説明

液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】液体流路から封止部材を介して漏れ出た液体が配線基板とアクチュエーター装置との接続部に流入することを防止することで、当該接続部の接触不良を防止し、信頼性を向上させることができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】マニホールド100を形成する保護基板30及びコンプライアンス基板40と、コンプライアンス基板40を保護基板30とで挟持するケースヘッド110とを備え、保護基板30に、保護基板30及びケースヘッド110がコンプライアンス基板40を挟持した挟持領域から貫通孔までの間の領域において、ケースヘッド110側に突出した突出部33を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関し、特に、液体としてインクを吐出するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射ヘッドには、ノズルに連通する圧力室が設けられた流路形成基板の一方面側に圧電素子(アクチュエータ装置)を設け、圧電素子の変位によって圧力室内の圧力変動を行わせてインク滴をノズルから吐出するインクジェット式記録ヘッドが知られている。
【0003】
インクジェット式記録ヘッドとして、圧電素子が露出する貫通孔を有する保護基板を流路形成基板に取り付け、当該貫通孔に、駆動信号を供給するCOF基板(配線基板)を挿通させるとともに、該COF基板を圧電素子に接続したものがある(例えば、特許文献1参照)。COF基板と圧電素子とは、貫通孔内で、異方性導電性接着剤やポッティング剤などの樹脂材料により接続されている。
【0004】
一方、上記インクジェット式記録ヘッドは、保護基板に凹部が設けられ、該凹部がコンプライアンス基板(封止部材)で封止されることで、各圧力室に連通したマニホールドが形成されている。コンプライアンス基板は、封止膜が固定板に接着剤で接着されて構成されている。該封止膜がインクの吐出に応じて変形することで、マニホールド内の圧力変動によるクロストークの発生が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−025493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マニホールドや液体流路に流通するインクがコンプライアンス基板の封止膜や接着剤を浸潤して外部に漏れ出し、貫通孔内の異方性導電性接着剤に流入する虞がある。このようにコンプライアンス基板を浸潤して外部に漏れだしたインクで異方性導電性接着剤等が膨潤すると、圧電素子とCOF基板とが電気的な接触不良を起こす虞がある。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、液体流路から封止部材を介して漏れ出た液体が配線基板とアクチュエーター装置との接続部に流入することを防止することで、当該接続部の接触不良を防止し、信頼性を向上させることができる液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、液体を吐出するノズルに連通する圧力室を有し、該圧力室に圧力を発生させるアクチュエーター装置が一方面側に設けられた流路形成基板と、前記流路形成基板の一方面側に設けられ、前記圧力室に連通するとともに前記流路形成基板とは反対側に開口を有するマニホールド形成部が設けられた第1部材と、前記マニホールド形成部の開口を封止し、該マニホールド形成部とで前記圧力室に連通したマニホールドを形成する封止部材と、前記封止部材に接合された第2部材とを備え、前記第1部材には、前記アクチュエーター装置に設けられた実装部が露出するとともに、該実装部に電気的に接続されて駆動信号を前記アクチュエーター装置に供給する配線基板が挿通可能な貫通孔が設けられ、前記貫通孔内には、前記配線基板と前記実装部との接続部を覆う樹脂が設けられ、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方には、前記第1部材及び前記第2部材が前記封止部材を挟持した挟持領域から前記貫通孔までの間の領域において、他方側に突出した突出部が設けられていることを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、マニホールド等から、封止部材を介して液体が漏れ出したとしても、該液体は突出部でせき止められるので、アクチュエーター装置の実装部と配線基板との接続部に電気的接触不良が生じることが防止される。これにより、信頼性が向上した液体噴射ヘッドが提供される。
【0010】
ここで、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記挟持領域から前記貫通孔までの領域が他方側に突出していることが好ましい。これによれば、より確実に、液体をせき止めることができ、アクチュエーター装置の実装部と配線基板との接続部に電気的接触不良が生じることが、より確実に防止される。
【0011】
また、前記挟持領域と前記突出部との空間を、前記第1部材又は前記第2部材と前記突出部とを接着する接着剤で封止することが好ましい。これによれば、液体は、突出部及び接着剤で封止された空間内に貯められるので、液体が貫通孔内に流入することを防止し、アクチュエーター装置の実装部と配線基板との接続部に電気的接触不良が生じることをより一層確実に防止することができる。
【0012】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体流路から封止部材を介して漏れ出た液体が配線基板とアクチュエーター装置との接続部に流入することを防止することで、当該接続部の接触不良を防止し、信頼性が向上した液体噴射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1に係る記録ヘッドを示す分解斜視図である。
