説明

液体噴射ヘッドの製造方法

【課題】接続端子とリード電極との接続時に、接続不良の発生の少ない液体噴射ヘッドの製造方法を提供すること。
【解決手段】圧着ツール100とフレキシブルケーブル39とが固定された状態で、フレキシブルケーブル39の接続端子と圧電素子35から引き出された個別素子電極端子48および共通素子電極端子51とを押圧するので、圧着ツール100の先端部101で押圧する際に、個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に対する接続端子の位置がずれにくくできる。個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に対して接続端子の位置がずれていない状態で接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51とを固定するので、接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続不良の少ない記録ヘッド3の製造方法を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線基板を備えた液体噴射ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドとして、例えば、ノズル開口と連通する圧力室の一部を弾性膜で構成し、弾性膜を圧電素子により変形させて圧力室のインクを加圧して、ノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッド等が知られている。液体噴射ヘッドでは、高解像度とともに小型化が要求されており、より小さな複数の圧電素子を高密度で配置する必要がある。それに伴い、異なる圧電素子から引き出されるリード電極間の距離も短くなる。
圧電素子のリード電極には、配線部材としてのフレキシブル配線基板が接続される。フレキシブル配線基板は、その先端が折り曲げられて、接続端子がリード電極に接続され、リード電極から立ち上がるように引き出されている(例えば、特許文献1)。
フレキシブル配線基板の接続端子とリード電極とは、半田、異方性導電接着剤等を用いて接続される。あるいは、非導電接着剤を用いて、接続端子とリード電極とを接触させて固定する方法が用いられる。いずれの場合においても、圧着ツールを用いてフレキシブル配線基板をリード電極に押圧して接続を行う。
液体噴射ヘッドの製造方法において、異なる圧電素子から引き出されるリード電極間の距離が短くなるほど、圧着ツールを用いてフレキシブル配線基板の接続端子をリード電極に接続する際に、リード電極に対する接続端子の位置精度が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−167955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧着ツールでフレキシブル配線基板を押した際に、フレキシブル配線基板のねじれ、たわみ、そり等が生じ、接続端子とリード電極との位置がずれる。位置がずれることによって、接続端子とリード電極との接続不良が起こりやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]
フレキシブル配線基板と圧電素子とを備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、基部と圧力の加わる先端部とを備えた圧着ツールを用いて、前記フレキシブル配線基板と前記圧着ツールとを固定する工程と、前記フレキシブル配線基板の固定された前記先端部によって、前記フレキシブル配線基板の接続端子と前記圧電素子から引き出された電極とを押圧しながら、前記接続端子と前記電極とを接続し、接続部を固定する工程とを含むことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【0007】
この適用例によれば、圧着ツールとフレキシブル配線基板とが固定された状態で、フレキシブル配線基板の接続端子と圧電素子から引き出された電極とを押圧するので、圧着ツールの先端部で押圧する際に、電極に対する接続端子の位置がずれにくい。電極に対して接続端子の位置がずれていない状態で接続端子と電極とを固定するので、接続端子と電極との接続不良の少ない液体噴射ヘッドの製造方法が得られる。
【0008】
[適用例2]
上記液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記フレキシブル配線基板と前記圧着ツールとの固定は、前記フレキシブル配線基板を前記基部の側面から前記先端部を覆いながら、前記基部の他の側面にかけて巻きつけて行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
この適用例では、フレキシブル配線基板を基部の側面から先端部を覆いながら、基部の他の側面にかけて巻きつけて固定するので、先端部によって押圧した際に、フレキシブル配線基板がよりずれにくい。したがって、電極に対する接続端子の位置がよりずれにくく、接続不良のより少ない液体噴射ヘッドの製造方法が得られる。
