説明

液体噴射装置およびその液体状態判定方法

【課題】液体噴射装置においてコストアップを招かずに液体の状態の判定を可能とする。
【解決手段】圧電素子201とノズル220とが設けられた印字ヘッド200と、圧電素子201に駆動信号を供給した後、インクの残留振動を検出する残留振動検出部400とを備えるカラーインクジェットプリンター100を提供する。残留振動検出部400は、残留振動を基準電圧VrefPと比較することでパルスに変換する比較器COMP1と、残留振動を基準電圧VrefNと比較することでパルスに変換する比較器COMP2とを備える。カラーインクジェットプリンター100は、これらのパルスに基づいて、圧電素子201に駆動信号を供給してから残留振動波形の振幅が所定の振幅まで減衰するまでの減衰時間Tdを特定し、減衰時間Tdに基づいてインクの粘度を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体噴射装置に関し、特に、液体の状態を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置の一つであるインクジェットプリンターは、圧電素子を電気信号で駆動して振動板を変位させ、複数のノズルからインク滴を吐出することで所定の用紙上に画像形成を行っている。インクジェットプリンターの印字ヘッドには、多数のノズルが設けられているが、インクの粘度の増加や、気泡の混入等の原因によって、インク滴が吐出不良を生じる場合や、ノズルの目詰まりによりインク滴を吐出できない場合がある。インク滴の吐出不良やノズルの目詰まりが生じるとプリントされた画像内にドット抜け等が生じ、画質を劣化させる原因となる。
【0003】
このようなインク滴の吐出異常において、インクジェットヘッドやインクカートリッジ内のインクの増粘は、インク中の溶媒の蒸発などにより発生するものであり、この蒸発などによるインクの増粘を完全に防止することはできない。このため、従来からインクを予備的に吐出(フラッシング)したり、ポンプによりインクを吸引したり、また、インクの増粘に伴う吐出波形の補正、データの補正などが行われている。
【0004】
フラッシング処理又はポンプ吸引処理は、吐出異常などが生じてしまう前にインクの増粘を防止するために行なわなくてはならないが、インクの粘度が分からない状態では、不必要にインクを吐出あるいは吸引してしまい、インクジェットプリンターのランニングコストを増加させてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、特許文献1等には、圧電素子を駆動して振動板を変位させた後に、振動板に発生する残留振動の波高値を、圧電素子の起電圧により検出することでインク粘度の状態を判定し、判定されたインク粘度に応じて必要なメンテナンス処理を実行するインクジェットプリンターが記載されている。このインクジェットプリンターは、減衰振動の波高値のピークを検出してホールドするためのピークホールド回路と、ホールドされた波高ピーク値をデジタルデータに変換するためのA/D変換回路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−299341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
残留振動の波高値は、インク粘度を主とするノズルの状態を判断する上で重要な要素である。しかしながら、波高値検出に必要な、精密測定用に設計されたピークホールド回路やA/D変換回路は高価であり、液体噴射装置のコスト増大を招くことになる。
【0008】
そこで、本発明は、液体噴射装置においてコストアップを招くことなく液体の状態の判定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の液体噴射装置は、圧力発生素子とノズルとが設けられた吐出部を備え、前記圧力発生素子に駆動信号を供給した後、液体の振動を示す残留振動波形を検出する検出手段を備えたものにおいて、前記残留振動波形を、振動が収束する波形レベルに対してオフセットを有する基準レベルと比較して二値化信号を生成する二値化手段と、前記二値化信号に基づいて、前記圧力発生素子に駆動信号を供給してから前記残留振動波形の振幅が所定の振幅まで減衰するまでの減衰時間を特定する減衰時間特定手段と、前記減衰時間に基づいて前記液体の状態を判定する判定手段と、を備える。
【0010】
残留振動波形は時間が経過すると、ある波形レベルに収束する。二値化手段はそのような波形レベルに対してオフセットを有する基準レベルと残留振動波形とを比較することによって、二値化信号を生成する。時間の経過に伴って残留振動波形の振幅は減少するところ、基準レベルよりも振幅が小さくなると、二値化信号のレベルは一方のレベルに固定となり、変化しなくなる。そこで、減衰時間特定手段は、二値化信号に基づいて、減衰時間を特定している。これにより、精密測定用に設計されたピークホールド回路やA/D変換回路が不要となり、コストアップを招くことなく液体状態判定を行なえるようになる。
【0011】
前記圧力発生素子は、圧電素子であり、前記検出手段は、前記残留振動波形を前記圧電素子の起電力として検出することが好ましい。この場合には、液体をノズルから吐出させるための動力源と、残留振動波形を検出する構成とを兼用することができるので、構成を簡素化することが可能となる。
【0012】