【図2】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図及びそのA−A′断面図である。
【図3】図2の要部を拡大した要部断面図である。
【図4】実施形態2に係る記録ヘッドの要部断面図である。
【図5】液体噴射装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〈実施形態1〉
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。インクジェット式記録ヘッドは液体噴射ヘッドの一例であり、単に記録ヘッドとも言う。
【0015】
図1は、本発明の実施形態1に係る記録ヘッドを示す分解斜視図であり、図2は、図1の平面図及びそのA−A′断面図であり、図3(a)は、図2の要部を拡大した要部断面図であり、図3(b)は、図3(a)のさらに要部を拡大した要部断面図である。
【0016】
これらの図に示すように、本実施形態に係る記録ヘッドIは、流路形成基板10と、第1部材の一例である保護基板30と、第2部材の一例であるケースヘッド110(図1,2では図示を省略してある)、保護基板30及びケースヘッド110に挟持された封止部材の一例であるコンプライアンス基板40とを備えている。
【0017】
流路形成基板10は、本実施形態ではシリコン単結晶基板からなり、その一方の面には二酸化シリコンからなる弾性膜50が形成されている。
【0018】
流路形成基板10には、他方面側から異方性エッチングすることにより、複数の壁部11によって区画された圧力室12がその幅方向(短手方向)に並設された列が、圧力室12の長手方向に2列設けられている。また、流路形成基板10の圧力室12の長手方向一端部側には、ノズル21毎に個別流路を構成するインク供給路14と連通路13とが壁部11によって区画されている。インク供給路14及び連通路13は、圧力室12の各列において、圧力室12の2つの列の外側に配置されている。
【0019】
インク供給路14は、後述するマニホールド100と圧力室12との間でインクに流路抵抗を生じさせるものであり、圧力室12の長手方向一端部側に連通し且つ圧力室12より小さい断面積を有する。各連通路13は、インク供給路14の圧力室12とは反対側に連通し、インク供給路14の幅方向(短手方向)より大きい断面積を有する。
【0020】
流路形成基板10の弾性膜50とは反対面側には、ノズル21が穿設されたノズルプレート20が、接着剤や熱溶着フィルム等によって固着されている。各ノズル21は、各圧力室12のインク供給路14とは反対側の端部近傍に連通している。なお、ノズルプレート20は、例えば、ガラスセラミックス、シリコン単結晶基板、ステンレス鋼等からなる。
【0021】
一方、流路形成基板10のノズルプレート20とは反対側の面には、上述したように、弾性膜50が形成され、この弾性膜50上には、絶縁体膜55が形成されている。さらに、この絶縁体膜55上には、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とが積層形成されて、圧電素子300を構成している。圧電素子300とは、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を圧力室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電素子300の共通電極とし、第2電極80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。すなわち、本実施形態では、圧力室12内のインク(液体)に圧力変化を生じさせるアクチュエーター装置として、圧電素子300を設けるようにした。
【0022】
このような各圧電素子300の第2電極80には、流路形成基板10のインク供給路14とは反対側の端部近傍まで延設された金(Au)等のリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90を介して各圧電素子300に選択的に電圧が印加される。本実施形態では、リード電極90の圧電素子300とは反対側の端部が、後述する配線基板200が電気的に接続される実装部となっている。
【0023】
圧電素子300が形成された流路形成基板10上には、圧電素子300に対向する領域に、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電素子保持部31を有する保護基板30が、接着剤35等によって接合されている。圧電素子300は、この圧電素子保持部31内に配置されているため、外部環境の影響を殆ど受けない状態で保護されている。なお、圧電素子保持部31は、密封されていても、密封されていなくてもよい。また、圧電素子保持部31は、圧電素子300毎に独立して設けてもよく、複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにしてもよい。本実施形態では、圧電素子保持部31を複数の圧電素子300に亘って連続して設けるようにした。
【0024】
保護基板30上の圧電素子保持部31に相対向する領域には、保護基板30の流路形成基板10とは反対側に開口を有する凹部であるマニホールド形成部32が形成されている。マニホールド形成部32の開口は、後述するコンプライアンス基板40により封止されており、このマニホールド形成部32とコンプライアンス基板40とでマニホールド100が形成されている。
【0025】
