説明

液体吐出記録ヘッドおよび液体吐出記録方法

【課題】 本発明は、複数の記録素子基板を副走査方向に配列して、一体化し、一度の走査で、複数行の画像形成が可能なより印字幅が広い液体吐出記録ヘッドである。本発明では、より高速、高精細の画像の記録を実現し、かつ画像品位の高い写真画質の印字が可能な液体吐出記録ヘッドを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は複数の記録素子が配列された複数の吐出口と、該複数の吐出口のそれぞれに対向して配置され、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための複数の記録素子を有した記録素子基板を複数個配列して一体化した液体吐出記録ヘッドである。さらに、本発明は配列された複数の記録素子基板の隣接する2つの記録素子が互いに重複する重複領域を有する液体吐出記録ヘッドである。そして、本発明によれば、前記重複領域が配列された記録素子の端部に位置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録紙に対して液体を吐出することにより記録を行う液体吐出記録装置に搭載される液体吐出記録ヘッドおよび該ヘッドを用いた液体吐出記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出記録装置は、いわゆるノンインパクト記録方式の記録装置である。高速な記録と様々な記録メディアに対して記録することが可能であり、記録時における騒音がほとんど生じないといった特徴を持つ。このようなことから、プリンタ、ワードプロセッサ、ファクシミリ、複写機などの記録機構を担う装置として広く採用されている。
【0003】
液体吐出記録は、微小な吐出口から微小な液滴を吐出させ、記録紙に対し記録を行うこともので、代表的な方法としては電気熱変換素子を用いた方法がある。このようなインクジェット記録は、一般に液滴を形成するためのノズルを持つ液体吐出記録ヘッドと、このヘッドに対してインクを供給する供給系とから構成される。電気熱変換素子を用いた液体吐出記録ヘッドでは、電気熱変換素子を加圧室内に設け、これに記録信号となる電気パルスを与えることにより記録液に熱エネルギーを与える。そして、そのときの記録液の相変化により生じる記録液の発泡(沸騰)時の気泡圧力を記録液の吐出に利用する。
【0004】
このような小さなインクを吐出口から吐出させる場合、インクの加熱に伴って膜沸騰により成長する気泡を吐出口を介して大気に連通させる方式(いわゆるバブルスルー方式)のものある。この方式は、例えば特開平4−10940号公報,特開平4−10941号公報,特開平4−10942号公報などに開示されている。
【0005】
旧来のバブルジェット(登録商標)方式によるプリントヘッドにおいては、吐出口から吐出されるインク滴の大きさを小さくするに連れて吐出口に連通するインク流路の通路断面積を小さくしなければならない。そのため、吐出効率が低下して吐出口から吐出されるインク滴の吐出速度が低下してしまう不具合が生ずる。インク滴の吐出速度が低下すると、その吐出方向が不安定になる上、プリントヘッドの休止時に水分の蒸発に伴ってインクの増粘化が起こり、吐出状態がさらに不安定となって初期吐出不良などが発生し、信頼性の低下を来す可能性がある。ここで、旧来のバブルジェット(登録商標)方式によるプリントヘッドとは、膜沸騰により成長する気泡を大気に連通させずにインク滴を吐出するプリントヘッドである。
【0006】
この点、気泡が大気に連通するいわゆるバブルスルー方式のプリントヘッドは、インク滴の大きさを吐出口の幾何学的形状のみで決定できる。そのため、小インク滴を吐出するのに適しており、温度などの影響を受けにくく、インク滴の吐出量が旧来のバブルジェット(登録商標)方式のプリントヘッドと比較して非常に安定しているという利点がある。そのため、バブルスルー方式のプリントヘッドでは、高精細かつ高階調の高品位プリント画像を比較的容易に得ることが可能である。
【0007】
数多くの記録装置が使用される近年では、より高速に高精細の画像の記録を実現するため、より印字幅が広いインクジェット記録ヘッドが要求されている。そこで、複数の記録素子基板を副走査方向に配列して、一体化し、一度の走査で、複数行の画像形成が提案されていた。
【0008】
例えば、特開平5−57965号公報に記載されるのように、複数の記録素子基板を副走査方向に配列する際に、隣接する記録素子基板の記録素子が互いに重複する重複領域を有するように、千鳥状に配列したものがある。
【0009】
