説明

液体吐出装置

【課題】複数の液体吐出ヘッドが取り付けられる取り付け部材が温度上昇により膨張したときの、液体吐出ヘッド間における、所定の一方向に関するノズルのずれを低減する。
【解決手段】紙幅方向に配列されることによってノズル列32を形成する複数のノズル31をそれぞれ備えた4つのインクジェットヘッド12が、ヘッド保持板11の上面に紙幅方向に沿って一列に配列されている。ヘッド保持板11は、蝶番22を介してプリンタ本体1aに固定された固定部21に取り付けられており、蝶番22の回動軸22aを中心に回動可能となっている。ヘッド保持板11の紙幅方向に関する一方の端面が平面視で略円弧状であり、略円柱形脳の案内部材23に接触した湾曲面11aとなっている。温度上昇によりヘッド保持板11が紙幅方向に伸びると、ヘッド保持板11は、案内部材23により案内面11aが押圧されることによって、回動軸22aを中心に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【0002】
特許文献1に記載のプリンタにおいては、紙幅方向に配列された複数のノズルを有する液体吐出ヘッドとしてのヘッドユニットが、第1方向としての紙幅方向に沿って配列された状態で、保持部材としてのベースフレームに取り付けられることで、1つのラインヘッドユニットが形成されている。そして、これら複数のヘッドユニットの複数のノズルから、紙幅方向と直交する搬送方向に搬送される用紙にインクを吐出することにより、用紙に印刷を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−114411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のプリンタにおいては、環境温度が上昇するなどして、ベースフレームの温度が上昇すると、ベースフレームは、膨張して紙幅方向などに伸びる。ベースフレームが紙幅方向に伸びると、ヘッドユニット間で、ノズルの位置が紙幅方向にずれ、この状態で印刷を行うと、用紙におけるインクの着弾位置も紙幅方向にずれ、印刷された画像に、インクが着弾しない搬送方向に延びた筋状の領域ができてしまうなどして、印刷品質が低下してしまう。また、特許文献1に記載のプリンタは、固定されたヘッドユニットの複数のノズルから、搬送方向に搬送される用紙にインクを吐出することによって印刷を行うものであるため、ノズルからのインクの吐出タイミングを調整するなどしても、紙幅方向に関するインクの着弾位置を補正することはできない。
【0005】
本発明の目的は、温度上昇した場合でも、液体吐出ヘッド間における、所定の一方向に関するノズルの位置のずれを低減することが可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る液体吐出装置は、所定の一方向である第1方向に配列された複数のノズルを有し、前記複数のノズルが形成されたノズル面が同一面上にくるように、前記第1方向に沿って配列された複数の液体吐出ヘッドと、前記複数の液体吐出ヘッドが取り付けられており、前記ノズル面と交差する回動軸に回動自在に支持された取り付け部材と、温度変化によって伸縮した前記取り付け部材を、前記第1方向に関する伸縮量に応じた角度だけ、前記回動軸を中心に回動させる回動手段と、前記回動手段によって前記取り付け部材が回動されたことによる、前記ノズル面と直交する方向から見て前記第1方向と交差する方向に関する、前記複数のノズルから吐出される液体の吐出対象への着弾位置を補正する着弾位置補正手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
取り付け部材が、温度変化により第1方向に伸縮すると、複数の液体吐出ヘッドの間で、第1方向に関してノズルの位置がずれてしまう。しかしながら、本発明によると、取り付け部材が温度変化によって伸縮したときに、ノズル面と直交する回動軸を中心に回動するため、液体吐出ヘッド間における、第1方向に関するノズルのずれが低減される。
【0008】
このとき、取り付け部材の回動により、ノズルが、第1方向と交差する方向にもずれることとなる。しかしながら、着弾位置調整手段により、ノズルからの液体の吐出タイミングを調整するなどすれば、ノズルのずれによる吐出対象における液体の着弾位置のずれを補正することができる。
【0009】
第2の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記回動軸が、前記取り付け部材のうち、前記複数の液体吐出ヘッドが取り付けられている領域の中央部に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によると、取り付け部材の回動中心が、ノズルに近い位置にあるため、取り付け部材の回動によるノズルの移動量が小さく、着弾位置の補正量が小さくて済む。したがって、液体の着弾位置を精度よく補正することができる。
【0011】
第3の発明に係る液体吐出装置は、第1の発明に係る液体吐出装置において、前記複数の液体吐出ヘッドは、前記複数のノズルから高画質印刷用のインクを吐出し、前記第1方向に沿って配列された複数の高画質印刷用ヘッドと、前記複数のノズルから低画質印刷用のインクを吐出し、前記第1方向に沿って配列された複数の低画質印刷用ヘッドと、を備え、前記回動軸が、前記取り付け部材のうち、前記高画質印刷用ヘッドが配置されている領域に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、取り付け部材の回動中心が、高画質印刷用インクを吐出するノズルに近い位置にあるため、取り付け部材の回動による高画質印刷用インクを吐出するノズルの移動量が小さく、高画質印刷用インクを吐出するノズルに対する着弾位置の補正量が小さくて済む。したがって、低画質印刷用インクよりも高い着弾位置精度が要求される高画質印刷用インクの着弾位置を精度よく補正することができる。