また、前記二値化手段は、前記オフセットに対応した第1のオフセット値を前記基準レベルとして、前記残留駆動波形を二値化した第1の二値化信号と、前記オフセットに対応した第2のオフセット値を前記基準レベルとして、前記残留駆動波形を二値化した第2の二値化信号とを生成し、前記減衰時間特定手段は、前記第1の二値化信号及び前記第2の二値化信号のレベルが変化しなくなった時点を前記残留振動波形の振幅が所定の振幅まで減衰した時点として前記減衰時間を特定することができる。
【0013】
より具体的には、前記二値化手段は、前記残留駆動波形を前記第1のオフセット値と比較して前記第1の二値化信号を生成する第1のコンパレータと、前記残留駆動波形を前記第2のオフセット値と比較して前記第2の二値化信号を生成する第2のコンパレータとを備え、前記減衰時間特定手段は、前記第1の二値化信号及び前記第2の二値化信号の排他的論理和を演算する排他的論理和回路を備え、前記排他的論理和回路の出力信号に基づいて前記減衰時間を特定することができる。
【0014】
また、前記判定手段は、前記第1の二値化信号及び前記第2の二値化信号のうち少なくとも一方の周期と、予め定められた基準周期とを比較し、前記少なくとも一方の周期が前記基準周期より短い場合には、前記減衰時間を特定する処理を中止するようにしてもよい。気泡混入が発生すると残留振動の周期が正常時よりも短くなる。あらかじめ定められた基準周期よりも残留振動の周期が短い場合には、気泡混入が検出されたとして、減衰時間を特定する処理を中止し、気泡混入対応処理を行なうことが望ましいからである。
【0015】
また、前記判定手段は、前記減衰時間と前記液体の粘度とを対応付けて記憶した記憶手段を備え、前記減衰時間特定手段によって前記減衰時間が特定されると、当該減衰時間に対応する前記液体の粘度を前記記憶手段から読み出して、前記液体の粘度を前記液体の状態として判定することができる。この場合には、複雑な演算処理を実行しなくても記憶手段にアクセスするだけで液体の粘度を得ることができるので、処理を簡素化できる。
【0016】
上述した液体噴射装置において、前記駆動信号を生成する駆動信号生成手段を備え、前記駆動信号生成手段は、前記減衰時間を測定する場合、前記液体をノズルから吐出させない大きさの前記駆動信号を生成することが好ましい。この場合は、特別な測定期間を設けなくても液体噴射装置の動作中に液体の状態を判定することが可能となるので、液体の状態に対応したリアルタイムの制御が可能となる。
【0017】
また、本発明は液体噴射装置の液体状態判定方法として把握することもできる。この場合、圧力発生素子とノズルとが設けられた吐出部を備え、前記圧力発生素子に駆動信号を供給した後、液体の振動を示す残留振動波形を検出する検出手段を備えた液体噴射装置を前提とし、液体の状態を判定する方法であって、前記残留振動波形を、振動が収束する波形レベルに対してオフセットを有する基準レベルと比較して二値化信号を生成し、前記二値化信号に基づいて、前記圧力発生素子に駆動信号を供給してから前記残留振動波形の振幅が所定の振幅まで減衰するまでの減衰時間を特定し、前記減衰時間に基づいて前記液体の状態を判定する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】カラーインクジェットプリンターの主要な構成の概略を示す図である。
【図2】ピエゾ方式の印字ヘッドの構造を示す図である。
【図3】インクジェットプリンターの主要部を概略的に示すブロック図である。
【図4】インクの増粘と残留振動波形との関係を説明する図である。
【図5】インクの増粘と減衰時間との関係を説明する図である。
【図6】気泡混入と残留振動波形との関係を説明する図である。
【図7】駆動信号発生部の回路構成を示すブロック図である。
【図8】波形メモリーへの書き出しを示す波形図である。
【図9】波形メモリーからの読み出しと出力波形を示す波形図である。
【図10】印字ヘッド内の構成を示す図である
【図11】駆動信号と波形選択データの信号転送との関係を示す図である。
【図12】駆動信号と波形選択データとの関係を示す図である。
【図13】残留振動検出部の回路構成を示すブロック図である。
【図14】残留振動に対する比較器COMP1、比較器COMP2、排他的論理和回路XOR1の出力レベルを示す図である。
【図15】減衰曲線と出力信号POUT(d)との関係を示す図である。
【図16】インク状態判定部のインク状態判定処理について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.実施形態
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、本発明の液体噴射装置をカラーインクジェットプリンターに適用した場合について説明する。
【0020】
図1(a)は、カラーインクジェットプリンターの主要な構成を示す略平面図であり、図1(b)は、インク滴を噴射する印字ヘッドのノズル面の一例を示す図である。図1(a)に示すように、カラーインクジェットプリンター100は、印字ヘッド200(図2参照)及びインクカートリッジ230(図2参照)を搭載した可動キャリッジ110が、キャリッジ軸111に沿った主走査方向で並進移動する。可動キャリッジ110は、駆動プーリー121、従動プーリー122、歯付ベルト123及びキャリッジモーター120によって駆動され、可動キャリッジ110に取り付けられたエンコーダー112によってキャリッジ軸111上のインクジェットヘッドの位置が検出される。エンコーダー112からの信号を受けたキャリッジモータードライバー331(図3参照)は、キャリッジモーター120を駆動して、可動キャリッジ110を加速→一定速度→減速→反転→加速→一定速度→減速→反転という往復運動させる。一定速度の区間が印刷領域に相当し、ケーブル124によって接続されたプリントコントローラー(図3参照)からの指示に基づいて、副走査方向に搬送される記録紙P上にインク滴を噴射することによって所望の文字や画像を記録する。