【0009】
[適用例3]
上記液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記先端部の圧力の加わる面の面積が、前記基部の圧力の伝わる断面積より狭いことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
この適用例では、先端部の圧力の加わる面の面積が、基部の圧力の伝わる断面積より狭いので、基部に加える力が小さくても、先端部に加わる圧力が大きくなり、圧着ツールが変形しにくい液体噴射ヘッドの製造方法が得られる。
【0010】
[適用例4]
上記液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記フレキシブル配線基板と前記圧着ツールとの固定を吸引吸着によって行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
この適用例では、フレキシブル配線基板と圧着ツールとの固定を吸引吸着によって行うので、接続端子と電極との接続部を固定する工程が終了した後に、吸引をやめることでフレキシブル配線基板と圧着ツールとの分離が容易で、同じ圧着ツールを使った次の液体噴射ヘッドの製造までの時間が短縮した液体噴射ヘッドの製造方法が得られる。
【0011】
[適用例5]
上記液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記接続部の固定を、非導電性接着剤によって行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
この適用例では、非導電性接着剤による固定であっても、先端部の力の加わる面の面積が、基部の力の伝わる断面積より狭いので、基部に加える力が小さくても、先端部に加わる圧力が大きくなり、圧力によって接続端子と電極との接続がより確実な状態で接続部の固定が行える液体噴射ヘッドの製造方法が得られる。
【0012】
[適用例6]
上記液体噴射ヘッドの製造方法であって、前記接続部の固定を、異方導電性接着剤によって行うことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
この適用例では、圧着ツールに加える力が小さくても、異方導電性接着剤に含まれる導電粒子によって、接続端子と電極との接続が確実な液体噴射ヘッドの製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンターの構成を示す概略構成図。
【図2】記録ヘッドの構成を示す分解概略斜視図。
【図3】ヘッドユニットの構成を示す分解概略斜視図。
【図4】ヘッドユニットの概略断面図。
【図5】圧電素子の電極端子の配置図。
【図6】フレキシブルケーブルと個別素子電極端子との接続方法を表す概略斜視図。
【図7】フレキシブルケーブルと個別素子電極端子との接続の様子を表す概略断面図。
【図8】フレキシブルケーブルと個別素子電極端子との接続の様子を表す概略断面図。
【図9】フレキシブルケーブルと個別素子電極端子との接続の様子を表す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
また、以下の説明は、本発明の液体噴射ヘッドとして、インクジェット式プリンター(液体噴射装置の一種で、以下単にプリンター1という)に搭載されるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッド3という)を例に挙げて行う。
【0015】
まず、プリンター1の概略構成について、図1を参照して説明する。図1は、プリンター1の構成を示す概略構成図である。
図1において、プリンター1は、記録紙等の記録媒体2の表面へ液体のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。
プリンター1は、インクを噴射する記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送するプラテンローラー6等を備えている。ここで、インクは、インクカートリッジ7に貯留されている。インクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。
なお、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、当該インクカートリッジ7からインク供給チューブを通じて記録ヘッド3に供給される構成を採用することもできる。
【0016】
キャリッジ移動機構5は、タイミングベルト8を備えている。このタイミングベルト8は、DCモーター等のパルスモーター9により駆動される。パルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。
【0017】
図2は、記録ヘッド3の構成を示す分解概略斜視図である。実施形態における記録ヘッド3は、ケース15と、複数のヘッドユニット16と、ユニット固定板17と、ヘッドカバー18とにより概略構成されている。