しかしながら、特に10pl以下の小液滴ヘッドでは、印字デユーティが高くなると、両端部の記録素子から吐出された液滴が中央部に引き寄せられる端よれ現象が起こる(以下この現象を「端よれ」という。)。そのため、隣接する記録素子基板どうしのつなぎ部の画像にも白スジがあらわれて画像品位を劣化させていた。
【特許文献1】特開平4−10940号公報
【特許文献2】特開平4−10941号公報
【特許文献3】特開平4−10942号公報
【特許文献4】特開平5−57965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かかる不具合を防止するため、吐出口の配列方向両端側に位置する吐出口から吐出されるインク滴の大きさを大きくし、すなわちインク滴の慣性質量を増大させることが考えられる。それによって、この配列方向両端側に位置する吐出口から吐出されるインク滴の吐出軌跡の偏倚を抑制することが可能であるからである。しかしながら、インク滴を大きくすることは、高精細かつ高階調の画像を形成する上での障害になる。さらに、プリント媒体に対するインク滴の浸透が遅れる上、プリント媒体の膨潤に伴ってプリント画像の劣化を招来する可能性が高い。あるいは、吐出エネルギー発生部に対する駆動周波数を低く抑えることによって上述した不具合を緩和することも可能である。しかしながら、吐出エネルギー発生部に対する駆動周波数を低く設定した場合にはプリント速度が遅くなってしまい、高速でプリントアウトするというユーザのニーズに応えることができなくなってしまう。
【0011】
また、両端部の記録素子の配列間隔が中央部よりも長い複数の記録素子基板を副走査方向に配列して、一体化したヘッド構成も考えられるが、以下のような不充分な点があった。まず、従来の一体化したヘッドで+は、表やグラフ等を1回の走査(いわゆる「1パス」)で記録した場合、図3(c)のようにつなぎ領域の間隔d1に対応する大きな白筋(記録物において記録されない筋状の領域)が発生する。また、写真調の高画質プリントを複数回のパス高速で行った場合、図3(a)のように間隔d2の白筋が発生する。
【0012】
両端の記録素子の配列間隔が1パス印字のように、印字デユ―ティが高く大きい場合は、両端の記録素子の配列間隔は印字デユ―ティが高いほど端よれ量が増大するため、広げる必要がある。したがって、表やグラフ等を高速で記録する際には、通常1回の走査(1パス)で記録することが望ましい。両端の記録素子の配列間隔が1パス印字のように、印字デユ―ティが高く大きい場合は、両端部のヒータの配列感覚をより増大させることによって、図2(a)のように表やグラフ等を1回の走査で白筋が発生しない良好な画像を得ることができる。しかし、同時にユーザが写真調の高画質プリントを高速で行いたい場合は、不具合があった。すなわち、図2(b)のように表を記録するユーザが写真調の高画質プリントで白筋が発生しない良好な画像を得ることができるが、通常複数回の走査(マルチパス)で記録されるが、その場合印字デユ―ティが1パス時に比べて低くなる。そのため、端よれ量が減少して図3(d)のようにパスのつなぎ部分に間隔d4の黒筋(記録紙上に液体が重ねて吐出されて記録された筋状の色濃い領域)が発生するという問題があった(ここで、d1>d4である。)。
【0013】
また、両端の記録素子の配列間隔がマルチパス印字のように、印字デユ―ティが高くあまり大きくない場合は、両端部のヒータの配列感覚を若干増大させる。そうすることによって、逆に図2(b)のように写真調の高画質印字を複数回のマルチパス走査で白筋が発生しない良好な画像を得ることができる。しかし、ユーザが表やグラフ等を高速で記録する際には、その場合印字デユ―ティがマルチパス時に比べて高くなるので、端よれ量が増大して図3(b)のようにパスのつなぎ部分に間隔d3の白スジが発生するという問題があった。ここで、d1>d3である。
【0014】
そこで、本発明は、複数の記録素子基板を副走査方向に配列して、一体化し、一度の走査で、複数行の画像形成が可能なより印字幅が広い液体吐出記録ヘッドにある上記従来技術の問題点に着目してなされたものである。すなわち、このような液体吐出ヘッドにおいて、より高速、高精細の画像の記録を実現し、かつ画像品位の高い写真画質の印字が可能な液体吐出記録ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、複数の記録素子が配列された複数の吐出口と、該複数の吐出口のそれぞれに対向して配置され、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための複数の記録素子を有した記録素子基板を複数個配列して一体化した液体吐出記録ヘッドである。また、配列された複数の記録素子基板の隣接する2つの記録素子が互いに重複する重複領域を有する液体吐出記録ヘッドである。
【0016】