【0021】
また、カラーインクジェットプリンター100は、インク滴不吐出等の回復処理を実行するためのワイパー130とノズル面のキャッピングを行なうためのキャップ131とを備えている。
【0022】
図1(b)に示すように、印字ヘッド200のノズル面には、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(黒)ごとに、ノズル列が段をずらして配置される。Y(1)、Y(2)…Y(n)の副走査方向のノズルピッチは、dpiで表わされる印刷精度に応じて適宜設定される。
【0023】
図2は、本実施形態で用いられるピエゾ方式の印字ヘッド200の構造を示す図である。図2(a)は、積層アクチュエータを用いたピエゾ方式の印字ヘッド200の構造を示している。アクチュエータ(積層アクチュエータ)210は、圧電素子(積層圧電素子)201と、外部電極(−)205a、内部電極(−)205b、外部電極(+)205c、内部電極(+)205dを備え、圧電材料と電極とが交互に積層されており、一端が固定され、他端が振動板203に固定されている。本実施形態において、アクチュエータ210は、図中の矢印で示す上下方向に伸び縮みするモードを利用している。アクチュエータ210は、積層されている分、大きな駆動力が発生するのが特徴である。アクチュエータ210に駆動信号が与えられると、振動板203に変位が生じ、圧力室202内の圧力が変化してノズル220からインク滴が噴射される。インクは、インクカートリッジ230から供給され、リザーバー204に溜められる。
【0024】
図2(b)は、ユニモルフ型のアクチュエータを用いたピエゾ方式の印字ヘッド200aの構造を示している。ユニモルフ型のアクチュエータ210aは、圧電材料206を上電極207aと下電極207bとで挟んだ簡単な構造のアクチュエータであるが、振動モードは、本図の上下方向に撓むモードを利用している。インクを噴射する原理は、図2(a)に示したアクチュエータ210を用いたピエゾ方式の印字ヘッド200と同様である。
【0025】
図3は、カラーインクジェットプリンター100の主要部を概略的に示すブロック図である。本図においてカラーインクジェットプリンター100は、給紙モーター140と、キャリッジモーター120と、印字ヘッド200と、インクの残留振動を検出する残留振動検出部400と、これらを制御するプリントコントローラー300とを備えている。なお、インクが吐出されると圧力室202の圧力が変化する。この場合、インクの残留変動は振動板203の振動として捉えることもできる。
【0026】
プリントコントローラー300は、ホストコンピューター500から入力された印刷データなどを受け取るインタフェース部(IFc)310と、制御部320と、キャリッジモーター120を駆動制御するキャリッジモータードライバー331と、給紙モーター140を駆動制御する給紙モータードライバー332と、クロック信号SCKを発生する発振回路333と、印字ヘッド200に出力する駆動信号COMを発生する駆動信号発生部334と、インタフェース部(IFd)331とを備えている。インタフェース部(IFd)331は、給紙モーター140、キャリッジモーター120、印字ヘッド200、残留振動検出部400との信号を入出力する。
【0027】
制御部320は、印刷処理や残留振動検出の結果を受けて各ノズル220の正常/異常を判定する処理などの各種処理を実行するCPU321と、ホストコンピューター500からIFc310を介して入力される印刷データ等を一時的に格納するRAM323と、制御プログラム、温度補正テーブル等を記憶したROM324とを備えている。なお、制御部320の各構成要素は、図示しないバスを介して電気的に接続されている。
【0028】
本実施形態において、CPU321には、インク状態判定部322が構成される。インク状態判定部322は、CPU321が、ROM324に記録された制御プログラムを実行することにより、仮想的に構成される。インク状態判定部322は、残留振動検出部400における残留振動の検出結果から得られる残留振動の減衰時間Tdと振動周期Ttに基づいてインク粘度や気泡混入等のインク状態を判定する。インク状態判定部322の処理の詳細については後述する。
【0029】
また、ROM324には、上述の制御プログラム等に加え、インク粘度減衰特性テーブル325、残留振動基準周期値326が記憶されている。インク粘度減衰特性テーブル325は、インク状態判定部322が、振動板203の残留振動の減衰時間Tdに基づいて、インクの粘度を判定する際に用いるテーブルであり、残留振動基準周期値326は、インク状態判定部322が、振動板203の残留振動の振動周期Ttに基づいて気泡混入の有無を判定する際に用いる基準値である。
【0030】