【0013】
第4の発明に係る液体吐出装置は、第3の発明に係る液体吐出装置において、前記複数の低画質印刷用ヘッドは、前記複数のノズルから、前記低画質印刷用のインクとしてブラックインクを吐出し、前記複数の高画質印刷用ヘッドは、前記複数のノズルから、前記高画質印刷用のインクとしてカラーインクを吐出することを特徴とする。
【0014】
本発明によると、取り付け部材の回動中心が、カラーのインクを吐出するノズルに近い位置にあるため、取り付け部材の回動によるカラーのインクを吐出するノズルの移動量が小さく、カラーのインクを吐出するノズルに対する着弾位置の補正量が小さくて済む。したがって、ブラックインクよりも高い着弾位置精度が要求されるカラーインクの着弾位置を精度よく補正することができる。
【0015】
第5の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記回動手段は、温度上昇による前記取り付け部材の前記第1方向への伸びを、前記取り付け部材の前記回動軸を中心とする第2方向への回動力に変換する変換手段と、前記取り付け部材を、前記第2方向と反対方向に付勢する付勢手段と、を備えていることを特徴とする。
【0016】
本発明によると、取り付け部材が温度上昇したときには、温度上昇による取り付け部材の第1方向への伸びが、取り付け部材の第2方向への回動力に変換されることで、取り付け部材が、回動軸を中心とする第2方向に回動する。一方、取り付け部材が温度低下したときには、付勢手段により、取り付け部材が上記第2方向と反対方向に回動される。したがって、モータなどの駆動源を設けることなく、温度変化により伸縮する取り付け部材を、その伸縮量に応じた角度だけ回動させることができる。
【0017】
第6の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第4のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記取り付け部材の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、前記回動手段は、前記温度検出手段により検出された温度に応じた角度だけ、前記取り付け部材を回動させることを特徴とする。
【0018】
本発明によると、取り付け部材の温度に応じて取り付け部材を回動させるので、温度変化により伸縮する取り付け部材を、その伸縮量に応じた角度だけ回動させることができる。
【0019】
第7の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第6のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記回動手段による前記取り付け部材の回動の前後で、前記複数の液体吐出ヘッドの向きが変化しないように前記複数の液体吐出ヘッドを保持する保持手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明によると、取り付け部材の回動の前後で、液体吐出ヘッドの向きが変化しないので、各液体吐出ヘッドにおける、紙幅方向に関するノズルの間隔が変動してしまうことがない。
【0021】
第8の発明に係る液体吐出装置は、第1〜第7のいずれかの発明に係る液体吐出装置において、前記複数の液体吐出ヘッドは、所定の動作保証温度範囲内の温度にある状態で、前記複数のノズルから正常に液体を吐出することができるように構成されており、前記取り付け部材は、少なくとも、所定の動作保証温度範囲内の温度にある状態では、前記回動手段による回動が可能となっていることを特徴とする。
【0022】
本発明によると、取り付け部材が、少なくとも、動作保証温度範囲内の温度にある状態では、回動手段による回動が可能であるため、液体吐出ヘッドのノズルから正常に液体を吐出することが可能な限りは、取り付け部材を、その温度に応じた角度だけ回動させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、取り付け部材が温度変化によって伸縮したときに、ノズル面と直交する回動軸を中心に回動するため、液体吐出ヘッド間における、第1方向に関するノズルのずれが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンタの概略構成図である。
【図2】図1のヘッドユニットの平面図であり、(a)がヘッド保持板の回動前の状態、(b)がヘッド保持板の回動後の状態を示している。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図1の制御装置の機能ブロック図である。
【図5】インクジェットヘッド間におけるノズルの間隔を説明する図である。
【図6】変形例1の図1相当の図である。
【図7】変形例2の図1相当の図である。
【図8】変形例3の図4相当のブロック図である。
【図9】変形例4の図2相当の図である。
【図10】変形例5の図1相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0026】
図1に示すように、本実施の形態に係るプリンタ1は、ヘッドユニット2、用紙搬送ローラ3、温度検出手段としての温度センサ4などを備えている。また、プリンタ1の動作は、制御装置50によって制御されている。
【0027】