マニホールド100は、複数の個別流路の共通のインク室(液体室)となり、複数の個別流路の短手方向(幅方向)に亘って連続して設けられている。また、マニホールド100は、圧力室12の長手方向で保護基板30の両端部近傍まで設けられており、マニホールド100の一端部側は、個別流路の端部に相対向する領域まで設けられている。このようにマニホールド100を圧電素子保持部31の上方(平面視した際に圧電素子保持部31と重なる領域)に設けることで、マニホールド100を、圧力室12の長手方向における外側に拡幅する必要がなく、記録ヘッドIの圧力室12の長手方向の幅を小さくして小型化することができる。
【0026】
また、保護基板30には、個別流路である連通路13の端部に一端が連通すると共に、マニホールド100の一端部に他端が連通する厚さ方向に貫通した貫通孔である供給部101が設けられている。この供給部101を介して、マニホールド100は圧力室12に連通している。
【0027】
供給部101は、本実施形態では、複数の個別流路である連通路13に亘って1つ設けられている。そして、マニホールド100からのインクは、供給部101を介して各個別流路である連通路13、インク供給路14及び圧力室12に供給される。すなわち、本実施形態では、供給部101はマニホールド100の一部として機能する。
【0028】
このような保護基板30の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられるが、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料で形成されていることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料であるシリコン単結晶基板を用いている。
【0029】
また、保護基板30には、圧力室12の2列の間に対応する領域に、厚さ方向に貫通し、配線基板200が挿通される貫通孔102が設けられている。この貫通孔102内には、圧電素子300に接続されたリード電極90(実装部)の端部が位置している。
【0030】
なお、貫通孔102は、圧電素子300の各列に対して1つずつ設けられている。すなわち、圧電素子300の列毎に配線基板200が接続されており、圧電素子300の列が2列あるため、貫通孔102は2つ設けられている。そして、互いに隣接する貫通孔102の間には、実装部(リード電極90の端部)を区画する隔壁103が設けられている。
【0031】
リード電極90の貫通孔102内に露出した端部には、貫通孔102を挿通した配線基板200が電気的に接続されている。配線基板200は、図示しない配線上に圧電素子300を駆動するための駆動回路201が実装された可撓性を有するものであり、例えば、チップオンフィルム(COF)やテープキャリアパッケージ(TCP)などのフレキシブルプリント基板(FPC)を用いることができる。
【0032】
配線基板200とアクチュエーター装置の実装部であるリード電極90とは、異方性導電性接着剤(ACP)220を介して電気的に接続されている。さらに、配線基板200及びリード電極90がACP220で接続された接続部は、樹脂の一例であるポッティング剤210で覆われている。ここでいう接続部とは、配線基板200及びリード電極90のACP220で接着された領域をいう。本実施形態では、この接続部全体が、ポッティング剤で覆われるように、貫通孔102内の底部にポッティング剤210を充填してある。
【0033】
保護基板30のマニホールド形成部32の開口面側には、封止膜41及び固定板42からなるコンプライアンス基板40が接合され、コンプライアンス基板40によってマニホールド形成部32の開口が封止されている。
【0034】
封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料、例えば、厚さが数μm程度のポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム等からなる。封止膜41は、接着剤47で固定板42に接着されている(図3参照)。
【0035】
固定板42は、例えば、厚さが数十μm程度のステンレス鋼(SUS)などの金属などの硬質の材料からなる。固定板42は、図2に示すように、保護基板30のマニホールド100の周囲に亘って設けられており、マニホールド100に相対向する領域は厚さ方向に完全に除去された開口部43となっている。
【0036】
また、固定板42には、開口部43側に突出するインク導入部44が設けられており、このインク導入部44には、厚さ方向に貫通してインクが貯留された貯留手段(図示なし)からのインクをマニホールド100に供給するためのインク導入路45が設けられている。
【0037】
このような固定板42の開口部43によって、マニホールド100の一方面は、可撓性を有する封止膜41のみで封止された撓み変形可能な可撓部46となっている。
【0038】
図3に示すように、コンプライアンス基板40の保護基板30とは反対側には、ケースヘッド110が設けられている。ケースヘッド110は、特に図示しないインクカートリッジから供給されたインクを、インク導入路45を介してマニホールド100にインクを供給する液体流路111を備えている。ケースヘッド110の材料は特に限定されないが、例えば、ガラス、セラミックス材料、金属、樹脂等が挙げられる。
【0039】
ケースヘッド110は、保護基板30とでコンプライアンス基板40(固定板42)を挟持している。請求項にいう挟持領域とは、本実施形態では、ケースヘッド110と保護基板30とが、コンプライアンス基板40を挟持している領域をいう。ケースヘッド110と保護基板30とは、コンプライアンス基板40の固定板42部分を挟持しているので、挟持領域は、ケースヘッド110及び保護基板30の固定板42を挟持した部分となる。図3には、ケースヘッド110側の挟持領域に符号A、保護基板30側の挟持領域に符号Bを付してある。
【0040】
