液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
【課題】液体流路中の気泡の排出性を高めて吐出品質が向上した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】液体流路の一部を構成する貫通孔である第1流路71及び第2流路72がそれぞれ設けられた補強部材48及びヘッドケース47を備え、第1流路71及び第2流路72は、ノズルに近い第1開口1−1、2−1、及びノズルから遠く、第1開口1−1、2−1よりも小さく形成された第2開口1−2、2−2を有し、第1流路71及び第2流路72が連通するように補強部材48及びヘッドケース47が接着剤77で接合され、接着剤77は、補強部材48のヘッドケース47との接合面において補強部材48の第2開口1−2よりも外側の露出部48aに付着している。
【解決手段】液体流路の一部を構成する貫通孔である第1流路71及び第2流路72がそれぞれ設けられた補強部材48及びヘッドケース47を備え、第1流路71及び第2流路72は、ノズルに近い第1開口1−1、2−1、及びノズルから遠く、第1開口1−1、2−1よりも小さく形成された第2開口1−2、2−2を有し、第1流路71及び第2流路72が連通するように補強部材48及びヘッドケース47が接着剤77で接合され、接着剤77は、補強部材48のヘッドケース47との接合面において補強部材48の第2開口1−2よりも外側の露出部48aに付着している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体噴射ヘッドの代表例として、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。インクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、液体が貯留されるマニホールドを有し、該マニホールドに連通する圧力発生室にインクを取り込み、圧電素子などの圧力発生手段で該圧力発生室を変形させて、ノズルから液体を吐出させるヘッド本体を備えたものが知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドは、マニホールドに供給されるインクの流路となる液体流路を有している(例えば、特許文献1参照)。液体流路としては、例えば、貫通孔が設けられた部材同士を各貫通孔が連通するように接着剤で接合することにより形成したものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−300987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体流路中に生じた気泡は、液体流路中に配設したフィルターで捕捉されたり、ノズル側から負圧でインクを吸引することで、インクとともに外部に排出される。
【0006】
しかしながら、貫通孔が設けられた部材同士を接合する接着剤が貫通孔内部に達して硬化すると、その貫通孔内にはみ出した接着剤に気泡が付着し、外部に排出され難くなる。つまり、液体流路中の気泡の排出性が低下してしまう。このように気泡の排出動作を行っても液体流路中にインクが残留すると、印刷時に気泡がノズル側に移動してインクの吐出不良を起こす原因となる虞がある。
【0007】
なお、このような問題は、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置においても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体流路中の気泡の排出性を高めて吐出品質が向上した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、ノズルから液体を吐出するヘッド本体と、前記ノズルに連通して該ヘッド本体に供給される液体が流通する液体流路と、前記液体流路の一部を構成する貫通孔がそれぞれ設けられた第1部材及び第2部材とを備え、前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔は、前記ノズルに近い第1開口、及び前記ノズルから遠く、前記第1開口よりも小さく形成された第2開口を有し、前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔が連通し、前記第1部材の第2開口側の面と前記第2部材の第1開口側の面とが接着剤で接合され、前記第1部材の前記第1開口側から前記ヘッド本体に液体が供給され、前記接着剤は、前記第1部材の前記第2部材との接合面において前記第1部材の第2開口よりも外側に付着していることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、貫通孔内に接着剤が突出しないので、液体に含まれる気泡が貫通孔内に突出した接着剤の近傍で滞留することを防止することができる。このように、気泡の排出性が向上するので液体の吐出時に気泡がノズル側に移動して液体の吐出不良を起こすことが防止されるため、吐出品質が向上した液体噴射ヘッドが提供される。
【0010】
ここで、前記貫通孔は、前記第2開口から前記第1開口に向けて拡径するテーパー状に形成されていることが好ましい。これによれば、第1部材の貫通孔から第2部材の貫通孔へ上流に向かっても、それらの液体流路の内径を一定以下に抑えることができる。これにより、液体噴射ヘッドの貫通孔に垂直な平面における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0011】
また、前記貫通孔の前記第1開口の開口縁部は面取りされていることが好ましい。これによれば、開口縁部が接着剤の逃げとなるため、接着剤が貫通孔内に突出することをより確実に防止することができる。
【0012】
また、前記貫通孔の前記第2開口の開口縁部は面取りされていることが好ましい。これによれば、液体の流通を円滑にすることができるため、液体中の気泡をより一層円滑に排出させることができる。
【0013】
また、前記ヘッド本体は、液体を吐出するノズルに連通した圧力発生室、該圧力発生室を変形させる複数の圧力発生手段、及び該圧力発生手段が固定されるヘッドケースを備え、前記ヘッドケースには、各圧力発生手段が挿通される挿通孔が設けられ、前記各挿通孔同士の間に位置するように前記貫通孔が設けられていることが好ましい。これによれば、貫通孔の内径が一定以下に抑えられるので、2つの挿通孔の間を可及的に近接させることができる。したがって、複数の圧力発生手段を有する液体噴射ヘッドにおいて、平面視における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0014】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体流路中の気泡の排出性を高めて吐出品質が向上した液体噴射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】一実施形態に係る記録ヘッドの底面図及び側面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】一実施形態に係る流路部材の要部断面図である。
【図7】一実施形態に係るヘッド本体の要部断面図である。
【図8】一実施形態に係るヘッド本体の要部断面図及び平面図である。
【図9】従来例に係る液体流路の要部断面図である。
【図10】一実施形態に係る補強部材の平面図である。
【図11】他の実施形態に係る液体流路の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈実施形態1〉
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。以下、インクジェット式記録ヘッドは液体噴射ヘッドの一例であり、単に記録ヘッドとも言う。また、インクジェット式記録装置は液体噴射装置の一例である。
【0017】
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略構成を示す斜視図である。インクジェット式記録装置1は、記録ヘッド2を具備する。記録ヘッド2は、インクカートリッジ3とともにキャリッジ4に搭載され、キャリッジ4は、キャリッジ軸9に沿って移動可能に設けられている。
【0018】
駆動モーター(図示せず)の駆動力が複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ4に伝達されることで、記録ヘッド2を搭載したキャリッジ4はキャリッジ軸9に沿って移動される。
【0019】
キャリッジ4のキャリッジ軸9に沿う方向の位置は、リニアエンコーダー10によって検出され、検出信号が位置情報として制御部(図示せず)に送信される。これにより、制御部はこのリニアエンコーダー10からの位置情報に基づいてキャリッジ4(記録ヘッド2)の位置を認識しながら、インクの吐出動作等を制御することができる。
【0020】
また、インクジェット式記録装置1はプラテン5を備えており、紙送り機構8により給紙された紙等の記録媒体である記録シート6がプラテン5に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0021】
図2は、記録ヘッドの分解斜視図、図3は、記録ヘッドの底面図及び側面図であり、図4は、図3のA−A線断面図であり、図5は、図3のB−B線断面図であり、図6は、流路部材の要部断面図である。
【0022】
