置においては、用紙の片側の面のみへの印刷と、用紙の両面への印刷とを切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−11864号公報
【特許文献2】特開2008−156012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1に記載のインクジェット印字装置においては、前述したように上記2つの印字ヘッドの両方からインクを吐出することにより用紙の両面に印刷を行うことができる。また、これら2つの印字ヘッドの一方のみからインクを吐出すれば用紙の片面にのみ印刷を行うことも可能である。したがって、2つの印字ヘッドの両方からインクを吐出するか、2つのインクジェットヘッドの一方のみからインクを吐出するかを切り替えることにより、特許文献2に記載されているようなスイッチバック搬送を行うための機構等を設けることなく、容易に両面印刷と片面印刷とを切り替えることができる。
【0006】
ここで、片面印刷時には両面印刷時よりも高品位な印刷を行いたい、あるいは、片面印刷時には、両面印刷時よりも高速に印刷を行いたいという要望がある。しかしながら、上述のインクジェット印字装置、及び画像形成装置は、いずれも、このような要望にこたえることはできない。
【0007】
本発明の目的は、記録媒体の片面に液滴を吐出する時には両面に吐出する時よりも高密度に液滴を吐出できること、または、記録媒体の片面に液滴を吐出する場合に必要な時間を、記録媒体の両面に液滴を吐出する場合に必要な時間よりも短くすることができることを実現する液滴吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に従えば、
平面上の物体に液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
液滴が吐出される前記物体を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
液滴を吐出する第1のノズルであって、前記搬送機構により搬送される前記物体の一方の面と対向するように配置された第1のノズルが形成された第1液滴吐出ヘッドと、
液滴を吐出する第2ノズルが形成され、第2のノズルが前記搬送機構により搬送される前記物体の前記一方の面と対向する第1位置、及び、第2のノズルが前記搬送機構により搬送される前記物体の他方の面と対向する第2位置のいずれかの位置に選択的に移動可能である第2液滴吐出ヘッドと、
前記第2液滴吐出ヘッドを前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動機構とを備えている液滴吐出装置が提供される。
【0009】
これによると、第2液滴吐出ヘッドを第1位置に移動させることにより、第1、第2液滴吐出ヘッドを用いて吐出対象の一方の面にのみ液滴を吐出することができるとともに、第2液滴吐出ヘッドを第2位置に移動させることにより、第1、第2液滴吐出ヘッドを用いて吐出対象の両面に液滴を吐出することができる。なお、第1液滴吐出ヘッドを第1位置に配置したとき、第1、第2の液滴吐出ヘッドのノズルの位置がずれないように配置されている場合には、両面に液滴を吐出する場合と比べて高速に液滴を吐出することが可能となり、互いにずれて配置されている場合には、両面に液滴を吐出する場合と比べて高密度に液滴を吐出することが可能となる。さらに、吐出対象の一方の面にのみ液滴を吐出する場合、及び、吐出対象の両面に液滴を吐出する場合のいずれの場合にも第1液滴吐出ヘッド及び第2液滴吐出ヘッドの両方が使用されることとなり、2つの液滴吐出ヘッドの一方の使用頻度が他方に対して低くなってしまうことがない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2液滴吐出ヘッドを第1位置に移動させることにより、第1、第2液滴吐出ヘッドを用いて吐出対象の一方の面にのみ液滴を吐出することができるとともに、第2液滴吐出ヘッドを第2位置に移動させることにより、第1、第2液滴吐出ヘッドを用いて吐出対象の両面に液滴を吐出することができる。したがって、吐出対象の一方の面にのみ液滴を吐出する場合、及び、吐出対象の両面に液滴を吐出する場合のいずれの場合にも第1液滴吐出ヘッド及び第2液滴吐出ヘッドの両方が使用されることとなり、2つの液滴吐出ヘッドの一方の使用頻度が他方に対して低くなってしまうことがない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0012】
図1は、上方から見た本実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。図2は図1を矢印IIの方向から見た側面図である。図1、図2に示すように、プリンタ1(液滴吐出装置)は、インクジェットヘッド2、3、搬送ローラ4、5、歯車状ローラ6、7、キャップ8、9、反転機構10などを有している。
【0013】
インクジェットヘッド2、3は、静止した状態でインクを吐出する、いわゆるライン型のインクジェットヘッドである。インクジェットヘッド2、3は、走査方向(図1の左右方向)に記録用紙P(吐出対象)の全長にまたがって延びており、インクジェットヘッド2、3の記録用紙Pと対向する面に、走査方向に沿って配列された複数のノズル11から同色のインクを吐出する。また、インクジェットヘッド2とインクジェットヘッド3とは、走査方向と直交する用紙搬送方向(後述する搬送経路15の延在方向、図1の上下方向)に沿って、インクジェットヘッド2が図1の上側(後述する搬送経路15の上流側)にくるように配列されており、インクジェットヘッド2のノズル11と、インクジェットヘッド3のノズル11とは、走査方向に関して同じ位置に配置されている。
【0014】
また、インクジェットヘッド2は記録用紙Pの上面(一方の面)と対向した状態でプリンタ1に対して固定されている。一方、インクジェットヘッド3は、後述するように、反転機構10により、そのノズル11が記録用紙Pの上面と対向する位置(第1位置)、及び、そのノズル11が記録用紙Pの下面(他方の面)と対向する位置(第2位置)のいずれかの位置に選択的に移動させることができる。なお、本実施の形態では、インクジェットヘッド2が本発明に係る第1液滴吐出ヘッドに相当し、インクジェットヘッド3が本発明に係る第2液滴吐出ヘッドに相当する。
【0015】