ヘッドユニット2は、いわゆるラインヘッドとして設けられたものであり、その下面に形成された複数のノズル31から液体としてインクを吐出する。用紙搬送ローラ3は、ヘッドユニット2の図1における上側及び下側にそれぞれ配置されており、記録用紙Pを、紙送り方向に搬送する。温度センサ4は、ヘッドユニット2の近傍に配置されており、ヘッドユニット2の温度を検出する。具体的には、温度センサ4は、後述のヘッド保持板11の温度、あるいはヘッドユニット2の近傍の環境温度を検出する。
【0028】
そして、プリンタ1においては、用紙搬送ローラ3によって紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、ヘッドユニット2のノズル31からインクを吐出することによって、記録用紙Pに印刷を行う。
【0029】
次に、ヘッドユニット2について詳細に説明する。ヘッドユニット2は、図1〜図3に示すように、取り付け部材としてのヘッド保持板11、及び、液体吐出ヘッドとしての4つのインクジェットヘッド12を備えている。
【0030】
ヘッド保持板11は、金属材料、合成樹脂材料などからなる、紙送り方向と直交する第1方向としての紙幅方向を長手方向とする略矩形の板状体である。また、ヘッド保持板11の図1における左側には、プリンタ本体1aに固定された固定部21が設けられており、ヘッド保持板11は、図1における左上側の角部が、蝶番22を介して固定部21に取り付けられている。これにより、図1の紙面垂直方向である鉛直方向に延びた蝶番22の回動軸22aを中心に回動可能となっている。また、ヘッド保持板11は、所定温度以下となったときに、長手方向に関する蝶番22側の端面が固定部21に接触し、図1に示す位置よりも時計回り方向には回動しないようになっている。ここで、所定温度とは、後述するようにノズル31からインクを吐出するインクジェットヘッド12において、正常にインクを吐出することができる温度範囲である動作保証温度範囲の下限よりも低い温度である。したがって、ヘッド保持板11は、少なくとも、動作保証温度範囲内の温度にある状態では、回動軸22aを中心に回動可能となっている。
【0031】
また、ヘッド保持板11の、固定部21と反対側の端面は、図1の上側の部分ほど、紙幅方向に関して外側にくるように湾曲した、平面視で略円弧状の案内面11aとなっている。案内面11aは、ヘッド保持板11の図1におけるすぐ右側に配置されているとともに、鉛直方向に延びた、略円柱形状の案内部材23の外周面と接触している。また、ヘッド保持板11は、固定部21と反対側の端部が、付勢手段としてのバネ24によって、矢印Aで示すように、紙送り方向に付勢されている。これにより、回動軸22aに支持されたヘッド保持板11は、図1の時計回り方向に付勢される。
【0032】
また、ヘッド保持板11には、4つの貫通孔25が形成されている。4つの貫通孔25は、それぞれ、紙幅方向を長手方向とする略矩形の孔であり、紙幅方向に沿って一列に配列されている。
【0033】
4つのインクジェットヘッド12は、それぞれ、その下面であるノズル面12aに複数のノズル31を備えており、これら複数のノズル31からインクを吐出する。各インクジェットヘッド12の複数のノズル31は、それぞれ、紙幅方向に配列されることによってノズル列32を形成している。また、インクジェットヘッド12は、少なくともノズル31を形成している部分が、例えばシリコンなどのヘッド保持板11よりも線膨張係数の小さい材料によって構成されている。具体的には、例えば、インクジェットヘッド12が複数のプレートが積層されることによって形成されている場合には、ノズルを形成するノズルプレートが、ヘッド保持板11よりも線膨張係数の小さい材料によって構成されている。そして、このような構成の4つのインクジェットヘッド12は、4つのインクジェットヘッド12のノズル面12aが、4つの貫通孔25から露出するとともに水平な同一平面上に位置するように、ヘッド保持板11の上面に紙幅方向に沿って一列に配列された状態で取り付けられている。
【0034】
また、4つのインクジェットヘッド12は、それぞれ、チューブ34を介してインクカートリッジ35と接続されており、インクカートリッジ35からインクジェットヘッド12に、複数のノズル31から吐出するためのインクが供給される。
【0035】
次に、プリンタ1の動作を制御する制御装置50について説明する。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなり、これらが、図4に示すように、補正量記憶部51、印刷制御部52などとして動作する。
【0036】
補正量記憶部51には、ヘッド保持板11の温度、あるいは、ヘッド保持板11近傍の環境温度と、複数のノズル31における吐出タイミングの補正量との関係が記憶されている。印刷制御部52は、プリンタ1において印刷を行う際のインクジェットヘッド12の動作を制御する。具体的には、印刷制御部52は、補正量記憶部51から、温度センサ4によって検出された温度に対応吐出タイミングの補正量を読み出し、補正を行わない場合の吐出タイミングに対して、読み出した補正量だけ吐出タイミングをずらして、ノズル31からインクを吐出させる。また、印刷制御部52は、用紙搬送ローラ3の動作の制御なども行う。なお、本実施の形態では、温度センサ4、補正量記憶部51及び印刷制御部52を合わせたものが、本発明に係る着弾位置補正手段に相当する。
【0037】