これらの図に示すように、本実施形態の記録ヘッド2は、流路部材12と、回路基板13と、ヘッド本体14と、ヘッドカバー15とを備えている。
【0023】
流路部材12は、インクカートリッジ3からのインクをヘッド本体14に供給する液体流路の一部を有する部材である。具体的には、流路部材12は、第1流路部材17と、第2流路部材21と、第3流路部材19とが接合されて構成されている。
【0024】
第1流路部材17は、上面に複数のインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるインクカートリッジ装着部22を備えている。インクカートリッジ装着部22の底部上面には、装着される各インクカートリッジ3に対応して複数のインク導入針23が形成されている。本実施形態では、4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインクに対応して、4本のインク導入針23が列設されている。
【0025】
インク導入針23の内部には第1インク供給路24が形成されている。インク導入針23をインクカートリッジ3に挿入することで、第1インク供給路24とインクカートリッジ3内部とが連通される。
【0026】
また、図5に示すように、第1流路部材17の底面(第2流路部材21側の面)には、水平流路95の一部を構成する凹部93が4本形成されている。上述した第1インク供給路24は、各凹部93の一端に開口している。
【0027】
図2及び図6に示すように、第2流路部材21は、第2流路部材21の厚さ方向に貫通した第2インク供給路29を備えている。第2インク供給路29の第1流路部材17側の開口部には、フィルター20が配設される。また、第2インク供給路29の回路基板13側は、回路基板13側に突出しており、後述する回路基板13の流路挿通孔34に挿通されている。
【0028】
図6に示すように、第3流路部材19は、第1流路部材17と第2流路部材21とに挟持されている。第3流路部材19は、第1流路部材17とで水平流路95を画成する部材である。水平流路95は、第1インク供給路24及び第2インク供給路29に連通している。
【0029】
具体的には、第1流路部材17の各凹部93(図5参照)が第3流路部材19の各凸部94に封止されることで水平流路95が画成される。凸部94は、水平流路95の一部を構成するものであり、第1流路部材17の各凹部93に対向して4本設けられている(図2参照)。第3流路部材19は、各凸部94の周縁部に塗布された樹脂製接着剤102で第1流路部材17に接着されている。これにより、第1流路部材17の各凹部93の開口は第3流路部材19の各凸部94で封止され、4つの水平流路95が形成される。なお、第3流路部材19は第2流路部材21とも接着剤で接着されている。
【0030】
第3流路部材19には、厚さ方向に貫通する連通路27が4つ設けられている。各連通路27は、各凸部94の一端に開口するとともに、第2流路部材21の第2インク供給路29にフィルター20を介して連通している。すなわち、水平流路95は、第1インク供給路24及び第2インク供給路29に連通している。なお、フィルター20は、第1インク供給路24内のインクに混入した気抱や異物を捕捉するものである。
【0031】
図6に示すように、第1流路部材17と第2流路部材21との間には、シール部材18が挟持されている。シール部材18は、第3流路部材19の外径よりも大きい内径を有し、環状に形成された樹脂等から成る弾性部材である。
【0032】
本実施形態では、シール部材18は、断面が凹形状に形成され、この凹形状の底面である接合面91に、第1流路部材17の接合部17aが接している。また、シール部材18の接合面91とは反対側の接合面92が第2流路部材21に接している。
【0033】
特に図示しないが、第2流路部材21には、第1流路部材17側に突出するボスが設けられ、このボスが第1流路部材17に設けられた貫通孔に挿通した状態でかしめられることで、第1流路部材17及び第2流路部材21がシール部材18を挟持した状態で固定されている。
【0034】
このように第1流路部材17と第2流路部材21とでシール部材18が挟持されることで、これらの部材から空気室100が画成されている。また、特に図示しないが、シール部材18に設けられた連通路等を介して外部に連通している。第2流路部材21及び第3流路部材19には、それぞれ貫通孔である第3大気連通孔103及び第2大気連通孔101が設けられている。これらの第3大気連通孔103及び第2大気連通孔101は連通し、上述した空気室100に連通している。
【0035】
図2及び図4に示すように、回路基板13は、表面にIC、抵抗等の電装部品が実装されたものである。回路基板13は、第2流路部材21とヘッド本体14との間に配設されている。
【0036】
回路基板13は、ヘッド本体14の振動子ユニット45を構成するフレキシブルケーブル33が接合されている。また、回路基板13には、コネクター32が設けられており、図示しない信号ケーブル(図示せず)が接続される。当該信号ケーブルは、インクジェット式記録装置1の制御部に接続される。回路基板13は、当該信号ケーブルを通じて制御部から送られてくる駆動信号等が送信され、フレキシブルケーブル33を介して振動子ユニット45を駆動する。
【0037】
また、回路基板13には、第2インク供給路29に対応する領域に、厚さ方向に貫通した流路挿通孔34が形成されている。流路挿通孔34には、第2インク供給路29の下端が挿通され、第2インク供給路29の下端は、回路基板13より下方でヘッドケース本体47の第1流路71(図7参照)に接続される。
【0038】
回路基板13の第2流路部材21とは反対側には、ヘッド本体14が設けられている。詳細は後述するが、ヘッド本体14は、ヘッドケース41と、流路ユニット39と、圧力発生手段の一例である振動子ユニット45とを具備する。ヘッドケース41は、ヘッドケース本体47と、補強部材48とから構成されている。
【0039】
ヘッドケース本体47は、例えば、エポキシ系樹脂などの樹脂により作製され、中空箱体状のケース部47a(図2参照)と、該ケース部47aの上端において当該ケース部47aから側方に延出した板状部47b(図2参照)とから構成されている。なお、ケース部47aの下面には、補強部材48に対して位置決めされ、下方に向けて突出した突起部75が設けられている(図2参照)。また、補強部材48には、ヘッドケース本体47とは反対側の面に、流路ユニット39が接合されている。
【0040】
ヘッド本体14には、ヘッドカバー15が取り付けられている。ヘッドカバー15は、ヘッドケース本体47に接続され、流路ユニット39やヘッドケース41を保護する金属製の部材である。このヘッドカバー15は、薄板部材によって作製され、ヘッドケース41の側面を囲うと共に、下端がノズルプレート49側に略90度屈曲してノズルプレート49の表面に当接している。このヘッドカバー15のノズルプレート49の表面に当接する面は、ノズル(図示せず)を露出するように枠状に形成されている。また、ヘッドカバー15の上端には、側方に突出したフランジ部80が設けられ、このフランジ部80には、ヘッドカバー基準穴81が開設されている。このヘッドカバー基準穴81には、ヘッドケース本体47の下面側に突出したヘッドカバー位置決め部76が挿通され、ヘッドカバー15が位置決めされる。
【0041】
ここで、図7を用いて、ヘッド本体14について詳細に説明する。図7は、ヘッド本体の要部断面図である。ヘッド本体14を構成する流路ユニット39は、ノズルプレート49と、流路形成基板50と、振動板51とを備えている。
【0042】
流路形成基板50には、各圧力発生室38が隔壁によって区画されてその幅方向に複数並設されている。例えば、本実施形態では、複数の圧力発生室38が並設された列が流路形成基板50に2列設けられている。
【0043】
各圧力発生室38の列の外側には、各圧力発生室38に供給されるインクを貯留するマニホールド52が、流路形成基板50を厚さ方向に貫通して設けられている。そして、各圧力発生室38とマニホールド52とは、個別流路であるインク供給路53を介して連通している。
【0044】
このような流路形成基板50は、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなり、流路形成基板50に設けられる圧力発生室38等は、流路形成基板50をエッチングすることによって形成されている。
【0045】
流路形成基板50の一方面側にはノズル36が形成されたノズルプレート49が接合されている。圧力発生室38のマニホールド52とは反対の端部側は、ノズル36に連通している。
【0046】
また、流路形成基板50の他方面側、すなわち圧力発生室38の開口面側には振動板51が接合され、各圧力発生室38はこの振動板51によって封止されている。
【0047】
振動板51は、弾性膜55と、この弾性膜55を支持する支持板54との複合板で形成されており、弾性膜55側が流路形成基板50に接合されている。弾性膜55は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部材から形成されている。また、支持板54は、例えば、金属材料等から形成されている。
【0048】
また、振動板51の各圧力発生室38に対向する領域内には、圧電素子43の先端部が当接する島部60が設けられている。すなわち振動板51の各圧力発生室38の周縁部に対向する領域に他の領域よりも厚さの薄い薄肉部58が形成されて、この薄肉部58の内側にそれぞれ島部60が設けられている。
【0049】