ここで、インクの増粘と残留振動波形との関係について図4を参照して説明する。プリントコントローラー300からアクチュエータ210に個別駆動信号が印加されると、振動板203が撓み、圧力室202の容積が拡大し収縮する。このときインク室に発生する圧力により、圧力室202を満たすインクの一部が、このインク室に連通しているノズル220からインク滴として噴射される。この一連の振動板203の動作により、ノズル220、インク供給口の形状やインク粘度等による流路抵抗rと、流路内のインク重量によるイナータンスmと、振動板203のコンプライアンスcによって決定される固有振動周波数で振動板203が自由振動を起こす。これが残留振動である。振動板203の自由振動は圧力室202の内圧の変化に応じたものとなっている。すなわち、振動板203の残留振動はインク(液体)の残留振動と等価である。
【0031】
図4(a)は、残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。この計算モデルに圧力Pを与えたときのステップ応答を体積速度uについて計算すると図中の(式1)〜(式3)が得られる。インクが増粘すると、流路抵抗rが増加し、残留振動の減衰が大きくなる。そして、減衰の変化に応じて減衰時間Tdが変化する。
【0032】
図4(b)は、インクの粘度と残留振動波形との関係を示す図である。また、図5は、インクの増粘と減衰時間との関係を示す図である。これらの図からもわかるように、減衰時間Tdとインクの粘度比とが対応し、インクが増粘すると減衰時間Tdが短くなる。
【0033】
そこで、本実施形態では、インク粘度減衰特性テーブル325に減衰時間Tdとインク粘度との対応関係をあらかじめ記録しておくようにする。このようにすることで、残留振動の減衰時間Tdを測定し、インク粘度減衰特性テーブル325を参照することで、波高値を検出することなく、インクの粘度を判定することができるようになる。
【0034】
次に、気泡混入と残留振動波形との関係について図6を参照して説明する。本図に示すように、気泡混入時には、振動板203の残留振動の振動周期が短くなる。これは、以下の理由による。すなわち、インク流路内に気泡が混入すると、インク流路内のインクが少なくなるため、主に、イナータンスmが減少する。図4(a)中の(式2)より、mが減少すると角速度ωが大きくなり、振動周期が短くなる。
【0035】
したがって、残留振動波形の振動周期を測定することで、気泡混入の有無を判定することができることになる。そこで、本実施形態では、正常時の残留振動周期に基づいて定められる残留振動基準周期値326をあらかじめ記憶しておくようにする。本実施形態において、残留振動基準周期値326は、気泡が混入したと判断できる振動周期の上限値を設定しておく。これにより、振動板203の残留振動の振動周期Ttを測定し、残留振動基準周期値326と比較することで、気泡混入の有無を判定することができる。
【0036】
説明を図3に戻す。印字ヘッド200には、プリントコントローラー300のインタフェース部331から、駆動信号COM、波形選択データSI、ラッチ信号LAT、及びクロック信号SCKが入力される。駆動信号COMは、複数の駆動波形から構成されており(図11参照)、アクチュエータ210を駆動するために用いられる。波形選択データSIは、複数のノズルの各々について複数の駆動波形の中から一つを指定する。波形選択データSIは、例えば、ノズルの列単位で転送される。ラッチ信号LATは、波形選択データSIの転送単位でアクティブとなる信号である。クロック信号SCKは波形選択データSIに同期している。
【0037】
図7は、アクチュエータ210に印加する駆動パルスである駆動信号COMを生成する駆動信号発生部334の回路構成を示すブロック図である。駆動信号発生部334は、制御部320から送られる駆動信号COMを形成するための波形データを一時的に記憶する波形メモリー334aと、この波形メモリー334aから必要な波形データを読み出して一時的に保持する第1ラッチ334bと、第1ラッチ334bの出力と次段の第2ラッチ334dの出力とを加算する加算器334cと、加算器334cの出力を一時的に保持する第2ラッチ334dと、第2ラッチ334dの出力をアナログ値に変換するD/A変換器334eと、変換されたアナログ値を必要な電圧値に増幅する電圧増幅部334fと、増幅された駆動信号COMの電流を増幅する電流増幅部334gとを備えて構成される。
【0038】
波形メモリー334aは、アドレスが定められたそれぞれ数ビットずつのメモリー素子が配列され、駆動信号COMの元となる波形データDATAが記憶される。本実施形態では、図8に示すように、制御部320からアドレスA0〜A3に対して、クロック信号WCLKと共に波形データDATAが入力され、書き込み信号DENの入力により、メモリー素子に波形データDATAが記憶される。
【0039】
図9に、波形メモリー334aからの波形データ読み出しと、駆動信号COM生成のタイミングを示す。この例では、アドレスA0に単位時間当りの電圧変化量として0となる波形データが書き込まれているものとする。同様にして、アドレスA1に+ΔV1、アドレスA2に−ΔV2(ΔV2=ΔV1/2とする)、アドレスA3に+ΔV3の波形データが書き込まれているものとする。
【0040】
まず、クリア信号CLERが入力され(ローアクティブ)、第1ラッチ334b、第2ラッチ334dの保存データがクリアされる。駆動信号COMは、所望の波形データによって中間電位(オフセット)まで立ち上げられている。この動作は、以降に説明される駆動信号COMの生成と同様に行なわれるため、説明を省略する。