ケース15は、内部にヘッドユニット16や図示しない集束流路を収容する箱体状部材であり、上面側に針ホルダー19が形成されている。この針ホルダー19は、インク導入針20を取り付けるための板状部材であり、実施形態においてはインクカートリッジ7のインクの色に対応させて8本のインク導入針20がこの針ホルダー19に横並びに配設されている。
インク導入針20は、インクカートリッジ7内に挿入される中空針状の部材であり、先端に開設された図示しない導入孔から図1に示したインクカートリッジ7内に貯留されたインクをケース15内の集束流路を通じてヘッドユニット16側に導入する。
【0018】
また、ケース15の底面側には、4つのヘッドユニット16が、主走査方向に横並びに位置決めされた状態で各ヘッドユニット16に対応した4つの開口部170を有する金属製のユニット固定板17に接合されると共に、同じく各ヘッドユニット16に対応する4つの開口部180が開設された金属製のヘッドカバー18によってケース15に固定される。
【0019】
ヘッドユニット16は、フレキシブル配線基板としてのフレキシブルケーブル39を備えている。フレキシブルケーブル39は、ヘッドユニット16を駆動する駆動電圧を、図1に示したプリンター1から供給するものである。
例えば、フレキシブルケーブル39として、COF(Chip On Film)基板を用いることができる。
【0020】
図3は、ヘッドユニット16の構成を示す分解概略斜視図であり、図4は、ヘッドユニット16の概略断面図である。
なお、便宜上、各部材の積層方向を上下方向として説明する。
【0021】
図3において、実施形態におけるヘッドユニット16は、ノズルプレート22、流路基板23、共通液室基板24、コンプライアンス基板25等から概略構成され、これらの部材を積層した状態でユニットケース26に取り付けられている。
【0022】
ノズルプレート22は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル27を列状に開設した板状の部材である。実施形態では、300dpiに対応するピッチで300個のノズル27を列設することでノズル列が構成されている。実施形態においては、当該ノズルプレート22に2つのノズル列が形成されている。ここで、2つのノズル列は、ノズル27の並んだ方向にノズル27間のピッチの半分だけずれて形成されている。
ノズルプレート22は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板またはステンレス鋼等から形成できる。
【0023】
流路基板23は、その上面(共通液室基板24側の面)に二酸化シリコンからなる極薄い弾性膜30が熱酸化によって形成されている。
図4において、流路基板23には、異方性エッチング処理によって複数の隔壁で区画された圧力室31が各ノズル27に対応して複数形成されている。したがって、圧力室31も列状に形成され、ノズル27の並んだ方向にノズル27間のピッチの半分だけずれている。
流路基板23における圧力室31の列の外側には、共通液室32の一部を区画する連通空部33が形成されている。この連通空部33は、インク供給路34を介して各圧力室31と連通している。
また、圧力室31毎に、弾性膜30を変形させて圧力室31のインクを加圧する圧電素子35が形成されている。
【0024】
図5は、圧電素子35の電極端子の配置図である。
図4および図5において、流路基板23の上面の弾性膜30上には、共通素子電極46(46aおよび46b)と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる図示しない圧電体層と、金属からなる個別素子電極47(47aおよび47b)とを順次積層することで形成された圧電素子35が圧力室31毎に形成されている。
共通素子電極46は、例えば、白金(Pt)などの金属やルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO)などの金属酸化物からなる。また、個別素子電極47は、例えば、Au、Irなどの金属からなる。
【0025】
図5において、濃いハッチングで示す部分は個別素子電極47a,47bと、これらに導通する圧電素子35から引き出された電極としての個別素子電極端子48(48aおよび48b)であり、薄いハッチングで示す部分は共通素子電極46a,46bと、これらに導通する共通素子電極配線部49である。
図5では、紙面に向かって上下方向がノズル列設方向および圧電素子列設方向であり、ノズル列2列分に対応する構成が図示されている。実施形態において、個別素子電極端子48および共通素子電極配線部49の材料としては、白金または金を用いることができる。
【0026】
圧電素子35は、所謂撓みモードの圧電素子であり、圧力室31の上部を覆うように形成されている。実施形態において、2列のノズル列に対応して2列の圧電素子列が、ノズル列方向で見て圧電素子35が互い違いとなる状態でノズル列方向に並設されている。