振動板51には、ヘッドケース本体47が接合されている。詳細には、ヘッドケース本体47のケース部47aの下面に接着剤で固定された補強部材48が振動板51上に接合されている。ケース部47aの内部には、補強部材48の挿通孔40と連通される収容空部46が形成され、この収容空部46内に圧力発生手段の一例である振動子ユニット45の一部が収容されている。
【0050】
振動子ユニット45は、固定板42と該固定板42に固定された圧電素子43と圧電素子43に接合されたフレキシブルケーブル33とから構成されている。圧電素子43は、本実施形態では、圧電材料61と電極形成材料62及び63とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層されたものである。この圧電素子43の振動に寄与しない不活性領域が固定板42に固着され、圧電素子43の振動に寄与する先端部が振動板51上に当接した状態で固定されている。
【0051】
振動板51のマニホールド52に対向する領域には、薄肉部58と同様に、支持板54がエッチングにより除去されて実質的に弾性膜55のみで構成されるコンプライアンス部59が設けられている。コンプライアンス部59の弾性膜55は、例えば、厚さが数μm程度のPPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルムなどの樹脂材料から形成されている。インクは、コンプライアンス部59の弾性膜55を透過しないが、インクに含まれる水分が蒸発した水蒸気は透過する。
【0052】
補強部材48のコンプライアンス部59に対向する部分には、コンプライアンス部59の変形を許容するコンプライアンス空間56が形成されている。コンプライアンス空間56は、次のように外部に大気開放されている。
【0053】
ヘッドケース本体47及び補強部材48には、厚さ方向に貫通した第1大気連通孔73が形成されている。この第1大気連通孔73は、補強部材48の振動板51側に形成された連通路48bを介してコンプライアンス空間56に連通している。また、第1大気連通孔73は、第2大気連通孔101にも連通している(図4参照)。一方、上述したように第2大気連通孔101は、第3大気連通孔103及び空気室100を介して外部に連通している。
【0054】
すなわち、コンプライアンス空間56は、連通路48b及び第1大気連通孔73、さらに第2大気連通孔101及び第3大気連通孔103を介して空気室100と連通し、該空気室100を経由して大気開放されている。これによりコンプライアンス部59がマニホールド52の圧力変化に伴って良好に変形する。
【0055】
補強部材48には、厚さ方向に貫通した第1流路71が形成されている。また、ヘッドケース本体47には、厚さ方向に貫通した第2流路72が形成されている。第1流路71は、一方の開口がマニホールド52に連通し、他方の開口が第2流路72に連通している。第2流路72は、一方の開口が第1流路71に連通し、他方の開口が第2インク供給路29(図2、図6等参照)に連通している。
【0056】
これらの第1流路71及び第2流路72、さらに、第1インク供給路24、水平流路95、及び第2インク供給路29(図2〜4参照)が連通して液体流路が形成されている。この液体流路には、インクカートリッジからのインクが供給され、該インクは、液体流路を流通してマニホールド52に供給される。
【0057】
ここで、図8を用いて、第1流路71及び第2流路72について詳細に説明する。図8は、ヘッド本体14の要部を拡大した要部断面図及び平面図である。
【0058】
本実施形態では、請求項にいう第1部材は補強部材48であり、第2部材はヘッドケース本体47(ケース部47a)である。また、第1部材に設けられた貫通孔は第1流路71であり、第2部材に設けられた貫通孔は第2流路72である。
【0059】
第1流路71のノズル36側に近い開口(振動板51に設けられた開口に連通する開口)を第1開口1−1とし、ノズル36から遠い開口(第2流路72に連通する開口)を第2開口2−2とする。同様に、第2流路72のノズル36側に近い開口(第1流路71に連通する開口)を第1開口2−1とし、ノズル36から遠い開口(第2インク供給路29に連通する開口)を第2開口2−2とする。
【0060】
第1部材の一例である補強部材48に設けられた貫通孔の一例である第1流路71は、第1開口1−1の開口形状のほうが、第2開口1−2の開口形状よりも大きく形成されている。したがって、第1流路71は、第2開口1−2から第1開口1−1に向かい幅が拡幅したテーパー状に形成されている。
【0061】
同様に、第2部材の一例であるヘッドケース本体47に設けられた貫通孔の一例である第2流路72は、第1開口2−1の開口形状のほうが、第2開口2−2の開口形状よりも大きく形成されている。したがって、第2流路72は、第2開口2−2から第1開口2−1に向かい幅が拡幅したテーパー状に形成されている。
【0062】
また、各第1開口1−1、2−1、第2開口1−2、2−2の開口縁部をそれぞれ1−1C、2−1C、1−2C、2−2Cとすると、各開口縁部1−1C、2−1C、1−2C、2−2Cは面取りされている(C面となっている)。
【0063】
さらに、補強部材48の第2開口1−2の開口形状は、ヘッドケース本体47の第1開口2−1の開口形状よりも小さく形成されている。
【0064】
補強部材48とヘッドケース本体47とは接着剤77で接合されている。詳細には、補強部材48の第2開口1−2側と、ヘッドケース本体47の第1開口2−1側とが対向するように、補強部材48とヘッドケース本体47とが接着剤で接合されている。
【0065】
なお、補強部材48の第1開口1−1はマニホールド52に連通するように振動板51に接着剤で接合されている。ヘッドケース本体47の第2開口2−2は第2インク供給路29に連通するように第2流路部材21に接着剤で接合されている。
【0066】
このような補強部材48とヘッドケース本体47との接合により、第1流路71及び第2流路72が連通している。上述したように、第2開口1−2は、第1開口2−1よりも小さい開口形状であるので、図8(c)に示すように、流路の進行方向から第2開口1−2を平面視したとき、第2開口1−2は、第1開口2−1の内側に位置している。
【0067】
このように、補強部材48の第2開口1−2の周縁の表面は露出している。この補強部材48の露出した表面を露出部48aとする。露出部48aは、第2開口1−2よりも外側の領域であって、かつ、ヘッドケース本体47との接合面よりも第2開口1−2側の領域である。
【0068】
この露出部48aに、補強部材48とヘッドケース本体47とを接合する接着剤77が付着している。詳言すると、接着剤77は、補強部材48とヘッドケース本体47との間から露出部48aまで付着しており、第1流路71内には付着していない。
【0069】
このように、第1流路71の第2開口1−2の開口形状を第2流路72の第1開口2−1の開口形状よりも小さくすることで露出部48aを形成した。かかる露出部48aにより、補強部材48とヘッドケース本体47との間に設けた接着剤77がはみ出しても露出部48aに留めることができ、第1流路71内に突出しないようにすることができる。
【0070】
第1流路71内に接着剤77を突出させない構成としたので、第2流路72から第1流路71に流通するインクに含まれる気泡が下流側(マニホールド52側)に排出し易くすることができる。
【0071】
図9に示すように、第1流路71及び第2流路72の開口形状が同じであり、これらが連通するように補強部材48とヘッドケース本体47とを接着剤77で接合したとする。そして、接着剤77が第1流路71内に突出していると、第1流路71のうち接着剤77の下流側の領域Rでは、インクの流速が低下する。このため、領域Rでは、インクに含まれる気泡が下流側に排出されずに残留してしまう。さらに、本実施形態のように第1流路71が鉛直方向に沿っていると、気泡が浮力で上流側に移動しようとしても接着剤77で規制されてしまい、領域Rで気泡がより残留しやすくなっている。
【0072】
一方、接着剤77の突出を抑えるべく、接着剤77の充填量を減らすと、補強部材48とヘッドケース本体47との間に、接着剤77が充填されずに引けた領域Sが生じてしまう。このような領域Sが生じると、領域Sから接着剤77と補強部材48又はヘッドケース本体47との界面を介してインクが浸透してしまい、他の部品等に達してしまう虞がある。
【0073】
本実施形態では、第1流路71内に接着剤77が突出しないので、図9に示したような接着剤77の下流側の側面近傍(領域R)に気泡が滞留することを防止することができる。このように、気泡の排出性が向上するので印刷時に気泡がノズル側に移動してインクの吐出不良を起こすことが防止されるため、吐出品質が向上した記録ヘッド2が提供される。
【0074】
また、本実施形態に係る記録ヘッド2では、補強部材48とヘッドケース本体47との間に、露出部48aにはみ出すまで接着剤77を設けることができる。すなわち、補強部材48とヘッドケース本体47とを隙間が生じることなく、確実に接着剤77で接合することができる。このように補強部材48とヘッドケース本体47とが確実に接合されるので、これらの界面からインクが浸入して他の電気的な部材を短絡させてしまうことなどを防止することができる。
【0075】
さらに、補強部材48の第2開口1−2は、開口縁部1−2CがC面に形成されている。このようなC面を設けることで、第2流路72の第1開口2−1から第1流路71の第2開口1−2との内径の差が小さくなり、インクの流通を円滑にすることができる。これにより、第2流路72から第1流路71に向かいインク中の気泡をより一層円滑に排出させることができる。