【0041】
次に、駆動信号波形の生成について説明する。図9に示すように、まず、波形メモリー334aからアドレスA1の波形データDATAが読み出され、第1クロック信号ACLKによって第1ラッチ334bに+ΔV1の値が保存される。保存された+ΔV1は、加算器334cを経て第2ラッチ334dに入力される。第2ラッチ334dは、第2クロック信号BCLKの立ち上がりに同期して加算器334cの算出結果を保存する。保存された第2ラッチ334dの出力は、加算器334cに入力され、第1ラッチ334bからの出力と加算され、再び第2ラッチ334dに入力される。
【0042】
すなわち、加算結果が第2ラッチ334dに保存される第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで順次+ΔV1の値が加算される。本図の例では、時間幅T1までアドレスA1の波形データが入力され、+ΔV1の値が3倍となるまで加算されている。同様にしてアドレスA0が読み出され、電圧変化量が0となると、時間幅T0の間では加算器334cは、アドレスA1で入力された加算結果を保持している。
【0043】
アドレスA2が読み出されると、−ΔV2の値で加算(−符号であるため実際には減算)が繰り返され、時間幅T2の間でオフセット値まで立ち下げられる。再び、アドレスA0が読み出され、電圧変化量が0となると、加算器334cは、アドレスA2で入力された加算結果を保持する。このように波形データDATAに基づいて駆動信号COMが形成される。もちろん形成する駆動信号COMは、本例に限られない。例えば、複数の形状の駆動信号COMを生成して、それぞれのインク噴射量を変化させることで階調表現を行なうことができる。
【0044】
図10は、印字ヘッド200内の構成を示す図である。印字ヘッド200は、シフトレジスター261、ラッチ262、レベルシフター263、選択スイッチ264及びアクチュエータ210を備えている。また、上述のようにカラーインクジェットプリンター100の印字ヘッド200には、複数個のノズル220が設けられており、各ノズル220に対応したアクチュエータ210が備えられている。そして、選択されたノズル220に対応するアクチュエータ210に駆動信号COMが供給される。
【0045】
図10を参照して、駆動信号COMがアクチュエータ210に接続される動作について説明する。ここで、シフトレジスター261は、インクを噴射させるノズル220に対応したアクチュエータ210を指定する波形選択データSIを保存する。ラッチ262は、シフトレジスター261のデータを一時的に保存する。レベルシフター263はラッチ262の出力をレベル変換する。選択スイッチ264は、レベルシフター263の出力に応じて駆動信号COMをアクチュエータ210に供給する。
【0046】
シフトレジスター261には、波形選択データSIが順次入力される。波形選択データSIは、クロックCLKの立ち上がりエッジに同期してシフトレジスター261の初段から後段に順次シフトされる。ラッチ262は、ノズル数分(一列分)の波形選択データSIがシフトレジスター261に格納された後に入力されるラッチ信号LATによって、シフトレジスター261の各段で転送された波形選択データSIをラッチする。ラッチ262に保存された信号は、レベルシフター263によって次段の選択スイッチ264をオンオフできる電圧レベルに変換される。
【0047】
駆動信号COMは、ラッチ262の出力電圧に比べて高い電圧であるため、選択スイッチ264の動作電圧範囲も高くなっている。選択スイッチ264はPチャンネルFETとNチャンネルFETとを組み合わせたトランスミッションゲートによるアナログスイッチによって構成されている。このアナログスイッチを十分に動作させるためゲート電圧を高い値にレベル変換している。レベルシフター263によって選択スイッチ264のゲート電圧が印加されたアクチュエータ210には、駆動信号COMが供給される。このようにして、インクを噴射するノズルに対応したアクチュエータ210に駆動信号COMが供給される。一方、駆動信号COMは供給されなかったアクチュエータ210に対応したノズルからはインクは噴射されない。
【0048】
図11は、駆動信号COMと波形選択データSIの信号転送との関係を示す図であり、1画素の生成区間に駆動信号COM(波形1、波形2)を1ユニットとして生成する例を示している。本実施形態の駆動信号COMでは、インク滴を噴射する駆動波形として波形1および波形2といった2種類を設定している。なお、波形1による駆動ではインク滴がノズルから吐出されるが、波形2はいわゆる微振動に該当しインク滴が吐出されない。波形2は、インクの増粘を抑制するとともにインクの状態を把握するために用いられる。
【0049】
この例では、波形1および波形2を選択できるように、波形選択データSIは、1ノズル1画素当り2ビット(SIH、SIL)が割り当てられる。この2ビットの波形選択データSIによって、2つの駆動波形からなる1つの駆動信号COMに対して選択パターンを4種類の状態で設定できる。また、並列に出力される2つの駆動信号COMのうち、どの駆動信号COMを選択するかを指定するため、1ノズル当り2ビットの駆動信号選択データを送信して駆動信号COMを選択している。
【0050】