そして、前記重複領域が配列された記録素子の端部に位置し、前記重複領域の吐出口の配列間隔は、その配列方向中央部に位置する前記吐出口の配列間隔よりも広く設定されていることを特徴とする液体吐出記録ヘッドを提供することにより上記目的を実現する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明は、複数の記録素子基板を副走査方向に配列して、一体化し、一度の走査で、複数行の画像形成が可能なより印字幅が広いインクジェット記録ヘッドを前提とした発明である。そして、本発明では、記録素子基板の配列方向両端部に位置する吐出口および吐出エネルギー発生部の配列間隔を、その配列方向中央部に位置する吐出口および吐出エネルギー発生部の配列間隔よりも広く設定した。その結果、本発明によれば、最終的にプリント媒体に到達する液滴の位置を所期の位置に修正することができる。そして、印字のモードに応じて、重複領域のノズルを選択的に使用することによって、べたプリントや写真調のプリントを行った場合でも白筋が発生しない高精細かつ高階調の高品位プリント画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明のインクジェット記録装置M4000は、図4に示すように、例えば、写真画質の記録に対応して6色分の記録ヘッドが具備されている。記録ヘッドH1000Bkは、ブラックインク用の記録ヘッドである。また、記録ヘッドH1000Cはシアンインク用、記録ヘッドH1000Mマゼンタインク用、記録ヘッドH1000Yはイエローインク用、記録ヘッドH1000LCはライトシアンインク用、記録ヘッドH1000LMはライトマゼンタインク用である。これらの記録ヘッドH1000を、記録装置本体M4000に載置されているキャリッジM4001の位置決め手段及び電気的接点M4002によって固定支持する。
【0020】
そして、これらの記録ヘッドを、例えば、副走査方向(キャリッジ移動方向)に往復移動し、先述の駆動回路によって制御し、記録媒体K1000に対して記録を行うものである。
【0021】
記録ヘッドH1000は、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じせしめるための熱エネルギーを生じせしめるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体を用いて記録を行うバブルジェット(登録商標)方式のサイドシュータ型とされる記録ヘッドである。
【0022】
図5に示す記録ヘッド1000は、図6の分解斜視図に示すように、記録素子ユニットH1001とインク供給ユニットH1002のインク供給部材H1500から構成される。記録素子ユニットH1001は、記録素子基板H1100、ベースプレートH1200、電気配線基板H1300、フィルター部材(不図示)で構成されている。また、インク供給ユニットH1002は、インク供給部材H1500、ジョイントゴムH1700、チューブH1802、インクタンクH1800から構成されている。
【0023】
インク供給部材H1500は、例えば、樹脂成形により、共通液室H1501と、Z方向基準面H1502とが形成されている。また、インクタンクH1800からインクを供給する部分には、ジョイントゴムH1700が具備され、ジョイント部からのインクの蒸発を防止している。
【0024】
インクタンクH1800から伸びるインク供給チューブH1802とインク供給ユニットH1500の接続は、チューブ先端に設けられたニードル(不図示)が、ジョイントゴムH1700を貫通することにより行われる。そして、吐出時に使用されるインクは、インクタンクH1800よりインク供給チューブH1802を通って、インク供給ユニットH1500の共通液室H1501に供給され、フィルター部材(不図示)を介し、記録素子ユニットH1001に供給される。
【0025】
そして、先述の図6に示した通り、記録ヘッドH1000は、記録素子ユニットH1001をインク供給部材H1500に結合することにより完成する。
【0026】
結合は以下のように行われる。
【0027】
インク供給部材H1500の開口部と記録素子ユニットH1001を封止剤H1503により封止し、共通液室H1501を密閉する。そして、インク供給部材のZ基準H1502に記録素子ユニットH1001のZ基準H1502を、例えば、ビスH1900等により位置決め固定する。封止剤H1503は、耐インク性があり、かつ、常温で硬化し、かつ、異種材料間の線膨張差に耐えられる柔軟性のある封止剤が望ましい。
【0028】
第1のプレートH1200は、例えば、厚さ0.5〜10mmのアルミナ(Al)材料で形成されている。第1のプレートH1200には、記録素子基板H1100にインクを供給するためのインク供給口が形成されている。記録素子基板H1100のインク供給口はベースプレートH1200のインク供給口に対応し、かつ、記録素子基板H1100がベースプレートH1200に対して位置精度良く接着固定される。