【0076】
一方、ヘッドケース本体47の第1開口2−1は、開口縁部2−1CがC面に形成されている。このようなC面を設けることで、接着剤77が開口縁部2−1Cに付着するため、接着剤77が露出部48aに付着する量が過剰となることを防止できる。つまり、開口縁部2−1Cが接着剤77の逃げとなるため、接着剤77が第1流路71内に突出することをより確実に防止することができる。
【0077】
ここで、仮に、第1流路71や第2流路72を下流側に向けて拡径したテーパー状とはせずに、第1開口及び第2開口が同形状でストレート状に形成するとする。このような場合、補強部材48の第1流路71からヘッドケース本体47の第2流路72へ上流に向かうほど、それらの液体流路の内径は拡大する一方となる。例えば、第2流路部材21の第2インク供給路29と、第2流路72との間で上述したような露出部48aを設けるとすると、この第2インク供給路29の内径を第2流路72よりも大きくしなければならない。つまり、液体流路を構成する部材が増えるほど、液体流路の内径が顕著に大きくなってしまう。
【0078】
一方、本実施形態では、第1流路71は、下流側の第1開口1−1から上流側の第2開口1−2に向けて幅が狭くなっている。第2流路72も同様である。すなわち、第1流路71から第2流路へ上流に向かっても、それらの液体流路の内径を一定以下に抑えることができる。
【0079】
このように補強部材48やヘッドケース本体47のように複数の部材のそれぞれにテーパー状の流路を形成することで、液体流路の内径が大きくなることを防止できる。つまり、第1流路71及び第2流路72から構成される液体流路の内径は、第1流路71又は第2流路72の第1開口1−1又は第1開口2−1の内径以下となる。
【0080】
第1流路71及び第2流路72は記録ヘッド2のインクの吐出方向に垂直に延設されているため(図4、7参照)、これらの内径を一定以下に抑えられるということは、記録ヘッド2の平面視(図3参照)における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0081】
図10を用いて、第1流路71及び第2流路72と振動子ユニット45との位置について説明する。図10は、補強部材48の平面図である。図示するように、補強部材48には、長尺方向に沿って2つの挿通孔40が形成されている。第1流路71は、これらの挿通孔40の間に4つ配設されている。また、第1大気連通孔73もこれらの挿通孔40の間に1つ配設されている。
【0082】
特に図示しないが、ヘッドケース本体47にも、挿通孔40に対向した収容空部46が2つ設けられており、これらの収容空部46の間に、第2流路72及び第1大気連通孔73が配設されている。
【0083】
なお、本実施形態では、4色のインクにそれぞれ対応して、4つの第1流路71(第2流路72)が設けられている。流路ユニット39にも4つのマニホールド52が設けられており、各第1流路71は各マニホールド52に連通している。また、各マニホールド52に設けられたコンプライアンス空間56は、共通して1つの第1大気連通孔73に連通している。
【0084】
上述したように第1流路71及び第2流路72の内径を一定以下に抑えられるので、2つの挿通孔40の間を可及的に近接させることができる。これにより、複数の振動子ユニット45を有する記録ヘッド2において、平面視における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0085】
以上に説明した記録ヘッド2では、インク滴を噴射する際に、振動子ユニット45及び振動板51の変形によって各圧力発生室38の容積を変化させて所定のノズル36からインク滴を噴射させるようになっている。
【0086】
具体的には、振動子ユニット45の圧電素子43に電圧を印加することにより圧電素子43を収縮させる。これにより、振動板51が圧電素子43と共に変形されて圧力発生室38の容積が広げられ、圧力発生室38内にマニホールド52からインクが引き込まれる。そして、ノズル36に至るまで内部にインクを満たした後、回路基板13からフレキシブルケーブル33を経由して送信される記録信号に従い、圧電素子43に印加していた電圧を解除する。これにより、圧電素子43が伸張されて元の状態に戻ると共に振動板51も変位して元の状態に戻る。結果として圧力発生室38の容積が収縮して圧力発生室38内の圧力が高まりノズル36からインク滴が噴射される。
【0087】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0088】
例えば、第1流路71及び第2流路72の構成は、実施形態1に例示した形状に限定されない。図11は、他の実施形態に係る第1流路71及び第2流路72の要部を拡大した断面図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0089】
図11(a)に示すように、第2流路72は第2開口2−2から第1開口2−1に向けて段階的に拡径していてもよい。
【0090】
また、図11(b)に示すように、第2流路72は、第2開口2−2から連続したストレート部72aと、ストレート部72aから連続し、第1開口2−1側に向けて拡径したテーパー部72bとから構成されていてもよい。
【0091】
図11(a)及び(b)の何れの場合においても、第1流路71の第2開口1−2は、第1開口2−1よりも小さく形成されており、露出部48aが形成されている。また、第1開口2−1よりも第2開口2−2の開口形状が小さいため、実施形態1にも述べたように、第1流路71及び第2流路72の内径を一定以下に抑えることができる。また、図11(a)及び(b)に示した第2流路72の形状は、第1流路71の形状に適用してもよい。
【0092】
さらに、実施形態1では、請求項の第1部材として補強部材48、第2部材としてヘッドケース本体47を例示したがこのような部材に限定されない。例えば、第1部材としてヘッドケース本体47、第2部材として第2流路部材とし、第1部材の貫通孔がヘッドケース本体47の第2流路、第2部材の貫通孔が第2流路部材の第2インク供給路29であってもよい。
【0093】
また、第1流路71及び第2流路72は、記録ヘッド2のインクの吐出面(ノズルプレート)に対して垂直な方向に延設されていたが、このような態様に限定されない。例えば、第1流路71及び第2流路72は水平方向に延設されていてもよい。この場合においても、接着剤77が第1流路71内に突出しないので、気泡の排出性が向上する。
【0094】
また、圧力発生手段としては、例えば、下電極、圧電材料からなる圧電体層及び上電極を成膜及びリソグラフィー法によって形成した薄膜型の圧電素子を用いてもよく、また、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を使用することもできる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるものなども使用することができる。
【0095】
上述したインクジェット式記録装置1では、記録ヘッド2がキャリッジ4に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド2が固定されて、紙等の記録シート6を副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0096】
なお、上記各実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0097】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 2 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 12 流路部材、 14 ヘッド本体、 36 ノズル、 40 挿通孔、 41 ヘッドケース、 45 振動子ユニット、 49 ノズルプレート、 71 第1流路、 72 第2流路、 77 接着剤、 1−1、2−1 第1開口、 1−2、2−2 第2開口
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体噴射ヘッドの代表例として、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。インクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、液体が貯留されるマニホールドを有し、該マニホールドに連通する圧力発生室にインクを取り込み、圧電素子などの圧力発生手段で該圧力発生室を変形させて、ノズルから液体を吐出させるヘッド本体を備えたものが知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドは、マニホールドに供給されるインクの流路となる液体流路を有している(例えば、特許文献1参照)。液体流路としては、例えば、貫通孔が設けられた部材同士を各貫通孔が連通するように接着剤で接合することにより形成したものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−300987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液体流路中に生じた気泡は、液体流路中に配設したフィルターで捕捉されたり、ノズル側から負圧でインクを吸引することで、インクとともに外部に排出される。
【0006】