ある駆動周期Tにおいて駆動信号COM(波形1、波形2)の波形を選択するための波形選択データSIは、当該駆動周期Tの直前の駆動周期Tにおいてシフトレジスター261に転送される。そして、駆動波形が出力されている間に、次の駆動信号COM(波形1、波形2)の波形を選択するための波形選択データSIが供給される。例えば、1列のノズルが100個で構成される場合には、100個のクロック信号SCKがシフトレジスター261に供給される。なお、駆動信号COMの波形1と波形2との切替え位置は、チャネル信号CHによって設定されている。
【0051】
図12は、波形選択データSIに基づいて選択された駆動波形を示す図である。SI(00)では、駆動信号COMが選択されず、このデータが設定されたノズル220は、インク非噴射で、ノズル220の検査も行なわれない。SI(10)が選択されたノズル220は、波形1によりインクが噴射されるが、ノズル220の検査は行なわれない。SI(01)が選択されたノズル220は、波形2による微振動が実行され、インクが非噴射でノズル220の検査が行なわれる。SI(11)が選択されたノズル220は、波形1インクが噴射され、ノズル220の検査も行なわれる。信号DSELは、残留振動検出部400が残留振動を検出するタイミング信号であり、波形2の選択に応じてタイミング信号DSELがローレベル(アクティブ)となる。
【0052】
ノズル検査に関して、SI(01)は、ノズル検査のみを行ない、SI(11)では、一旦波形1でインクを噴射し、ノズル220内のインクをリフレッシュした後にノズル検査を行なうようにしている。
【0053】
図13は、残留振動検出部400の回路構成を示すブロック図である。本図に示すように、残留振動検出部400は、印字ヘッド200のグランド端HGNDをグランドに接地または解放するスイッチとして機能するトランジスタQと、印字ヘッド200のアクチュエータ210へ駆動信号COMを印加した後に、グランド端HGNDを解放することで発生する残留振動の交流成分を増幅する交流増幅器ACAMPと、増幅された残留振動VaOUTを基準電圧VrefPと比較することでパルスに変換する比較器COMP1と、増幅された残留振動VaOUTを基準電圧VrefNと比較することでパルスに変換する比較器COMP2と、比較器COMP1の出力と信号DSELとの論理和を出力するオア回路OR1と、比較器COMP1と比較器COMP2の出力の排他的論理和を出力する排他的論理和回路XOR1と、排他的論理和回路XOR1の出力と信号DSELとの論理和を出力するオア回路OR2とを備えている。ただし、オア回路OR1は、比較器COMP2の出力と信号DSELとの論理和を出力するようにしてもよい。なお、交流増幅器ACAMPは、直流成分をカットするコンデンサCと、GNDを基準にして抵抗R2/R1で定まる増幅率で反転増幅する演算器AMPで構成されている。
【0054】
この構成により、比較器COMP1および比較器COMP2で検出された2つのパルスは、排他的論理和回路XOR1によって統合される。また、残留振動の検出タイミングに発生するパルスのみを抽出するために、オア回路OR1、OR2によって、信号DSELのローレベルによって指示される検出タイミング以外のパルスを除去している。
【0055】
残留振動検出部400における残留振動の検出は、圧力室202内の残留振動による圧力変化がアクチュエータ210に伝達されることを利用している。圧電素子201を使用したアクチュエータ210の場合、残留振動に基づく圧電素子201の機械的変位によって発生する起電圧の変化として残留振動を検出することができる。
【0056】
残留振動検出部400では、起電圧の変化に対応した残留振動VaOUTを、比較器COMP1と比較器COMP2とによって2値化している。すなわち、比較器COMP1は、残留振動VaOUTが基準電圧VrefPを下回った場合にハイレベルを出力し、比較器COMP2は、残留振動VaOUTが基準電圧VrefNを下回った場合にハイレベルを出力する。ここで、基準電圧VrefPは、GND電圧よりも正側に設定し、基準電圧VrefNは、GND電圧よりも負側に設定するようにする。つまり、VrefNとVrefPとが振動が収束する波形レベルに対してオフセットを有する基準レベルとなるように設定する。
【0057】
これにより、比較器COMP1の出力レベルと比較器COMP2の出力レベルとの排他的論理和を出力する排他的論理和回路XOR1は、電圧VaOUTが、基準電圧VrefNから基準電圧VrefPの範囲内に留まっている状態においてハイレベルを出力することになる。
【0058】
図14は、残留振動に対する比較器COMP1、比較器COMP2、排他的論理和回路XOR1の出力レベルを示す図である。本図に示すように、残留振動VaOUTが基準電圧VrefPを下回った期間に比較器COMP1がハイレベルを出力し、残留振動VaOUTが基準電圧VrefNを下回った期間に比較器COMP2がハイレベルを出力する。そして、比較器COMP1およびCOMP2の出力がいずれもハイレベルの期間、すなわち、残留振動VaOUTが、基準電圧VrefNと基準電圧VrefPの範囲内に留まっている期間に排他的論理和回路XOR1がハイレベルを出力している。なお、排他的論理和回路XOR1の出力は、オア回路OR2により出力信号POUT(d)として取り出される。
【0059】