なお、弾性膜30上に形成される電極が個別素子電極47で、圧電体層上に形成される電極が共通素子電極46である構成を採用することもできる。
【0027】
実施形態においては、圧力室31の一部を区画する弾性膜30上に各圧電素子35に共通な共通素子電極46が、ノズル列方向に沿って同方向に長尺な平面視矩形状に連続的に形成され、その上に圧電体層、個別素子電極47が順次積層されて圧電素子35毎にパターニングされている。個別素子電極47の長手方向の寸法は、共通素子電極46の短尺方向の幅よりも少し長くなっている。
また、個別素子電極47の幅方向(短尺方向)の寸法は、圧電素子35の幅と同程度に揃えられている。隣り合うノズル列の間には、各個別素子電極47に対応して当該電極47に導通する平面視短冊状の個別素子電極端子48が形成されている。この個別素子電極端子48の長尺方向の寸法は、隣の共通素子電極46に接触しない程度の長さに設定されている。また、個別素子電極端子48の幅方向(短尺方向)の寸法は、個別素子電極47の幅の寸法に揃えられている。そして、一方(図において左側)のノズル列に対応する個別素子電極端子48aと、他方(図において右側)のノズル列に対応する個別素子電極端子48bとは、ノズル列方向において互い違いに並ぶように一定の間隔で列状に配置されている。これらの個別素子電極端子48は、フレキシブルケーブル39の図示しない接続端子と電気的に接続される部分である。
【0028】
また、各共通素子電極46a,46bのノズル列方向両側には、共通素子電極配線部49がそれぞれ形成されている。共通素子電極配線部49は、ノズル列方向に直交する方向に沿って各ノズル列に対応する各共通素子電極46a,46bに渡って延びており、これらの共通素子電極46a,46bに共通な電極配線部となっている。また、この共通素子電極配線部49は、枝電極部50を通じて各共通素子電極46と導通している。また、この共通素子電極配線部49において、個別素子電極端子48の列設方向両側に位置する部分、即ち、図5において破線の円で囲まれた部分が、フレキシブルケーブル39の接続端子と接合される、圧電素子35から引き出された電極としての共通素子電極端子51(51aおよび51b)である。
【0029】
圧電素子35の個別素子電極47、共通素子電極46からはそれぞれ個別素子電極端子48、共通素子電極配線部49が図4に示した弾性膜30上に延出されており、これらの電極配線部の電極端子に相当する部分に、フレキシブルケーブル39の接続端子が電気的に接続される。そして、各圧電素子35は、フレキシブルケーブル39の接続端子を通じて個別素子電極47および共通素子電極46間に駆動電圧が印加されることにより変形するように構成されている。
実施形態において、弾性膜30、各電極46,47を含む圧電素子35および圧電素子35の各電極に導通する個別素子電極端子48、共通素子電極配線部49が、アクチュエーターユニットに相当する。
【0030】
図3および図4において、圧電素子35が形成された流路基板23上には、厚さ方向に貫通した貫通空部36を有する共通液室基板24が配置される。
共通液室基板24の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路基板23の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることがより好ましい。例えば、流路基板23がシリコン単結晶基板の場合と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成することができる。
【0031】
また、この共通液室基板24における貫通空部36は、流路基板23の連通空部33と連通して共通液室32の一部を区画する。また、共通液室基板24には、圧電素子35に対向する領域に当該圧電素子35の駆動を阻害しない程度の大きさの圧電素子収容空部37が形成されている。
さらに、共通液室基板24において、隣り合う圧電素子列の間には、基板厚さ方向を貫通した配線空部38が形成されている。この配線空部38内には、平面視において、圧電素子35の図5に示した個別素子電極端子48や共通素子電極端子51等が配置される。
【0032】
また、共通液室基板24の上面側には、コンプライアンス基板25が配置される。このコンプライアンス基板25における共通液室基板24の貫通空部36に対向する領域には、インク導入針20側からのインクを共通液室32に供給するためのインク導入口40が厚さ方向に貫通して形成されている。
また、このコンプライアンス基板25の貫通空部36に対向する領域のインク導入口40および後述する貫通口25a以外の領域は、極薄く形成された可撓部41となっており、この可撓部41によって貫通空部36の上部開口が封止されることで共通液室32が区画形成される。そして、この可撓部41は、共通液室32内のインクの圧力変動を吸収するコンプライアンス部として機能する。さらに、コンプライアンス基板25の中央部には、貫通口25aが形成されている。この貫通口25aは、ユニットケース26の空部44と連通する。
【0033】