ここで、環境温度の変化などにより、ヘッド保持板11の温度が上昇すると、ヘッド保持板11は膨張し、膨張したヘッド保持板11は、紙幅方向にも伸びる。このとき、仮に、案内面11aや案内部材23などがないとすると、インクジェットヘッド12同士が紙幅方向に離れる。そして、図5(b)に示すように、複数のインクジェットヘッド12の間における紙幅方向に関するノズル31の間隔W2が、図5(a)に示す、ヘッド保持板が膨張する前のノズル31の間隔W1よりも大きくなってしまう。すなわち、インクジェットヘッド12の間において、ノズル31が紙幅方向にずれて、紙幅方向に関するノズル31の間隔が大きくなってしまう。そして、インクジェットヘッド12の間において、紙幅方向に関するノズル31の間隔が大きくなってしまうと、プリンタ1において印刷を行ったときに、記録用紙Pに紙送り方向に筋状に延びたインクの着弾しない領域ができてしまい、印刷品質の低下につながる。また、上述したような紙幅方向に関するノズル31のずれは、ノズル31からのインクの吐出タイミングを調整するなどしても補正することはできない。
【0038】
これに対して、本実施の形態では、ヘッド保持板11の案内面11aが、案内部材23に接触している。そのため、ヘッド保持板11が、温度上昇により膨張して紙幅方向に伸びたときに、ヘッド保持板11の案内面11aが、案内部材23によって、その径方向内側に押圧され、その押圧力によって、案内面11aが案内部材23の外周面と摺動する。これにより、ヘッド保持板11は、バネ24の付勢力に逆らって蝶番22の回動軸22aを中心に、第2方向としての図2の反時計回り方向に回動し、図2(b)に示すように、紙幅方向に対して傾いた姿勢となる。すなわち、本実施の形態では、ヘッド保持板11の紙幅方向への伸びが、ヘッド保持板11の第2方向への回動力に変換されることによって、ヘッド保持板11が回動する。なお、本実施の形態では、案内面11aと案内部材23とを合わせたものが、本発明に係る変換手段に相当する。また、ヘッド保持板11の回動角度は、ヘッド保持板11の温度、案内面11a及び案内部材23の外周面の曲率などによって決まるため、案内面11a及び案内部材23の外周面の曲率を適切なものとすれば、ヘッド保持板11を、その温度に応じた適切な角度だけ回動させることができる。
【0039】
そして、ヘッド保持板11が回動することにより、図5(c)に示すように、インクジェットヘッド12の間における紙幅方向に関するノズル31の間隔W3が、図5(b)に示す、ヘッド保持板11を回動させなかった場合のインクジェットヘッド12の間における紙幅方向に関するノズル31の間隔W2よりも小さくなる。これにより、ヘッド保持板11が膨張したときの、インクジェットヘッド12の間における、紙幅方向に関するノズル31のずれを低減することができる。
【0040】
ここで、上述したように、温度上昇により膨張したヘッド保持板11が回動すると、図5(a)と図5(c)とを比較すればわかるように、各インクジェットヘッド12のノズル31の位置が、紙送り方向にずれる。そこで、本実施の形態では、温度センサ4によって検出された温度に応じて、補正量記憶部51から吐出タイミングの補正量を読み出し、各ノズル31からのインクの吐出タイミングを読み出した補正量だけずらしている。これにより、紙送り方向への着弾位置のずれを補正することができる。
【0041】
一方、膨張したヘッド保持板11が温度低下により元の大きさに収縮した場合には、ヘッド保持板11はその長手方向にも縮む。これにより、ヘッド保持板11は、バネ24の押圧力によって、図2の時計回り方向、つまり、第2方向と反対方向に回動して、元の姿勢に戻る。
【0042】
また、本実施の形態では、上述したように、ヘッド保持板11の紙幅方向への伸びが、ヘッド保持板11の図1反時計回り方向への回動力に変換されることによって、ヘッド保持板11が当該方向に回動する。一方、ヘッド保持板11が紙幅方向に収縮したときに、バネ24の付勢力により図1の時計回り方向に回動する。したがって、モータなどの駆動源を設けることなく、ヘッド保持板11をその伸縮量に応じた角度だけ回動させることができ、プリンタ1の構成を簡略化することができる。
【0043】
また、本実施の形態では、ヘッド保持板11は、インクジェットヘッド12の保証温度範囲内の温度にある状態では回動可能であるため、インクジェットヘッド12においてノズル31から正常にインクを吐出可能な限りは、ヘッド保持板11をその温度に応じた角度だけ回動させることができる。
【0044】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては、適宜その説明を省略する。
【0045】
上述の実施の形態では、ヘッド保持板11が、その角部を中心に回動可能となっていたが、これには限られない。ヘッド保持板11は、そのいずれの部分を中心に回動可能となっていてもよい。
【0046】
例えば、一変形例(変形例1)では、図6に示すように、ヘッド保持板61が、複数のインクジェットヘッド12が配置されている領域の略中央部において、図6の紙面垂直方向である鉛直方向に延びた回動軸62に回動自在に支持されている。また、回動軸62の上方には、プリンタ本体1aに固定された固定部63が設けられており、回動軸62は固定部63に取り付けられている。
【0047】
また、ヘッド保持板61は、図中右側の端面が案内面11a(図1参照)と同様の案内面61aとなっているのに加えて、図中左側の端面が、図1の下側の部分ほど、紙幅方向に関して外側にくるように湾曲した、平面視で略円弧状の案内面61bとなっている。そして、案内面61a、61bが、それぞれ、個別の案内部材23と接触している。
【0048】
この場合には、ヘッド保持板61は、温度上昇により膨張して紙幅方向に伸びると、上述の実施の形態と同様、案内部材23が案内面61a、61bを押圧する力によって、バネ24の付勢力に逆らって回動軸62を中心に、第2方向としての図6の反時計回りに回動する。また、膨張していたヘッド保持板61が温度低下により収縮して紙幅方向に収縮すると、バネ24に押圧されて、回動軸62を中心に、第2方向と反対方向である図6の時計回り方向に回動する。そして、これにより、上述の実施の形態と同様、ヘッド保持板61が温度上昇したときに、インクジェットヘッド12の間における、紙幅方向に関するノズル31のずれを低減することができる。