そして、アクチュエータ210に駆動信号COMの供給が終了してから(図12に示す信号DSELがハイレベルからローレベルに遷移した時点から)、残留振動VaOUTが基準電圧VrefNと基準電圧VrefPの範囲内に収束するまでの時間を減衰時間Tdと定める。すなわち、減衰時間Tdは、排他的論理和回路XOR1の出力がハイレベルで安定して、減衰振動の振幅が所定の基準値以下となるまでの時間を意味する。出力信号POUT(d)のパルスエッジの発生から終了までの時間は、ほぼ減衰曲線の減衰時間Tdに一致する。
【0060】
図15は、インクの粘度比と減衰曲線との関係を示す図である。ここでは、通常の状態である粘度比1.0のときの減衰曲線を図15(a)に示し、増粘として検出すべき状態である粘度比2.6のときの減衰曲線を図15(b)に示している。本図からも、減衰振動の振幅が減衰して、二値化の基準となる基準電圧VrefNと基準電圧VrefPの範囲内に収まった時点が減衰時間Tdとして得られることがわかる。
【0061】
また、図14に示すように、本実施形態では、比較器COMP1の初期パルスの1周期を残留振動VaOUTの振動周期Ttとみなしている。振動周期Ttは、本来、残留振動VaOUTのゼロクロスの時間間隔から与えられるが、振幅が大きい初期パルスであれば、残留振動VaOUTと基準電圧VrefPとの比較であっても差が小さいからである。残留振動の振動周期Ttに対応する信号は、オア回路OR1により、出力信号POUT(t)として取り出される。なお、残留振動の振動周期Ttは、比較器COMP2の初期パルスの振動周期から取得するようにしてもよい。
【0062】
制御部320のインク状態判定部322は(図3参照)、残留振動検出部400から出力信号POUT(d)とPOUT(t)とを取得してインクの状態を判定する。このときに、インク粘度減衰特性テーブル325と、残留振動基準周期値326とが参照される。
【0063】
インク状態判定部322のインク状態判定処理について図16のフローチャートを参照して説明する。インク状態判定処理は、図12に示したように波形2が選択されて、信号DSELがローレベルになることで開始する(S101)。信号DSELがローレベルになると、残留振動検出部400のトランジスタQ(図13参照)がオフとなり、交流増幅器ACAMPに、圧電素子201の機械的変位によって発生する起電圧が入力される。この圧電素子201の機械的変位は、アクチュエータ210に印加された波形2によって変位した振動板203の残留振動によるものである。
【0064】
次いで、出力信号POUT(t)の初期パルスの振動周期に基づいて、残留振動の振動周期Ttを測定する(S102)。そして、残留振動基準周期値326を参照して、測定した残留振動の振動周期Ttが残留振動基準周期値326より短いかどうかを判断する(S103)。
【0065】
その結果、残留振動の振動周期Ttが残留振動基準周期値326より短い場合(S103:Yes)には、インク流路内に気泡が混入したと判断し、気泡混入対応処理を行なう(S104)。この場合、以降の減衰時間測定処理等は行なわない。
【0066】
一方、残留振動の振動周期Ttが残留振動基準周期値326より短くない場合(S103:No)には、減衰時間Tdを測定する(S105)。減衰時間Tdの測定は、波形2をアクチュエータ210に印加してから、出力信号POUT(d)がハイレベルで安定するまでの時間を計測することで行なう。
【0067】
そして、インク粘度減衰特性テーブル325を参照することで(S106)、得られた減衰時間Tdに対応するインク粘度を判定する(S107)。プリントコントローラー300は、判定されたインク粘度に応じて、必要なメンテナンス処理を行なうことができる。メンテナンス処理は、例えば、フラッシング、ポンプによるインク吸引等とすることができる。これらのメンテナンス処理は、インクの粘度に応じて必要な場合にのみ行なわれるため、無駄なインク消費を防ぐことができ、カラーインクジェットプリンター100のランニングコストを抑えることができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、残留振動検出部400において、比較器COMP1およびCOMP2を用いて残留振動を二値化し、その結果に基づいて減衰時間Tdおよび振動周期Ttを得て、インクの状態を判定している。このため、精密測定用に設計されたピークホールド回路やA/D変換回路を必要とせず、コストアップを招くことなくインクの状態を判定することができる。
【0069】
2.変形例
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の変形が可能である。
(1)上述した実施形態では、インクを吐出するために圧電素子201を用い、その起電力によって残留振動を検出した。すなわち、インクを吐出するための構成と残留振動を検出するための構成が兼用されていた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、両者が別構成であってもよい。例えば、振動板203を振動させる圧電素子201とは別に残留振動を検出するための圧電素子を設けてもよい。
また、インクを吐出させる方式としてサーマル方式を採用してもよい。この場合にはヒーターによって圧力室のインクに内圧が与えられる。この意味においてヒーターは、圧電素子201と同様に圧力を発生させる圧力発生素子である。圧電素子201は、圧力発生素子のうち、起電力を発生する素子であるといえる。圧力発生素子としてヒーターを使用した場合に、インクの残留振動を計測する圧電素子を設けてもよい。
【0070】