ここで、図1、2に示されるように、反転機構10は、インクジェットヘッド3の長手方向両側に配置されて、インクジェットヘッド3を支持する、略T字状の一対のハンドル部10aと、ハンドル部10aに連結されて、ハンドル部10aとともにインクジェットヘッド3を回動させる反転駆動部10bとを有する。なお、反転駆動部10bは、モーター、ギアなどを組み合わせて構成されている。また、ハンドル部10aは、インクジェットヘッド3の長手方向に延在し、反転駆動部10bに連結される軸部10cと、軸部10cから、軸部10cに直交する方向の両側に向かって延在する支持部10dとを有している。支持部10dの両端には、それぞれ、インクジェットヘッド3とキャップ9とが支持されている。これにより、軸部10cを中心軸として、インクジェットヘッド3及びキャップ9を、これらの間隔を保ったまま回動させることができる。
【0016】
搬送ローラ4、5は、表面に凹凸のないローラである。図1において、搬送ローラ4は、インクジェットヘッド2の左側(搬送経路15の上流側)に、記録用紙Pの下面と対向するように配置されている。搬送ローラ5は、インクジェットヘッド2とインクジェットヘッド3との間(インクジェットヘッド2に対して後述するの搬送経路15の下流側)に、記録用紙Pの下面と対向するように配置されている。搬送ローラ4、5には図示しないモータが接続されており、モータが回転することにより搬送ローラ4、5が回転する。
【0017】
歯車状ローラ6、7には、その周方向に沿って複数の突起が形成されている。歯車状ローラ6は、記録用紙Pを挟んで、搬送ローラ4と対向するように配置されており、歯車状ローラ7は、記録用紙Pを挟んで、搬送ローラ5と対向するように配置されている。これにより、搬送ローラ4、5が回転すると、この回転に伴って歯車状ローラ6、7も回転する。その結果、搬送ローラ4と歯車状ローラ6、及び、搬送ローラ5と歯車状ローラ7とに挟まれた記録用紙Pが、図1の左右方向に延びた搬送経路15に沿って用紙搬送方向(図1の右方)に搬送される。
【0018】
なお、本実施の形態においては、搬送ローラ4と歯車状ローラ6との対が本発明に係る第1ローラ対に相当し、搬送ローラ5と歯車状ローラ7との対が、本発明に係る第2ローラ対に相当する。
【0019】
キャップ8、9は、それぞれ、インクジェットヘッド2、3のノズル11と対向するように配置されているとともに上下方向に移動可能である。そして、プリンタ1において印刷を行わないときには、キャップ8、9が、それぞれ、インクジェットヘッド2、3のノズル11が形成された面に密着する位置まで移動してノズル11を覆う。これにより、ノズル11内のインクの乾燥を防止する。一方、プリンタ1において印刷を行うときには、キャップ8、9がインクジェットヘッド2、3から離れることによりノズル11が露出し、これにより、ノズル11から記録用紙Pにインクを吐出することが可能となる。なお、本実施の形態では、キャップ8が本発明に係る第1キャップに相当し、キャップ9が本発明に係る第2キャップに相当する。
【0020】
前述のように、反転機構10(ヘッド移動機構)は、上下方向に関してインクジェットヘッド3とキャップ9との間に位置し、走査方向と平行な軸部10cを中心として回動可能である。さらに、反転機構10の支持部10dが、それぞれ、インクジェットヘッド3及びキャップ9に固定されている。これにより、反転機構10を回動させると、インクジェットヘッド3及びキャップ9が互いに対向した状態を保持しつつ一緒に回動する。そして、プリンタ1においては、反転機構10を回動させることにより、インクジェットヘッド3を、第1の位置又は第2の位置のいずれかの位置に選択的に移動させることが可能である。ここで、第1の位置は、図2(a)に示すように、搬送ローラ5及び歯車状ローラ7の図2の右側(搬送経路15の下流側)において、ノズル11が記録用紙Pの上面と対向する位置であり、第2の位置は、図2(b)に示すように、搬送ローラ5及び歯車状ローラ7の図2の左側(搬送経路15の下流側)において、ノズル11が記録用紙Pの下面と対向する位置(第2位置)なお、本実施の形態では、上記第1位置と上記第2位置とは、用紙搬送方向に関する位置が同じとなっている。
【0021】
このとき、インクジェットヘッド3のノズル11とキャップ9とが互いに対向した状態を保持しつつ一緒に回動する。インクジェットヘッド3が上記第1位置及び上記第2位置のいずれの位置にあるときにも、そのノズル11がキャップ9と対向している。そのため、印刷を行わないときに、直ちにキャップ9によりインクジェットヘッド3のノズル11を覆うことができる。これにより、インクジェットヘッド3のノズル11内のインクの乾燥を確実に防止することができる。なお、プリンタ1に対して固定されたインクジェットヘッド2のノズル11とキャップ8とは常に対向しているので、印刷を行わないときには、キャップ8により直ちにインクジェットヘッド2のノズル11を覆うことができる。
【0022】
ここで、プリンタ1には、上記第1位置にあるインクジェットヘッド3の図2の右側の側面に当接する当接部材12、及び、上記第2位置にあるインクジェットヘッド3の図2の右側の側面に当接する当接部材13を有している。上述したようにインクジェットヘッド3が第1位置及び第2位置に移動したときには、インクジェットヘッド3が当接部材12、13に当接する。これによりインクジェットヘッド3が上記第1位置及び上記第2位置に位置決めされる。
【0023】
次に、プリンタ1を用いて記録用紙Pの片面(上面)にのみ印刷を行う方法、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う方法について説明する。
【0024】
記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合には、反転機構10を回動させて、インクジェットヘッド3を、ノズル11が記録用紙Pの上面と対向する上記第1位置に移動させる。そして、搬送ローラ4、5及び歯車状ローラ6、7により搬送される記録用紙Pの上面に、インクジェットヘッド2、3のノズル11からインクを吐出して、記録用紙Pの上面に印刷を行う。
【0025】
このとき、前述したように、インクジェットヘッド2のノズル11とインクジェットヘッド3のノズル11とが走査方向に関して同じ位置にあるので、記録用紙Pの上面の各点に対しては、2つのインクジェットヘッド2、3のいずれか一方のノズル11のみからインクを吐出すればよい。このように、2つのインクジェットヘッド2、3のノズル11からインクを吐出することができるので、記録用紙Pの上面に高速に印刷を行うことができる。ここで、インクジェットヘッド2のノズル11とインクジェットヘッド3のノズル11とが走査方向に関してずれて配置されている場合には、記録用紙Pの上面に、高密度にインクを吐出でき、両面印刷の場合に比べて、高品位印刷を実現できる。なお、インクジェットヘッド2のノズル11とインクジェットヘッド3のノズル11とが走査方向に関して互いに半ピッチ分だけずれて配置されている場合には、両面印刷の場合に比べて倍の解像度で印刷できるため、好ましい。