【0049】
ここで、上述の実施の形態のように、ヘッド保持板11(図1参照)が、その角部に取り付けられた蝶番22の回動軸22a(図1参照)を中心に回動可能となっている場合、ヘッド保持板11の当該角部から遠い位置に配置されたノズル31ほど、回動軸22aから大きく離れている。そして、回動軸22aから大きく離れたノズル31は、ヘッド保持板11を回動させたときに、紙送り方向に大きくずれる。そのため、適正な吐出タイミングと実際の補正後の吐出タイミングとの間に誤差がある場合に、インクの着弾位置が大きくずれてしまう。その結果、インクの着弾位置を精度よく補正できない虞がある。
【0050】
これに対して、変形例1の場合には、ヘッド保持板61の回動の中心となる回動軸62が、ヘッド保持板61の複数のインクジェットヘッド12が配置されている領域の略中央部に設けられている。そのため、各インクジェットヘッド12のノズル31と回動軸62との距離は小さく、ヘッド保持板61が回動したときの、ノズル31の紙送り方向に関するずれが小さくなる。したがって、吐出タイミングの補正量が小さくて済み、記録用紙Pへのインクの着弾位置を精度よく補正することができる。
【0051】
なお、変形例1では、ヘッド保持板61の紙幅方向に関する両端面が案内面61a、61bとなっているが、ヘッド保持板61の紙幅方向に関する一方の端面のみが案内面となっていてもよい。
【0052】
また、別の一変形例(変形例2)では、図7に示すように、ヘッド保持板71に、複数のインクジェットヘッドとして、低画質印刷用ヘッドとしての4つのブラックヘッド72と、高画質印刷用ヘッドとしての4つのカラーヘッド73とが配置されている。
【0053】
4つのブラックヘッド72は、インクジェットヘッド12(図1参照)と同様、紙幅方向に配列されることによってノズル列32を形成する複数のノズル31を備えているとともに、4つのインクジェットヘッド12と同様、紙幅方向に沿って一列に配列されている。
【0054】
また、4つのブラックヘッド72は、それぞれ、チューブ74Bを介して、ブラックインクが充填されたブラックカートリッジ75Bに接続されており、ブラックカートリッジ75Bからブラックインクが供給される。なお、変形例2では、4つブラックヘッド72がそれぞれ個別にチューブ74Bを介してブラックカートリッジ75Bと接続されているが、図7では、図面を見やすくするため、1つのブラックヘッド72に対応するチューブ74Bのみを図示している。
【0055】
4つのカラーヘッド73は、紙幅方向に沿って配列されることによって3つのノズル列32を形成する複数のノズル31を備えているとともに、ヘッド保持板71の4つのブラックヘッド72の図7における下側の部分に、紙幅方向に沿って一列に配列されている。
【0056】
また、4つのカラーヘッド73は、それぞれ、3本のチューブ74Y、74C、74Mを介して、イエロー、シアン、マゼンタのインクが充填された3つのカラーカートリッジ75Y、75C、75Mと接続されており、3つのカラーカートリッジ75Y、75C、75Mから上記3色のインクが供給される。なお、変形例2では、4つカラーヘッド73がそれぞれ個別にチューブ74Y、74C、74Mを介してカラーカートリッジ75Y、75C、75Mと接続されているが、図7では、図面を見やすくするため、1つのカラーヘッド73に対応するチューブ74Y、74C、74Mのみを図示している。
【0057】
そして、変形例2のプリンタ1では、用紙搬送ローラ3によって紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、ブラックヘッド72の複数のノズル31から低画質印刷用インクとしてのブラックインクを吐出することによって、記録用紙Pに低画質印刷としてのモノクロ印刷を行う。また、用紙搬送ローラ3によって紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、カラーヘッド73の複数のノズル31から高画質印刷用インクとしての3色のカラーインクを吐出することによって、記録用紙Pに高画質用印刷としてのカラー印刷を行う。より詳細には、カラーヘッド73の複数数のノズル31のうち、図7における上側のノズル列32を形成するノズル31から順に、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出することによってカラー印刷を行う。
【0058】
また、ヘッド保持板71は、4つのカラーヘッド73が配置されている領域の略中央部において、図7の紙面垂直方向である鉛直方向に延びた回動軸76に回動自在に支持されている。回動軸76の上方には、プリンタ本体1aに固定された固定部77が設けられており、回動軸76は、固定部77に取り付けられている。また、ヘッド保持板71の図7における右下端部の端面が、案内部材23と接触する、案内面11a(図1参照)と同様の案内面71aとなっている。
【0059】
この場合も、ヘッド保持板71は、温度上昇により膨張して紙幅方向に伸びると、回動軸76を中心に図7の反時計回りに回動する。また、膨張していたヘッド保持板61が温度低下により収縮して紙幅方向に収縮すると、バネ24に押圧されて、回動軸76を中心に図6の時計回り方向に回動する。そして、これにより、上述の実施の形態と同様、ヘッド保持板61が温度上昇したときに、インクジェットヘッド12の間における、紙幅方向に関するノズル31のずれを低減することができる。
【0060】