一方、保護基板30には、挟持領域Bから貫通孔102までの間の領域において、ケースヘッド110側に突出した突出部33が設けられている。本実施形態では、保護基板30の貫通孔102の開口縁部が、コンプライアンス基板40が接合された面よりも突出するように、突出部33を形成した。すなわち、コンプライアンス基板40の貫通孔102側の側面に対向するように、保護基板30に突出部33を設けた。なお、突出部33とコンプライアンス基板40との間に若干の間隔を設けてある。
【0041】
ケースヘッド110は、コンプライアンス基板40の固定板42と、上述した突出部33の頂面に、接着剤130で接着されている。この接着剤130は、コンプライアンス基板40と突出部33との間隙を封止しており、空間部48が形成されている。もちろん、この空間部48が形成されないように、コンプライアンス基板40と突出部33との間に接着剤130を充填してもよい。
【0042】
上述したように、マニホールド100には、液体流路111を介してインクが供給される。このとき、コンプライアンス基板40を構成する封止膜41、及び該封止膜41を固定板42に接着する接着剤47にインクが浸潤する虞がある。
【0043】
しかしながら、封止膜41及び接着剤47にインクが浸潤し、インクが液体流路111やマニホールド100の外部、すなわち空間部48に漏れ出たとしても、そのインクは、突出部33にせき止められ、貫通孔102に流れ込むことを防止することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、コンプライアンス基板40(挟持領域A,B)と突出部33との間の空間を、接着剤130で封止したので、漏れ出たインクは、空間部48内に閉じ込められる。このため、漏れ出たインクが突出部33を超えて貫通孔102に流れ込むことを、より確実に防止することができる。
【0045】
コンプライアンス基板40の接着剤47や封止膜41を浸潤したインクが貫通孔102に流入することが防止されるので、保護基板30とポッティング剤210との界面を経て、ACP220にインクが到達することが防止される。これにより、ACP220がインクを吸収して膨潤することを防止できるので、ACP220の膨潤により配線基板200とリード電極90(実装部)との接続部に電気的接触不良が生じてしまうことを防止することができる。
【0046】
なお、ケースヘッド110と突出部33とを接着する接着剤130は、インクが浸潤しにくいものを用いることが好ましい。具体的には、エポキシ系などの接着剤を用いることができる。
【0047】
一方、接着剤130と同様にインクが浸潤し難い接着剤を、封止膜41を固定板42に接着する接着剤47として用いることで、インクが接着剤47に浸潤することを防ぐことも考えられる。
【0048】
しかしながら、封止膜41を固定板42に接着するためには、接着剤47の塗布時における厚さの均一性、密着力、コスト、剥離し難いという信頼性などの観点から、接着剤130と同じものを用いることができない。
【0049】
換言すれば、本発明の記録ヘッドIによれば、インクが浸潤しやすい接着剤47を用いてコンプライアンス基板40を構成しなければならない場合においても、突出部33を設けることで、貫通孔102にインクが流入することを防止することができる。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態の記録ヘッドIでは、図示しない外部のインクが貯留された貯留手段から、液体流路111を経由してマニホールド100内にインクを取り込み、マニホールド100からノズル21に至るまで内部をインクで満たした後、駆動回路201からの記録信号に従い、圧力室12に対応するそれぞれの第1電極60と第2電極80との間に電圧を印加し、圧電素子300及び振動板をたわみ変形させることにより、各圧力室12内の圧力が高まりノズル21からインクが吐出する。
【0051】
上述したように、マニホールド100や液体流路111から、コンプライアンス基板40の封止膜41や接着剤47を介してインクが漏れ出したとしても、該インクは突出部33でせき止められるので、配線基板200とリード電極90との接続部に電気的接触不良が生じることが防止される。これにより、信頼性が向上した記録ヘッドIが提供される。
【0052】
〈実施形態2〉
実施形態1では、突出部33は、保護基板30に設けられ、ケースヘッド110側に突出していたが、このような態様に限定されない。
【0053】
図4(a)は、本実施形態に係る記録ヘッドの要部断面図であり、図4(b)は、さらに要部を拡大した要部断面図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
図示するように、挟持領域Aから貫通孔102までの間の領域において、ケースヘッド110には、保護基板30側に突出した突出部112が設けられている。突出部112は、ケースヘッド110とコンプライアンス基板40とを接着する接着剤130で保護基板30に接着されている。
【0055】
このような構成であっても、マニホールド100や液体流路111から、コンプライアンス基板40の封止膜41や接着剤47を介してインクが漏れ出したとしても、該インクは突出部112及び接着剤130でせき止められるので、配線基板200とリード電極90との接続部に電気的接触不良が生じることが防止される。これにより、信頼性が向上した記録ヘッドIが提供される。
【0056】
なお、特に図示しないが、突出部は、保護基板30又はケースヘッド110の何れか一方にのみ設けられている必要は無い。すなわち、保護基板30及びケースヘッド110の双方に突出部が設けられ、この双方の突出部同士を接着剤で接着してもよい。いずれにせよ、挟持領域から貫通孔102の間に、コンプライアンス基板40が接合された面よりも高い突出部が設けられていればよい。
【0057】
〈他の実施形態〉
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0058】