しかしながら、貫通孔が設けられた部材同士を接合する接着剤が貫通孔内部に達して硬化すると、その貫通孔内にはみ出した接着剤に気泡が付着し、外部に排出され難くなる。つまり、液体流路中の気泡の排出性が低下してしまう。このように気泡の排出動作を行っても液体流路中にインクが残留すると、印刷時に気泡がノズル側に移動してインクの吐出不良を起こす原因となる虞がある。
【0007】
なお、このような問題は、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射装置においても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体流路中の気泡の排出性を高めて吐出品質が向上した液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、ノズルから液体を吐出するヘッド本体と、前記ノズルに連通して該ヘッド本体に供給される液体が流通する液体流路と、前記液体流路の一部を構成する貫通孔がそれぞれ設けられた第1部材及び第2部材とを備え、前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔は、前記ノズルに近い第1開口、及び前記ノズルから遠く、前記第1開口よりも小さく形成された第2開口を有し、前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔が連通し、前記第1部材の第2開口側の面と前記第2部材の第1開口側の面とが接着剤で接合され、前記第1部材の前記第1開口側から前記ヘッド本体に液体が供給され、前記接着剤は、前記第1部材の前記第2部材との接合面において前記第1部材の第2開口よりも外側に付着していることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、貫通孔内に接着剤が突出しないので、液体に含まれる気泡が貫通孔内に突出した接着剤の近傍で滞留することを防止することができる。このように、気泡の排出性が向上するので液体の吐出時に気泡がノズル側に移動して液体の吐出不良を起こすことが防止されるため、吐出品質が向上した液体噴射ヘッドが提供される。
【0010】
ここで、前記貫通孔は、前記第2開口から前記第1開口に向けて拡径するテーパー状に形成されていることが好ましい。これによれば、第1部材の貫通孔から第2部材の貫通孔へ上流に向かっても、それらの液体流路の内径を一定以下に抑えることができる。これにより、液体噴射ヘッドの貫通孔に垂直な平面における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0011】
また、前記貫通孔の前記第1開口の開口縁部は面取りされていることが好ましい。これによれば、開口縁部が接着剤の逃げとなるため、接着剤が貫通孔内に突出することをより確実に防止することができる。
【0012】
また、前記貫通孔の前記第2開口の開口縁部は面取りされていることが好ましい。これによれば、液体の流通を円滑にすることができるため、液体中の気泡をより一層円滑に排出させることができる。
【0013】
また、前記ヘッド本体は、液体を吐出するノズルに連通した圧力発生室、該圧力発生室を変形させる複数の圧力発生手段、及び該圧力発生手段が固定されるヘッドケースを備え、前記ヘッドケースには、各圧力発生手段が挿通される挿通孔が設けられ、前記各挿通孔同士の間に位置するように前記貫通孔が設けられていることが好ましい。これによれば、貫通孔の内径が一定以下に抑えられるので、2つの挿通孔の間を可及的に近接させることができる。したがって、複数の圧力発生手段を有する液体噴射ヘッドにおいて、平面視における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0014】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体流路中の気泡の排出性を高めて吐出品質が向上した液体噴射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】一実施形態に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図3】一実施形態に係る記録ヘッドの底面図及び側面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】図3のB−B線断面図である。
【図6】一実施形態に係る流路部材の要部断面図である。
【図7】一実施形態に係るヘッド本体の要部断面図である。
【図8】一実施形態に係るヘッド本体の要部断面図及び平面図である。
【図9】従来例に係る液体流路の要部断面図である。
【図10】一実施形態に係る補強部材の平面図である。
【図11】他の実施形態に係る液体流路の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈実施形態1〉
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。以下、インクジェット式記録ヘッドは液体噴射ヘッドの一例であり、単に記録ヘッドとも言う。また、インクジェット式記録装置は液体噴射装置の一例である。
【0017】
図1は、本実施形態に係るインクジェット式記録装置の概略構成を示す斜視図である。インクジェット式記録装置1は、記録ヘッド2を具備する。記録ヘッド2は、インクカートリッジ3とともにキャリッジ4に搭載され、キャリッジ4は、キャリッジ軸9に沿って移動可能に設けられている。
【0018】
駆動モーター(図示せず)の駆動力が複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ4に伝達されることで、記録ヘッド2を搭載したキャリッジ4はキャリッジ軸9に沿って移動される。
【0019】
キャリッジ4のキャリッジ軸9に沿う方向の位置は、リニアエンコーダー10によって検出され、検出信号が位置情報として制御部(図示せず)に送信される。これにより、制御部はこのリニアエンコーダー10からの位置情報に基づいてキャリッジ4(記録ヘッド2)の位置を認識しながら、インクの吐出動作等を制御することができる。
【0020】
また、インクジェット式記録装置1はプラテン5を備えており、紙送り機構8により給紙された紙等の記録媒体である記録シート6がプラテン5に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0021】
図2は、記録ヘッドの分解斜視図、図3は、記録ヘッドの底面図及び側面図であり、図4は、図3のA−A線断面図であり、図5は、図3のB−B線断面図であり、図6は、流路部材の要部断面図である。
【0022】
これらの図に示すように、本実施形態の記録ヘッド2は、流路部材12と、回路基板13と、ヘッド本体14と、ヘッドカバー15とを備えている。
【0023】
流路部材12は、インクカートリッジ3からのインクをヘッド本体14に供給する液体流路の一部を有する部材である。具体的には、流路部材12は、第1流路部材17と、第2流路部材21と、第3流路部材19とが接合されて構成されている。
【0024】
第1流路部材17は、上面に複数のインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるインクカートリッジ装着部22を備えている。インクカートリッジ装着部22の底部上面には、装着される各インクカートリッジ3に対応して複数のインク導入針23が形成されている。本実施形態では、4色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインクに対応して、4本のインク導入針23が列設されている。
【0025】
インク導入針23の内部には第1インク供給路24が形成されている。インク導入針23をインクカートリッジ3に挿入することで、第1インク供給路24とインクカートリッジ3内部とが連通される。
【0026】
また、図5に示すように、第1流路部材17の底面(第2流路部材21側の面)には、水平流路95の一部を構成する凹部93が4本形成されている。上述した第1インク供給路24は、各凹部93の一端に開口している。
【0027】
図2及び図6に示すように、第2流路部材21は、第2流路部材21の厚さ方向に貫通した第2インク供給路29を備えている。第2インク供給路29の第1流路部材17側の開口部には、フィルター20が配設される。また、第2インク供給路29の回路基板13側は、回路基板13側に突出しており、後述する回路基板13の流路挿通孔34に挿通されている。
【0028】
図6に示すように、第3流路部材19は、第1流路部材17と第2流路部材21とに挟持されている。第3流路部材19は、第1流路部材17とで水平流路95を画成する部材である。水平流路95は、第1インク供給路24及び第2インク供給路29に連通している。
【0029】
具体的には、第1流路部材17の各凹部93(図5参照)が第3流路部材19の各凸部94に封止されることで水平流路95が画成される。凸部94は、水平流路95の一部を構成するものであり、第1流路部材17の各凹部93に対向して4本設けられている(図2参照)。第3流路部材19は、各凸部94の周縁部に塗布された樹脂製接着剤102で第1流路部材17に接着されている。これにより、第1流路部材17の各凹部93の開口は第3流路部材19の各凸部94で封止され、4つの水平流路95が形成される。なお、第3流路部材19は第2流路部材21とも接着剤で接着されている。
【0030】