さらに、変形例2の場合には、ヘッド保持板71の回動の中心となる回動軸76が、ヘッド保持板71の複数のカラーヘッド73が配置されている領域の略中央部に設けられている。そのため、各カラーヘッド73のノズル31と回動軸76との距離は小さく、ヘッド保持板71が回動したときの、カラーヘッド73ノズル31の紙送り方向に関するずれが小さくなる。したがって、カラーヘッド73のノズル31における吐出タイミングの補正量が小さくて済み、高い着弾位置精度が要求されるカラー印刷時の、記録用紙Pへのカラーインクの着弾位置を精度よく補正することができる。
【0061】
なお、この場合には、回動軸76とブラックヘッド72のノズル31との距離が大きくなる。そのため、ヘッド保持板71が回動したときの、ブラックヘッド72のノズル31の紙送り方向に関するずれが大きくなる。その結果、ブラックヘッド72のノズル31における吐出タイミングの補正量は大きくなってしまう。しかしながら、モノクロ印刷においては、カラー印刷ほど高い着弾位置精度が要求されないため、吐出タイミングの補正量が大きく、着弾位置に多少のずれがあったとしても、画質に与える影響は小さい。
【0062】
また、変形例2では、低画質印刷用ヘッドがブラックヘッドであり、高画質印刷用ヘッドがカラーヘッドである例について説明したが、低画質印刷用ヘッドと高画質印刷用ヘッドの組み合わせは、ブラックヘッドとカラーヘッドの組み合わせであることには限られない。例えば、低画質印刷用ヘッドがノズル間隔の大きいブラックヘッドであり、高画質印刷用ヘッドがノズル間隔の小さいブラックヘッドであってもよい。
【0063】
また、上述の実施の形態では、案内面11aと案内部材23とによって、紙幅方向へのヘッド保持板11の伸びを、ヘッド保持板11の回動力に変換して、ヘッド保持板11を第2方向に回動させたが、別の構成によって、紙幅方向へのヘッド保持板11の伸びを、ヘッド保持板11の回動力に変換してもよい。また、上述の実施の形態では、バネ24の付勢力によって、ヘッド保持板11を第2方向と反対方向に回動させたが、バネ24以外の付勢機構の付勢力によってヘッド保持板11を第2方向と反対方向に回動させてもよい。
【0064】
さらには、紙幅方向へのヘッド保持板11の伸びを、ヘッド保持板11の第2方向への回動力に変換する変換手段や、ヘッド保持板11を第2方向と反対方向に回動するように付勢する付勢手段によって、ヘッド保持板11を回動させることにも限られない。別の一変形例(変形例3)では、案内面11a、案内部材23、バネ24(図1参照)を設ける代わりに、図8に示すように、蝶番22の回動軸22aに図示しないギアなどを介してモータ81が接続されており、モータ81を駆動することによって、ヘッド保持板11を回動させることができるようになっている。
【0065】
また、制御装置50が、回動制御部82をさらに備えている。回動制御部82は、温度センサ4によって検出された温度に基づいてモータ81の動作を制御することにより、ヘッド保持板11の回動角度を制御する。なお、変形例3では、モータ81と回動制御部82とを合わせたものが、本発明に係る回動手段に相当する。
【0066】
そして、この場合には、温度上昇によって膨張したヘッド保持板11が紙幅方向に伸びたときに、ヘッド保持板11が、その温度あるいは周辺の環境温度に応じた角度だけ回動するため、上述の実施の形態と同様、インクジェットヘッド12の間における、紙幅方向に関するノズル31のずれを低減することができる。
【0067】
また、上述の実施の形態では、インクジェットヘッド12が、ヘッド保持板11に対して固定されており、インクジェットヘッド12とヘッド保持板11とが相対移動しないようになっていたが、これには限られない。別の一変形例(変形例4)では、図9(a)に示すように、インクジェットヘッド12の図中左側の端部が、図9の紙面垂直方向である鉛直方向に延びた回動軸91に取り付けられている。回動軸91は、図示しないギアなどを介して、保持手段としてのモータ92に接続されており、モータ92を駆動することにより、インクジェットヘッド12を、回動軸91を中心に回動させることができるようになっている。また、ヘッド保持板11には、4つのインクジェットヘッド12にまたがって連続的に延びた貫通孔93が形成されており、インクジェットヘッド12が回動したときにも、ノズル面12aを貫通孔93から下方に露出させることができるようになっている。
【0068】
この場合には、ヘッド保持板11が、回動軸22aを中心に回動したときに、図9(b)に示すように、モータ92を駆動して、4つのインクジェットヘッド12をヘッド保持板11の回動方向と反対方向、つまり、図9の時計回り方向にヘッド保持板11と同じ角度だけ回動させる。このとき、ヘッド保持板11の回動角度は、温度センサ4により検出された温度に対応した角度となるため、例えば、インクジェットヘッド12の回動角度を、温度センサ4により検出された温度に応じた角度とすることにより、インクジェットヘッド12を、ヘッド保持板11と反対方向に、ヘッド保持板11と同じ角度だけ回動させることができる。
【0069】
これにより、ヘッド保持板11の回動による、インクジェットヘッド12の間における、紙幅方向に関するノズル31のずれを低減することができるのに加えて、ヘッド保持板11の回動の前後で、インクジェットヘッド12の向きが保持されるため、各インクジェットヘッド12において、紙幅方向に関するノズル31の間隔を保持することができる。
【0070】
また、変形例4では、モータ92により、インクジェットヘッド12をヘッド保持板11と反対方向に回動させることによって、ヘッド保持板11の回動の前後でインクジェットヘッド12の向きを保持させたが、他の構成によって、インクジェットヘッド12の向きを保持させてもよい。
【0071】