上述した実施形態1では、配線基板200と実装部であるリード電極90とをACP220によって電気的に接続(実装)するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、配線基板200とリード電極90とを半田等の金属を用いて接続するようにしてもよい。この場合、配線基板200とリード電極90とを金属を用いて接続した後、貫通孔102内にポッティング剤からなる樹脂を充填すればよい。この場合においても、貫通孔102内にインクが流入することが防止されているので、半田等の金属で接続された部分にインクが流入して短絡することを防止することができる。
【0059】
また、上述した実施形態1では、圧力室12に圧力変化を生じさせるアクチュエーター装置として、薄膜型の圧電素子300を有するアクチュエーター装置を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電素子を有するアクチュエーター装置や、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電素子を有するアクチュエーター装置などを使用することができる。また、アクチュエーター装置として、圧力室12内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーター装置などを使用することができる。何れのアクチュエーター装置であっても、実装部が流路形成基板上に設けられていればよい。
【0060】
また、これら各実施形態の記録ヘッドは、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置に搭載される。図5は、インクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0061】
図5に示すように、インクジェット式記録装置1は、例えば、ブラック(B)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)等の複数の異なる色のインクが貯留される貯留室を有するインクカートリッジ(液体貯留手段)2が装着された記録ヘッドIを具備する。記録ヘッドIはキャリッジ3に搭載されており、記録ヘッドIが搭載されたキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、キャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙装置等により給紙された紙等の被記録媒体Sがプラテン8上を搬送されるようになっている。
【0062】
なお、インクジェット式記録装置1は、記録ヘッドIがキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されない。例えば、記録ヘッドIが固定されて、紙等の記録シートを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0063】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(電界放出ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 I インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 10 流路形成基板、 12 圧力室、 21 ノズル、 30 保護基板(第1部材)、 32 マニホールド形成部、 33、112 突出部、 40 コンプライアンス基板(封止部材)、 100 マニホールド、 102 貫通孔、 110 ケースヘッド(第2部材)、 200 配線基板、 210 ポッティング剤、 220 異方性導電性接着剤(ACP)、 300 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルに連通する圧力室を有し、該圧力室に圧力を発生させるアクチュエーター装置が一方面側に設けられた流路形成基板と、
前記流路形成基板の一方面側に設けられ、前記圧力室に連通するとともに前記流路形成基板とは反対側に開口を有するマニホールド形成部が設けられた第1部材と、
前記マニホールド形成部の開口を封止し、該マニホールド形成部とで前記圧力室に連通したマニホールドを形成する封止部材と、
前記封止部材に接合された第2部材とを備え、
前記第1部材には、前記アクチュエーター装置に設けられた実装部が露出するとともに、該実装部に電気的に接続されて駆動信号を前記アクチュエーター装置に供給する配線基板が挿通可能な貫通孔が設けられ、
前記貫通孔内には、前記配線基板と前記実装部との接続部を覆う樹脂が設けられ、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方には、前記第1部材及び前記第2部材が前記封止部材を挟持した挟持領域から前記貫通孔までの間の領域において、他方側に突出した突出部が設けられている
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記挟持領域から前記貫通孔までの領域が他方側に突出している
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する液体噴射ヘッドにおいて、
前記挟持領域と前記突出部との空間を、前記第1部材又は前記第2部材と前記突出部とを接着する接着剤で封止する
ことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載する液体噴射ヘッドを備えることを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−71413(P2013−71413A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214098(P2011−214098)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】