ユニットケース26は、インク導入口40に連通してインク導入針20側から導入されたインクを共通液室32側に供給するためのインク導入路42が形成されると共に、可撓部41に対向する領域にこの可撓部41の膨張を許容する凹部43が形成された部材である。このユニットケース26の中心部には、厚さ方向に貫通した空部44が開設されており、この空部44内にフレキシブルケーブル39の一端側が白抜き矢印で示した挿入方向に挿通されて、圧電素子35から引き出された個別素子電極端子48および共通素子電極端子51と接続され、接着剤200によって固定されている。
ユニットケース26の材料としては、例えば、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。
【0034】
フレキシブルケーブル39は、ポリイミド等の矩形状のベースフィルムの一方の面に圧電素子35への駆動電圧の印加を制御するための制御IC52が実装されると共に、この制御IC52に接続される個別電極配線のパターンが形成されている。
また、フレキシブルケーブル39の一端部には、図示しない接続端子が、圧電素子35から引き出された各個別素子電極端子48に対応して複数列設され、他端部には、プリンター1本体側からの信号を中継する基板の基板端子部に接続される他端側接続端子が複数列設されている。そして、フレキシブルケーブル39は、両端部の接続端子以外の配線パターンや制御IC52の表面がレジストで覆われている。
【0035】
図3および図4において、個別素子電極端子48および図5に示した共通素子電極端子51と接続されるフレキシブルケーブル39の一端側390は、個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に向かって凸になるように折り曲げられている。より詳しくは、フレキシブルケーブル39の本体391から先端392が稜線となるように山型に折り曲げられ、端393がフレキシブルケーブル39の挿入方向とは逆方向に折り返されている。
【0036】
ノズルプレート22、流路基板23、共通液室基板24、コンプライアンス基板25およびユニットケース26は、接着剤や熱溶着フィルム等を間に配置して積層した状態で加熱することで相互に接合される。
【0037】
以上のように構成されたヘッドユニット16を備える記録ヘッド3は、各ノズルプレート22がプラテンローラー6に対向した状態でノズル列方向が副走査方向と一致するようにキャリッジ4に取り付けられる。そして、各ヘッドユニット16は、インクカートリッジ7からのインクを、インク導入路42を通じてインク導入口40から共通液室32側に取り込み、共通液室32からノズル27に至るインク流路をインクで満たす。
そして、フレキシブルケーブル39からの駆動電圧を圧電素子35に供給してこの圧電素子35を撓み変形させることによって、対応する圧力室31内のインクに圧力変動を生じさせ、このインクの圧力変動を利用してノズル27からインクを噴射させる。
【0038】
以下に、記録ヘッド3の製造方法について、フレキシブルケーブル39の接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続方法を中心に述べる。
記録ヘッド3の製造方法は、フレキシブルケーブル39と圧着ツール100とを固定する工程と、フレキシブルケーブル39の接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51とを接続し、接続部を固定する工程とを含む。
【0039】
図6に、フレキシブルケーブル39と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続方法を表す概略斜視図を示した。特に、ヘッドユニット16は簡略化して示している。図5に示した個別素子電極端子48および共通素子電極端子51は省略してあるが、これらの端子は、配線空部38および空部44に露出している。
また、図7〜図9は、フレキシブルケーブル39と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続の様子を表す図4に相当する概略断面図である。
【0040】
図6において、フレキシブルケーブル39と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続は、圧着ツール100を用いて、フレキシブルケーブル39と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51とに圧力を加えて行う。
圧着ツール100は、基部104と先端部101とを備え、先端部101は、山型に形成されている。したがって、圧着ツール100の基部104から先端部101に向けて圧力を加えた場合、先端部101の圧力の加わる面の面積が、基部104の圧力の伝わる断面積より狭くなっている。
個別素子電極端子48および共通素子電極端子51と接続されるフレキシブルケーブル39の一端を圧着ツール100の先端部101の山型に倣って取り付け、ヘッドユニット16の空部44および配線空部38に白抜き矢印で示した挿入方向から挿入する。