また、上述の実施の形態では、4つのインクジェットヘッド12が、図1の右側のものほど、図1における上側にくるように配列されており、ヘッド保持板11が温度上昇によって紙幅方向に伸びたときに、図1の反時計回り方向に回動するようになっていたが、これとは逆に、4つのインクジェットヘッド12が、図1の右側のものほど、図1における下側にくるように配列されており、ヘッド保持板11が温度上昇によって紙幅方向に伸びたときに、図1の時計回り方向に回動するようになっていてもよい。この場合でも、上述の実施の形態と同様、ヘッド保持板11が温度上昇により紙幅方向に伸びたときの、インクジェットヘッド12の間における、ノズル31のずれを低減することができる。
【0072】
また、以上の例では、本発明を、いわゆるラインヘッドを備えたプリンタに適用した、紙幅方向と紙送り方向とが直交する例について説明したが、これには限られない。
【0073】
別の一変形例(変形例5)は、本発明をいわゆるシリアルヘッドを備えたプリンタに適用した例であり、図10に示すように、ガイドレール100に沿って紙幅方向と平行な走査方向に往復移動するキャリッジ101上に、ヘッド保持板102、2つのブラックヘッド103、2つのカラーヘッド104などが設けられている。
【0074】
ヘッド保持板102は、紙送り方向に長尺に延びており、図10における左下端部において、図10の紙面垂直方向である鉛直方向に延びた回動軸109に回動可能に支持されている。また、ヘッド保持板102の、図10における右上端側の端面は、図10の左側の部分ほど、紙送り方向に関して外側にくるように湾曲した、平面視で略円弧状の案内面102aとなっている。案内面102aは、上述の実施の形態と同様の案内部材23の外周面と接触している。また、ヘッド保持板102は、図10における左上側の端部が、上述の実施の形態と同様のバネ24によって、矢印Bで示すように、紙幅方向に付勢されている。これにより、回動軸109に支持されたヘッド保持板102は、図10の時計回り方向に付勢される。
【0075】
2つのブラックヘッド103は、第1方向としての紙送り方向に沿って配列されており、複数のノズル31が、それぞれ、紙送り方向に配列されていることによって、ノズル列105を形成している。2つのカラーヘッド104は、紙送り方向に沿って配列されており、複数のノズル31が、それぞれ、紙送り方向に沿って配列されることによって3つのノズル列108を形成している。また、2つのブラックヘッド103は、それぞれ、チューブ106Bを介してブラックカートリッジ107Bと接続されており、ブラックカートリッジ107Bからブラックインクが供給される。そして、ブラックヘッド103は、複数のノズル31から供給されたブラックインクを吐出する。
【0076】
2つのカラーヘッド104は、紙送り方向に沿って配列されており、複数のノズル31が、それぞれ、紙送り方向に沿って配列されることによって3つのノズル列108を形成している。また、2つのカラーヘッド104は、それぞれ、3本のチューブ106Y、106C、106Mを介してイエロー、シアン、マゼンタのインクがそれぞれ充填された3色のカラーカートリッジ107Y、107C、107Mと接続されており、カラーカートリッジ107Y、107C、107Mからこれら3色のカラーインクが供給される。そして、カラーヘッド104は、複数のノズル31から供給された3色のカラーインクを吐出する。より詳細には、複数のノズル31から、図10の左側のノズル列108を形成するものから順に、イエロー、シアン、マゼンタのインクを吐出する。
【0077】
そして、変形例5のプリンタでは、用紙搬送ローラ3により紙送り方向に搬送される記録用紙Pに、キャリッジ101とともに走査方向に往復移動する2つのブラックヘッド103、及び、2つのカラーヘッド104のいずれかからインクを吐出することにより、記録用紙Pにモノクロ印刷及びカラー印刷のいずれかを選択的に行う。
【0078】
この場合には、ヘッド保持板102は、温度上昇により膨張して紙送り方向に伸びたときに、ヘッド保持板102の案内面102aが、案内部材23によって、その径方向内側に押圧され、その押圧力によって、案内面102aが案内部材23の外周面と摺動する。これにより、ヘッド保持板102は、バネ24の付勢力に逆らって回動軸109を中心に、第2方向としての図10の反時計回り方向に回動し、紙幅方向に対して傾いた姿勢となる。一方、膨張していたヘッド保持板102が温度低下により収縮したときには、バネ24の押圧力により回動軸109を中心に、第2方向と反対方向である図10の時計回り方向に回動して、元の姿勢に戻る。
【0079】
そして、これにより、ヘッド保持板102が温度上昇により紙送り方向に伸びたときに、2つのブラックヘッド103の間、及び、2つのカラーヘッド104の間において、それぞれ、紙送り方向に関するノズル31のずれを低減することができる。
【0080】
また、ノズル31からのインクの吐出タイミングをずらすことにより、ヘッド保持板102の回動によって、紙幅方向にずれたノズル31から吐出されるインクの、記録用紙Pにおけるインクの着弾位置を補正することができる。
【0081】
また、変形例5では、ヘッド保持板102の角部に回動軸109を設けたが、変形例1、2と同様に、回動軸109を、ヘッド保持板102の、2つのブラックヘッド103及び2つのカラーヘッド104が配置された領域の略中央部や、2つのカラーヘッド104が配置された領域の略中央部などに設けてもよい。
【0082】
また、上述の実施の形態では、ヘッド保持板11が、少なくとも、インクジェットヘッド12の動作保証温度範囲内の温度にある状態では回動可能となっていたが、これには限られない。ヘッド保持板11は、動作保証温度範囲のうち、一部の温度範囲内の温度にある状態でのみ回動可能となっていてもよい。この場合でも、ヘッド保持板11を回動させない場合と比較すれば、インクジェットヘッド12の間における、紙幅方向に関するノズル31の間隔のずれを低減することができる。