【0026】
一方、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合には、反転機構10を回動させて、インクジェットヘッド3を、ノズル11が記録用紙Pの下面と対向する上記第2位置まで移動させる。そして、搬送ローラ4、5及び歯車状ローラ6、7により搬送される記録用紙Pの上面に、インクジェットヘッド2のノズル11からインクを吐出する。このとき、同時に、この記録用紙Pの下面にインクジェットヘッド3のノズル11からインクを吐出することができるので、記録用紙Pの両面に同時に印刷を行うことができる。
【0027】
前述したように、図2において、上記第2位置が、搬送ローラ5及び歯車状ローラ7の右側(搬送経路15の下流側)に配置されている。そのため、記録用紙Pが搬送ローラ4と搬送ローラ6との間、及び、搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間を通過した後で、インクジェットヘッド3のノズル11から記録用紙Pの下面にインクが吐出される。そのため、記録用紙Pの下面に吐出されたインクが搬送ローラ4、5に付着することがない。したがって、インクが搬送ローラ4、5から記録用紙Pの他の部分に付着することもなく、印刷品質が低下してしまうのが防止される。
【0028】
また、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合のいずれの場合にも、まず、インクジェットヘッド2のノズル11から吐出されたインクが記録用紙Pの上面にインクが着弾する。その後、記録用紙Pが、搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間を通過し、記録用紙Pの上面が歯車状ローラ7に接触する。しかしながら、歯車状ローラ7には、その周方向に沿って複数の突起が形成されている。歯車状ローラ7は突起の先端部においてのみ記録用紙Pと接触するため、歯車状ローラ7と記録用紙Pとの接触面積は小さい。そのため、歯車状ローラ7にインクが付着し、さらにそのインクが記録用紙Pの他の部分に付着してしまうといったことは起こりにくい。これにより、印刷品質が低下してしまうのが防止される。
【0029】
さらに、上述したようにして記録用紙Pへの印刷を行うと、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合のいずれの場合においてもインクジェットヘッド2、3の両方が使用される。そのため、インクジェットヘッド2、3の一方の使用頻度が他方に対して低くなってしまうことがない。
【0030】
以上に説明した実施の形態によると、インクジェットヘッド3を、ノズル11が記録用紙Pの上面と対向する第1位置に移動させてから、インクジェットヘッド2、3のノズル11からインクを吐出する場合には、記録用紙Pの片面(上面)にのみ印刷を行うことができる。また、インクジェットヘッド3を、ノズル11が記録用紙の下面と対向する第2位置に移動させてから、インクジェットヘッド2、3のノズル11からインクを吐出する場合には、記録用紙Pの両面に印刷を行うことができる。そして、このようにして印刷を行うことで、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合のいずれの場合も、インクジェットヘッド2、3の両方が使用される。そのため、インクジェットヘッド2、3の一方の使用頻度が他方よりも低くなることがない。そのため、一方のヘッドの記録素子(圧電方式の場合は圧電素子、バブル方式の場合はヒータ)が、他方のヘッドの記録素子よりも極端に早く劣化することを回避できる。言い換えると、所定の期間に所定の枚数に印字を行う場合、ヘッドの寿命を長くすることができる。
【0031】
また、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合のいずれの場合にも、先ず、インクジェットヘッド2のノズル11から吐出されたインクが記録用紙Pの上面に着弾し、その後、記録用紙Pが搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間を通過し、記録用紙Pの上面が歯車状ローラ7に接触する。しかしながら、歯車状ローラ7には、その周方向に沿って複数の突起が形成されている。歯車状ローラ7は突起の先端部においてのみ記録用紙Pと接触するため、歯車状ローラ7と記録用紙Pとの接触面積は小さい。そのため、歯車状ローラ7にインクが付着してそのインクが記録用紙Pの他の部分に付着してしまうといったことは生じにくい。これにより、印刷品質が低下してしまうのが防止される。
【0032】
また、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合には、記録用紙Pが、搬送ローラ4と搬送ローラ6との間、及び、搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間を通過した後で、インクジェットヘッド3のノズル11から記録用紙Pの下面にインクが吐出される。そのため、記録用紙Pの下面に着弾したインクが搬送ローラ5に付着することがない。したがって、インクが搬送ローラ5から記録用紙Pの他の部分に付着してしまうこともなく、印刷品質の低下が防止される。
【0033】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0034】
[第1変形例]
第1変形例では、図3に示すように、インクジェットヘッド2のノズル11とインクジェットヘッド3のノズル11とが、走査方向(図3の左右方向)に関して、インクジェットヘッド2、3におけるノズル11の間隔の半分の長さだけずれている。
【0035】
この場合には、上述の実施の形態と同様、インクジェットヘッド3を、ノズル11が記録用紙Pの上面と対向する上記第1位置に移動させてからインクジェットヘッド2、3のノズル11からインクを吐出することができる。これにより、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行うことができる。このとき、インクジェットヘッド3のノズル11から吐出されたインクは、記録用紙Pのインクジェットヘッド2のノズル11から吐出されたインクの間に着弾するため、記録用紙Pに高解像度の印刷を行う(高画質の印刷を行う)ことができる。