【0041】
以下に、図6を参照してフレキシブルケーブル39と圧着ツール100とを固定する工程について詳しく説明する。
フレキシブルケーブル39と圧着ツール100とを固定する工程は、フレキシブルケーブル39を基部104の側面103から先端部101を覆いながら、基部104の他の側面である側面102にかけて巻きつけて行う。
より具体的には、フレキシブルケーブル39の本体391から先端392が稜線となるように山型に折り曲げられ、端393がフレキシブルケーブル39の挿入方向とは逆方向に折り返されて巻きつけられている。
【0042】
また、圧着ツール100は、内部に排気孔110を備えている。排気孔110は、基部104から圧着ツール100の先端部101近くにかけて一つまたは複数設けられており、先端部101付近では圧着ツール100の側面102,103に向けてさらに枝分かれして開口している。フレキシブルケーブル39が側面102,103の排気孔110の開口111に密着した状態で、排気孔110内を実線矢印方向に排気すると、フレキシブルケーブル39が圧着ツール100に吸引吸着される。
圧着ツール100の材質は、金属、セラミック等を用いることができる。セラミックは加わる力に対して変形が小さく好ましい。例えば、窒化アルミを用いることができる。
【0043】
次に、フレキシブルケーブル39の接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51とを接続し、接続部を固定する工程について説明する。
図7において、個別素子電極端子48および共通素子電極端子51には予め接着剤200を塗布する。
次に、図7〜図9に示すように、フレキシブルケーブル39の本体391および端393が、圧着ツール100に吸引吸着され、先端392が先端部101に密着固定された状態で、先端392を個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に近づけ、接触させて圧力を加え押圧する。
【0044】
図9において、先端392を個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に押圧した状態で、接着剤200を硬化して接続部を固定する。
接着剤200は、例えば、非導電性接着剤としてのエポキシ系接着剤を用い、必要に応じて熱を加えて硬化を促進する。
また、異方導電性接着剤を用いて、例えば、100℃程度の熱を加えて接着剤を硬化させてもよい。
ここで、異方導電性接着剤を用いる場合、圧着ツール100に加える力は少なくて済むが、異方導電性接着剤に含まれる導電粒子の大きさに比べ、個別素子電極端子48の幅が狭くなってくると、接続部に導電粒子が存在する確率が小さくなり、フレキシブルケーブル39の接続端子と個別素子電極端子48との接続不良が生じやすくなる。
したがって、個別素子電極端子48の幅が狭くなってくると、圧着ツール100に加える力を大きくして、フレキシブルケーブル39と個別素子電極端子48とが確実に接続された状態で、非導電性接着剤で接続部を固定するのが好ましい。
【0045】
このような実施形態によれば、以下の効果がある。
(1)圧着ツール100とフレキシブルケーブル39とが固定された状態で、フレキシブルケーブル39の接続端子と圧電素子35から引き出された個別素子電極端子48および共通素子電極端子51とを押圧するので、圧着ツール100の先端部101で押圧する際に、個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に対する接続端子の位置がずれにくくできる。個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に対して接続端子の位置がずれていない状態で接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51とを固定するので、接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続不良の少ない記録ヘッド3の製造方法を得ることができる。
【0046】
(2)フレキシブルケーブル39を圧着ツール100の基部104の側面103から先端部101を覆いながら、基部104の側面102にかけて巻きつけて固定するので、先端部101によって押圧した際に、フレキシブルケーブル39をよりずれにくくできる。したがって、個別素子電極端子48および共通素子電極端子51に対する接続端子の位置をよりずれにくくでき、接続不良のより少ない記録ヘッド3の製造方法を得ることができる。
【0047】
(3)先端部101の圧力の加わる面の面積が、基部104の圧力の伝わる断面積より狭いので、基部104に加える力が小さくても、先端部101に加わる圧力が大きくなり、圧着ツール100が変形しにくい記録ヘッド3の製造方法を得ることができる。
【0048】