第3流路部材19には、厚さ方向に貫通する連通路27が4つ設けられている。各連通路27は、各凸部94の一端に開口するとともに、第2流路部材21の第2インク供給路29にフィルター20を介して連通している。すなわち、水平流路95は、第1インク供給路24及び第2インク供給路29に連通している。なお、フィルター20は、第1インク供給路24内のインクに混入した気抱や異物を捕捉するものである。
【0031】
図6に示すように、第1流路部材17と第2流路部材21との間には、シール部材18が挟持されている。シール部材18は、第3流路部材19の外径よりも大きい内径を有し、環状に形成された樹脂等から成る弾性部材である。
【0032】
本実施形態では、シール部材18は、断面が凹形状に形成され、この凹形状の底面である接合面91に、第1流路部材17の接合部17aが接している。また、シール部材18の接合面91とは反対側の接合面92が第2流路部材21に接している。
【0033】
特に図示しないが、第2流路部材21には、第1流路部材17側に突出するボスが設けられ、このボスが第1流路部材17に設けられた貫通孔に挿通した状態でかしめられることで、第1流路部材17及び第2流路部材21がシール部材18を挟持した状態で固定されている。
【0034】
このように第1流路部材17と第2流路部材21とでシール部材18が挟持されることで、これらの部材から空気室100が画成されている。また、特に図示しないが、シール部材18に設けられた連通路等を介して外部に連通している。第2流路部材21及び第3流路部材19には、それぞれ貫通孔である第3大気連通孔103及び第2大気連通孔101が設けられている。これらの第3大気連通孔103及び第2大気連通孔101は連通し、上述した空気室100に連通している。
【0035】
図2及び図4に示すように、回路基板13は、表面にIC、抵抗等の電装部品が実装されたものである。回路基板13は、第2流路部材21とヘッド本体14との間に配設されている。
【0036】
回路基板13は、ヘッド本体14の振動子ユニット45を構成するフレキシブルケーブル33が接合されている。また、回路基板13には、コネクター32が設けられており、図示しない信号ケーブル(図示せず)が接続される。当該信号ケーブルは、インクジェット式記録装置1の制御部に接続される。回路基板13は、当該信号ケーブルを通じて制御部から送られてくる駆動信号等が送信され、フレキシブルケーブル33を介して振動子ユニット45を駆動する。
【0037】
また、回路基板13には、第2インク供給路29に対応する領域に、厚さ方向に貫通した流路挿通孔34が形成されている。流路挿通孔34には、第2インク供給路29の下端が挿通され、第2インク供給路29の下端は、回路基板13より下方でヘッドケース本体47の第1流路71(図7参照)に接続される。
【0038】
回路基板13の第2流路部材21とは反対側には、ヘッド本体14が設けられている。詳細は後述するが、ヘッド本体14は、ヘッドケース41と、流路ユニット39と、圧力発生手段の一例である振動子ユニット45とを具備する。ヘッドケース41は、ヘッドケース本体47と、補強部材48とから構成されている。
【0039】
ヘッドケース本体47は、例えば、エポキシ系樹脂などの樹脂により作製され、中空箱体状のケース部47a(図2参照)と、該ケース部47aの上端において当該ケース部47aから側方に延出した板状部47b(図2参照)とから構成されている。なお、ケース部47aの下面には、補強部材48に対して位置決めされ、下方に向けて突出した突起部75が設けられている(図2参照)。また、補強部材48には、ヘッドケース本体47とは反対側の面に、流路ユニット39が接合されている。
【0040】
ヘッド本体14には、ヘッドカバー15が取り付けられている。ヘッドカバー15は、ヘッドケース本体47に接続され、流路ユニット39やヘッドケース41を保護する金属製の部材である。このヘッドカバー15は、薄板部材によって作製され、ヘッドケース41の側面を囲うと共に、下端がノズルプレート49側に略90度屈曲してノズルプレート49の表面に当接している。このヘッドカバー15のノズルプレート49の表面に当接する面は、ノズル(図示せず)を露出するように枠状に形成されている。また、ヘッドカバー15の上端には、側方に突出したフランジ部80が設けられ、このフランジ部80には、ヘッドカバー基準穴81が開設されている。このヘッドカバー基準穴81には、ヘッドケース本体47の下面側に突出したヘッドカバー位置決め部76が挿通され、ヘッドカバー15が位置決めされる。
【0041】
ここで、図7を用いて、ヘッド本体14について詳細に説明する。図7は、ヘッド本体の要部断面図である。ヘッド本体14を構成する流路ユニット39は、ノズルプレート49と、流路形成基板50と、振動板51とを備えている。
【0042】
流路形成基板50には、各圧力発生室38が隔壁によって区画されてその幅方向に複数並設されている。例えば、本実施形態では、複数の圧力発生室38が並設された列が流路形成基板50に2列設けられている。
【0043】
各圧力発生室38の列の外側には、各圧力発生室38に供給されるインクを貯留するマニホールド52が、流路形成基板50を厚さ方向に貫通して設けられている。そして、各圧力発生室38とマニホールド52とは、個別流路であるインク供給路53を介して連通している。
【0044】
このような流路形成基板50は、本実施形態では、シリコン単結晶基板からなり、流路形成基板50に設けられる圧力発生室38等は、流路形成基板50をエッチングすることによって形成されている。
【0045】
流路形成基板50の一方面側にはノズル36が形成されたノズルプレート49が接合されている。圧力発生室38のマニホールド52とは反対の端部側は、ノズル36に連通している。
【0046】
また、流路形成基板50の他方面側、すなわち圧力発生室38の開口面側には振動板51が接合され、各圧力発生室38はこの振動板51によって封止されている。
【0047】
振動板51は、弾性膜55と、この弾性膜55を支持する支持板54との複合板で形成されており、弾性膜55側が流路形成基板50に接合されている。弾性膜55は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部材から形成されている。また、支持板54は、例えば、金属材料等から形成されている。
【0048】
また、振動板51の各圧力発生室38に対向する領域内には、圧電素子43の先端部が当接する島部60が設けられている。すなわち振動板51の各圧力発生室38の周縁部に対向する領域に他の領域よりも厚さの薄い薄肉部58が形成されて、この薄肉部58の内側にそれぞれ島部60が設けられている。
【0049】
振動板51には、ヘッドケース本体47が接合されている。詳細には、ヘッドケース本体47のケース部47aの下面に接着剤で固定された補強部材48が振動板51上に接合されている。ケース部47aの内部には、補強部材48の挿通孔40と連通される収容空部46が形成され、この収容空部46内に圧力発生手段の一例である振動子ユニット45の一部が収容されている。
【0050】
振動子ユニット45は、固定板42と該固定板42に固定された圧電素子43と圧電素子43に接合されたフレキシブルケーブル33とから構成されている。圧電素子43は、本実施形態では、圧電材料61と電極形成材料62及び63とを縦に交互にサンドイッチ状に挟んで積層されたものである。この圧電素子43の振動に寄与しない不活性領域が固定板42に固着され、圧電素子43の振動に寄与する先端部が振動板51上に当接した状態で固定されている。
【0051】
振動板51のマニホールド52に対向する領域には、薄肉部58と同様に、支持板54がエッチングにより除去されて実質的に弾性膜55のみで構成されるコンプライアンス部59が設けられている。コンプライアンス部59の弾性膜55は、例えば、厚さが数μm程度のPPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルムなどの樹脂材料から形成されている。インクは、コンプライアンス部59の弾性膜55を透過しないが、インクに含まれる水分が蒸発した水蒸気は透過する。
【0052】
補強部材48のコンプライアンス部59に対向する部分には、コンプライアンス部59の変形を許容するコンプライアンス空間56が形成されている。コンプライアンス空間56は、次のように外部に大気開放されている。
【0053】
ヘッドケース本体47及び補強部材48には、厚さ方向に貫通した第1大気連通孔73が形成されている。この第1大気連通孔73は、補強部材48の振動板51側に形成された連通路48bを介してコンプライアンス空間56に連通している。また、第1大気連通孔73は、第2大気連通孔101にも連通している(図4参照)。一方、上述したように第2大気連通孔101は、第3大気連通孔103及び空気室100を介して外部に連通している。
【0054】
すなわち、コンプライアンス空間56は、連通路48b及び第1大気連通孔73、さらに第2大気連通孔101及び第3大気連通孔103を介して空気室100と連通し、該空気室100を経由して大気開放されている。これによりコンプライアンス部59がマニホールド52の圧力変化に伴って良好に変形する。
【0055】
補強部材48には、厚さ方向に貫通した第1流路71が形成されている。また、ヘッドケース本体47には、厚さ方向に貫通した第2流路72が形成されている。第1流路71は、一方の開口がマニホールド52に連通し、他方の開口が第2流路72に連通している。第2流路72は、一方の開口が第1流路71に連通し、他方の開口が第2インク供給路29(図2、図6等参照)に連通している。