【0036】
なお、この場合も、上述の実施の形態と同様、インクジェットヘッド3を、ノズル11が記録用紙Pの下面と対向する上記第2位置に移動させてから、インクジェットヘッド2、3のノズル11からインクを吐出することができる。これにより、記録用紙Pの両面に印刷を行うことができる。ただし、この場合には、記録用紙Pの各面にインクジェットヘッド2、3の一方のノズル11のみからインクが吐出されるので、印刷される画像の画質は片面印刷を行った場合のような高画質にはならず、上述の実施の形態と同様の画質となる。また、インクジェットヘッド2のノズル11とインクジェットヘッド3のノズル11とが走査方向に関して互いにずれて配置されているので、記録用紙Pの上面に印刷される画像と記録用紙Pの下面に印刷される画像との間に僅かなズレが生じることになる。しかし、そのズレは数十μm程度であり、目視により認識されることはない。
【0037】
[第2変形例]
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド3及びキャップ9が反転機構10に固定されていた。そして、反転機構10が回動するとき、インクジェットヘッド3とキャップ9とが互いに対向した状態を保持しつつ一緒に移動していた。しかしながら、本発明はこれには限られない。
【0038】
第2変形例では、図4に示すように、キャップ9の代わりにキャップ22、23(第2キャップ)が設けられており、反転機構10の代わりに反転機構24が設けられている。
【0039】
キャップ22は、搬送ローラ4の図中左側(搬送経路15の上流側)に記録用紙Pの下面と対向するように配置されており、キャップ23は、搬送ローラ5の図中右側(搬送経路15の下流側)に記録用紙Pの上面と対向するように配置されている。反転機構24は、インクジェットヘッド2とキャップ8との間に配置された軸24aを中心として回動可能である。また、反転機構24の先端部にはインクジェットヘッド3が固定されている。そして、反転機構24を回動させると、インクジェットヘッド3が回動する。これにより、インクジェットヘッド3は、搬送ローラ4及び歯車状ローラ6の図4における左側(搬送経路15の上流側)であって、ノズル11が記録用紙Pの上面及びキャップ22と対向する位置(第1位置)に移動できる。そして、インクジェットヘッド3は、搬送ローラ5及び歯車状ローラ7の図4の右側(搬送経路15の下流側)であって、ノズル11が記録用紙Pの下面及びキャップ22と対向する位置(第2位置)にも移動できる。つまり、インクジェットヘッド3は、第1、第2位置のいずれかに選択的に移動できる。なお、この場合には、インクジェットヘッド3を移動させる際に、インクジェットヘッド3とキャップ22、23とが接触しないように、キャップ22、23を適宜上下方向に移動させる。
【0040】
インクジェットヘッド3が第1位置にあるとき、ノズル11は、キャップ22と対向する。また、インクジェットヘッド3が第2位置にあるとき、ノズル11はキャップ23と対向している。すなわち、インクジェットヘッド3のノズル11は、インクジェットヘッド3が第1位置及び第2位置のいずれの位置にあるときにもキャップ22及びキャップ23のいずれか一方と対向している。そのため、印刷を行わないときには、キャップ22あるいはキャップ23が、インクジェットヘッド3のノズル11を覆うことができ、ノズル11内のインクの乾燥を確実に防止することができる。
【0041】
片面印刷では、インクジェットヘッド3のノズル11から吐出されたインクが記録用紙Pの上面に着弾した後、記録用紙Pが搬送ローラ4と歯車状ローラ6との間、及び、搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間を通過する。そのため、記録用紙Pの上面が歯車状ローラ6、7に接触する。また、片面印刷及び両面印刷において、インクジェットヘッド2のノズル11から吐出されたインクが記録用紙Pの上面に着弾した後、記録用紙Pが搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間を通過し、記録用紙Pの上面が歯車状ローラ7に接触する。しかしながら、上述の実施の形態と同様、歯車状ローラ6、7と記録用紙Pとの接触面積が小さいため、記録用紙Pの上面に着弾したインクが歯車状ローラ6、7に付着し、そのインクがさらに記録用紙Pの他の部分に付着してしまうといったことが起こりにくい。これにより、印刷品質が低下してしまうのが防止される。
【0042】
また、両面印刷を行う際には、記録用紙Pが搬送ローラ4と歯車状ローラ6との間、及び、搬送ローラ5と歯車状ローラ7を通過したあと、インクジェットヘッド3のノズル11から記録用紙Pの下面にインクが吐出される。そのため、記録用紙Pの下面に着弾したインクが搬送ローラ4、5に付着することがない。したがって、インクが搬送ローラ4、5からさらに記録用紙Pの他の部分に付着してしまうこともなく、印刷品質が低下してしまうのが防止される。
【0043】
また、この場合も、片面印刷及び両面印刷のいずれを行う場合にもインクジェットヘッド2、3の両方が使用される。そのため、インクジェットヘッド2、3の一方の使用頻度が他方に対して低くなってしまうことがない。
【0044】
また、インクジェットヘッドと搬送ローラ及び歯車状ローラとの位置関係は、実施の形態のものには限れられない。
【0045】
[第3変形例]
図5に示すように、用紙搬送方向(図5の左右方向)において、搬送ローラ33、34が、2つのインクジェットヘッド31、32と、これらに対向するキャップ37、38とを挟むように、配置されている。さらに、歯車状ローラ35、36が、搬送ローラ33、34と歯車状ローラ35、36の間で記録用紙Pを挟むように配置されている。また、インクジェットヘッド31、32は、インクジェットヘッド2、3(図2参照)と同様の構成を有する。図5の右側(搬送経路15の下流側)に配置されたインクジェットヘッド32は、プリンタ1に固定されている。一方、図5の左側(搬送経路15の上流側)に配置されたインクジェットヘッド31は、反転機構10を用いて回動させることができる。それにより、インクジェットヘッド31は、ノズル11が記録用紙Pの上面と対向する位置(第1位置)、及び、そのノズル11が記録用紙Pの下面と対向する位置(第2位置)のいずれかの位置に選択的に移動できる。なお、この場合も、第1位置と第2位置とは、用紙搬送方向に関して同じ位置である。なお、この場合には、搬送ローラ33及び歯車状ローラ35の対と、搬送ローラ34及び歯車状ローラ36の対とが、本発明に係る2組のローラ対に相当する。
【0046】