(4)フレキシブルケーブル39と圧着ツール100との固定を吸引吸着によって行うので、接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続部を固定する工程が終了した後に、吸引をやめることでフレキシブルケーブル39と圧着ツール100との分離が容易で、同じ圧着ツール100を使った次の記録ヘッド3の製造までの時間を短縮できる記録ヘッド3の製造方法を得ることができる。
【0049】
(5)非導電性接着剤による固定であっても、先端部101の力の加わる面の面積が、基部104の力の伝わる断面積より狭いので、基部104に加える力が小さくても、先端部101に加わる圧力を大きくでき、接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続が圧力により確実な状態で接続部の固定が行える記録ヘッド3の製造方法を得ることができる。
【0050】
(6)圧着ツール100に加える力が小さくても、異方導電性接着剤に含まれる導電粒子によって、接続端子と個別素子電極端子48および共通素子電極端子51との接続が確実な記録ヘッド3の製造方法を得ることができる。
【0051】
以上、実施形態を説明したが、上述したものに限定されるものではない。
例えば、フレキシブル配線基板と圧着ツールとの固定は、吸引吸着に限らず粘着剤による固定であってもよい。この場合、フレキシブル配線基板と圧着ツールとの分離が容易でなくなるが、吸引装置が不要になる。
また、フレキシブル配線基板はフレキシブルケーブル39に限らず、駆動回路が実装されていないフレキシブル配線基板であってもよい。
【0052】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてプリンター1を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…プリンター、2…記録媒体、3…記録ヘッド、4…キャリッジ、5…キャリッジ移動機構、6…プラテンローラー、7…インクカートリッジ、8…タイミングベルト、9…パルスモーター、10…ガイドロッド、15…ケース、16…ヘッドユニット、17…ユニット固定板、18…ヘッドカバー、19…針ホルダー、20…インク導入針、22…ノズルプレート、23…流路基板、24…共通液室基板、25…コンプライアンス基板、25a…貫通口、26…ユニットケース、27…ノズル、30…弾性膜、31…圧力室、32…共通液室、33…連通空部、34…インク供給路、35…圧電素子、36…貫通空部、37…圧電素子収容空部、38…配線空部、39…フレキシブルケーブル、40…インク導入口、41…可撓部、42…インク導入路、43…凹部、44…空部、46…共通素子電極、47…個別素子電極、48…個別素子電極端子、49…共通素子電極配線部、50…枝電極部、51…共通素子電極端子、52…制御IC、100…圧着ツール、101…先端部、102,103…側面、104…基部、110…排気孔、111…開口、170…開口部、180…開口部、200…接着剤、390…一端側、391…本体、392…先端、393…端。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル配線基板と圧電素子とを備えた液体噴射ヘッドの製造方法であって、
基部と圧力の加わる先端部とを備えた圧着ツールを用いて、前記フレキシブル配線基板と前記圧着ツールとを固定する工程と、
前記フレキシブル配線基板の固定された前記先端部によって、前記フレキシブル配線基板の接続端子と前記圧電素子から引き出された電極とを押圧しながら、前記接続端子と前記電極とを接続し、接続部を固定する工程とを含む
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記フレキシブル配線基板と前記圧着ツールとの固定は、
前記フレキシブル配線基板を前記基部の側面から前記先端部を覆いながら、前記基部の他の側面にかけて巻きつけて行う
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記先端部の圧力の加わる面の面積が、前記基部の圧力の伝わる断面積より狭い
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記フレキシブル配線基板と前記圧着ツールとの固定を吸引吸着によって行う
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記接続部の固定を、非導電性接着剤によって行う
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の液体噴射ヘッドの製造方法において、
前記接続部の固定を、異方導電性接着剤によって行う
ことを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−103429(P2013−103429A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249418(P2011−249418)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】