【0029】
記録素子基板H1100は、図5に示すようにベースプレート上H1200に千鳥状に配置され、同一色による幅広の記録を可能としている。例えば、ノズル群の長さが1インチ+αの4つの記録素子基板H1100a、H1100b、H1100c、H1100dを千鳥状に配置し、4インチ幅の記録を可能にしている。
【0030】
図7(a)は、記録素子基板1100の構成を説明する図であり、図7(b)は図7(a)に示すA−A断面図である。記録素子基板H1100は、例えば、厚さ0.5〜1mmの薄膜のSi基板H1108で形成されている。また、インク流路として長溝状の貫通口からなるインク供給口H1101が形成され、インク供給口H1101の両側に電気熱変換素子H1102がそれぞれ1列ずつ千鳥状に配列されている。なお、これらの前記電気熱変換素子H1102、及び、Al等の電気配線は成膜技術により形成されている。また、該電気配線に電力を供給するために電極H1103が設けられている。前記インク供給口H1101は、前記Si基板H1108の結晶方位を利用して、異方性エッチングを行う。ウエハー面に<100>、厚さ方向に<111>の結晶方位を持つ場合、アルカリ系(KOH、TMAH、ヒトラジン等)の異方性エッチングにより、約54.7度の角度でエッチングが進行する。この方法を用いて、所望の深さにエッチングする。
【0031】
また、前記Si基板H1108上には、ノズルプレートH1110が具備されており、ノズルプレートH1110は、電気熱変換素子H1102に対応したインク流路H1104、ノズルH1105、発泡室H1107がフォトリソ技術により形成されている。また、前記ノズルH1105は前記電気熱変換素子H1102に対向するように設けられており、インク供給口H1101から供給されたインクを電気熱変換素子H1102により気泡を発生させてインクを吐出させるものである。
【0032】
また、各記録素子基板の吐出口群の端部は、千鳥状に隣接する記録素子基板のノズル群の端部と、副走査方向(キャリッジ移動方向)に対して、重複する領域H1109(L)を設け、各記録素子基板による印刷に隙間が生じることを防止している。
【0033】
図1は、記録素子基板間の重複する領域1109(L)を有したノズル配置を示す平面図である。図1に示すように、記録素子基板H1100aは、上端部H111a、中央部H1110a、下端部H1112aの3つの部分からなり、記録素子基板H1100a、H1100b、H1100c、H1100dが千鳥状に配置されている。記録素子基板間の重複する領域H1109(L)は上端部ノズル領域H1111と下端部ノズル領域H1112で構成されている。また、H1006のノズル郡の吐出量は4plであり、ノズルピッチが600dpiで形成された奇数、偶数2列のノズルが長手方向に互いに1200dpiずらして配列されている。
【0034】
次に、上記の重複領域H1109、通常(重複領域以外)ノズル領域H1110、の記録素子の間隔について説明する。
【0035】
図1の、H1110a〜dの記録素子間d0、H1111a〜dの記録素子間d1、H1112a〜dの記録素子間d、は本実施例では、それぞれ、42.3μm、44.3μm、43.3μmとなっている。
【0036】
本実施例では、一方の列のノズルH1105、電気熱変換体H1102の配列方向上端から数えて20個目までは、d1の間隔、すなわち600dpi間隔よりも2μmだけ広い44.3μmに設定されている。また、下端から数えて20個目までは、dの間隔、すなわち600dpi間隔よりも1μmだけ広い43.3μmに設定され、それ以外の中央側の電気熱変換体H1102の間隔d0は600dpi(42.3μm)間隔に設定されている。従って、その配列方向上端に位置するH1111は、すべてのノズルH1105が600dpi間隔で配列している場合よりも、40μmだけ余計に間隔が拡がる方向に位置がずれていることになる。また、下端に位置するH1112は、すべてのノズルH1105が600dpi間隔で配列している場合よりも、20μmだけ余計に間隔が拡がる方向に位置がずれていることになる。また、他方の列は、一方の列に対してこれらのH1105の配列間隔の1/2だけずらして配置されており、従って2列合わせたH1105の配列密度はほぼ1200dpiとなる。本実施例ではこれら2つのノズル列の間の間隔(左右の列の中心間距離)を21μmに設定している。
【0037】