この場合には、図5(a)に示すようにインクジェットヘッド31を第1位置に移動させてから、インクジェットヘッド31、32のノズル11から記録用紙Pにインクを吐出することにより、記録用紙Pの片面(上面)にのみ印刷を行うことができる。
【0047】
一方、図5(b)に示すようにインクジェットヘッド31を第2位置に移動させてから、インクジェットヘッド31、32のノズル11から記録用紙Pにインクを吐出することにより、記録用紙Pの両面に印刷を行うことができる。
【0048】
このように、第3変形例のインクジェットヘッド32は、用紙搬送方向に関する位置を変えることなく、ノズル11が記録用紙Pの上面に対向する位置、及び、ノズル11が記録用紙Pの下面に対向する位置のいずれかの位置に選択的に移動可能である。ここで、第3変形例とは逆に、インクジェットヘッド32のノズル11から記録用紙Pの下面にインクを吐出した場合には、用紙搬送方向に関するインクジェットヘッド32と搬送ローラ34との距離が近くなる。そのため、記録用紙Pは下面にインクが着弾した後、そのインクが十分に乾燥する前に、搬送ローラ34と歯車状ローラ36との間を通過する虞がある。これにより、搬送ローラ34にインクが付着し、そのインクがさらに記録用紙Pの他の部分に付着して印刷品質を低下させる虞がある。
【0049】
これに対して、第3変形例では、インクが着弾した後に通過する搬送ローラ34及び歯車状ローラ36からより離れた位置にあるインクジェットヘッド31のノズル11から記録用紙Pの下面にインクを吐出する。そのため、上述した場合と比較して、記録用紙Pの下面にインクが着弾してから、搬送ローラ34と歯車状ローラ36との間を通過するまでの時間が長くなる。したがって、記録用紙Pは、下面にインクが着弾した後、そのインクが十分に乾燥してから搬送ローラ34と歯車状ローラ36との間を通過する。インクが着弾した記録用紙Pの下面が凹凸のない搬送ローラ34に接触しても、搬送ローラ34にインクが付着し、そのインクがさらに記録用紙Pの下面の他の部分に付着してしまうといったことが起こりにくい。これにより、印刷品質が低下してしまうのが防止される。
【0050】
また、この場合には、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合のいずれの場合にも、記録用紙Pは上面にインクが着弾した後、搬送ローラ34と歯車状ローラ36との間を通過し、記録用紙Pの上面が歯車状ローラ36に接触する。しかしながら、上述の実施の形態と同様、記録用紙Pと歯車状ローラ36との接触面積が小さいため、記録用紙Pの上面に着弾したインクが歯車状ローラ36に付着し、そのインクがさらに記録用紙Pの他の部分に付着するといったことが起こりにくい。これにより、印刷品質の低下が防止されている。
【0051】
さらに、この場合も、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合のいずれの場合にもインクジェットヘッド31、32の両方が使用される。そのため、インクジェットヘッド31、32の一方の使用頻度が他方よりも低くなってしまうことがない。
【0052】
[第4変形例]
図6に示すように、第3変形例と同様、用紙搬送方向に関して、搬送ローラ33及び歯車状ローラ35の対と、搬送ローラ34及び歯車状ローラ36の対(2組のローラ対)の間に挟まれた、インクジェットヘッド41、42及びキャップ43、44を有している。
【0053】
キャップ43、44は、記録用紙Pの下面と対向するように、用紙搬送方向(図6の左右方向)に沿って配列されている。インクジェットヘッド41、42は、インクジェットヘッド2、3(図2参照)と同様の構成を有している。インクジェットヘッド41は、ノズル11記録用紙Pの上面及びキャップ43と対向する位置で、プリンタに固定されている。一方、インクジェットヘッド42は、軸45aを中心として回動可能な反転機構45に固定されている。図6(a)に示すように、インクジェットヘッド42は、インクジェットヘッド41に対して図6の右側(搬送経路15の下流側)であって、ノズル11が記録用紙Pの上面及びキャップ44と対向する位置(第1位置)に配置できる。さらに、反転機構45を回動させることにより、インクジェットヘッド42は、用紙搬送方向に関してインクジェットヘッド41とほぼ同じ位置(第1位置に対して、搬送経路の上流側)であり、ノズル11が記録用紙Pの下面と対向する位置(第2位置)にも移動させることができる。なお、この場合には、インクジェットヘッド41が本発明に係る第1液滴吐出ヘッドに相当し、インクジェットヘッド42が本発明に係る第2液滴吐出ヘッドに相当する。
【0054】
この場合には、図6(a)に示すようにインクジェットヘッド42を第1位置に移動させてから、インクジェットヘッド41、42のノズル11から記録用紙Pにインクを吐出することにより、記録用紙Pの片面(上面)にのみ印刷を行うことができる。
【0055】
そして、この場合にも、第3変形例3と同様、記録用紙Pは、上面にインクが着弾した後、搬送ローラ34と歯車状ローラ36との間を通過する。このとき、記録用紙Pの上面が歯車状ローラ36に接触する。しかしながら、記録用紙Pと歯車状ローラ36との接触面積が小さいため、記録用紙P上のインクが、歯車状ローラ36に付着し、さらにそのインクが記録用紙Pの他の部分に付着するといったことが起こりにくい。これにより、印刷品質の低下が防止される。
【0056】
一方、図6(b)に示すようにインクジェットヘッド42を第2位置に移動させてから、インクジェットヘッド41、42のノズル11から記録用紙Pにインクを吐出することにより、記録用紙Pの両面に印刷を行うことができる。
【0057】
そして、この場合には、用紙搬送方向に関して、第2位置が、第1位置よりも図6の左側(搬送経路15の上流側)に位置している。第2位置は搬送ローラ34及び歯車状ローラ36から離れている。記録用紙Pの両面に印刷を行う際のインクジェットヘッド42の用紙搬送方向に関する位置が、記録用紙Pの上面にのみ印刷するときと同じである場合と比較すると、記録用紙Pの下面にインクが着弾してから、搬送ローラ34と歯車状ローラ36との間を通過するまでの時間が長くなる。したがって、記録用紙Pはその下面に着弾したインクが十分に乾燥してから搬送ローラ34と歯車状ローラ36との間を通過する。記録用紙Pの下面が凹凸のない搬送ローラ34に接触しても、記録用紙Pの下面に着弾したインクが搬送ローラ34に付着しにくい。したがって、インクが搬送ローラ34から記録用紙Pの下面の他の部分に付着するといったことも起こりにくく、これにより、印刷品質の低下が防止される。
【0058】