【0056】
これらの第1流路71及び第2流路72、さらに、第1インク供給路24、水平流路95、及び第2インク供給路29(図2〜4参照)が連通して液体流路が形成されている。この液体流路には、インクカートリッジからのインクが供給され、該インクは、液体流路を流通してマニホールド52に供給される。
【0057】
ここで、図8を用いて、第1流路71及び第2流路72について詳細に説明する。図8は、ヘッド本体14の要部を拡大した要部断面図及び平面図である。
【0058】
本実施形態では、請求項にいう第1部材は補強部材48であり、第2部材はヘッドケース本体47(ケース部47a)である。また、第1部材に設けられた貫通孔は第1流路71であり、第2部材に設けられた貫通孔は第2流路72である。
【0059】
第1流路71のノズル36側に近い開口(振動板51に設けられた開口に連通する開口)を第1開口1−1とし、ノズル36から遠い開口(第2流路72に連通する開口)を第2開口2−2とする。同様に、第2流路72のノズル36側に近い開口(第1流路71に連通する開口)を第1開口2−1とし、ノズル36から遠い開口(第2インク供給路29に連通する開口)を第2開口2−2とする。
【0060】
第1部材の一例である補強部材48に設けられた貫通孔の一例である第1流路71は、第1開口1−1の開口形状のほうが、第2開口1−2の開口形状よりも大きく形成されている。したがって、第1流路71は、第2開口1−2から第1開口1−1に向かい幅が拡幅したテーパー状に形成されている。
【0061】
同様に、第2部材の一例であるヘッドケース本体47に設けられた貫通孔の一例である第2流路72は、第1開口2−1の開口形状のほうが、第2開口2−2の開口形状よりも大きく形成されている。したがって、第2流路72は、第2開口2−2から第1開口2−1に向かい幅が拡幅したテーパー状に形成されている。
【0062】
また、各第1開口1−1、2−1、第2開口1−2、2−2の開口縁部をそれぞれ1−1C、2−1C、1−2C、2−2Cとすると、各開口縁部1−1C、2−1C、1−2C、2−2Cは面取りされている(C面となっている)。
【0063】
さらに、補強部材48の第2開口1−2の開口形状は、ヘッドケース本体47の第1開口2−1の開口形状よりも小さく形成されている。
【0064】
補強部材48とヘッドケース本体47とは接着剤77で接合されている。詳細には、補強部材48の第2開口1−2側と、ヘッドケース本体47の第1開口2−1側とが対向するように、補強部材48とヘッドケース本体47とが接着剤で接合されている。
【0065】
なお、補強部材48の第1開口1−1はマニホールド52に連通するように振動板51に接着剤で接合されている。ヘッドケース本体47の第2開口2−2は第2インク供給路29に連通するように第2流路部材21に接着剤で接合されている。
【0066】
このような補強部材48とヘッドケース本体47との接合により、第1流路71及び第2流路72が連通している。上述したように、第2開口1−2は、第1開口2−1よりも小さい開口形状であるので、図8(c)に示すように、流路の進行方向から第2開口1−2を平面視したとき、第2開口1−2は、第1開口2−1の内側に位置している。
【0067】
このように、補強部材48の第2開口1−2の周縁の表面は露出している。この補強部材48の露出した表面を露出部48aとする。露出部48aは、第2開口1−2よりも外側の領域であって、かつ、ヘッドケース本体47との接合面よりも第2開口1−2側の領域である。
【0068】
この露出部48aに、補強部材48とヘッドケース本体47とを接合する接着剤77が付着している。詳言すると、接着剤77は、補強部材48とヘッドケース本体47との間から露出部48aまで付着しており、第1流路71内には付着していない。
【0069】
このように、第1流路71の第2開口1−2の開口形状を第2流路72の第1開口2−1の開口形状よりも小さくすることで露出部48aを形成した。かかる露出部48aにより、補強部材48とヘッドケース本体47との間に設けた接着剤77がはみ出しても露出部48aに留めることができ、第1流路71内に突出しないようにすることができる。
【0070】
第1流路71内に接着剤77を突出させない構成としたので、第2流路72から第1流路71に流通するインクに含まれる気泡が下流側(マニホールド52側)に排出し易くすることができる。
【0071】
図9に示すように、第1流路71及び第2流路72の開口形状が同じであり、これらが連通するように補強部材48とヘッドケース本体47とを接着剤77で接合したとする。そして、接着剤77が第1流路71内に突出していると、第1流路71のうち接着剤77の下流側の領域Rでは、インクの流速が低下する。このため、領域Rでは、インクに含まれる気泡が下流側に排出されずに残留してしまう。さらに、本実施形態のように第1流路71が鉛直方向に沿っていると、気泡が浮力で上流側に移動しようとしても接着剤77で規制されてしまい、領域Rで気泡がより残留しやすくなっている。
【0072】
一方、接着剤77の突出を抑えるべく、接着剤77の充填量を減らすと、補強部材48とヘッドケース本体47との間に、接着剤77が充填されずに引けた領域Sが生じてしまう。このような領域Sが生じると、領域Sから接着剤77と補強部材48又はヘッドケース本体47との界面を介してインクが浸透してしまい、他の部品等に達してしまう虞がある。
【0073】
本実施形態では、第1流路71内に接着剤77が突出しないので、図9に示したような接着剤77の下流側の側面近傍(領域R)に気泡が滞留することを防止することができる。このように、気泡の排出性が向上するので印刷時に気泡がノズル側に移動してインクの吐出不良を起こすことが防止されるため、吐出品質が向上した記録ヘッド2が提供される。
【0074】
また、本実施形態に係る記録ヘッド2では、補強部材48とヘッドケース本体47との間に、露出部48aにはみ出すまで接着剤77を設けることができる。すなわち、補強部材48とヘッドケース本体47とを隙間が生じることなく、確実に接着剤77で接合することができる。このように補強部材48とヘッドケース本体47とが確実に接合されるので、これらの界面からインクが浸入して他の電気的な部材を短絡させてしまうことなどを防止することができる。
【0075】
さらに、補強部材48の第2開口1−2は、開口縁部1−2CがC面に形成されている。このようなC面を設けることで、第2流路72の第1開口2−1から第1流路71の第2開口1−2との内径の差が小さくなり、インクの流通を円滑にすることができる。これにより、第2流路72から第1流路71に向かいインク中の気泡をより一層円滑に排出させることができる。
【0076】
一方、ヘッドケース本体47の第1開口2−1は、開口縁部2−1CがC面に形成されている。このようなC面を設けることで、接着剤77が開口縁部2−1Cに付着するため、接着剤77が露出部48aに付着する量が過剰となることを防止できる。つまり、開口縁部2−1Cが接着剤77の逃げとなるため、接着剤77が第1流路71内に突出することをより確実に防止することができる。
【0077】
ここで、仮に、第1流路71や第2流路72を下流側に向けて拡径したテーパー状とはせずに、第1開口及び第2開口が同形状でストレート状に形成するとする。このような場合、補強部材48の第1流路71からヘッドケース本体47の第2流路72へ上流に向かうほど、それらの液体流路の内径は拡大する一方となる。例えば、第2流路部材21の第2インク供給路29と、第2流路72との間で上述したような露出部48aを設けるとすると、この第2インク供給路29の内径を第2流路72よりも大きくしなければならない。つまり、液体流路を構成する部材が増えるほど、液体流路の内径が顕著に大きくなってしまう。
【0078】
一方、本実施形態では、第1流路71は、下流側の第1開口1−1から上流側の第2開口1−2に向けて幅が狭くなっている。第2流路72も同様である。すなわち、第1流路71から第2流路へ上流に向かっても、それらの液体流路の内径を一定以下に抑えることができる。
【0079】
このように補強部材48やヘッドケース本体47のように複数の部材のそれぞれにテーパー状の流路を形成することで、液体流路の内径が大きくなることを防止できる。つまり、第1流路71及び第2流路72から構成される液体流路の内径は、第1流路71又は第2流路72の第1開口1−1又は第1開口2−1の内径以下となる。
【0080】
第1流路71及び第2流路72は記録ヘッド2のインクの吐出方向に垂直に延設されているため(図4、7参照)、これらの内径を一定以下に抑えられるということは、記録ヘッド2の平面視(図3参照)における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0081】
図10を用いて、第1流路71及び第2流路72と振動子ユニット45との位置について説明する。図10は、補強部材48の平面図である。図示するように、補強部材48には、長尺方向に沿って2つの挿通孔40が形成されている。第1流路71は、これらの挿通孔40の間に4つ配設されている。また、第1大気連通孔73もこれらの挿通孔40の間に1つ配設されている。
【0082】
特に図示しないが、ヘッドケース本体47にも、挿通孔40に対向した収容空部46が2つ設けられており、これらの収容空部46の間に、第2流路72及び第1大気連通孔73が配設されている。
【0083】