このようなインクジェット方式のプリントヘッドH1000をいわゆるべたプリントで1回の走査でプリント媒体に対して行った場合、上述したd0,d1,dの間隔を600dpi間隔ですべて等しく設定した従来のプリントヘッドでは、白筋が発生する。そして、その白筋の間隔は70μm程度にも達することが判明した。ここで、べたプリントキャリッジM4001と共にプリント媒体に沿って高速で走査移動させつつすべての吐出口H1105からインク滴を連続的に吐出させる記録方法である。また、写真調の印字を行う際には、複数回のパスで画像を形成する多パス(マルチパス)を用いるが、その場合はパスのつなぎ部分がうっすら薄くなりムラに見える印字結果となる。本例では、4パスで印字を行い、メディアはキヤノン製PR−101紙を用いている。ムラの間隔を測定したところ、約40μmであった。この理由は、発明者が検討したところ、印字デューティが低いと端ヨレ量(白筋の1/2の幅)が小さくなることによるものである。以下にデータを示す。100%がノズル幅9のベタ印字に相当し、4パスの最大デューティが25%に相当する。
【0038】
【表1】

表1は、印字デューティと端ヨレ量の関係である。このことから、本実施例では、一方の列のノズルH1105、電気熱変換体H1102の配列方向上端から数えて20個目までは、d1の間隔(すなわち600dpi間隔よりも2μmだけ広い44.3μm)に設定されている。また、下端から数えて20個目までは、dの間隔、すなわち600dpi間隔よりも1μmだけ広い43.3μmに設定される。さらに、それ以外の中央側の電気熱変換体H1102の間隔d0は600dpi(42.3μm)間隔に対して余計に間隔が拡がる方向に位置をずらした。
【0039】
本実施例では、印字のモードに応じて重複領域1109(L)にて使用するノズルを選択する。すなわち、1回の走査で高速に印字する場合は、図1のH1112b、H1112cのノズルが重複領域で選択されるノズルである。また、写真調プリント印字の際には、逆に図1のdH1112a、H1112b、H1112cが重複領域で選択されるノズルである。そのため、ノズルH1110a〜d部の配列方向中央側で発生する減圧雰囲気により、それらの配列方向両端部にそれぞれ位置するノズルH1006から吐出されるインク滴はそれらの配列方向中央側に引き寄せられる。その結果、最終的にそれらの配列方向中央側に位置するノズルH1006から吐出されてプリント媒体に到達したインク滴の間隔とほぼ同じ間隔に修正される。この結果、本発明では、従来では1回のキャリッジM4000の走査移動毎に発生していた白筋などの発生を未然に防止することができる。
【0040】
このような1パスの高速プリントと、写真調プリントの実施に際し、プリント媒体とプリントヘッドH1000のH1106のノズル郡との間隔を1.6mmに設定し、キャリッジM4000の走査移動速度を毎秒101.6mmに設定した。このときの、プリントヘッドのノズルの応答周波数は24khzである。また、このときのインク滴の吐出速度は10〜15m/sであった。
【0041】
なお、本実施例では、1回で走査する間での、重複領域1109(L)については上記ように白筋の発生を防ぐことがでできるが、場合によってはH111a,H1112dのつなぎ領域で若干画像が乱れる場合が生じることがある。例えば、1パスの高速プリントの際には、H112dのヒータ間隔がH111aのヒータ間隔よりも狭いので、つなぎ領域で白筋が発生する。また、写真調のプリント印字をする場合は、H111aのヒータ間隔がH112dのヒータ間隔よりも大きいので、黒筋が発生することになる。このような場合には、前者の1パスの高速プリントの際は、紙送り量を若干小さくして図2白(a)のように筋の発生を防止できる。
【0042】
また、後者の写真調のプリント際は、H1112dで使用するノズルを若干減少させることで、図2(b)のように黒筋の発生を防ぐことは可能である。
【実施例2】
【0043】
図1において、H111a,H112a、H111c,H112cのヒータ間隔がともにd1、H111b、H112b、H111d、H1112dのヒータ間隔がともにd2となっている場合である。本実施例の場合は、本実施例では、印字のモードに応じて重複領域1109(L)にて使用するノズルを選択は以下のようにする。すなわち、1回の走査で高速に印字する場合は、図1のH1112a、H1111c、H1112cが重複領域で選択されるノズルである。また、写真調プリント印字の際には、逆に図1のH1111b、H1112b、H1111dが重複領域で選択されるノズルである。そのため、ノズルH1110a〜d部の配列方向中央側で発生する減圧雰囲気により、それらの配列方向両端部にそれぞれ位置するノズルH1006から吐出されるインク滴はそれらの配列方向中央側に引き寄せられる。その結果、最終的にそれらの配列方向中央側に位置するノズルH1006から吐出されてプリント媒体に到達したインク滴の間隔とほぼ同じ間隔に修正される。この結果、従来では1回のキャリッジM4000の走査移動毎に発生していた白筋などの発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態におけるインクジェット記録ヘッドのノズル配置を説明するための図である。