さらに、この場合も、記録用紙Pの片面にのみ印刷を行う場合、及び、記録用紙Pの両面に印刷を行う場合のいずれの場合にもインクジェットヘッド41、42の両方が使用される。そのため、インクジェットヘッド41、42の一方の使用頻度が他方よりも低くなってしまうことがない。
【0059】
[第5変形例]
また、以上の説明では、搬送ローラと歯車状ローラとの対(ローラ対)が2対であったがこれには限られない。
【0060】
図7に示すように、第1ローラ対(搬送ローラ4及び歯車状ローラ6)と、第2ローラ対(搬送ローラ5及び歯車状ローラ7)に加え、インクジェットヘッド3の右側(搬送経路15の下流側)において、記録用紙Pの下面と対向する搬送ローラ51と、記録用紙Pを挟んで搬送ローラ51と対向する歯車状ローラ52とからなる第3ローラ対が配置されている。また、用紙搬送方向(図7の左右方向)に関して、第2ローラ対と、第3ローラ対との距離L2が、第1ローラ対と、第2ローラ対との距離L1よりも長い。なお、この場合には、搬送ローラ51と歯車状ローラ52との対が本発明に係る第3ローラ対に相当し、第3ローラ対は、第2ローラ対のインクジェットヘッド3(第2位置)の搬送経路における下流側に隣接している。
【0061】
この場合には、搬送ローラと歯車状ローラとを含むローラ対が3対あるため、ローラ対が2対だけある場合と比較して記録用紙Pがローラ対に挟まれる箇所が多くなり、安定して記録用紙Pを搬送することができる。
【0062】
また、距離L2が距離L1よりも大きい。そのため、図7に示すように、用紙搬送方向に関して、インクジェットヘッド3と搬送ローラ51との距離が、インクジェットヘッド2と搬送ローラ5との距離よりも長くなるようにインクジェットヘッド2、3を配置することができる。このため、上述の実施の形態と同様にして記録用紙Pの下面にインクが着弾した後、搬送ローラ51と歯車状ローラ52との間を通過するまでの時間が長くなる。したがって、記録用紙Pは、下面に着弾したインクが十分に乾燥してから、搬送ローラ51と歯車状ローラ52との間を通過する。記録用紙Pの下面が凹凸のない搬送ローラ51に接触しても、記録用紙Pの下面のインクが搬送ローラ51に付着しにくい。したがって、インクが搬送ローラ51から記録用紙Pの下面の他の部分に付着するといったことが起こりにくく、これにより、印刷品質が低下してしまうのが防止される。
【0063】
なお、第5変形例においても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0064】
[第6変形例]
また、第5変形例では、距離L2が距離L1よりも長くなっていたが、本発明はこれには限られない。別の一変形例では、変形例5と同様、図8に示すようにインクジェットヘッド3の用紙搬送方向の下流側(図8の右側)に搬送ローラ61と歯車状ローラ62との対(第3ローラ対)が配置されているが、用紙搬送方向(図8の左右方向)に関して、搬送ローラ5及び歯車状ローラ7(第2ローラ対)と、搬送ローラ61及び歯車状ローラ62(第3ローラ対)との距離L4が、搬送ローラ4及び歯車状ローラ6(第1ローラ対)と搬送ローラ5及び歯車状ローラ7(第2ローラ対)との距離L3とほぼ同じとなっている(変形例6)。
【0065】
ここで、変形例6とは逆に、インクジェットヘッド3が、そのノズル11が記録用紙Pの上面と対向するようにプリンタに対して固定されているとともに、インクジェットヘッド2が用紙搬送方向に関する位置を変えることなく、ノズル11が記録用紙Pの上面及び下面と対向する位置に移動可能となっており、インクジェットヘッド2のノズル11から記録用紙Pの下面にインクを吐出することにより記録用紙Pの下面に印刷を行った場合には、下面にインクが着弾した記録用紙Pが、搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間、及び搬送ローラ61と歯車状ローラ62との間を通過することなり、記録用紙Pの下面に着弾したインクが2つの搬送ローラ5、61に付着し、このインクがさらに記録用紙Pの他の部分に付着して、印刷品質が大きく低下してしまう虞がある。
【0066】
これに対して、変形例6の場合には、変形例5の場合と比較すると、記録用紙Pの下面にインクを吐出するインクジェットヘッド3と搬送ローラ61との距離が短いため、記録用紙Pの下面に着弾したインクが十分に乾燥する前に記録用紙Pが搬送ローラ61と歯車状ローラ62との間を通過し、搬送ローラ61にインクが付着してしまう虞があるものの、記録用紙Pは下面にインクが吐出された後、搬送ローラ61と歯車状ローラ62との間を通過するが、搬送ローラ5と歯車状ローラ7との間は通過しないので、搬送ローラ5にインクが付着しない分、印刷品質の低下は抑えられる。
【0067】
なお、当然のことではあるが、第6変形例においても、上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、変形例5、6では、インクジェットヘッド3が、そのノズル11が記録用紙Pの上面と対向する第1位置、及び、そのノズル11が記録用紙Pの下面と対向する第2位置のいずれの位置にあるときにも、用紙搬送方向に関する位置が同じであるプリンタに、第3ローラ対を設けていたが、これには限られない。
【0069】
[第7変形例]
図9に示すように、第2変形例と同様の構成に加え、用紙搬送方向に関するキャップ22、及び、第2位置にあるインクジェットヘッド3の図中の右側(搬送経路15の下流側)に搬送ローラ71と歯車状ローラ72との対(第3ローラ対)が配置されている。なお、この場合には、第3ローラ対は、第2ローラ対の上記第2位置の搬送経路における下流側に隣接している。このように、インクジェットヘッドが、第1位置にある状態と第2位置にある状態とで、用紙搬送方向に関して互いに異なる位置にくるようなプリンタに、第3ローラ対を設けてもよい。また、本変更形態では、歯車状ローラ72が記録用紙Pの下面に対向し、搬送ローラ71が記録用紙Pの上面に対向している。そのため、図9bに示されるように、インクジェットヘッド3が記録用紙Pの下面に印刷を行った場合であっても、インクが着弾した記録用紙の下面は歯車状ローラ72に接触する。そのため、上述の実施形態と同様に、記録用紙を汚す恐れがない。
【0070】