なお、本実施形態では、4色のインクにそれぞれ対応して、4つの第1流路71(第2流路72)が設けられている。流路ユニット39にも4つのマニホールド52が設けられており、各第1流路71は各マニホールド52に連通している。また、各マニホールド52に設けられたコンプライアンス空間56は、共通して1つの第1大気連通孔73に連通している。
【0084】
上述したように第1流路71及び第2流路72の内径を一定以下に抑えられるので、2つの挿通孔40の間を可及的に近接させることができる。これにより、複数の振動子ユニット45を有する記録ヘッド2において、平面視における大きさについて省スペース化が可能となる。
【0085】
以上に説明した記録ヘッド2では、インク滴を噴射する際に、振動子ユニット45及び振動板51の変形によって各圧力発生室38の容積を変化させて所定のノズル36からインク滴を噴射させるようになっている。
【0086】
具体的には、振動子ユニット45の圧電素子43に電圧を印加することにより圧電素子43を収縮させる。これにより、振動板51が圧電素子43と共に変形されて圧力発生室38の容積が広げられ、圧力発生室38内にマニホールド52からインクが引き込まれる。そして、ノズル36に至るまで内部にインクを満たした後、回路基板13からフレキシブルケーブル33を経由して送信される記録信号に従い、圧電素子43に印加していた電圧を解除する。これにより、圧電素子43が伸張されて元の状態に戻ると共に振動板51も変位して元の状態に戻る。結果として圧力発生室38の容積が収縮して圧力発生室38内の圧力が高まりノズル36からインク滴が噴射される。
【0087】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0088】
例えば、第1流路71及び第2流路72の構成は、実施形態1に例示した形状に限定されない。図11は、他の実施形態に係る第1流路71及び第2流路72の要部を拡大した断面図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0089】
図11(a)に示すように、第2流路72は第2開口2−2から第1開口2−1に向けて段階的に拡径していてもよい。
【0090】
また、図11(b)に示すように、第2流路72は、第2開口2−2から連続したストレート部72aと、ストレート部72aから連続し、第1開口2−1側に向けて拡径したテーパー部72bとから構成されていてもよい。
【0091】
図11(a)及び(b)の何れの場合においても、第1流路71の第2開口1−2は、第1開口2−1よりも小さく形成されており、露出部48aが形成されている。また、第1開口2−1よりも第2開口2−2の開口形状が小さいため、実施形態1にも述べたように、第1流路71及び第2流路72の内径を一定以下に抑えることができる。また、図11(a)及び(b)に示した第2流路72の形状は、第1流路71の形状に適用してもよい。
【0092】
さらに、実施形態1では、請求項の第1部材として補強部材48、第2部材としてヘッドケース本体47を例示したがこのような部材に限定されない。例えば、第1部材としてヘッドケース本体47、第2部材として第2流路部材とし、第1部材の貫通孔がヘッドケース本体47の第2流路、第2部材の貫通孔が第2流路部材の第2インク供給路29であってもよい。
【0093】
また、第1流路71及び第2流路72は、記録ヘッド2のインクの吐出面(ノズルプレート)に対して垂直な方向に延設されていたが、このような態様に限定されない。例えば、第1流路71及び第2流路72は水平方向に延設されていてもよい。この場合においても、接着剤77が第1流路71内に突出しないので、気泡の排出性が向上する。
【0094】
また、圧力発生手段としては、例えば、下電極、圧電材料からなる圧電体層及び上電極を成膜及びリソグラフィー法によって形成した薄膜型の圧電素子を用いてもよく、また、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を使用することもできる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるものなども使用することができる。
【0095】
上述したインクジェット式記録装置1では、記録ヘッド2がキャリッジ4に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド2が固定されて、紙等の記録シート6を副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0096】
なお、上記各実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0097】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 2 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 12 流路部材、 14 ヘッド本体、 36 ノズル、 40 挿通孔、 41 ヘッドケース、 45 振動子ユニット、 49 ノズルプレート、 71 第1流路、 72 第2流路、 77 接着剤、 1−1、2−1 第1開口、 1−2、2−2 第2開口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出するヘッド本体と、
前記ノズルに連通して該ヘッド本体に供給される液体が流通する液体流路と、
前記液体流路の一部を構成する貫通孔がそれぞれ設けられた第1部材及び第2部材とを備え、
前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔は、前記ノズルに近い第1開口、及び前記ノズルから遠く、前記第1開口よりも小さく形成された第2開口を有し、
前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔が連通し、前記第1部材の第2開口側の面と前記第2部材の第1開口側の面とが接着剤で接合され、
前記第1部材の前記第1開口側から前記ヘッド本体に液体が供給され、
前記接着剤は、前記第1部材の前記第2部材との接合面において前記第1部材の第2開口よりも外側に付着している
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記貫通孔は、前記第2開口から前記第1開口に向けて拡径するテーパー状に形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記貫通孔の前記第1開口の開口縁部は面取りされている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記貫通孔の前記第2開口の開口縁部は面取りされている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記ヘッド本体は、液体を吐出するノズルに連通した圧力発生室、該圧力発生室を変形させる複数の圧力発生手段、及び該圧力発生手段が固定されるヘッドケースを備え、
前記ヘッドケースには、
各圧力発生手段が挿通される挿通孔が設けられ、
前記各挿通孔同士の間に位置するように前記貫通孔が設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【請求項1】
ノズルから液体を吐出するヘッド本体と、
前記ノズルに連通して該ヘッド本体に供給される液体が流通する液体流路と、
前記液体流路の一部を構成する貫通孔がそれぞれ設けられた第1部材及び第2部材とを備え、
前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔は、前記ノズルに近い第1開口、及び前記ノズルから遠く、前記第1開口よりも小さく形成された第2開口を有し、
前記第1部材及び前記第2部材の各貫通孔が連通し、前記第1部材の第2開口側の面と前記第2部材の第1開口側の面とが接着剤で接合され、
前記第1部材の前記第1開口側から前記ヘッド本体に液体が供給され、
前記接着剤は、前記第1部材の前記第2部材との接合面において前記第1部材の第2開口よりも外側に付着している
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記貫通孔は、前記第2開口から前記第1開口に向けて拡径するテーパー状に形成されている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記貫通孔の前記第1開口の開口縁部は面取りされている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記貫通孔の前記第2開口の開口縁部は面取りされている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記ヘッド本体は、液体を吐出するノズルに連通した圧力発生室、該圧力発生室を変形させる複数の圧力発生手段、及び該圧力発生手段が固定されるヘッドケースを備え、
前記ヘッドケースには、
各圧力発生手段が挿通される挿通孔が設けられ、
前記各挿通孔同士の間に位置するように前記貫通孔が設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−107304(P2013−107304A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254703(P2011−254703)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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