(2)上述した実施形態および変形例においては、インクを吐出させない波形2の後に残留振動を検出するようにした。このため、残留振動を検出するために特別な期間を設ける必要がなかったが、本発明はこれに限定されるものではなく、波形2でインクを吐出させて、その後、圧電素子201の起電力によって残留振動を検出するようにしてもよい。
【0071】
(3)上述した実施形態では、液体噴射装置として、インクを噴射するカラーインクジェットプリンター100 について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、液体を液滴として吐出する各種の液体噴射装置であってもよい。例えば、ファックス、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとしての試料噴射装置であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
100…カラーインクジェットプリンター、210…アクチュエータ、220…ノズル、230…インクカートリッジ、300…プリントコントローラー、320…制御部、321…CPU、322…インク状態判定部、325…インク粘度減衰特性テーブル、326…残留振動基準周期値、334…駆動信号発生部、400…残留振動検出部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力発生素子とノズルとが設けられた吐出部を備え、前記圧力発生素子に駆動信号を供給した後、液体の振動を示す残留振動波形を検出する検出手段を備えた液体噴射装置において、
前記残留振動波形を、振動が収束する波形レベルに対してオフセットを有する基準レベルと比較して二値化信号を生成する二値化手段と、
前記二値化信号に基づいて、前記圧力発生素子に駆動信号を供給してから前記残留振動波形の振幅が所定の振幅まで減衰するまでの減衰時間を特定する減衰時間特定手段と、
前記減衰時間に基づいて前記液体の状態を判定する判定手段と、
を備える液体噴射装置。
【請求項2】
前記圧力発生素子は、圧電素子であり、
前記検出手段は、前記残留振動波形を前記圧電素子の起電力として検出することを特徴とする請求項1に記載の液体噴射装置。
【請求項3】
前記二値化手段は、前記オフセットに対応した第1のオフセット値を前記基準レベルとして、前記残留駆動波形を二値化した第1の二値化信号と、前記オフセットに対応した第2のオフセット値を前記基準レベルとして、前記残留駆動波形を二値化した第2の二値化信号とを生成し、
前記減衰時間特定手段は、前記第1の二値化信号及び前記第2の二値化信号のレベルが変化しなくなった時点を前記残留振動波形の振幅が所定の振幅まで減衰した時点として前記減衰時間を特定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体噴射装置。
【請求項4】
前記二値化手段は、
前記残留駆動波形を前記第1のオフセット値と比較して前記第1の二値化信号を生成する第1のコンパレータと、
前記残留駆動波形を前記第2のオフセット値と比較して前記第2の二値化信号を生成する第2のコンパレータとを備え、
前記減衰時間特定手段は、
前記第1の二値化信号及び前記第2の二値化信号の排他的論理和を演算する排他的論理和回路を備え、
前記排他的論理和回路の出力信号に基づいて前記減衰時間を特定する、
ことを特徴とする請求項3に記載の液体噴射装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記第1の二値化信号及び前記第2の二値化信号のうち少なくとも一方の周期と、予め定められた基準周期とを比較し、前記少なくとも一方の周期が前記基準周期より短い場合には、前記減衰時間を特定する処理を中止することを特徴とする請求項3又は4に記載の液体噴射装置。
【請求項6】
前記判定手段は、
前記減衰時間と前記液体の粘度とを対応付けて記憶した記憶手段を備え、
前記減衰時間特定手段によって前記減衰時間が特定されると、当該減衰時間に対応する前記液体の粘度を前記記憶手段から読み出して、前記液体の粘度を前記液体の状態として判定する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項7】
前記駆動信号を生成する駆動信号生成手段を備え、
前記駆動信号生成手段は、前記減衰時間を測定する場合、前記液体をノズルから吐出させない大きさの前記駆動信号を生成することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の液体噴射装置。
【請求項8】
圧力発生素子とノズルとが設けられた吐出部を備え、前記圧力発生素子に駆動信号を供給した後、液体の振動を示す残留振動波形を検出する検出手段を備えた液体噴射装置において、液体の状態を判定する液体噴射装置の液体状態判定方法であって、
前記残留振動波形を、振動が収束する波形レベルに対してオフセットを有する基準レベルと比較して二値化信号を生成し、
前記二値化信号に基づいて、前記圧力発生素子に駆動信号を供給してから前記残留振動波形の振幅が所定の振幅まで減衰するまでの減衰時間を特定し、
前記減衰時間に基づいて前記液体の状態を判定する、
ことを特徴とする液体噴射装置の液体状態判定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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