また、搬送ローラと歯車状ローラとの対は以上に説明したような2対及び3対には限られず、4対以上の搬送ローラと歯車状ローラとの対が設けられていてもよい。なお、上記実施形態、変更形態のいずれにおいても、搬送ローラ及び/又は歯車状ローラの表面の撥液性を高めるために、これらの表面をフッ素樹脂などの高撥液性材料でコーティングしてもよい。あるいは、搬送ローラ及び/又は歯車状ローラを高撥液性の材料で形成してもよい。いずれの場合にも、記録用紙Pに着弾したインクが搬送ローラ/歯車状ローラに付着する虞がなく、インクがさらに記録用紙Pの他の部分に付着して、印刷品質が大きく低下してしまう虞がない。なお、特に、搬送ローラの表面に高撥液性材料を設けることにより、インクが記録用紙Pの他の部分に付着することを抑えることができる。
【0071】
なお、上述の説明では、所定の軸を中心に回動可能な反転機構を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。たとえば、図10に示されるように、反転機構が、インクジェットヘッドをスライド可能に支持する滑り機構300を有していてもよい。この場合にも、滑り機構300に形成された溝300aに沿って、インクジェットヘッドを第1、2の位置の間で移動させることができる。なお、第2の位置においては、インクジェットヘッドは、ノズル面が記録用紙と対面するように回転できる。
【0072】
本発明において、プリンタは、入力コマンドに応じて反転機構を制御するコントローラー(不図示)を備えてもよい。入力コマンドは、外部接続されるPCから入力されてもよく、(タッチパネルのような)備え付けの入力デバイスから入力されてもよい。片面印刷が選択された場合には、コントローラは反転機構を制御して、インクジェットヘッド3を第1の位置に移動させ、両面印刷が選択された場合には、インクジェットヘッド3を第2の位置に移動させる。
【0073】
なお、上述の説明においては、2つのラインヘッドから黒色のインクを吐出していたが、本発明はこれに限られない。例えば、本発明に係るインクジェットプリンターが、2セットのラインヘッドセットであって、各セットが黒インク用のラインヘッドと、カラーインク用の複数のラインヘッド(一つのカラー用ラインヘッドに、複数の色用のノズルが形成されていてもよい)を含むラインヘッドのセットを備えてもよい。この場合には、2つのセットのうちの1セットに含まれる各ラインヘッドが、反転機構により移動可能であってもよい。インクジェットプリンタが、黒インク用、及びカラーインク用の複数の可動式のラインヘッドを有している場合、これらのラインヘッドは、個別に移動できてもよく、一斉に移動できてもよい。あるいは、本発明に係るインクジェットプリンタが、上述のような、黒色インクを吐出する2つのラインヘッドと、カラーインクを吐出し、紙面の一面側に配置された1又は複数のカラーラインヘッドを有してもよい。この場合には、片面印刷時に、カラー印刷と、黒インクについて高速/高品位印刷が可能となる。さらに、黒インクについて両面印刷も可能となる。
【0074】
また、以上の説明では、ノズルからインクを吐出することにより、記録用紙に印刷を行うプリンタに本発明を適用した例について説明したが、吐出対象に対してノズルからインク以外の液滴を吐出する液滴吐出装置に本発明を適用することも可能である。
【0075】
本発明によれば、第2液滴吐出ヘッドを第1位置に移動させることにより、第1、第2液滴吐出ヘッドを用いて吐出対象の一方の面にのみ液滴を吐出することができるとともに、第2液滴吐出ヘッドを第2位置に移動させることにより、第1、第2液滴吐出ヘッドを用いて吐出対象の両面に液滴を吐出することができる。したがって、吐出対象の一方の面にのみ液滴を吐出する場合、及び、吐出対象の両面に液滴を吐出する場合のいずれの場合にも第1液滴吐出ヘッド及び第2液滴吐出ヘッドの両方が使用されることとなり、2つの液滴吐出ヘッドの一方の使用頻度が他方に対して低くなってしまうことがない。そのため、一方の液滴吐出ヘッドが他方に比べて早く劣化してしまうことが防止される。また、2つの液滴吐出ヘッドに行うメンテナンス処理を同程度の頻度で行うことができるため、いずれか一方のみを極端に高い頻度でメンテナンスする必要がない。言い換えると、両面印刷用の2つのインクジェットヘッドを備えた従来のインクジェットプリンタにおいては、片面印刷に用いられる一方のインクジェットヘッドの使用頻度が高くなるため、他方に比べて早く劣化するおそれがあった。また、使用頻度の高く、早く劣化してしまったインクジェットヘッドにあわせて両方のヘッドについてパージを行う必要があり、余分にインクを消費する虞があった。これに対して、本発明の液滴吐出装置では、一方の液滴吐出ヘッドが他方に比べて早く劣化する虞がなくこのような問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】上方から見た本発明における実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1を矢印IIの方向から見たときの側面図であり、(a)が2つのインクジェットヘッドの両方のノズルが記録用紙の上面と対向した状態、(b)が2つのインクジェットヘッドの一方のノズルが記録用紙の上面に対向するとともに、他方のノズルが記録用紙の下面と対向した状態を示している。
【図3】変形例1の図1相当の図である。
【図4】変形例2の図2相当の図である。
【図5】変形例3の図2相当の図である。
【図6】変形例4の図2相当の図である。
【図7】変形例5の図2相当の図である。
【図8】変形例6の図2相当の図である。
【図9】変形例7の図2相当の図である。
【図10】滑り機構を有する反転機構の例である。
【符号の説明】
【0077】
1 プリンタ
2、3 インクジェットヘッド
4、5 搬送ローラ
6、7 歯車状ローラ
8、9 キャップ
10 反転機構
11 ノズル
15 搬送経路
22、23 キャップ
24 反転機構
31、32 インクジェットヘッド
33、34 搬送ローラ
35、36 歯車状ローラ
37、38 キャップ
41、42 インクジェットヘッド
43、44 キャップ
45 反転機構
51 搬送ローラ
52 歯車状ローラ
61 搬送ローラ
62 歯車状ローラ
71 搬送ローラ
72 歯車状ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面上の物体に液滴を吐出する液滴吐出装置であって、
液滴が吐出される前記物体を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送機構と、
液滴を吐出する第1のノズルであって、前記搬送機構により搬送される前記物体の一方の面と対向するように配置された第1のノズルが形成された第1液滴吐出ヘッドと、
液滴を吐出する第2ノズルが形成され、第2のノズルが前記搬送機構により搬送される前記物体の前記一方の面と対向する第1位置、及び、第2のノズルが前記搬送機構により搬送される前記物体の他方の面と対向する第2位置のいずれかの位置に選択的に移動可能である第2液滴吐出ヘッドと、