【図2】図2(a)から図2(b)は、従来の液体吐出記録ヘッドとそれにより得られた記録結果を示す図である。
【図3】図3(a)から図3(d)は、従来の液体吐出記録ヘッドとそれにより得られた記録結果を示す図である。
【図4】本発明の実施形態におけるインクジェット記録装置を説明する図である。
【図5】本発明の実施形態における記録ヘッドを説明する図である。
【図6】本発明の実施形態における記録ヘッドの分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態における記録素子基板を説明する図である。図7(a)は斜視図、図7(b)は図7(a)のA−A断面図である。
【符号の説明】
【0045】
H1000 液体吐出記録ヘッド
H1001 記録素子ユニット
H1002 インク供給ユニット
H1100 記録素子基板
H1101 インク供給口
H1102 電気熱変換素子
H1103 電極
H1104 インク流路
H1105 ノズル
H1106 通常ノズル群
H1107 発泡室
H1108 Si基板
H1109 重複領域
H1110 中央部ノズル
H1111 上端部ノズル
H1112 下端部のノズル
H1200 ベースプレート
H1300 電気配線基板
H1500 インク供給部材
H1501 共通液室
H1800 インクタンク
M4000 インクジェット記録装置
M4001 キャリッジ
M4002 電気的接点
K1000 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子が配列された複数の吐出口と、該複数の吐出口のそれぞれに対向して配置され、前記複数の吐出口から液体を吐出させるための複数の記録素子を有した記録素子基板を複数個配列して一体化した液体吐出記録ヘッドであって、配列された複数の記録素子基板の隣接する2つの記録素子が、互いに重複する重複領域を有する液体吐出記録ヘッドにおいて、
前記重複領域は、配列された記録素子の端部に位置し、前記重複領域の吐出口および前記記録素子の配列間隔は、該配列方向の中央部に位置する前記吐出口および前記記録素子の配列間隔よりも広く設定されていることを特徴とする液体吐出記録ヘッド。
【請求項2】
前記隣接する2つの重複領域の記録素子の配列間隔が、互いに異なっていることを特徴とする請求項1記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項3】
前記複数の記録素子基板は、当該複数の記録素子基板の配列方向の両端部に位置する前記吐出口の配列間隔が、前記配列方向の中央部に位置する前記吐出口の配列間隔よりも広く設定されていることを特徴とする請求項2記載のインクジェット記録ヘッド。
【請求項4】
前記複数の記録素子基板は、前記配列方向の両端部に位置する前記吐出口の配列間隔が、前記重複領域で互いに異なっていることを特徴とする請求項3記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項5】
液滴の吐出体積が10pl以下であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の液体吐出記録ヘッド。
【請求項6】
請求項3記載の液体吐出記録ヘッドを用いて記録を行う液体吐出記録方法において、1パスの高速プリント記録をする場合に、紙送り量を複数個配列した記録素子基板の長さよりも小さくすることを特徴とする液体吐出記録方法。
【請求項7】
請求項4記載の液体吐出記録ヘッドを用いて記録を行う液体吐出記録方法において、複数パスの写真プリント記録をする場合、複数個配列した記録素子基板における前記吐出口の配列間隔が短い方の前記重複領域の前記吐出口からの液体の吐出を間引くことを特徴とする液体吐出記録方法。
【請求項8】
液滴の吐出体積が10pl以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の液体吐出記録ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−119930(P2008−119930A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305518(P2006−305518)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】