【0083】
また、以上の例では、ヘッド保持板の回動中心となる回動軸が、ノズル面12aと直交する鉛直方向に延びていたが、回動軸は、ノズル面12aと交差し、且つ、鉛直方向に対して傾斜した方向に延びていてもよい。
【0084】
また、上述の実施の形態では、複数のノズル31が紙幅方向に配列されていることにより、記録用紙Pがノズル31の配列方向と直交する紙送り方向に搬送されるようになっており、変形例5では、複数のノズル31が紙送り方向に配列されているとともに、キャリッジ101がノズル31の配列方向と直交する紙幅方向に移動するようになっていたが、これには限られない。上述の実施の形態において、複数のノズル31が、紙送り方向と交差する、紙幅方向以外の方向に配列されていてもよいし、変形例5において、複数のノズル31の配列方向とキャリッジ101の移動方向とが90°以外の角度で交差していてもよい。
【0085】
また、以上では、ノズルからインクを吐出することによって印刷を行うインクジェットプリンタに本発明を適用した例について説明したが、これには限られず、インク以外の液体を吐出するインクジェットプリンタ以外の液体吐出装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 プリンタ
4 温度センサ
11 ヘッド保持板
11a 案内面
12 インクジェットヘッド
12a ノズル面
22a 回動軸
23 案内部材
24 バネ
31 ノズル
32 ノズル列
51 補正量記憶部
52 印刷制御部
61 ヘッド保持板
61a、61b 案内面
62 回動軸
72 ブラックヘッド
73 カラーヘッド
76 回動軸
81 モータ
82 回動制御部
92 モータ
102 ヘッド保持板
103 ブラックヘッド
104 カラーヘッド
109 回動軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の一方向である第1方向に配列された複数のノズルを有し、前記複数のノズルが形成されたノズル面が同一面上にくるように、前記第1方向に沿って配列された複数の液体吐出ヘッドと、
前記複数の液体吐出ヘッドが取り付けられており、前記ノズル面と交差する回動軸に回動自在に支持された取り付け部材と、
温度変化によって伸縮した前記取り付け部材を、前記第1方向に関する伸縮量に応じた角度だけ、前記回動軸を中心に回動させる回動手段と、
前記回動手段によって前記取り付け部材が回動されたことによる、前記ノズル面と直交する方向から見て前記第1方向と交差する方向に関する、前記複数のノズルから吐出される液体の吐出対象への着弾位置を補正する着弾位置補正手段と、を備えていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記回動軸が、前記取り付け部材のうち、前記複数の液体吐出ヘッドが取り付けられている領域の中央部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記複数の液体吐出ヘッドは、
前記複数のノズルから高画質印刷用のインクを吐出し、前記第1方向に沿って配列された複数の高画質印刷用ヘッドと、
前記複数のノズルから低画質印刷用のインクを吐出し、前記第1方向に沿って配列された複数の低画質印刷用ヘッドと、を備え、
前記回動軸が、前記取り付け部材のうち、前記高画質印刷用ヘッドが配置されている領域に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記複数の低画質印刷用ヘッドは、前記複数のノズルから、前記低画質印刷用のインクとしてブラックインクを吐出し、
前記複数の高画質印刷用ヘッドは、前記複数のノズルから、前記高画質印刷用のインクとしてカラーインクを吐出することを特徴とする請求項3に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記回動手段は、
温度上昇による前記取り付け部材の前記第1方向への伸びを、前記取り付け部材の前記回動軸を中心とする第2方向への回動力に変換する変換手段と、
前記取り付け部材を、前記第2方向と反対方向に付勢する付勢手段と、を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記取り付け部材の温度を検出する温度検出手段をさらに備え、
前記回動手段は、前記温度検出手段により検出された温度に応じた角度だけ、前記取り付け部材を回動させることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記回動手段による前記取り付け部材の回動の前後で、前記複数の液体吐出ヘッドの向きが変化しないように前記複数の液体吐出ヘッドを保持する保持手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記複数の液体吐出ヘッドは、所定の動作保証温度範囲内の温度にある状態で、前記複数のノズルから正常に液体を吐出することができるように構成されており、
前記取り付け部材は、少なくとも、前記動作保証温度範囲内の温度にある状態では、前記回動手段による回動が可能となっていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−52533(P2013−52533A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190550(P2011−190550)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】