前記第2液滴吐出ヘッドを前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる移動機構とを備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記第1液滴吐出ヘッド及び前記第2液滴吐出ヘッドが、前記搬送経路の延在方向と直交する方向に関して、前記第1液滴吐出ヘッドのノズルの位置と前記第2液滴吐出ヘッドのノズルの位置とが同じになるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記第1液滴吐出ヘッド及び前記第2液滴吐出ヘッドが、前記搬送経路の延在方向と直交する方向に関して、前記第1液滴吐出ヘッドのノズルの位置と前記第2液滴吐出ヘッドのノズルの位置とが互いにずれるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記第1液滴吐出ヘッドのノズルを覆う第1キャップと、
前記第2液滴吐出ヘッドのノズルを覆う第2キャップとをさらに備えており、
前記第2キャップは、前記第2液滴吐出ヘッドが前記第1位置及び前記第2位置のいずれの位置にある状態でも、前記第2液滴吐出ヘッドのノズルと対向するように配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッド移動機構が、前記第2液滴吐出ヘッドのノズルと前記第2キャップとが対向した状態を保持しつつ、前記第2液滴吐出ヘッドと前記第2キャップとを一緒に移動させることを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記第2キャップは、2つのキャップを含み、
前記2つのキャップが、それぞれ、前記第1位置にある前記第2液滴吐出ヘッドのノズルと対向する位置、及び、前記第2位置にある前記第2液滴吐出ヘッドのノズルと対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記搬送機構が、前記搬送経路に沿って配置された複数のローラ対を備え、
前記各ローラ対は、前記搬送経路を搬送される前記物体の前記他方の面が当接する、表面に凹凸のない搬送ローラと、周方向に沿って複数の突起が形成された歯車状ローラを含み、前記搬送ローラと歯車状ローラとが、搬送される前記物体を挟んでいることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記複数のローラ対が、
前記第1液滴吐出ヘッドに対して前記搬送経路の上流側に配置された第1ローラ対と、
前記第1液滴吐出ヘッドに対して前記搬送経路の下流側に配置されており、前記第1ローラ対に隣接する第2ローラ対とを含んでおり、
前記第2位置が、前記第2ローラ対に対して前記搬送経路の下流側であることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記複数のローラ対が、
前記第2位置に対して前記搬送経路の下流側に配置されており、前記第2ローラ対に隣接する第3ローラ対をさらに備えており、
前記搬送経路の延在方向に関して、前記第2ローラ対と前記第3ローラ対との距離が、前記第1ローラ対と前記第2ローラ対との距離よりも長いことを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出装置。
【請求項10】
前記複数のローラ対が、前記搬送経路の延在方向に関して、前記第1液滴吐出ヘッド、及び、前記第1位置にある前記第2液滴吐出ヘッドの両方を挟むように配置された互いに隣接する2組のローラ対を含んでおり、
前記第2位置が、前記第1位置の前記搬送経路を挟んだ反対側の、前記搬送経路の延在方向に関して前記第1位置と同じ位置であり、
前記第2液滴吐出ヘッドが、前記第1液滴吐出ヘッドに対して前記搬送経路の上流側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項11】
前記複数のローラ対が、前記搬送経路の延在方向に関して、前記第1液滴吐出ヘッド、及び、前記第1位置にある前記第2液滴吐出ヘッドの両方を挟むように配置された互いに隣接する2組のローラ対を含んでおり、
前記第2位置が、前記2組のローラ対の間で、且つ、前記第1位置に対して前記搬送経路の上流側であることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項12】
前記搬送ローラの前記凹凸のない表面が、撥液性の材料によりコーティングされていることを特徴とする請求項7に記載の液滴吐出装置。
【請求項13】
第1、第2のノズルは、いずれも、複数の第1、第2ノズルとして形成され、
前記第1、第2の液滴吐出ヘッドには、それぞれ、第1、第2のノズルが所定のピッチで列状に配列された第1、第2ノズル列が形成され、
第2の液滴吐出ヘッドが第1位置に配置されたとき、第1、第2のノズル列が、第1、第2ノズル列の延在する方向において、互いにずれていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項14】
前記第1、第2のノズル列が、所定のピッチの半分だけ互いにずれていることを特徴とする請求項13に記載の液滴吐出装置。
【請求項15】
第1、第2のノズルは、いずれも、複数の第1、第2ノズルとして形成され、
前記第1、第2の液滴吐出ヘッドには、それぞれ、第1、第2のノズルが所定のピッチで列状に配列された第1、第2ノズル列が形成され、
第2の液滴吐出ヘッドが第1位置に配置されたとき、第1、第2のノズル列が、第1、第2ノズル列の延在する方向において、第1、第2のノズル列が、同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項16】
さらに、入力される指示に基づいて、移動機構を制御して第2の液滴吐出ヘッドを前記第1、第2の位置の間で選択的に移動させるコントローラーを備え、前記指示は液滴を前記物体の前記一面にのみ吐出するか、あるいは、液滴を前記物体の両面に吐出するかの選択を含むことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−69873(P2010−69873A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191742(P2009−191742)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】